(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷媒が循環する冷媒循環路と、エンジンと、前記エンジンによって駆動され、前記冷媒循環路を流れる冷媒を圧縮する圧縮手段と、前記冷媒循環路を流れる冷媒と外気との間での熱交換を行わせることができる第1熱交換器と、前記冷媒循環路を流れる冷媒と熱交換対象流体との間での熱交換を行わせることができる第2熱交換器と、前記第2熱交換器に流入する冷媒を膨張させる第1膨張弁及び第2膨張弁と、前記第1膨張弁と前記第2膨張弁の間で冷媒を貯留するレシーバと、前記冷媒循環路を流れる冷媒と前記エンジンから放出される排熱との間での熱交換を行わせることができる第3熱交換器と、前記第3熱交換器に流入する冷媒を膨張させる第3膨張弁とを備え、
前記第3膨張弁及び前記第3熱交換器を経由して冷媒を循環させない状態で、前記圧縮手段から送出された冷媒が前記第1熱交換器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第2膨張弁と前記第2熱交換器とを順に通流した後で前記圧縮手段に帰還するように冷媒の循環状態を切り替えることで、蒸発器として作用する前記第2熱交換器において、前記冷媒循環路を流れる冷媒によって前記熱交換対象流体を冷却する冷房運転を行うことができるヒートポンプシステムの検査方法であって、
前記第2膨張弁及び前記第2熱交換器を経由して冷媒を循環させない遮断状態で、前記圧縮手段から送出された冷媒を前記第1熱交換器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第3膨張弁と前記第3熱交換器とを順に通流させた後で前記圧縮手段に帰還させるように冷媒の循環状態を切り替える検査運転を行いながら、前記レシーバへ貯留される冷媒量を満液化する満液化工程と、
前記検査運転を行いながら、前記満液化工程による前記レシーバの満液化状態を維持した状態で、循環中の冷媒の状態値を検出する状態値検出工程と、
前記状態値検出工程で検出した前記状態値に基づいて、前記冷媒循環路内に存在する冷媒充填量の適否を判定する冷媒充填量判定工程とを有するヒートポンプシステムの検査方法。
前記満液化工程は、前記第1膨張弁前後の圧力差を前記冷房運転の定格負荷時よりも低減する圧力差低減制御を含むものである請求項1又は2に記載のヒートポンプシステムの検査方法。
前記検査運転を行いながら、凝縮圧力を前記冷房運転の定格負荷時より上昇させる凝縮圧力上昇制御と、蒸発圧力を前記冷房運転の定格負荷時より低減させる蒸発圧力低減制御と、前記圧縮手段の回転数を前記冷房運転の定格負荷時より低減させる回転数低減制御との何れか一つ以上を実行する漏洩検知性能向上工程とを有し、
前記漏洩検知性能向上工程が実行されている状態で、前記状態値検出工程が実行される請求項1〜3の何れか一項に記載のヒートポンプシステムの検査方法。
上流端が前記レシーバと前記第2膨張弁との間の前記冷媒循環路に接続されると共に下流端が前記圧縮手段と前記第2熱交換器との間の前記冷媒循環路に接続される過冷却流路を備え、
当該過冷却流路を通過する冷媒を膨張させる過冷却膨張弁と、前記過冷却膨張弁にて膨張された冷媒と前記レシーバ内の冷媒とを熱交換する熱交換部とを備え、
前記検査運転を実行するときには、前記過冷却膨張弁を閉止して前記過冷却流路への冷媒の通流を禁止する請求項1〜4の何れか一項に記載のヒートポンプシステムの検査方法。
冷媒が循環する冷媒循環路と、エンジンと、前記エンジンによって駆動され、前記冷媒循環路を流れる冷媒を圧縮する圧縮手段と、前記冷媒循環路を流れる冷媒と外気との間での熱交換を行わせることができる第1熱交換器と、前記冷媒循環路を流れる冷媒と熱交換対象流体との間での熱交換を行わせることができる第2熱交換器と、前記第2熱交換器に流入する冷媒を膨張させる第1膨張弁及び第2膨張弁と、前記第1膨張弁と前記第2膨張弁の間で冷媒を貯留するレシーバと、前記冷媒循環路を流れる冷媒と前記エンジンから放出される排熱との間での熱交換を行わせることができる第3熱交換器と、前記第3熱交換器に流入する冷媒を膨張させる第3膨張弁と、制御装置とを備え、
