特許第6979912号(P6979912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許6979912-田植機 図000002
  • 特許6979912-田植機 図000003
  • 特許6979912-田植機 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979912
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】田植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   A01C11/02 350F
   A01C11/02 351Z
   A01C11/02 320Z
   A01C11/02 322Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-60835(P2018-60835)
(22)【出願日】2018年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-170212(P2019-170212A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
(72)【発明者】
【氏名】國安 恒寿
(72)【発明者】
【氏名】田尾 哲也
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−140047(JP,A)
【文献】 特開平10−098921(JP,A)
【文献】 特開2009−072067(JP,A)
【文献】 特開2012−196155(JP,A)
【文献】 特開2008−283941(JP,A)
【文献】 特開2016−024541(JP,A)
【文献】 特開2017−099363(JP,A)
【文献】 特開2015−213518(JP,A)
【文献】 特開2011−050343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部を有する走行機体と、
前記駆動部からの動力により左右方向に往復動作する苗載台を有する苗植付装置と、
前記苗植付装置の動作を制御する苗植付装置制御部、および、前記走行機体および前記苗植付装置の少なくともいずれかの状態に関する状態情報を取得する状態情報取得部、を有する制御部と、
表示部と、を備える田植機であって、
前記苗植付装置制御部は、前記苗載台を動作させて当該苗載台に苗を補給するための苗補給位置に移動させる苗補給位置移動作業を案内する案内モードを具備し、
前記案内モードにおいて前記苗植付装置制御部は、前記状態情報取得部が取得した前記状態情報に基づいて、前記田植機を前記苗補給位置移動作業を実施可能な状態にするために必要な操作を促すガイダンスを前記表示部に表示し、
前記苗植付装置制御部は、前記案内モードにおいて、前記状態情報取得部が取得した前記状態情報に基づいて、前記苗補給位置移動作業を実施できる条件としてあらかじめ定められた所定条件群を達成しているか否かを判断し、
前記苗植付装置制御部は、前記田植機が前記所定条件群を達成していないと判断した場合は、前記田植機が前記所定条件群を達成するために必要な操作を促すガイダンスを前記表示部に表示し、
前記所定条件群は、前記状態情報取得部が取得可能な前記状態情報に基づいて、達成されているか否かを判断できる可知条件群を含み、
前記苗植付装置制御部は、前記可知条件群に属する条件のうち未達成の条件を達成するために必要な操作を促すガイダンスを、前記表示部に表示し、
前記所定条件群は、前記状態情報取得部が取得可能な前記状態情報によっては、達成されているか否かを判断できない不可知条件群を含み、
前記苗植付装置制御部は、前記不可知条件群に属する各条件を達成するために必要な操作を促すガイダンスを、前記表示部に表示する田植機。
【請求項2】
駆動部を有する走行機体と、
前記駆動部からの動力により左右方向に往復動作する苗載台を有する苗植付装置と、
前記苗植付装置の動作を制御する苗植付装置制御部、および、前記走行機体および前記苗植付装置の少なくともいずれかの状態に関する状態情報を取得する状態情報取得部、を有する制御部と、
表示部と、を備える田植機であって
前記苗植付装置制御部は、前記苗載台を動作させて当該苗載台に苗を補給するための苗補給位置に移動させる苗補給位置移動作業を案内する案内モードを具備し、
