(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ローラコンベヤやベルトコンベヤのように、フレーム部材にローラ部材を取り付けて形成されるコンベヤ装置が広く知られている。
例えば、ローラコンベヤは、平行二列で延びるように配置したフレーム部材の間に、複数のローラ部材を並列配置し、その上に物品(搬送物)を載せて搬送するものとなっている。
対して、ベルトコンベヤは、平行二列で延びるように配置したフレーム部材に2つのローラ部材(例えば、駆動プーリとテールローラ)を取り付け、この2つのローラ部材の間にベルト部材を懸架している。そして、ローラ部材を回転させることでベルト部材を走行させ、ベルト部材の上の物品を搬送するものとなっている。
【0003】
ここで、ベルトコンベヤでは、一定以上の張力を持つようにベルト部材を懸架する必要がある。このことから、ベルトコンベヤを組み立てる際には、一般的に、一のローラ部材を先行してフレーム部材に固定した後、二のローラ部材にベルト部材を懸架した上で、他方のローラ部材を一方のローラ部材から離れる方向に移動させる。すなわち、2つのローラ部材の軸間距離が広がる方向へと他方のローラ部材を移動させる。そして、一方のローラ部材から水平方向に離れる方向へ力を加えたまま、他方のローラ部材をフレーム部材に取り付ける。
【0004】
このように、ローラ部材を取り付ける際、一方のローラ部材から水平方向に離れる方向へ力を加えたまま取り付け作業を実施することは、大変に労力が必要であり、手間である。
このような手間を軽減する技術として、例えば、特許文献1に開示されたベルトコンベヤ(ベルトコンベア装置)がある。
【0005】
特許文献1に開示されたベルトコンベヤでは、フレームを形成するコンベア取付架台に対してアダプターベースを一体に固定している。そして、このアダプターベースに対し、ローラ部材の軸を支承する(軸を取り付ける)ためのアダプター部材を揺動自在に取り付けている。
具体的には、アダプター部材の一方の端部は、アダプターベースに対し、ピンを介して回転自在に支承された状態となっており、アダプター部材の他方の端部が、ボルトによって固定されている。このため、ボルトを外すと、アダプター部材がアダプターベースに対して揺動可能な状態となり、反対に、所定位置でボルトを締めることで、アダプター部材がアダプターベースに固定された状態となる。
【0006】
すなわち、特許文献1に開示されたベルトコンベヤでは、アダプター部材を揺動させ、アダプター部材に一体に取り付けられたローラ部材を他方のローラ部材に近づけた状態で、ベルトを懸架する。その後、アダプター部材を逆方向へ揺動させることで、ローラ部材を他方のローラ部材から離れた位置に移動させる。そして、この状態でボルトを締め、アダプター部材をアダプターベースに固定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたベルトコンベヤ装置では、フレーム部材にアダプターベースとアダプター部材を設け、さらにこれらを揺動自在に形成する必要があり、フレーム部材の構造が複雑化してしまうという問題がある。
すなわち、フレーム部材の構造が複雑化することで、製造コストが向上してしまうという問題や、強度が低下してしまうといった問題である。
また、特許文献1に開示されたベルトコンベヤは、駆動ローラ(アダプター部材)を大きく移動させるため、駆動ローラの周辺に移動のための領域を確保する必要があり、駆動ローラの周辺に他部材を配置できないという構造上の制限もあった。すなわち、ベルトコンベヤ装置における他部材(例えば、制御盤等)の配置位置の自由度を向上させるという観点からも、改良の余地があった。
【0009】
そこで本発明は、より簡易な構造でローラ部材を正しい位置に固定可能であり、ローラ部材の周辺に移動のための広い領域を必要としないコンベヤローラの取付構造及びベルトコンベヤを提供することを課題とする。
また、上記したコンベヤローラの取付構造において好適に使用可能なコンベヤローラ取付用治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一つの様相は、フレーム部材にローラ部材を取り付けて形成される