前記制御装置が、前記第3膨張弁及び前記第3熱交換器を経由して冷媒を循環させない状態で、前記圧縮手段から送出された冷媒が前記第1熱交換器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第2膨張弁と前記第2熱交換器とを順に通流した後で前記圧縮手段に帰還するように冷媒の循環状態を切り替えることで、蒸発器として作用する前記第2熱交換器において、前記冷媒循環路を流れる冷媒によって前記熱交換対象流体を冷却する冷房運転を行うことができるヒートポンプシステムであって、
前記制御装置が、前記第2膨張弁及び前記第2熱交換器を経由して冷媒を循環させない遮断状態で、前記圧縮手段から送出された冷媒を前記第1熱交換器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第3膨張弁と前記第3熱交換器とを順に通流させた後で前記圧縮手段に帰還させるように冷媒の循環状態を切り替えて検査運転を行わせながら、前記レシーバへ貯留される冷媒量を満液化する満液化状態で、循環中の冷媒の状態値に基づいて、前記冷媒循環路内に存在する冷媒充填量の適否を判定するヒートポンプシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、冷媒循環路に冷媒を貯留するレシーバを備える構成を採用した場合、冷媒充填量の適否を適切に認識できない場合があり、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷媒を充填するレシーバを備える構成であっても、冷媒循環路における冷媒充填量の適否を正しく認識できるヒートポンプシステムの検査方法、及び、ヒートポンプシステムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためのヒートポンプシステムの検査方法は、
冷媒が循環する冷媒循環路と、エンジンと、前記エンジンによって駆動され、前記冷媒循環路を流れる冷媒を圧縮する圧縮手段と、前記冷媒循環路を流れる冷媒と外気との間での熱交換を行わせることができる第1熱交換器と、前記冷媒循環路を流れる冷媒と熱交換対象流体との間での熱交換を行わせることができる第2熱交換器と、前記第2熱交換器に流入する冷媒を膨張させる第1膨張弁及び第2膨張弁と、前記第1膨張弁と前記第2膨張弁の間で冷媒を貯留するレシーバと、前記冷媒循環路を流れる冷媒と前記エンジンから放出される排熱との間での熱交換を行わせることができる第3熱交換器と、前記第3熱交換器に流入する冷媒を膨張させる第3膨張弁とを備え、
前記第3膨張弁及び前記第3熱交換器を経由して冷媒を循環させない状態で、前記圧縮手段から送出された冷媒が前記第1熱交換器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第2膨張弁と前記第2熱交換器とを順に通流した後で前記圧縮手段に帰還するように冷媒の循環状態を切り替えることで、蒸発器として作用する前記第2熱交換器において、前記冷媒循環路を流れる冷媒によって前記熱交換対象流体を冷却する冷房運転を行うことができるヒートポンプシステムの検査方法であって、その特徴構成は、
前記第2膨張弁及び前記第2熱交換器を経由して冷媒を循環させない遮断状態で、前記圧縮手段から送出された冷媒を前記第1熱交換器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第3膨張弁と前記第3熱交換器とを順に通流させた後で前記圧縮手段に帰還させるように冷媒の循環状態を切り替える検査運転を行いながら、前記レシーバへ貯留される冷媒量を満液化する満液化工程と、
前記検査運転を行いながら、前記満液化工程による前記レシーバの満液化状態を維持した状態で、循環中の冷媒の状態値を検出する状態値検出工程と、
前記状態値検出工程で検出した前記状態値に基づいて、前記冷媒循環路内に存在する冷媒充填量の適否を判定する冷媒充填量判定工程とを有する点にある。
【0009】
上記目的を達成するためのヒートポンプシステムは、
