特許第6979775号(P6979775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979775一又は複数の発散型フランジを有する複合積層板の形成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979775
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】一又は複数の発散型フランジを有する複合積層板の形成
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/38 20060101AFI20211202BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   B29C70/38
   B29C70/16
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-45033(P2017-45033)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-12321(P2018-12321A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2020年3月4日
(31)【優先権主張番号】15/132,073
(32)【優先日】2016年4月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン, マイケル ロバート
(72)【発明者】
【氏名】カールソン, リサ クリスティーナ
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−504220(JP,A)
【文献】 特表2016−514634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/38
B29C 70/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
稜線(612)で互いに交差するように上昇する第1の上面(614)及び第2の上面(616)を有するレイアップツール(600)であって、前記稜線の一部の上部に突起(800)を更に有するレイアップツール(600)を提供することと、
積層板(100)を前記2つの上面及び前記突起の上にレイアップすることと、
硬化ツール(1000)を前記レイアップツールの上部に接合することと、
前記積層板の発散型フランジ(130)を前記レイアップツールから前記硬化ツールの垂直側面(1030)に上に向かって掃引することと
を含む方法。
【請求項2】
前記硬化ツールが、前記突起によって覆われていない前記稜線の一部に沿って前記2つの上面と接合し、これにより前記積層板の前記発散型フランジが露出した前記突起の上部に保持されるように寸法が決定されている下面(1014、1016)を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記積層板の収束型フランジ(120)を前記レイアップツールの垂直側面(1020)にレイアップすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記積層板が、前記稜線に対して前記レイアップツール上に対称にレイアップされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記積層板の前記発散型フランジを上に向かって掃引することが、前記発散型フランジでの発散を引き起こす、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記発散型フランジを掃引しつつ、一定の圧力を前記発散型フランジに印加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記積層板を複合部品に硬化することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複合部品に硬化されることになる積層板(100)を成形するためのレイアップツール(600)であって、
稜線(612)で互いに交差するように上昇し、前記積層板のウェブ(110)を受容する第1の上面(614)及び第2の上面(616)と、
前記積層板の発散型フランジ(130)を受容する前記稜線の一部の上部における突起と、
前記レイアップツールの上部における硬化ツール(1000)であって、
前記2つの上面と接合し、前記積層板の前記発散型フランジを露出した状態に維持する下部(1014、1016)と、
前記積層板の前記発散型フランジが上に向かって折り曲げられるときに、前記積層板の前記発散型フランジを受容する垂直側面(1030)と
を備える硬化ツールと
