(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1コイル行に位置する前記コイルと前記第2コイル行に位置する前記コイルとは、互いに前記所定方向においてずらされて配置されている請求項1から3の何れか一項に記載の渦電流探傷装置。
前記コイルの表面の内、前記本体部と対面する表面と反対側の表面の少なくとも一部には、表面保護膜が形成されている請求項1から5の何れか一項に記載の渦電流探傷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている渦電流探傷装置は、チャンネルを切り替えることで広い範囲を探傷可能であるとともに、チャンネルごとに測定された測定値に対して補正処理を行なうことで異なるチャンネル間による渦電流の干渉を防止するものの、1つの励磁コイルと1つの検出コイルとが直線的に配列されているチャンネルによって配管等の壁面に形成されている傷を検出しており、その検出精度は十分ではない。
【0006】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は上述の従来技術に鑑みなされたものであり、複数のコイルを配置することによる広範囲の探傷を可能とするとともに、複数のコイル間による渦電流の干渉が生じてしまうことを防止しつつ、配管等の壁面に形成されている傷の検出精度を向上することができる渦電流探傷装置、及び渦電流探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る渦電流探傷装置は、配管等の壁面を探傷するための渦電流探傷装置であって、板状の本体部と、前記本体部の表面に配置された複数のコイルであって、少なくとも3以上のコイルが所定方向に配列されてなる第1コイル行、少なくとも3以上のコイルが前記所定方向に配列されてなる第2コイル行であって、前記第1コイル行に隣接して配列される第2コイル行、を含む複数のコイルと、コイルコントローラであって、前記複数のコイルの内、前記第1コイル行において互いに隣接する2つのコイル、及び、前記第2コイル行において互いに隣接する2つのコイルであって、前記第1コイル行の前記2つのコイルと隣接する2つのコイルを含む4つのコイルからなる第1コイル群を選択する第1選択処理、及び前記第1選択処理において選択された前記4つのコイルの内、前記第1コイル行における前記所定方向の一方側に位置するコイル、及び、前記第2コイル行における前記所定方向の他方側に位置するコイルを前記配管の前記壁面に渦電流を生じさせる励磁コイルとして機能させ、且つ、前記第1コイル行における前記所定方向の他方側に位置するコイル、及び、前記第2コイル行における前記所定方向の一方側に位置するコイルを前記渦電流の変化を検出する検出コイルとして機能させる第1探傷処理、を実行可能なコイルコントローラと、備える。
【0008】
上記(1)の構成によれば、板状の本体部の表面には複数のコイルが配置されている。これら複数のコイルは、少なくとも3以上のコイルが所定方向に配列されている第1コイル行と、少なくとも3以上のコイルが所定方向に配列されているとともに、第1コイル行に隣接して配列される第2コイル行と、を含む。このため、配管の壁面に対して所定方向において広い範囲で探傷することができる。
【0009】
また、上記(1)の構成によれば、コイルコントローラは、第1選択処理によって選択された第1コイル群の内、第1コイル行における所定方向の一方側に位置するコイル、及び、第2コイル行における所定方向の他方側に位置するコイルを配管の壁面に渦電流を生じさせる励磁コイルとして機能させる。また、第1選択処理によって選択された第1コイル群の内、第1コイル行における所定方向の他方側に位置するコイル、及び、第2コイル行における所定方向の一方側に位置するコイルを渦電流の変化を検出する検出コイルとして機能させる。このように、第1選択処理によって選択された第1コイル群によって渦電流探傷検査が行なわれるので、異なるコイル群間による渦電流の干渉が生じてしまうことを防止することができる。
【0010】
