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特許6979730光学フィルタ及び当該光学フィルタを含む赤外線画像センシングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979730
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】光学フィルタ及び当該光学フィルタを含む赤外線画像センシングシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20211202BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20211202BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   G02B5/28
   B32B7/023
   B32B17/06
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-537281(P2020-537281)
(86)(22)【出願日】2019年3月12日
(65)【公表番号】特表2020-534585(P2020-534585A)
(43)【公表日】2020年11月26日
(86)【国際出願番号】CN2019077849
(87)【国際公開番号】WO2020029579
(87)【国際公開日】20200213
【審査請求日】2020年3月17日
(31)【優先権主張番号】201810884048.1
(32)【優先日】2018年8月6日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520093458
【氏名又は名称】信陽舜宇光学有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 策
(72)【発明者】
【氏名】丁 維紅
(72)【発明者】
【氏名】肖 念恭
(72)【発明者】
【氏名】陳 吉利
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/104370(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/043500(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/033984(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板(1)と、
前記ガラス基板(1)の両面にめっきされるIR膜層(2)及びAR膜層(3)と、を備え、
前記IR膜層(2)は、近赤外線を通過させるものであり、少なくとも2つの第1屈折率材料層と、少なくとも1つの第2屈折率材料層と、前記第1屈折率材料層の屈折率より大きく、かつ前記第2屈折率材料層の屈折率よりも小さい単一の第3屈折率材料層を有
前記AR膜層(3)は、近赤外線の反射を防止する近赤外線反射防止膜である、
ことを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
前記AR膜層(3)は、少なくとも2つの前記第1屈折率材料層及び少なくとも1つの前記第2屈折率材料層、又は少なくとも2つの前記第1屈折率材料層、少なくとも1つの前記第2屈折率材料層及び単一の前記第3屈折率材料層を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
最も前記ガラス基板(1)から離間する前記IR膜層(2)の外層及び前記AR膜層(3)の外層は、いずれも、前記第1屈折率材料層である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記IR膜層(2)は、前記ガラス基板(1)から離間する方向に沿って順にM、(LH)×n、Lに構成され、
ただし、Mは、前記第3屈折率材料層を示し、Lは、前記第1屈折率材料層を示し、Hは、前記第2屈折率材料層を示し、(LH)×nは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがn回交互に設けられることを示し、nは、1以上の整数である、
ことを特徴とする請求項3に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記IR膜層(2)は、前記ガラス基板(1)から離間する方向に沿って順に(LH)×s、L、M、(LH)×p、Lに構成され、
ただし、Mは、前記第3屈折率材料層を示し、Lは、前記第1屈折率材料層を示し、Hは、前記第2屈折率材料層を示し、(LH)×sは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがs回交互に設けられることを示し、sは、0以上の整数であり、(LH)×pは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがp回交互に設けられることを示し、pは、1以上の整数である、
