(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダ型のハウジングと、該ハウジング内に軸線方向に移動可能に配在された弁体と、該弁体が対接せしめられるとともに複数のポートが軸線方向に並んで開口せしめられた弁シート面と、を備え、
前記弁体は、前記複数のポートのうち隣り合うポートを連通させる大きさのUターン連通路を有し、該Uターン連通路を介して前記ポート間を選択的に連通させる複数の連通状態をとり得るようにされている流路切換弁であって、
前記弁体が所定の連通状態をとるとき、前記隣り合うポートのうち少なくとも出口側となるポートの一部を塞ぐように、前記Uターン連通路の開口縁部の軸線方向端部が前記ポートの周縁よりも内側に配置されるとともに、前記ポートの全開口に対する塞ぎ率は、13%までであり、
前記弁体によって前記隣り合うポートの出口側となるポートの一部のみが塞がれるようにされていることを特徴とする流路切換弁。
前記Uターン連通路の開口縁部は、軸線方向端部に位置する一対の半円部と、軸線方向に垂直な方向の端部に位置して軸線方向に沿って延びる一対の直線部とで構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の流路切換弁。
前記Uターン連通路の開口縁部の軸線方向端部は、前記弁シート面に摺接するシール面に垂直な面で構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の流路切換弁。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒートポンプ式冷暖房システムの流路(流れ方向)切換手段として、四方切換弁や六方切換弁等の流路切換弁はよく知られている。この種の流路切換弁としては、シリンダ型のハウジング内にスライド弁体がスライド可能に配在されたスライド式のものと、円筒状のハウジング内に回転弁体が回動可能に配在されたロータリー式のものとがある。また、この流路切換弁に、ハウジングに設けられたポート間を選択的に連通すべく、隣り合うポートを連通させるUターン形状の連通空間(以下、Uターン連通路という)が形成された弁体を用いることも既知である(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
図7に、従来例の流路切換弁を示す。図示従来例の流路切換弁は、例えばヒートポンプ式冷暖房システムにおいて流路切換用として使用されるスライド式の四方切換弁1'であり、シリンダ型のハウジング80、該ハウジング80内に設けられた弁シート部材81、該弁シート部材81の上面に形成された弁シート面82に開口する、左右方向に横並びに設けられたポートpC、ポートpS(低圧ポート)、及びポートpE、並びに、弁シート面82上を左右方向に摺動可能に配在された断面逆立椀形状の弁体(スライド弁体)10を有する。
【0004】
弁体10は、前記弁シート面82に対接するシール面12を有し、弁体10内には、前記3つのポートpC、pS、pEを選択的に連通させるべく、言い換えれば、ポートpSとポートpEとを連通させる第1の連通状態と、ポートpSとポートpCとを連通させる第2の連通状態とを作り出すべく、Uターン連通路15が設けられている。
【0005】
ハウジング80の両端には、蓋部材87A、87Bが気密的に固着され、ハウジング80内は、左右2つのパッキン付きピストン84A、84Bにより気密的に仕切られて、弁室83と、2つの作動室86A、86Bとが画成されている。弁室83には、圧縮機の吐出側に接続されるポートpD(高圧ポート)が開口せしめられている。
【0006】
2つのピストン84A、84Bは、横長矩形板状の連結体70により一体移動可能に連結されている。連結体70には、弁体10が下側から摺動自在に嵌合せしめられる開口72が形成されており、弁体10は、2つのピストン84A、84Bの往復移動に伴って連結体70の開口72部分に押動され、その内部に形成されたUターン連通路15を介してポートpEとポートpSとを連通させる右端位置(第1の連通状態)と、ポートpCとポートpSとを連通させる左端位置(第2の連通状態)との間を摺動するようにされている。なお、
図7は、第2の連通状態を示している。
【0007】
また、連結体70には、前記開口72の左右に円形開口75が形成されている。
【0008】
前記2つの作動室86A、86Bは、四方パイロット弁(
図7では不図示、