また、上記(1)の構成によれば、励磁コイルとして機能する2つのコイルによって渦電流を配管等の壁面に生じさせることで、励磁コイルとして機能する1つのコイルによって渦電流を配管等の壁面に生じさせる場合と比較して、配管等の壁面に形成されている傷による渦電流の変化を大きくすることができる。また、検出コイルとして機能する2つのコイルによって、その渦電流の変化を検出するので、特許文献1に記載されているような励磁コイルとして機能する1つのコイルに対して検出コイルとして機能する1つのコイルで渦電流の変化を検出する場合と比較して、配管の壁面に形成されている傷の検出精度を大きく高めることができる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記コイルコントローラは、前記第1探傷処理の実行完了後に、前記第1探傷処理において前記励磁コイル又は前記検出コイルとして機能させた前記コイルであって、前記第1コイル行における前記所定方向の他方側に位置する前記コイル、及び該コイルに対して前記第1コイル行における他方側に隣接するコイルと、前記第1探傷処理において前記励磁コイル又は前記検出コイルとして機能させた前記コイルであって、前記第2コイル行における前記所定方向の他方側に位置する前記コイル、及び該コイルに対して前記第2コイル行における他方側に隣接するコイルと、を含む4つのコイルからなる第2コイル群を選択する第2選択処理を実行する。
【0012】
上記(2)の構成によれば、コイルコントローラは、第1選択処理で選択した第1コイル群に対して、所定方向において連続的な第2コイル群が選択されるように第2選択処理を実行する。このため、配管等の壁面に形成されている傷に対して、所定方向において連続的に探傷するので、配管等の壁面に形成されている傷の検出精度を高めることができる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、前記コイルコントローラは、前記第2選択処理において選択された前記4つのコイルの内、前記第1コイル行における前記所定方向の一方側に位置するコイル、及び、前記第2コイル行における前記所定方向の他方側に位置するコイルを前記配管の前記壁面に渦電流を生じさせる励磁コイルとして機能させ、且つ、前記第1コイル行における前記所定方向の他方側に位置するコイル、及び、前記第2コイル行における前記所定方向の一方側に位置するコイルを前記渦電流の変化を検出する検出コイルとして機能させる第2探傷処理を実行する。
【0014】
上記(3)の構成によれば、第2探傷処理は、第1コイル行における所定方向の一方側に位置するコイル、及び、第2コイル行における所定方向の他方側に位置するコイルを励磁コイルとして機能させている。このため、第1探傷処理で励磁コイルとして機能させる2つのコイルによって生じさせる渦電流と略同一方向の渦電流を、第2探傷処理で励磁コイルとして機能させる2つのコイルによって生じさせることができる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)の何れか一構成において、前記第1コイル行に位置する前記コイルと前記第2コイル行に位置する前記コイルとは、互いに前記所定方向においてずらされて配置されている。
【0016】
本発明者らの知見によれば、第1コイル行に位置するコイルと第2コイル行に位置するコイルとは、互いに所定方向においてずらされて(例えば、千鳥状に)配置されることで、渦電流の変化による欠陥信号が大きくなることが判明している。このため、上記(4)の構成によれば、第1コイル行に位置するコイルと第2コイル行に位置するコイルとは、互いに所定方向においてずらされて配置されるので、配管等の壁面に形成されている傷の検出精度を高めることができる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)の何れか一構成において、前記コイルは、前記コイルの外周縁が矩形状を有する。
【0018】
本発明者らの知見によれば、複数のコイルが密に配置されることで、検出コイルとして機能するコイルは高い分解能で信号を取得できることが判明している。上記(5)の構成によれば、外周縁が矩形状を有するので、例えば外周縁が円形状を有する場合と比較して、複数のコイルを密に配置することができ、配管の壁面に形成されている傷の検出精度を高めることができる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、前記コイルの前記外周縁は長方形状を有し、前記コイルは、前記外周縁の短手方向が前記所定方向に沿うように、前記本体部の表面に配置される。
【0020】
本発明者らの知見によれば、コイルの外周縁が長方形状を有するときに、所定方向に対して外周縁が短手形状を有することで、検出コイルとして機能するコイルによる欠陥検出性を高めることができることが判明している。このため、上記(6)の構成によれば、コイルの外周縁は長方形状を有し、コイルは、外周縁の短手方向が所定方向に沿うように、本体部の表面に配置されるので、配管の壁面に形成されている傷の検出精度を高めることができる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)の何れか一構成において、前記本体部は、可撓性を有する材料から形成される。
【0022】