前記案内モードにおいて前記苗植付装置制御部は、前記状態情報取得部が取得した前記状態情報に基づいて、前記田植機を前記苗補給位置移動作業を実施可能な状態にするために必要な操作を促すガイダンスを前記表示部に表示し、
前記駆動部と前記苗植付装置とは、前記動力を伝達する接続状態または前記動力を伝達しない切断状態を選択可能な植付クラッチを介して接続されており、
前記植付クラッチは、少なくとも前記苗植付装置制御部からの信号入力によって、前記接続状態または前記切断状態を選択可能であり、
前記苗植付装置制御部は、前記案内モードにおいて、前記状態情報取得部が取得した前記状態情報に基づいて、前記苗補給位置移動作業を実施できる条件としてあらかじめ定められた所定条件群を達成しているか否かを判断し、
前記苗植付装置制御部は、前記苗補給位置移動作業の実施中に、前記所定条件群が達成されていない状態に転じたと判断した場合は、前記植付クラッチを前記切断状態に遷移させるとともに、前記表示部に前記苗補給位置移動作業を停止した旨を表示する田植機。
【請求項3】
前記苗植付装置制御部は、前記田植機が前記所定条件群を達成していないと判断した場合は、前記田植機が前記所定条件群を達成するために必要な操作を促すガイダンスを前記表示部に表示する請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記所定条件群は、前記状態情報取得部が取得可能な前記状態情報に基づいて、達成されているか否かを判断できる可知条件群を含み、
前記苗植付装置制御部は、前記可知条件群に属する条件のうち未達成の条件を達成するために必要な操作を促すガイダンスを、前記表示部に表示する請求項2または3に記載の田植機。
【請求項5】
前記可知条件群は、前記苗植付装置と前記走行機体とが接続されていること、前記駆動部が起動していること、前記走行機体の制動装置が作動していないこと、前記苗植付装置の姿勢があらかじめ定められた所定の姿勢であること、および、前記駆動部から前記苗植付装置に伝達される動力の回転数があらかじめ定められた所定の範囲にあること、から選択される条件のうち少なくとも1つを含む請求項1または4に記載の田植機。
【請求項6】
前記所定条件群は、前記状態情報取得部が取得可能な前記状態情報によっては、達成されているか否かを判断できない不可知条件群を含み、
前記苗植付装置制御部は、前記不可知条件群に属する各条件を達成するために必要な操作を促すガイダンスを、前記表示部に表示する請求項2〜5のいずれか1項に記載の田植機。
【請求項7】
前記走行機体は、前輪および後輪を含む車輪、前記駆動部から前記苗植付装置に伝達される植付動力を調節可能な主変速装置、ならびに、前記駆動部から前記車輪に伝達される走行動力を調節可能な副変速装置、を有し、
前記不可知条件群は、前記主変速装置があらかじめ定められた所定の状態にあること、および、前記副変速装置が前記走行動力を前記車輪に伝達しない状態にあること、の少なくとも一方を含む請求項1または6に記載の田植機。
【請求項8】
前記走行機体は、作業者が乗車可能な運転座席を有し、
前記運転座席の前方に、メータパネルと、前記田植機の操作に供する操作部と、が設けられ、
前記メータパネルは前記表示部を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを搭載した走行機体と、当該エンジンから伝達される動力により駆動する苗植付装置と、を備える田植機が汎用されている。苗植付装置としては、矩形マット状に形成したマット状苗を載置する苗載台を有し、当該苗載台が左右方向に往復動作可能に構成されることが一般的である。
【0003】
かかる田植機において、苗載台にマット状苗を載置する作業を行うために、苗載台を左右いずれか一方の端部に移動させる作業(端寄せ作業)を行う必要がある場合がある。この端寄せ作業は、通常の作業走行とは異なる手順で行われる必要があることに加え、手順が煩雑なため、作業者の負担が大きい作業である。
【0004】
このような作業実態に鑑み、端寄せ作業を支援する機能を搭載した田植機が提案されている。たとえば特許文献1には、端寄せモードを選択した際に、変速装置の出力値を自動的に制御する機能を備える田植機が開示されている。この発明によれば、出力値を制御する精密な操作を要することなく、比較的簡単に端寄せ作業を実施することができる点で有利である。
【0005】
また、特許文献2には、苗載台が左右いずれかの端部に到達したときに作動する端寄せスイッチを備え、当該端寄せスイッチが作動したときに端寄せ作業を自動的に終了する機能を備える田植機が開示されている。この発明によれば、苗載台が左右いずれかの端部に到達したときを見計らって苗載台の移動を停止する操作を要することなく、比較的簡単に端寄せ作業を実施することができる点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−140047号公報
