特許第6979668号(P6979668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979668管継手を備えた搬送管、及び複数の搬送管を備えた製造ライン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979668
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】管継手を備えた搬送管、及び複数の搬送管を備えた製造ライン
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/00 20060101AFI20211202BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   F16L33/00 A
   F16L11/12 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-211642(P2016-211642)
(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公開番号】特開2017-227322(P2017-227322A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年9月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-121264(P2016-121264)
(32)【優先日】2016年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000134534
【氏名又は名称】株式会社トヨックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】得能 真一
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 広大朗
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−336780(JP,A)
【文献】 実開平07−032284(JP,U)
【文献】 特開2006−200653(JP,A)
【文献】 特開2011−127751(JP,A)
【文献】 特開2003−202096(JP,A)
【文献】 実開昭59−166089(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3058674(JP,U)
【文献】 特開2002−195463(JP,A)
【文献】 特開2004−286164(JP,A)
【文献】 特開2012−171644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/00
F16L 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体物が搬送される柔軟性を有する複数の管体と、
前記複数の管体の接続端部に対してそれぞれ個別に固定される複数の管継手と、を備え、
前記複数の管体は、透明もしくは半透明であり、
前記複数の管継手は、継手本体部と、前記継手本体部に対し前記複数の管体の前記接続端部を挟んで接続される露出した部材と、前記露出した部材の外周面に対して設けられ且つ前記複数の管体内を搬送される前記流体物毎に異なる情報が表示された表示部と、を有し、
このことによって、前記管体に前記管継手を取付けて構成した搬送管を、製造設備の適切な管接続部に対して取り付けられるようにしたことを特徴とする搬送管。
【請求項2】
前記表示部がメッキによる着色で表示されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送管。
【請求項3】
前記表示部が刻印により表示されていることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送管。
【請求項4】
前記表示部が、前記複数の管継手の継手本体部に対して着脱自在な交換部品に表示されることを特徴とする請求項1、2または3に記載の搬送管。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4に記載の搬送管により複数の製造設備の間が連絡され、前記搬送管として、それぞれ搬送する前記流体物の原材料毎に異なる前記複数の管体が用いられることを特徴とする製造ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工場や医薬品工場や化粧品工場等において、食品や医薬品や化粧品等に関わる流体物を搬送するために用いられる柔軟なホースやチューブ等からなる管体と、管継手とを備えた搬送管、及び複数の搬送管を備えた製造ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料や調味料等を製造する食品工場などにおいては、主原料に対して副原料や香料、油分といった原材料を混合するなどして製品を製造している。製造ラインには、各原材料を貯留しておく貯留タンクや原材料同士を混合するタンクなどの製造設備が配置され、各製造設備の間はステンレス配管や柔軟な搬送管によって接続されて、原材料や製品等が搬送されている。
