特許第6979752号(P6979752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979752スキューバ布の態様を有する織布、およびこれを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979752
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】スキューバ布の態様を有する織布、およびこれを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/00 20060101AFI20211202BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20211202BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20211202BHJP
   D06M 15/705 20060101ALI20211202BHJP
   A41D 13/012 20060101ALI20211202BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   D03D1/00 Z
   D03D15/08
   D06M15/263
   D06M15/705
   A41D13/012
   A41D13/002
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-187220(P2015-187220)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-75020(P2016-75020A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2018年8月9日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2014/070284
(32)【優先日】2014年9月23日
(33)【優先権主張国】WO
(73)【特許権者】
【識別番号】515266337
【氏名又は名称】サンコ テクスティル イシレットメレリ サン.ヴェ ティック.アー.シェー.
【氏名又は名称原語表記】Sanko Tekstil Isletmeleri San.Ve Tic.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100179682
【弁理士】
【氏名又は名称】田嶋 亮介
(72)【発明者】
【氏名】エシン カレファ キリッカン
(72)【発明者】
【氏名】ファテマ コレケマゼ
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ ゼイレケ
(72)【発明者】
【氏名】エレトゥゲ エレクス
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102268764(CN,A)
【文献】 国際公開第2015/151820(WO,A1)
【文献】 特開2003−113549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00
D03D 15/56
D06M 15/263
D06M 15/705
A41D 13/012
A41D 13/002
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一のパターンを与える複数の縦糸(2)および複数の横糸(3)を有する織布であって、
1本の縦糸(2)が、1本以上の横糸(3)の上側に浮いて1つの対応する上側部分(5)を形成し、1本以上の横糸の下側に浮いて複数の下側部分(4)を形成し、
前記複数の横糸(3)がすべて弾性糸であり、
一の繰り返し単位において、第1の縦糸(2’)が、前記織布の第1の面で少なくとも3本の横糸の上側に浮いて1つの対応する縦糸の上側部分(5)を形成し、前記第1の縦糸が、1本の横糸(3)の下側に浮いて1つの下側部分(4)を形成し、
前記第1の縦糸において、複数の上側部分の長さが、複数の下側部分の長さより長いものであり、