ことを特徴とする請求項3に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記AR膜層(3)は、前記ガラス基板(1)から離間する方向に沿って順に(LH)×q、Lに構成され、
ただし、Lは、前記第1屈折率材料層を示し、Hは、前記第2屈折率材料層を示し、(LH)×qは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがq回交互に設けられることを示し、qは、1以上の整数である、
ことを特徴とする請求項2に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記AR膜層(3)は、前記ガラス基板(1)から離間する方向に沿って順にM、(LH)×k、Lに構成され、
ただし、Mは、第3屈折率材料層を示し、Lは、前記第1屈折率材料層を示し、Hは、前記第2屈折率材料層を示し、(LH)×kは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがk回交互に設けられることを示し、kは、1以上の整数である、
ことを特徴とする請求項2に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
前記AR膜層(3)は、前記ガラス基板(1)から離間する方向に沿って順に(LH)×i、L、M、(LH)×f、Lに構成され、
ただし、Mは、第3屈折率材料層を示し、Lは、前記第1屈折率材料層を示し、Hは、前記第2屈折率材料層を示し、(LH)×iは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがi回交互に設けられることを示し、iは、0以上の整数であり、(LH)×fは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがf回交互に設けられることを示し、fは、1以上の整数である、
ことを特徴とする請求項2に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
0.05≦DL/DH≦20の条件式を満たし、
0.02≦DM/DH≦50の条件式を満たし、
ただし、DLは、前記第1屈折率材料層の厚みを示し、DHは、前記第2屈折率材料層の厚みを示し、DMは、第3屈折率材料層の厚みを示す、
ことを特徴とする請求項3から8のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記IR膜層(2)の前記第2屈折率材料層は、水素化ケイ素層であり、
800から1200nmの波長範囲における前記第2屈折率材料層の屈折率が3よりも大きく、消衰係数が0.002よりも小さく、
850nmにおける前記第2屈折率材料層の屈折率が3.6よりも大きく、940nmにおける前記第2屈折率材料層の屈折率が3.55よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
800から1200nmの波長範囲における前記第3屈折率材料層の屈折率が4よりも小さく、
800から1200nmの波長範囲における前記第1屈折率材料層の屈折率が3よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項12】
800から1200nmの波長範囲における前記IR膜層(2)は、一つの通過帯域と、それぞれ前記通過帯域の両側に位置する二つの遷移帯域と、それぞれ二つの前記遷移帯域の外側に位置する二つの遮断帯域と、を有し、
前記通過帯域は、帯域幅が400nmよりも小さく、透過率が90%よりも大きく、
前記遷移帯域は、透過率が0.1%から90%であり、
前記遮断帯域は、透過率が0.1%よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項13】
350から1200nmの波長範囲における前記AR膜層(3)は、350nmから1200nmに向かう方向に沿って順に配列される遮断帯域、遷移帯域及び通過帯域を有し、
前記通過帯域は、透過率が90%よりも大きく、
前記遷移帯域は、透過率が0.1%から90%であり、
前記遮断帯域は、透過率が0.1%よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項14】
前記光学フィルタの半値幅は、120nmよりも小さく、
前記IR膜層(2)及び前記AR膜層(3)の合計厚みは、9.8μmよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項15】
入射角が0°から30°に変化すると、通過帯域の中心波長のシフト量は、20nmよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項16】
IR発射光源(41)と第1レンズユニット(42)とを有する光源手段(4)と、
第2レンズユニット(51)と、請求項1から1のいずれか1項に記載の光学フィルタ(52)と、赤外画像センサ(53)と、を有する受光手段(5)と、を備える、
ことを特徴とする赤外線画像センシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学センシング技術に関し、特に光学フィルタ及び当該光学フィルタを含む赤外線画像センシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