図1に図示)を介して選択的に圧縮機吐出側と圧縮機吸入側とに接続され、2つの作動室86A、86Bの圧力差を利用してピストン84A、84Bを移動させ、それに伴って弁体10を弁シート面82上で摺動させて流路の切り換えを行うようにされている。
【0009】
また、上記のようなUターン連通路15が形成された弁体10(のシール面12)は、その外側(弁室83内)を流通する高圧流体とその内側(Uターン連通路15内)を流通する低圧流体との圧力差により弁シート面82に強く押し付けられ、これによって、Uターン連通路15のシールがなされる(シール性が確保される)ようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、例えば通常のスライド式の流路切換弁においては、弁口としてのポートの一部を塞ぐと流路の開口面積(流体通過面積)が減少するため、
図7に示す如くに、弁口としてのポートを塞がないように弁体を配置し、これによってCv値(流量に相当)が確保しやすくなると考えられてきた(例えば上記特許文献2も併せて参照)。
【0012】
また、通常、ポートの周縁(内周縁)と弁体の内径部としてのUターン連通路の開口縁部がほぼ面一に重なったときが、最適な流路と考えられてきた。
【0013】
そのため、さらに、Cv値を上げる際には、Uターン連通路の高さを高くし、より綺麗なUターン形状(ターン部分が完全なR形状)にする、あるいは、ポート径(弁口径)を大きくする必要があり、ハウジング外径や配管ピッチの拡大・拡張が必要となり、全体体格の大型化、コストアップの要因となっていた。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、体格の大型化、コストアップを要することなく、Cv値を効果的に向上させることのできる流路切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る流路切換弁は、基本的に、シリンダ型のハウジングと、該ハウジング内に軸線方向に移動可能に配在された弁体と、該弁体が対接せしめられるとともに複数のポートが軸線方向に並んで開口せしめられた弁シート面と、を備え、前記弁体は、前記複数のポートのうち隣り合うポートを連通させる大きさのUターン連通路を有し、該Uターン連通路を介して前記ポート間を選択的に連通させる複数の連通状態をとり得るようにされ、前記弁体が所定の連通状態をとるとき、前記隣り合うポートのうち少なくとも出口側となるポートの一部を塞ぐように、前記Uターン連通路の開口縁部の軸線方向端部が前記ポートの周縁よりも内側に配置されるとともに、前記ポートの全開口に対する塞ぎ率は、13%までであ
り、前記弁体によって前記隣り合うポートの出口側となるポートの一部のみが塞がれるようにされていることを特徴としている。
【0016】
前記塞ぎ率は、好ましくは、9%までである。
【0017】
前記塞ぎ率は、より好ましくは、5%である。
【0020】
別の好ましい態様では、前記Uターン連通路の開口縁部は、軸線方向端部に位置する一対の半円部と、軸線方向に垂直な方向の端部に位置して軸線方向に沿って延びる一対の直線部とで構成される。
【0021】
別の好ましい態様では、前記Uターン連通路の開口縁部の軸線方向端部は、前記弁シート面に摺接するシール面に垂直な面で構成される。
【0022】
また、本発明に係る流路切換弁は、基本的に、筒状のハウジングと、該ハウジング内に移動可能に配在された弁体と、該弁体が対接せしめられるとともに複数のポートが並んで開口せしめられた弁シート面と、を備え、前記弁体は、前記複数のポートのうち隣り合うポートを連通させる大きさのUターン連通路を有し、該Uターン連通路を介して前記ポート間を選択的に連通させる複数の連通状態をとり得るようにされ、前記弁体が所定の連通状態をとるとき、前記隣り合うポートのうち少なくとも出口側となるポートの一部を塞ぐように、前記Uターン連通路の開口縁部の前記隣り合うポートの並設方向端部が前記ポートの周縁よりも内側に配置されるとともに、前記ポートの全開口に対する塞ぎ率は、13%までであり、
前記弁体によって前記隣り合うポートの出口側となるポートの一部のみが塞がれるようにされており、前記弁体として、前記ハウジングの軸線と平行な回転軸線周りに回動可能に配在される回転弁体を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
かかる構成の流路切換弁においては、Uターン連通路の入口側流路に対して出口側流路の方がポート内の圧力バランスに差異が見られ、出口側流路のポート及びその近傍では、内側(つまり、隣り合うポート側)は圧力損失し、外側(つまり、隣り合うポート側とは反対側)よりも若干低圧となる。