前記第1の縦糸(2’)に隣接して配置される2本の縦糸(2”、2”’)のそれぞれは、少なくとも3本の横糸の下側に浮いて、前記織布の第2の面に、1つの対応する縦糸の下側部分(4)を形成し、前記2本の縦糸は、1本の横糸(3)の上に浮いて、前記織布の前記第1の面に、1つの上側部分(5)を形成し、
縦糸のそれぞれの上側部分(5)またはそれぞれの下側部分(4)の最大長さが、10本の横糸に対応し、
前記上側部分は、前記第1の面から視認でき、前記下側部分は、前記第2の面から視認でき、
上記繰り返し単位が前記織布の全体にわたっている、
織布(1)。
【請求項2】
前記繰り返し単位において、前記第1の縦糸(2’)のそれぞれの前記上側部分(5)は、N本(Nは、3〜10の整数)本の横糸を通過し、その後、下側部分(4)が、1本の横糸を通過する、N/1/Nスキームとなっている、請求項1に記載の織布。
【請求項3】
前記繰り返し単位において、前記隣接する縦糸(22”、2”’)のそれぞれの下側部分(4)が、M本(Mは、3〜10の整数)の横糸を通過し、その後、上側部分(5)が1本の横糸を通過する、1/M/1のスキームとなっている、請求項1または2に記載の織布。
【請求項4】
糸(2’)の上側部分(5)の長さは、隣接する縦糸(2”、2”’)の下側部分(4)の長さとは異なる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の織布。
【請求項5】
前記上側部分(5)および下側部分(4)が、斜めパターンに整列してデニム効果を与える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の織布。
【請求項6】
16本の縦糸と8本の横糸の繰り返し単位(RU)を有する織布は、縦糸パターンが7a/1b、2b/1a/3b/1a/1b、4a/1b/3a、1b/1a/3b/1a/2b、1a/1b/6a、1a/3b/1a/3b、6a/1b/1a、3b/1a/3b/1a、3a/1b/4a、2b/1a/3b/1a/1b、1b/7a、1b/1a/3b/1a/2b、5a/1b/2a、1a/3b/1a/3b、2a/1b/5aおよび3b/1a/3b/1aであり、aは下側部分であり、bは上側部分である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の織布。
【請求項7】
前記織布が、10本の縦糸と5本の横糸の繰り返し単位を有し、縦糸のパターンが、1a/1b/3a、1b/1a/3b、3a/1b/1a、3b/1a/1b、1b/4a、1a/4b、2a/1b/2a、2b/1a/2b、4a/1bおよび4b/1aであり、aは下側部分であり、bは上側部分である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の織布。
【請求項8】
前記織布が、8本の縦糸と4本の横糸の繰り返し単位を有し、縦糸のパターンが、3b/1a、1a/1b/2a、1a/3b、2a/1b/1a、1b/1a/2b、3a/1b、2b/1a/1bおよび1b/3aであり、aは下側部分であり、bは上側部分である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の織布。
【請求項9】
前記織布が、16本の縦糸と8本の横糸の繰り返し単位を有し、縦糸のパターンが、7b/1a、7a/1b、4b/1a/3b、4a/1b/3a、1b/1a/6b、1a/1b/6a、6b/1a/1b、6a/1b/1a、3b/1a/4b、3a/1b/4a、1a/7b、1b/7a、5b/1a/2b、5a/1b/2a、2b/1a/5bおよび2a/1b/5a、aは下側部分であり、bは上側部分である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の織布。
【請求項10】
一のパターンを与える複数の縦糸(2)および複数の横糸(3)を有する織布であって、
1本の縦糸(2)が、1本以上の横糸(3)の上側に浮いて1つの対応する上側部分(5)を形成し、1本以上の横糸の下側に浮いて複数の下側部分(4)を形成し、
前記複数の横糸(3)がすべて弾性糸であり、
一の繰り返し単位において、第1の縦糸(2’)が、前記織布の第1の面で少なくとも3本の横糸の上側に浮いて1つの対応する縦糸の上側部分(5)を形成し、前記第1の縦糸が、1本の横糸(3)の下側に浮いて1つの下側部分(4)を形成し、