技術の発展に伴い、スマートフォン、車載ライダー、セキュリティアクセス制御、スマートホーム、バーチャルリアリティー、3D体感ゲーム、3D撮像及び3D表示等の端末には、顔識別、ジェスチャ識別等の機能が導入されるようになった。
【0003】
そして、顔識別、ジェスチャ識別を行う際に、赤外幅狭帯域光学フィルタを用いる必要がある。当該光学フィルタは、通過帯域における近赤外線の反射防止を行うとともに環境における可視光を遮断する機能を発揮する。通常、赤外幅狭帯域光学フィルタは、IRバンドパス膜系及びARロングパス膜系を有する。しかしながら、先行技術の光学フィルタでは、近赤外線の反射防止効果及び可視光の遮断効果が悪く、膜系の膜層の厚みが厚く、かつ膜層の付着力が弱いため、このような光学フィルタを人の顔識別やジェスチャ識別を行う装置に組み付けた場合であっても、結像効果が悪く、識別制度が低下するという問題があった。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、従来の光学フィルタによる近赤外線の反射防止効果が悪く、膜層の付着力が弱いという問題を解決するための光学フィルタ及び当該光学フィルタを含む赤外画像センシングシステムを提供することを目的とする。
【0005】
上記目的を実現するため、本発明のある態様によれば、ガラス基板と、前記ガラス基板の両面にめっきされるIR膜層及びAR膜層と、を備え、前記IR膜層は、第1屈折率材料層と、第2屈折率材料層と、前記第1屈折率材料層の屈折率より大きく、かつ前記第2屈折率材料層の屈折率よりも小さい第3屈折率材料層を有する光学フィルタが提供される。
【0006】
本発明のある態様では、前記AR膜層は、前記第1屈折率材料層及び前記第2屈折率材料層、又は前記第1屈折率材料層、前記第2屈折率材料層及び前記第3屈折率材料層を有する。
【0007】
本発明のある態様では、最も前記ガラス基板から離間する前記IR膜層の外層及び前記AR膜層の外層は、いずれも、前記第1屈折率材料層である。
【0008】
本発明のある態様では、前記IR膜層は、前記ガラス基板から離間する方向に沿って順にM、(LH)×n、Lに構成され、ただし、Mは、前記第3屈折率材料層を示し、Lは、前記第1屈折率材料層を示し、Hは、前記第2屈折率材料層を示し、(LH)×nは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがn回交互に設けられることを示し、nは、1以上の整数である。
【0009】
本発明のある態様では、前記IR膜層は、前記ガラス基板から離間する方向に沿って順に(LH)×s、L、M、(LH)×p、Lに構成され、ただし、Mは、前記第3屈折率材料層を示し、Lは、前記第1屈折率材料層を示し、Hは、前記第2屈折率材料層を示し、(LH)×sは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがs回交互に設けられることを示し、sは、0以上の整数であり、(LH)×pは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがp回交互に設けられることを示し、pは、1以上の整数である。
【0010】
本発明のある態様では、前記AR膜層は、前記ガラス基板から離間する方向に沿って順に(LH)×q、Lに構成され、ただし、Lは、前記第1屈折率材料層を示し、Hは、前記第2屈折率材料層を示し、(LH)×qは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがq回交互に設けられることを示し、qは、1以上の整数である。
【0011】
本発明のある態様では、前記AR膜層は、前記ガラス基板から離間する方向に沿って順にM、(LH)×k、Lに構成され、ただし、Mは、第3屈折率材料層を示し、Lは、前記第1屈折率材料層を示し、Hは、前記第2屈折率材料層を示し、(LH)×kは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがk回交互に設けられることを示し、kは、1以上の整数である。
【0012】
本発明のある態様では、前記AR膜層は、前記ガラス基板から離間する方向に沿って順に(LH)×i、L、M、(LH)×f、Lに構成され、ただし、Mは、第3屈折率材料層を示し、Lは、前記第1屈折率材料層を示し、Hは、前記第2屈折率材料層を示し、(LH)×iは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがi回交互に設けられることを示し、iは、0以上の整数であり、(LH)×fは、前記第1屈折率材料層と前記第2屈折率材料層とがf回交互に設けられることを示し、fは、1以上の整数である。
【0013】
本発明のある態様では、0.05≦DL/DH≦20の条件式を満たし、0.02≦DM/DH≦50の条件式を満たし、ただし、DLは、前記第1屈折率材料層の厚みを示し、DHは、前記第2屈折率材料層の厚みを示し、DMは、第3屈折率材料層の厚みを示す。
【0014】