ベルトコンベヤにおいて、前記ローラ部材を取り付けるコンベヤローラの取付構造であって、前記フレーム部材は、少なくとも一の前記ローラ部材と他の前記ローラ部材が、前記
ベルトコンベヤの搬送方向で離れた位置にそれぞれ取り付けられるものであり、少なくとも一の軸係合部が形成され、前記軸係合部は、前記ローラ部材の軸部が挿通されるものであって、且つ、第1溝部、第2溝部と、前記第1溝部及び前記第2溝部を連結する連結溝部を有し、前記第1溝部と前記第2溝部は、前記
ベルトコンベヤの搬送方向成分を含む方向に延びており、前記軸部を移動可能な状態で支持可能な部分であり、前記第1溝部又は前記第2溝部のいずれか一方に前記軸部を挿通させた状態で他方まで移動させることが可能であることを特徴とするコンベヤローラの取付構造である。
【0011】
本様相のコンベヤローラの取付構造によると、第1溝部又は第2溝部のいずれか一方にローラ部材の軸部を挿通させた状態で他方まで移動させることが可能となっている。すなわち、軸部を取り付け易い位置で挿通した後、本来の取り付け位置まで移動させることができるため、取り付けの簡易化が可能である。
また、フレーム部材に形成された軸係合部のうち、第1溝部又は第2溝部のいずれか一方から他方まで移動させて固定する構造とすることで、ローラ部材の移動範囲を比較的少なくすることができる。すなわち、フレーム部材とローラ部材の間にアダプターベースとアダプター部材のような移動用の部材を介在させ、これらを揺動させるような構造に比べ、移動範囲を少なくすることが可能である上、構造の簡易化も可能となる。
【0012】
本様相は、前記第1溝部及び前記第2溝部は、上下方向で離れた位置にそれぞれ形成されていることがさらに好ましい。
【0013】
この好ましい様相によると、軸部を挿通位置から本来の取り付け位置まで移動させた際、誤って挿通位置に戻り難くすることができる。
【0014】
本様相は、前記軸部を固定するための固定部材をさらに有し、前記第1溝部又は前記第2溝部のいずれか一方に前記軸部を挿通させた状態で他方まで移動させ、他方まで移動させた前記軸部を前記固定部材により固定可能であり、前記固定部材は、前記軸部を前記
ベルトコンベヤの搬送方向成分を含む方向に移動可能な状態で挿通可能な第2軸係合部と、前記第2軸係合部に挿通した前記軸部を前記
ベルトコンベヤの搬送方向成分を含む方向に押圧可能な押圧部を有しており、前記固定部材を前記フレーム部材に固定し、前記軸部を前記軸係合部と前記第2軸係合部が連通して形成される孔に挿通した状態で、前記軸部を前記押圧部によって押圧可能であることがさらに好ましい。
【0015】
この好ましい様相によると、軸部を本来の取り付け位置の付近まで移動させた後、位置調整が可能となるので、軸部の位置合わせが容易となる。さらに、軸部を本来の取り付け位置まで移動させた後、固定部材で固定することができるので、軸部の本来の取り付け位置からの位置ずれを防止できる。
【0016】
また本様相は、前記第1溝部及び前記第2溝部は、上下方向で離れた位置にそれぞれ形成され、いずれも前記
ベルトコンベヤの搬送方向に延びるものであって、前記連結溝部は、前記第1溝部及び前記第2溝部のうち、前記
ベルトコンベヤの搬送方向における端部側同士を連結していることが好ましい。
【0017】
また、本様相は、前記軸係合部は、前記コンベヤ装置の搬送方向における中心側から端部側へ延び、さらに折り返して中心側へ向かって延びていることがさらに好ましい。
【0018】
これらの好ましい様相によると、軸部の不意の移動を抑制可能であり、好ましい。
【0019】
上記した好ましい様相では、前記押圧部は、前記固定部材に対して移動可能な状態で取り付けられていることがより好ましい。
【0020】
この好ましい様相によると、軸部の位置調整を容易に実行可能となるので、好ましい。
【0021】
また、この好ましい様相では、前記固定部材は、前記押圧部を移動させる移動時状態と、前記押圧部を移動させない非移動時状態とを切り替え可能であることがさらに好ましい。
【0022】
この好ましい様相では、押圧部の不意の移動を防止することで、軸部の不意の移動を阻止できるので、好ましい。
【0023】
本様相は、前記固定部材は、前記軸係合部の外側に取り付けられており、前記固定部材が取り付けられた状態では、前記軸係合部の一部のみが外部に露出するものであり、