冷媒が循環する冷媒循環路と、エンジンと、前記エンジンによって駆動され、前記冷媒循環路を流れる冷媒を圧縮する圧縮手段と、前記冷媒循環路を流れる冷媒と外気との間での熱交換を行わせることができる第1熱交換器と、前記冷媒循環路を流れる冷媒と熱交換対象流体との間での熱交換を行わせることができる第2熱交換器と、前記第2熱交換器に流入する冷媒を膨張させる第1膨張弁及び第2膨張弁と、前記第1膨張弁と前記第2膨張弁の間で冷媒を貯留するレシーバと、前記冷媒循環路を流れる冷媒と前記エンジンから放出される排熱との間での熱交換を行わせることができる第3熱交換器と、前記第3熱交換器に流入する冷媒を膨張させる第3膨張弁と、制御装置とを備え、
前記制御装置が、前記第3膨張弁及び前記第3熱交換器を経由して冷媒を循環させない状態で、前記圧縮手段から送出された冷媒が前記第1熱交換器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第2膨張弁と前記第2熱交換器とを順に通流した後で前記圧縮手段に帰還するように冷媒の循環状態を切り替えることで、蒸発器として作用する前記第2熱交換器において、前記冷媒循環路を流れる冷媒によって前記熱交換対象流体を冷却する冷房運転を行うことができるヒートポンプシステムであって、その特徴構成は、
前記制御装置が、前記第2膨張弁及び前記第2熱交換器を経由して冷媒を循環させない遮断状態で、前記圧縮手段から送出された冷媒を前記第1熱交換器と前記第1膨張弁と前記レシーバと前記第3膨張弁と前記第3熱交換器とを順に通流させた後で前記圧縮手段に帰還させるように冷媒の循環状態を切り替えて検査運転を行わせながら、前記レシーバへ貯留される冷媒量を満液化する満液化状態で、循環中の冷媒の状態値に基づいて、前記冷媒循環路内に存在する冷媒充填量の適否を判定する点にある。
【0010】
本願の発明者らは、検討の結果、
図3(a)に示すように、冷媒循環路に冷媒を貯留するレシーバを備える構成においては、レシーバに貯留される冷媒を満液状態にした場合に、状態値検出工程にて検出される冷媒の状態値が、冷媒充填量と相関を有するという新たな知見を得た。
上記特徴構成によれば、状態値検出工程は、満液化工程によりレシーバの満液化状態が維持されながら実行されるから、検出される状態値と冷媒充填量が適切な相関関係を維持される状態での冷媒の状態値が検出される。
【0011】
結果、冷媒充填量判定工程において、状態値検出工程で検出した正確な状態値と所定の基準値との比較結果に基づいて、冷媒循環路内に存在する冷媒充填量の適否を判定できる。従って、冷媒を充填するレシーバを備える構成であっても、冷媒循環路における冷媒充填量を正しく認識できるヒートポンプシステムの検査方法を提供できる。
【0012】
ヒートポンプシステムの検査方法の更なる特徴構成は、前記状態値は、前記凝縮器出口の冷媒の過冷却度である点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、ヒートポンプサイクルを運転するとき、凝縮圧力、蒸発圧力、過熱度は制御対象となる可能性が高いが、過冷却度は運転制御の結果として現れる項目であり、且つ冷媒充填量との相関が強い。そのため、冷媒の過冷却度に基づいて、冷媒充填量の適否の適切に判定できる。
【0014】
ヒートポンプシステムの検査方法の更なる特徴構成は、
前記満液化工程は、前記第1膨張弁前後の圧力差を前記冷房運転の定格負荷時よりも低減する圧力差低減制御を含むものである点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、満液化工程において、第1膨張弁前後の圧力差を低減することで、凝縮器としての第1熱交換器の冷媒保有量を低減することができ、その分の冷媒をレシーバへ充当して、レシーバの満液化に寄与することができる。
尚、第1膨張弁前後の圧力差を低減する圧力差低減制御としては、例えば、第1膨張弁の絞り径を拡大する制御を含むものとする。
【0016】
ヒートポンプシステムの検査方法の更なる特徴構成は、
前記検査運転を行いながら、凝縮圧力を前記冷房運転の定格負荷時より上昇させる凝縮圧力上昇制御と、蒸発圧力を前記冷房運転の定格負荷時より低減させる蒸発圧力低減制御と、前記圧縮手段の回転数を前記冷房運転の定格負荷時より低減させる回転数低減制御との何れか一つ以上を実行する漏洩検知性能向上工程とを有し、
前記漏洩検知性能向上工程が実行されている状態で、前記状態値検出工程が実行される点にある。
