(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6979666
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】波による推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航路のリアルタイム最適化方法及び航行方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20211202BHJP
G05D 1/00 20060101ALI20211202BHJP
B63H 19/04 20060101ALI20211202BHJP
G08G 3/00 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
G01C21/36
G05D1/00 A
B63H19/04
G08G3/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2021-85870(P2021-85870)
(22)【出願日】2021年5月21日
【審査請求日】2021年5月24日
(31)【優先権主張番号】202011096830.0
(32)【優先日】2020年10月14日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521220943
【氏名又は名称】哈尓濱工程大学
【氏名又は名称原語表記】Harbin Engineering University
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】賈 ▲其▼
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲ユ▼雷
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ 碩
(72)【発明者】
【氏名】李 曄
(72)【発明者】
【氏名】初 ▲イン▼
【審査官】
堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−127983(JP,A)
【文献】
特開昭59−184099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/36
G05D 1/00
B63H 19/04
G08G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッド化された地図上で無人ボートのオフライン経路を計画し、且つオフライン経路における離散的な航跡ポイントを取得し、ここでは、各航跡ポイント間にいずれも障害物がなく且つ無人ボートが各航跡ポイントを通過できるものとして、iを各航跡ポイントの番号として設定し且つその初期値を0とするステップ1と、
自然エネルギーを利用して無人ボートを駆動して第i航跡ポイントから第i+1航跡ポイントへ航行させ、同時に第i航跡ポイント付近の波浪環境情報を収集し、且つ該波浪環境情報を第i航跡ポイントと第i+1航跡ポイントとの間の波浪情報とするステップ2と、
自然エネルギー駆動下での無人ボートの出会い角αを計算するステップ3と、
|α|が90°に等しいか否かを判断し、等しい場合無人ボートはオフライン経路に従って航行し続け、等しくない場合第i航跡ポイントと第i+1航跡ポイントとの間の航路を最適化し、
前記第i航跡ポイントと第i+1航跡ポイントとの間の航路最適化の具体的な方法は以下のとおりであり、
無人ボートの船首方向を調整して波の伝播方向と一致させ且つ無人ボートの推進装置をオフにして、無人ボートに波の推進力により距離L
1を航行させてから、推進器をオンにして且つ無人ボートの航行方向を角度β
1偏向して第i+1航跡ポイントに向かって航行させ、
Lは2つの航跡ポイント間の直線距離であり、β
1により推進装置の現在出力エネルギーを最小にすることができ、
E
1minは推進装置の現在の出力の最小エネルギーであり、Pは無人ボートが受ける前進抵抗であり、W
fairは無人ボートが受ける追い波推進力であり、
無人ボートの船首方向を調整して波の伝播方向と逆にして且つ無人ボートの推進装置をオフにして、無人ボートに水中翼の推力により距離L
