特許第6979883号(P6979883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979883
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】電気リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20211202BHJP
   B66B 9/02 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H02K41/03 B
   B66B9/02 Z
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-567319(P2017-567319)
(86)(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公表番号】特表2018-536369(P2018-536369A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2016064259
(87)【国際公開番号】WO2016207136
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年1月29日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2015/064535
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591159044
【氏名又は名称】コネ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】KONE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】ペトロフ、 イルヤ
(72)【発明者】
【氏名】プロスト、 テロ
(72)【発明者】
【氏名】ハカラ、 テロ
(72)【発明者】
【氏名】ラティア、 ヨウニ
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−177805(JP,A)
【文献】 特開平04−207952(JP,A)
【文献】 特開2001−298941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/00− 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に対し一定の相互関係で配設されるように構成されている少なくとも1つのリニア固定子と、移動する要素に連結し共働して前記固定子に沿って動くように構成されている少なくとも1つの駆動機と、
記少なくとも1つの固定子を支持する固定子梁を有し、該固定子梁はピッチ分の間隔をあけて前記固定子の強磁性極を担持する少なくとも1つの側面を含み、前記駆動機は前記固定子梁の前記側面に対向する少なくとも1つの対向面を含み、該対向面には前記駆動機の電磁要素が配設されて前記固定子の強磁性極と共働する電気リニアモータであって、
前記固定子梁は、少なくとも2つの固定子を支持する支持構造体と、該支持構造体を前記建物に固定する少なくとも1つの締結要素とを有し、
前記駆動機は前記固定子梁を囲繞するC字形材を有し、
前記駆動機は前記固定子梁の4つの側面に対向する4つの対向面を含み、対向面のそれぞれは前記駆動機の電磁要素を有し、前記C字形材の開口部は前記固定子梁の前記締結要素に適合するように構成されていることを特徴とする電気リニアモータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電気リニアモータにおいて、前記固定子および前記駆動機は、前記固定子梁に沿った前記移動する要素の移動の誘導手段を形成する電気リニアモータ。
【請求項3】
請求項2に記載の電気リニアモータにおいて、前記固定子の前記強磁性極および前記駆動機の前記電磁要素は前記要素の誘導および懸垂を行う磁気軸受を形成する電気リニアモータ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、前記駆動機は前記リニアモータの電磁駆動機の要素から独立して制御される個々の磁気軸受コイルを有し、該磁気軸受コイルを制御して前記リニアモータの空隙を調節し、前記個々の磁気軸受コイルは前記リニア固定子と共働する電気リニアモータ。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、該電気リニアモータは磁束切替式永久磁石モータ(FSPM)である電気リニアモータ。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、前記固定子梁は、ピッチが同一である固定子極が付いている少なくとも2つの側面を含み、該2つの側面の前記固定子極の前記固定子の長さ方向における位置は、互いに対してずれている電気リニアモータ。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、前記固定子梁は多角形状断面を含み、さらに強磁性極を担持する複数の側面を含み、該側面は角部で連結される電気リニアモータ。
【請求項8】
請求項に記載の電気リニアモータにおいて、前記固定子梁の断面は矩形である電気リニアモータ。
【請求項9】