【0017】
本願に係る発明は、状態値の一例として過冷却度を用い、当該過冷却度と冷媒充填量との相関関係に基づいて、冷媒充填量の適否を判定するものである。
ここで、上記満液化工程を実行する場合、凝縮器としての第1熱交換器での冷媒の冷却量が低減し、過冷却度が低減する。過冷却度が低減すると、判定可能な冷媒充填量の範囲が小さくなり、漏洩検知性能の観点からは、好ましくない。
本願の発明者らは、凝縮圧力を上昇させる凝縮圧力上昇制御と、蒸発圧力を低減させる蒸発圧力低減制御と、圧縮機の回転数を低減する回転数低減制御との何れか一つ以上を実行する漏洩検知性能向上工程を実行することで、状態値としての過冷却度を高め、当該過冷却度と冷媒充填量との相関関係に基づいて冷媒充填量の適否を判定することで、漏洩検知性能をより高めて、冷媒充填量の適否を判定できる。
因みに、冷媒充填量を判定するための過冷却度と冷媒充填量との相関関係は、検査運転を実行するときで、満液化工程及び漏洩検知性能向上工程とを実行しているときに、予め、測定して記憶部に記憶される関係である。
【0018】
ヒートポンプシステムの検査方法の更なる特徴構成は、
上流端が前記レシーバと前記第2膨張弁との間の前記冷媒循環路に接続されると共に下流端が前記圧縮手段と前記第2熱交換器との間の前記冷媒循環路に接続される過冷却流路を備え、
当該過冷却流路を通過する冷媒を膨張させる過冷却膨張弁と、前記過冷却膨張弁にて膨張された冷媒と前記レシーバ内の冷媒とを熱交換する熱交換部とを備え、
前記検査運転を実行するときには、前記過冷却膨張弁を閉止して前記過冷却流路への冷媒の通流を禁止する点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、過冷却を停止することで、冷媒循環路(液管)を通流する冷媒の温度が高くなるため、冷媒密度は低下し、液管等の冷媒保有量が低下する。その分の冷媒が、レシーバに充当されるため、レシーバの満液化に寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の第1実施形態に係るヒートポンプシステムの検査方法、及び、その検査方法を実行可能に構成されたヒートポンプシステムについて説明する。
図1は、ヒートポンプシステムの構成を示す図である。また、
図1では、ヒートポンプシステムにおいて、空調対象空間の空気を冷却するための冷房運転を行っているときの冷媒及び冷却水の循環状態を示し、冷媒及び冷却水の流れる経路を太実線で描いている。つまり、空調対象空間の空気が熱交換対象流体となる。図示するように、ヒートポンプシステムは、冷媒が循環する冷媒循環路3と、エンジン4と、エンジン4によって駆動され、冷媒循環路3を流れる冷媒を圧縮する圧縮手段としての圧縮機5と、冷媒循環路3を流れる冷媒と外気との間での熱交換を行わせることができる第1熱交換器8と、冷媒循環路3を流れる冷媒と空調対象空間の空気(「熱交換対象流体」の一例)との間での熱交換を行わせることができる第2熱交換器14と、室内熱交換器14に流入する冷媒を膨張させる弁V1(第1膨張弁の一例))及び弁V2(第2膨張弁の一例)と、弁V1と弁V2との間で冷媒を貯留するレシーバ60と、冷媒循環路3を流れる冷媒とエンジン4から放出される排熱との間での熱交換を行わせることができる第3熱交換器10と、第3熱交換器10に流入する冷媒を膨張させる弁(第3膨張弁)V3とを備える。加えて、ヒートポンプシステムは、制御部21及び各種情報を記憶する記憶部22を有する制御装置20を備える。
尚、以下の説明では、第1熱交換器8のことを室外熱交換器と記載し、第2熱交換器14のことを室内熱交換器と記載し、第3熱交換器10のことを排熱回収用熱交換器と記載することもある。
【0022】
更に、
図1に示す例では、ヒートポンプシステムは、オイルセパレータ6、四方弁7、アキュムレータ11、過冷却流路61、弁V10(過冷却膨張弁の一例)などの機器も備えている。オイルセパレータ6は、冷媒中に含まれる油成分を分離して圧縮機5の吸入側に戻すために設けてある。オイルセパレータ6に接続されている副循環路3dが、冷媒から分離された油成分を圧縮機5に戻すために利用される。