【特許文献2】特開2012−196155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2の技術においては、端寄せ作業を構成する個々の単位作業について作業者を支援することはできるが、端寄せ作業の全体にわたって作業者を支援するためには不十分である場合があった。特に、端寄せ作業を行うためには、走行機体および苗植付装置が、端寄せ作業を実施するための条件群を達成している必要がある場合があるが、その条件群が何であるのか、および、その条件群が達成されているのか否か、について、作業者に対して適切に案内することについては、改善の余地があった。
【0008】
そこで、端寄せ作業を実施するために達成される必要がある条件群が達成されているか否かを判断するとともに、未達成の条件を達成するために必要な操作を作業者に案内する機能を備えた田植機の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る田植機は、駆動部を有する走行機体と、前記駆動部からの動力により左右方向に往復動作する苗載台を有する苗植付装置と、前記苗植付装置の動作を制御する苗植付装置制御部、および、前記走行機体および前記苗植付装置の少なくともいずれかの状態に関する状態情報を取得する状態情報取得部、を有する制御部と、表示部と、を備える田植機であって、前記苗植付装置制御部は、前記苗載台を動作させて当該苗載台に苗を補給するための苗補給位置に移動させる苗補給位置移動作業を案内する案内モードを具備し、前記案内モードにおいて前記苗植付装置制御部は、前記状態情報取得部が取得した前記状態情報に基づいて、前記田植機を前記苗補給位置移動作業を実施可能な状態にするために必要な操作を促すガイダンスを前記表示部に表示することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、苗補給位置移動作業を実施可能な状態にするために必要な操作についての案内を、作業の進行状態に応じた適切な内容およびタイミングで、作業者に提供することができる。
【0011】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0012】
本発明に係る田植機は、一態様として、前記苗植付装置制御部は、前記案内モードにおいて、前記状態情報取得部が取得した前記状態情報に基づいて、前記苗補給位置移動作業を実施できる条件としてあらかじめ定められた所定条件群を達成しているか否かを判断することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、苗補給位置移動作業を実施できるか否かについての判断を、苗植付装置制御部が自律的に行うことができるため、より適切に作業者を支援することができる。
【0014】
本発明に係る田植機は、一態様として、前記苗植付装置制御部は、前記田植機が前記所定条件群を達成していないと判断した場合は、前記田植機が前記所定条件群を達成するために必要な操作を促すガイダンスを前記表示部に表示することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、作業者に対し、苗補給位置移動作業を実施するために必要な操作を具体的に提示することができる。
【0016】
本発明に係る田植機は、一態様として、前記所定条件群は、前記状態情報取得部が取得可能な前記状態情報に基づいて、達成されているか否かを判断できる可知条件群を含み、前記苗植付装置制御部は、前記可知条件群に属する条件のうち未達成の条件を達成するために必要な操作を促すガイダンスを、前記表示部に表示することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、走行機体および苗植付装置に設けられた各種センサを活用して機体の状態を認識し、当該機体の状態に応じた適切なガイダンスを表示することができる。
【0018】
本発明に係る田植機は、一態様として、前記可知条件群は、前記苗植付装置と前記走行機体とが接続されていること、前記駆動部が起動していること、前記走行機体の制動装置が作動していないこと、前記苗植付装置の姿勢があらかじめ定められた所定の姿勢であること、および、前記駆動部から前記苗植付装置に伝達される動力の回転数があらかじめ定められた所定の範囲にあること、から選択される条件のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0019】