このような食品工場などにおいて、同じ製造ラインで複数種類の飲料や調味料等を製造することがあり、そのような場合、製造する製品に他の製品の原材料を混入させないために、製造する製品が変わる毎に製造ライン全体が洗浄されている。そして、製造ラインの各製造設備間を接続するステンレス配管の部分については、分解洗浄等を行うことによって着香の問題が生じることはないが、柔軟な搬送管の部分については、着香や原材料の残留の可能性があり、また、最近では食品アレルギーに対する対応などから、柔軟な搬送管は同一の製造ラインにおいて搬送する原材料毎に搬送管を使い分けることが行われていた。
このように、材料毎に使用する搬送管を使い分ける場合には、一旦製造設備から取り外してしまった搬送管を再び接続することが必要となるが、再び製造設備に接続する時にどの搬送管を接続するべきなのかがわかり難く、他の材料に用いる搬送管を接続してしまう可能性があった。
このような問題を解決するためには、搬送する材料等毎に搬送管の管体自体の色を変えて管理したり、柔軟な搬送管の端部に着色された識別テープを巻き付けておき、誤接続を防止する方法が公知であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−217949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1のフレキシブルホースの誤接続を防止する方法のように、搬送管自体を着色してしまっては、搬送する材料等の搬送状態を目視することができなくなる。また、フレキシブルホースの端部に識別テープを巻き付けても、長時間の使用で識別テープが老朽化し、識別テープの一部等がはがれて食品製造ラインに混入してしまう可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明に係る搬送管は、流体物が搬送される柔軟性を有する複数の管体と、前記複数の管体の接続端部に対してそれぞれ個別に固定される複数の管継手と、を備え、前記複数の管体は、透明もしくは半透明であり、前記複数の管継手は、継手本体部と、前記継手本体部に対し前記複数の管体の前記接続端部を挟んで接続される露出した部材と、前記露出した部材の外周面に対して設けられ且つ前記複数の管体内を搬送される前記流体物毎に異なる情報が表示された表示部と、を有し、このことによって、前記管体に前記管継手を取付けて構成した搬送管を、製造設備の適切な管接続部に対して取り付けられるようにしたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る製造ラインの概念図である。
図2】本発明の実施形態に係る搬送管の管継手と管体との接合部分の断面図であり、(a)は管体に管継手を取り付ける前の縦断正面図であり、(b)は管体に管継手を取り付けた後の縦断正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る管継手の外観図であり、(a)は管継手に着色をして流体物を示す実施例の正面図であり、(b)は管継手に刻印をして流体物を示す実施例の正面図であり、(c)は管継手に着色及び刻印をして流体物を示す実施例の正面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る搬送管の管継手と管体との接合部分の断面図であり、(a)は管体に管継手を取り付ける前の縦断正面図であり、(b)は管体に管継手を取り付ける途中の縦断正面図であり、(c)は管体に管継手を取り付けた後の縦断正面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る管継手の外観図であり、(a)は管継手に着色をして流体物を示す実施例の正面図であり、(b)は管継手に刻印をして流体物を示す実施例の正面図であり、(c)は管継手に着色及び刻印をして流体物を示す実施例の正面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る搬送管の管継手と管体との接合部分の断面図であり、(a)は管体に管継手を取り付ける前の縦断正面図であり、(b)は管体に管継手を取り付けた後の縦断正面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る管継手の外観図であり、(a)は管継手に第一の着色をして流体物を示す実施例の正面図であり、(b)は管継手に第二の着色をして流体物を示す実施例の正面図であり、(c)は管継手に第三の着色をして流体物を示す実施例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る管継手1、管継手1を備えた搬送管、及び複数の搬送管を備えた製造ラインは、食品工場や医薬品工場などの衛生管理が厳しい場所又は化粧品工場などの臭い移り管理が厳しい場所に配備される。
