特許第6979703号(P6979703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979703
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】油圧装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/24 20060101AFI20211202BHJP
   F03C 1/24 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   F04B1/24
   F03C1/24
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-550437(P2018-550437)
(86)(22)【出願日】2017年5月17日
(65)【公表番号】特表2019-516897(P2019-516897A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2017061851
(87)【国際公開番号】WO2017198718
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2020年5月14日
(31)【優先権主張番号】16170442.4
(32)【優先日】2016年5月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504265628
【氏名又は名称】インナス・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】INNAS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・アウグスティヌス・ヨハネス・アフテン
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/083163(WO,A1)
【文献】 特表平10−512644(JP,A)
【文献】 特開2009−097513(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0196768(US,A1)
【文献】 特表2005−538283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01C 21/08
F01C 21/10
F04B 1/24
F03C 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧装置(1)であって、
ハウジング(27)、
第1の回転軸(4)の周りを回転可能に前記ハウジング(27)内に取り付けられ、前記第1の回転軸(4)に垂直に伸びるフランジ(8)を有するシャフト(2)、
前記第1の回転軸(4)周りに等角度間隔で前記フランジ(8)に固定された複数のピストン(9)、
及びスリーブ・ボトム(12)とスリーブ・ジャケット(13)をそれぞれ含み、容量が変化する圧縮チャンバ(11)を前記ピストン(9)と協働してそれぞれ形成する複数の円筒形スリーブ(10)を備え、
前記シャフト(2)が回転すると、前記圧縮チャンバ(11)の容量が前記スリーブ(10)内部の前記ピストン(9)の下死点と上死点との間で変化するように、前記円筒形スリーブ(10)は、前記第1の回転軸(4)と鋭角で交差する第2の回転軸周りに回転可能であって、
それぞれの前記ピストン(9)は、協働する前記スリーブ・ジャケット(13)の内部でシーリング・ラインを形成するように、外側がボール形状で、内側がキャビティ(21)を囲む周壁を含むピストン・ヘッド(14)を有し、
前記圧縮チャンバ(11)が一定の圧力であるとき、前記スリーブ・ジャケット(13)の前記シーリング・ラインでの径方向の変形が、前記下死点から、前記スリーブ・ボトム(12)と前記シーリング・ラインとの間の距離が前記下死点における前記スリーブ・ボトム(12)と前記シーリング・ラインとの間の距離の50%よりも小さい位置まで変動するピストンの位置で、一定であるように、
それぞれの前記スリーブ・ジャケット(13)は、薄い壁を有し、及び/又は前記スリーブ・ボトム(12)に対して弾性的に可動して、
前記円筒形スリーブ(10)は、単一の部品であることを特徴とする油圧装置(1)。
【請求項2】
径方向の変形は、前記スリーブ・ボトム(12)と前記シーリング・ラインとの間の距離が前記下死点における前記スリーブ・ボトム(12)と前記シーリング・ラインとの間の距離の40%よりも小さい位置で、一定である、請求項1に記載の油圧装置(1)。
【請求項3】