前記軸部は、前記軸係合部の露出部分に挿通されるものであり、前記軸係合部の露出部分とは異なる部分である非露出部分への移動が阻止されることが好ましい。
【0024】
これらの好ましい様相では、軸部の不意の移動をさらに確実に抑制できる。
【0025】
本発明の他の様相は、上記したコンベヤローラの取付構造により、少なくとも一の前記ローラ部材を取り付けていることを特徴とするベルトコンベヤである。
【0026】
上記したコンベヤローラの取付構造は、ベルトコンベヤに採用することが特に好ましい。
【0027】
本発明の他の様相は、
ベルトコンベヤのフレーム部材にローラ部材を取り付ける際に使用するコンベヤローラ取付用治具であって、前記フレーム部材は、少なくとも一の前記ローラ部材と他の前記ローラ部材が、前記
ベルトコンベヤの搬送方向で離れた位置にそれぞれ取り付けられるものであり、少なくとも一の軸係合部と、フレーム側係合部が形成され、前記軸係合部は、前記ローラ部材の軸部が挿通されるものであり、前記軸部を移動可能な状態で支持可能な部分であり、前記軸係合部の一部に前記軸部を挿通した後、前記軸部を他の所定部分まで移動させるための治具であり、外部に露出した前記軸部の一部を内側に配することが可能な軸配置部と、前記フレーム側係合部と直接又は他部材を介して間接的に係合可能な治具側係合部を有し、前記フレーム側係合部と前記治具側係合部が係合することで支点が形成されるものであり、前記軸配置部に前記軸部を配した状態で前記支点を中心に回転させることにより、前記軸部を移動させることが可能であることを特徴とするコンベヤローラ取付用治具である。
【0028】
本様相のコンベヤローラ取付用治具によると、軸係合部内における軸部の移動を簡単に実施できる。
【0029】
本様相は、前記軸配置部の周囲に位置する面の一部には、前記軸部の一部を係合可能な第3係合部が形成されていることが好ましい。
【0030】
この好ましい様相によると、軸部の姿勢を安定させることが可能であり、効率よく力を伝達することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、ローラ部材を正しい位置に固定可能であり、ローラ部材の周辺に移動のための広い領域を必要としないコンベヤローラの取付構造及びベルトコンベヤを提供できる。また、このようなコンベヤローラの取付構造において好適に使用可能なコンベヤローラ取付用治具を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係るベルトコンベヤ1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、上下方向、長手方向(ベルトコンベヤ1の搬送方向)、短手方向(ベルトコンベヤ1の搬送方向と直交する方向)については、特に断りのない限り
図1で示される状態を基準として説明する。
【0034】
ベルトコンベヤ1は、
図1、
図2で示されるように、フレーム部材2と、ローラ部材3と、ベルト部材4と、固定部材5を備えた構造となっている。
そして、フレーム部材2に2つのローラ部材3が取り付けられており、2つのローラ部材3のそれぞれに対してベルト部材4が懸架されている。すなわち、ローラ部材3の少なくとも一方が回転することで、ベルト部材4が走行する構造となっている。
【0035】
フレーム部材2は、2つで一対の部材であり、それぞれが長尺状の部材であって、互いに平行となるように配されている。すなわち、それぞれが短手方向で間隔を空けて配されており、搬送方向と同方向に延びている。
【0036】
それぞれのフレーム部材2は、所謂C型鋼に対し、適宜取り付け用の孔等を設けることで形成される部材となっている。すなわち、フレーム部材2は、上下方向で離間対向する上板部2a、下板部2bと、これらの内側端部(ベルト部材4側の端部)同士の間を連結して延びる立板状の側壁板部2cを備えたものとなっている。
【0037】
また、フレーム部材2の長手方向における端部側では、
図3で示されるように、側壁板部2cに軸部材挿通孔10が形成されている。