請求項ないしのいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、前記固定子梁は、ピッチが同一である固定子極が付いている4つの側面を含み、向かい合う側面のピッチは一致しているが、直角に延伸している側面のピッチは前記固定子の長さ方向に半ピッチ分ずれている電気リニアモータ。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、前記駆動機は前記要素の一側から懸架を行う1つの取付側部を有するように構成されている電気リニアモータ。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、前記駆動機は前記固定子梁から該固定子梁に垂直な方向に解放可能である電気リニアモータ。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、導体レール付きのバスバーが前記固定子梁の両端部にわたって配設され、該固定子梁によって担持される前記要素の前記駆動機は、前記導体レールに連結する、接触ローラ付きの少なくとも1つの接触子を有する電気リニアモータ。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、前記駆動機または前記移動する要素は電源を有し、該電源は前記駆動機の予備電源として構成されている電気リニアモータ。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、前記リニアモータは、垂直方向の長さが50m超の高層エレベータに設置されるように構成されている電気リニアモータ。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、少なくとも2本の平行する固定子梁が前記建物内に配設され、該固定子梁はそれぞれ少なくとも1つの駆動機を誘導し、互いに平行に配設される少なくとも2つの駆動機は前記移動する要素に共通して連結されるように構成され、該駆動機はそれぞれ前記固定子梁の一方と共働する電気リニアモータ。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、前記強磁性極は強磁性固定子ロッドの側面に設けられる歯であり、該歯は歯溝分の間隔があいている電気リニアモータ。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載の電気リニアモータにおいて、前記固定子は永久磁石を有さず、さらに巻線も有していない電気リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、例えば、建物に設けられたエレベータシャフトなどの環境構造体またはエスカレータ、動く歩道あるいは動く傾斜路の経路に沿って延伸しているリニア固定子を有する電気リニアモータに関するものである。モータは、例えば巻線および/または永久磁石などの電気モータの回転部材を備えた駆動機を保持する。これにより、移動する要素とともに動く駆動機および環境構造体に沿って取り付けられるリニア固定子が、リニアモータを形成する。このような種類のモータは、それ自体が公知のものである。これらのモータは、高さが例えば50m以上であるエレベータシャフトを検討する場合は特に、巻線および/または永久磁石を含むリニア固定子はきわめて高価であるという点で不利である。さらに、このようなリニア固定子が既存の中層エレベータに用いられる場合、その重量がかなり増加する。
【発明の概要】
【0002】
したがって、本発明は、製造費が比較的安価で、長い移動経路にも適応する電気リニアモータを提供することを目的とする。
【0003】
本目的は、請求項1に係る電気リニアモータにより達成される。本発明の好適な実施例は、従属請求項の対象である。また、本発明の実施例は、明細書および図面にも示される。また、本発明の内容は、特に明示的または暗示的なサブタスクの観点で、または達成される利点に関連して考慮して、いくつかの別々の発明から成っていてもよい。この場合、下記の特許請求の範囲に含まれる特性のいくつかは、別の発明の概念の観点からすれば不必要であるかもしれない。基本的な発明の概念の枠内で、本発明の様々な実施例における特徴を、他の実施例と併せて適用することもできる。
【0004】
本発明によると、電気リニアモータは、環境構造体、とくに建物に対し一定の相互関係で配設されるように構成されている少なくとも1つのリニア固定子を有する。さらにモータは、移動する要素に連結され、固定子に沿った動きに共働するように構成されている少なくとも1つの駆動機を有する。モータは、固定子の長手方向に延伸していて少なくとも1つの固定子を支持する固定子梁を有し、固定子梁は、ピッチ(d)分の間隔をあけて固定子の強磁性極を担持する少なくとも1つの側面を含む。駆動機は固定子の前述した側面に対向する少なくとも1つの対向面を含み、対向面には、例えば駆動機鉄心、巻線および永久磁石のような駆動機の電磁要素が配設されている。
【0005】
そのため、本発明は、リニア固定子は強磁性極のみを要するという利点を有する。強磁性極は例えば、鉄または鉄含有合金からなる強磁性材料から作られた固定子ロッドの側面に形成される固定子歯でもよい。これにより、リニア固定子を支持する固定子梁をより軽量にでき、その結果、例えば高層エレベータ、特に50m超の高さ、好ましくは100m超の高さのエレベータに固定子梁を使用できる。この方式では相関重量の点から高層エレベータの設計の障壁となるエレベータロープを全く使用する必要がないため、このようなリニアモータの概念をあらゆる高層エレベータへの用途に適応できる。当然のことながら、リニアモータを、例えばエスカレータ、動く歩道および動く傾斜路のような長距離移動走路を有する他の用途に用いることも可能である。好ましくは、固定子梁は、少なくとも2つの固定子用の支持構造体と、支持構造体をエレベータシャフトに固定する少なくとも1つの締結要素を有する。このような構造を採る利点は、固定子梁は2つの固定子およびこれに応じてより大きな力を発生させるリニアモータの面を有することで、モータ力が倍増することにある。