前記上死点における前記スリーブ・ボトム(12)と前記シーリング・ラインとの間の距離が、前記下死点における前記スリーブ・ボトム(12)と前記シーリング・ラインとの間の距離の30%よりも小さい、請求項1又は2に記載の油圧装置(1)。
【請求項4】
前記スリーブ(10)は鉄から形成され、
前記スリーブ・ジャケット(13)の前記壁の厚みは1.5mmよりも小さい、請求項1から3までのいずれかに記載の油圧装置(1)。
【請求項5】
前記スリーブ・ジャケット(13)の前記壁の厚みは、前記ピストン・ヘッド(14)の前記周壁の最大の厚みよりも小さい、請求項1から4までのいずれかに記載の油圧装置(1)。
【請求項6】
前記スリーブ・ボトム(12)の厚みは、前記スリーブ・ジャケット(13)の前記壁の厚みの60%よりも小さい、請求項1から5までのいずれかに記載の油圧装置(1)。
【請求項7】
前記スリーブ・ボトム(12)は中心貫通穴を有し、
前記圧縮チャンバ(11)は、前記貫通穴を通して、前記スリーブ(10)を支持するバレル・プレート(15)の協働する流路(19)に通じ、
前記貫通穴の径は前記スリーブ・ジャケット(13)の内径の70%よりも大きい、請求項1から6までのいずれかに記載の油圧装置(1)。
【請求項8】
前記スリーブ・ジャケット(13)の前記壁の厚みは、前記スリーブ・ジャケット(13)の外径の13%よりも小さく、及び/又は前記スリーブ・ジャケット(13)の長さの13%よりも小さい、請求項1から7までのいずれかに記載の油圧装置(1)。
【請求項9】
前記スリーブ(10)は、前記スリーブ・ジャケット(13)と前記スリーブ・ボトム(12)との間の遷移部で局所的に減少した壁の厚み(22)を有する、請求項1から8までのいずれかに記載の油圧装置(1)。
【請求項10】
前記局所的に減少した壁の厚み(22)は前記スリーブ・ジャケット(13)に位置する、請求項9に記載の油圧装置(1)。
【請求項11】
前記局所的に減少した壁の厚み(22)は、前記スリーブ・ジャケット(13)の内側と外側に位置する反対の周状の窪みによって形成される、請求項10に記載の油圧装置(1)。
【請求項12】
前記局所的に減少した壁の厚み(22)は前記スリーブ・ボトム(12)に位置する、請求項9に記載の油圧装置(1)。
【請求項13】
前記局所的に減少した壁の厚み(22)は、前記スリーブ(10)の内側に位置する周状の窪みによって形成される、請求項12に記載の油圧装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の油圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、流動力協会による第50回流動力米国会議の会報である流動力米国会議会報の337〜348頁記載のペーテル・A・J・アフテンの2005年流動力米国会議I05−10.2「カップ・ポンプを浮動させるマルチ・ポンプの容積の損失」から知られている。この文献は、スリーブ・ジャケットの径方向の変形が、ピストンがスリーブに挿入される深さに応じることを開示する。一方、シーリング・ラインでの径方向の拡がりは、スリーブ内部における異なるピストンの位置でほぼ一定になり得る。さらに、この文献は、ピストン・ヘッドの外側の非対称な静圧荷重により、圧縮段階中、すなわちピストン・ヘッドとスリーブ・ボトムとの間の距離が減少するとき、薄肉のピストン・ヘッドが楕円形状に変形することを開示する。ピストンの膨張は、作動状態で、圧縮段階中のピストン・スリーブの膨張にほぼ従う。そのため、シーリング・ラインにおけるピストン・ヘッドとスリーブ・ジャケットとの間の漏れの流量は最小になる。
【0003】
スリーブ・ボトムが、スリーブ・ボトムに隣接しているスリーブ・ジャケットの一部の剛性の増加をもたらすため、スリーブ・ボトムとピストン・ヘッドとの間の距離が小さくなるとき、シーリング・ラインにおけるスリーブ・ジャケットの径方向の変形が減少する。そのため、すなわち上死点がスリーブ・ボトムの近くにある場合、ピストン及びスリーブ・ジャケットはスリーブ・ボトムの近くで互いに傷つけ得る。このため、ピストン及び協働するスリーブの寸法は、ピストン・ヘッド及びスリーブ・ボトムが互いに近づく致命的な状態に基づいて、合わせられている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、ピストンと協働するスリーブとの間で厳しい公差を有し、ピストン・ヘッドとスリーブ・ジャケットとの間で傷つけ合う虞を最小にする油圧装置を提供することである。
【0005】
この目的は、本発明に係る油圧装置により達成される。本発明に係る油圧装置は、それぞれのスリーブ・ジャケットは、薄い壁を有し、及び/又はスリーブ・ボトムに対して弾性的に可動することを特徴とする。そのため、圧縮チャンバが一定の圧力であるとき、スリーブ・ジャケットのシーリング・ラインでの径方向の変形が、下死点から、スリーブ・ボトムとシーリング・ラインとの間の距離が下死点におけるスリーブ・ボトムとシーリング・ラインとの間の距離の50%よりも小さい位置まで変動するピストンの位置で、実質的に一定である。