前記第1の縦糸(2’)に隣接して配置される2本の縦糸(2”、2”’)のそれぞれは、少なくとも3本の横糸の下側に浮いて、前記織布の第2の面に、1つの対応する縦糸の下側部分(4)を形成し、前記2本の縦糸は、1本の横糸(3)の上に浮いて、前記織布の前記第1の面に、1つの上側部分(5)を形成し、
縦糸のそれぞれの上側部分(5)またはそれぞれの下側部分(4)の最大長さが、10本の横糸に対応し、
前記上側部分は、前記第1の面から視認でき、前記下側部分は、前記第2の面から視認でき、
上記繰り返し単位が前記織布の全体にわたっており、
前記織布が、5本の縦糸と10本の横糸の繰り返し単位を有し、縦糸のパターンが、1b/3a/1b/1a/3b/1a、1b/1a/3b/1a/1b/3a、1b/1a/1b/3a/1b/1a/2b、2a/1b/1a/3b/1a/1b/1aおよび3b/1a/1b/3a/1b/1a、aは下側部分であり、bは上側部分である、織布(1)
【請求項11】
少なくとも縦糸のティター(titer)線密度が、Ne10〜Ne60である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の織布。
【請求項12】
縦糸または横糸がインジゴ染色されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の織布。
【請求項13】
ポリマー材料をさらに含み、前記ポリマー材料が、層として前記織布に接続するか、または、織布の糸と混じり合う、請求項1〜12のいずれか1項に記載の織布。
【請求項14】
コンポジット織布を作る方法であって、
請求項1〜13のいずれかに記載の織布(1)を準備する工程と、
前記織布にポリマー材料(6)を少なくとも1回塗布する工程(10)と、
コーティングされた前記織布を処理し(8)、前記コーティングを前記織布の中に浸透させる工程と、
選択的に、前記コーティングを硬化させ(9)、一の硬化したポリマー層(6’)を形成し、前記織布の構造(2、3)の中に少なくとも一部分に配置する工程と、
を備える方法。
【請求項15】
前記ポリマー材料を塗布した後で、これを硬化させる前に、織布をカレンダー処理し、ポリマー材料を前記織布に浸透させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
2種類の異なるポリマー材料が塗布される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー材料が、アクリルポリマーまたはアクリレート分散物である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキューバ布の態様を有する織布に関する。より詳しくは、本発明は、スキューバ(またはネオプレン)布の態様、すなわち、ネオプレン(発泡したクロロプレン)の層を含む布の態様または同様の発泡したプラスチック材料および少なくとも1つの布地層の態様を模擬する織布、好ましくはデニム布に関する。なお、以下の記載において、ネオプレンおよびネオプレンの代替として現在使用されている任意のプラスチック材料を開示し、参照するために、ネオプレンが用いられる。
【0002】
本発明は、さらに、プラスチックコーティング材料と組み合わせてダブルフェイス織布を用いる、弾性、容積、快適さおよび絶縁性を含めたネオプレンスキューバ布の態様を有する織布を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
スキューバ布は、標準的な布地の少なくとも1つの外側層と接合した、発泡したプラスチック材料(通常は、ネオプレン)の層を含む。外側の布地は、視覚に訴える審美的な層を与える。一方、発泡した層は、最終製品の構造および弾性を与える。着用者の快適さを高めるために、内側布地層が存在している場合もある。
【0004】
ネオプレン(またはスキューバ)布は、元々はスキューバダイビング用スーツのために作り出されたものである。近年、この布は、スポーツ用衣類、さらには日々の衣類に使用するために、よりファッショナブルになっている。実際に、この布を使用し、例えば、スカート、トップス、ズボンおよび類似の衣類およびアパレル用品といった、あらゆる種類の衣服が製造されている。ネオプレン層(または同様の製品の層)が存在すると、布地にある構造を与え、スポーツに適した外観を与える。このような構造および外観は、今日まで、他の種類の製品では得ることができていない。
【0005】