を備えるレイアップツール(600)
を備えるシステム。
【請求項9】
前記突起のサイズが、前記稜線に沿った距離に基づき大きくなる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記突起のサイズが、前記発散型フランジが前記垂直側面まで上に向かって折り曲げられるときに発生することになる発散の量に一致する、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記突起が、前記稜線に対して対称である、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記2つの上面が、10度未満の角度で前記稜線まで上に向かって傾斜する、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記突起サイズが、前記発散型フランジの第2の部分が前記側面まで上に向かって折り曲げられるときに前記発散型フランジで発生することになる発散の量に一致する、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記下部が、線で互いに交差する2つの下面(1014、1016)を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
前記レイアップツールが、前記積層板の収束型フランジを受容するように寸法が決定された垂直側面を更に備える、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合設計の分野に関し、特に、複合部品に硬化されることになる積層板用の形成ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
形成ツールにより、構成材料(例えば、炭素繊維)の積層板は、複合部品に硬化される前に任意の様々な幾何学形状に形成可能になる。形成ツールはまた、ある温度及び圧力(例えば華氏350度、かつオートクレーブからの圧力で平方インチ当たり約90ポンド(90PSI))に曝される間に、積層板が変形しない又は形状が変わらないことを保証するために、積層板の硬化中に用いられることがある。
【0003】
形成ツールは、積層板が所望の形状を確実に実現できるよう支援する一方で、幾つかの部品及びツールの幾何学形状により、積層板のトウ/プライの発散が生じる。発散を引き起こすようにレイアップ後に形成ツールにより積層板を伸ばして成形する場合、生じた複合部品には、発散が形成された場所で座屈及び皺が見られることがある。これは、複合部品には不所望である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載の実施形態は、積層板がレイアップ後に形成されるときに発散が予想される場所で、複合部品用の積層板でレイアップされた材料の量を増加させる事前に構築された特徴を含む形成ツールである。余分の材料により、積層板には、発散が生じるときに座屈発生が回避され、よって積層板から形成される複合部品は、確実に期待された強度及び幾何学形状を含むように製造される。
【0005】
1つの実施形態は、稜線で互いに交差するように上昇する第1の上面及び第2の上面を有するレイアップツールであって、稜線の一部の上部に突起を更に有するレイアップツールを提供することと、積層板を上面及び突起の上にレイアップすることと、硬化ツールをレイアップツールの上部に載置することとを含む方法である。方法はまた、積層板の発散型フランジをレイアップツールから硬化ツールの垂直側面に上に向かって掃引することとを含む。
【0006】
別の実施形態は、複合部品に硬化されることになる積層板と、積層板を成形するためのレイアップツールであって、稜線で互いに交差するように上昇し、積層板のウェブを支持する第1の上面及び第2の上面を備えるレイアップツールと、積層板の発散型フランジを支持する稜線の一部の上部における突起とを備えるシステムである。システムはまた、レイアップツールの上部に硬化ツールを含む。硬化ツールは、突起によって覆われていない稜線の一部に沿って2つの上面と接合し、積層板の発散型フランジが露出した状態である下部と、積層板の発散型フランジが上に向かって折り曲げられている垂直側面とを備える。
【0007】
更なる実施形態は、複合部品に硬化されることになる積層板を形成するためのレイアップツールであって、稜線で互いに交差するように上昇し、積層板のウェブを受容するように寸法が決定されている第1の上面及び第2の上面を備えるレイアップツールと、積層板の発散型フランジを受容するように寸法が決定されている稜線の一部の上部における突起とを有するシステムを備える。システムはまた、レイアップツールの上部に硬化ツールを含む。硬化ツールは、突起によって覆われていない稜線の一部に沿って上面と接合するように寸法が決定されており、積層板の発散型フランジが露出した状態である下部と、積層板の発散型フランジが上に向かって折り曲げられるときに、積層板の発散型フランジを受容するように寸法が決定されている垂直側面とを含む。
