特許第6979904号(P6979904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハーの特許一覧

特許6979904トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979904
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20211202BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20211202BHJP
   B01J 31/16 20060101ALI20211202BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20211202BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20211202BHJP
【FI】
   C07F7/18 T
   B01J31/22 Z
   B01J31/16 Z
   B01J23/42 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-42282(P2018-42282)
(22)【出願日】2018年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-145191(P2018-145191A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年9月24日
(31)【優先権主張番号】17159890.7
(32)【優先日】2017年3月8日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ アルベアト
(72)【発明者】
【氏名】エックハート ユスト
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03517001(US,A)
【文献】 特開2002−016057(JP,A)
【文献】 米国特許第05986124(US,A)
【文献】 特開2012−121854(JP,A)
【文献】 特開平08−333373(JP,A)
【文献】 特表2010−518031(JP,A)
【文献】 特開2000−143679(JP,A)
【文献】 特開平11−180986(JP,A)
【文献】 チェコ国特許発明第00195549(CZ,B6)
【文献】 特表2003−519627(JP,A)
【文献】 Colloids and Surfaces, B: Biointerfaces,2008年,Vol.66(1),p.71-76
【文献】 Organic Process Research & Development,2002年,Vol.6(1),p.15-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
B01J 31/22
B01J 31/16
B01J 23/42
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(アルキルジアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートおよびトリス[3−(ジアルキルアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートから成る群から選択されるイソシアヌレートをヒドロシリル化によって製造する方法であって、
− ステップAにおいて、ハイドロジェントリアルコキシシラン、ハイドロジェンアルキルジアルコキシシランおよびハイドロジェンジアルキルアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1種のハイドロジェンアルコキシシラン[略してHシランと呼ぶ]と、少なくとも1種のカルボン酸と、Pt触媒とを含む混合物を装入し、前記混合物を50〜140℃の温度に加熱し、
− ステップBにおいて、混合下に、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンと、少なくとも1種のアルコールとの混合物を、前記ステップAの混合物に添加し、ここで、前記アルコールは、C〜C10−アルコールの群から選択され、
− ステップCにおいて、混合下に前記ステップBの混合物を反応させ、かつ
− ステップDにおいて、ステップCにおいて得られた生成物混合物について蒸留による後処理をおこなうことによる方法。
【請求項2】
Hシラン対アルコールを、1:0.005〜0.3のモル比で使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Hシラン対Ptを、1:1×10−4〜1×10−9のモル比で使用することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
Hシラン対カルボン酸を、1:1×10−3〜30×10−3のモル比で使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
Hシラン対1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンを、1:0.1〜1のモル比で使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記カルボン酸を、安息香酸、プロピオン酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸および酢酸の群から選択することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