2を航行させてから、推進装置をオンにして且つ無人ボートの航行方向を角度β
2偏向し第i+1航跡ポイントに向かって航行させ、
E
2minは推進装置の現在の出力の最小エネルギーであり、Wrは無人ボートが受ける向い波抵抗であり、W
tは無人ボートが受ける水中翼による推進力であるステップ4と、
iがnと等しいか否かを判断し、等しい場合無人ボートは終点に到達して航行を終了し、等しくない場合i=i+1としてから、ステップ2に戻り、nは航跡ポイントの総数であるステップ5と、
を含むことを特徴とする、波による推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航行方法。
【請求項2】
ステップ1において、自然エネルギーを利用して無人ボートを駆動する条件において、タスク要件及びエネルギーシステムの捕捉要件に基づき、グリッド化された地図上で無人ボートのオフライン経路を計画することを特徴とする、請求項1に記載の波による推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航行方法。
【請求項3】
ステップ2において、無人ボートに搭載された波浪センサを介して波浪情報を取得し、前記波浪情報は波高H、波長λ、波周期T、波速C及び波向角を含むことを特徴とする、請求項1に記載の波による推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航行方法。
【請求項4】
ステップ3における出会い角αは無人ボートの船首方位角と波向角との差であることを特徴とする、請求項1に記載の波による推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経路計画の技術分野に属し,特に海上航走体の経路計画に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー捕捉は長時間の自立能力が求められる海上輸送装置にとって極めて重要であり、外部エネルギーに対する捕捉能力を可能な限り強化することで、海洋における監視、調査等のタスクを効果的に達成することが可能である。現在、実際の工学的応用において、各海上輸送装置が利用する海洋環境エネルギーは様々であるが、主に太陽エネルギー、波エネルギー、風力エネルギー及び温度差エネルギー等の分野に集中している。現在、波エネルギーは水面上の海洋構造物の主なエネルギー取得源の一つである。波エネルギーとは海洋の表層海水が海風の作用で形成する波が有する運動エネルギー及び位置エネルギーを指す。波エネルギーは、機械的エネルギーの形態で発生し、楊煌軍氏が「海洋エネルギーの取得、伝達及び管理総論」の中で指摘しているとおり、波エネルギーは品質が最も高い海洋エネルギーであり、文献「An assessment of global ocean wave energy resources over the last 45 a」(過去45年間の全地球的波エネルギー資源の評価)で説明されているとおり、海洋全体の約90%の領域は2kW/m(波面幅当たりの波力)を超えるエネルギー密度を有している。波エネルギーは波高の二乗、波の運動周期及び迎波面の幅に比例し、実際の使用においては波の作用で生成された振動及び揺動運動を利用してロボットがエネルギーを取得することができる。現在、海洋ロボットによる波エネルギーの利用方式は主に二つの分野に集中しており、一つ目は波エネルギーを直接利用して推進することであり、二つ目は波エネルギーを利用した発電である。
【0003】
自然エネルギー駆動無人ボートは新しい概念の海洋航走体として周囲の環境エネルギーを十分に捕捉することができ、従来の海洋監視ツールが定期的なエネルギー補給を必要とするという欠点を補い、エネルギーを節約し、コストを削減するだけでなく、高い航続能力及び環境適応性を有する。自然エネルギー駆動無人ボートは従来の動力無人ボートとウェーブグライダーの利点を融合しており、純粋な機械的構造によって波の上下揺れ運動のエネルギーを吸収して一定の比率で前方推進の動力に変換し、同時に搭載した推進装置を利用して推力を補償しウェーブグライダーが波浪環境の影響を受けて航行速度が制御できないという欠点を克服し、且つ衛星を介して基地局とコマンド及びデータの伝送を行い、長時間で、広範囲の航行観測を実現することができ、海洋観測ネットワークを構築する基礎的なプラットフォーム及び最適なツールとなっている。