この構成によれば、走行機体の不慮の発進を防ぐとともに、苗植付装置が適切な姿勢において適切な動力の入力を受ける状態で、苗補給位置移動作業を実施することができる。
【0020】
本発明に係る田植機は、一態様として、前記所定条件群は、前記状態情報取得部が取得可能な前記状態情報によっては、達成されているか否かを判断できない不可知条件群を含み、前記苗植付装置制御部は、前記不可知条件群に属する各条件を達成するために必要な操作を促すガイダンスを、前記表示部に表示することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、走行機体および苗植付装置に設けられた各種センサでは認識できない情報について、作業者による判断を求めることができる。また、当該判断を行うために必要な操作について、適切なガイダンスを表示することができる。
【0022】
本発明に係る田植機は、一態様として、前記走行機体は、前輪および後輪を含む車輪、前記駆動部から前記苗植付装置に伝達される植付動力を調節可能な主変速装置、ならびに、前記駆動部から前記車輪に伝達される走行動力を調節可能な副変速装置、を有し、前記不可知条件群は、前記主変速装置があらかじめ定められた所定の状態にあること、および、前記副変速装置が前記走行動力を前記車輪に伝達しない状態にあること、の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0023】
この構成によれば、主変速装置および副変速装置が適切に設定された状態で、苗補給位置移動作業を実施することができる。
【0024】
本発明に係る田植機は、一態様として、前記駆動部と前記苗植付装置とは、前記動力を伝達する接続状態または前記動力を伝達しない切断状態を選択可能な植付クラッチを介して接続されており、前記植付クラッチは、少なくとも前記苗植付装置制御部からの信号入力によって、前記接続状態または前記切断状態を選択可能であり、前記苗植付装置制御部は、前記苗補給位置移動作業の実施中に、前記所定条件群が達成されていない状態に転じたと判断した場合は、前記植付クラッチを前記切断状態に遷移させるとともに、前記表示部に前記苗補給位置移動作業を停止した旨を表示することが好ましい。
【0025】
この構成によれば、所定条件群が達成されていない状態に転じたときに自動的に苗補給位置移動作業を中止することができる。そのため、田植機の保全の観点で有利である。
【0026】
本発明に係る田植機は、一態様として、前記走行機体は、作業者が乗車可能な運転座席を有し、前記運転座席の前方に、メータパネルと、前記田植機の操作に供する操作部と、が設けられ、前記メータパネルは前記表示部を含むことが好ましい。
【0027】
この構成によれば、走行機体が通常備えるメータパネルに、苗補給位置移動作業の案内に必要な情報を表示する表示部を組み入れることができる。そのため、各種情報の一覧性に優れる。
【0028】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る田植機の側面図
図2】本発明に係る田植機における動力伝達の概略図
図3】本発明に係る田植機における制御系の概略図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る田植機の実施形態について、図1〜3を参照して説明する。本実施形態に係る田植機100は、走行機体1と、苗植付装置2と、制御部3と、を備える。
【0031】
〔田植機100の機械的構成〕
まず、田植機100の機械的構成について説明する。図1に示すように、走行機体1は、エンジン11(駆動部の例)と、それぞれ左右一対の前輪12aおよび後輪12bからなる車輪12と、車輪12を制動するブレーキ13(制動装置の例)と、作業者が着座し各種の運転操作を行うことができる運転座席14と、を備え、運転座席14の前方には、モニタ15a(表示部の例)を含むメータパネル15、および、操作部16、が設けられている。また、走行機体1は、主変速装置17および副変速装置18、ならびに、株間変速装置19aおよび植付クラッチ19b、を備える。エンジン11の動力は、図2に示すように、主変速装置17および副変速装置18を介して走行動力として車輪12に伝達されると同時に、主変速装置17、株間変速装置19a、および、植付クラッチ19b、を介して植付動力として苗植付装置2に伝達される。なお、以降の説明の中で、運転座席14に着座した作業者を基準に、作業者の正面方向を「前方」、作業者の背面方向を「後方」、作業者の右手側を「右方」、作業者の左手側を「左方」と定義する。