Hシランとして、ハイドロジェントリメトキシシラン(TMOS)、ハイドロジェントリエトキシシラン(TEOS)、メチルジエトキシシラン(DEMS)、メチルジメトキシシラン(DMMS)、ジメチルエトキシシラン(DMES)またはジメチルメトキシシラン(MDMS)を使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、ヘキサクロロ白金(IV)酸および活性炭担持Ptの群から選択されるPt触媒を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(アルキルジアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートおよびトリス[3−(ジアルキルアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート(以下、まとめて略してトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートとも呼ぶ)の特に経済的な製造方法であって、Pt触媒、カルボン酸およびさらなる助触媒の存在下で、ハイドロジェントリアルコキシシラン、ハイドロジェンアルキルジアルコキシシランあるいはハイドロジェンジアルキルアルコキシシランを用いて1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンをヒドロシリル化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートは、架橋剤としての使用が可能なシランである。これら3つのアルコキシシリル基のそれぞれが加水分解後に1つ、2つまたは3つの化学結合を生じうることから、理論上は3個から9個までの化学結合が可能である。こうした強力な架橋性ゆえ、トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートは、様々な用途に向けて関心が持たれている。トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートのもう1つの利点は熱安定性が高いことであり、このため高温範囲での使用が可能である。したがってトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートを、好ましくは例えば塗料配合物やゴム配合物における架橋剤として、また塗料や接着剤における定着剤として、極めて様々な産業において使用することができる。さらには、架橋密度が高いことから、耐引掻性コーティングやバリア層の作製が可能である。
【0003】
特許第4266400号公報(JP 4266400 B)には、芳香族ビニル化合物のヒドロシリル化による芳香族シラン化合物の製造が記載されている。触媒として、カルボン酸の存在下での白金錯体が使用される。
【0004】
米国特許第5,986,124号明細書(US 5,986,124)は、白金触媒とカルボン酸との存在下でのトリアルコキシハイドロジェンシランを用いた炭素二重結合のヒドロシリル化によるシラン化合物の製造方法に関する。確かに、白金触媒をカルボン酸と併用することでヒドロシリル化において約80%の転化率を達成することが可能ではあるが、このようにして得られた粗生成物は、依然としてかなりの割合の不純物あるいは副生成物を有する。
【0005】
欧州特許出願公開第0587462号明細書(EP 0587462)には、不飽和ポリオルガノシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンと酸と白金化合物と添加物とからの組成物が記載されており、これらの各成分が水中で乳化され、そして剥離被膜処理に使用される。加熱時に、ヒドロシリル化により架橋が生じる。
【0006】
欧州特許出願公開第0856517号明細書(EP 0856517)には、元素周期表の第8族遷移元素から第10族遷移元素までの金属化合物の存在下での不飽和化合物のヒドロシリル化方法が開示されている。このヒドロシリル化は、促進剤の存在下で行われる。
【0007】
欧州特許出願公開第1869058号明細書(EP 1869058)あるいは国際公開第2006/113182号(WO 2006/113182)には、トリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造方法が提示されている。この製造は、触媒量のカルボン酸塩の存在下でのシリルオルガノカルバメートの分解を経て進行する。
【0008】
欧州特許出願公開第0583581号明細書(EP 0583581)は、アミノシランからのシリルオルガノカルバメートの製造を教示している。このシリルオルガノカルバメートはその後、「分解触媒」の存在下でシリルイソシアヌレートへと転化される。
【0009】
欧州特許出願公開第1885731号明細書(EP 1885731)には、イソシアナトシランおよびシリルイソシアヌレートの製造方法が開示されている。この合成は、シリルオルガノカルバメートを用いて開始される。接触分解によりイソシアナトシランが遊離され、その際、イソシアナトシランからシリルイソシアヌレートへの転化が三量体化反応帯域において行われる。
【0010】
カナダ国特許出願公開第943544号明細書(CA 943544)には、溶剤の存在下でのハロゲンアルキルシランと金属シアネートとからのシリルオルガノイソシアヌレートの製造が記載されている。反応後に、溶剤および生じる塩の分離除去が行われる。
【0011】
米国特許第3,607,901号明細書(US 3,607,901)は、クロロアルキルトリアルコキシシランと金属シアネートとから出発するイソシアナトシランおよびイソシアヌラトシランの製造に関する。
【0012】
米国特許第3,517,001号明細書(US 3,517,001)は特に、ヘキサクロロ白金酸の存在下でトリメトキシシランを用いて1,3,5−トリス(アリルイソシアヌレート)をヒドロシリル化することによる1,3,5−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートの製造を教示している。収率は40%であると報告されている。
【0013】
米国特許第3,821,218号明細書(US 3,821,218)には、溶剤としてのDMF中でのクロロプロピルトリメトキシシランとシアン酸カリウムとから出発する1,3,5−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートの製造が記載されている。