【0006】
好ましくは、例えばエレベータシャフトのような環境構造体における固定子梁および例えばエレベータ乗りかごのような要素の駆動機は、環境構造体内で移動する要素の走行の誘導手段を形成する。エレベータ乗りかごは通常、ガイドローラによって、エレベータシャフト内を垂直方向に延伸するガイドレールに沿って誘導される。このような一般的な技術は、リニアモータの固定子梁自体が駆動機とともに固定子梁に対する要素の誘導手段を形成する場合、有利に除外できる。これは、例えば別の手段では、駆動機または駆動機に連結されている移動する要素における対応する誘導手段(例えばローラ)と共働する固定子梁にガイド面を設けることで実現できる。好ましくは、誘導手段は固定子極およびリニアモータの電磁部品によって提供される。これにより、高速列車として知られる磁気浮上式モノレールと同様の、一種の磁気誘導が提供される。
【0007】
したがって、最適には、固定子梁の強磁性固定子極および駆動機の電磁要素は、移動する要素の誘導および懸垂を行う磁気軸受を形成する。
【0008】
好ましくは、駆動機は、固定子および駆動機の電磁部品で形成される磁気軸受により、それぞれの固定子の周りに集められる。駆動機の巻線を制御することで、固定子の側面と駆動機の対向面の間に空隙が維持される。このようにして、固定子梁および駆動機は、エレベータシャフト等の環境構造体内にあるエレベータ乗りかご等の移動する要素の複合駆動部ならびに誘導部を形成する。したがって要素は、固定子梁に連結して使用される任意の種類のガイドレールと共働するガイドローラまたはガイド面のような個々の誘導手段から独立している。
【0009】
本発明の好ましい実施例において、駆動機はリニアモータの電磁駆動機の要素から独立して制御される個々の磁気軸受コイルを有する。個々の磁気軸受コイルの目的はただ、リニアモータの空隙を調節することにある。駆動機の磁気軸受コイルは、リニア固定子、好ましくは固定子鉄心と共働して、空隙の長さ/厚さにおけるあらゆるずれを修正する。好ましくは、磁気軸受コイルは、駆動機の延長として電磁駆動機の要素、すなわちリニアモータコイル/磁石の上や下に配置される。
【0010】
好ましくは、2つの固定子を垂直固定子梁の両側に配設して、固定子梁と駆動機の間の水平力を解消するか、少なくとも実質的に低減させる。
【0011】
本発明の最適な実施例では、駆動機は磁気軸受を用いてそれぞれの固定子の周りに集められる。磁気軸受は、例えば、固定子の電磁部品およびリニアモータの駆動機によって形成され得る。このような磁気軸受により、固定子と駆動機の対向面の間に一定の空隙を維持する。
【0012】
本発明の一実施形態において、固定子梁はさらに、駆動機に配設されるガイドローラに対するガイド面を含んでいてもよい。
【0013】
好ましくは、本発明のエレベータモータは、例えば米国特許出願公開第2013/0249324 A1号で示す磁束切替式永久磁石モータである。このようなモータは費用対効果が大きく、高い推力をもたらし、異常状態にあっても良好に動作できる。
【0014】
好ましくは、固定子梁はピッチが同一である固定子極が付いている少なくとも2つの側面を含む。そして、どちらの側面の固定子極のピッチも好ましくは長さ方向において互いに1/2ピッチずれていて、好ましくは4つの固定子すべてが互いに対し1/4ピッチずれている。このような実施例により、当該三相リニアモータのコギングトルクを低減できるため、モータの効率がより良好になり、動きがより平滑になる。
【0015】
本発明の好ましい実施例において、固定子梁は多角形状断面を含み、さらに強磁性固定子極を担持する複数の側面を含み、側面は角部で連結される。この方式により、複数の固定子を固定子梁に連結して配設することができるとともに、複数の固定子はエレベータ乗りかごに連結される1または複数の駆動機に配設されている対応する数の対向面と共働するという利点が得られる。これにより、駆動力、すなわちモータの力を実質的に増大できる一方で、水平力を実質的に低減できる。
【0016】
本発明の好ましい実施例において、固定子梁の断面は好適には矩形、とりわけ正方形である。この場合、強磁性固定子極を担持する4つの側面が得られ、対向する側面の固定子のピッチが同一になるだけでなく、固定子極の位置も同一にしてよい。これに対し、互いに対して矩形状に配置される側面は同一のピッチを有するものの、固定子の長さ方向に好ましくは半ピッチ分ずれる。本実施例により、特に側面に対し垂直である水平面がなくなる一方で、矩形状側面のピッチ分のずれにより、エレベータモータの脈動が1/2に低減するため、モータの動作がより効率的になり、より滑らかに駆動する。
【0017】
好ましくは、駆動機は、固定子梁を囲繞するC字形材またはU字形材を有する。これらの形材により固定子梁の囲繞が容易になり、駆動機の対向面をわずかな空隙をもって固定子梁の対応する側面に対向させる。その一方で、C字またはU字形材の開口部は、シャフト壁またはエレベータシャフト内に固定された任意の構造体における固定子梁の締結要素に適合するように構成されている。いくつかの実施例では、駆動機は固定子梁の短部を把持し、乗りかごが隣接するシャフトに移動する際に固定子梁は駆動機内にあり続ける。
【0018】
U字形材の基部方向に水平に動く際にU字形材は固定子梁から取り外せるということも、U字形材の利点である。
【0019】