自然エネルギー駆動無人ボートの駆動力の特異性及び海洋環境の複雑さのため、無人ボートが海洋探査、巡航、調査等のタスクを成功させるためには、搭載したセンサを介して一定範囲内の環境データを収集し、それを基に計算処理を行うことによって航行経路をリアルタイムに最適化する必要がある。経路計画は自然エネルギー駆動無人ボートの自律航法を実現するキーポイントであるだけでなく、無人ボートが失踪しないことにも関係する。従って自然エネルギー駆動無人ボートの航行特徴を対象に、様々な波浪環境に適用できる航路最適化方法を設計する必要がある。
【0004】
文献「波エネルギー推進水面航走体の経路計画問題の研究」は、レベルセット法に基づき、静的流れ場及び動的流れ場における波エネルギー推進水面ロボットの経路計画方法を提供し、ロボットが海流の方向に沿って移動するようにしてそれ自体の移動速度を増加させ、エネルギーを節約することができるが、変化した波浪環境に対する解決方法を提供していない。
【0005】
文献「ウェーブグライダーの速度予測及び経路計画の研究」は、ウェーブグライダーの経路計画を行う時に、ウェーブグライダーの予測速度をアルゴリズムに組み込み、即ち経路計画のプロセスにおいて有効波高、表層流及び風速等の海洋環境の要因がウェーブグライダーに与える影響を考慮している。しかしながら文中で言及されているモデルはウェーブグライダーのオフライン速度予測モデルによって、ウェーブグライダーのオフライン速度を計算しており、実際のプロセスと応用におけるアルゴリズムのリアルタイム性に欠ける。
【0006】
文献「改良されたアントコロニーアルゴリズムに基づくウェーブグライダーの経路計画研究」及び「改良されたポテンシャル場アントコロニーアルゴリズムに基づくウェーブ動力グライダーの経路計画アルゴリズム研究」はいずれも環境地図に対してグリッド化処理を行い、ノード選択を行う時にできるだけロボットの航行速度を早くしている。しかしながらいずれもグリッド内の具体的な航行方法を指示していない。
【0007】
文献「モード遷移アントコロニーアルゴリズムに基づくウェーブグライダーの経路計画」は、状態遷移の確率算出式を改善し、時間消費の問題を考慮して、実際に経路を最短とするという問題を解決しているが、周囲環境のロボットに対する影響を無視している。
【0008】
文献「人工経路探索蟻に基づくウェーブグライダーの経路計画」は、ウェーブグライダーの速度予測モデルを確立し、高速ノードを選択することにより経路計画を完成している。環境モデリングを行う際に、離散的なグリッド化地図を採用しており、各ノード間の具体的な航行方法は示していない。
【0009】
公開日が2020年5月22日で、公開番号がCN111189468Aであり、名称が「ウェーブグライダーのグローバル経路計画方法」である特許出願は、Aスターアルゴリズムでグローバル経路計画を完了した後、冗長点を除去し、計画経路を短縮しているが、各グリッド間の具体的な方向を考慮しておらず、且つ海洋環境の影響を考慮していないことから、ロボットの海洋エネルギーに対する利用に具現化することができない。
【0010】
公開日が2020年6月16日で、公開番号がCN111290435Aであり、名称が「ウェーブグライダーの経路計画方法及びシステム」である特許出願は、ディープラーニングを採用して従来の航路に対して反復学習を行い、その目的はウェーブグライダーの速度が遅いという短所を克服し、ウェーブグライダーと水中航走体との間の有効通信距離を保持して、ウェーブグライダーと水中航走体との情報インタラクティブを強化することに用いられるが、この方法は自然エネルギー駆動無人ボートの航路最適化の目的には適していない。
【0011】
以上の特許及び文献において、ある方法は航行速度が最も早く、経路が最も短くなることを追求しているが、周囲の海洋環境の影響を無視しており、且つ実際の工学的応用においてロボットは異なるタスクを担うことが多く、単純な速度競争ではないため、タスクの要件に応じて、ロボットは「高速」航路を放棄しなければならない。別の方法はグリッド法を用いて地図を構築しており、グリッド法は環境要因をその中に適切に融合させることができるが、上記方法は各離散グリッド間の方向計画に対して指針を提供しているだけで、グリッド内の具体的な航行方法には言及していない。