【0008】
他の例示的な実施形態(例えば、上述の実施形態に関連する方法及びコンピュータ可読媒体)が、後述される。上述の特徴、機能及び利点は、様々な実施形態において独立に実現することが可能であり、また別の実施形態において組み合わせることも可能である。これらの実施形態について、以下の説明および添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0009】
本開示の幾つかの実施形態を、添付図面を参照し例示としてのみ説明する。全ての図面において、同じ参照番号は同じ要素又は同じタイプの要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】例示的実施形態における屈折した積層板を示す図である。
図2】例示的実施形態における屈折した積層板を示す図である。
図3】例示的実施形態における屈折した積層板を示す図である。
図4】例示的実施形態における屈折した積層板を示す図である。
図5】例示的実施形態における屈折した積層板を示す図である。
図6】例示的実施形態における複合部品に硬化されることになる積層板に対して形状を画定するレイアップツールを示す図である。
図7】例示的実施形態における複合部品に硬化されることになる積層板に対して形状を画定するレイアップツールを示す図である。
図8】例示的実施形態における複合部品に硬化されることになる積層板に対して形状を画定するレイアップツールを示す図である。
図9】例示的実施形態における複合部品に硬化されることになる積層板に対して形状を画定するレイアップツールを示す図である。
図10】例示的実施形態における複合部品に硬化されることになる積層板に対して形状を画定する硬化ツールを示す図である。
図11】例示的実施形態における複合部品に硬化されることになる積層板に対して形状を画定する硬化ツールを示す図である。
図12】例示的実施形態における複合部品に硬化されることになる積層板に対して形状を画定する硬化ツールを示す図である。
図13】例示的実施形態における複合部品に硬化されることになる積層板に対して形状を画定する硬化ツールを示す図である。
図14】例示的実施形態における硬化ツールと接合したレイアップツールを示す図である。
図15】例示的実施形態における積層板を形成するための方法を示すフローチャートである。
図16】例示的実施形態における積層板を成形するためのシステムのブロック図である。
図17】例示的実施形態における航空機の製造及び保守方法のフロー図である。
図18】例示的実施形態における航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面及び下記の記載により、本開示の具体的な例示的実施形態が示される。従って、当業者は、本明細書に明示的に記載又は図示されていない様々な装置を考案して本開示の原理を実施することができるが、それらは本開示の範囲に含まれることを理解されたい。更に、本明細書に記載のいかなる実施例も、本開示の原理の理解を助けるためのものであって、それらの具体的に記載された実施例や諸条件を限定しないものとして理解されるべきである。結果として、本開示は、下記の具体的な実施形態又は実施例に限定されず、特許請求項の範囲及びその均等物によって限定される。
【0012】
図1から図5は、例示的実施形態における積層板100を示す図である。図1が透視図であるのに対して、図2から図5は、図の矢印2−5それぞれによって示される種々の透視図、側面図、前面図、及び底面図である。特に、図2は、図1の図矢印2によって示された主側面図であり、図3は、図1の図矢印3によって示された積層板100の背向側面図である。図4は、図1の図矢印4によって示された積層板100の上面図であり、図5は、図4の図矢印5によって示された積層板100の背面図である。積層板100は、複合部品に硬化可能な構成材料の一又は複数の層(例えば、共に炭素繊維部品に硬化可能な材料の層)を含む。硬化プロセスは、真空バッグ技術を介して実現され得、積層板100をオートクレーブ内に載置することによって、又は他の適切な複合製造技術を介して実現され得る。
【0013】
図1に示されるように、積層板100は、「Z」字型のスパーを形成し、積層板100が屈折する。要するに、積層板100は、稜線112周囲で屈折する。更に、図5により示されるように、積層板100は、屈折するときに、収束型フランジ120上で収束122を強化し、発散型フランジ130上で発散132を強化する。これは、構成材料が122で「まとまる」ようになり(しわ形成につながり得る)、及び132で「広がる」ようになる(架橋につながり得る)ことを意味している。収束及び発散に関するこの問題により、積層板100は、不所望にも折れたり曲げられたりすると、意図しないように歪む原因に又は裂ける原因にさえなり得る。更なる実施形態では、積層板100は、「C」字型のスパー、「J」字型のスパー、「L」字型のスパー、「T」字型のスパー、又は任意の適切な形状であり得る。