【0006】
スリーブ・ジャケットの相対的に薄い壁により、スリーブ・ジャケットの剛性は相対的に低い。そのため、相対的に長い距離をかけて下死点から上死点へ向かう異なるピストンの位置で、圧縮チャンバが一定の圧力であるとき、径方向の変形は実質的に一定なままである。スリーブ・ジャケットがスリーブ・ボトムに対して径方向に弾性的に可動するとき、同様の効果が得られる。これは、スリーブ・ボトムに近づくと、ピストン・ヘッドとスリーブ・ジャケットとの間の接触の虞が相対的に低くなることを示す。さらに、相対的に小さな剛性が、ピストン・ヘッドとスリーブ・ジャケットとの間の上死点の近傍における比較的厳しい公差を可能にする。ピストン・ヘッドがスリーブ・ジャケットに接触する傾向であったとしても、スリーブ・ジャケットは、相対的に小さな力のピストン・ヘッドによって、変形し、及び/又はスリーブ・ボトムに対して可動し得る。このとき、ピストンは、より小さい楕円形状に変形し得る。また、スリーブ・ジャケットは、より大きな楕円形状に変形し得る。剛性が小さいため、スリーブ・ボトムとシーリング・ラインとの間のスリーブ・ジャケットの径方向の変形は相対的に大きくなり得ることが記載される。一方、これは、シーリング・ラインでの径方向の変形である場合、関連しない。剛性が小さいことは、漏れの流量を定め、スリーブ・ボトムとシーリング・ラインとの間の径方向の変形を定めない。スリーブが単一の部品であってもよいことが言及されている
【0007】
スリーブ・ジャケットの相対的に薄い壁のさらなる利点は、スリーブの相対的に小さい重量である。特に、高回転速度で作動する油圧装置のために、スリーブにかかる遠心力は、最小になり、バレル・プレートに対してスリーブの減少傾向を偏らせる。スリーブは、バレル・プレートによって支持される。
【0008】
実質的に一定という用語は、平均値の±10%又は±5%の間で変化するように定められ得る。
【0009】
径方向の変形は、スリーブ・ボトムとシーリング・ラインとの間の距離が下死点におけるスリーブ・ボトムとシーリング・ラインとの間の距離の40%よりも小さい位置で、実質的に一定であってもよい。
【0010】
上死点におけるスリーブ・ボトムとシーリング・ラインとの間の距離は、下死点におけるスリーブ・ボトムとシーリング・ラインとの間の距離の30%よりも小さくてもよい。これは、上死点におけるシーリング・ラインがスリーブ・ボトムの近傍にあってもよいことを示す。より大きな厚みの壁を有するスリーブ・ジャケットを使用すると、同等で一定な径方向の変形プロファイルを下死点から長い距離を経て得るために、スリーブ・ボトムと上死点との間の距離が増加する。一方、これは、スリーブ・ボトムと上死点との間で、より大きなデッド・ボリュームとなる。これは、効率とノイズ・エミッションの観点から不利となり得る。
【0011】
実際には、スリーブは鉄から形成され得る。一方、スリーブ・ジャケットの壁の厚みは1.5mmより小さくてもよい。例えば、スリーブ・ジャケットは、1.1mmの壁の厚み及び11.8mmの内径を有してもよい。一方、スリーブの長さは15mmであってもよい。
【0012】
より一般的な条件では、スリーブ・ジャケットの壁の厚みは、スリーブ・ジャケットの外径の13%よりも小さくてもよく、及び/又はスリーブ・ジャケットの長さの13%よりも小さくてもよい。例えば、スリーブ・ジャケットの壁の厚みは、スリーブ・ジャケットの外径の5〜13%の範囲である、又はスリーブ・ジャケットの外径の8〜12%の範囲である。
【0013】
スリーブは、スリーブ・ジャケットとスリーブ・ボトムとの間の遷移部で局所的に減少した壁の厚みを有する場合、スリーブ・ジャケットはスリーブ・ボトムに対して弾性的に可動し得る。この場合、スリーブ・ジャケットは極めて薄い壁を有する必要がない。実際には、局所的に減少した壁の厚みは、スリーブ・ジャケットとスリーブ・ボトムとの間で弾性的な回転として機能する。
【0014】
局所的に減少した壁の厚みは、スリーブ・ジャケットに位置し、例えばスリーブ・ジャケットの内側と外側に位置する反対の周状の窪みによって形成され得る。
【0015】
代わりに、局所的に減少した壁の厚みは、スリーブ・ボトムに位置し、例えばスリーブの内側に位置する周状の窪みによって形成され得る。
【0016】
第1の回転軸と第2の回転軸との間の角度が8〜15°の最大値を有してもよいことが記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、例として、本発明の実施形態を示す概略図を参照して後述される。