軸部材挿通孔10は、側壁板部2cを厚さ方向に貫通する孔となっている。具体的には、軸部材挿通孔10は、下方側で搬送方向に沿って延びる第1溝部10aと、上方側で搬送方向に沿って延びる第2溝部10bと、これらを連結するように延びる連結溝部10cに区画されるものである。言い換えると、第1溝部10a、第2溝部10b、連結溝部10cが連続することで、一連の長孔である軸部材挿通孔10が形成されている。
【0038】
第1溝部10aは、第2溝部10bよりも下方側に位置し、長手方向の長さが第2溝部10bよりも長くなっている。
ここで、以下の説明では、第1溝部10a、第2溝部10bにおいて、長手方向の端部のうちの一方であり、搬送方向における中心側に位置する端部(
図3における左端部)を内側端部とする。同様に、第1溝部10a、第2溝部10bにおいて、長手方向の端部のうちの他方であり、搬送方向の端部側に位置する端部(
図3における右端部)を外側端部とする。
【0039】
本実施形態では、第1溝部10aの搬送方向における内側端部は、第2溝部10bの搬送方向における内側端部よりも搬送方向における中心側に位置している。また、第1溝部10aの搬送方向における外側端部は、第2溝部10bの搬送方向における外側端部よりも搬送方向における中心側に位置している。
【0040】
連結溝部10cは、第1溝部10aの外側端部から、後方上側へ向かって湾曲しつつ延びる部分と、その上方で下方側から上方側へ向かって上下方向に沿って延びる部分を有している。
【0041】
そして、第1溝部10aと連結溝部10cの境界部分(
図3のP1で示す部分)は、第1溝部10aの搬送方向における外側端部と隣接する位置であり、搬送方向における端部側に隣接する位置となっている。
また、第2溝部10bと連結溝部10cの境界部分(
図3のP2で示す部分)は、第2溝部10bの搬送方向における外側端部付近の下方側に隣接する位置となっている。
【0042】
以上のことから、軸部材挿通孔10は、ベルトコンベヤ1の搬送方向における中心側から下流側へ向かって延びた後、折り返して中心側へ向かって延びた溝であるといえる。
【0043】
さらに、側壁板部2cのうち、軸部材挿通孔10の周辺に位置する部分には、固定部材5を固定するための取付用孔14が形成されている。これらは、いずれも側壁板部2cを厚さ方向に貫通する貫通孔となっている。
【0044】
ローラ部材3は、
図2で示されるように、概形が略円筒状となるローラ本体3aと、ローラ本体3aの長手方向における端部から外側に突出する軸部材3bを備えた構造となっている。そして、この軸部材3bは、断面形状が略六角形状で延びる部材となっている。
なお、ローラ部材3の少なくとも一方は、外部の動力源又は内蔵される動力源から動力を受けて回転する駆動ローラであり、他方は、駆動ローラからの動力が伝達される(本実施形態ではベルト部材4を介して伝達される)ことで回転する従動ローラとなっている。
【0045】
固定部材5は、
図4で示されるように、その概形が、略四角形板状の部材の一部を切り起こした形状であって、側面視形状が略コ字状となる固定板本体部15と、固定板本体部15から外側側方へ突出する突出板部16を備えている。
【0046】
固定板本体部15は、搬送方向における片側端部側であり、上下方向の中心側に位置する部分に欠落部20を有している。
そして、欠落部20と隣接する位置であり、搬送方向における他方端部側に隣接する位置に突出板部16が位置しており、この突出板部16よりもさらに他方端部側となる位置に固定板側挿通孔22(第2軸係合部)が形成されている。つまり、欠落部20、突出板部16、固定板側挿通孔22が搬送方向で並列しており、より詳細には、搬送方向における中心側(
図4(b)では左側)から端部側(
図4(b)では右側)へ向かってこの順で並列している。
【0047】
また、固定板本体部15には、適宜の部分にねじやボルト等の締結要素を挿通するための取付用孔25が形成されている。
具体的には、上方側の一部であって欠落部20の上側に位置する部分と、下方側の一部であって欠落部20の下側に位置する部分と、欠落部20の下側に形成された取付用孔25から搬送方向で離れた部分のそれぞれにおいて、取付用孔25が形成されている。
なお、締結要素とは、ねじ、釘、ボルト等の上位概念とする。
【0048】
突出板部16は、その厚さ方向が搬送方向と同方向となるように形成された立板状の部分であり、押圧部材28が取り付けられる部分となっている。