米国特許第U002040495号は、ネオプレン型材料で作られる従来のウェットスーツを記載する。
【0006】
中国特許第103374779号は、撥水性繊維を用いて織られたダブルフェイス布を記載する。この特許は、特にスキューバダイビングを意図したものではないが、ネオプレンを用いて達成されたのと似た絶縁効果を布地に与えようと試みている。
【0007】
カナダ国特許第2810201号は、第1の部分が透けているネオプレンで構成され、その側面の両方に繊維布地を有するように与えられるスキューバダイビングスーツを記載する。密閉性の袖、首部、襟および袖の末端のようなこのスーツの他の部分は、ゴム、ネオプレンまたはラテックスで構成される。
【0008】
ネオプレン布地が有する問題は、その費用である。発泡した層および布地を、さらなる製造工程で一緒に接続しなければならない。別の問題は、縫製工程にある。ネオプレンを一緒に縫製するのは、織布を一緒に縫製するのと比べ、複雑であり、時間がかかる。一方、ネオプレン層は、着用するには暑すぎる場合があり、着用者の皮膚に対してアレルギー反応を引き起こすこともある。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、上の問題を解決し、ネオプレン(または他の発泡したプラスチック材料)の層を使用せずに、ネオプレン布地の外観を有する織布を提供することである。
【0010】
この目的は、本発明によって達成され、請求項1に記載の織布を提供し、この織布は、第1の側面(すなわち、前側)と、第2の側面(すなわち、後側)を有し、横糸の少なくとも一部が弾性糸であり、前記織布の繰り返し単位において、縦糸が、少なくとも3本の横糸の上に浮き(すなわち、通過し)、対応する上側部分を与え、同じ縦糸が、少なくとも3本の横糸の下に浮き(すなわち、通過し)、対応する下側部分を与え、それによって、2本の隣接する縦糸において、第1の糸の上側部分は、第2の糸の下側部分に少なくとも部分的に隣接している。
【0011】
好ましい実施形態では、この織布は、デニムの織りパターンまたはデニム状の織りパターンを有する。別の好ましい実施形態では、縦糸は、インジゴ染色されている。
【0012】
別の実施形態では、このダブルフェイス布地は、コーティングまたは硬化材料の層を伴って与えられ、好ましくは、この材料は、この材料が塗布されると、布地の中に浸透して「内側」層を与えるような粘性コーティングを用いて選択される。本発明の別の目的は、ダブルフェイス布地を与える工程と;前記布地を少なくとも1回コーティングし、前記布地を処理し、前記コーティングを前記布地の中に浸透させる工程と;場合により、前記コーティングを硬化させ、前記布地の構造の中に位置する少なくとも一部に硬化したポリマー層を与える工程とを含む、コンポジット布地を製造する方法である。
【0013】
別の実施形態では、この方法は、第1のダブルフェイス布地と、シングルフェイス布地から選択される別の布地と、第2のダブルフェイス布地とを一緒に接続するために提供される。この接続は、好ましくは、接着層を用いた結合によって行われる。第1のダブルフェイス布地または第2のダブルフェイス布地は、上に記載されるようにコーティングされてもよい。
【0014】
さらに別の実施形態では、ダブルフェイス布地は、第1および第2のシングルフェイス布地を提供する工程と、前記第1および第2のシングルフェイス布地を硬化性材料でコーティングする工程と、コーティングプラスチック材料の重合のためにダブルフェイス布地を圧縮する工程と、最終的なコンポジット布地を得る工程とを含む方法によって作られ、前記第1および第2のシングルフェイス布地は、横糸に弾性糸を用いる織りプロセスによって得られ、前記コーティングする工程は、第1および第2のシングルフェイス布地を第1のプラスチック材料で別個にコーティングすることと、コーティングされた第1および第2のシングルフェイス布地をカレンダー加工によって結合することと、ダブルフェイス布地を得ることと、前記ダブルフェイス布地を第2のプラスチック材料でコーティングすることとを含む。
【0015】
本発明は、ネオプレンが存在することによる欠点がなく、スキューバ(すなわち、ネオプレン)布地の外観を有する織布を提供する。さらに、この織布は、ネオプレン布地よりもかなり通気性がよく、製造するのが高価ではなく、標準的な洗浄サイクルで洗浄することができる。
【0016】
本発明の他の特徴および利点を、以下の例示的な実施形態の詳細な記載に開示する。