本発明の実施形態に係る管継手1として、主原料、副原料、油及び香料によりタレ等の製品を製造する食品工場の製造ラインに用いられる食品用ホース等の搬送管、及び搬送管の端部に固定される管継手(ホース継ぎ手)の例をあげて説明する。
本発明の実施形態に係る搬送管が使用されるタレ等を製造する製造ラインは、主原料に対して、副原料、香料、油等の各種原材料を調合してタレ等の製品を製造するものであり、同一の製造ラインにおいて原材料を異ならせることにより、複数種類のタレ等の製品を製造することができる。
【0008】
図1に示すタレ等の製造ラインにおいては、主原料を第1調合タンク6に投入するとともに、第1タンク7に入れられた副原料を搬送管Aにより第1調合タンク6に搬送して主原料と調合して第1中間物が作られる。そして、該第1中間物を搬送管Bにより第2調合タンク6’に搬送するとともに、第2タンク7’に入れられた香料を搬送管A’により第2調合タンク6’に搬送して前記第1中間物と調合することで第2中間物が作られる。さらに、該第2中間物を搬送管B’により第3調合タンク6”に搬送するとともに、第3タンク7”に入れられた油を搬送管A”により第3調合タンク6”に搬送して第2中間物と調合することでタレ等が製造され、搬送管B”により流体物を瓶詰め等充填して製品として製造している。
【0009】
前記製造ラインにおいて、第1タンク7乃至第3タンク7”と第1調合タンク6乃至第3調合タンク6”との間には、それぞれ原材料である副材料、香料、油を搬送する搬送管A乃至搬送管A”が配置されているが、同一の製造ラインにより、異なる製品を製造することから、第1タンク7と第1調合タンク6、第2タンク7’と第2調合タンク6’、及び第3タンク7”と第3調合タンク6”とを接続する搬送管Aとしては、それぞれ搬送する原材料毎に異なる複数本の搬送管A,A’,A”が準備されており、製造する製品によって搬送管A,A’,A”を交換して用いられている。
また、第1タンク7乃至第3タンク7”との間の搬送管B,B’,及び充填を行う搬送管B”についても、製造する製品によって搬送管B,B’,B”を交換して用いられている。
【0010】
搬送管A及び搬送管Bは、それぞれ透明もしくは半透明で柔軟な軟質合成樹脂からなる管体2の両端部に、ステンレス等の金属材料などからなる管継手が取り付けられて構成されている。
管体2の接続端部に取り付けられる管継手として図2(a)に示す実施例の管継手1は、原材料を貯留するタンク7や材料を調合する調合タンク6等の製造設備に設けられた管接続部6a,7aに接続する継手本体部11と、継手本体部11に対して可撓性を有するホース等の管体2を取り付けるための弾性変形不能なスリーブ部材12と、を備えている。
継手本体部11は、例えばステンレス等の金属材料や硬質合成樹脂等の硬質材料からなり、可撓性を有する管体2の端部内周に挿入されるニップル部111と、ニップル部111の管体2に挿入する側とは反対側端部に連続して設けられ、製造設備の管接続部6a,7aに接続される接続部112と、を有している。接続部112は、ニップル部111に比較してやや大径の筒状部112aと、筒状部112aの端部に形成された大径の鍔状部112bと、を有するフランジ形状に形成されている。
【0011】
ニップル部111は、その外径が管体2の内径と略同じか、もしくはそれよりも若干大径な円筒状に形成されており、ニップル部111を管体2の接続端部から内周に挿入した際には、管体2の内周面に対してぴったりと収まるか、やや管体2の内周を拡張した状態で接続させるように構成されている。そして、ニップル部111の外周面には、ニップル部111の管体挿入側から接続部側に向かって外方に行くように傾斜する複数の環状リブ111aが一体的に形成されており、ニップル部111を管体2の接続端部に挿入した際に、管体2の複数の環状リブ111aが管体2の内周面に食い込んで管体2がニップル部111から抜け落ちるのを防止している。
また、ニップル部111の外周面の接続部側には、環状の係止リブ111bが一体的に形成されており、接続部112の筒状部112aの管体2側端部と環状の係止リブ111bとにより、後述するスリーブ部材12の端部内周面に形成された嵌合リブ部12aを嵌合係止するための嵌合溝111cが形成されている。
【0012】
スリーブ部材12は、アルミニウム等の塑性変形可能な剛性材料からなり、管体2の外径とほぼ同じか、もしくは若干大きい内径を有し、内周に管体2を挿入することが可能な管状部材として形成されている。