本発明のある態様では、前記IR膜層の前記第2屈折率材料層は、水素化ケイ素層であり、800から1200nmの波長範囲における前記第2屈折率材料層の屈折率が3よりも大きく、消衰係数が0.02よりも小さく、850nmにおける前記第2屈折率材料層の屈折率が3.6よりも大きく、940nmにおける前記第2屈折率材料層の屈折率が3.55よりも大きい。
【0015】
本発明のある態様では、前記水素化ケイ素層は、スパッタリングによりめっきされる材料層であり、スパッタリングの温度範囲は、80から300℃であり、水素の流量は、10から50sccmであり、前記スパッタリングの速度は、0.1nm/sから1nm/sである。
【0016】
本発明のある態様では、800から1200nmの波長範囲における前記第3屈折率材料層の屈折率が4よりも小さく、800から1200nmの波長範囲における前記第1屈折率材料層の屈折率が3よりも小さい。
【0017】
本発明のある態様では、800から1200nmの波長範囲における前記IR膜層は、一つの通過帯域と、それぞれ前記通過帯域の両側に位置する二つの遷移帯域と、それぞれ二つの前記遷移帯域の外側に位置する二つの遮断帯域と、を有し、前記通過帯域は、帯域幅が400nmよりも小さく、透過率が90%よりも大きく、前記遷移帯域は、透過率が0.1%から90%であり、前記遮断帯域は、透過率が0.1%よりも小さい。
【0018】
本発明のある態様では、350から1200nmの波長範囲における前記AR膜層は、350nmから1200nmに向かう方向に沿って順に配列される遮断帯域、遷移帯域及び通過帯域を有し、前記通過帯域は、透過率が90%よりも大きく、前記遷移帯域は、透過率が0.1%から90%であり、前記遮断帯域は、透過率が0.1%よりも小さい。
【0019】
本発明のある態様では、半値幅は、120nmよりも小さく、前記IR膜層及び前記AR膜層の合計厚みは、9.8μmよりも小さい。
【0020】
本発明のある態様では、入射角が0°から30°に変化すると、通過帯域の中心波のシフト量は、20nmよりも小さい。
【0021】
上記目的を実現するため、本発明のある他の態様によれば、IR発射光源と第1レンズユニットとを有する光源手段と、第2レンズユニットと、請求項1から16のいずれか1項に記載の光学フィルタと、赤外画像センサと、を有する受光手段と、を備える赤外画像センシングシステムが提供される。
【0022】
本発明のある態様によれば、IR膜層及びAR膜層を上記のように設けることで、近赤外線の高透過率を有効に保証するとともに、光学フィルタの通過帯域の中心波長のシフト量を20nm以下にすることができる。また、IR膜層及びAR膜層に第3屈折率材料層Mを上記のように配列されるように設けることで、本発明の光学フィルタの合計膜層厚みを有効に減少するとともに、膜層の付着力を向上させることができる。
【0023】
本発明のある他の態様によれば、本発明の光学フィルタを含む赤外画像センシングシステムが提供される。本発明の光学フィルタを設けることで、撮像時における近赤外線の反射防止及びその他の帯域の光線の遮断を行うことができ、人の顔識別やジェスチャ識別の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るIR膜層の構成を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るAR膜層の構成を示す概略構成図である。
図3】実施例1におけるIR膜層の光線波長透過率を示す曲線図である。
図4】実施例1におけるAR膜層の光線波長透過率を示す曲線図である。
図5】実施例2におけるIR膜層の光線波長透過率を示す曲線図である。
図6】実施例2におけるAR膜層の光線波長透過率を示す曲線図である。
図7】実施例3におけるIR膜層の光線波長透過率を示す曲線図である。
図8】実施例3におけるAR膜層の光線波長透過率を示す曲線図である。
図9】本発明の光学フィルタを含む赤外画像センシングシステムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態又は先行技術の技術手段をより明確に説明するために、以下実施形態に用いられる図面を簡単に紹介する。明らかに、下記の図面は、本発明の実施形態を説明するためのものに過ぎない。当業者ならば、これらの図面に基づいて、その他の図面を容易になし得てもよい。
【0026】
本発明の実施形態を説明するための用語として、「横方向」、「縦方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「立直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」等が用いられる。これらの用語で示される方位又は位置関係は、図面で示される方位又は位置関係に基づき、本発明を分かりやすく説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明を実施形態を用いて詳細に説明する。本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るIR膜層の構成を示す概略構成図である。図2は、本発明の実施形態に係るAR膜層の構成を示す概略構成図である。図1及び図2に示すように、本発明の光学フィルタは、ガラス基板1、IR膜層2及びAR膜層3を備える。本発明のガラス基板1は、D263T又はAF32を用いてもよい。IR膜層2は、赤外線遮断膜層である。AR膜層3は、反射低減膜、すなわち、反射防止膜であり、特定範囲の波長において反射防止の効果を奏する。IR膜層2及びAR膜層3は、それぞれガラス基板1の両面にめっきされる。本実施形態では、IR膜層2は、ガラス基板1の上面にめっきさるとともに、AR膜層3は、ガラス基板1の下面にめっきされる。