【0017】
添付の図面を参照しつつ、以下の例示的な実施形態の詳細な記載から、本発明をさらに開示し、これらは例示であると解釈し、限定するものではないと解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1Aおよび図1Bは、本発明の布地の好ましい実施形態を示す図
図2図2A−2Bは、本発明の布地の別の実施形態を示す図
図3】逆転させたパターンで図1Aの実施形態を示す図
図4図4A−4Bは、本発明の布地の別の実施形態を示す図
図5図5A−5Bは、本発明の布地の別の実施形態を示す図
図6】逆転させたパターンで図2Aの実施形態を示す図
図7図7A−7Bは、本発明の布地の別の実施形態を示す図
図8図6の布地の斜視図
図9】ポリマー層と共に与えられる図6の布地の斜視図
図10】本発明の布地にポリマー層を与える方法の工程のスキーム
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照しつつ、本発明は、第1の側面Bおよび第2の側面Aを有し、縦糸2および横糸3が一緒に織られ、布地の第1の側面Bおよび第2の側面Aの両方に所定のパターンを与えるダブルフェイス布地を提供する。既知の様式で、縦糸2は、1本以上の横糸3の上に浮き、対応する上側部分4を与え、1本以上の横糸3の下に浮き、対応する下側部分5を与える。横糸3の少なくとも一部(好ましくは、横糸3のすべて)が弾性糸である。
【0020】
本発明によれば、このパターンは、本質的に縦糸によって与えられる。布地のそれぞれの面で、縦糸2が、1本以上の横糸3の上に浮き、対応する上側部分を与える。
【0021】
詳細には、本発明の布地の片方の側面(つまり、図1A〜7Aに示されるような繰り返し単位RUの第1の側面または前面B)を見ると、布地の前記第1の側面Bで、第1の縦糸2が、少なくとも3本の横糸3の上に浮き、対応する縦糸の上側部分4を与えるようなパターンを与える。前記縦糸2は、続けて、1本の横糸3の下に浮き、下側部分5(すなわち、横糸の下にある縦糸部分)を与える。このようにして、縦糸2は、再び、布地の第1の側面にあり、再び、少なくとも3本の横糸の上を浮いてもよい。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、繰り返し単位において、それぞれの縦糸は、上側部分または下側部分に所定の優勢さを有し、一例として、第1の縦糸2は、上側部分の全長(すなわち、縦糸2が上を通過する横糸の合計数)が、下側部分の全長よりも長い。図1において、縦糸2’は、全部で6の上側部分を有し(すなわち、縦糸が上を通過する横糸の量)、黒色の四角によって示され、単位RUについて、全部で8本の横糸のうち6本である。
【0023】
本発明の繰り返し単位RUの好ましい実施形態では(例えば、図1および2を参照)、縦糸は、上側部分の優勢さを有する1本の縦糸と、下側部分の優勢さを有する縦糸が互い違いになった代替的なパターンを有する。言い換えると、縦糸2’は、下側部分より上側部分が多く、縦糸2’に隣接する2本の縦糸2”および2”’は、その側面で(図1Bを参照)、上側部分よりも下側部分が多くなるように配置される。
【0024】
本発明によれば、前記第1の縦糸2’に隣接して配置される2本の縦糸2”および2”’はそれぞれ、布地の前記第2の側面で、少なくとも3本の横糸の下に浮き、対応する縦糸の下側部分4を与え、前記縦糸は、続けて、1本の横糸3の上に浮き、布地の第1の側面で、対応する上側部分5を与える。8本の横糸と16本の縦糸を有するRUである図1Aおよび図1Bの実施形態では、縦糸2’は、3/1/3/1のスキームを有し、3は上側部分であり、1は下側部分である。縦糸2”および2”’は、1/7のスキームを有し、1は上側部分であり、7は下側部分である。
【0025】
好ましくは、縦糸のそれぞれの上側部分または下側部分の最大長さは、10本の横糸に対応する。一般的に、所定の上側部分の優勢さを有する縦糸において、N/1/Nのスキームでは、前記第1の縦糸2’の前記上側部分5は、それぞれ、少なくとも3本の横糸を通過し、その後、下側部分4は、1本の横糸を通過し、Nは、境界値を含め、3〜10の整数である。
【0026】
所定の下側部分の優勢さを有する縦糸(例えば、図1Aおよび1Bの隣接する縦糸2”、2”’)において、1/M/1のスキームでは、それぞれの下側部分4は、少なくとも3本の横糸を通過し、上側部分5は、1本の横糸を通過し、Mは、境界値を含め、3〜10の整数である。