【0025】
前記した如くの従来の流路切換弁においては、Uターン連通路の開口縁部の軸線方向端部がポートの周縁と一致する位置もしくはポートの周縁よりも外側に配置され、弁口としてのポートを塞がないように弁体が配置されており、Uターン連通路の出口側端部とポートとは、断面積(流体通過面積)が基本的に変わらない、あるいは、ポート側の方が若干小さいので、入口側流路となるポートから流入してUターン連通路を通過した流体(冷媒)は、出口側流路となるポート内に流出した直後に全体的に(つまり、ポートの内側と外側とで)圧力が低下し始める。すなわち、外側の高圧も、出口側流路となるポート内に流出した直後に圧力損失するため、実際にCv値(流量)を大きくすることは難しくなる。
【0026】
本発明の流路切換弁では、Uターン連通路の開口縁部の軸線方向端部(隣り合うポートの並設方向端部)がポートの周縁よりも内側に配置され、少なくとも出口側流路となるポートの一部を弁体で塞ぐとともに、そのポートの全開口に対する塞ぎ率は、例えば13%まで、好ましくは9%まで、より好ましくは5%とされるので、入口側流路となるポートから流入してUターン連通路を通過した流体(冷媒)は、出口側流路となるポート内に流出した後も圧力低下(特にポートの外側の圧力低下)が少なくて済む。すなわち、外側の高圧は、出口側流路となるポート内に流出した後も圧力損失し難くなるため、前記した従来の流路切換弁と比べて、Cv値(流量)を格段に大きくすることができる。
【0027】
また、本発明の流路切換弁では、ポートの一部を弁体で塞ぐようにすればよく、ハウジング外径や配管ピッチを拡大・拡張する必要はないため、体格の大型化、コストアップを招くことはない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る流路切換弁の一実施形態を示す全体縦断面図である。
図2は、
図1に示される弁体の下面図である。なお、
図2では、シート部材に設けられたポートpC、pS、pEの位置を仮想線で図示している。
【0031】
なお、本明細書において、上下、左右、前後等の位置、方向を表わす記述は、説明が煩瑣になるのを避けるために図面に従って便宜上付けたものであり、実際に冷暖房システム等に組み込まれた状態での位置、方向を指すとは限らない。
【0032】
また、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、各構成部材の寸法に比べて大きくあるいは小さく描かれている場合がある。
【0033】
図示実施形態の流路切換弁は、例えばヒートポンプ式冷暖房システムにおいて流路切換用として使用されるスライド式の四方切換弁1であり、弁体(スライド弁体)10を内蔵する主弁9と、四方パイロット弁8とを備える。
【0034】
主弁9は、シリンダ型(円筒状)のハウジング80、該ハウジング80内に設けられた弁シート部材81、該弁シート部材81の上面に形成された平坦で滑らかな弁シート面82に開口する、左右方向(ハウジング80の長さ又は軸線O方向)に横並びに設けられたポートpC、ポートpS(低圧ポート)、及びポートpE、並びに、弁シート面82上を左右方向に摺動可能に配在された断面逆立椀形状の弁体10を有する。
【0035】
弁体10は、例えば合成樹脂製とされ、前記弁シート面82に対接(対面)するシール面12を有し、弁体10内、つまり、シール面12の内側には、前記3つのポートpC、pS、pEを選択的に連通させるべく、言い換えれば、ポートpSとポートpEとを連通させる第1の連通状態と、ポートpSとポートpCとを連通させる第2の連通状態とを作り出すべく、Uターン連通路15が設けられている。
【0036】
ハウジング80の両端には、蓋部材87A、87Bが気密的に固着され、ハウジング80内は、左右2つの(一対の)パッキン付きピストン84A、84Bにより気密的に仕切られて、弁室83と、2つの作動室86A、86Bとが画成されている。弁室83(図示例では、中央のポートpSに対向する位置)には、圧縮機の吐出側に接続されるポートpD(高圧ポート)が開口せしめられている。
【0037】