【0014】
図6から図14は、形成されている積層板の収束及び発散に関する問題に対処可能な形成ツールを示している。特に、図6から図9は、積層板100が上部にレイアップされ得るレイアップツール600(図6)を示し、図10から図13は、屈折した積層板100の形成を完了するために、レイアップツール600(図14に示される)の上部に載置され得る硬化ツール1000(図10)を示している。硬化ツール1000は、また及び/又は代替的には、形成ツールと呼ばれることがあり、積層板100の硬化中及び/又は積層板100の形成促進中に、積層板100を支持するために積極的に使用され得る。
【0015】
図6から図9は、例示的実施形態における複合部品に硬化されることになる積層板100に対して形状を画定するレイアップツール600を示す図である。図6に示されるように、レイアップツール600は、上面614及び616を含む上体610を含む。面614及び616は、互いに向かって(例えば、10度未満の角度で)進み続ける際に、上に向かって(例えば、対称に)上昇/傾斜し、最終的には、稜線612で交差し、本実施形態では、上体610をV字型にする。レイアップツール600は、垂直側面620を更に含み、それによりエッジ622で面614及び616が交差する。幾つかの実施形態では、レイアップツール600は、別個の断片640及び650に線630で分割/分離され得る(例えば、レイアップツール600は、断片640及び断片650を接合することによって形成され得る)。図7は、図6の図の矢印7によって示されたレイアップツール600の図である。それに対して、図8は、突起800を更に含む、図6の図に示されたようなレイアップツール600を示している。
【0016】
突起800は、レイアップツール600の構成要素を含み得るか、又は付加的な別個の断片を含み得る。突起800は、稜線612を跨いで位置し(例えば、対称に)、稜線612が側面620から遠ざかるように延びるにつれ、稜線612に沿ってサイズが大きくなる(例えば、高さHほど)。つまり、突起800のサイズは、稜線612に沿った距離に基づき大きくなる。このサイズの増大は、発散型フランジ130が外に向かって伸び続け、順次、発散型フランジ130が大量の発散に耐えられることができるようになるにつれ、発散型フランジ130内の材料の量を増加させる。突起800は、上面614における断片804と、上面616における断片806とを含む。レイアップツール600の追加的透視図である図9では、積層板100は、レイアップツール600上にレイアップされている。積層板100の発散型フランジ130は、積層板100が図1に示される「Z」字型形状を形成するために、折り曲げ線900で上に向かって折り曲げられることになる。収束型フランジ120が側面620を覆う一方で、ウェブ110は、上面616及び614の一部を覆う。収束型フランジ120は、例えば、単位面積当たりの均一な繊維密度を保証するために、自動繊維配置(AFP)レイアッププロセス中に、そうでなければ収束型フランジ120上に載置されるであろうトウを落下させることによって、レイアップ中に形成され得る。発散型フランジ130は、突起800を部分的に覆い、突起800の上部に載置/レイアップされた材料134を含む。発散型フランジ130のレイアップ中に、突起800が、発散型フランジ130の他の部分と単位面積当たり同数の繊維を有するように、余分のトウが突起800上に加えられ得る。
【0017】
図10から図13は、積層板100に対する形状を画定する硬化ツール1000を示す図である。硬化ツール1000は、線1012で接合する下面1014及び1016だけではなく、垂直側面1020及び1030(例えば、主要部分では上に向かって/下に向かって延びる側面)を含む。したがって、本実施形態の下面1014及び1016には、レイアップツール600の上体610と接合するように寸法が決定され、例えば、任意の所与の場所に積層板の厚さ/標準寸法を加えたv字型の下体1010がもたらされる。エッジ1022は、側面1020と面1014及び1016との間に境界を形成する。その一方で、エッジ1032は、側面1030と面1014及び1016との間に境界を形成する。エッジ1032は、折り曲げ線900で発散型フランジ130を折り曲げるために所望のコーナー半径を有し得る。図11は、図10の図の矢印11によって示された図である。
【0018】