【0027】
2本の隣接する縦糸のスキームは、同じであってもよく、または異なっていてもよい。図1Aおよび1Bの実施形態では、隣接する縦糸のスキームは、異なっている(すなわち、3/1/3/1と1/7)。図4において、スキームは同じである(3/1または1/3、すなわち、この実施形態では、2本の隣接する縦糸の上側部分および下側部分が同じ長さを有する)。すべての場合に、長い上側部分または下側部分の後、1本の横糸の1本の下側部分または上側部分がある。この1本の上側部分または下側部分は、斜め方向にずれるように繰り返し単位RUに配置されており、デニムの外観を与える。
【0028】
図7Aおよび7Bに示される本発明の一実施形態では、それぞれの同じ縦糸に、同じ長さを有する上側部分および下側部分が互い違いに並んでいる。この場合には、すでに述べた実施形態とは対照的に、下側部分または上側部分の優勢さは存在しない。
【0029】
図1Aおよび1Bに示される本発明の別の実施形態によれば、糸2’の上側部分4の長さは、隣接する縦糸2”、2”’の下側部分5の長さとは異なる。
【0030】
いずれにせよ、上側部分5および下側部分4が斜めパターンに整列してデニム効果を与えるものが本発明の最も好ましい態様である。好ましくは、縦糸は、インジゴ染色されており、ダブルフェイス布地のジーンズ効果を与える。縦糸2は、好ましくは、10Ne〜60Ne、好ましくは、10〜30NeのNeを有する綿糸である。縦糸は、当該技術分野で知られている種類のものであり、好ましくは、弾性コアと、綿繊維の鞘を含む。適切な横糸は、出願人の名前でPCT/EP2011/005723号に開示されている。
【0031】
本発明を、図面に示される好ましい実施形態を参照しつつ、さらに開示する。
【0032】
図1を参照すると、この織り地は、織機で16の異なる移動を含み、それぞれ、互いに上下に通過する縦糸および横糸を有する。横糸3(横糸の少なくとも1つ、好ましくはすべての横糸)は弾性であり、弾性要素の効果を伴って縮む。16本の縦糸2および8本の横糸3の配列の移動がすべて合わさると、1つのパターンを製造する。これらのパターンがすべて合わさり、布地の後側および前側の布地表面に全体的なパターンを製造する。白色の四角は、縦糸の下側部分を示し、すなわち、横糸3が縦糸2の上を通り、横糸3が布地の前側にある。黒色の四角は、横糸の上を通過する縦糸2を示し、これらの縦糸は、布地の前側B上に見えており、上側部分5を形成する。
【0033】
縦糸2”方向への織機の第1の移動において、横糸3は、縦糸の上を通り、縦糸は、布地の裏側にあり、後側Aに下側部分4を生成する。縦糸方向への織機の第2の移動において、縦糸2’は、最初の2本の横糸の上を通り、次いで、布地の後側を通って1本の横糸の下を通り、次いで、再び、横糸の位置が変わり、3本の横糸3の上を通り(再び、前側Bにある)、次いで、再び、横糸の位置が変わり、布地の後側を通って1本の横糸の下を通り、次いで、再び、前側を通過して1本の横糸に接するように通過する。次いで、縦糸2’は、最終的な布地において、上側部分および下側部分の同じパターンに従って続いていく。
【0034】
黒色の四角と白色の四角が作り出すマップに従って、すべての縦糸および横糸は、互いに、上を通過するか、または上側/下側に浮く。縦糸方向への左から右への16番目の移動の後、パターンは、縦糸および横糸が一緒に作る第1の移動に戻る。これらのすべての繰り返しが合わさり、布地が織られる。1つのレポート(RU)で、これらすべての縦糸および横糸の移動が16の異なる配列で起こり、1つの完全なレポートの後、パターンは、縦糸/横糸が一緒に作る移動の第1の配列に戻る。
【0035】
左から右への縦糸のパターンは、7a/1b、2b/1a/3b/1a/1b、4a/1b/3a、1b/1a/3b/1a/2b、1a/1b/6a、1a/3b/1a/3b、6a/1b/1a、3b/1a/3b/1a、3a/1b/4a、2b/1a/3b/1a/1b、1b/7a、1b/1a/3b/1a/2b、5a/1b/2a、1a/3b/1a/3b、2a/1b/5aおよび3b/1a/3b/1aであり、aは下側部分であり、bは上側部分である。3本の縦糸ごとに、1本ずつ下に下がる上側部分が1本の横糸によって斜め方向に並ぶと、必要な斜めの外観が得られる。
【0036】