2つのピストン84A、84Bは、横長矩形板状の連結体70により一体移動可能に連結されている。連結体70には、弁体10が下側から摺動自在に嵌合せしめられる矩形状の開口72が形成されており、弁体10は、2つのピストン84A、84Bの往復移動に伴って連結体70の開口72部分に押動され、その内部に形成されたUターン連通路15を介してポートpEとポートpS(低圧ポート)とを連通させる右端位置(第1の連通状態)と、ポートpCとポートpS(低圧ポート)とを連通させる左端位置(第2の連通状態)との間を摺動するようにされている。なお、
図1は、第2の連通状態を示している。
【0038】
また、連結体70には、前記開口72の左右、すなわち、弁体10が右端位置(第1の連通状態)をとるとき左側のポートpCの略真上に位置する部位に円形開口75が形成されるとともに、弁体10が左端位置(第2の連通状態)をとるとき右側のポートpEの略真上に位置する部位に円形開口75が形成されている。
【0039】
かかる主弁9において、前記2つの作動室86A、86Bは、四方パイロット弁8及び細管#1〜#4を介して選択的に圧縮機吐出側と圧縮機吸入側とに接続され、2つの作動室86A、86Bの圧力差を利用してピストン84A、84Bを移動させ、それに伴って弁体10を弁シート面82上で摺動させて流路の切り換えを行うようにされている。
【0040】
また、上記のようなUターン連通路15が形成された弁体10(のシール面12)は、その外側(弁室83内)を流通する高圧流体とその内側(Uターン連通路15内)を流通する低圧流体との圧力差により弁シート面82に強く押し付けられ、これによって、Uターン連通路15のシールがなされる(シール性が確保される)ようになっている。
【0041】
次に、上記実施形態の四方切換弁(流路切換弁)1の要部である弁体10周りについて詳細に説明する。
【0042】
本実施形態においては、
図2を参照すればよく分かるように、弁体10の環状のシール面12の内縁部12Cは、左右方向(長手方向)両端部に位置する左右一対の半円部13A、13Bと、前後方向(短手方向)両端部に位置して長手方向に沿って延びており、前記左右一対の半円部13A、13B(の端部同士)を繋ぐ前後一対の直線部14A、14Bとを備える、平面視概略レーストラック形状を有する。
【0043】
前記左右一対の半円部13A、13Bの直径及び前記前後一対の直線部14A、14B同士の間隔は、弁シート面82に開口せしめられたポートpC、pS、pEの口径(内径)よりも若干大きくされている。
【0044】
また、弁体10のシール面12の内側に設けられたUターン連通路15は、下側(つまり、ポートpC、pS、pEが開口した弁シート面82側)が開口した、隣り合うポート(pC−pS、又は、pS−pE)を連通させる大きさの側面視概略逆U字状ないし凹状を有する。
【0045】
このUターン連通路15の開口縁部15Cは、前記したシール面12の内縁部12Cと同様に、左右方向(長手方向)両端部に位置する左右一対の半円部16A、16Bと、前後方向(短手方向)両端部に位置して長手方向に沿って延びており、前記左右一対の半円部16A、16B(の端部同士)を繋ぐ前後一対の直線部17A、17Bとを備える、平面視概略レーストラック形状を有する。
【0046】
前記左右一対の半円部16A、16Bの直径及び前記前後一対の直線部17A、17B同士の間隔は、弁シート面82に開口せしめられたポートpC、pS、pEの口径(内径)よりも若干大きくされているが、左右一対の半円部16A、16B同士の(左右方向の)間隔は、左右一対の半円部13A、13Bの(左右方向の)間隔よりも若干短くされ、前後一対の直線部17A、17Bの(前後方向の)間隔は、前後一対の直線部14A、14B同士の間隔の(前後方向の)間隔よりも若干短くされており、Uターン連通路15の開口縁部15Cは、シール面12の内縁部12Cよりも左右方向(長手方向)長さが若干短くされている。
【0047】
また、本例では、Uターン連通路15の開口縁部15Cの両端部に位置する前記左右一対の半円部16A、16Bは、前記シール面12に略垂直な面で構成されている。
【0048】
前記シール面12の内縁部12Cと前記Uターン連通路15の開口縁部15Cとの間には、テーパ面(面取りともいう)18が設けられている。図示例では、前記テーパ面18は、シール面12に対して略45°傾いた傾斜面で形成されている。
【0049】
なお、本例では、前記Uターン連通路15(の内部空間)は、(テーパ面18が設けられた端部を除いて)一端から他端まで全長にわたって略等しい断面積(通路断面積)を有するように形成されている。
【0050】