【0012】
自律移動性能は波エネルギー水面航走体のスマート化レベルの重要な体現であり、それは航走体の作業効率と精度をそのまま決定するものである。ウェーブグライダーの駆動方式は純粋な波力推進であり,波への依存度が高く、波の影響を受けるというその特徴は、航行速度が制御できず、作業範囲が環境の影響を受けることである。しかしながら自然エネルギー駆動無人ボートは推進装置と水中翼のハイブリッド駆動であり、波エネルギーを捕捉すると同時に推進装置の推力補償によって航行速度を制御することができ、これにより自然エネルギー駆動無人ボートの異なるタスクに対する適応性を大幅に向上させる。従って、ウェーブグライダーの経路計画方法は自然エネルギー駆動無人ボートに適用することができない。タスク要件や、他のエネルギー捕捉状況、及び複雑で多様な海洋環境を総合的に考慮した結果、自然エネルギー駆動無人ボートにはオフラインの計画航路において波の変化に基づく航路最適化を行うことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】中国特許公開番号CN111189468A
【特許文献2】中国特許公開番号CN111290435A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は自然エネルギー駆動無人ボートにおける当初の計画航路の航跡ポイント間(ノード間)において波浪環境、航行方位に基づいてノード間の航路最適化を行い、波力推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航路のリアルタイム最適化方法及び航行方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
波力推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航路のリアルタイム最適化方法であって、無人ボートは航行の過程において、
出会い角αの絶対値が90°に等しい時、無人ボートは現在の航行状態を保持して次の航跡ポイントまで航行する。
【0016】
無人ボートの船首方向を調整して波の伝播方向と一致させ且つ無人ボートの推進装置をオフにして、無人ボートに波の推進力により距離L
1を航行させてから、推進装置をオンにして且つ無人ボートの航行方向を角度 β
1偏向し、航路の最適化を完了し、
【0017】
であり、E
1minは推進装置の現在の出力の最小エネルギーであり、Pは無人ボートが受ける前進抵抗であり、W
fairは無人ボートが受ける追い波推進力である。
【0018】
無人ボートの船首方向を調整して波の伝播方向と逆にして且つ無人ボートの推進装置をオフにして、無人ボートに水中翼の推力により距離L
2を航行させてから、推進装置をオンにして且つ無人ボートの航行方向を角度β
2偏向し、航路の最適化を完了し、
【0019】
E
2minは推進装置の現在の出力の最小エネルギーであり、Wrは無人ボートが受ける向い波抵抗であり、Wtは無人ボートが受ける水中翼による推進力である。
波による推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航行方法は、以下のステップを含む。
【0020】
ステップ1:グリッド化された地図上で無人ボートのオフライン経路を計画し、且つオフライン経路における離散的な航跡ポイントを取得し、ここでは、各航跡ポイント間にいずれも障害物がなく且つ無人ボートが各航跡ポイントを通過できるものとして、iを各航跡ポイントの番号として設定し且つその初期値を0とする。
【0021】
ステップ2:自然エネルギーを利用して無人ボートを駆動して第i航跡ポイントから第i+1航跡ポイントへ航行させ、同時に第i航跡ポイント付近の波浪環境情報を収集し、且つ該波浪環境情報を第i航跡ポイントと第i+1航跡ポイントとの間の波浪情報とする。
【0022】
ステップ3:自然エネルギー駆動下での無人ボートの出会い角αを計算する。
【0023】
ステップ4:|α|が90°に等しいか否かを判断し、等しい場合無人ボートはオフライン経路に従って航行し続け、等しくない場合第i航跡ポイントと第i+1航跡ポイントとの間の航路を最適化し、