図2Aおよび2Bに示されるように、この織り地は、織機で10回の異なる移動を含む。同様に、示される繰り返し単位の10本の縦糸と5本の横糸の配列の移動がすべて合わさり、1つのパターンを生成する。縦糸方向への10番目の移動の後、パターンは、縦糸/横糸が一緒に作る移動の第1の配列に戻る。これらすべての縦糸および横糸の移動は、1つのレポートで10の異なる配列が起こり、1つの完全なレポートの後、パターンは、縦糸/横糸が一緒に作る移動の第1の配列に戻る。
【0037】
左から右への縦糸のパターンは、1a/1b/3a、1b/1a/3b、3a/1b/1a、3b/1a/1b、1b/4a、1a/4b、2a/1b/2a、2b/1a/2b、4a/1bおよび4b/1aであり、aは下側部分であり、bは上側部分である。1本ずつ上に上がる上側部分が、3本の縦糸ごとに2本の縦糸によって斜め方向に並ぶとき、糸2”において1本ずつ上にあがる上側部分が、2本の縦糸ごとに糸2”’の1個ずつ上に上がる上側部分と並び、すなわち、2”’および2”の2つの上側部分の間に1本の横糸が存在するとき、必要な斜めの外観が得られる。
【0038】
図3の織り地は、図1Aおよび1Bに示される織り地と同じであるが、逆になっており、逆になっているとは、前側と後側が交換していることを意味する。従って、縦糸2”は、図1の同じ縦糸2”とは反対に、7が上/1が下のスキームを有する。
【0039】
図4A〜4Bに示されるように、この織り地は、織機で8の異なる移動を含む。同様に、RUの8本の縦糸と4本の横糸の配列の移動がすべて合わさり、1つのパターンを生成する。縦糸方向への8番目の移動の後、パターンは、縦糸/横糸が一緒に作る移動の第1の配列に戻る。これらすべての縦糸および横糸の移動は、1つのレポートで8の異なる配列が起こり、1つの完全なレポートの後、パターンは、縦糸/横糸が一緒に作る移動の第1の配列に戻る。
【0040】
左から右への縦糸のパターンは、3b/1a、1a/1b/2a、1a/3b、2a/1b/1a、1b/1a/2b、3a/1b、2b/1a/1bおよび1b/3aであり、aは下側部分であり、bは上側部分である。
【0041】
図5A〜5Bに示されるように、この織り地は、織機で16の異なる移動を含む。図1の織り地と似ているが、異なるパターンを有し、16本の縦糸と8本の横糸の配列の移動がすべて合わさり、1つのパターンを生成する。縦糸方向への16番目の移動の後、パターンは、縦糸/横糸が一緒に作る移動の第1の配列に戻る。これらすべての縦糸および横糸の移動は、1つのレポートで16の異なる配列が起こり、1つの完全なレポートの後、パターンは、縦糸/横糸が一緒に作る移動の第1の配列に戻る。図5Bは、図5Aのパターンの一部のみを示し、図5Aの左側から開始している。
【0042】
縦糸のパターン7b/1a、7a/1b、4b/1a/3b、4a/1b/3a、1b/1a/6b、1a/1b/6a、6b/1a/1b、6a/1b/1a、3b/1a/4b、3a/1b/4a、1a/7b、1b/7a、5b/1a/2b、5a/1b/2a、2b/1a/5bおよび2a/1b/5a。aは下側部分であり、bは上側部分である。このパターンでは、縦糸は、互い違いに並んだ、7が上/1が下および1が下/7が上の同じスキームを有する。斜め方向への整列に起因して、繰り返し単位において、スキームは、上に示されるように分けられるが、布地の上側部分および下側部分の長さは、7本の横糸分の長さのままである(同じ注釈をこの図の他の織りレポートにも適用する)。
【0043】
図6および図8の織り地は、図2A〜2Bに示されるものと同じであるが、逆になっており、逆になっているとは、前側Bと後側Aが交換していることを意味し、図2Aの上側部分は、図6の下側部分である。このスキームは、4が上/1が下(縦糸2”)と、4が下/1が上(縦糸2’)とが交互に並んだ縦糸である。1個ずつ上に上がる上側部分が、5本の縦糸ごとに1本の横糸によって斜め方向に並ぶ。
【0044】
図7A〜7Bに示されるように、この織り地は、5×10の繰り返し単位(またはレポート)RUにおいて、織機で5の異なる移動を含む。同様に、5本の縦糸と10本の横糸の配列の移動がすべて合わさり、繰り返し単位RUの1つのパターンを生成する。縦糸方向への5番目の移動の後、パターンは、縦糸/横糸が一緒に作る移動の第1の配列に戻る。これらすべての縦糸および横糸の移動は、1つのレポートで5の異なる配列が起こり、1つの完全なレポートの後、パターンは、縦糸/横糸が一緒に作る移動の第1の配列に戻る。
