特許第6979893号(P6979893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6979893-塞栓材用樹脂組成物 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979893
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】塞栓材用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   F42B 3/12 20060101AFI20211202BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20211202BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   F42B3/12
   B01J7/00 A
   C08G59/18
   C08K3/32
   C08K3/34
   C08K7/00
   C08L63/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-12180(P2018-12180)
(22)【出願日】2018年1月29日
(65)【公開番号】特開2019-132436(P2019-132436A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2020年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智江
(72)【発明者】
【氏名】設楽 律子
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/052496(WO,A1)
【文献】 特開昭50−27899(JP,A)
【文献】 特公昭47−45480(JP,B1)
【文献】 特開2006−29629(JP,A)
【文献】 特開2007−139366(JP,A)
【文献】 特開2012−102961(JP,A)
【文献】 特開2004−136515(JP,A)
【文献】 特開平9−286840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 3/103 − 3/107
F42B 3/12 − 3/13
B01J 7/00
B60R 22/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗発熱体と、前記抵抗発熱体の発熱により着火する火薬と、前記抵抗発熱体に接続する電極ピンと、前記電極ピンを保持する塞栓とを有する点火器において用いられる、タルク、リン酸ジルコニウム、板状アルミナから選ばれる少なくとも1種以上のフィラー、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含有する塞栓材用樹脂組成物。
【請求項2】
塞栓材用樹脂組成物に対し、10〜95質量%のフィラーを含有することを特徴とする請求項に記載の塞栓材用樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及びアミン系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の塞栓材用樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化剤は、フェノールノボラック樹脂、酸無水物及びアミン類から選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塞栓材用樹脂組成物。
【請求項5】
さらに硬化促進剤を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の塞栓材用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塞栓材用樹脂組成物で電極ピンが保持された点火器。
【請求項7】
燃焼によりガスを発生させるガス発生剤が充填されたカップと、このカップの内側に配置された請求項記載の点火器及び前記カップを保持するホルダとを備えるガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生器に用いられる点火器、及び、自動車のシートベルトプリテンショナー等の乗員安全保護装置を作動させるガス発生器に関し、さらに詳しくは点火器の塞栓に好適な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突時に生じる衝撃から乗員を保護するものとして、シートベルトプリテンショナーやエアバッグが知られている。これらプリテンショナー等は、ガス発生器から導入される多量のガスによって作動して乗員を保護する。又、ガス発生器は、点火器、ガス発生剤等を備え、衝突時に点火器を発火させることでガス発生剤を着火燃焼して急速に多量のガスを発生させる。
【0003】
ガス発生器に用いられる点火器の一例を図1に示す。点火器1は、カップ6内に嵌装され着火薬2を封じる塞栓7を、熱可塑性樹脂等によって成形される。塞栓7には、塞栓7を貫通する2本の電極ピン8が備えられている。これら各電極ピン8は、カップ6内に突出して先端に電橋線3を電気的に接続している。電橋線3の発熱により着火薬2を点火して、発火させる。
【0004】
この点火器1は、ガス発生器に装着され、衝突センサからの衝突信号によって通電し、電橋線3を発熱させる。発熱した電橋線3は、着火薬2を発火燃焼させる。そして、着火薬2が燃焼して生じる発生圧力及び熱によりガス発生剤が着火燃焼し、発生したガスがシートベルトプリテンショナーやエアバッグなどへ噴出する。
【0005】