【0014】
米国特許出願公開第2013/0158281号明細書(US 2013/0158281)には、シリルヒドリドを用いた不飽和化合物のヒドロシリル化方法が開示されている。触媒としては、Fe錯体、Ni錯体、Mn錯体またはCo錯体が使用される。
【0015】
中国特許第101805366号明細書(CN 101805366)には、イソシアナトプロピルトリメトキシシランの環縮合による1,3,5−トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートの製造が記載されている。
【0016】
チェコスロバキア国特許第195549号明細書(CS 195549)は、ハイドロジェンシランを用いたビニルシクロヘキサンのヒドロシリル化に関する。その際、実施例4では、ビニルシクロヘキサンが、白金酸とトリフルオロ酢酸との存在下でトリエトキシシランを用いてヒドロシリル化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造方法、すなわちトリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(アルキルジアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートおよびトリス[3−(ジアルキルアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの系列のトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造方法であって、ここで、アルキルは次のものに限定されるわけではないが特に、メチルまたはエチルを表し、アルコキシはメトキシまたはエトキシを表すものとし、Pt触媒をカルボン酸と併用し、そして必要に応じて狙い通りの反応操作、狙い通りの供給原料比率および/またはさらなる添加物によって上述の欠点を最小限に抑える方法を提供するという課題に基づいていた。さらに、高価な白金を最小限の濃度に抑え、脂肪族や芳香族の溶剤を別個に添加することなく前述の方法を実施することや、目的生成物の収率を向上させることも望まれていた。また、目的生成物中に残留するカルボン酸の含分を最小限に抑えることも望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題は、本発明の特許請求の範囲により解決される。
【0019】
驚くべきことに、ヒドロシリル化を行う際に、
− ステップAにおいて、ハイドロジェントリアルコキシシラン、ハイドロジェンアルキルジアルコキシシラン、ハイドロジェンジアルキルアルコキシシランの系列の少なくとも1種のハイドロジェンアルコキシシラン[略してHシランと呼ぶ]と、少なくとも1種のカルボン酸と、Pt触媒とを含む混合物を装入し、前記混合物を50〜140℃の温度に加熱し、
− ステップBにおいて、混合下に、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンと少なくとも1種のアルコールとの混合物を、前記ステップAの混合物に添加し、
− ステップCにおいて、混合下に前記ステップBの混合物を反応させ、かつ
− ステップDにおいて、そのようにして得られた生成物混合物を後処理した場合、目的生成物、すなわちトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの収率がはるかに向上し、そのようにしてヒドロシリル化の転化率および選択率、ひいては収率が明らかに向上することが判明した。
【0020】
その際好ましくは、均一系白金(0)錯体触媒、特に「Karstedt触媒」、「Speier触媒」、ヘキサクロロ白金(IV)酸か、または担持Pt触媒、すなわち不均一系Pt触媒、例えば活性炭担持Ptを用いて本方法を行うことが特に好ましいことが判明した。さらに、「Karstedt触媒」を白金(0)錯体触媒溶液として使用することが有利であり、特にキシレンまたはトルエンに溶解した白金(0)錯体触媒溶液として使用することが有利である。
【0021】
さらに、本方法によって、Pt触媒含分あるいはPt損失量を低減させることができ、そのようにして高価なPtを節約することができる。さらに、安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、プロピオン酸および/または酢酸の系列のカルボン酸を使用することが本方法において特に好ましいことが明らかとなった。
【0022】
本方法によって得られた生成物混合物を、蒸留によって、この蒸留を必要に応じて減圧下で行うことによって適切に後処理すると、所望の(目的)生成物が得られる。
【0023】
不均一系触媒を使用する場合には、この触媒を、蒸留の前に例えばろ過または遠心分離によって生成物混合物から適切に分離することができ、こうして回収したこのPt触媒を、好ましくはプロセスに再循環させることができる。
【0024】
例えば、反応後に、および必要に応じて不均一系触媒を分離除去した後に、蒸留を行って目的生成物を塔底生成物として得る場合、この目的生成物は、蒸留による後処理の際に留出されずに無色の塔底生成物として生じる。
【0025】
本方法によれば、本方法において使用されるオレフィン成分の二重結合を、好ましくも実質的に完全にヒドロシリル化することができるとともに、好ましくも副生成物がごくわずかにしか生じない。
【0026】
さらに、本方法、すなわち本発明による方法を、好ましくも、溶剤あるいは希釈剤として脂肪族や芳香族の炭化水素を別個に添加することなく、また目的生成物中に残留する(助)触媒成分のカルボン酸がわずかな割合のみとなるように、実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