【0029】
図1に示すように、本実施形態では、本発明の光学フィルタのIR膜層2は、第1屈折率材料層L、第3屈折率材料層M及び第2屈折率材料層Hを有する。本実施形態では、IR膜層2は、四層の材料層を有し、具体的には、ガラス基板1から離間する方向に沿って順に積層される第3屈折率材料層M、第1屈折率材料層L、第2屈折率材料層H及び第1屈折率材料層Lを有する。このような構成をM、(LH)、Lとすることができる。すなわち、本実施形態では、IR膜層2は、それぞれガラス基板1の上面にめっきされる第3屈折率材料層M、最もガラス基板1から離間する外層としての第1屈折率材料層L、及び第3屈折率材料層Mと第1屈折率材料層Lとの間に位置する中間材料層を有する三層構造である。本実施形態では、中間材料層は、順に積層される第1屈折率材料層L及び第2屈折率材料層Hを有する。本発明のIR膜層2の中間材料層は、複数の第1屈折率材料層Lと第2屈折率材料層Hとが交互に設けられることにより構成される。すなわち、本発明のIR膜層2の構成をM、(LH)×n、Lとすることができる。すなわち、IR膜層2は、ガラス基板1から離間する方向に沿って順に積層される第3屈折率材料層M、中間材料層及び第1屈折率材料層Lを有し、中間材料層は、第1屈折率材料層Lと第2屈折率材料層Hとがn回交互に設けられることにより構成され、nは、1以上の整数である。
【0030】
また、本発明のIR膜層2は、上述した実施形態の構成形態のほか、他の実施形態を有してもよい。本発明の第2実施形態に係るIR膜層2によれば、IR膜層2の構成を(LH)×s、L、M、(LH)×p、Lとすることができる。すなわち、IR膜層2は、ガラス基板1から離間する方向に沿って順に積層される五層構成を有する。ここでは、第1層構成は、第1屈折率材料層Lと第2屈折率材料層Hとがs回交互に設けられることにより構成され、sは、0以上の整数である。第2層構成は、第1屈折率材料層Lであり、第3層構成は、第3屈折率材料層Mである。第4層構成は、第1屈折率材料層Lと第2屈折率材料層Hとがp回交互に設けられることにより構成され、pは、1以上の整数である。第5層構成は、最もガラス基板1から離間する外層としての第1屈折率材料層Lである。
【0031】
本発明のIR膜層2は、第3屈折率材料層M、第1屈折率材料層L及び第2屈折率材料層Hを有し、これらを上述した実施形態のように設けることで、膜層の付着力を有効に向上させることができるので、近赤外線の透過率曲線特性を向上させることができる。
【0032】
図2に示すように、本発明のAR膜層3は、ガラス基板1の下面にめっきされる。本実施形態では、AR膜層3は、低屈折率材料層L及び高屈折率材料層Hを有し、具体的には、ガラス基板1から離間する方向に沿って順に積層される第1屈折率材料層L、第2屈折率材料層H及び第1屈折率材料層Lを有する。本実施形態では、AR膜層3の構成を(LH)、Lとすることができる。すなわち、AR膜層3は、ガラス基板1から離間する方向に沿って順に積層される第1構成層及び最もガラス基板1から離間する外層としての第1屈折率材料層Lを有する。ここでは、第1構成層は、第1屈折率材料層Lと第2屈折率材料層Hが交互にめっきされることにより構成される。また、本発明のAR膜層3の第1構成層では、第1屈折率材料層Lと第2屈折率材料層Hとが交互に積層されるのは、複数回であってもよい。すなわち、AR膜層3の構成を(LH)×q、Lとすることができる。ここでは、(LH)×qは、第1屈折率材料層Lと第2屈折率材料層Hとがq回交互に設けられることを示し、qは、1以上の整数である。
【0033】
本発明の第2実施形態に係るAR膜層3によれば、AR膜層3の構成をM、(LH)×k、Lとすることができる。すなわち、AR膜層3は、ガラス基板1から離間する方向に沿って順に積層される第3屈折率材料層M、中間材料層及び第1屈折率材料層Lを有する。ここでは、中間材料層は、第1屈折率材料層Lと第2屈折率材料層Hとがk回交互に設けられることにより構成され、kは、1以上の整数である。
【0034】
また、本発明のAR膜層3が第1屈折率材料層、第2屈折率材料層及び第3屈折率材料層を有する場合、AR膜層3の構成を(LH)×i、L、M、(LH)×f、Lとすることができる。すなわち、AR膜層3は、ガラス基板1から離間する方向に沿って順に積層される五層構成を有する。第1層構成は、第1屈折率材料層Lと第2屈折率材料層Hとがi回交互に設けられることにより構成され、iは、0以上の整数である。第2層構成は、第1屈折率材料層Lであり、第3層構成は、第3屈折率材料層Mである。第4層構成は、第1屈折率材料層Lと第2屈折率材料層Hとがf回交互に設けられることにより構成され、fは、1以上の整数である。第5層構成は、最もガラス基板1から離間する外層としての第1屈折率材料層Lである。
【0035】
