(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空調評価算出部は、前記居住者から前記第1の空調評価値を取得し、前記空調空間での連続滞在期間が第3の期間より短い居住者の前記第1の空調評価値を、前記空調制御が冷房の場合は涼しいまたは快適方向に補正し、前記空調制御が暖房の場合は寒いまたは不快方向に補正する、
請求項1または2に記載の空調制御装置。
前記空調評価算出部は、前記空調空間での滞在期間が第3の期間より短い居住者の前記第1の空調評価値を、前記空調制御が冷房の場合は暑いまたは不快方向に補正し、前記空調制御が暖房の場合は暖かいまたは快適方向に補正する、
請求項4または5に記載の空調制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態に係る空調制御装置および空調制御方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る空調制御システム10の構成例を示す図である。空調制御システム10は、空調機1−1,1−2と、携帯端末2−1,2−2と、空調制御装置3と、位置計測装置4−1,4−2と、を備える。空調制御装置3は、空調機1−1,1−2が通信線6で接続された空調ネットワークと接続する。空調ネットワークは空調機1−1,1−2からなるネットワークであるが、通信線6で接続されている空調制御装置3を含めて空調ネットワークとしてもよい。居住者が所持する携帯端末2−1,2−2は、空調制御装置3と無線通信で接続する。無線通信の方式としては、例えば、無線LAN(Local Area Network)があるが、これに限定されるものではない。位置計測装置4−1,4−2は、携帯端末2−1,2−2および空調制御装置3と無線通信で接続する。位置計測装置4−1,4−2は、携帯端末2−1,2−2との無線通信における通信電波強度を計測し、通信電波強度の情報を空調制御装置3に送信する。
【0011】
なお、空調制御システム10は、空調機リモコンなど、一般的な空調制御システムに含まれる機器は別途有しているものとし、本実施の形態では説明を省略する。以降の説明において、空調機1−1,1−2を区別しない場合は空調機1と称し、携帯端末2−1,2−2を区別しない場合は携帯端末2と称し、位置計測装置4−1,4−2を区別しない場合は位置計測装置4と称する。
【0012】
図2は、実施の形態1に係る空調制御装置3の構成例を示すブロック図である。空調制御装置3は、空調制御調整部31と、空調評価算出部32と、空調運転取得部33と、居住者位置算出部34と、を備える。
【0013】
空調制御調整部31は、通信線6を介して空調機1に制御信号を送信し、空調機1の動作を制御する。
【0014】
空調評価算出部32は、空調空間の居住者の快適性の評価値を算出する。空調評価算出部32は、具体的に、空調機1で現在の空調制御が実行されている期間において、規定された期間より長い期間空調空間に滞在した居住者の現在の空調制御に対する空調評価値を用いて、空調機1の空調制御の内容の決定の際に使用される空調評価値を算出する。現在の空調制御が実行されている期間を第1の期間とし、規定された期間を第2の期間とする。第1の期間≧第2の期間である。また、居住者の現在の空調制御に対する空調評価値を第1の空調評価値とし、空調機1の空調制御の内容の決定の際に使用される空調評価値を第2の空調評価値とする。
【0015】
空調運転取得部33は、通信線6を介して空調機1の内部状態値を取得する。内部状態値には、空調機1の吸い込み温度、空調機1周辺の湿度、現在の空調制御における空調機1の内部制御値などが含まれる。内部制御値は、例えば、サーモオフの時間帯、複数の空調機1がローテーション運転する場合の各空調機1の運転時間帯などである。
【0016】
居住者位置算出部34は、位置計測装置4から携帯端末2の通信電波強度を収集し、通信電波強度を用いて携帯端末2の位置を算出することによって、携帯端末2を所持する居住者、すなわち空調機1が制御対象とする空調空間にいる居住者の位置を算出する。
【0017】
空調評価算出部32の構成について説明する。空調評価算出部32は、運転周期算出部321と、定常状態判定部322と、滞在時間算出部323と、空調評価対象抽出部324と、居住者快適性集計部325と、を備える。
【0018】