【0032】
ここで、主変速装置17は、油圧式の無段変速装置であって、操作部16に設けられた主変速レバー16aにより、中立位置、前進側、後退側に無段階に変速自在に構成されている。一方、副変速装置18は、ギア変速形式の変速装置であって、操作部16に設けられた副変速レバー16bにより、中立位置、走行位置(高速走行)、作業位置(低速走行)、に変速可能に構成されている。
【0033】
また、図1に示すように、苗植付装置2は、圃場に対して苗を植え付ける苗植付部21と、苗植付部21によって圃場に植え付けられる苗を載置する苗載台22と、を有し、苗植付装置2の昇降動作を行う昇降用油圧シリンダ23およびリンク機構24を介して走行機体1に連結されている。苗載台22は、主変速装置17を介してエンジン11から伝達される植付動力によって、左右に往復横送り駆動される。また、苗載台22の往復横送り駆動に連動して苗植付部21が動作し、圃場に対して苗を植え付ける。苗植付装置2は、昇降用油圧シリンダ23を縮めると上昇し、昇降用油圧シリンダ23を伸ばすと圃場面に向けて下降するように構成されており、苗植付装置2が最も上昇した位置においては、リンク機構24が水平の姿勢を取る。また、苗植付装置2を下降させて苗植付部21のフロート21aが圃場面に接する姿勢を取ると、苗植付作業を実施できる。
【0034】
植付クラッチ19bは接続状態または切断状態を選択可能に構成されている。接続状態においては、エンジン11の動力が、主変速装置17、株間変速装置19a、および、植付クラッチ19b、を介して植付動力として苗植付装置2に伝達される。一方、切断状態においては、苗植付装置2には一切の動力が伝達されない。植付クラッチ19bの接続状態または切断状態の選択は、操作部16に対する人為操作によって、または、制御部3の苗植付装置制御部31からの信号入力によって、行うことができる。
【0035】
〔田植機100の制御系〕
次に、田植機100の制御系について説明する。制御部3は、図3に示すように、苗植付装置2の動作を制御する苗植付装置制御部31と、走行機体1および苗植付装置2の状態に関する状態情報を取得する状態情報取得部32と、を有する。
【0036】
状態情報取得部32は、エンジン11の回転数についての情報を取得するエンジン状態情報取得部32a、ブレーキ13が作動しているか否かについての情報を取得するブレーキ状態情報取得部32b、苗植付装置2の姿勢についての情報を取得する苗植付装置状態情報取得部32c、植付動力の回転数についての情報を取得する植付動力状態情報取得部32d、車輪12の回転数に基づいて走行機体1の速度についての情報を取得する速度情報取得部32eを含む。苗植付装置状態情報取得部32cは、具体的には、苗植付装置2の苗植付部21が展開されているか否か、昇降用油圧シリンダ23を縮めてリンク機構24が水平位置に配置しているか否か、フロート21aが接地しているか否か、などの情報を、苗植付装置2の姿勢についての情報として取得する。
【0037】
〔苗植付装置制御部31の案内モード〕
苗植付装置制御部31は、苗載台22をその往復横送り駆動範囲の左右いずれかの端(苗補給位置の例)に移動させる端寄せ作業(苗補給位置移動作業の例)を案内する案内モードを具備する。
【0038】
田植機100による苗植付作業を行うために、苗載台22に苗を載置する必要がある。苗載台22に載置される苗は、苗載台22の形状に応じた矩形マット状に形成されたマット状苗である。マット状苗の下端部の左右いずれか一方の端から他方の端に向かって順に苗が採取されるようにするため、苗載台22をその往復横送り駆動範囲の左右いずれかの端に寄せた状態で、マット状苗を苗載台22に載置する。そのため、マット状苗を苗載台22に載置する前に、苗載台22を左右いずれかの端に寄せる作業を行う必要がある。この作業を端寄せ作業といい、案内モードはこの端寄せ作業を案内する機能を有するモードである。
【0039】
画面操作具(不図示)を操作してモニタ15aに案内モードの画面を表示すると、「端寄せ」の文字とともに、「入る」の文字が表示される。画面操作具を操作して、「入る」の文字にカーソルを合わせた状態で決定すると、案内モードが開始する。案内モードが開始すると、まず、端寄せ作業を開始できるか否かを判定するため、端寄せ作業を実行するための条件群が満たされているか否かの判断が行われる。
【0040】