【0045】
左から右への縦糸のパターンは、1b/3a/1b/1a/3b/1a、1b/1a/3b/1a/1b/3a、1b/1a/1b/3a/1b/1a/2b、2a/1b/1a/3b/1a/1b/1aおよび3b/1a/1b/3a/1b/1aであり、aは下側部分であり、bは上側部分である。
【0046】
すでに述べたように、図7A〜7Bの実施形態は、それぞれの縦糸が、3本の横糸の上を浮く上側部分5および下側部分4が交互に並ぶものであり、この実施形態の範囲には、上側部分および下側部分がもっと長いものも含む。それぞれの上側部分の後、縦糸が、1本の横糸の1つの下側部分を有し、同様に、それぞれの下側部分の前に、縦糸が、1本の横糸の1つの上側部分を有することも注記しておくべきである。これにより、長い(少なくとも3本の横糸)の下側部分4と、長い上側部分5との間に2つの1本の縦糸の上側部分および下側部分が存在する。
【0047】
本発明は、コンポジット布地を作る方法にも関する。本発明によれば、この方法は、ダブルフェイス布地1を提供する工程と、前記布地にポリマー材料6を少なくとも1回塗布し、前記布地を処理し、前記コーティングを前記布地の中に浸透させる工程とを含む。好ましい実施形態によれば、ポリマー材料6を、例えば、コーティングデバイス10によって、または噴霧デバイスによって布地に塗布し、塗布されたコーティングを有する布地を、カレンダー8(図10)に供給し、コーティングを布地1に浸透させることによって処理される。好ましい実施形態では、コーティングは、硬化デバイス10中で添加剤を活性化すると硬化反応が開始するのに適した添加剤を含む。
【0048】
言い換えると、コーティングに使用されるポリマー材料6は、層の状態で布地1に塗布され、ポリマー材料が、ポリマーを布地から搾り取るように働くことができるときに、このようにして得られたコーティングされた布地をカレンダー処理する。処理のこの時点で、コーティングをデバイス9で架橋させ、このデバイスで添加剤が活性化し、前記布地の構造内に少なくとも一部が配置されている硬化した(架橋した、または重合した)ポリマー層を与え、得られた布地7は、図9に模式的に見ることができるように、布地1と、硬化したポリマー6’とを含む。布地7では、硬化したポリマー層6’が、糸と混じり合っており、そのほとんどが、ポリマー材料6’から可能な限り上側部分5が自由に動くように維持されるように、前記糸の間に収容されている。
【0049】
別の実施形態では、本発明の方法は、第1のダブルフェイス布地と、シングルフェイス布地から選択される別の布地と、第2のダブルフェイス布地とを一緒に接続する工程を含み、この接続は、好ましくは、接着層を用いて布地を結合することによって行われる。第1のダブルフェイス布地または第2のダブルフェイス布地は、他の布地に結合する前に、すでに開示された方法に従ってコーティングされてもよい。
【0050】
本発明のさらなる実施形態によれば、第1および第2のシングルフェイス布地を提供する工程と、前記第1および第2のシングルフェイス布地をポリマー材料でコーティングする工程と、コーティングプラスチック材料の重合のためにダブルフェイス布地を圧縮する工程と、最終的なコンポジット布地を得る工程とを含み、前記第1および第2のシングルフェイス布地は、横糸に弾性糸を用いる織りプロセスによって得られ、前記コーティングする工程は、第1および第2のシングルフェイス布地を第1のプラスチック材料で別個にコーティングすることと、コーティングされた第1および第2のシングルフェイス布地をカレンダー加工によって結合することと、ダブルフェイス布地を得ることと、場合により、前記ダブルフェイス布地を第2のプラスチック材料でコーティングすることとを含む、ネオプレン布地の特徴を有するコンポジット布地を作る方法が提供される。
【0051】
好ましくは、前記ポリマー材料を塗布した後で、これを硬化させる前に、ダブルフェイス布地をカレンダー処理し、ポリマー材料を前記布地に浸透させる。
【0052】
上に開示される任意のコーティング工程では、2種類またはもっと多くの異なるポリマー材料を布地に塗布してもよい。好ましい実施形態では、第1および/または第2のポリマー材料は、アクリルポリマーまたはアクリレート分散物である。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10