本発明の光学フィルタが有するIR膜層2及びAR膜層3は、上述した実施形態から選択されてもよい。すなわち、本発明のIR膜層2は、二つの実施形態を有し、AR膜層3は、三つの実施形態を有し、本発明の光学フィルタを製造するとき、IR膜層2及びAR膜層3の実施形態を自由に組み合わせてもよい。ここで注意されたいのは、いかなる実施形態を用いた場合であっても、IR膜層2の外層及びAR膜層3の外層は、いずれも低屈折率材料層である。
【0036】
本発明の光学フィルタでは、IR膜層2における高屈折率材料層Hは、水素化ケイ素層である。水素化ケイ素層は、スパッタリングによりめっきされる。スパッタリングの温度範囲を80から300℃とし、水素の流量を10から50sccmとし、スパッタリングの速度を0.1nm/sから1nm/sとすることにより、本発明の第2屈折率材料層Hは、800から1200nmの範囲内における屈折率が3よりも大きく、消衰係数が0.002よりも小さく、850nmにおける屈折率が3.6よりも大きく、960nmにおける屈折率が3.55よりも大きくなる。このため、本発明の光学フィルタの通過帯域の中心波長のシフト量を容易に調整することができる。本発明のAR膜層3における第2屈折率材料層Hは、水素化ケイ素層から構成されてもよいし、その他の材料層から実現されてもよい。すなわち、第2屈折率材料層Hの屈折率を第3屈折率材料層M及び第1屈折率材料層Lの屈折率よりも大きくすればよい。
【0037】
IR膜層2及びAR膜層3における第3屈折率材料層Mに用いる材料は、Sb23、Nb25、Ta25、TiO2、Al23、ZrO2、Pr611、La23、Si2N、SiN、Si23、Si34の一つ又は複数から選択されてもよい。IR膜層2及びAR膜層3における第1屈折率材料層Lに用いる材料は、SiO2、Nb25、Ta25、TiO2、Al23、ZrO2、Pr611、La23、Si2N、SiN、Si23、Si34の一つ又は複数から選択されてもよい。800から1200nm波長範囲内において、第3屈折率材料層Mの屈折率が4よりも小さく、第1屈折率材料層Lの屈折率が3よりも小さい。第3屈折率材料層Mの屈折率が第1屈折率材料層Lの屈折率よりも大きいことを保証する必要がある。すなわち、第1屈折率材料層Lが用いる材料を選択した後、第3屈折率材料層Mに用いる材料の屈折率が第1屈折率材料層Lに用いる材料の屈折率よりも大きくなるように第3屈折率材料層Mが用いる材料を選択すればよい。第3屈折率材料層M及び第1屈折率材料層Lは、スパッタリングによりめっきされてもよいし、真空蒸着設備によりめっきされてもよい。
【0038】
以下、本発明の光学フィルタを具体的な実施例により詳細に説明する。
【0039】
実施例1
本実施形態では、光学フィルタのIR膜層2の構成を、ガラス基板1から離間する方向に沿ってM、(LH)×n、Lとし、nは、11である。ここでは、第2屈折率材料層H、第3屈折率材料層M及び第1屈折率材料層Lの光学厚みは、それぞれ参考波長の1/4であり、第2屈折率材料層Hの物理的厚みと第1屈折率材料層Lの物理的厚みとの間の関係は、0.05≦DL/DH≦20を満たし、第3屈折率材料層Mの物理的厚みと第2屈折率材料層Hの物理的厚みとの間の関係は、0.02≦DM/DH≦50を満たす。IR膜層2の合計厚みは、3.41μmである。AR膜層3の構成を、ガラス基板1から離間する方向に沿って(LH)×q、Lとし、qは、12である。第2屈折率材料層Hの物理的厚みと第1屈折率材料層Lの物理的厚みとの間の関係は、0.05≦DL/DH≦20を満たし、第3屈折率材料層Mの物理的厚みと第2屈折率材料層Hの物理的厚みとの間の関係は、0.02≦DM/DH≦50を満たす。
【0040】
すなわち、本実施形態では、IR膜層2は、24の材料層を有し、AR膜層3は、25の材料層を有する。本実施形態では、水素化ケイ素層を第2屈折率材料層Hとし、アルミナを第3屈折率材料層Mとし、シリカを第1屈折率材料層Lとする。次式(1)を用いて、次式(2)に代入することにより、次表(1−1)、次表(1−2)及び次表(2)に示すような膜層パラメータが得られる。
【0041】
【数1】
【0042】
【数2】
【0043】
ただし、OTiは、第i層膜層の光学厚みを示し、OT0は、設計波長の光学厚みの1/4を示し、piは、円周率を示し、fは、変調係数を示し、0から1の間にある。
【0044】
次表(1−1)及び次表(1−2)は、IR膜層2の各材料層のパラメータを示す。
【0045】
【表1-1】
【表1-2】
【0046】
次表(2)は、AR膜層3の各材料のパラメータを示す。
【0047】
【表2】
【0048】
図3に示すように、実施例1における各条件パラメータを参照しながら本発明の光学フィルタのIR膜層2を設ける。800から1200nm波長範囲内において、本発明のIR膜層2は、一つの通過帯域、二つの遮断帯域及び二つの遷移帯域を有する。すなわち、IR膜層2は、800から1200nmの方向に沿って順に設けられる遮断帯域、遷移帯域、通過帯域、遷移帯域及び遮断帯域を有する。通過帯域は、光線が通過可能な帯域である。遮断帯域は、光線が通過不能な帯域である。遷移帯域は、遮断帯域と通過帯域との間に位置する帯域である。図3に示すように、通過帯域の帯域幅は、400nmよりも小さく、透過率が90%よりも大きい。遷移帯域の透過率は、0.1%から90%である。遮断帯域は、透過率が0.1%よりも小さい。