前記第i航跡ポイントと第i+1航跡ポイントとの間の航路最適化の具体的な方法は以下のとおりである。
【0024】
無人ボートの船首方向を調整して波の伝播方向と一致させ且つ無人ボートの推進装置をオフにして、無人ボートに波による推進により距離L
1を航行させてから、推進器をオンにして且つ無人ボートの航行方向を角度β
1偏向して第i+1航跡ポイントに向かって航行させ、
【0025】
Lは2つの航跡ポイント間の直線距離であり、β
1により推進装置の現在出力エネルギーを最小にすることができ、
【0026】
E
1minは推進装置の現在の出力の最小エネルギーであり、Pは無人ボートが受ける前進抵抗であり、W
fairは無人ボートが受ける追い波推進力である。
【0027】
無人ボートの船首方向を調整して波の伝播方向と逆にして且つ無人ボートの推進装置をオフにして、無人ボートに水中翼の推力により距離L
2を航行させてから、推進装置をオンにして且つ無人ボートの航行方向を角度β
2偏向し第i+1航跡ポイントに向かって航行させ、
【0028】
E
2minは推進装置の現在の出力の最小エネルギーであり、W
rは無人ボートが受ける向い波抵抗であり、W
tは無人ボートが受ける水中翼による推進力である。
【0029】
ステップ5:iがnと等しいか否かを判断し、等しい場合無人ボートは終点に到達して航行を終了し、等しくない場合i=i+1としてから、ステップ2に戻り、nは航跡ポイントの総数である。
【0030】
本発明における自然エネルギー駆動無人ボートとは、特に推進装置と水中翼のハイブリッド推進方式を有する新しい概念の海上航走体を指す。本発明に記載の波力推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航路のリアルタイム最適化方法及び航行方法は、搭載したセンサによって波浪環境を検知し、狭い範囲の航行方法に対するリアルタイムのガイドを行い、リアルタイム性に優れており、工学的な要件を満たすことができる。同時にこのような航路修正方法は無人ボートが各タスクノード(航跡ポイント)に到達できることを保証するだけでなく、ノード間の波エネルギーの捕捉能力を強化することを保証して、ロボットの航続能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】は波力推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航行方法のフローチャートである。
【
図2】は具体的な実施形態1において、追い波の場合の航路最適化原理の概略図である。
【
図3】は具体的な実施形態2において、向い波の場合の航路最適化原理の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
自然エネルギー駆動無人ボートは新しい概念の海洋航走体として、周囲の環境エネルギーを十分に捕捉することができ、従来の海洋監視ツールが定期的なエネルギー補給を必要とするという欠点を補い、エネルギーを節約し、コストを削減するだけでなく、高い航続能力及び環境適応性を有する。その推進構造は特殊であり、従来の無人ボートにおける航行速度が制御可能であることと、ウェーブグライダーにおける推進エネルギーの節約という利点を両立している。さらに従来の海洋ロボットの経路計画方法は自然エネルギー駆動無人ボートに全く適応せず、その性能を十分に発揮することができない。タスク要件や、他のエネルギー捕捉状況、複雑で多様な海洋環境を総合的に考慮した結果、自然エネルギー駆動無人ボートにはオフラインの計画航路において波の変化に基づく航路最適化を行うことが求められている。従って本発明は以下の具体的な実施形態を提供して航路最適化を提供する。
具体的な実施形態1
【0033】
図2及び
図3を参照して本実施形態を具体的に説明し、本実施形態に記載の波力推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航路のリアルタイム最適化方法は以下のとおりである。
【0034】
無人ボートの航行過程において、船首を0度として計算し、時計回りに180度まで旋回する領域の出会い角αを0〜-180度とし(180度を含まない)、反時計回りに180度まで旋回する領域の出会い角αを0〜180度とし(180度を含む)。
|α|=90の時、横波と称する。
【0035】