端寄せ作業においては、苗載台22を駆動するため、エンジン11からの動力(植付動力)が苗植付装置2に伝達される必要がある。また、伝達される動力が適正な範囲にある必要がある。そこで案内モードにおいては、苗植付装置2は、苗植付装置状態情報取得部32cが取得する苗植付装置2の姿勢情報に基づいて、苗植付装置2と走行機体1とが接続されているか否かを判断する。また、エンジン状態情報取得部32aが取得するエンジン11の回転数についての情報に基づいて、エンジン11が起動しているか否かを判断する。さらに、植付動力状態情報取得部32dが取得する植付動力の回転数が、あらかじめ定められた適正範囲内にあるか否かを判断する。そして、苗植付装置2と走行機体1とが接続されていること(条件A1)、エンジン11が起動していること(条件A2)、および、植付動力の回転数が適正範囲内にあること(条件A3)を、端寄せ作業を実施できる条件としてあらかじめ定められた所定条件群の一部とする。
【0041】
また、端寄せ作業においては、走行機体1が前進または後退すると、苗載台22にマット状苗を載置する作業の作業性が損なわれる。そのため端寄せ作業を行うときは、走行機体1を移動させないために、エンジン11からの動力(走行動力)が車輪12に伝達されない状態になるように副変速装置18を設定する。しかし走行機体1は副変速装置18の状態を検出するセンサを備えないため、状態情報取得部32は副変速装置18の状態に関する情報を直接に取得できない。そこで案内モードにおいては、速度情報取得部32eが取得する走行機体1の速度についての情報に基づいて、走行機体1が移動しているか否かを判断する。また、ブレーキ状態情報取得部32bが取得する情報に基づいて、ブレーキ13が作動しているか否かを判断する。そして、走行機体が移動していないこと(条件A4)、および、ブレーキ13が作動していないこと(条件A5)を、端寄せ作業を実施できる条件としてあらかじめ定められた所定条件群の一部とする。両者の条件が同時に満たされているときは、副変速装置18がエンジン11からの動力を車輪12に伝達しない状態に設定されていると判断できるためである。
【0042】
加えて、端寄せ作業においては、苗植付装置2が、作業者が苗載台22にマット状苗を載置するのに適した姿勢である必要がある。そこで案内モードにおいては、苗植付装置状態情報取得部32cが取得する苗植付装置2の姿勢についての情報に基づいて、苗植付装置2があらかじめ定められた適正姿勢を取っているか否かを判断する。そして、苗植付装置2適正姿勢を取ること(条件A6)を、端寄せ作業を実施できる条件としてあらかじめ定められた所定条件群の1つとする。
【0043】
上記のA1〜A6の各条件は、いずれも状態情報取得部32が取得可能な状態情報に基づいて、達成されているか否かを判断することができる可知条件群A1〜A6である。苗植付装置制御部31は、可知条件群A1〜A6が達成されているか否かを判断するとともに、達成されていない条件がある場合は、当該条件を達成するために必要な操作を促すガイダンスをモニタ15aに表示する。たとえば、エンジン11が起動していないとき(条件A2が未達成)は「エンジンを始動させてください」との文言をモニタ15aに表示する。あるいは、ブレーキ13が作動しているとき(条件A5が未達成)は「ブレーキペダルを話してください」との文言をモニタ15aに表示する。
【0044】
一方、端寄せ作業を実施できる条件としては、状態情報取得部32が取得可能な状態情報によっては、達成されているか否かを判断できない不可知条件群も存在する。不可知条件群には、たとえば、副変速装置18がエンジン11からの動力を車輪12に伝達しない状態に設定されていること(条件B1)や、主変速装置17があらかじめ定められた適正位置にあること(条件B2)が含まれる。苗植付装置制御部31は、条件B1、B2を達成するために必要な操作を促すガイダンスをモニタ15aに表示する。たとえば、条件B1を満たすために必要な操作を促すガイダンスとして「副変速レバーを『N』にしてください」との文言をモニタ15aに表示する。あるいは、条件B2を満たすために必要な操作を促すガイダンスとして「主変速レバーを吹鳴位置まで前進させてください」との文言をモニタ15aに表示する。またこのとき苗植付装置制御部31は、ガイダンスに従った操作が完了したことを表す作業者による入力を待つ旨をモニタ15aに表示し、当該入力がなされたときに条件B1、B2が達成されたものと判断する。
【0045】