上記(7)の構成によれば、本体部は可撓性を有するので、配管の壁面の形状に応じて本体部を変形させることができる。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)から(7)のいずれか一構成において、前記コイルの表面の内、前記本体部と対面する表面と反対側の表面の少なくとも一部には、表面保護膜が形成されている。
【0024】
上記(8)の構成によれば、コイルを配管の壁面に近づけた際に、本体部と対面する表面と反対側の表面の少なくとも一部が配管等の壁面と接触することによって損傷してしまうことを防止することができる。
【0025】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る渦電流探傷方法は、板状の本体部と、前記本体部の表面に配置された複数のコイルであって、少なくとも3以上のコイルが所定方向に配列されてなる第1コイル行、少なくとも3以上のコイルが前記所定方向に配列されてなる第2コイル行であって、前記第1コイル行に隣接して配列される第2コイル行、を含む複数のコイルと、を備える渦電流探傷装置によって、配管の壁面を探傷する渦電流探傷方法であって、前記複数のコイルの内、前記第1コイル行において互いに隣接する2つのコイル、及び、前記第2コイル行において互いに隣接する2つのコイルであって、前記第1コイル行の前記2つのコイルと隣接する2つのコイルを含む4つのコイルからなる第1コイル群を選択する第1選択処理を実行する第1コイル群選択ステップと、前記第1選択処理において選択された前記4つのコイルの内、前記第1コイル行における前記所定方向の一方側に位置するコイル、及び、前記第2コイル行における前記所定方向の他方側に位置するコイルを前記配管の前記壁面に渦電流を生じさせる励磁コイルとして機能させ、且つ、前記第1コイル行における前記所定方向の他方側に位置するコイル、及び、前記第2コイル行における前記所定方向の一方側に位置するコイルを前記渦電流の変化を検出する検出コイルとして機能させる第1探傷処理を実行する第1探傷処理ステップと、を備える。
【0026】
上記(9)の方法によれば、少なくとも3以上のコイルが所定方向に配列されている第1コイル行と、少なくとも3以上のコイルが所定方向に配列されているとともに、第1コイル行に隣接して配列される第2コイル行と、を含む複数のコイルに対して、第1コイル群選択ステップと第1探傷処理ステップが行なわれる。このため、所定方向に対して広い範囲で探傷することができる。
【0027】
また、上記(9)の方法によれば、第1探傷処理ステップにおいて、第1選択処理によって選択された第1コイル群の内、第1コイル行における所定方向の一方側に位置するコイル、及び、第2コイル行における所定方向の他方側に位置するコイルを配管の壁面に渦電流を生じさせる励磁コイルとして機能させる。また、第1選択処理によって選択された第1コイル群の内、第1コイル行における所定方向の他方側に位置するコイル、及び、第2コイル行における所定方向の一方側に位置するコイルを渦電流の変化を検出する検出コイルとして機能させる。このように、第1選択処理によって選択された第1コイル群によって渦電流探傷検査が行なわれるので、異なるコイル群間による渦電流の干渉が生じてしまうことを防止できる。
【0028】
また、上記(9)の方法によれば、第1探傷処理ステップにおいて、励磁コイルとして機能する2つのコイルによって渦電流を配管の壁面に生じさせることで、励磁コイルとして機能する1つのコイルによって渦電流を配管の壁面に生じさせる場合と比較して、配管の壁面に形成されている傷による渦電流の変化を大きくすることができる。また、検出コイルとして機能する2つのコイルによって、その渦電流の変化を検出するので、特許文献1に記載されているような励磁コイルとして機能する1つのコイルに対して検出コイルとして機能する1つのコイルで渦電流の変化を検出する場合と比較して、配管の壁面に形成されている傷の検出精度を大きく高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、複数のコイルを配置することによる広範囲の探傷を可能とするとともに、複数のコイル間による渦電流の干渉が生じてしまうことを防止しつつ、配管の壁面に形成されている傷の検出精度を向上することができる渦電流探傷装置、及び渦電流探傷方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る渦電流探傷装置の概略構成図である。
【0033】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る渦電流探傷装置1は、配管100の壁面101を探傷するための装置であって、板状の本体部2と、この本体部2の表面2aに配置された複数のコイル4と、コイルコントローラ6と、を備える。