運転周期算出部321は、空調運転取得部33から取得した空調機1の内部状態値に含まれる吸い込み温度を用いて、室内温度の変動周期すなわち空調機1の運転周期を算出する。空調機1の運転周期は、前述の第2の期間である。第2の期間は、現在の空調制御により生じる空調機1周辺の湿度の変動周期であってもよいし、現在の空調制御における空調機1の内部制御値の変動周期であってもよい。
【0019】
定常状態判定部322は、空調機1の空調制御の内容を変更してから空調空間の状態が定常状態か否かを判定する。定常状態は、空調機1の空調制御の内容を変更してから空調空間の状態が、空調制御の目標条件に到達した状態、または目標条件に対して変動量が規定された範囲内になった状態である。定常状態判定部322は、例えば、空調運転取得部33から取得した空調機1の吸い込み温度を用いて、吸い込み温度が目標条件すなわち目標温度に達したか否か、または吸い込み温度の変動量が目標温度に対して規定された範囲内になったか否かを判定する。定常状態判定部322は、吸い込み温度が目標温度に達した場合、または吸い込み温度の変動量が目標温度に対して規定された範囲内になった場合、定常状態になったと判定する。前述の第1の期間は、空調機1の空調制御の内容が変更されてから定常状態になるまでの期間を除く期間であって、定常状態になってから現在までの期間である。
【0020】
滞在時間算出部323は、居住者位置算出部34が算出した位置情報を用いて、居住者の空調空間での滞在時間を算出する。
【0021】
空調評価対象抽出部324は、定常状態において、運転周期、および各居住者の滞在時間から、空調制御の評価の集計の対象とする居住者を抽出する。
【0022】
居住者快適性集計部325は、抽出された居住者が携帯端末2に入力した空調評価値を集計し、空調機1の空調制御の内容の決定の際に使用される空調評価値を算出する。すなわち、居住者快適性集計部325は、第1の空調評価値を用いて、第2の空調評価値を算出する。
【0023】
つづいて、空調制御装置3の動作について説明する。なお、ここでは居住者の空調制御に対する評価である空調評価値、すなわち第1の空調評価値および第2の空調評価値として「暑い」、「寒い」の度合を意味する温冷感を用いる。また、空調制御装置3が、複数の空調機1が配置されたオフィスフロアにおいて、全空調機1に同一の制御を実施する場合の動作について説明する。
図3は、実施の形態1に係る空調制御装置3の動作を示すフローチャートである。
【0024】
居住者位置算出部34は、位置計測装置4から各携帯端末2との無線通信における通信電波強度を取得し(ステップS1)、携帯端末2を所持する居住者の位置を算出する(ステップS2)。居住者位置算出部34は、通信電波強度から居住者の位置を算出する方法として、例えば、電波強度と距離との関係式から携帯端末2と位置計測装置4との距離を導出し、3点測量により位置を決定する。なお、居住者位置算出部34は、通信電波強度の最も強い位置計測装置4の付近を携帯端末2の位置、すなわち居住者の位置として決定してもよい。空調運転取得部33は、空調機1から室内空気の吸い込み温度を取得する(ステップS3)。空調評価算出部32は、携帯端末2に入力された居住者の温冷感すなわち第1の空調評価値を収集する(ステップS4)。
【0025】
空調評価算出部32は、吸込み温度の履歴、居住者位置の履歴、および居住者の第1の空調評価値を用いて、空調制御システム10の空調制御対象となる空調空間の全体の温冷感を示す空調評価値、すなわち第2の空調評価値を算出する処理を行う(ステップS5)。なお、空調評価算出部32は、空調制御調整部31で空調制御の内容を変更した直後の定常状態ではない場合など、第2の空調評価値を算出しないことがある。空調評価算出部32におけるステップS5の詳細な動作については後述する。
【0026】
空調制御調整部31は、空調評価算出部32で算出された第2の空調評価値を用いて空調機1の空調制御の内容を決定する。ここで、空調制御調整部31は、前回空調制御の内容を変更した直後など、空調評価算出部32で第2の空調評価値が算出されていない場合(ステップS6:No)、空調機1の空調制御の内容を変更せずに処理を終了する。空調制御調整部31は、空調評価算出部32で空調評価値が算出されている場合(ステップS6:Yes)、第2の空調評価値の内容を確認する(ステップS7)。
【0027】