苗植付装置制御部31は、以上のように動作することで、可知条件群A1〜A6および不可知条件群B1、B2が達成されているか否かを判断することができる。そして、これらの条件群が全て達成されているときは、「端寄せ開始しますか?『はい』を押すと爪が回ります」の文言とともに、「はい」または「いいえ」を選択可能なボタンがモニタ15aに表示される。このとき「はい」にカーソルを合わせて決定すると、植付クラッチ19bを接続状態にする旨の信号が発信され、苗載台22が駆動して端寄せ作業が開始される。
【0046】
さらに、苗植付装置制御部31は、端寄せ作業の実施中に、可知条件群A1〜A6および不可知条件群B1、B2のいずれかが達成されていない状態に転じたと判断した場合は、植付クラッチ19bを切断状態に遷移させるとともに、モニタ15aに端寄せ作業を停止した旨を表示する。
【0047】
また、作業者の人為操作により、端寄せ作業を停止することもできる。この場合、当該人為操作を受け付ける入力装置は前述の画面操作具に限られず、当該画面操作具とは独立した別個の装置であってもよい。かかる別個の装置としては、たとえば、走行機体1のハンドル部に設置されているレバー状操作具(不図示)が挙げられる。なお、端寄せ作業の実施中は、当該レバー状操作具の操作により端寄せ作業を中止できる旨が、モニタ15aに表示される。
【0048】
苗載台22がその往復横送り駆動範囲の左右いずれかの端に移動すると、苗植付装置制御部31は、苗載台位置センサ(不図示)によって苗載台22が端部に到達したことを検知する。そして、苗植付装置制御部31は、苗載台22が苗補給位置に到達した旨の通知、および、苗載台22にマット状苗を乗せる作業を行うべき旨のガイダンスを、モニタ15aに表示する。
【0049】
以上のように構成することで、端寄せ作業を実施できる状態にするために必要な操作を、作業者に対して適切に案内することができる。また、端寄せ作業を実施するための条件が達成されていないときは、端寄せ作業を開始しないか、一度開始した端寄せ作業を自動的に中止することができる。
【0050】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る田植機のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0051】
上記の実施形態では、苗植付装置2の他には圃場作業装置を備えない構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、施肥装置、把種装置、薬剤散布装置などの他の圃場作業装置を備えていてもよい。この場合、他の圃場作業装置を、1つだけ備えてもよく、2つ以上備えてもよい。
【0052】
上記の実施形態では、可知条件群A1〜A6および不可知条件群B1、B2を達成するために必要な操作を促すガイダンスをモニタ15aに表示する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、他のガイダンスを表示するように構成してもよい。たとえば、苗載台が駆動しているときに「副変速レバーを操作しないでください」と表示するなど、苗補給位置移動作業を行うために避けるべき行動を知らせるガイダンスを表示するように構成してもよい。
【0053】
本発明に係る圃場作業機が備える苗補給位置移動作業を支援するための機能は、上記の実施形態に備えられる機能に限定されない。たとえば、案内モードにおいて苗植付装置の各条クラッチを制御して、苗植付装置の上下動および苗載台の左右動の際に、苗植付部の爪状部材が回転しないように構成すると、装置の破損を防ぐ観点で好適である。
【0054】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、たとえば端寄せ作業を支援する機能を備えた田植機に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
100 :田植機
1 :走行機体
11 :エンジン
12 :車輪
12a :前輪
12b :後輪
13 :ブレーキ
14 :運転座席
15 :メータパネル
15a :モニタ
16 :操作部
16a :主変速レバー
16b :副変速レバー
17 :主変速装置
18 :副変速装置
19a :株間変速装置
19b :植付クラッチ
2 :苗植付装置
21 :苗植付部
21a :フロート
22 :苗載台
23 :昇降用油圧シリンダ
24 :リンク機構
3 :制御部
31 :苗植付装置制御部
32 :状態情報取得部
32a :エンジン状態情報取得部
32b :ブレーキ状態情報取得部
32c :苗植付装置状態情報取得部
32d :植付動力状態情報取得部
32e :速度情報取得部
図1
図2
図3