好ましくは、駆動機は、環境構造体のシャフト側部に配設されるガイドレールおよび固定子梁を用いて、要素をリュックサック懸架するように構成される。このような方式では、対応する機構によって固定子梁から駆動機を解放することができ、さらにガイドレールを解放することができる。好ましくは、駆動機は一方の側部にエレベータ乗りかごなどの要素の取付具を、反対側の側部に固定子梁に対向する対向面を有する。これにより、固定子と駆動機の間に構築される誘導電磁場により、および/または固定子梁に沿って動くガイドローラまたはガイドシューなど従来の誘導手段により、要素の誘導が実現される。
【0020】
本発明の一実施例において、固定子梁は固定子自体、例えば固定子ロッドによって形成される。本発明の一実施例において、固定子梁は例えば2つの向かい合う側部に歯を有する四角い金属ロッドから形成されてもよい。
【0021】
好ましくは、導体レールまたはバスバーが、移動する要素の移動経路の両端部にわたって配設される。この場合、駆動機は導体レールまたはバスバーを連結する、好ましくは接触子ローラ付きの少なくとも1つの接触子を有する。従来、エレベータ乗りかごは乗りかごケーブルを介してエレベータ制御装置に接続され、乗りかごケーブルはエレベータ乗りかごとエレベータシャフトに連結された固定部の間に吊架されている。これにより、エレベータ乗りかごなどの移動要素を固定子から解放できるようになり(例えば、パレットが戻りトラックへの回帰点に接近する際のエスカレータにおいて)、駆動機の固定子梁に対する接続は維持されないであろう。したがって、一方においては、移動経路に沿って配設されるバスバーまたは垂直導体レールを介する連結が好ましいが、このような接続は経路の長さに依存するものではない。
【0022】
好ましい実施例において、駆動機は固定子から解放可能に把持されるため、リニアモータは、駆動機と固定子の連結を移動する要素の走行距離の全長にわたって維持できないような用途(エスカレータ、動く傾斜路または複数シャフト(ループ)式エレベータ)において使用できる。
【0023】
さらに、バスバーとエレベータ乗りかごの接触子との電気的接続の開始および解放は、固定子梁から要素が離れる動作に基づいて簡単に実行することができる。したがって、バスバーを好ましくは駆動機が固定子梁から外される側とは反対のシャフト側部に配設する。この場合、駆動機のコネクタは、環境構造体または固定子梁に連結して配設されたバスバーまたは導体レールに押し付けられる。好ましくは、接触子はばね手段を含む支持要素を介して駆動機または要素に支持され、接触子を導体レールまたはバスバーに対し付勢し、要素が固定子梁に沿って走行する際に適切な電気接触を確実に行えるようにする。
【0024】
好ましくは、駆動機は、例えばバッテリまたは蓄電池のような電源をも有し、かかる電源もまた、好適には駆動機の予備電源として構成される。予備電源もまた、好ましくは、例えば巻線または永久磁石のような、駆動機に接続されるモータの電磁力要素用に設計される。ゆえに、このような電源を使用して、駆動機のすべての電気負荷に給電することができる。これらの負荷は、エレベータ乗りかごの場合、照明、換気装置、ドア駆動装置および、例えば乗りかご表示パネル、スピーカ、表示部などのようなエレベータ乗りかごのあらゆる入出力装置である。さらに、あらゆる種類の搬送部制御装置との無線データ接続の電力も電源から供給してよい。
【0025】
本例では、好ましくは、駆動機の運転は常に電源を通じて実行され、駆動機の接触子が導体レールまたはバスバーに接触している間、電源は導体レールを介して給電する。これにより、駆動機は電力が切断されても確実に作動し続けることができる。電源は、好ましくは、駆動機を走行経路の所定の位置まで、エレベータの場合では例えばエレベータシャフト内の次の乗り場まで駆動させるのに十分な容量を有する。
【0026】
別の好ましい実施例において、シャフトから駆動機への給電は結合コイルの原理を用いて実施され、一次コイルは環境構造体または固定子梁に取り付けられるが、二次コイルは乗りかごとともに移動する。駆動機が所定の位置に到着すると、一次および二次コイルは連関され、一次コイルから二次コイルへ、さらに駆動機に搭載されたバッテリへと電力が送られる。一次コイルを各停止階に配設しても構わない。
【0027】
本発明の好ましい実施例において、駆動機の電気駆動装置を形成する周波数変換器のDC中間回路に電源を配設してもよい。
【0028】
電気リニアモータは好ましくは、例えばエレベータ、エスカレータ、動く傾斜路等のようなあらゆる種類の乗客搬送装置用に構成される。
【0029】
好ましくは、少なくとも2本の平行する固定子梁が(それぞれの)エレベータシャフト内に配設され、少なくとも2つの駆動機が互いに平行して水平方向に距離を隔てて配設され、各駆動機は固定子梁の1本と共働する。このような構成により、2つの駆動機はエレベータ乗りかご等の要素の移動に対して平行に設けられるため、駆動力が2倍に増加する。また、複数の固定子梁間における要素の懸垂の釣合いがより良好になる。
【0030】
さらに、好ましくは、少なくとも2つの駆動機が連なって配設されることにより、1つの固定子のみに関わる移動力が倍増する。
好ましくは、固定子の強磁性極は強磁性固定子ロッドの側面に設けられる歯によって形成され、これらの歯には歯溝分の間隔があいている。このような強磁性固定子ロッドは、例えば、鉄または鉄合金からなるロッドであり、かかるロッドの側面に歯状構造体が鋸歯状に形成され、これにより歯構造体は固定子梁の側面を形成する。このような固定子ロッドの製造は簡単であり、本発明の固定子梁によって容易に支持でき、最終的には固定子梁を形成する。
【0031】
固定子梁の側面および対応する駆動機の対向面は、円形または丸みをおびていてもよい。したがって、固定子梁は、円形の断面を有していてもよい。
【0032】