すなわち、突出板部16には、押圧体30(詳しくは後述する)を挿通するための孔であり、突出板部16を厚さ方向に貫通する取り付け用の孔(図示しない)が形成されている。
【0049】
押圧部材28は、押圧体30と、緩み止め部材31と、押圧体支持部材32を備えた構造となっている。
【0050】
押圧体30は、具体的にはボルトであり、頭部と軸部を備えた構造となっている。そして、頭部が搬送方向の端部側(
図4(b)における右側)に位置する状態で取り付けられている。
【0051】
緩み止め部材31は、具体的にはナットであり、押圧体30の頭部と突出板部16の間に位置し、押圧体30の軸部と螺合した状態となっている。
具体的には、押圧体30の頭部よりも搬送方向における中心側であり、突出板部16よりも搬送方向における端部側に位置している。
【0052】
押圧体支持部材32は、溶接等の手段によって突出板部16に一体的に固定される部材であり、本実施形態ではナットを採用している。
具体的には、押圧体支持部材32は、突出板部16のうち、搬送方向における中心側に位置する面に一体に固定されている。この押圧体支持部材32には、取り付け用の孔が形成されている。この取り付け用の孔は、押圧体支持部材32を搬送方向に貫通し、内周面にネジ山が形成される貫通孔となっており、上記した突出板部16の取り付け用の孔(図示しない)と一連の孔を形成している。
【0053】
すなわち、ベルトコンベヤ1の搬送方向の中心側から端部側へ向かって、押圧体支持部材32、突出板部16、緩み止め部材31、押圧体30の頭部がこの順で位置している。また、押圧体30の頭部は、固定板側挿通孔22の外側(ベルトコンベヤ1の短手方向で外側であり、
図4の手前側)となる位置に配されている。また、押圧体30の軸部の一部は、押圧体支持部材32よりも搬送方向の中心側(
図4(b)の左側)に位置している。
【0054】
このことにより、押圧体30を軸部の周方向に回転することで、押圧体30が固定板本体部15に対して相対移動する。具体的には、ベルトコンベヤ1の搬送方向に沿う方向、すなわち、搬送方向の中心側から端部側へ向かう方向と、搬送方向の端部側から中心側へ向かう方向のいずれかに移動する。
【0055】
また、押圧体30は、緩み止め部材31を緩めた状態とすることで、移動可能な状態となり、締めた状態とすることで、移動しない状態(移動が非常に困難な状態)となる。
すなわち、緩み止め部材31は、押圧体30を移動させる移動時状態と、押圧体30を移動させない非移動時状態とを切り替える切り替え用の部材として機能する。
【0056】
固定板側挿通孔22は、開口形状が略四角形状で搬送方向に延びる長孔であり、固定板本体部15を厚さ方向に貫通する貫通孔となっている。
【0057】
続いて、フレーム部材2にローラ部材3とベルト部材4を固定する際の手順について説明する。
【0058】
まず、2つのフレーム部材2に対して一方のローラ部材3を固定した状態とし、
図5(a)で示されるように、他方のローラ部材3の軸部材3bを軸部材挿通孔10に挿通した状態とする。
より具体的には、軸部材挿通孔10のうち、第1溝部10aの端部近傍であって、搬送方向の中心側に位置する端部近傍に挿通した状態とする。この状態で、2つのローラ部材3にベルト部材4を懸架する。
【0059】
そして、軸部材挿通孔10に挿通した軸部材3bを移動させ、第1溝部10aに挿通された状態から連結溝部10cに挿通された状態へと移行させ、さらに、連結溝部10cに挿通された状態から第2溝部10bに挿通された状態へ移行させる。
すなわち、軸部材3bを軸部材挿通孔10の延び方向に沿って移動させていき、第2溝部10bの端部(搬送方向における中央側端部であり、
図5(a)の左端部)まで移動させる。
【0060】
なお、軸部材3bの到達位置となる第2溝部10bの端部では、その内周面の形状が、軸部材3bの外周面の一部分の形状と略同形となっている。
したがって、軸部材3bを到達位置まで移動させると、軸部材3bが搬送方向の端部側(
図5(a)では右側)から嵌り込んだ状態となる。すなわち、軸部材3bの外周面の一部であり、搬送方向の中央側に位置する部分が、第2溝部10bの端部に嵌り込んだ状態となる。
【0061】