空調制御調整部31は、第2の空調評価値の内容が「寒い」の場合(ステップS7:寒い)、空調制御の内容として設定温度を0.5℃上げることを決定し、設定温度を0.5℃上げた設定を空調機1に指示する(ステップS8)。空調制御調整部31は、第2の空調評価値の内容が「快適」の場合(ステップS7:快適)、設定温度は変更しない(ステップS9)。この場合、空調制御調整部31は、ステップS6:Noの場合と同様、空調機1の空調制御の内容を変更せずに処理を終了する。空調制御調整部31は、第2の空調評価値の内容が「暑い」の場合(ステップS7:暑い)、空調制御の内容として設定温度を0.5℃下げることを決定し、設定温度を0.5℃下げた設定を空調機1に指示する(ステップS10)。空調制御装置3は、
図3に示すフローチャートの処理を規定された時間毎に繰り返し実行する。
【0028】
なお、居住者の空調制御に対する評価である空調評価値として、温冷感ではなく、不快と感じている居住者の比率を示す不快者率を用いてもよい。空調制御調整部31は、例えば、快適性が高いと思われる順に予め並べられた複数の空調制御内容が記載された制御リストを備える。空調制御調整部31は、不快者率が規定された閾値よりも高い場合、制御リストで不快者率が1つ低くなる空調制御内容を空調機1に設定すなわち指示する。空調制御調整部31は、不快者率が規定された閾値よりも低い場合、制御リストで不快者率が1つ高くなる空調制御内容を空調機1に設定すなわち指示する。
【0029】
つぎに、空調評価算出部32におけるステップS5の動作について詳細に説明する。
図4は、実施の形態1に係る空調評価算出部32の動作を示すフローチャートである。
【0030】
定常状態判定部322は、吸い込み温度の履歴を参照し、現在の空調制御の状態が定常状態か否かを判定する(ステップS21)。定常状態判定部322は、例えば、規定された期間において吸い込み温度が上昇傾向または下降傾向の場合は定常状態ではないと判定し、規定された期間において吸い込み温度が上昇傾向でも下降傾向でもない場合は定常状態と判定する。定常状態判定部322は、具体的に規定された期間を30分間とした場合、前半15分の吸い込み温度の平均値と後半15分の吸い込み温度の平均値とを比較して、差が±1℃の範囲に入っていれば定常状態と判定する動作が考えられる。定常状態判定部322は、現在の空調制御の状態が定常状態と判定した場合(ステップS22:Yes)、現在の空調制御の状態が定常状態であることを運転周期算出部321に通知する。
【0031】
運転周期算出部321は、吸い込み温度の履歴を参照し、規定された期間内で吸い込み温度が周期的に変化している箇所を探索し、変化の周期を運転周期として算出する(ステップS23)。
【0032】
図5は、実施の形態1に係る運転周期算出部321が運転周期を算出する動作の具体例を示す図である。運転周期算出部321は、例えば、規定された期間を30分間とした場合、まず、30分の間で吸い込み温度が周期的に変化している箇所を探索する。吸い込み温度が周期的に変化している箇所とは、複数の空調機1のうちのいずれかの空調機1である。運転周期算出部321は、吸い込み温度が周期的に変化している箇所が見つかった場合、見つけた箇所における30分間での平均温度を算出する。運転周期算出部321は、30分の間で吸い込み温度が平均温度になる時刻を求め、吸い込み温度が平均温度になる各時刻間の時間幅を算出する。運転周期算出部321は、算出した時間幅、
図5の例では時間幅#1〜#6の平均値を算出し、算出した平均値を2倍にしたものを運転周期として算出する。平均値を2倍にするのは、
図5に示すように、平均温度に対して吸い込み温度が上下交互になっており、平均温度に対して上側および下側となる時間幅を運転周期の1周期にするためである。なお、
図5に示す算出方法は一例であって、これに限定されるものではない。運転周期算出部321は、運転周期の算出において、吸い込み温度に替えて、内部状態値に含まれる空調機1周辺の湿度、または現在の空調制御における空調機1の内部制御値を用いてもよい。
【0033】
滞在時間算出部323は、居住者位置算出部34で算出された各居住者の現在の位置情報から、空調空間にいる居住者を抽出する(ステップS24)。滞在時間算出部323は、具体的に、空調制御装置3が制御対象としている空調機1のフロア内の配置を記憶しており、空調機1から一定の距離、例えば3m以内に居住者がいれば空調空間にいると判定する。
【0034】
滞在時間算出部323は、各居住者の過去の位置情報の履歴を参照し、空調制御調整部31が前述の
図3のフローチャートのステップS8またはステップS10の処理で前回空調制御の内容を変更してから定常状態判定部322が定常状態であると判定した時刻以降で、空調空間内に存在していた時間を積算した空調享受時間を居住者毎に算出する(ステップS25)。