したがって本発明の対象は、トリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(アルキルジアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートおよびトリス[3−(ジアルキルアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの系列のトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートをヒドロシリル化により製造する方法であって、
− ステップAにおいて、ハイドロジェントリアルコキシシラン、ハイドロジェンアルキルジアルコキシシラン、ハイドロジェンジアルキルアルコキシシランの系列の少なくとも1種のハイドロジェンアルコキシシラン[略してHシランと呼ぶ]と、少なくとも1種のカルボン酸と、Pt触媒とを含む混合物を装入し、前記混合物を50〜140℃の温度に加熱し、
− ステップBにおいて、混合下に、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンと少なくとも1種のアルコールとの混合物を、前記ステップAの混合物に添加し、
− ステップCにおいて、混合下に前記ステップBの混合物を反応させ、かつ
− ステップDにおいて、そのようにして得られた生成物混合物を後処理することによる方法である。
【0028】
本発明の方法において、Hシラン対オレフィン成分は、有利には1:0.1〜1のモル比で使用され、好ましくは1:0.2〜0.4のモル比で使用され、特にここで、可能であってかつ上記記載あるいは本記載から当業者にとって自明であるかあるいは想定されうる中間値のうちのいくつかのみを代表的なものとして例示的に挙げると、1:0.13、1:0.15、1:0.18、1:0.23、1:0.25、1:0.28、1:0.3、1:0.33、1:0.35、1:0.38が挙げられる。
【0029】
その際、Hシランとしては有利には、ハイドロジェントリメトキシシラン(TMOS)、ハイドロジェントリエトキシシラン(TEOS)、メチルジエトキシシラン(DEMS)、メチルジメトキシシラン(DMMS)、ジメチルエトキシシラン(DMES)および/またはジメチルメトキシシラン(MDMS)が使用される。
【0030】
さらに、本発明による方法において、オレフィン成分として1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンが使用される。
【0031】
有利には、本発明による方法において、Hシラン対アルコールを、1:0.005〜0.3のモル比で、有利には1:0.01〜0.2のモル比で、好ましくは1:0.02〜0.18のモル比で、特に好ましくは1:0.03〜0.15のモル比で、極めて特に好ましくは1:0.04〜0.1のモル比で、殊に1:0.05〜0.06のモル比で使用することが好ましい。この目的のために好ましくは、少なくとも1種のアルコールは、C〜C10−アルコールの系列から選択され、特に好ましくはt−ブタノール、エタノール、メタノール、ベンジルアルコールおよびジグリコールモノメチルエーテルの系列の少なくとも1種から選択される。
【0032】
さらに、本発明による方法において、Hシラン対Ptは、有利には1:1×10−4〜1×10−9のモル比で、好ましくは1:1×10−5〜1×10−8のモル比で、特に1:1×10−5〜9×10−6のモル比で使用される。
【0033】
その際、Pt触媒としては、適切には、不均一系Pt触媒、好ましくは固体触媒担体に施与されたPt、特に活性炭担持Ptか、または均一系Pt触媒、好ましくはPt錯体触媒、例えばヘキサクロロ白金(IV)酸(「Speier触媒」とも呼ぶ)、特にアセトンに溶解したヘキサクロロ白金(IV)酸、好ましくはPt(0)錯体触媒、特に好ましくは「Karstedt触媒」、極めて特に好ましくは白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、特に0.5〜5重量%のPt(0)含分を有するキシレンもしくはトルエン中の「Karstedt触媒」が使用される。このような溶液は通常は、キシレンまたはトルエンに溶解した白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体を含有し、その際、本発明により使用される溶液は有利には、希釈された形態で使用され、この溶液は好ましくは0.5〜5重量%のPt含分を有する。したがって本発明による方法においては、有利には以下の系列のPt触媒が使用される:「Karstedt触媒」、特に「Karstedt触媒」溶液、好ましくは0.5〜5重量%のPt(0)含分を有するキシレンまたはトルエン中の白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、ヘキサクロロ白金(IV)酸、好ましくは「Speier触媒」、特にアセトンに溶解したヘキサクロロ白金(IV)酸、または活性炭担持Pt。
【0034】
さらに、本発明による方法において、Hシラン対カルボン酸は好ましくは、1:1×10−3〜30×10−3のモル比で、特に好ましくは1:1×10−3〜10×10−3のモル比で、特に1:2×10−3〜8×10−3のモル比で使用される。
【0035】
この目的のために、カルボン酸は有利には、安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、プロピオン酸、酢酸の系列から選択される。
【0036】
したがって総じて、本発明による方法を、本明細書において詳述する該方法の特徴の考えうるすべての組合せで、以下のように行うことができる:
トリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートを製造するための本発明によるヒドロシリル化を行うために、計量供給装置、加熱/冷却装置、還流装置および蒸留装置を備えた撹拌反応器中に、適切には保護ガス下に、例えば窒素下に