|α|=90の時、無人ボートは横波に遭遇しており、波浪方向と無人ボートの前進方向は垂直であり推進力を増加させることができず、無人ボートは現在の航行状態(計画航路に沿って)次の航跡ポイントに向かって航行する。
【0036】
無人ボートの航続能力を増加するために、この時に無人ボートの船首を調整して波浪の伝搬方向と一致させ且つ無人ボートの推進装置をオフにして、無人ボートが波の推進エネルギーを十分に利用できるようにし、無人ボートは波による推進で航路ABに沿って距離L
ABを航行し、
【0037】
上記航行の過程では推進装置がオフであるため、推進装置はエネルギーを消費しない。その後、推進装置をオンにして且つ無人ボートの航行方向を角度β
1偏向する。この時、無人ボートは航路BD上を航行し、無人ボートは前進抵抗P及び追い波推進力W
fairを受けて、この航行過程では抵抗を克服する役割を果たすためにエネルギー消費を要する。航路BDにおけるエネルギーを最適化するために、β
1により推進装置の現在出力エネルギーを最小にすることを基準としてβ
1の値を取得する。該値の取得過程はコンピュータなどの従来の技術手段によって実現され、以下のとおりである。
【0038】
無人ボートは向い波に遭遇している。
図3に示すように、ADは計画航路を示し且つ長さはLであり、無人ボートは当初の計画に従って航跡ポイントAから航跡ポイントDまで航行するはずであり、航路AD上の無人ボートは前進抵抗P、向い波抵抗W
r及び水中翼推進力W
tを受ける。推進装置は無人ボートの巡航速度を維持して抵抗を克服する役割を果たし、
【0039】
無人ボートの航続能力を増加するために、この時に無人ボートの船首が波浪の伝搬方向と逆になるように調整し且つ無人ボートの推進装置をオフにして、無人ボートが向い波の状況における水中翼の推進力を十分に利用できるようにして、無人ボートは水中翼の推進力により航路ABに沿って距離LABを航行し、
【0040】
上記航行の過程では推進装置がオフであるため、推進装置はエネルギーを消費しない。その後、推進装置をオンにして且つ無人ボートの航行方向を角度β
2偏向する。この時、無人ボートは航路BD上を航行し、無人ボートは前進抵抗P、向い波抵抗W
r及び水中翼の推進力W
tを受けて、この航行過程では抵抗を克服する役割を果たすためにエネルギー消費を要する。航路BDにおけるエネルギーを最適化するために、β
2により推進装置の現在出力エネルギーを最小にすることを基準としてβ
2の値を取得する。該値の取得過程はコンピュータなどの従来の技術手段によって実現され、以下のとおりである。
であり、ここで、E
2minは推進装置の現在の出力の最小エネルギーである
具体的な実施形態2
【0041】
図1、
図2及び
図3を参照して本実施形態を具体的に説明し、本実施形態に記載の波浪推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航行方法は、以下のステップを含む。
【0042】
ステップ1:自然エネルギーを利用して無人ボートを駆動するという条件において、タスク要件及びエネルギーシステムの捕捉要件に基づき、グリッド化された地図上で無人ボートのオフライン経路を計画し、且つオフライン経路における離散的な航跡ポイントを取得する。ここでは、各航跡ポイント間にいずれも障害物がなく且つ無人ボートが各航跡ポイントを通過できるものとして、iを各航跡ポイントの番号として設定し且つその初期値を0とする。
【0043】
ステップ2:自然エネルギーを利用して無人ボートを駆動して第i航跡ポイントから第i+1航跡ポイントへ航行させ、同時に無人ボートに搭載した波浪センサを介して第i航跡ポイント付近の波浪環境情報を収集し、且つ該波浪環境情報を第i航跡ポイントと第i+1航跡ポイントとの間の波浪情報とする。前記波浪情報は、波高H、波長λ、波周期T、波速C及び波向角を含む。
【0044】
ステップ3:自然エネルギーで駆動している無人ボートの出会い角αを計算する。出会い角αは無人ボートの船首方位角と波向角の差であり、船首を0度として計算し、時計回りに180度まで旋回する領域の出会い角αを0〜−180度とし(180度を含まない)、反時計回りに180度まで旋回する領域の出会い角αを0〜180度とする(180度を含む)。
【0045】