図1図1は、本発明に係る油圧装置の実施形態の断面図である。
図2図2は、拡大された図1の実施形態の一部の断面図である。
図3図3は、一定の圧力での、スリーブ・ジャケットの径方向の変形のシミュレーション結果の図である。
図4図4は、スリーブの別の実施形態の断面図である。
図5図5は、スリーブの別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、ポンプ又は油圧モータのような油圧装置1の内部部品を示す。これらの内部部品は公知の方法でハウジング27に収まる。油圧装置1は、ハウジング27の両側でベアリング3によって支持されているシャフト2を備える。また、シャフト2は、第1の回転軸4の周りを回転可能である。ハウジング27は、開口を有する片側にシャフト・シール5を公知の方法で備える。そのため、歯付きシャフト端6を備えるシャフト2の端部が、ハウジング27から突出する。油圧装置1がポンプであるとき、モータが歯付きシャフト端6に連結され得る。また、油圧装置1がモータであるとき、駆動手段が歯付きシャフト端6に連結され得る。
【0019】
油圧装置1は、ハウジング27の内側に互いに所定の距離をあけて取り付けられているフェイス・プレート7を備える。フェイス・プレート7は、フェイス・プレート7の回転方向にハウジング27に対する固定位置を有する。シャフト2はフェイス・プレート7の中心貫通穴を貫通する。
【0020】
シャフト2は、第1の回転軸4に垂直に伸びるフランジ8を備える。複数のピストン9が第1の回転軸4周りに等角度間隔でフランジ8の両側に固定されている。この場合、14個のピストン9がいずれかの片側に固定されている。ピストン9は、第1の回転軸4と平行に伸びる中心線を有する。フェイス・プレート7の平面は、互いに角度を付けられ、フランジ8の平面に対しても角度を付けられている。
【0021】
それぞれのピストン9は、円筒形スリーブ10と協働して容量が変化する圧縮チャンバ11を形成する。図1に示すような油圧装置1は28個の圧縮チャンバ11を有する。円筒形スリーブ10はスリーブ・ボトム12及びスリーブ・ジャケット13を備える。それぞれのピストン9はボール形状のピストン・ヘッド14によってスリーブ・ジャケット13の内壁に直接シールされている。図2は、油圧装置1のピストン・ヘッド14及びスリーブ10を含む、拡大された単一のピストン9を示す。
【0022】
それぞれの円筒形スリーブ10のスリーブ・ボトム12は、それぞれのボール・ヒンジ16によってシャフト2の周りに取り付けられ、キー17によってシャフト2に連結されている、それぞれのバレル・プレート15によって支持されている。その結果として、バレル・プレート15はシャフト2と共に作動状態で回転する。バレル・プレート15は、第1の回転軸4に対して角度を付けられているそれぞれの第2の軸の周りで回転する。また、これは、円筒形スリーブ10がそれぞれの第2の回転軸の周りを回転することを示す。そのため、シャフト2を回転させると、複数の圧縮チャンバ11の容量が変化する。バレル・プレート15の回転時、それぞれの円筒形スリーブ10は、合成された平行移動及び回転移動を協働するピストン9の周りで行う。従って、それぞれのピストン・ヘッド14の外側はボール形状である。ボール形状は、ピストン9とスリーブ・ジャケット13との間にシーリング・ラインを形成する。図2は、スリーブ・ボトム12と平行に伸びる平面SLによってシーリング・ラインの位置を示す。ピストン9は円錐形である。また、ピストン9の径は、協働する円筒形スリーブ10のピストン9に対する相対移動を可能にするようにフランジ8に向かって減少する。
【0023】
フランジ8から離れる方向に向かう、それぞれのバレル・プレート15の片側は、フェイス・プレート7のそれぞれの支持面によって支持されている。シャフト2の回転時、フランジ8に対するフェイス・プレート7の支持面の傾斜方向により、バレル・プレート15はボール・ヒンジ16の周りを回転する。第1の回転軸4とそれぞれの第2の回転軸との間の角度は実際には約9度であるが、より大きくも、又はより小さくもなり得る。
【0024】
バレル・プレート15は、シャフト2の穴に取り付けられたばね18によってそれぞれのフェイス・プレート7に押しつけられている。圧縮チャンバ11は、それぞれのスリーブ・ボトム12の中心貫通穴によって、バレル・プレート15の協働する流路19に通じる。バレル・プレート15の流路19は、ハウジング27の高圧ポート及び低圧ポート(図示せず)にフェイス・プレート7の流路によって通じる。
【0025】