弁体10が右端位置をとるとき、シール面12の内縁部12Cにおける左側の半円部13A及びUターン連通路15の開口縁部15Cにおける左側の半円部16Aは出口側となるポートpSの周縁の右側(内側)に位置し、シール面12の内縁部12Cにおける右側の半円部13B及びUターン連通路15の開口縁部15Cにおける右側の半円部16Bは入口側となるポートpEの周縁の左側(内側)に位置する。また、弁体10が左端位置をとるとき、シール面12の内縁部12Cにおける左側の半円部13A及びUターン連通路15の開口縁部15Cにおける左側の半円部16Aは入口側となるポートpCの周縁の右側(内側)に位置し、シール面12の内縁部12Cにおける右側の半円部13B及びUターン連通路15の開口縁部15Cにおける右側の半円部16Bは出口側となるポートpSの周縁の左側(内側)に位置する。また、シール面12の内縁部12Cにおける前後の直線部14A、14B及びUターン連通路15の開口縁部15Cにおける前後の直線部17A、17Bはそれぞれ、3個のポートpC、pS、pEの前側及び後側に位置する。
【0051】
本実施形態では、前記した如くの配置構成をとることにより、弁体10が右端位置(第1の連通状態)及び左端位置(第2の連通状態)をとるとき、Uターン連通路15を介して連通せしめられる(入口側流路及び出口側流路となる)両ポートの一部(外縁部分)が(平面視で視たときに)塞がれることになる(特に、
図2参照)。すなわち、弁体10が右端位置をとるとき、Uターン連通路15の入口側流路となるポートpEの右端部分及び出口側流路となるポートpSの左端部分が塞がれ、弁体10が左端位置をとるとき、Uターン連通路15の入口側流路となるポートpCの左端部分及び出口側流路となるポートpSの右端部分が塞がれる。
【0052】
このような構成の四方切換弁1においては、
図3、
図4に示される如くに、Uターン連通路15の入口側流路に対して出口側流路の方がポート内の圧力バランスに差異が見られ、出口側流路のポート及びその近傍では、内側(つまり、隣り合うポート側)は圧力損失し、外側(つまり、隣り合うポート側とは反対側)よりも若干低圧となり、その後、ポート内を通過するに従って次第に圧力が低下していく。なお、
図3、
図4において、矢印の向きが流れ方向、その矢印の太さが圧力の大きさを表しており、太線矢印の領域が高圧、細線矢印の領域が低圧、その中間太さの矢印の領域が中圧を意味している。
【0053】
従来のように、弁口としてのポートを塞がないように弁体を配置する場合、Uターン連通路の出口側端部とポートとは、断面積(流体通過面積)が基本的に変わらない、あるいは、ポート側の方が若干小さいので、
図4に示される如くに、入口側流路となるポートから流入してUターン連通路を通過した流体(冷媒)は、出口側流路となるポート内に流出した直後に全体的に(つまり、ポートの内側と外側とで)圧力が低下し始める。すなわち、外側の高圧も、出口側流路となるポート内に流出した直後に圧力損失し、その結果、実際にCv値(流量)を大きくすることは難しくなる。
【0054】
一方、本実施形態のように、少なくとも出口側流路となるポート(本例では、弁体10が右端位置をとるときも左端位置をとるときも同じポートpS)の一部を弁体10で塞ぐことにより、
図3に示される如くに、入口側流路となるポート(本例では、弁体10が右端位置をとるときポートpE、左端位置をとるときポートpC)から流入してUターン連通路15を通過した流体(冷媒)は、出口側流路となるポートpS内に流出した後も圧力低下(特にポートpSの外側の圧力低下)が少なくて済む。すなわち、外側の高圧は、出口側流路となるポートpS内に流出した後も圧力損失し難くなり、その結果、Cv値(流量)を格段に大きくすることができる。
【0055】
図5は、弁体10によるポートpSの全開口(ここでは、ポート径(口径)はφ20mm)に対する塞ぎ率とCv値(相対値)との関係を示したものである。なお、本明細書において、塞ぎ率は、以下の数式(1)により算出される割合ないし比率である(数式(1)における閉塞量L及びポート径φDについては
図3参照)。
図5において、塞ぎ率が正の値であるときは、弁体10のUターン連通路15の開口縁部15C(の半円部16A、16B)が出口側となるポート(の周縁)の内側に位置してポートの一部が塞がれている状態、塞ぎ率が負の値であるときは、弁体10のUターン連通路15の開口縁部15C(の半円部16A、16B)がポート(の周縁)の外側に位置している(つまり、ポートは塞がれていない)状態を意味している。なお、
図5におけるCv値は、塞ぎ率が−5%のときのCv値を基準にして(100%として)示している。
[数1]