固定子梁は締結要素によってエレベータシャフトに連結されてもよく、締結要素は、固定子梁の少なくとも1つの角部または側部に連結される。
【0033】
固定子極は、固定子バーまたは固定子ロッドに具現化された固定子歯でよい。本例において固定子梁は、少なくとも2本の固定子バーを支持する垂直支持構造体、および支持構造体を固定する締結要素を有することが好ましい。
【0034】
固定子歯間の歯溝は好ましくは高分子材料で満たされ、歯とともに固定子梁に平滑な側面を形成し、埃の蓄積を防止する。
【0035】
駆動機の対向面は、好ましくは、駆動機のくぼみまたは貫通孔に設けられ、くぼみまたは貫通孔は、固定子梁を水平断面において少なくとも部分的に囲繞する。
【0036】
リニアモータを有する搬送部は、駆動機を所定の位置に制御するように構成されている緊急装置を有していてもよい。これによって、エレベータに閉じ込められた乗客を有利に解放し得る。
【0037】
本発明の好ましい実施例によると、固定子はいかなる永久磁石も有さず、さらには磁気コイルや巻線のいずれも有さない。
【0038】
以下の表現は同義語として用いる:すなわち、要素−移動する要素−エレベータ乗りかご、環境構造体−エレベータシャフト‐エスカレータトラック、固定子極−固定子歯、巻線−コイルである。
【0039】
当業者には明白なことであるが、本発明に関連して述べる構成要素は、必要に応じて、単一構造体または複合構造体で提供され得る。例えば、1本の固定子梁は、移動する要素に上下に配設される3つの駆動機と共働できる。また、2本の固定子梁を環境構造体の壁に配設してもよく、さらには、3本以上、例えば3本または4本の固定子梁を配設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
ここで、以下において、本発明について添付の図面を参照して述べる。
図1】本発明に係る2本の平行する垂直固定子梁を有するリニアエレベータモータ式エレベータシャフトの側面図を示す。
図2図1のエレベータ乗りかごとシャフト壁の間の領域にあるエレベータモータおよびガイドレールの部品の水平断面図を示す。
図3図4に示す固定子梁および駆動機を突き抜ける断面を示す。
図4】エレベータモータとして使用される切替式永久磁石モータ(FSPM)の作用の概略図を示す。
図5】2つのエレベータシャフトを有し、これらの上部端および下部端において水平通路に接続されているエレベータの側面図を示す。
図6】U字形材の駆動機およびエレベータシャフト壁に配設されたバスバーに接触する接触子を有する、駆動機の位置におけるシャフト壁とエレベータ乗りかごの接続部の水平断面図を示す。
図7】乗りかご誘導位置におけるシャフト壁とエレベータ乗りかごの接続部の水平断面図を示し、2つの旋回ガイドローラ付きの、図6の固定子梁のガイド面に沿って走行するエレベータ乗りかごの誘導要素を示す。
図8】各エレベータフロアにて水平通路に接続されている2つのエレベータシャフトを有し、乗り場ドアが各シャフト間の水平通路領域に配設されているエレベータシステムの概略側面図を示す。
図9】シャフト側水平ガイドトラックおよび水平ガイドトラックと共働するローラを含む乗りかご側水平移動手段を備えた水平移動機構を示す。
【好ましい実施形態の説明】
【0041】
全図において、同様する部分または同一の機能を有する部分には同一の参照番号が付与されていることに注意されたい。
【0042】
図1はエレベータシャフト12を有するエレベータ10を示し、エレベータシャフト内を移動要素としてエレベータ乗りかご16が上下動する。エレベータ10は、リニアエレベータモータ14を有する。リニアエレベータモータ14は、固定子梁18の側面に配設される固定子50を有し(図3を参照)、固定子梁は締結要素20によってエレベータシャフト12のシャフト壁22に取り付けられている。本例では、図2から分かるように、エレベータ10は2本の平行する固定子梁18を有している。
【0043】
エレベータ乗りかご16は、一方が他方の上に配置されている2基の駆動機24、26を有する。下側の駆動機24はエレベータ乗りかごの下半分に配置され、上側の駆動機26はエレベータ乗りかごの上半分に配置されている。これら2基の駆動機24、26は、例えば鉄心、巻線および永久磁石70、71、72、74、76等のような電磁部品を有し(図4)、電磁部品は固定子梁18の側面に配設された、固定子歯で構成される固定子極52と共働する。したがって、エレベータ乗りかごは、固定子梁18と共働する両駆動機24、26の対応する制御によって上方および下方に走行する。
【0044】
当然のことながら、エレベータ乗りかごは各垂直固定子梁18に対して対応する2基一組の駆動機24、26を有しているため、エレベータ乗りかご16は、2つの固定子梁18と共働する計4基の駆動機、すなわち2基の下部駆動機24および2基の上部駆動機26を有する。
【0045】
当然のことながら、各固定子梁18は、図2および図3に示すように、1または複数の固定子50を有していてもよい。
【0046】
図1に示すエレベータ10の固定子梁18および駆動機24、26もエレベータ乗りかご16の電磁ガイドを構成することでいかなるガイドローラおよびガイドレールも省略できることが好ましいが、図2では一実施例として、図1のシャフト壁22に沿って垂直方向に延びる任意的なガイドレール28と共働するエレベータ乗りかご16の任意的な乗りかごガイド32、34を示す。シャフト壁22は、対応する乗りかごガイド32、34と共働する2本の平行なガイドレール28、30を有する。各乗りかごガイド32、34は、乗りかごガイドレール28、30と共働する1組のガイドローラを有する。乗りかごガイドレール28、30に接続されているこれらの乗りかごガイド32、34はリュックサック式懸架を行うように構成されるため、これらの乗りかごガイドレール28、30はいずれもシャフト12内にある唯一のエレベータ乗りかご16用ガイドレールであることから、対応するガイドシステム28、30、32、34は乗りかごをシャフト壁22に連結して水平に維持するように構成される。垂直固定子梁18ならびにエレベータ乗りかご16の駆動機24、26の詳細を図3に示す。一般的には、円形の断面を有するガイドレールを使用して、ガイドレールを乗りかごガイドのローラで囲むことで、乗りかごをガイドレールに連結して水平に固定できる。