【0035】
空調評価対象抽出部324は、運転周期算出部321で算出された運転周期と、滞在時間算出部323で算出された各居住者の空調享受時間とを比較し、運転周期<空調享受時間、すなわち運転周期より空調享受時間が長い居住者を空調評価対象として抽出する(ステップS26)。
【0036】
滞在時間算出部323は、空調評価対象抽出部324によって抽出された空調評価対象の居住者について、現在まで連続して空調空間に滞在していた時間である連続滞在時間を居住者毎に算出する(ステップS27)。滞在時間算出部323は、連続の条件として、規定された期間内、例えば5分以下の離席は連続扱いとしてもよい。これにより、滞在時間算出部323は、他の空調空間または外気の影響を受けない範囲での離席を除外することで、適切に連続滞在時間を算出することができる。
【0037】
居住者快適性集計部325は、空調評価対象抽出部324で抽出された空調評価対象の居住者の第1の空調評価値を参照し、滞在時間算出部323で算出された連続滞在時間に応じて、第1の空調評価値を補正する(ステップS28)。居住者快適性集計部325は、第1の空調評価値すなわち温冷感に対して、空調空間での連続滞在期間が第3の期間より短い居住者の温冷感を、空調制御が冷房の場合は涼しいまたは快適方向に補正し、空調制御が暖房の場合は寒いまたは不快方向に補正する。具体的に、居住者快適性集計部325は、連続滞在時間が第3の期間例えば30分間より短い場合、入力された温冷感よりも寒い側に補正する。居住者快適性集計部325は、例えば、温冷感が7段階で評価される場合、7段階評価で1段階分、寒い側に補正する。なお、上記の第3の期間は一例であって、30分に限定されるものではない。また、上記の第3の期間は、冷房期および暖房期で異なる時間であってもよい。
【0038】
居住者快適性集計部325は、補正後の空調評価対象の居住者の第1の空調評価値の平均値を空調空間全体の空調評価値、すなわち第2の空調評価値として算出し、出力する(ステップS29)。なお、居住者快適性集計部325は、補正後の第1の空調評価値すなわち温冷感の平均値を第2の空調評価値として算出したが、これに限定せず、補正後の第1の空調評価値すなわち温冷感の中央値または最頻値といった統計的手法によって得られる値を第2の空調評価値として算出してもよい。
【0039】
なお、定常状態判定部322は、現在の空調制御の状態が定常状態ではないと判定した場合(ステップS22:No)、第2の空調評価値を算出せず、第2の空調評価値なしを空調制御調整部31に出力する(ステップS30)。ステップS22:Yesの場合が
図3のフローチャートにおけるステップS6:Yesの場合に相当し、ステップS22:NoおよびステップS30の場合が
図3のフローチャートにおけるステップS6:Noの場合に相当する。
【0040】
ここで、空調制御装置3のハードウェア構成について説明する。空調制御調整部31および空調運転取得部33において空調機1と通信する機能はインタフェース回路により実現される。居住者位置算出部34において位置計測装置4と通信する機能はインタフェース回路により実現される。空調制御調整部31、空調運転取得部33、居住者位置算出部34のその他の機能、および空調評価算出部32の機能は処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)およびメモリであってもよい。
【0041】
処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。
【0042】
処理回路がCPUおよびメモリで構成される場合、空調制御装置3の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリに格納される。処理回路では、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することにより、各機能を実現する。ここで、CPUは、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、またはDSP(Digital Signal Processor)などであってもよい。また、メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0043】