ステップ4:|α|が90°に等しいか否かを判断し、等しい場合無人ボートは横波に遭遇しており、波浪方向と無人ボートの前進方向は垂直であり推進力を増加させることができず、無人ボートは現在の航行状態(計画航路に沿って)次の航跡ポイントに向かって航行する。
等しくない場合第i航跡ポイントと第i+1航跡ポイントとの間の航路を最適化する必要があり、最適化は以下の2つの状況を含む。
【0046】
図2に示すように、ADは計画航路を示し且つ長さはLであり、無人ボートは当初の計画に従って航跡ポイントA(すなわち第i航跡ポイント)から航跡ポイントD(すなわち第i+1航跡ポイント)まで航行するはずであり、航路AD上の無人ボートは前進抵抗P及び追い波推進力W
fairを受ける。推進装置は無人ボートの巡航速度を維持して抵抗を克服する役割を果たし、
【0047】
無人ボートの航続能力を増加するために、この時に無人ボートの船首を調整して波浪の伝搬方向と一致させ且つ無人ボートの推進装置をオフにして、無人ボートが波の推進エネルギーを十分に利用できるようにし、無人ボートは波による推進で航路ABに沿って距離L
ABを航行し、
【0048】
上記航行の過程では推進装置がオフであるため、推進装置はエネルギーを消費しない。その後、推進装置をオンにして且つ無人ボートの航行方向を角度β
1偏向する。この時、無人ボートは航路BD上を航行し、無人ボートは前進抵抗P及び追い波推進力W
fairを受けて、この航行過程では抵抗を克服する役割を果たすためにエネルギー消費を要する。航路BDにおけるエネルギーを最適化するために、β
1により推進装置の現在出力エネルギーを最小にすることを基準としてβ
1の値を取得する。すなわち、
ここで、E
1minは推進装置の現在の出力の最小エネルギーである。
【0049】
無人ボートは向い波に遭遇している。
図3に示すように、ADは計画航路を示し且つ長さはLであり、無人ボートは当初の計画に従って航跡ポイントA(すなわち第i航跡ポイント)から航跡ポイントD(すなわち第i+1航跡ポイント)まで航行するはずであり、航路AD上の無人ボートは前進抵抗P、向い波抵抗Wr及び水中翼推進力Wtを受ける。推進装置は無人ボートの巡航速度を維持して抵抗を克服する役割を果たし、
【0050】
無人ボートの航続能力を増加するために、この時に無人ボートの船首が波浪の伝搬方向と逆になるように調整し且つ無人ボートの推進装置をオフにして、無人ボートが向い波の状況における水中翼の推進力を十分に利用できるようにして、無人ボートは水中翼の推進力により航路ABに沿って距離L
ABを航行し、
【0051】
上記航行の過程では推進装置がオフであるため、推進装置はエネルギーを消費しない。その後、推進装置をオンにして且つ無人ボートの航行方向を角度β
2偏向する。この時、無人ボートは航路BD上を航行し、無人ボートは前進抵抗P、向い波抵抗Wr及び水中翼の推進力Wtを受けて、この航行過程では抵抗を克服する役割を果たすためにエネルギー消費を要する。航路BDにおけるエネルギーを最適化するために、β
2により推進装置の現在出力エネルギーを最小にすることを基準としてβ
2の値を取得する。すなわち、
ここで、E
2minは推進装置の現在の出力の最小エネルギーである。
【0052】
ステップ5:iがnと等しいか否かを判断し、等しい場合無人ボートは終点に到達して航行を終了し、等しくない場合i=i+1としてから、ステップ2に戻り、nは航跡ポイントの総数である。
【要約】 (修正有)
【課題】波による推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航路のリアルタイム最適化方法及び航行方法を提供する。
【解決手段】本発明は自然エネルギー駆動無人ボートにおいて当初の計画航路の航跡ポイント間に対して波浪環境、航行方位に基づくノード間の航路最適化を行う。本発明の前記波による推進を考慮した自然エネルギー駆動無人ボートの航路のリアルタイム最適化方法及び航行方法は、搭載したセンサによって波浪環境を検知し、狭い範囲の航行方法に対するリアルタイムのガイドを行い、リアルタイム性に優れており、工学的な要件を満たすことができる。同時にこのような航路修正方法は無人ボートが各タスクノードに到達できることを保証するだけでなく、ノード間の波エネルギーの捕捉能力を強化することを保証して、ロボットの航続能力を向上させることができる。
【選択図】
図1