− ステップAにおいて、ハイドロジェントリアルコキシシラン、ハイドロジェンアルキルジアルコキシシラン、ハイドロジェンジアルキルアルコキシシランの系列の少なくとも1種のハイドロジェンアルコキシシラン[略してHシランと呼ぶ]と、少なくとも1種のカルボン酸、好ましくは安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、プロピオン酸および/または酢酸と、Pt触媒、適切には「Speier触媒」、好ましくはアセトンに溶解したヘキサクロロ白金(IV)酸もしくはアセトンに溶解したヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物もしくは「Karstedt触媒」(ここで、この「Karstedt触媒」を、有利にはPt(0)錯体触媒溶液として使用するものとする)または活性炭担持Ptとを含む混合物を装入し、前記混合物を40〜140℃の温度に、好ましくは50〜120℃の温度に加熱し、
− ステップBにおいて、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンと少なくとも1種のアルコールとの混合物を、前記ステップAの混合物に、好ましくは温度制御下に1〜10時間またはそれを上回る時間にわたって添加し、
− ステップCにおいて、混合下に前記ステップBの混合物を、適切には60〜100℃の温度で特に0.5〜2時間にわたってさらに反応させるかまたは後反応させ、ここで、前記計量供給時間および反応時間は推奨値であり、当然のことながらバッチ量や反応器設計に依存しうるものとし、
− 続くステップDにおいて、そのようにして得られた生成物混合物を後処理する。
【0037】
したがって本方法においては、それぞれの供給原料を、有利には明確に規定されたモル比で使用する:
− Hシラン対オレフィン成分を、1:0.1〜1のモル比で使用し、
− Hシラン対アルコールを、1:0.005〜0.3のモル比で使用し、
− Hシラン対Ptを、1:1×10−4〜1×10−9のモル比で使用し、
− Hシラン対カルボン酸を、1:1×10−3〜30×10−3のモル比で使用する。
【0038】
さらに、使用される「Karstedt触媒」溶液を、有利には市販のいわゆる「Karstedt触媒」濃縮物(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金含分:20.37重量%)(以下、略して「Karstedt濃縮物」とも呼ぶ)から調製し、その際、この濃縮物を好ましくはキシレンあるいはトルエンの添加により調整して、Pt含分を0.5〜5重量%とする。
【0039】
このようにして得られた生成物混合物を適切に蒸留により後処理し、そのようにして所望の(目的)生成物を得る。この目的のために、蒸留を、有利には最初は45℃〜150℃で減圧で行い(1バール未満での、特に0.1バール以下での真空蒸留)、その際特に、存在する低沸点物、例えばカルボン酸、アルコール、余剰のHシランあるいは場合によってなおも存在するオレフィン成分を、生成物混合物から除去する。本発明による方法の実施に際して不均一系Pt触媒を使用する場合には、この不均一系Pt触媒を、生成物後処理の範囲で、反応後に得られた生成物混合物から、すなわち蒸留ステップの前に、例えばろ過または遠心分離によって分離除去することができ、そして有利には再度プロセスに返送することができる。
【0040】
このようにして、本発明により得られるトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートを、より高収率でかつより高選択率で、すなわち副生成物の割合がわずかしか存在しないようにして、簡便かつ経済的に、有利にもさらには工業的に、製造することができる。
【実施例】
【0041】
以下の例により本発明をさらに説明するが、これは本発明の対象を限定するものではない。
【0042】
例:
分析方法:
NMR測定:
機器:Bruker
周波数:500.1MHz(H−NMR)
スキャン回数:32
温度:303K
溶剤:CDCl
標準物質:0.5%TMS(テトラメチルシラン)。
【0043】
以下に、このH−NMR解析に関する目的生成物および合成時に形成される副生成物に関する名称について、トリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの構造式の例を用いて説明する。トリス[3−(メチルジアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートおよびトリス[3−(ジメチルアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートに関する選択率の測定も同様に行い、これらを例6および7の表に示す。
【0044】
【化1】
【0045】
【化2】
【0046】
試験を評価するために、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンのヒドロシリル化の際に生じる生成物を用いた。目的生成物へと転化するアリル二重結合が多いほど、そして副成分の形成量が少ないほど、生成物品質は良好であり、そして触媒系の性能/選択率も良好である。選択率が高いことは極めて重要である。なぜならば、蒸留による目的生成物からの副成分の除去は、極めて高いコストをかけないと行うことができないか、あるいはそうした除去は不可能であるためである。
【0047】
H−NMRスペクトル解析に際して、上述の構造式に記した水素原子を考慮した。ヒドロシリル化の際にSi−CH−基が生じ、これが目的生成物の特徴となる。このSi−CH−基をS1で表し、アリル基(C=CH−基)をA1で表し、プロピル基(C−基)をP1で表し、そしてイソプロピル基をI1で表した。H−NMRスペクトル解析および官能基の算出を、各試験の後に表に示した。H−NMRにより解析したシグナルは、基S1およびP1についてはトリプレット(t)を形成し、基A1についてはダブルダブレット(dd)を形成し、基I1についてはダブレット(d)を形成する。
【0048】
使用した化学薬品:
「Karstedt濃縮物」(白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金含分20.37重量%)、HERAEUS
純アセトン、LABC Labortechnik
ヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物、白金含分40重量%、HERAEUS