そして、スリーブ部材12の一端側の内周には、内周に突出する環状の嵌合リブ部12aを有しており、管体2をスリーブ部材12の他端側から挿入した際に管体2の接続端部がスリーブ部材12の一端側から突出するのを防止している。
また、スリーブ部材12の内周面には、管体2の外周面に対向する環状リブ部12b,12bが管体2の挿入方向に並んで複数設けられている。
【0013】
管体2は、例えばシリコーンゴムや塩化ビニルなどの軟質材料からなり、透明もしくは半透明な材料により形成される例えばホースやチューブなどである。管体2を透明もしくは半透明な材料により形成することにより、管体2内を搬送される流体等の状態を目視により確認することできる。
なお、管体2の構成は限定されるものではなく、弾性を有するものであればよく、例えば、管体2の内部に補強線材22等を埋設するものなどして、保形性と耐圧性に優れたものを用いることもできる。
【0014】
次に、このような本発明の実施形態に係る管継手1に対して管体2を接続する方法を説明する。
先ず、図2(a)に示すように、スリーブ部材12の内周面に沿って管体2の接続端部を挿入し、管体2の接続端部がスリーブ部材12の嵌合リブ部12aに当接するまで挿入する。
そして、管体2の接続端部を挿入したスリーブ部材12に対して、継手本体部11のニップル部111を挿入する。このとき、ニップル部111は管体2の内径と略同じ寸法、もしくは若干大きい外径を備えているので、ニップル部111に対して、比較的小さい力で管体2が挿入されたスリーブ部材12を挿入することができる。
【0015】
スリーブ部材12の先端が接続部112の筒状部112aの管体2側端部に当接するまで管体2及びスリーブ部材12を挿入したら、油圧もしくは手動により操作することができるかしめ装置によってスリーブ部材12を縮径変形させて、図2(b)に示すように、スリーブ部材12の内周に形成された複数の環状リブ部12b,12bを管体2の外周面に食い込ませるとともに、嵌合リブ部12aをニップル部111の嵌合溝111cに嵌合係止する。それと同時に、ニップル部111の複数の環状リブ111aを管体2の内周面に食い込ませることにより、継手本体部11とスリーブ部材12は、両者により管体2の接続端部を強固に挟持した状態で接続することができる。
なお、このとき、スリーブ部材12及び継手本体部11との間の適宜の場所には、図示しないシール材が配置されており、スリーブ部材12と管体2及び継手本体部11とのシールを行っている。
【0016】
以上のように、管体2に対して管継手1を取り付けて構成した搬送管Aにおいて、本発明の実施形態に係る管継手1は、そのスリーブ部材12に、搬送管Aにより搬送する原材料等の流体物を示す情報を表示することを特徴としている。
例えば、図3(a)に示す実施例の管継手1は、流体物を示す情報として少なくともスリーブ部材12の外周面全体が、搬送管Aにより搬送する材料を連想させる色に着色されたスリーブ部材12dを挿着した例である。例えば、醤油を搬送する搬送管Aの管継手1のスリーブ部材12を紫色に着色して、スリーブ部材12の色を見るだけで搬送管Aにより搬送される材料が認識できるように構成されている。
なお、スリーブ部材12に対する着色は、食品衛生上の問題がなく耐摩耗性に優れた有色メッキ、特に真空蒸着・イオンプレーティング・スパッタリング等の乾式メッキが望ましく、特に多色が得られる窒化チタンを使ったイオンプレーティングにより行うことが望ましい。
【0017】
また、図3(b)に示す実施例の管継手1は、流体物を示す情報として少なくともスリーブ部材12の外周面に、搬送管Aにより搬送する材料の名称等が刻印等で施されたスリーブ部材12eを挿着した例である。例えば、水を搬送する搬送管Aを固定する管継手1のスリーブ部材12にレーザにより「水用」の文字を刻印したものである。
さらに、図3(c)に示す実施例の管継手1は、流体物を示す情報として少なくともスリーブ部材12の外周面が、有色メッキ等により着色されるとともに材料名等の文字が施されたスリーブ部材12fを挿着した例である。具体的には、青の着色をした管継手1のスリーブ部材12に対して「水用」の文字を刻印したものである。
また、その他の例として図示しないが、流体物を示す情報としてスリーブ部材12の一部を単色や複数色で着色したり、単色や複数色の模様を施したり、図示されない文字や絵や記号等を施したり変更可能である。
【0018】
以上のように、本発明の実施形態に係る管継手1は、継手本体部11に対してかしめ等により固定されるスリーブ部材12の外周に、管継手1に接続される管体2により搬送される食品等の流体物を示す情報を表示することにより、搬送する流体物に対して他の流体物用に準備されている搬送管Aを接続することを防止することができる。