【0034】
図1に示した実施形態では、渦電流探傷装置1は、棒状形状を有する把持部8と、この把持部8とコイルコントローラ6とを接続するケーブル10と、この把持部8の先端に取り付けられる支持部5と、をさらに備えている。そして、この支持部5には、把持部8が取り付けられている側とは反対側に本体部2が取り付けられている。このように、プローブ3は、本体部2、複数のコイル4、及び支持部5から構成されている。
【0035】
コイル4は、配管100の壁面101に面するコイル面を有する、いわゆる上置コイルからなる。
【0036】
コイルコントローラ6は、ケーブル10を介してコイル4と電気的に接続されており、電気的信号をコイル4に送信することによって、コイル4を配管100の壁面101に渦電流を生じさせる励磁コイル、又は、この渦電流の変化を検出する検出コイルとして機能させることができる。
【0037】
図2は、本発明の一実施形態に係る本体部の表面に配置される複数のコイルを示した平面図である。
【0038】
図2に示すように、複数のコイル4は、少なくとも3以上のコイル4が所定方向に配列されてなる第1コイル行12を含む。また、複数のコイル4は、少なくとも3以上のコイル4が所定方向に配列されてなる第2コイル行14であって、この第1コイル行12に隣接して配列される第2コイル行14を含む。
【0039】
図2に示した実施形態では、第1コイル行12に含まれるコイル4a、4b、4c、4d、4eのそれぞれは、所定方向と直交する方向(走査方向)において、互いに同じ位置となるように配列されている。また、第2コイル行14に含まれるコイル4f、4g、4h、4i、4jのそれぞれは、走査方向において、互いに同じ位置となるように配列されている。そして、第1コイル行12に含まれるコイル4a、4b、4c、4d、4eのそれぞれは、第2コイル行14に含まれるコイル4f、4g、4h、4i、4jのそれぞれよりも、走査方向の前方側に配列されている。
尚、本体部2の表面2aには後述する板状の台座15が取り付けられており、この台座15にコイル4が取り付けられることで、コイル4は本体部2の表面2aに配置されている。
【0040】
本開示において、
図2に示すように、第1コイル行12に含まれるコイル4a、4b、4c、4d、4eの内、所定方向の最も一方側に位置するコイル4aを第1コイル4aとして説明する。そして、第1コイル4aから所定方向の他方側に向かって順番に位置するコイル4b、4c、4d、4eのそれぞれを、第2コイル4b、第3コイル4c、第4コイル4d、及び第5コイル4eとして説明する。同様に、第2コイル行14に含まれるコイル4f、4g、4h、4i、4jの内、所定方向の最も一方側に位置するコイル4fを第6コイル4fとして説明する。そして、第6コイルから所定方向の他方側に向かって順番に位置するコイル4g、4h、4i、4jのそれぞれを、第7コイル4g、第8コイル4h、第9コイル4i、及び第10コイル4jとして説明する。
【0041】
図3は、本発明の一実施形態に係るコイルコントローラの構成を示すブロック図である。
図4は、本発明の一実施形態に係るコイルコントローラにより行なわれる処理を説明するための説明図である。
【0042】
図3に示すように、コイルコントローラ6は、例えばプロセッサを含む中央処理装置(CPU6A)、ランダムアクセスメモリ(RAM6B)、リードオンリメモリ(ROM6C)、およびI/Oインターフェイス6Dなどから構成される。そして、コイルコントローラ6は、例えば、CPU6AによってROM6Cに記憶されているプログラム(後述する第1選択処理、第1探傷処理など)を実行する。
【0043】
図4に示すように、コイルコントローラ6は、複数のコイル4の内、第1コイル行12において互いに隣接する2つのコイル4、及び、第2コイル行14において互いに隣接する2つのコイル4であって、第1コイル行12の2つのコイル4と隣接する2つのコイル4を含む4つのコイル4からなる第1コイル群G1を選択する第1選択処理を実行可能に構成される。
【0044】
ここで、『第1コイル行12において互いに隣接する2つのコイル4』とは、第1コイル行12に含まれるコイル4の内、所定方向に沿って連続的に配列されている2つのコイル4である。同様に、『第2コイル行14において互いに隣接する2つのコイル4』とは、第2コイル行14に含まれるコイル4の内、所定方向に沿って連続的に配列されている2つのコイル4である。そして、『第2コイル行14において互いに隣接する2つのコイル4であって、第1コイル行12の2つのコイルと隣接する2つのコイル』とは、第2コイル行14の2つのコイル4のそれぞれが、第1コイル行12の2つのコイル4の内少なくとも1つのコイル4に対して、所定方向において重複するように配列される。