図12には、図10の硬化ツール1000と関連する積層板100が示される。図12に示されるように、積層板100の収束型フランジ120は、垂直側面1020と位置合わせされ、ウェブ110は、面1014及び1016と位置合わせされ、発散型フランジ130は、材料134を含む、垂直側面1030と位置合わせされる。図13では、発散型フランジ130は、側面1030に折り曲げられる/掃引される。これにより、発散型フランジ130には発散が生じ、余分な材料134が運ばれる。発散量が、上部に積層板100がレイアップされた突起800のサイズに対応するので、ゾーン1300での発散は、積層板100に引裂及び反りを生じさせることなく、材料134を利用する。
【0019】
図14は、例示的実施形態における硬化ツール1000と接合したレイアップツール600を示す図である。硬化ツール1000は、レイアップツール600を部分的に覆うが、完全に覆っているわけではなく、積層板100の発散型フランジ130は露出されたままである。図14に示されるように、発散型フランジ130は、もともとは突起800並びに面614及び616の一部を覆っていたが、硬化ツール1000の側面1030に上に向かって掃引される。これにより、突起800上にレイアップされた材料によって吸収される、ゾーン1300の発散が強化される。
【0020】
形成ツール600及び1000の動作の例示的な詳細部分が、図15を参照して検討されることになる。本実施形態に対して、オペレータが新しい複合部品の形成を所望すると想定される。
【0021】
図15は、例示的実施形態における積層板100を成形/形成するための方法1500を示すフローチャートである。方法1500のステップは、図6から図14の形成ツール600及び1000を参照して説明されるが、当業者は、方法1500 が他の環境内で他のツールを用いて実行され得ることを理解するであろう。本明細書に記載のフローチャートのステップは、網羅的でなく、図示されない他のステップを含み得る。本明細書に記載のステップはまた、他の順序で実行され得る。
【0022】
レイアップツール600は、例えば、自動繊維配置(AFP)機(図示されず)が動作可能である場所にレイアップツール600を載置/提供することによって、提供される(ステップ1502)。次に、積層板100は、レイアップツール600の上にレイアップされ、ここでは面614及び616にウェブ110及び発散型フランジ130、更には突起/ハンプ800をレイアップすることが含まれる(ステップ1504、図9に示される)。レイアップ完了後に、面1014及び1016が、面614及び616がウェブ110を支持するのと同じ場所でウェブ110の頂部に位置するように、硬化ツール1000がレイアップツールの上部に載置される(ステップ1506)。これにより、硬化ツール1000がレイアップツール600を完全に覆うことがないので、積層板100の発散型フランジ130は露出されたままである。露出されたままの発散型フランジ130は、次に、上に向かって硬化ツール1000の側面1030に掃引される(ステップ1508、図14に示される)。
【0023】
このプロセスの一部として、レイアップツール600の断片650は、発散型フランジ130を露出するために除去され、発散型フランジ130が、当て板により印加された圧力により問題なく、確実に上に向かって正しく掃引されるように、一定の圧力が、稜線112の両端で発散型フランジ130に印加され得る。レイアップツール600は、積層板100が確実にスリップしないように、このプロセス中に硬化ツール1000(「Z」形状を形成する)に押し付けら得る。更に、掃引作用を促進するために、オプションで、このプロセス中に発散型フランジ130に熱が印加されてもよい。硬化ツール1000が硬化ツールとして硬化中に用いられる実施形態では、積層板100は、所望のように発散型フランジ130の掃引前又は後のどちらかに、「Z」形状の硬化ツール1000に移されてもよい。
【0024】
前述の方法1500を使用して、発散型フランジ130を上に向かって掃引することによって引き起こされる発散を扱うために、突起800における余分の材料レイアップが利用可能である。これは、発散型フランジ130に反り又は引裂が生じないことを意味し、積層板100が、複合部品に硬化されるときに、確実に所望の強度及び形状を示すためには望ましいことである。
【0025】
更なる実施形態では、レイアップツール600は、分離可能な断片640及び650を含む。上面614及び616は、ウェブ110と任意の形成されることになる発散型フランジ(例えば、発散型フランジ130)との両方に対する材料をレイアップするための十分な幅を有している。突起800は、断面が三角形又は円弧状であってもよく、又は任意の適した形状であってもよい。突起800における材料レイアップは、まだ形成されていないが、稜線612の交差点から開始する上面614及び616に留まった状態である、発散型フランジ130の一部である。突起800は、余分な材料が、形成されることになる発散型フランジに対してレイアップされることを効果的に保証する。