空調制御装置3の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、空調制御装置3では、実行中の空調制御に対する居住者の評価を用いて空調機1の空調制御の内容を調整することとした。これにより、空調制御装置3は、空調制御システム10の空調機1が空調制御の対象とする空調空間の快適性を向上させることができる。
【0045】
また、空調制御装置3は、空調制御の調整に伴う空調制御の変更に対し、変更後の空調制御の空調効果を十分に享受した居住者の評価を用いて次の空調制御の調整を行う。これにより、空調制御装置3は、適切に空調機1の空調制御の内容を調整できる。また、空調制御装置3は、一定の運転周期すなわち変動周期を有する空調機1に対して、正しい評価に基づいて空調制御の内容を調整することができる。また、空調制御装置3は、空調制御の内容の変更が大きい場合にも、空調機1に対して、正しい評価に基づいて空調制御の内容を調整することができる。
【0046】
また、空調制御装置3は、居住者が外部から入室した直後では長時間滞在した場合と比較して異なる温冷感を示す点を考慮して空調制御の内容を調整できる。また、空調制御装置3は、居住者の評価が暖房時も冷房時も暑い側にシフトする傾向を除外して空調機1の空調制御の内容を調整することができ、居住者が長時間滞在時に快適となる空調空間を形成できる。なお、居住者の評価が暖房時も冷房時も暑い側にシフトする傾向は、夏は入出直後の温度差で涼しいとなるが速やかに発汗して居住者の体温が下がって暑い側にシフトし、冬は入出直後の温度差で暖かいとなり居住者の体の冷えがとれるまで継続するためと推定されるものである。
【0047】
なお、本実施の形態では、空調評価対象抽出部324が居住者の一部を抽出する動作について説明したが、これに限定されるものではない。空調評価対象抽出部324は、例えば、抽出に該当する居住者に大きい重みを与え、それ以外の居住者に小さい重みを与え、居住者快適性集計部325が、空調評価対象抽出部324で付与された重みに従って重み付き平均として空調評価値を算出してもよい。これにより、空調制御装置3は、抽出基準に該当しない居住者の評価を一定の割合で考慮することができる。
【0048】
また、空調制御装置3が、定常状態の判定、運転周期の判定などを都度行う場合について説明したが、これに限定されるものではない。空調制御装置3は、判定材料と判定結果との対応関係を示すテーブルを備えて各判定処理を行ってもよいし、また、判定処理の実績に応じてテーブルを補正してもよい。
【0049】
また、居住者位置算出部34は、居住者の位置の算出方法について、携帯端末2のビーコン電波の受信強度の測定結果を用いてもよいし、パーソナルコンピュータの位置が既知の場合には操作されているパーソナルコンピュータを検知して居住者の位置を特定してもよいし、座席センサを用いて居住者の位置を特定してもよい。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態2では、空調機1の吸い込み温度に替えて、居住者の周辺の室内温度を用いる。実施の形態1と異なる部分について説明する。
【0051】
図6は、実施の形態2に係る空調制御システム10aの構成例を示す図である。空調制御システム10aは、
図1に示す実施の形態1の空調制御システム10から空調制御装置3を削除し、空調制御装置3aおよび環境センサ5−1,5−2を追加したものである。環境センサ5−1,5−2は、空調制御装置3aと無線通信で接続する。環境センサ5−1,5−2は、空調空間において居住者の座席周辺に設置され、居住者の周囲の温度および湿度を計測する温湿度センサである。環境センサ5−1,5−2は、温度および湿度の両方を計測せず、温度または湿度の少なくとも1つを計測してもよい。以降の説明において、環境センサ5−1,5−2を区別しない場合は環境センサ5と称する。
【0052】
図7は、実施の形態2に係る空調制御装置3aの構成例を示すブロック図である。空調制御装置3aは、
図2に示す実施の形態1の空調制御装置3から空調評価算出部32および空調運転取得部33を削除し、空調評価算出部32aおよび環境計測部35を追加したものである。空調評価算出部32aは、空調空間の居住者の快適性の評価値を算出する。環境計測部35は、環境センサ5で計測された居住者の周囲の温度および湿度を取得する。
【0053】
空調評価算出部32aの構成について説明する。空調評価算出部32aは、運転周期算出部321aと、定常状態判定部322aと、滞在時間算出部323と、空調評価対象抽出部324と、居住者快適性集計部325aと、を備える。