また、スリーブ部材12の外周面に表示することにより、比較的着色や刻印等の製造が容易であり、継手部本体及びスリーブ部材12は、共通して使用することができるので製造コストを抑えることができる。
【0019】
したがって、本発明の実施形態に係る管継手1を用いた搬送管Aを使用すれば、同一の製造ラインにおいて多種の製品を製造するために搬送管Aを複数準備しても、接続する搬送管Aの接続を間違えることなく、製造する製品に他の製品の製造に使用する香料等原材料が混入したり、香りが残る可能性がなく、また、牛乳などアレルギー要因による事故を防止することができる。
【0020】
一方、管継手および流体物を示す情報の変形例としては、図4及び図5に示す第二実施例、図6及び図7に示す第三実施例があげられる。
図4に示す第二実施例の管継手3は、図4(a)に示すように、製造設備に設けられた管接続部に接続され、管体4の接続端部に挿入するニップル部311を有する継手本体部31と、管体4が移動自在に挿入されると共に継手本体部31に対して螺合することで往復動自在に設けられる袋ナット部材32と、継手本体部31のニップル部311の外周に配置されて管体4の接続端部が挿入される弾性変形可能な締め付けスリーブ33と、を備えている。
【0021】
そして、図4(b)に示すように、袋ナット部材32に挿通された管体4の端部に継手本体部31のニップル部311を挿入するとともに、管体4の接続端部を締め付けスリーブ33の内周面に挿入して配置する。
その後、図4(c)に示すように、袋ナット部材32の螺合部32aと継手本体部31の螺合部31aとの螺合により、袋ナット部材32を継手本体部31に近づけ、両者間に配置された締め付けスリーブ33を縮径して管体4を締め付けることで、管継手3に管体4を接続するものである。
また、図4(a)(b)(c)に示す例では、継手本体部31の接続部31bをネジ形状に形成しているが、その他の例として継手本体部31の接続部31bを図2(a)(b)に示したフランジ形状に変更することも可能である。
なお、接続部の詳細な構成については、特開2011−52772号公報に記載されている。
【0022】
このような第二実施例の管継手3については、継手本体部31に対して着脱自在な袋ナット部材32の外周面に、図5(a)ないし(c)に示すように、搬送される流体物を示す情報が表示される。
すなわち、袋ナット部材32は、搬送される流体物毎に異なる情報が表示されたものを予め複数種類用意しておき、継手本体部31から袋ナット部材32を取り外すことで、袋ナット部材32と共に流体物の情報が取り替え可能な交換部品となり、この際に管体4の交換も可能となる。このため、図5の管継手3は、図3の管継手1と異なり、管体4が寿命で使用不能となっても管継手3が再使用できるとともに、袋ナット部材32を取り替えることで、他の流体物が搬送される管体4に再使用できる。
図5(a)に示す第二実施例の管継手3は、流体物を示す情報として少なくとも袋ナット部材32の外周面が、管体4により搬送する材料を連想させる色に有色メッキ等で着色された袋ナット部材32dを挿着した例である。
図5(b)に示す第二実施例の管継手3は、流体物を示す情報として少なくとも袋ナット部材32の外周面に、管体4により搬送する材料の名称等が刻印等で施された袋ナット部材32eを挿着した例である。
図5(c)に示す第二実施例の管継手3は、流体物を示す情報として少なくとも袋ナット部材32の外周面が、有色メッキ等により着色されるとともに材料名等の文字が施された袋ナット部材32fを挿着した例である。
また、その他の例として図示しないが、流体物を示す情報として袋ナット部材32の一部を単色や複数色で着色したり、単色や複数色の模様を施したり、図示されない文字や絵や記号等を施したり変更可能である。
【0023】
図6に示す第三実施例の管継手3は、図6(a)に示すように、製造設備に設けられた管接続部に接続され、管体4の接続端部に挿入するニップル部311を有する継手本体部31と、管体4が移動自在に挿入されると共に継手本体部31に対して螺合することで往復動自在に設けられる袋ナット部材32と、袋ナット部材32及び管体4の接続端部の間に配置される弾性変形可能な締め付けスリーブ34と、を備えている。
締め付けスリーブ34の内周面には、管体4の外周面に向けて突出するシール部材34aが設けられている。
【0024】
そして、図6(b)に示すように、袋ナット部材32に挿通された管体4の端部に継手本体部31のニップル部311を挿入するとともに、袋ナット部材32の螺合部32aと継手本体部31の螺合部31aとの螺合により、袋ナット部材32を継手本体部31に近づけ、両者間に配置された締め付けスリーブ34を縮径して管体4を締め付ける。これに伴って、締め付けスリーブ34のシール部材34aが管体4の接続端部を挟んでニップル部311に圧接するので、管継手3に管体4を接続することができる。