白金−活性炭、水素化触媒、白金含分10重量%、MERCK
ベンジルアルコール、puriss、SIGMA ALDRICH
ジエチレングリコールモノメチルエーテル >98重量%、MERCK
工業用キシレン、VWR Chemicals
Dynasylan(登録商標)TMOS(トリメトキシシラン)、EVONIK Industries
Dynasylan(登録商標)TEOS−H(トリエトキシシラン)、EVONIK Industries
Dynasylan(登録商標)DEMS(メチルジエトキシシラン)、EVONIK Industries
Dynasylan(登録商標)DMES(ジメチルエトキシシラン)、EVONIK Industries
TAICROS(登録商標)(1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン)、EVONIK Industries
安息香酸、≧99.5重量%、ROTH
3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、>98.0重量%、東京化成工業株式会社
3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、>98.0重量%、東京化成工業株式会社
酢酸、≧99重量%、SIGMA−ALDRICH
メタノール、≧99.5重量%、MERCK
エタノール、≧99.8重量%、ROTH
t−ブタノール、≧99.0重量%(合成用)、ROTH
クロロホルム−d1(CDCl)+0.5重量% TMS、DEUTERO
ベンゼン−d6、DEUTERO
テトラメチルシラン、DEUTERO。
【0049】
キシレン中の2重量%の白金含分を有する「Karstedt触媒」番号1の調製:
0.2リットルのガラス瓶中で、「Karstedt濃縮物」(白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金含分20.37%)9.8gを、キシレン90.2gと混合した。
【0050】
トルエン中の2重量%の白金含分を有する「Karstedt触媒」番号2の調製:
0.2リットルのガラス瓶中で、「Karstedt濃縮物」(白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金含分20.37重量%)9.8gを、トルエン90.2gと混合した。
【0051】
0.4重量%の白金含分を有する「Karstedt触媒」番号3の調製:
0.1リットルのガラス瓶中で、「Karstedt濃縮物」(白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金含分20.37重量%)196.4mgを、トルエン9.8gと混合した。
【0052】
2.34重量%のPt含分を有するアセトン中のヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物溶液からの触媒4の調製:
12リットルのプラスチック容器中で、HPtCl・6HO 530gをアセトン9.8リットルに溶解させた。このようにして調製した触媒溶液を、8週間にわたってエージング処理した後に使用した。
【0053】
以下の比較例に関する注釈:
米国特許第5,986,124号明細書(US 5,986,124)に記載のアンプル内での合成は、工業的規模での実施が不可能である。これらの試験を本発明による例とより良好に比較できるようにするため、これらの試験を撹拌槽あるいはフラスコ内で行った。さらに、米国特許第5,986,124号明細書(US 5,986,124)における例では別の不飽和化合物が使用されているため、本発明と直接比較することは不可能であるものと考えられる。したがって、以下の比較例においてTAICROS(登録商標)を使用した。
【0054】
比較例1:(米国特許第5,986,124号明細書(US 5,986,124)の例1による)
Dynasylan(登録商標)TMOS 0.2003モル(24.5g)、触媒番号1 0.1ml、さらなる溶剤あるいは希釈剤としてのさらなるトルエン40.0g、TAICROS(登録商標)0.0665モル(16.6g)および酢酸0.4mlを、強力冷却装置を備えた0.25リットルの撹拌装置に装入し、53〜55℃に加熱した油浴中で2.5時間撹拌した。その際、不完全に転化した無色の塔底生成物79.9gが得られた。易揮発性成分を除去しなかった。
【0055】
比較例1に関するH−NMRスペクトル解析:
【表1】
【0056】
結果:アリル基の45.8%が、ヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)の53.7%が転化しておらず、プロピル基(P1)0.3%あるいはイソプロピル基(I1)0.2%が生じ、これらが生成物に対する不純物となった。反応は不完全である。
【0057】
比較例2:(米国特許第5,986,124号明細書(US 5,986,124)の例1による)
Dynasylan(登録商標)TEOS−H 0.2003モル(32.9g)、触媒番号3 0.1ml、さらなる溶剤あるいは希釈剤としてのさらなるトルエン40.0g、TAICROS(登録商標)0.0665モル(16.6g)および酢酸0.4mlを、還流冷却器を備えた0.25リットルの撹拌装置に装入し、50〜57℃に加熱した油浴中で2.5時間撹拌した。その際、不完全に転化した無色の塔底生成物88.2gが得られた。易揮発性成分を除去しなかった。
【0058】
比較例2に関するH−NMRスペクトル解析:
【表2】
【0059】
結果:アリル基の86.2%が、ヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)の12.6%が転化しておらず、プロピル基(P1)0.6%あるいはイソプロピル基(I1)0.6%が生じ、これらが生成物に対する不純物となった。反応は不完全である。
【0060】
比較例3:(酢酸のみ使用。アルコールを添加せず)