そのような実施形態では、硬化ツール1000のエッジ1032の半径(radius)は、形成されることになる発散型フランジに対する形成半径(forming radius)を画定する。レイアップツール600の断片650は、発散型フランジ130を露出し、発散型フランジ130の掃引を可能にするために除去される。これは、例えば、断片640(積層板100を含む)を硬化ツール1000に移動させることによって、実行され得る。発散型フランジ130が、硬化ツール1000のエッジ1032及び上方垂直側面1030により画定される半径周囲の稜線112の両側で、一定の圧力、及び潜在的には熱での掃引により形成される間に、硬化ツール1000は、圧力をウェブ110に提供する。形成された積層板は、新しく形成された形状と一致する別個の硬化ツールに更に移され、又は積層板100の形状に既に一致している硬化ツール1000で硬化され得る。
【0026】
更なる実施形態では、レイアップツール600は、分離不能であり、むしろ単一の一体的要素である。上面614及び616は、ウェブ110と形成されることになる発散型フランジ(例えば、発散型フランジ130)との両方に対して材料をレイアップできるのに十分な幅を示す。突起800は、形成されることになる発散型フランジ130をレイアップされる際に支持し、突起800の形状は、余分の材料を形成されることになる/掃引される発散型フランジに提供する。積層板100は、積層板100の形状に一致する硬化ツール(例えば、硬化ツール1000)に移され得る。追加的ツーリング(例えば、当て板、図示されず)は、一定の圧力及び/又は熱で発散型フランジ130を形成/掃引する間にウェブを安定させるために更に使用され得る。圧力及び/又は熱は、稜線112の両側を、エッジ1032の半径周囲で硬化ツール1000の垂直側面1030上方まで印加され得る。この方法は、フランジを形成するために、構造化された形成具(例えば、アップライトドレープ形成具)が使用されるときに有効であり得る。
【実施例】
【0027】
以下の例では、追加のプロセス、システム及び方法が、航空機用の複合部品を製造するために形成ツールを用いるシステムに照らして説明される。
【0028】
図16は、例示的実施形態における積層板形成システム1600のブロック図である。積層板形成システム1600は、レイアップツール1610、突起1620、硬化ツール1630、及び積層板1640を含む。レイアップツール1610は、稜線1612まで上に向かって上昇する面1614及び1616を含む。図16がブロック図であるので、面1614及び1616と稜線1612との間の正確な幾何学形状関係は、完全に提示することができない。したがって、面1614及び1616は、この図では単に稜線1612下方に置かれたブロック要素として示されている。レイアップツール1610はまた、垂直側面1618を含む。突起1620は、レイアップツール1610の頂部に位置する。積層板1640は、レイアップツール1610及び突起1620上にレイアップされ、積層板1640は、突起1620頂部に収束型フランジ1648、ウェブ1642、及び発散型フランジ1647を含む。更に、レイアップツール1610は、線1619を含み、断片1640を断片1650から分離する。硬化ツール1630は、積層板1640の頂部でレイアップツール1610と接合する。この実施形態では、硬化ツール1630は、側面1638を含み、また積層板1640の発散型フランジ1647が上部で掃引されることになる側面1637も含む。硬化ツール1630はまた、稜線1632と、面1634と、及び面1636とを更に備える。
【0029】
より具体的には図面を参照しながら、図17に示された航空機の製造及び保守方法、及び図18に示された航空機1702に照らして、本開示の実施形態が説明され得る。製造前段階では、例示的方法1700は、航空機1702の仕様及び設計1704と、材料の調達1706とを含み得る。製造段階では、航空機1702の構成要素及びサブアセンブリの製造1708とシステムインテグレーション1710とが行われる。その後、航空機1702は、認可及び納品1712を経て運航1714に供され得る。顧客による運航中、航空機1702には、改造、再構成、改修なども含み得る、定期的な整備及び保守1716が予定されている。方法1700の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実行され、又は実施され得る。本明細書の目的のために、システムインテグレータとは、限定しないが、任意の数の航空機製造者及び主要システムの下請業者を含んでもよく、第三者とは、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含んでもよく、オペレータとは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などであってもよい。
【0030】