これら点火器のうち、塞栓7と絶縁樹脂5とを熱可塑性樹脂で一体成形した形状が提案されている。この熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン6、ナイロン66等の合成樹脂にガラス繊維等を混合したもの等が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、塞栓を不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂で成形することも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
更に、特許文献3には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で成形することも提案されている。
【0008】
また、特許文献4には、エポキシ樹脂でできた絶縁性支持部、円筒形金属スリーブ及び熱可塑性樹脂でできた被覆成型部からなる塞栓を有する点火器を含むガス発生器について開示がある。
【0009】
また、特許文献5には、中実本体、ガラス製のシース(sheaths)からなる塞栓を有し、エポキシ樹脂で封止された点火器について開示がある。
【0010】
また、特許文献6には、熱可塑性樹脂や不飽和ポリエステルである熱硬化性樹脂でできたヘッダー(塞栓)を有する点火器を含むガス発生器について開示がある。
【0011】
また、特許文献7には、ガラス繊維強化樹脂でできたヘッダー(塞栓)を有する点火器を含むガス発生器について開示がある。
【0012】
更に、特許文献8には、2本の電極ピンが個別に挿通する2つの挿通孔が形成されたホルダと、塞栓に相当するハーメチック材が絶縁性樹脂によって成形された点火器とを有するガス発生器が開示されている。
【0013】
【特許文献1】特開2003−25950号公報(第4頁及び図4
【特許文献2】特開2002−90097号公報(第5頁)
【特許文献3】国際公開第WO05/052496号
【特許文献4】特開2000−108838号公報(第5頁)
【特許文献5】特開2000−241099号公報(第4頁、第5頁)
【特許文献6】国際公開第WO01/031281号
【特許文献7】国際公開第WO01/031282号
【特許文献8】特開2000−292100号公報(図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述したように、従来の点火器において、カップ内の着火薬を封じる塞栓に樹脂が用いられている場合は、熱可塑性樹脂を用いるのが一般的である。このため、点火器がガス発生器に組み込まれ使用され、自動車衝突時に車両火災が発生した場合、あるいは、想定を超える高温状態でのガス発生器の燃焼試験時などにガス発生剤が燃焼した場合、熱可塑性樹脂で構成された塞栓が軟化して、ガス発生器内の高圧のガス圧により塞栓を貫通する2本の電極ピンが飛び出してしまう虞がある。また、このような状態を防止する為に塞栓の厚みを厚くした場合、その分だけ点火器のサイズが大きくなるため、ガス発生器も大型化してしまうか、あるいは、ガス発生器のサイズを大きくできない場合にはガス発生剤の充填可能量が少なくなってしまう。さらに電極ピンと電極ピンを挿入する部分が金属でできており、これらがガラスで封止されたものを用いて製造された塞栓の場合、部品コストが高く、また製造上ガラスを溶融する工程を必要とするため製造コストも高く、結果として高価な塞栓となってしまう。
【0015】
また、塞栓が不飽和ポリエステル組成物で成形されている場合、完全に硬化させるまでに比較的長い時間を要し生産性に劣る。過酸化物を硬化反応開始剤に用いている場合、過酸化物が不安定なために分解しやすく作業性が劣る、という問題点が挙げられる。
【0016】
更に、塞栓がエポキシ樹脂組成物で成形されている場合、その寸法安定性から、フィラー成分を高充填させる必要があるため、成形体が非常に脆性に富んだ物になり、応力や衝撃等で欠損を生じる、という問題点が挙げられる。
【0017】
上記の課題を解決するためには、電極ピンを強固に接合させる為、ガラス製のシースで封じる方法もあるが、高温かつ長時間の加工になる為、必ずしも生産性に優れるとは言い難い。同じく、塞栓部分がいくつもの部材で構成されている場合、各部材同士のシール性の問題がある。また、部品点数が増加し、製造に手間がかかるという問題もある。
【0018】
本発明の目的は、生産性を向上させ、高温時における塞栓の強度を向上させることにより塞栓の厚みを薄くして点火器を小型化すること、電極ピンの飛び出しを確実に防止でき、また、塞栓と電極ピンとの間のシール性を確保した点火器、及びその点火器を用いたガス発生器を得ることができる塞栓材用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記性能を十分満足させる塞栓材用樹脂組成物が得られることを見出したものである。即ち、本発明は
(1)抵抗発熱体と、前記抵抗発熱体の発熱により着火する火薬と、前記抵抗発熱体に接続する電極ピンと、前記電極ピンを保持する塞栓とを有する点火器において用いられる、タルク、リン酸ジルコニウム、板状アルミナから選ばれる少なくとも1種以上のフィラー、及び、樹脂を含有する塞栓材用樹脂組成物。
(2)前記樹脂がエポキシ樹脂であることを特徴とする前記(1)に記載の塞栓材用樹脂組成物。
(3)さらに硬化剤を含むことを特徴とする前記(1)又は前記(2)に記載の塞栓材用樹脂組成物。
(4)塞栓材用樹脂組成物に対し、10〜95質量%のフィラーを含有することを特徴とする前記(1)乃至前記(3)のいずれか一項に記載の塞栓材用樹脂組成物。
(5)前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及びアミン系エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする前記(2)乃至前記(4)のいずれか一項に記載の塞栓材用樹脂組成物。
(6)前記硬化剤は、フェノールノボラック樹脂、酸無水物及びアミン類から選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする前記(3)乃至前記(5)のいずれか一項に記載の塞栓材用樹脂組成物。
(7)さらに硬化促進剤を含む前記(1)乃至前記(6)のいずれか一項に記載の塞栓材用樹脂組成物。