【0045】
例えば、
図4に示した実施形態では、コイルコントローラ6は、第1コイル行12において互いに隣接する第1コイル4aと第2コイル4bとを選択し、第2コイル行14において互いに隣接する第6コイル4fと第7コイル4gとを選択している。そして、この第6コイル4fは、第1コイル4aと第2コイル4bとのそれぞれに対して、所定方向において重複するように配列されている。また、この第7コイル4gは、第2コイル4bに対して、所定方向において重複するように配列されている。このように、コイルコントローラ6は、これら第1コイル4a、第2コイル4b、第6コイル4f、及び第7コイル4gからなる第1コイル群G1を選択する第1選択処理を実行している。
【0046】
図4に示すように、コイルコントローラ6は、上述した第1選択処理において選択された4つのコイル4(第1コイル4a、第2コイル4b、第6コイル4f、及び第7コイル4g)の内、第1コイル行12における所定方向の一方側に位置するコイル4(第1コイル4a)、及び、第2コイル行14における所定方向の他方側に位置するコイル4(第7コイル4g)を配管100の壁面101に渦電流を生じさせる励磁コイルとして機能させ、且つ、第1コイル行12における所定方向の他方側に位置するコイル4(第2コイル4b)、及び、第2コイル行14における所定方向の一方側に位置するコイル4(第6コイル4f)を渦電流の変化を検出する検出コイルとして機能させる第1探傷処理を実行可能に構成される。
【0047】
図4に示した実施形態では、第1コイル4a及び第7コイル4gを励磁コイルとして機能させ、第2コイル4b及び第6コイル4fを検出コイルとして機能させる第1探傷処理を実行している。
【0048】
このような本発明の一実施形態に係る渦電流探傷装置1によれば、板状の本体部2の表面2aには複数のコイル4が配置されている。そして、これら複数のコイル4は、少なくとも3以上のコイル4が所定方向に配列されている第1コイル行12と、少なくとも3以上のコイル4が所定方向に配列されているとともに、第1コイル行12に隣接して配列される第2コイル行14と、を含む。このため、配管100の壁面101に対して所定方向において広い範囲で探傷することができる。
【0049】
また、このような本発明の一実施形態に係る渦電流探傷装置1によれば、コイルコントローラ6は、第1選択処理によって選択された第1コイル群G1の内、第1コイル行12における所定方向の一方側に位置する第1コイル4a、及び、第2コイル行14における所定方向の他方側に位置する第7コイル4gを配管100の壁面101に渦電流を生じさせる励磁コイルとして機能させる。また、第1選択処理によって選択された第1コイル群G1の内、第1コイル行12における所定方向の他方側に位置する第2コイル4b、及び、第2コイル行14における所定方向の一方側に位置する第6コイル4fを渦電流の変化を検出する検出コイルとして機能させる。このように、第1選択処理によって選択された第1コイル群G1によって渦電流探傷検査が行なわれるので、異なるコイル群間(例えば、第1コイル群G1及び後述する第2コイル群G2)による渦電流の干渉が生じてしまうことを防止することができる。
【0050】
また、このような本発明の一実施形態に係る渦電流探傷装置1によれば、励磁コイルとして機能する2つのコイル4(第1コイル4a及び第7コイル4g)によって渦電流を配管100の壁面101に生じさせることで、励磁コイルとして機能する1つのコイルによって渦電流を配管100の壁面101に生じさせる場合と比較して、配管100の壁面101に形成されている傷による渦電流の変化を大きくすることができる。また、検出コイルとして機能する2つのコイル4(第2コイル4b及び第6コイル4f)によって、その渦電流の変化を検出するので、特許文献1に記載されているような励磁コイルとして機能する1つのコイルに対して検出コイルとして機能する1つのコイルで渦電流の変化を検出する場合と比較して、配管100の壁面101に形成されている傷の検出精度を大きく高めることができる。
【0051】
図5は、本発明の一実施形態に係るコイルコントローラにより行なわれる処理を説明するための説明図である。
【0052】
幾つかの実施形態では、