DYNASYLAN(登録商標)TMOS 1.2モルおよび触媒番号1 0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。76〜91℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと酢酸6.77ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を約87〜92℃でさらに約1時間反応させた。引き続き、低沸点物55.0gを、90〜120℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、不完全に転化した無色の塔底生成物170.7gが得られた。
【0061】
比較例3に関するH−NMRスペクトル解析:
【表3】
【0062】
結果:アリル基の73.8%が、ヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)の25.7%が転化しておらず、プロピル基(P1)0.3%あるいはイソプロピル基(I1)0.2%が生じ、これらが生成物に対する不純物となった。反応は不完全である。
【0063】
比較例4:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モル、「Karstedt触媒」0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)、メタノール34.38ミリモルおよび安息香酸6.55ミリモルを、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。73〜82℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルを1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を81℃でさらに1時間反応させた。続いて、低沸点物89.5gを、35〜127℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、不完全に転化した無色の塔底生成物134.2gが得られた。
【0064】
比較例4のH−NMRスペクトル解析:
【表4】
【0065】
結果:アリル基の42.5%が、TMOSを用いたヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)の57.0%が転化しなかった。プロピル基(P1)0.4%あるいはイソプロピル基(I1)0.1%が生じ、これらが生成物に対する不純物となった。アリル基の転化は不完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
【0066】
比較例5:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モル、「Karstedt触媒」0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)およびメタノール34.38ミリモルを、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。70〜87℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルと安息香酸6.55ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を81℃でさらに1時間反応させた。続いて、低沸点物41.5gを61〜121℃で0.1ミリバール未満の圧力で除去した。その際、不完全に転化した無色の塔底生成物183.0gが得られた。
【0067】
【表5】
【0068】
結果:アリル基の81.5%が、TMOSを用いたヒドロシリル化によってトリメトキシシリルアルキル基(S1参照)へと転化した。アリル基(A1)の17.7%が転化しなかった。プロピル基(P1)0.6%あるいはイソプロピル基(I1)0.2%が生じ、これらが生成物に対する不純物となった。アリル基の転化は不完全であり、副生成物はわずかにしか生じなかった。
【0069】
比較例6:
TAICROS(登録商標)0.33モル(83.1g)、触媒番号1 0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)および3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸6.79ミリモル(1.7g)を、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。91〜111℃の温度で、Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モル(146.6g)を計量供給することが望ましい。ヒドロシリル化は高度に発熱性であり、Dynasylan(登録商標)TMOS 18gを9分以内に計量供給した後、温度はすでに91℃から97℃に上昇した。27分以内にDynasylan(登録商標)TMOSをさらに72g計量供給して温度が108℃に上昇した後に、Dynasylan(登録商標)TMOSをさらに添加しても発熱を認めることはできなかった。この反応混合物は、数分以内に108℃から89℃に温度が下がった。したがって、合計で90gのDynasylan(登録商標)TMOSを計量供給した後にこの試験を停止した。つまり反応が停止し、それに応じてこの方法様式での転化は不完全なままであった。計量供給しなかったDynasylan(登録商標)TMOSは、68gであった。
【0070】
注釈:
Pt触媒とカルボン酸とから構成されるPt触媒系の存在下での1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(TAICROS(登録商標))のヒドロシリル化によるトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの製造に関するこれらの比較試験によって、以下のような場合に、二重結合の転化率が90モル%をかなり下回って比較的低いことが判明した:
− HシランとPt触媒とカルボン酸とTAICROS(登録商標)との混合物を使用し、これを加熱し、そのようにして反応させる場合、または
− HシランとPt触媒とを装入して加熱し、これにTAICROS(登録商標)とカルボン酸との混合物を供給する場合、または
− HシランとPt触媒とアルコールとを装入して加熱し、これにTAICROS(登録商標)とカルボン酸との混合物を供給する場合、または
− HシランとPt触媒とカルボン酸とアルコールとを装入して加熱し、これにTAICROS(登録商標)を供給する場合、または
− TAICROS(登録商標)とPt触媒とカルボン酸とを装入して加熱し、これにHシランを供給する場合。
【0071】
例1:
Dynasylan(登録商標)TMOS 1.2モル、「Karstedt触媒」番号1 0.2g(Pt 0.0205ミリモルに相当)および安息香酸6.55ミリモルを、還流冷却器および計量供給装置を備えた0.5リットルの撹拌装置に装入した。71〜82℃の温度で、TAICROS(登録商標)0.33モルとメタノール50.0ミリモルとからなる混合物を、1時間以内に計量供給した。その後、この混合物を81℃でさらに1時間反応させ、次いで塔底生成物試料からH−NMRスペクトルを測定した。
【0072】
例1の塔底生成物試料に関するH−NMRスペクトル解析
【表6】
【0073】
結果:アリル基の98.1%が、TMOSを用いたヒドロシリル化によりトリメトキシシリルアルキル基へと転化した。アリル基(A1)の0.1%が転化しなかった。プロピル基(P1)1.4%あるいはイソプロピル基(I1)0.4%が生じ、これらが生成物に対する不純物となった。アリル基の転化は、ほぼ完全というわけではなく、副生成物はわずかにしか生じなかった。完全には転化しなかったアリル基は、極微量しか存在しない。
【0074】
本発明の好ましい実施の態様は以下のとおりである。
[態様1]
トリス[3−(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3−(アルキルジアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートおよびトリス[3−(ジアルキルアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートの系列のトリス[3−(アルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートをヒドロシリル化によって製造する方法であって、
− ステップAにおいて、ハイドロジェントリアルコキシシラン、ハイドロジェンアルキルジアルコキシシラン、ハイドロジェンジアルキルアルコキシシランの系列の少なくとも1種のハイドロジェンアルコキシシラン[略してHシランと呼ぶ]と、少なくとも1種のカルボン酸と、Pt触媒とを含む混合物を装入し、前記混合物を50〜140℃の温度に加熱し、
− ステップBにおいて、混合下に、1,3,5−トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンと少なくとも1種のアルコールとの混合物を、前記ステップAの混合物に添加し、
− ステップCにおいて、混合下に前記ステップBの混合物を反応させ、かつ
− ステップDにおいて、そのようにして得られた生成物混合物を後処理することによる方法。
[態様2]
Hシラン対アルコールを、1:0.005〜0.3のモル比で、有利には1:0.01〜0.2のモル比で、好ましくは1:0.02〜0.18のモル比で、特に好ましくは1:0.03〜0.15のモル比で、極めて特に好ましくは1:0.04〜0.1のモル比で、殊に1:0.05〜0.06のモル比で使用することを特徴とする、[態様1]記載の方法。
[態様3]
Hシラン対Ptを、1:1×10−4〜1×10−9のモル比で、好ましくは1:1×10−5〜3×10−8のモル比で、特に1:1×10−5〜9.0×10−6のモル比で使用することを特徴とする、[態様1]または[態様2]記載の方法。
[態様4]
Hシラン対カルボン酸を、1:1×10−3〜30×10−3のモル比で、好ましくは1:2×10−3〜8×10−3のモル比で使用することを特徴とする、[態様1]から[態様3]までのいずれか記載の方法。
[態様5]
Hシラン対オレフィン成分を、1:0.1〜1のモル比で、好ましくは1:0.2〜0.4のモル比で使用することを特徴とする、[態様1]から[態様4]までのいずれか記載の方法。
[態様6]
前記カルボン酸を、安息香酸、プロピオン酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、3,5−ジ−t−ブチル安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、酢酸の系列から選択することを特徴とする、[態様1]から[態様5]までのいずれか記載の方法。
[態様7]
前記アルコールをC〜C10−アルコールの系列から選択し、好ましくはt−ブタノール、エタノール、メタノール、ベンジルアルコールおよびジグリコールモノメチルエーテルの系列から選択することを特徴とする、[態様1]から[態様6]までのいずれか記載の方法。
[態様8]
Hシランとして、ハイドロジェントリメトキシシラン(TMOS)、ハイドロジェントリエトキシシラン(TEOS)、メチルジエトキシシラン(DEMS)、メチルジメトキシシラン(DMMS)、ジメチルエトキシシラン(DMES)またはジメチルメトキシシラン(MDMS)を使用することを特徴とする、[態様1]から[態様7]までのいずれか記載の方法。
[態様9]
以下の系列のPt触媒:
「Karstedt触媒」、好ましくは白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、特に0.5〜5重量%のPt(0)含分を有するキシレンまたはトルエン中の「Karstedt触媒」としての触媒、ヘキサクロロ白金(IV)酸、好ましくは「Speier触媒」、特にアセトンに溶解したヘキサクロロ白金(IV)酸か、または固体触媒担体に施与したPt、好ましくは活性炭担持Ptを使用することを特徴とする、[態様1]から[態様8]までのいずれか記載の方法。