【0049】
図4に示すように、実施例1における各条件パラメータを参照しながら本発明の光学フィルタのAR膜層3を設ける。350から1200nm波長範囲内において、本発明のAR膜層3は、一つの通過帯域、一つの遮断帯域及び一つの遷移帯域を有する。すなわち、AR膜層3は、350から1200nmの方向に沿って順に設けられる、遮断帯域、遷移帯及び域通過帯域を有する。図4に示すように、通過帯域の帯域幅は、透過率が90%よりも大きい。遷移帯域の透過率は、0.1%から90%である。遮断帯域は、透過率が0.1%よりも小さい。
【0050】
本発明の光学フィルタを実施例1における各条件パラメータに従って設けることにより、本発明の光学フィルタの半値幅が120nmよりも小さく、IR膜層2及びAR膜層3の合計厚みが9.8μmよりも小さく、入射角が0°から30°に変化すると、通過帯域の中心波長のシフト量は、20nmよりも小さいことを保証することができる。
【0051】
実施例2
本実施形態では、光学フィルタのIR膜層2の構成を、ガラス基板1から離間する方向に沿って(LH)×s、L、M、(LH)×p、Lとし、s及びpは、それぞれ5及び6である。ここでは、第2屈折率材料層H、第3屈折率材料層M及び第1屈折率材料層Lの光学厚みは、それぞれ参考波長の1/4であり、第2屈折率材料層Hの物理的厚みと第1屈折率材料層Lの物理的厚みとの間の関係は、0.05≦DL/DH≦20を満たし、第3屈折率材料層Mの物理的厚みと第2屈折率材料層Hの物理的厚みとの間の関係は、0.02≦DM/DH≦50を満たす。IR膜層2の合計厚みは、3.2μmである。AR膜層3の構成を、ガラス基板1から離間する方向に沿って(LH)×q、Lとし、qは、12である。第2屈折率材料層Hの物理的厚みと第1屈折率材料層Lの物理的厚みとの間の関係は、0.05≦DL/DH≦20を満たし、第3屈折率材料層Mの物理的厚みと第2屈折率材料層Hの物理的厚みとの間の関係は、0.02≦DM/DH≦50を満たす。
【0052】
すなわち、本実施形態では、IR膜層2は、25の材料層を有し、AR膜層3は、25の材料層を有する。本実施形態では、水素化ケイ素層を第2屈折率材料層Hとし、アルミナを第3屈折率材料層Mとし、シリカを第1屈折率材料層Lとする。上式(1)を用いて、上式(2)に代入することにより、次表(3−1)、次表(3−2)、次表(4)に示すような膜層パラメータが得られる。
【0053】
次表(3−1)及び次表(3−2)は、IR膜層2の各材料層のパラメータを示す。
【0054】
【表3-1】
【表3-2】
【0055】
次表(4)は、AR膜層3の各材料のパラメータを示す。
【0056】
【表4】
【0057】
図5に示すように、実施例2における各条件パラメータを参照しながら本発明の光学フィルタのIR膜層2を設ける。800から1200nm波長範囲内において、本発明のIR膜層2は、一つの通過帯域、二つの遮断帯域及び二つの遷移帯域を有する。すなわち、IR膜層2は、800から1200nmの方向に沿って順に設けられる遮断帯域、遷移帯域、通過帯域、遷移帯域及び遮断帯域を有する。通過帯域は、光線が通過可能な帯域である。遮断帯域は、光線が通過不能な帯域である。遷移帯域は、遮断帯域と通過帯域との間に位置する帯域である。図3に示すように、通過帯域の帯域幅は、400nmよりも小さく、透過率が90%よりも大きい。遷移帯域の透過率は、0.1%から90%である。遮断帯域は、透過率が0.1%よりも小さい。
【0058】
図6に示すように、実施例2における各条件パラメータを参照しながら本発明の光学フィルタのAR膜層3を設ける。350から1200nm波長範囲内において、本発明のAR膜層3は、一つの通過帯域、一つの遮断帯域及び一つの遷移帯域を有する。すなわち、AR膜層3は、350から1200nmの方向に沿って順に設けられる、遮断帯域、遷移帯及び域通過帯域を有する。図6に示すように、通過帯域の帯域幅は、透過率が90%よりも大きい。遷移帯域の透過率は、0.1%から90%である。遮断帯域は、透過率が0.1%よりも小さい。
【0059】
本発明の光学フィルタを実施例2における各条件パラメータに従って設けることにより、同様に、本発明の光学フィルタの半値幅が120nmよりも小さく、IR膜層2及びAR膜層3の合計厚みが9.8μmよりも小さく、入射角が0°から30°に変化すると、通過帯域の中心波長のシフト量は、20nmよりも小さいことを保証することができる。
【0060】
実施例3
本実施形態では、光学フィルタのIR膜層2の構成を、ガラス基板1から離間する方向に沿ってM、(LH)×n、Lとし、nは、11である。ここでは、第2屈折率材料層H、第3屈折率材料層M及び第1屈折率材料層Lの光学厚みは、それぞれ参考波長の1/4であり、第2屈折率材料層Hの物理的厚みと第1屈折率材料層Lの物理的厚みとの間の関係は、0.05≦DL/DH≦20を満たし、第3屈折率材料層Mの物理的厚みと第2屈折率材料層Hの物理的厚みとの間の関係は、0.02≦DM/DH≦50を満たす。IR膜層2の合計厚みは、4.64μmである。AR膜層3の構成を、ガラス基板1から離間する方向に沿って(LH)×q、Lとし、qは、12である。第2屈折率材料層Hの物理的厚みと第1屈折率材料層Lの物理的厚みとの間の関係は、0.05≦DL/DH≦20を満たし、第3屈折率材料層Mの物理的厚みと第2屈折率材料層Hの物理的厚みとの間の関係は、0.02≦DM/DH≦50を満たす。