図5に示すように、コイルコントローラ6は、第1探傷処理の実行完了後に、第1探傷処理において励磁コイル又は検出コイルとして機能させたコイル4(第1コイル4a、第2コイル4b、第6コイル4f、及び第7コイル4g)であって、第1コイル行12における所定方向の他方側に位置するコイル4(第2コイル4b)、及び該コイル4(第2コイル4b)に対して第1コイル行12における他方側に隣接するコイル4(第3コイル4c)と、第1探傷処理において励磁コイル又は検出コイルとして機能させたコイル4(第1コイル4a、第2コイル4b、第6コイル4f、及び第7コイル4g)であって、第2コイル行14における所定方向の他方側に位置するコイル4(第7コイル4g)、及び該コイル(第7コイル4g)に対して第2コイル行14における他方側に隣接するコイル(第8コイル4h)と、を含む4つのコイル(第2コイル4b、第3コイル4c、第7コイル4g、及び第8コイル4h)からなる第2コイル群G2を選択する第2選択処理を実行する。
【0053】
図5に示した実施形態では、コイルコントローラ6は、第2コイル4b、第3コイル4c、第7コイル4g、及び第8コイル4hからなる第2コイル群G2を選択する第2選択処理を実行している。
【0054】
このような構成によれば、コイルコントローラ6は、第1選択処理で選択した第1コイル群G1に対して、所定方向において連続的な第2コイル群G2が選択されるように第2選択処理を実行する。このため、配管100の壁面101に形成されている傷に対して、所定方向において連続的に探傷するので、配管100の壁面101に形成されている傷の検出精度を高めることができる。
【0055】
幾つかの実施形態では、
図5に示すように、コイルコントローラ6は、第2選択処理において選択された4つのコイル4(第2コイル4b、第3コイル4c、第7コイル4g、及び第8コイル4h)の内、第1コイル行12における所定方向の一方側に位置するコイル4(第2コイル4b)、及び、第2コイル行14における所定方向の他方側に位置するコイル4(第8コイル4h)を配管100の前記壁面101に渦電流を生じさせる励磁コイルとして機能させ、且つ、第1コイル行12における所定方向の他方側に位置するコイル4(第3コイル4c)、及び、第2コイル行14における所定方向の一方側に位置するコイル4(第7コイル4g)を渦電流の変化を検出する検出コイルとして機能させる第2探傷処理を実行する。
【0056】
図5に示した実施形態では、コイルコントローラ6は、第2コイル4b及び第8コイル4hを励磁コイルとして機能させ、第3コイル4c及び第7コイル4gを検出コイルとして機能させる第2探傷処理を実行している。
【0057】
このような構成によれば、第2探傷処理は、第1コイル行12における所定方向の一方側に位置する第2コイル4b、及び、第2コイル行における所定方向の他方側に位置する第8コイル4hを励磁コイルとして機能させている。このため、第1探傷処理で励磁コイルとして機能させる2つのコイル4(第1コイル4a、及び第7コイル4g)によって生じさせる渦電流と略同一方向の渦電流を、第2探傷処理で励磁コイルとして機能させる2つのコイル4(第2コイル4b、及び第8コイル4h)によって生じさせることができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、コイルコントローラ6は、第1選択処理によって選択された第1コイル群G1のコイル4の内、1つを励磁コイルとして、残りのコイル4のうち1つを検出コイルとして機能させる一組のコイルグループを複数形成する。そして、複数のコイルグループは、互いに異なるタイミングで渦電流探傷検査を実行するように構成される。
【0059】
このような構成によれば、複数のコイルグループによって渦電流探傷検査の差分処理が実行されるため、配管100の壁面101に形成されている傷の検出精度を高めることができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、第1コイル行12に位置するコイル4と第2コイル行14に位置するコイル4とは、互いに所定方向においてずらされて配置されている。
【0061】
本発明者らの知見によれば、第1コイル行12に位置するコイル4と第2コイル行14に位置するコイル4とは、互いに所定方向においてずらされて(例えば、千鳥状に)配置されることで、渦電流の変化による欠陥信号が大きくなることが判明している。このため、このような構成によれば、第1コイル行12に位置するコイル4と第2コイル行14に位置するコイル4とは、互いに所定方向においてずらされて配置されるので、配管100の壁面101に形成されている傷の検出精度を高めることができる。
【0062】
また、このような構成によれば、本体部2を走査方向に移動させた際に、第1コイル行12において検出コイルとして機能するコイル4では検出できなかった探傷範囲に対して、第2コイル行14において検出コイルとして機能するコイル4によって検出可能である。
【0063】