【0047】
図3によると、垂直固定子梁18は、四角い断面を有する金属製支持構造体40を有する。支持構造体40は各側部において固定子歯を有する金属製固定子ロッド50を担持し、固定子歯は固定子梁18の4つの側面42、44、46、48を構成する。固定子歯52を有する固定子ロッド(またはバー)50はそれぞれリニアモータ14の固定子を構成しているため、図3に示す固定子梁18は4つの固定子を有している。固定子歯52は巻線74、76(図4)、および駆動機鉄心70、72、および駆動機24、26のC字形材である4本のアーム56、58、60、62の対向面54に沿って配設された永久磁石71と共働する。駆動機の当該C字形材は、固定子梁18を囲繞する一方で、駆動機24、26がシャフト12に沿って移動する際に締結要素20に適合する開口部64を維持する。
【0048】
4つの側面42、44、46、48すべての上にある固定子ロッド50は、同一のピッチdを有する。いずれにしても、固定子梁の第1および第3の側面42、46の歯の位置もまた垂直方向に同一である。これに対し、第2および第4の側面44、48のピッチは同じであるが、歯の位置は第1および第3の側面42、46上の固定子歯52に対して垂直方向に1/4ピッチずれている。
【0049】
本機構を用いることで次のことが保証される。すなわち、両側に設けられた固定子50間の水平力が相殺される一方で、エレベータモータ14の移動間隔が半ピッチであるため、直角方向に向く側面のピッチの垂直方向のずれによって、エレベータモータの駆動がより効率的で円滑になる。4つの固定子50は固定子梁18の内側に配設されるということから、駆動機24、26と固定子梁1との間に生じる力は4倍になる。これによって、垂直固定子梁18に対する駆動機24、26の水平方向における脈動はより少なく、動作はより滑らかになる。
【0050】
図4は、駆動機24、26および固定子梁18の固定子50によって構成される磁束切替式永久磁石モータの動作原理を示す。固定子ロッド50は、歯溝53によって間隔をあけて設けられている固定子歯52を有する。固定子歯52のピッチdは、固定子ロッド50の両端部にわたって同一である。長尺の垂直シャフト12に設けられる固定子梁18の固定子は、シャフトの所要長さに応じて、対応する長さを有する単一本の固定子ロッド50で構成してもよく、または、互いに上下に配設される複数の固定子ロッド50で構成してもよい。上下に配設された固定子ロッドの接続領域では、ピッチdを維持する必要がある。
【0051】
駆動機24、26は、各対向面54上に2つの駆動機鉄心70、72の連続体を有し、鉄心間に1つの薄い磁石71が配置されている。この駆動機鉄心70、72および磁石71の組の次には2本の巻線74、76が続き、巻線を制御して逆方向の磁界を発生させる。駆動機鉄心、永久磁石および巻線からなるこのような連続体70、71、72、74、76が、駆動機の長さに応じて繰り返し設けられる。固定子ロッドに対する駆動機24、26の動きは、両方の巻線74、76を制御して磁束の方向を反対方向に切り替えることにより実現されるため、切替えごとに、駆動機24、26は固定子歯52のピッチdの半分だけ動く。これにより、駆動機24、26を制御して、固定子ロッド50に対して、上方向または下方向の矢印に従って移動させることができる。
【0052】
図5は2本のエレベータシャフト102、104を有するエレベータ100を示す。これらのエレベータシャフトは、両シャフト102、104の上端で上部水平通路106によって接続され、さらに両エレベータシャフト102、104の下端で下部水平通路108によって接続されている。そのため、上部および下部の水平通路106、108を含む両エレベータシャフト102、104は、図に示す矢印に従った一方向にのみエレベータ乗りかご16a〜16dが動けるようにする閉じたループを形成する。この手段により、乗りかごを各シャフト内で一方向にのみ走行させることができるようになり、その結果、輸送能力が高まり、シャフト内の乗りかごの制御が容易になる。
【0053】
両エレベータシャフト102、104とも、例えば前述の実施例の1つによる、または図6および図7による垂直固定子梁18、114は、エレベータ乗りかご16a〜16dに配設された駆動機24、26と共働するように配設される。各シャフト102、104は、好ましくは2、3または4本の平行する固定子梁18、114を有していてもよい。図面では、第1のエレベータシャフト102および第2のエレベータシャフト104に配設される乗り場ドア110を示す。乗りかご16a〜16dは、例えば図8および図9に関連して示す水平移動機構によって、水平通路106、108内を特記しない方法で水平に移動する。
【0054】