【0061】
すなわち、本実施形態では、IR膜層2は、24の材料層を有し、AR膜層3は、25の材料層を有する。本実施形態では、水素化ケイ素層を第2屈折率材料層Hとし、Nb25を第3屈折率材料層Mとし、シリカを第1屈折率材料層Lとする。上式(1)を用いて、上式(2)に代入することにより、次表(5)、次表(6−1)及び次表(6−2)に示すような膜層パラメータが得られる。
【0062】
次表(5)は、IR膜層2の各材料層のパラメータを示す。
【0063】
【表5】
【0064】
次表(6−1)及び次表(6−2)は、AR膜層3の各材料のパラメータを示す。
【0065】
【表6-1】
【表6-2】
【0066】
図7に示すように、実施例3における各条件パラメータを参照しながら本発明の光学フィルタのIR膜層2を設ける。800から1200nm波長範囲内において、本発明のIR膜層2は、一つの通過帯域、二つの遮断帯域及び二つの遷移帯域を有する。すなわち、IR膜層2は、800から1200nmの方向に沿って順に設けられる遮断帯域、遷移帯域、通過帯域、遷移帯域及び遮断帯域を有する。通過帯域は、光線が通過可能な帯域である。遮断帯域は、光線が通過不能な帯域である。遷移帯域は、遮断帯域と通過帯域との間に位置する帯域である。図3に示すように、通過帯域の帯域幅は、400nmよりも小さく、透過率が90%よりも大きい。遷移帯域の透過率は、0.1%から90%である。遮断帯域は、透過率が0.1%よりも小さい。
【0067】
図8に示すように、実施例3における各条件パラメータを参照しながら本発明の光学フィルタのAR膜層3を設ける。350から1200nm波長範囲内において、本発明のAR膜層3は、一つの通過帯域、一つの遮断帯域及び一つの遷移帯域を有する。すなわち、AR膜層3は、350から1200nmの方向に沿って順に設けられる、遮断帯域、遷移帯及び域通過帯域を有する。図8に示すように、通過帯域の帯域幅は、透過率が90%よりも大きい。遷移帯域の透過率は、0.1%から90%である。遮断帯域は、透過率が0.1%よりも小さい。
【0068】
本発明の光学フィルタを実施例3における各条件パラメータに従って設けることにより、同様に、本発明の光学フィルタの半値幅が120nmよりも小さく、IR膜層2及びAR膜層3の合計厚みが9.8μmよりも小さく、入射角が0°から30°に変化すると、通過帯域の中心波長のシフト量は、20nmよりも小さいことを保証することができる。
【0069】
本発明の光学フィルタは、IR膜層2及びAR膜層3を上記のように設けることで、近赤外線の高透過率を有効に保証するとともに、光学フィルタの通過帯域の中心波長のシフト量を20nm以下にすることができる。また、IR膜層2及びAR膜層に第3屈折率材料層Mを上記のように配列されるように設けることで、本発明の光学フィルタの合計膜層厚みを有効に減少するとともに、膜層の付着力を向上させることができる。
【0070】
本発明によれば、本発明の光学フィルタを含む赤外画像センシングシステムが提供される。図9は、本発明の光学フィルタを含む赤外画像センシングシステムを示す概略構成図である。図9に示すように、本発明の赤外画像センシングシステムは、光源手段4及び受光手段5を備える。本実施形態では、光源手段4は、IR発射光源41と第1レンズユニット42とを有する。受光手段5は、第2レンズユニット51と、本発明の光学フィルタ52と、赤外画像センサ53と、を有する。本実施形態では、IR発射光源41は、VCSEL(垂直共振器面発光レーザ)、LD又はLEDから構成されてもよい。第1レンズユニット42は、近赤外線コリメートレンズ及び光回折素子を含む。第2レンズユニット51は、普通の光学レンズを用いてもよい。
【0071】
本発明の赤外画像センシングシステムの動作は、下記のフローを含む。IR発射光源41がオンにされると、光が第1レンズユニット42によってコリメートされた後、顔/手6に投射される。第2レンズユニット51は、画像を撮像し、赤外画像センサ53は、アルゴリズム計算を実行した後に3D画像を生成する。そして、顔識別又はジェスチャ識別を行う。本発明の光学フィルタ52を設けることにより、撮像時における近赤外線の反射防止及びその他の帯域の光線の遮断を行うことができ、人の顔識別やジェスチャ識別の精度を向上させることができる。
【0072】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0073】
本願は2018年8月6日に中国特許庁に出願された出願番号201810884048.1(発明の名称:光学フィルタ及び当該光学フィルタを含む近赤外線画像センシングシステム)に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 ガラス基板
2 IR膜層
3 AR膜層
L 低屈折率材料層
M 中屈折率材料層
H 高屈折率材料層
4 光源手段
41 IR光源
42 第1レンズユニット
5 受光手段
51 第2レンズユニット
52 光学フィルタ
53 赤外画像センシングシステム
6 人の顔/手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9