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、複数のコイル4は、所定方向において、第2コイル行14に含まれるコイル4の重心O2が、第1コイル行に含まれる隣接する2つのコイル4の重心O1間の中心に位置するように、互いに所定方向においてずらされて配置されている。
【0064】
本発明者らの知見によれば、第2コイル行14に含まれるコイル4の重心O2が、第1コイル行に含まれる隣接する2つのコイル4の重心O1間の中心に位置するように、互いに所定方向においてずらされて配置されることで、渦電流の変化による欠陥信号を最も大きくすることができることが判明している。このため、このような構成によれば、配管100の壁面101に形成されている傷の検出精度をさらに高めることができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、コイル4は、コイル4の外周縁19が矩形状を有する。
【0066】
本発明者らの知見によれば、複数のコイル4が密に配置されることで、検出コイルとして機能するコイル4は高い分解能で信号を取得できることが判明している。このような構成によれば、外周縁19が矩形状を有するので、例えば外周縁19が円形状を有する場合と比較して、複数のコイル4を密に配置することができ、配管100の壁面101に形成されている傷の検出精度を高めることができる。また、このような構成によれば、複数のコイル4が密に配置されるので、本体部2の表面2aの表面積をコンパクトにすることができる。
【0067】
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、コイル4の外周縁19は長方形状を有し、コイル4は、外周縁19の短手方向が所定方向に沿うように、本体部2の表面2aに配置される。
【0068】
本発明者らの知見によれば、コイル4の外周縁19が長方形状を有するときに、所定方向に対して外周縁19が短手形状を有することで、検出コイルとして機能するコイル4による欠陥検出性を高めることができることが判明している。このため、このような構成によれば、コイル4の外周縁19は長方形状を有し、コイル4は、外周縁19の短手方向が所定方向に沿うように、本体部2の表面2aに配置されるので、配管100の壁面101に形成されている傷の検出精度を高めることができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、本体部2は、可撓性を有する材料から形成される。可撓性を有する材料としては、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム材料や、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂材料である。このような構成によれば、本体部2は可撓性を有するので、配管100の壁面101の形状に応じて本体部2を変形させることができる。
【0070】
図6は、本発明の一実施形態に係る本体部を走査方向から視認した時の図である。
図7は、本発明の一実施形態に係る本体部を所定方向から視認した時の図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る本体部を所定方向から視認した時の図である。
【0071】
幾つかの実施形態では、
図6〜
図8に示すように、コイル4の表面18の内、本体部2と対面する表面18aと反対側の表面18bの少なくとも一部には、表面保護膜16が形成されている。
図6〜
図8に示した実施形態では、本体部2と対面する表面18aと反対側の表面18bの全面を覆うような表面保護膜16が形成されている。
尚、本開示において、表面保護膜16は、可撓性を有する材料から形成される。これにより、渦電流探傷装置1による探傷処理を行なう際に、ノイズ因子となることを防止できる。また、可撓性を有する材料から形成されることで、表面保護膜16は摺動性やフレキシブル性を有する。
【0072】
このような構成によれば、コイル4を配管100の壁面101に近づけた際に、本体部2と対面する表面18aと反対側の表面18bの少なくとも一部が配管100の壁面101と接触することによって損傷してしまうことを防止することができる。
【0073】
幾つかの実施形態では、
図2、
図6及び
図7に示すように、コイル4と本体部2との間に台座15を設けてもよい。
図2、
図6及び
図7に示した実施形態では、台座15は本体部2の表面2aに取り付けられており、この台座15にコイル4が取り付けられることで、コイル4は本体部2の表面2aに配置されている。このような構成によれば、コイル4と本体部2との間には台座15が設けられるので、台座15が設けられない場合と比較して、コイル4を容易に本体部2の表面2aに配置することができる。