また、図6(a)(b)に示す例では、継手本体部31の接続部31cをフランジ形状に形成しているが、その他の例として継手本体部31の接続部31cを図4(a)(b)(c)に示したネジ形状に変更することも可能である。
なお、接続部の詳細な構成については、特許第5557221号公報に記載されている。
特許第5557221号公報に記載されたものと相違点は、継手本体部31の外周面又は袋ナット部材32の外周面のいずれか一方、もしくは継手本体部31の外周面及び袋ナット部材32の両方に亘って、識別リング35を着脱自在に取り付けている。
【0025】
このような第三実施例の管継手3については、継手本体部31や袋ナット部材32に対して着脱自在な識別リング35に、図7(a)ないし(c)に示すように、搬送される流体物を示す情報が表示される。
すなわち、識別リング35は、搬送される流体物毎に異なる情報が表示されたものを予め複数種類用意しておき、継手本体部31から袋ナット部材32及び識別リング35を取り外すことで、識別リング35と共に流体物の情報が取り替え可能な交換部品となり、この際に管体4の交換も可能となる。このため、図7の管継手3は、図3の管継手1と異なり、管体4が寿命で使用不能となっても管継手3が再使用できるとともに、識別リング35を取り替えることで、他の流体物が搬送される管体4に再使用できる。
図6及び図7に示す例では、継手本体部31の外周面に形成される凹部312に対し、識別リング35を着脱自在に嵌合している。
また、その他の例として図示しないが、袋ナット部材32の外周面に形成される凹部に対し、識別リング35を着脱自在に嵌合したり、継手本体部31の外周面及び袋ナット部材32の両方に亘って形成される凹部に対し、識別リング35を着脱自在に嵌合したり変更可能である。
【0026】
図7(a)に示す第三実施例の管継手3は、流体物を示す情報として少なくとも外周面全体が、例えば黄色や白色などの淡色に着色された識別リング35dを挿着した例である。
図7(b)に示す第三実施例の管継手3は、流体物を示す情報として少なくとも外周面全体が、例えば赤色などの中間色に着色された識別リング35eを挿着した例である。
図7(c)に示す第三実施例の管継手3は、流体物を示す情報として少なくとも外周面全体が、例えば青色や黒色などの濃色に着色された識別リング35fを挿着される例である。
また、その他の例として図示しないが、流体物を示す情報として識別リング35の一部を単色や複数色で着色したり、単色や複数色の模様を施したり、文字や絵や記号等を施したり変更可能である。
【0027】
以上のように、このような本発明の実施形態に係る管継手1,3、搬送管及び製造ラインによると、原材料等の流体物を搬送する搬送管の端部に取り付けられる管継手1,3を部分的に工夫し、この部分的な工夫を利用者が見ることにより、搬送管によって搬送する流体物を容易に認識することができ、搬送する流体物毎に正確な搬送管を間違えることなく選ぶことができ、つなぎ誤りを防止することができる。
したがって、フレキシブルホースの端部に識別テープ等を巻き付ける従来のものに比べ、長時間に亘って使用しても脱落して製造ラインに異物混入のおそれがなく安全性に優れる。
【0028】
特に、流体物を示す情報を、継手本体部31に対して着脱自在な交換部品(袋ナット部材32,識別リング35)に表示することが好ましい。
この場合には、流体物を示す情報の交換が極めて容易であり、交換作業の短縮化が図れて作業性に優れるとともに、稼働中において交換部品(袋ナット部材32,識別リング35)の脱落を確実に防止できるため、更なる安全性の向上が図れる。
さらに、継手本体部31に対する着脱自在な交換部品として識別リング35を用いた場合には、製造コストの低減化が図れる。
【0029】
なお、本発明が対象とする管継手の継手としての構成自体は、図2図4図6に示した構造に限定されず、どのようなものでもよい。
さらに、本発明の実施形態に係る製造ラインにおいては、準備している搬送管として全て本発明の実施形態に係る搬送管を用いてもよいし、特に混入することが許されない流体物を搬送する搬送管だけに本発明の実施形態に係る搬送管を用いてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1,3:管継手 2,4:管体
6:調合タンク 6a:管接続部
7:タンク 7a:管接続部
11,31:継手本体部 111,311:ニップル部
111a:環状リブ 111b:係止リブ
111c:嵌合溝 112,31b,31c:接続部
112a:筒状部 112b:鍔状部
12:スリーブ部材 12a:嵌合リブ部
12b:環状リブ部 22:補強線材
31a:螺合部 32:袋ナット部材
32a:螺合部 33,34:締め付けスリーブ
35:識別リング A,B:搬送管
図1
図2
図3
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図5
図6
図7