図2は、この実施形態において、ピストン9が、フランジ穴に圧入されるピストン・ピン20によってフランジ8に固定されていることを示す。スロット状のキャビティ21がピストン・ピン20とピストン・ヘッド14の周壁の内側との間にある。これは、作動状態で、油圧油が、キャビティ21に入り、ピストン・ヘッド14を変形するようにピストン・ヘッド14の周壁に力を加えることを示す。ピストン・ヘッド14の外側の油圧荷重が回転対称でないため、圧縮段階中に、ピストン・ヘッド14は楕円形状を有する。
【0026】
図1は、図1の上側のピストン9は上死点にあり、図1の下側のピストン9は下死点にあることを示す。図2は、ピストン9が上死点にあることを示す。スリーブ10内部のピストン9の傾斜方向により、シーリング・ラインは、スリーブ・ボトム12から所定の距離に位置することが示され得る。実際には、一定の吐出量を有する油圧装置の場合、この距離は、下死点におけるスリーブ・ボトム12とシーリング・ラインとの間の距離の30%よりも小さい。可変な吐出量を有する油圧装置の場合、第1の回転軸4と第2の回転軸との間の角度が最大になるとき、上記距離は適用される。実際には、最も大きな角度は10°であってもよい。上死点におけるシーリング・ラインと下死点におけるシーリング・ラインとの間の距離は、フランジ8に対するフェイス・プレート7の支持面の向き、及びピストン9と第1の回転軸4との間の距離によって定められる。
【0027】
図2に示す実施形態では、スリーブ・ジャケット13は、非常に薄い、例えば1.5mmよりも薄い壁を有する。これは、図3に示すようなシミュレーションの結果によって示される、油圧装置1の機能についての驚くほど有利な効果を有するように見える。スリーブ・ジャケット13の径方向の変形の計算が、2.25mmの厚みの壁を有するスリーブ・ジャケット13に対して、及び1.10mmの厚みの壁を有するスリーブ・ジャケット13に対して、500barの圧力のスリーブ10の内部におけるピストン9の異なる複数の位置で行われる。両方のスリーブ・ジャケット13の内径は11.8mmである。また、スリーブ10の長さは15mmである。最も厚い側壁を有するスリーブ10のスリーブ・ボトム12は1.5mmの厚みを有する。また、このスリーブ・ボトム12の中心貫通穴は7.5mmの径を有する。最も薄い側壁を有するスリーブ10のスリーブ・ボトム12は0.5mmの厚みを有する。また、このスリーブ・ボトム12の中心貫通穴は9.5mmの径を有する。径方向の変形がシーリング・ラインで計算される。図3は、両方の壁の厚みについて、TDCに近づいて、壁の厚みが減少するより前に、下死点BDCから上死点TDCまでで見られる径方向の変形は実質的に一定なままであることを示す。より薄い壁を有するスリーブ・ジャケット13は、より厚い壁を有するスリーブ・ジャケット13より大きい絶対的な変形を示す。また、スリーブ・ボトム12があることで、スリーブ・ジャケット13の剛性が増加するため、ピストン9とスリーブ・ボトム12が互いに近づくとき、径方向の変形が減少することが明らかである。
【0028】
異なる壁の厚みを有する複数のスリーブ・ジャケット13の間における重大な違いは、長さが、最も薄い壁を有するスリーブ・ジャケット13に対して相対的に長いことである。径方向の変形は、下死点から測定されると、この長さに沿って実質的に一定なままである径方向の変形はスリーブ・ボトム12から8mmの位置で定常な値に達する。一方、薄いスリーブ・ジャケットの場合、変形がスリーブ・ボトム12から5mmの位置で定常な値に達する。
【0029】
図2に示す実施形態のスリーブ・ジャケット13の薄い壁により、実際には、スリーブ・ジャケット13の変形はスリーブ・ボトム12からある程度離れる。同様の効果がスリーブの別の実施形態によって得られる。
【0030】
図4及び図5はスリーブ10の別の実施形態を示す。それぞれのスリーブ10は、スリーブ・ジャケット13とスリーブ・ボトム12との間の遷移部で局所的に減少した壁の厚み22を有する。図4の実施形態では、局所的に減少した壁の厚み22は、スリーブ13に位置し、スリーブ・ジャケット13の内側及び外側に位置する反対の周状の窪み又は溝によって形成される。図5の実施形態では、局所的に減少した壁の厚み22は、スリーブ・ボトム12に位置し、スリーブ10の内側に位置する周状の窪みによって形成される。局所的に減少した壁の厚み22があることで、スリーブ・ジャケット13は、スリーブ・ボトム12に対して弾性的に可動する。
【0031】
上述のことから、スリーブ・ジャケットの薄い壁、及び/又はスリーブ・ボトムに対するスリーブ・ジャケットの弾性可動性により、スリーブ・ジャケットのスリーブ・ジャケット変形はスリーブ・ボトムに影響されない、又は限られた範囲内でスリーブ・ボトムに影響されることが結論を出され得る。
【0032】
本発明は、図示され、上述される実施形態に制限されない。本発明の実施形態は、請求項及び技術的な均等物の範囲内の異なる方法で変化され得る。
図1
図2
図3
図4
図5