【0054】
運転周期算出部321aは、環境計測部35から取得した室内温度を用いて、室内温度の変動周期すなわち空調機1の運転周期を算出する。運転周期算出部321aは、運転周期算出部321と異なり吸い込み温度ではなく室内温度を用いているが、運転周期の算出方法は運転周期算出部321と同様である。
【0055】
定常状態判定部322aは、環境計測部35から取得した室内温度を用いて、定常状態に入ったか否かを判定する。定常状態判定部322aは、定常状態判定部322と異なり吸い込み温度ではなく室内温度を用いているが、定常状態の判定方法は定常状態判定部322と同様である。
【0056】
居住者快適性集計部325aは、抽出された居住者の温冷感である第1の空調評価値を推定し、推定した第1の空調評価値を集計して、空調機1の空調制御の内容の決定の際に使用される第2の空調評価値を算出する。すなわち、居住者快適性集計部325aは、第1の空調評価値を推定し、推定した第1の空調評価値を用いて、第2の空調評価値を算出する。
【0057】
つづいて、空調制御装置3aの動作について説明する。
図8は、実施の形態2に係る空調制御装置3aの動作を示すフローチャートである。
【0058】
ステップS1,S2における居住者位置算出部34の動作は、実施の形態1のときの動作と同様である。環境計測部35は、環境センサ5から居住者周辺の温度すなわち室内温度を取得する(ステップS11)。なお、以降の説明では、空調制御装置3aが、室内温度を用いる場合について説明するが、一例であり、環境センサ5で計測された居住者周辺の湿度すなわち室内湿度を用いてもよいし、室内温度および室内湿度の両方を用いてもよい。
【0059】
空調評価算出部32aは、居住者の温冷感である第1の空調評価値を推定し、室内温度の履歴、居住者位置の履歴、および居住者の第1の空調評価値を用いて、空調制御システム10aの空調制御対象となる空調空間の全体の温冷感を示す空調評価値、すなわち第2の空調評価値を算出する処理を行う(ステップS12)。なお、空調評価算出部32aは、空調制御調整部31で空調制御の内容を変更した直後の定常状態ではない場合など、第2の空調評価値を算出しないことがある。空調評価算出部32aにおけるステップS12の詳細な動作については後述する。
【0060】
空調制御調整部31におけるステップS6からステップS10までの動作は、実施の形態1のときの動作と同様である。空調制御装置3aは、
図8に示すフローチャートの処理を規定された時間毎に繰り返し実行する。
【0061】
つぎに、空調評価算出部32aにおけるステップS12の動作について詳細に説明する。
図9は、実施の形態2に係る空調評価算出部32aの動作を示すフローチャートである。
【0062】
定常状態判定部322aは、室内温度の履歴を参照し、現在の空調制御の状態が定常状態か否かを判定する(ステップS41)。前述のように、定常状態判定部322aの判定方法は、室内温度を用いていることを除いて、定常状態判定部322の判定方法と同様である。定常状態判定部322aは、現在の空調制御の状態が定常状態と判定した場合(ステップS22:Yes)、現在の空調制御の状態が定常状態であることを運転周期算出部321aに通知する。
【0063】
運転周期算出部321aは、室内温度の履歴を参照し、規定された期間内で室内温度が周期的に変化している箇所を探索し、変化の周期を運転周期として算出する(ステップS42)。前述のように、運転周期算出部321aの算出方法は、室内温度を用いていることを除いて、運転周期算出部321の算出方法と同様である。
【0064】
ステップS24からステップS27までの処理は、実施の形態1と同様である。
【0065】
居住者快適性集計部325aは、まず、空調評価対象抽出部324で抽出された空調評価対象の居住者の位置情報の履歴と、環境計測部35で取得された室内温度の履歴とを用いて、空調評価対象の居住者の周囲温度の履歴を算出する。居住者快適性集計部325aは、算出した周囲温度の履歴を用いて、運転周期算出部321aで算出された運転周期毎に周囲温度を平均化した平均周囲温度を算出する。そして、居住者快適性集計部325aは、算出した平均周囲温度から、空調評価対象の居住者の温冷感すなわち第1の空調評価値を推定する(ステップS43)。
【0066】