(8)前記(1)乃至前記(7)のいずれか一項に記載の塞栓材用樹脂組成物を硬化して得られる塞栓。
(9)前記(1)乃至前記(7)のいずれか1項に記載の塞栓材用樹脂組成物で電極ピンが保持された点火器。
(10)前記(8)に記載の塞栓を有する点火器。
(11)燃焼によりガスを発生させるガス発生剤が充填されたカップと、このカップの内側に配置された前記(9)又は(10)に記載の点火器及び前記カップを保持するホルダとを備えるガス発生器。
に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の塞栓材用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂で形成されているため、高温下でも塞栓は十分な強度を有し、高温状態において塞栓が軟化しないため電極ピンが塞栓から抜けるのを防止できる。そうすることにより、熱可塑性樹脂を用いた場合に比べ、塞栓の厚みを薄くしても電極ピンの飛び出しを防止するために必要な強度を確保することができ、塞栓を薄くした分だけ点火器を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の塞栓材用樹脂組成物で電極ピンが保持された点火器。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の塞栓材用樹脂組成物には、タルク、リン酸ジルコニウム、板状アルミナから選ばれる少なくとも1種以上のフィラーを必須成分として含む。これらはいずれも、シリカ等他の充填剤に比べ接着強度に優れており、また、その一次構造が平板状若しくは層状を呈していることより、塞栓材のガス遮蔽性を向上する。これにより外部からのガス等による電矯線やピンの劣化を抑制することができる。塞栓材料にエポキシ樹脂組成物を用いる場合、寸法安定性を向上させるためフィラーを高充填させるが、上記フィラーを用いることで、成形体が脆化しにくく、応力や衝撃等で欠損を生じにくい塞栓が得られる。タルクは、ローズタルク(日本タルク製)等、リン酸ジルコニウムはウルテア(東亜合成製)等、板状アルミナはセラフYFA00610(キンセイマテック製)等として、市場から入手可能である。
【0023】
本発明の塞栓材用樹脂組成物においては、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂の中では、硬化性や耐湿性の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。本発明の塞栓材用樹脂組成物は、好ましくは、硬化剤を有する。なお、熱硬化性樹脂であっても不飽和ポリエステルは、耐火性の点ではエポキシ樹脂と同等であるが、金属との接着性の点においてエポキシ樹脂に劣るので好ましくない。
【0024】
エポキシ樹脂の種類としては、例えばポリフェノール類化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0025】
ポリフェノール類化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、例えばフェノール、クレゾール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキジフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキジフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソブロビリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0026】
各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、例えばフェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等が挙げられる。
【0027】
脂環式エポキシ樹脂としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−シクロヘキシルカルボキシレート等のシクロヘキサン骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0028】
脂肪族系エポキシ樹脂としては、例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、キシリレングリコール誘導体等の多価アルコールのグリシジルエーテル類等が挙げられる。
【0029】
複素環式エポキシ樹脂としては、例えばイソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0030】
グリシジルエステル系エポキシ樹脂としては、例えばヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸類からなるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
グリシジルアミン系エポキシ樹脂としては、例えばアニリン、トルイジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン誘導体、ジアミノメチルベンゼン誘導体等のアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としては、例えばブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA、ブロモフェノール等のハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
これらエポキシ樹脂の使用にあたっては特に制限はなく、使用用途により適宜選択されるが、好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アミン系エポキシ樹脂である。特に好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂およびノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂が良い。更に、これらエポキシ樹脂は電気絶縁性、接着性、耐水性、力学的強度、作業性等の必要に応じ適宜選択され1種又は2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0033】