また、軸部材3bの到達位置は、軸部材挿通孔10の挿入位置(第1溝部10aの搬送方向の中心側に位置する端部近傍)よりも上方であり、搬送方向の端部よりに位置している。
なお、この到達位置は、第2溝部10bと連結溝部10cの連結部分から、搬送方向の中心側に離れた位置にある。このため、到達位置に配された軸部材3bが、誤って連結溝部10cに入り込んでしまい、挿入位置へ戻ってしまうという問題の発生を抑制できる。
【0062】
この状態で、
図5(b)で示されるように、固定部材5を取り付ける。詳細には、フレーム部材2の取付用孔14と固定部材5の取付用孔25を重ね合わせ、これらにねじ等の締結要素を挿通して、一体に固定する。
このとき、軸部材3bを固定板側挿通孔22に挿通した状態とする。
【0063】
すなわち、
図6で示されるように、固定板側挿通孔22と第2溝部10bがベルトコンベヤ1の短手方向で重なった状態となり、これらの双方に軸部材3bが挿通された状態となる。
具体的に説明すると、軸部材挿通孔10の外側(ベルトコンベヤ1の短手方向における外側)に固定部材5が配されることで、固定部材5が軸部材挿通孔10の略全ての部分を外側から覆った状態となる。言い換えると、軸部材挿通孔10のうちで、固定板本体部15と重ならない部分と、固定板本体部15と重なる部分であって固定板側挿通孔22と重なる部分が外部に露出する露出部分となり、他の部分が非露出部分となる。
そして、軸部材3bは、軸部材挿通孔10の露出部分のうち、固定板側挿通孔22と重なる部分に挿通された状態となる。
【0064】
固定部材5の固定板側挿通孔22が形成されている部分では、固定板側挿通孔22と第2溝部10bが重なることで搬送方向に延びる連通孔が形成され、軸部材3bがこの連通孔の内側で移動可能となっている。言い換えると、固定部材5は、軸部材3bを固定板側挿通孔22と重なる露出部分でのみ移動可能とし、露出部分から非露出部分への移動を阻止する移動規制部材として機能する。
また、軸部材3bは、その一部が、固定板側挿通孔22の外側開口面(ベルトコンベヤ1の短手方向における外側に位置する開口面)からさらに外側へ突出した状態となる。
【0065】
この状態で、押圧体30を軸の周方向に回転させることにより、押圧体30の頭部を搬送方向に移動させる。すなわち、押圧体30の頭部を軸部材3bに接触させた状態で、搬送方向における端部側(
図6における右側)に移動させ、軸部材3bを押圧する。このことにより、軸部材3bが押圧体30の移動方向と同方向へ移動する。
そして、軸部材3bを本来の設置位置まで移動させた状態で、緩み止め部材31を締め付けることで、押圧体30の位置を固定する。
本実施形態では、このように押圧体30で軸部材3bを押圧して移動させることで、軸部材3bの微細な位置調整が可能となっている。
【0066】
ところで、上記した実施形態において、軸部材3bを軸部材挿通孔10に挿通して移動させたが、この軸部材3bの移動は、コンベヤローラ取付用治具38(
図7(a)参照)を使用して実施してもよい。
【0067】
コンベヤローラ取付用治具38は、
図7(a)で示されるように、略F字板状の治具本体40と、この治具本体40と一体に形成される治具側係合部41を備えた構造となっている。
治具本体40は、略直線状に延びる第1板状部40aと、この第1板状部40aと一体に形成される第2板状部40b、第3板状部40cを備えている。
【0068】
第2板状部40bは、第1板状部40aの長手方向における一端部において、側方(第1板状部40aの長手方向と交わる方向)のうちの一方へ突出する部分である。そして、第3板状部40cは、第1板状部40aの長手方向における一端部よりも中心よりの位置から、第2板状部40bと同様に、側方のうちの一方へ突出する部分となっている。
【0069】
このように第2板状部40b、第3板状部40cは、第1板状部40aの長手方向で離れた位置に配され、それぞれが側方に突出しており、その間に、軸部材3b(
図5等参照)の一部を挿入可能な軸部材配置部43が形成されている。
すなわち、軸部材配置部43は、第2板状部40bの突出端部分と第3板状部40cの突出端部分の間から軸部材3bを挿入可能な部分であり、第1板状部40aの一部と、第2板状部40bの一部と、第3板状部40cの一部によって囲まれた部分である。
【0070】