居住者快適性集計部325aは、例えば、PMV(Predicted Mean Vote)指標などの計算式を用いて、活動量、着衣量などのパラメータの一部を、制御対象の空調空間での一般的な値として計算することができる。制御対象の空調空間での一般的な値とは、例えば、オフィスフロアにおける標準値などである。このように、居住者快適性集計部325aは、第2の期間における温度の平均値を用いて居住者の第1の空調評価値を推定する。なお、居住者快適性集計部325aは、前述のように温度に替えて湿度を用いてもよいし、温度および湿度の両方を用いてもよい。
【0067】
さらに、居住者快適性集計部325aは、滞在時間算出部323で算出された連続滞在時間に応じて、第1の空調評価値を補正する(ステップS44)。居住者快適性集計部325aは、推定した第1の空調評価値すなわち温冷感に対して、空調空間での滞在期間が第3の期間より短い居住者の温冷感を、空調制御が冷房の場合は暑いまたは不快方向に補正し、空調制御が暖房の場合は暖かいまたは快適方向に補正する。具体的に、居住者快適性集計部325aは、連続滞在時間が第3の期間例えば30分間より短い場合、推定した温冷感よりも暑い側に補正する。居住者快適性集計部325aは、例えば、温冷感が7段階で評価される場合、7段階評価で1段階分、暑い側に補正する。なお、上記の第3の期間は一例であって、30分に限定されるものではない。また、上記の第3の期間は、冷房期および暖房期で異なる時間であってもよい。
【0068】
ステップS29、およびステップS22:Noの場合のステップS30の処理は、実施の形態1と同様である。
【0069】
なお、空調制御装置3aのハードウェア構成は、実施の形態1の空調制御装置3のハードウェア構成と同様である。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態によれば、空調制御装置3aでは、実行中の空調制御に対する居住者の評価を推定し、実施の形態1の空調制御装置3と同様、実行中の空調制御に対する居住者の評価を用いて空調機1の空調制御の内容を調整することとした。これにより、空調制御装置3aは、空調制御システム10aの空調機1が空調制御の対象とする空調空間の快適性を向上させることができる。
【0071】
また、空調制御装置3aは、一定の運転周期を持った空調制御を実行した場合に、運転周期の途中での評価によって評価にズレが生じることを防ぎ、適切に空調制御の内容を調整することができる。特に、空調制御の内容を切り替えてからの時間が短く、運転周期の数回分しか経過していない場合、運転周期の途中の評価が混入することの影響が大きくなるため、空調制御装置3aの空調制御によって得られる効果は大きい。
【0072】
また、空調制御装置3aは、居住者が外部から入室した直後では長時間滞在した場合と比較して異なる温冷感を示す点を考慮した制御調整ができる。また、空調制御装置3aは、居住者の評価が暖房時も冷房時も暑い側にシフトする傾向を
反映して空調機1の空調制御の内容を調整することができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、居住者快適性集計部325aは、ステップS43の処理において、運転周期毎に周囲温度を平均化した平均周囲温度を算出し、平均周囲温度から空調評価対象の居住者の温冷感を推定していたが、これに限定されるものではない。居住者快適性集計部325aは、運転周期毎に周囲温度の最小値である最低周囲温度を算出し、最低周囲温度から空調評価対象の居住者の温冷感を推定してもよい。すなわち、居住者快適性集計部325aは、第2の期間における温度または湿度の少なくとも1つの最悪値を用いて居住者の第1の空調評価値を推定する。これにより、空調制御装置3aは、一定の制御周期を持った空調制御を実行した場合に、不満が出やすい最悪値での評価を考慮することで、適切に空調制御の内容を調整することができる。例えば、1つの室外機に複数の室内機がつながるシステム構成の場合、各室内機を一定時間停止させる省エネ制御では、内部負荷の大小によって停止中の温度変化の度合いが異なる。すなわち、内部負荷が大きいと急速に空調空間の環境が悪化する。内部負荷とは、例えば空調空間にいる居住者であり、内部負荷が大きいとは、空調空間にいる居住者が多い場合である。空調制御装置3aは、最悪値での評価を考慮することで、空調空間毎の特性を正しく反映して空調制御の内容を調整することができる。
【0074】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。