硬化剤としては、例えば酸無水物、アミン類、フェノール類、イミダゾール類等が挙げられる。
【0034】
酸無水物としては、例えばフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸の無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。フタル酸無水物としては、例えば4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が挙げられる。
【0035】
アミン類としては、例えばジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジエチルメチルベンゼンジアミン、2−メチル−4,6−ビス(メチルチオ)−1,3−ベンゼンジアミン等の芳香族アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン、変性アミン等が挙げられる。特に好ましくは、ジエチルメチルベンゼンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタンが良い。
【0036】
フェノール類としては、例えばビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリレン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノール),トリスヒドロキシフェニルメタン、ピロガロール、ジイソブロビリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格を有するフェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0037】
イミダゾール類としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミ30ノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類が挙げられる。これら硬化剤のうち、どの硬化剤を用いるかは点火用スクイブ構造体に要求される特性、又は作業性により適宜選択されるが、好ましくは酸無水物類、フェノールノボラック樹脂、アミン類である。これら硬化剤の使用量は、熱硬化性樹脂のエポキシ基に対する硬化剤の当量比に於いて0.3〜2.5の範囲で、好ましくは0.8〜2.3の範囲で、更に好ましくは1.2〜2.0の範囲で用いられる。又、硬化剤は2種以上を混合して用いることもでき、イミダゾール類は硬化促進剤としても用いることができる。
【0038】
硬化促進剤としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類,ジシアンジアミド等のアミド類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらのフェノール類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラブチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト、及びこれら硬化剤をマイクロカプセルにしたマイクロカプセル型硬化促進剤等が挙げられる。これら硬化促進剤のどれを用いるかは、例えば透明性、硬化速度、作業条件といった得られる透明樹脂組成物に要求される特性によって適宜選択される。硬化促進剤を使用する場合、その使用量は、熱硬化性樹脂100質量部に対し、0.1〜5質量部であり、好ましくは1〜3質量部である。
【0039】
フィラーとしては、前述の必須成分である、タルク、リン酸ジルコニウム、板状アルミナの他、例えば溶融シリカ、結晶シリカ等の各種シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、クレー、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウムであり、更に好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等を用いてもよい。これらフィラーの使用量は要求性能、作業性に合わせて、好ましくは本発明の塞栓材用樹脂組成物の10〜95質量%、より好ましくは20〜80質量%、特に好ましくは30〜70質量%である。又、これらフィラーは一種の単独使用でも、或いは二種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
本発明の塞栓材用樹脂組成物には、目的に応じ、例えば着色剤、カップリング剤、レベリング剤、滑剤等を適宜添加することが出来る。
【0041】
前記着色剤としては特に制限はなく、例えばフタロシアニン、アゾ、ジスアゾ、キナクリドン、アントラキノン、フラバントロン、ペリノン、ペリレン、ジオキサジン、縮合アゾ、アゾメチン系の各種有機系色素、酸化チタン、硫酸鉛、クロムエロー、ジンクエロー、クロムバーミリオン、弁殻、コバルト紫、紺青、群青、カーボンブラック、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトグリーン等の無機顔料等が挙げられる。
【0042】
前記カップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤、Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニュウムジルコニウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニウム、或いはアルミニウム系カップリング剤が挙げられるが好ましくはシリコン系カップリング剤である。カップリング剤を使用することにより耐湿信頼性が優れ、吸湿後の接着強度の低下が少ない硬化物が得られる。