塞ぎ率(%)=(弁体によるポートの閉塞量L)/(ポート径φD)×100
・・・(1)
【0056】
図5に示されるように、Cv値は、塞ぎ率が0〜5%程度で次第に大きくなり、塞ぎ率が5%程度で最大となり、塞ぎ率が5〜13%程度で次第に小さくなり、塞ぎ率が約13%を超えると基準以下(100%以下)となる。つまり、塞ぎ率が約13%まで(約13%以内)は、外側の高圧は圧力損失し難く(5%程度で最も圧力損失が少ない)、塞ぎ率が約13%を超えると、外側の高圧の損失が大きくなると考えられる。また、塞ぎ率が9%程度で、塞ぎ率が0%のとき(Uターン連通路15の開口縁部15Cにおける両端部に位置する半円部16A、16Bがポートの周縁に一致する位置であって、出口側となるポートの開口面積の減少がないとき)のCv値とほぼ同等となる。
【0057】
すなわち、
図3、
図4、
図5から、弁体10による所定の閉塞状況までは、弁体10に設けられたUターン連通路15によるUターン形状の流れに起因する損失の方が、ポートpSの一部を塞いだことに起因する損失よりも影響が大きくなることが分かった。
【0058】
以上で説明したように、かかる構成の四方切換弁(流路切換弁)1においては、Uターン連通路の入口側流路に対して出口側流路の方がポート内の圧力バランスに差異が見られ、出口側流路のポート及びその近傍では、内側(つまり、隣り合うポート側)は圧力損失し、外側(つまり、隣り合うポート側とは反対側)よりも若干低圧となる。
【0059】
前記した如くの従来の流路切換弁においては、Uターン連通路の開口縁部の軸線方向端部がポートの周縁と一致する位置もしくはポートの周縁よりも外側に配置され、弁口としてのポートを塞がないように弁体が配置されており、Uターン連通路の出口側端部とポートとは、断面積(流体通過面積)が基本的に変わらない、あるいは、ポート側の方が若干小さいので、入口側流路となるポートから流入してUターン連通路を通過した流体(冷媒)は、出口側流路となるポート内に流出した直後に全体的に(つまり、ポートの内側と外側とで)圧力が低下し始める。すなわち、外側の高圧も、出口側流路となるポート内に流出した直後に圧力損失するため、実際にCv値(流量)を大きくすることは難しくなる。
【0060】
本実施形態の四方切換弁(流路切換弁)1では、Uターン連通路15の開口縁部15Cの軸線O方向端部(半円部16A、16B)がポートpSの周縁よりも内側に配置され、少なくとも出口側流路となるポートpSの一部を弁体10で塞ぐとともに、そのポートpSの全開口に対する塞ぎ率は、例えば13%まで、好ましくは9%まで、より好ましくは5%とされるので、入口側流路となるポート(ポートpE又はポートpC)から流入してUターン連通路15を通過した流体(冷媒)は、出口側流路となるポートpS内に流出した後も圧力低下(特にポートpSの外側の圧力低下)が少なくて済む。すなわち、外側の高圧は、出口側流路となるポートpS内に流出した後も圧力損失し難くなるため、前記した従来の流路切換弁と比べて、Cv値(流量)を格段に大きくすることができる。
【0061】
また、本実施形態の四方切換弁(流路切換弁)1では、ポートpSの一部を弁体10で塞ぐようにすればよく、ハウジング外径や配管ピッチを拡大・拡張する必要はないため、体格の大型化、コストアップを招くことはない。
【0062】
なお、上述した実施形態では、弁体10が右端位置又は左端位置をとるときに、弁体10によって隣り合うポートの両方のポートの一部が塞がれるようにされているが、例えば
図6に示される如くに、弁体10によって隣り合うポートのうち出口側流路となるポートpSの一部(隣り合うポート側とは反対側)のみが塞がれるようにした場合でも、上述した実施形態と同様の作用効果が得られることは詳述するまでも無い。
【0063】
なお、上記実施形態では、流路切換弁として四方切換弁を例示して説明したが、本発明は、弁体(スライド弁体)により流路の切り換えを行う二方弁や、三方切換弁、五方以上の多方切換弁にも適用できることは勿論である。
【0064】
また、上記実施形態では、流路切換弁としてスライド式のものを例示して説明したが、本発明は、円筒状のハウジング内に(ハウジングの軸線と平行な回転軸線周りに)回動可能に配在され、内部に(1本又は複数本の)Uターン連通路が設けられた弁体(回転弁体)により流路の切り換えを行うロータリー式のものにも適用できることは勿論である。
【0065】
また、本実施形態の四方切換弁1は、ヒートポンプ式冷暖房システムのみならず、他のシステム、装置、機器類にも組み込めることは勿論である。