エレベータシャフトはいずれも、図を明確にするために切断線112に沿って切開されているが、通常、本構想は好ましくは20階以上の階床を有する高層ビル用エレベータを対象として設計される。したがって、2本のシャフト102、104は、図面に示す4台の乗りかご16a〜16dよりもはるかに多くのエレベータ乗りかごを収容できる。各乗りかご16a〜16dは、2本のシャフト102、104内を他の乗りかごからほぼ独立して動くことができるが、乗りかご同士の衝突を防止する必要がある。エレベータ乗りかご16a〜16dは、第1のエレベータシャフト102では下方にのみ移動し、第2のエレベータシャフト104では上方にのみ移動することから、相互に影響する可能性は低くなる。さらに、この循環運動方式により、一方では2本のエレベータシャフトは従来のシステムよりもはるかに多くのエレベータ乗りかごを含めることができ、他方では各エレベータシャフトではすべてのエレベータ乗りかごが同方向にのみ動くため、両シャフトの輸送能力が大幅に高まり、経済的なシャフト利用性を損ない大規模な衝突防止制御を必要とする乗りかごの逆方向への移動を回避する。
【0055】
図6は、図5に示すエレベータ100および図8に示すエレベータ200に関して使用可能な垂直固定子梁114を示す。
【0056】
垂直固定子梁114は、5つの側面116、118、120、122、124を有する。エレベータ乗りかご16a〜16dに向いた第1の側面116およびシャフト壁22に向いた第4および第5の側面122、124は、図7に示すように、乗りかごガイド140のガイドローラと共働するガイド面である。垂直固定子梁114の第2の側面118および第3の側面120は、永久磁石およびエレベータ乗りかご16a〜16dの駆動機126の対向面54に配設された巻線70、71、72、74、76と共働する固定子歯52を付けた固定子ロッド50を有する。駆動機126はU字形材として具現化され、取付要素128を用いてエレベータ乗りかご16a〜16dに取り付けられる。取付要素は、ねじやボルトなどでもよく、U字形材126は乗りかご16a〜16dに直接取り付けられ、最後に中間部に緩衝層を取り付ける。垂直固定子梁114の第2および第3の側面118、120上にある2本の固定子ロッド50は互いに向かい合っているため、垂直固定子梁114の固定子50と駆動機126の構成部材70、71、72、74、76の間に生じる水平力は平衡する。その一方で、シャフト壁22は垂直方向に延びる4本の連結レール132を有するバスバー130を有する。そのうち3本の連結レール132はAC電源網の三相であり、垂直連結レール132の1本はエレベータ乗りかごをエレベータ制御装置に接続する制御接続体である。エレベータ乗りかごは接触子134を有し、接触子は伸縮式のばね支持体136によってエレベータ乗りかご16a〜16dに押しつけられる。このような接触子134を介して、エレベータ乗りかご16a〜16dは、駆動機126の動作、およびドア、入出力器、照明など電力を必要とするあらゆる他の乗りかご部材に対する電力の供給を受ける。
【0057】
図6の垂直固定子梁114は、エレベータの電気モータ14の固定子50を支持するだけでなく、ガイド面116、122、124を供してシャフト12、102、104内の乗りかごを乗りかごガイド32、34、140に連結して誘導するという利点がある。乗りかごガイド140は、垂直固定子梁114の3つのガイド面116、122、124上を走行する3つのガイドローラ142、144、146を有する。シャフト壁22に隣接して配設された第2および第3のガイドローラ144、146は旋回アーム148上で支持され、旋回アームは垂直固定子梁114の対応するガイド面122、124から離れて動くよう、旋回機構150に旋回可能に蝶着される。このような手段により、乗りかごをシャフト壁22から水平方向に離して動かすことで、垂直固定子梁114を乗りかごガイド32、34から離すことができる。駆動機126も図6によればシャフト壁22に対して開口するU字形材であるため、駆動機126もまた、エレベータシャフト壁22から離れる水平方向に、垂直固定子梁114から離して動かすことができる。よって、エレベータ乗りかご16a〜16dは、例えば図8および図9に示すように、図5の上部および下部の水平通路106、108内を水平移動機構を用いて移動する際に、対応する垂直固定子梁114から離れる。
【0058】
図8はエレベータ200の第2の実施例を示す。ここでは、垂直固定子梁114は図6および図7に示す固定子梁に相当し、図8の乗りかご16a〜16dの乗りかごガイド140(図8には図示せず)は好ましくは図7に示す乗りかごガイド140に相当する。図8のエレベータ200は2本のエレベータシャフト202、204を有し、エレベータシャフトは好ましくはシャフト壁によって仕切られない。その代わりに、各エレベータフロアにおいて、水平ガイドトラック206(図9も参照)は2本のエレベータシャフト202、204間に配置された水平通路208に沿って水平方向に延伸している。そのため、この文脈で用語「エレベータシャフト」とは、このようなエレベータ200のエレベータ乗りかご16a〜16dの垂直移動通路のことを指す。水平通路208に対向している残る2面のシャフト壁22は、垂直固定子梁114の他に、図6のバスバー130も有する。図8では水平移動機構205に着目しているため、明瞭化の理由によりバスバーを図示しない。水平移動機構205は、各エレベータフロアの上にある水平ガイドトラック206および各エレベータ乗りかご16a〜16dの頂部に配設された水平移動手段210を有する。エレベータ乗りかごの水平移動手段210は格納位置と動作位置の間で可動する支持ローラ212を有し、支持ローラ212は水平ガイドトラック206上を走行する。
【0059】