【0043】
前記レベリング剤としては、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類からなる分子量4000〜12000のオリゴマー類、エポキシ化大豆脂肪酸、エポキシ化アビエチルアルコール、水添ひまし油、チタン系カップリング剤等が挙げられる。
【0044】
前記滑剤としては、例えばパラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸系滑剤、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド系滑剤、硬化ひまし油、ブチルステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトール(モノ−、ジ−、トリ−、又はテトラ−)ステアレート等の高級脂肪酸エステル系滑剤、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等のアルコール系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ナフテン酸等のマグネシウム、カルシウム、カドニウム、バリウム、亜鉛、鉛等の金属塩である金属石鹸類、カルテウバロウ、カンデリラロウ、蜜蝋、モンタンロウ等の天然ワックス類が挙げられる。
【0045】
この塞栓材用脂組成物を調製するには、フィラー、エポキシ樹脂、硬化剤、必要により、硬化促進剤及びカップリング剤、着色剤、レベリング剤等の配合成分を、配合成分が固形の場合はヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等の配合機を用いて混合し、ニーダー、エクストルーダー、加熱ロール等を用いて80〜120℃で混練、冷却後、粉砕して粉末状として塞栓材用樹脂組成物が得られる。一方、配合成分が液状の場合はプラネタリーミキサー等を用いて配合成分を均一に分散して塞栓材用樹脂組成物とする。液状組成物の粘度が高く作業性に劣る時は溶剤を加えて作業に適した粘度に調整することも出来る。又、固形組成物を液状にして用いてもよい。この場合は前述の方法により得られた固形の塞栓材用樹脂組成物を溶剤に溶解して液状としてもよい。或いは各配合成分を溶剤に溶解して液状組成物としてもよい。この場合用いられる溶剤は特に限定するものではなく通常溶剤として用いられるものであればよい。こうして得られた塞栓材用樹脂組成物が固形の場合は一般的にはペレット状にした後低圧トランスファー成型機等の成型機で成形後100〜200℃に加熱して硬化させる。また、液状の場合は型に注型、或いはディスペンス後、100〜200℃に加熱して硬化させ、塞栓を得る。本願発明の点火器は例えば、得られた本願発明の塞栓に電極ピンを設置し、電極部に抵抗発熱体を作成し、抵抗発熱体の発熱により着火する火薬を公知又は周知の工程により組み立てることで得られる。
【0046】
また、前記の点火器は、着火薬を収納するケースと、かしめることで得られる点火器ケースと、燃焼によりガスを発生させるガス発生剤が充填されたカップとを、所定の構成に合わせ、公知の方法により、かしめる事で、本発明のガス発生器を得ることができる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
実施例1〜3、比較例1〜2
表1に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌機(シンキー社製「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより本発明の塞栓材用樹脂組成物並びに比較例用のエポキシ樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物の特性について、以下の測定方法により電極ピン引抜強度を測定した。結果を表1に示す。
〔電極ピン引抜強度の測定〕
点火器の塞栓を模したSUS製カップ(外径8mm・内径5mm、外寸高さ5mm・深さ4.5mm)に対し、52アロイ製電極ピン(φ1mm×50mm)を、ピンの先端がSUS製カップの底面に接するように立て、90°を維持できる様治具にて固定した。上記記載の方法で得られた実施例1〜3、比較例1〜2の樹脂組成物を、前述のSUS製カップ内に約120〜150mg充填し、180℃×1hで硬化して、引抜試験用試験片を得た。得られた試験片は、万能試験機により、3mm/minの速度で引張り、ピンが抜けた際の強度を測定し、引抜強度とした。
【0049】
【表1】
【0050】
エポキシ樹脂A:ビスフェノールF型エポキシ樹脂 JER807(三菱化学製)
硬化剤A:ジアミノジフェニルエーテル ETHACURE100(アルベマール製)
硬化剤B:4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン カヤハードA−A(日本化薬製)
フィラーA:タルク ローズタルク(日本タルク製)
フィラーB:リン酸ジルコニウム ウルテア(東亜合成製)
フィラーC:板状アルミナ セラフYFA00610(キンセイマテック製)
フィラーD:球状アルミナ DAW−03(デンカ製)
フィラーE:溶融破砕シリカ RD−8(龍森製)
【0051】
表1の電極ピン引抜強度の測定結果から、本発明のタルク、リン酸ジルコニウム、板状アルミナから選ばれる少なくとも1種以上のフィラーを必須成分として含有する塞栓材用樹脂組成物は、比較用のエポキシ樹脂組成物に比べて、十分に強い接着性を示す事が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の塞栓材用樹脂組成物を用いた点火器は、電極ピンと塞栓本体とを強固に接合させることができるため、容易に点火器の生産が可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1 点火器
2 点火薬
3 電橋線
4 絶縁体
5 絶縁樹脂
6 カップ
7 塞栓
8 電極ピン
図1