図18に示すように、例示的方法1700によって製造された航空機1702は、複数のシステム1720及び内装1722を備えた機体1717を含み得る。高レベルシステム1720の例は、推進システム1724、電気システム1726、油圧システム1728、及び環境システム1730のうちの一又は複数を含む。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示しているが、本発明の原理は、自動車産業などの他の産業にも適用され得る。
【0031】
本明細書において実施される装置及び方法は、製造及び保守方法1700の任意の一又は複数の段階において用いられ得る。例えば、製造段階1708に対応する構成要素又はサブアセンブリは、航空機1702の運航期間中に製造される構成要素又はサブアセンブリと類似の方法で作製又は製造され得る。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせは、例えば、航空機1702の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機17022のコストを削減することにより、製造段階1708及び1710で利用され得る。同様に、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせは、航空機1702の運航中に、例えば限定するものではないが、整備及び保守1716に利用され得る。例えば、本明細書に記載の技術及びシステムは、ステップ1706、1708、1710、1714、及び/若しくは1716に使用され、並びに/又は機体1717及び/若しくは内装1722に使用されてもよい。
【0032】
1つの実施形態では、積層板100は、機体1717のストリンガとして動作する複合部品に硬化され、構成要素及びサブアセンブリの製造1108中に製造される。この複合部品は次に、システムインテグレーション1110で航空機に組み立てられ、その後、摩耗により複合部品が使用不能となるまで、運航1114において用いられ得る。次に、整備及び保守1116において、複合部品が処分され、新しい積層板がレイアップされ、硬化されて、古い複合部品が交換される。形成ツール600及び1000は、複合部品に硬化する追加的積層板を形成するために、構成要素及びサブアセンブリの製造1108を介して用いられ得る。
【0033】
図示された又は本明細書に記載の種々の制御要素(例えば、電気構成要素又は電子構成要素)の何れかが、ハードウェア、プロセッサ実装ソフトウェア、プロセッサ実装ファームウェア、又はこれらの幾つかの組み合わせとして実装され得る。例えば、ある要素が専用ハードウェアとして実装され得る。専用ハードウェア要素は、「プロセッサ」、 「コントローラ」、又は幾つかの類似用語で称され得る。プロセッサによって提供される場合、単一の専用プロセッサによって、単一の共有プロセッサによって、又はそのうちの幾つかが共有であり得る複数の個別のプロセッサによって、機能が提供され得る。更に、「プロセッサ」又は「コントローラ」の語の明確な使用は、ソフトウェアの実行が可能なハードウェアのみを表すと解釈されるべきでなく、非限定的に、デジタル信号 プロセッサ(DSP) ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC) もしくは他の回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェア記憶用のリードオンリメモリ (ROM)、ランダムアクセスメモリ (RAM)、不揮発性ストレージ、ロジックもしくは何らかの他の物理的ハードウェアコンポーネントもしくはモジュールなどを黙示的に含み得る。
【0034】
また、ある要素が、その要素の機能を実施するためにプロセッサ又はコンピュータによって実行可能な指令として実装され得る。指令の幾つかの例は、ソフトウェア、プログラムコード、及びファームウェアである。指令は、その要素の機能を実施するようにプロセッサに指示するためにプロセッサによって実行されるときに動作可能である。指令はプロセッサが可読なストレージデバイスに記憶され得る。ストレージデバイスの幾つかの例は、デジタルもしくはソリッドステートメモリ、磁気ディスク及び磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードドライブ、又は光学可読デジタルデータ記憶媒体である。
【0035】
ゆえに、要約すると、本発明の第1の態様により、
A1. 稜線(612)で互いに交差するように上昇する第1の上面(614)及び第2の上面(616)を有するレイアップツール(600)であって、稜線の一部の上部に突起を更に有するレイアップ(600)を提供することと、
積層板(100)を上面及び突起の上にレイアップすることと、
硬化ツール(1000)をレイアップツールの上部に接合することと、