また、軸部材配置部43は、周囲を囲む面の一部に、軸部材3bの外周面の一部と係合可能な嵌合面部43aを備えた構造となっている。この嵌合面部43aは、軸部材3bの外周面の一部と同形の面となっている。
【0071】
治具側係合部41は、治具本体40の一主面から外側へ突出する突起状部分であり、その突出方向が治具本体40の厚さ方向と同方向となっている。なお、本実施形態では、治具側係合部41は、略円柱状(棒状)の突起部分となっている。
【0072】
なお、このコンベヤローラ取付用治具38を使用する場合、
図7(b)で示されるように、上記したフレーム部材2に対して治具係合部45を形成する。
本実施形態では、治具係合部45は、側壁板部2cに形成される貫通孔であり、側壁板部2cを厚さ方向に貫通する孔である。
具体的には、治具係合部45は、軸部材挿通孔10と近接する位置であり、連結溝部10cよりも搬送方向における中央側であって、第1溝部10a、第2溝部10bの間に位置する部分に形成されている。
【0073】
そして、コンベヤローラ取付用治具38を使用する場合には、
図8(a)で示されるように、治具側係合部41をフレーム部材2の治具係合部45に挿通した状態とする。そして、コンベヤローラ取付用治具38の一部を軸部材3bに当接させた状態とする。なお本実施形態では、軸部材3bの外周面の一部を嵌合面部43aに添え当て、密着させた状態とする。すなわち、軸部材3bの外周面の一部を嵌合面部43aに係合させた状態(はめ込んだ状態)とする。言い換えると、嵌合面部43aは、軸部材3bの一部と係合するための係合部(第3係合部)として機能する。
【0074】
この状態で、コンベヤローラ取付用治具38を回転させ、コンベヤローラ取付用治具38によって軸部材3bを移動方向へ押圧していく(
図8(b)参照)。
このように、コンベヤローラ取付用治具38によって軸部材3bを移動させると、軸部材3bを容易に移動できるので、好ましい。
【0075】
上記した実施形態では、軸部材挿通孔10のうち、軸部材3bの挿入位置となる第1溝部10aが、到達位置となる第2溝部10bよりも下方に位置する例を示した。また、これらを連結する連結溝部10cが湾曲しつつ延びる例を示した。
しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
例えば、
図9(a)で示されるように、第1溝部110aが第2溝部110bよりも上方に位置してもよい。また、連結溝部110cが直線状に延びるものであってもよい。
【0076】
上記した実施形態では、押圧体30の頭部を軸部材3bに接触させ、頭部によって軸部材3bを押圧する例を示したが、
図9(b)で示されるように、押圧体30の軸部によって軸部材3bを押圧する固定部材105としてもよい。
【0077】
また、上記した実施形態では、コンベヤローラ取付用治具38に突起状(棒状)の治具側係合部41を設け、フレーム部材2に貫通孔である治具係合部45を形成した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。
例えば、フレーム部材2に突起状の係合部を設け、コンベヤローラ取付用治具38に貫通孔(又は有底孔)状の係合部を設けてもよい。また、フレーム部材2とコンベヤローラ取付用治具38の双方に孔状の係合部を設け、棒状部材を別途形成してもよい。すなわち、コンベヤローラ取付用治具38の使用時に棒状部材をフレーム部材2とコンベヤローラ取付用治具38の係合部に挿通する構造であってもよい。
すなわち、使用時に2つの係合部が直接又は他部材を介して係合し、支点(回転軸)を形成すればよい。
【0078】
上記した実施形態では、ベルトコンベヤ1のフレーム部材2にローラ部材3を固定する例を示したが、本発明のコンベヤローラの固定構造は、ローラコンベヤ等の他のコンベヤ装置に採用しても構わない。
【0079】
上記した実施形態では、第1溝部10aの長手方向の長さを第2溝部10bよりも長いものとする例を示した。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、第1溝部と第2溝部の長手方向の長さを同一のものとしてもよい。
すなわち、第1溝部及び第2溝部は、一方が他方よりも長手方向の長さが長いものであってもよく、同一の長さであってもよい。