エレベータ乗りかご200におけるエレベータ乗りかごの移動パターンは図5に示すパターンに対応するものである。このことは、第1のエレベータシャフト202ではすべてのエレベータが同じ方向、すなわち上方に移動する一方で、第2のエレベータシャフト204ではすべてのエレベータ乗りかご16a〜16dが下方に移動することを意味する。したがって、このようなエレベータ200においても一種の循環運動が実現される。これにより、エレベータ乗りかごの水平ガイドトラック206および水平移動手段210を有する水平移動機構205を介して、エレベータ乗りかごは各エレベータフロアでエレベータシャフト202、204の一方から他方へと移動可能であるため、循環運動を短縮できる。
【0060】
エレベータ乗りかご16a〜16dの水平ガイドトラック206と水平移動手段210の相互作用に基づく水平移動機構205の働きについて、図9を参照してより詳細に述べる。エレベータ乗りかご16a〜16dは、エレベータ制御装置と無線通信を行う無線伝送手段216を含む乗りかご制御装置214を有する。さらに、エレベータ乗りかご16a〜16dは電源218、好ましくは蓄電池を有し、電源はエレベータ乗りかご16、16a〜16dの駆動機24、26、126さらにはエレベータ乗りかごに接続された他のすべての電気部品に電力を供給する。水平移動手段210は、4つのローラ機構220を有する。各ローラ機構220は取付基部222を有し、取付基部上には支持アーム224が枢動可能に蝶着される。支持アーム224は、格納位置(図の左側に示す)と支持ローラ212が水平ガイドトラック206の上端の上を走行する動作位置(右側に示す)の間で可動する。支持アーム224には駆動部材226が接続され、駆動部材の上に支持ローラが担持されている。駆動部材は、水平ガイドトラック206上で支持ローラ212を回転させるように構成されている電気モータを有する。自明なことではあるが、一般に支持ローラは左側に示す格納位置および水平ガイドトラック206上の支持ローラ212の動作位置に位置している場合、取付基部222における旋回機構のいかなる動作も防ぐことができる。そのため、好ましくは固定機構(図示せず)を設けて該当する位置に固定する。
【0061】
さらに、当業者には自明なことであるが、支持ローラ212の格納および動作位置は、駆動機126および対応する垂直固定子梁114の間における接触の開始および解放に同期して制御される。このような構成により、垂直固定子梁114上の駆動機126の力によって、または水平ガイドトラック206上の支持ローラ212に支持されることによって、乗りかごを常に垂直方向に支持することが確保される。
【0062】
図には示していないが、エレベータ乗りかごは、電源218の電力が停止すると(さらには、最終的に主電源が停電した場合に)ガイドレールまたは垂直固定子梁114のガイド面を把持する把持装置を有することにより、それ以上駆動機に通電されなくても乗りかごが落下しないようにできることは、当業者には明白である。電源の切断は、乗りかごが水平ガイドトラック206上の支持ローラ212を介して支持されるときに起こり得るが、電力が遮断されても水平ガイドトラック206上の支持ローラ212の動作位置が固定されると、何も起こり得ない。
【0063】
したがって、本発明に係るこのような新規の複数シャフトおよび複数乗りかごの構成においても、乗りかごがその時点で駆動機126および垂直固定子梁114によって、または水平ガイドトラック206上の支持ローラ212によって支持されているのかに関わらず、エレベータ乗りかご16a〜16dの安全性を常に確保できる。
【0064】
本発明は、添付の特許請求の範囲内で実行可能である。したがって、上述の実施例は本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【参照符号の一覧】
【0065】
10 エレベータ
12 エレベータシャフト
14 エレベータモータ
16 エレベータ乗りかご
18 固定子梁
20 締結要素
22 シャフト壁/シャフト側面
24 下部駆動機
26 上部駆動機
28 第1のガイドレール
30 第2のガイドレール
32 第1の乗りかごガイド
34 第2の乗りかごガイド
40 支持構造体
42 第1の側面
44 第2の側面
46 第3の側面
48 第4の側面
50 固定子/固定子ロッド
52 固定子歯
53 歯溝
54 駆動機の対向面
56 C字形状駆動機の第1のアーム
58 C字形状駆動機の第2のアーム
60 C字形状駆動機の第3のアーム
62 C字形状駆動機の第4のアーム
70 第1の駆動機鉄心
71 永久磁石
72 第2の駆動機鉄心
74 第1の巻線
76 第2の巻線
100 エレベータ(第2の実施例)
102 第1のエレベータシャフト
104 第2のエレベータシャフト
106 上部水平通路
108 下部水平通路
110 乗り場ドア
114 固定子梁(第2の実施例)
116 第1の側面(第1のガイド面)
118 第2の側面
120 第3の側面
122 第4の側面(第2のガイド面)
124 第5の側面(第3のガイド面)
126 駆動機(第2の実施例)
128 取付要素
130 バスバー
132 連結レール
134 接触子
136 ばね支持体
140 乗りかごガイド(第2の実施例)
142 第1のガイドローラ、乗りかご側
144 第2のガイドローラ、シャフト壁側
146 第3のガイドローラ、シャフト壁側
148 旋回アーム
150 旋回機構
200 エレベータ(第3の実施例)
202 第1のエレベータシャフト
204 第2のエレベータシャフト
205 水平移動機構
206 水平ガイドトラック
208 水平通路
210 エレベータ乗りかごに取り付けられる水平移動手段
212 支持ローラ
214 乗りかご制御装置
216 無線伝送手段
218 電源
220 ローラ機構
222 取付基部
224 支持アーム
226 駆動部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9