積層板の発散型フランジ(130)をレイアップツールから硬化ツールの垂直側面(1030)に上に向かって掃引することと
を含む方法が提供される。
A2. また、硬化ツールが、突起によって覆われていない稜線の一部に沿って2つの上面と接合し、これにより積層板の発散型フランジが露出した突起の上部に保持されるように寸法が決定されている下面(1014、1016)を有している、段落A1の方法が提供される。
A3. また、積層板の収束型フランジ(120)をレイアップツールの垂直側面(1020)にレイアップすることを更に含む、段落A1の方法が提供される。
A4. また、積層板が、稜線に対してレイアップツール上に対称にレイアップされる、段落A1の方法が提供される。
A5. また、積層板の発散型フランジを上に向かって掃引することが、発散型フランジでの発散を引き起こす、段落A1の方法が提供される。
A6. また、発散型フランジを掃引しつつ、一定の圧力を発散型フランジに印加することを更に含む、段落A1の方法が提供される。
A7. また、積層板を複合部品内に硬化させることを更に含む、段落A1の方法が提供される。
本発明の更なる態様によれば、
B1. 複合部品に硬化されることになる積層板(100)と、
積層板を成形するためのレイアップツール(600)であって、
稜線(612)で互いに交差するように上昇し、積層板のウェブ(110)を支持する第1の上面(614)及び第2の上面(616)と、
積層板の発散型フランジ(130)を支持する稜線の一部の上部における突起(800)と、
レイアップツールの上部における硬化ツール(1000)であって、
2つの上面と接合し、積層板の発散型フランジを露出した状態に維持する下部(1014、1016)と、
積層板の発散型フランジが垂直側面(1030)まで上に向かって折り曲げられる垂直側面(1030)と
を備える硬化ツールと
を備えるレイアップツールと
を備えるシステムが提供される。
B2. また、突起のサイズが、稜線に沿った距離に基づき大きくなる、段落B1のシステムが提供される。
B3. また、突起のサイズが、発散型フランジが垂直側面まで上に向かって折り曲げられるときに発生することになる発散の量に一致する、段落B1のシステムが提供される。
B4. また、下部が、突起によって覆われていない稜線の一部に沿って2つの上面と接合している、段落B1のシステムが提供される。
本発明の更なる態様によれば、
C1. 複合部品に硬化されることになる積層板(100)を成形するためのレイアップツール(600)であって、
稜線(612)で互いに交差するように上昇し、積層板のウェブ(110)を受容する第1の上面(614)及び第2の上面(616)と、
積層板の発散型フランジ(130)を受容する稜線の一部の上部における突起と、
レイアップツールの上部における硬化ツール(1000)であって、
2つの上面と接合し、積層板の発散型フランジを露出した状態に維持する下部(1014、1016)と、
積層板の発散型フランジが上に向かって折り曲げられるときに、積層板の発散型フランジを受容する垂直側面(1030)と
を備える硬化ツールと
を備えるレイアップツール(600)
を備えるシステムが提供される。
C2. また、突起のサイズが、稜線に沿った距離に基づき大きくなる、段落C1のシステムが提供される。
C3. また、突起のサイズが、発散型フランジが垂直側面まで上に向かって折り曲げられるときに発生することになる発散の量に一致する、段落C1のシステムが提供される。
C4. また、突起が、稜線に対して対称である、段落C1のシステムが提供される。
C5. また、上面が、稜線に向かって対称に上昇する、段落C1のシステムが提供される。
C6. また、上面が、10度未満の角度で稜線まで上に向かって傾斜する、段落C1のシステムが提供される。
C7. また、突起サイズが、第2の部分が側面まで上に向かって折り曲げられるときに発散型フランジで発生することになる発散の量に一致する、段落C1のシステムが提供される。
C8. また、稜線が真っすぐである、段落C1のシステムが提供される。
C9. また、下部が、線で互いに交差する2つの下面(1014、1016)を備える、段落C1のシステムが提供される。
C10. また、レイアップツールが、積層板の収束型フランジを受容するように寸法が決定された垂直側面を更に備える、段落C1のシステムが提供される。
【0036】
特定の実施形態が本明細書に記載されたが、本開示の範囲はそれらの特定の実施形態に限定されるものではない。本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲及びその全ての均等物によって規定されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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