尚、台座15は、本体部2と同様に可撓性を有する材料(ゴム材料や樹脂材料)から形成されている。
図2、
図6及び
図7に示した実施形態では、台座15はフッ素ゴムから形成されている。
【0074】
また、幾つかの実施形態では、
図8に示すように、コイル4は、本体部2に埋め込まれるように本体部2の表面2aに取り付けられることで、本体部2の表面2aに配置されてもよい。この場合、コイル4と本体部2との間には台座15を設けない。
【0075】
図9は、本発明の一実施形態に係る渦電流探傷方法のフローチャートである。
【0076】
図9に示すように、本発明の一実施形態に係る渦電流探傷装置1の渦電流探傷方法は、第nコイル群選択ステップS1(ただし、nは1以上の自然数)と、第n探傷処理ステップS2と、を備える。
【0077】
渦電流探傷装置1による配管100の壁面101の探傷が開始される(n=1の場合)と、第1コイル群選択ステップS1において、複数のコイル4の内、第1コイル行12において互いに隣接する2つのコイル4、及び、第2コイル行14において互いに隣接する2つのコイル4であって、第1コイル行12の2つのコイル4と隣接する2つのコイル4を含む4つのコイル4からなる第1コイル群G1を選択する第1選択処理を実行する。
【0078】
そして、第1探傷処理ステップS2において、第1選択処理において選択された4つのコイル4の内、第1コイル行12における所定方向の一方側に位置するコイル4、及び、第2コイル行14における所定方向の他方側に位置するコイル4を配管100の壁面101に渦電流を生じさせる励磁コイルとして機能させ、且つ、第1コイル行12における所定方向の他方側に位置するコイル4、及び、第2コイル行14における所定方向の一方側に位置するコイル4を渦電流の変化を検出する検出コイルとして機能させる第1探傷処理を実行する。
【0079】
そして、この第1探傷処理ステップS2が完了した後に、コイルコントローラ6は、渦電流探傷装置1による配管100の壁面101の探傷を終了するかどうかを決定する(ステップS3)。探傷を終了する場合(ステップS3:Yes)には、この渦電流探傷装置1による配管100の壁面101の探傷を終了する。探傷を終了しない場合(ステップS3:No)には、nに1が足されて(つまり、n=2となって)、第2コイル群選択ステップS1が実行される。
【0080】
このような本発明の一実施形態に係る渦電流探傷装置1の渦電流探傷方法によれば、少なくとも3以上のコイル4が所定方向に配列されている第1コイル行12と、少なくとも3以上のコイル4が所定方向に配列されているとともに、第1コイル行12に隣接して配列される第2コイル行14と、を含む複数のコイル4に対して、第1コイル群選択ステップS1と第1探傷処理ステップS2が行なわれる。このため、所定方向に対して広い範囲で探傷することができる。
【0081】
また、このような本発明の一実施形態に係る渦電流探傷装置1の渦電流探傷方法によれば、第1探傷処理ステップS2において、第1選択処理によって選択された第1コイル群G1の内、第1コイル行12における所定方向の一方側に位置するコイル4、及び、第2コイル行14における所定方向の他方側に位置するコイル4を配管100の壁面101に渦電流を生じさせる励磁コイルとして機能させる。また、第1選択処理によって選択された第1コイル群G1の内、第1コイル行12における所定方向の他方側に位置するコイル4、及び、第2コイル行14における所定方向の一方側に位置するコイル4を渦電流の変化を検出する検出コイルとして機能させる。このように、第1選択処理によって選択された第1コイル群G1によって渦電流探傷検査が行なわれるので、異なるコイル群間による渦電流の干渉が生じてしまうことを防止できる。
【0082】
また、このような本発明の一実施形態に係る渦電流探傷装置1の渦電流探傷方法によれば、第1探傷処理ステップS2において、励磁コイルとして機能する2つのコイル4によって渦電流を配管100の壁面101に生じさせることで、励磁コイルとして機能する1つのコイルによって渦電流を配管100の壁面101に生じさせる場合と比較して、配管100の壁面101に形成されている傷による渦電流の変化を大きくすることができる。また、検出コイルとして機能する2つのコイル4によって、その渦電流の変化を検出するので、特許文献1に記載されているような励磁コイルとして機能する1つのコイルに対して検出コイルとして機能する1つのコイルで渦電流の変化を検出する場合と比較して、配管100の壁面101に形成されている傷の検出精度を大きく高めることができる。
【0083】
以上、本発明の一実施形態にかかる渦電流探傷装置、及び渦電流探傷方法について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。