過冷却流路61は、上流端がレシーバ60と弁V2との間の冷媒循環路3に接続されると共に、下流端が圧縮機5の入口(冷房運転時の入口)の冷媒循環路3に接続されており、当該過冷却流路61を通過する冷媒を膨張させる弁V10と、弁V10にて膨張された冷媒とレシーバ60内の冷媒とを熱交換する熱交換部(図示せず)とを備えている。制御装置20としての制御部21は、例えば、冷房運転時に、弁V10の絞り径を調整することで、当該過冷却流路61に通流する冷媒の流量等が調整され、レシーバ60出口での過冷却度を制御する。
本実施形態では、室内機12の筐体13内に室内熱交換器14及び弁V2が収容され、室外機1の筐体2にその他の機器が収容されている。
【0023】
エンジン4は、天然ガスなどの燃料を消費して運転される。そして、エンジン4の駆動力が圧縮機5に伝達される。
図1には示していないが、エンジン4から圧縮機5への駆動力の伝達を仲介するクラッチなどの動力伝達機構を設けてもよい。エンジン4の動作(例えば回転速度など)は、制御部21が制御する。
【0024】
圧縮機5から送出された冷媒は、冷媒循環路3を流れる。冷媒循環路3の途中には、後述するような各種の複数の弁が設けられており、それらの弁の開閉状態が切り替わることで、冷媒循環路3における冷媒の循環経路が切り替わる。この冷媒の循環経路の切り替え(即ち、各種の弁の開閉状態の切り替え)は、主に制御部21が遠隔操作により制御する。例えば、制御部21との間でインターネット等の通信回線を介して接続されたサーバ装置(図示せず)などから制御部21に対して指令を与え、制御部21がその指令を実行することで、上述したような冷媒の循環経路の切り替えが行われる。
【0025】
〔冷媒循環路3〕
冷媒循環路3は、圧縮機5から送出された冷媒が室外熱交換器8及び室内熱交換器14を経由して循環するときに流れる主循環路3aと、圧縮機5から送出された冷媒がその主循環路3aから分岐して循環するときに流れる副循環路3b、3c、3d、及び上述した過冷却流路61とで構成される。
【0026】
主循環路3a(3)は、冷媒が、圧縮機5とオイルセパレータ6と四方弁7と室外熱交換器8と弁V1とレシーバ60と弁V4と弁V2と室内熱交換器14と弁V5と四方弁7とアキュムレータ11とを順に流れる経路である。本実施形態では、弁V4及び弁V5は、室外機1の筐体2に収容されている。
副循環路3b(3)は、冷媒が、室外熱交換器8と弁V4との間の分岐部50で主循環路3aから分岐して、弁V3と排熱回収用熱交換器10とを順に流れた後、四方弁7とアキュムレータ11との間の合流部51で主循環路3aに合流するときに流れる経路である。
副循環路3c(3)は、冷媒が、室外熱交換器8と弁V4との間の分岐部50で主循環路3aから分岐して、弁V6を流れた後、排熱回収用熱交換器10とアキュムレータ11との間で副循環路3bに合流するときに流れる経路である。
副循環路3d(3)は、冷媒が、オイルセパレータ6で主循環路3aから分岐して、弁V7を流れた後、アキュムレータ11と圧縮機5との間で主循環路3aに合流するときに流れる経路である。
【0027】
〔冷却水循環路15〕
エンジン4を運転することで放出される熱は、冷却水循環路15を流れる冷却水によって回収される。冷却水循環路15の途中には、後述するような各種の複数の弁が設けられており、それらの弁の開閉状態が切り替わることで、冷却水循環路15における冷却水の循環経路が切り替わる。この冷却水の循環経路の切り替え(即ち、各種の弁の開閉状態の切り替え)は、三方弁等を用いて制御部21が遠隔操作により制御する。尚、三方弁等による制御部での制御ではなく、温度により自動的に開閉状態が調整されるワックス弁等を用いることもできる。
【0028】
冷却水循環路15は、エンジン4の排熱を回収した冷却水が排熱回収用熱交換器10を経由して循環するときに流れる第1流路部分15aと、エンジン4の排熱を回収した冷却水がその第1流路部分15aをバイパスして循環するときに流れる第2流路部分15bと、共通して流れる共通流路部分15cと、迂回路15dとで構成される。第1流路部分15aと第2流路部分15bとは、分岐部18で分岐し、合流部16で合流する。エンジン4の排熱を回収した後の冷却水が、第1流路部分15aと第2流路部分15bとに分岐する分岐部18には、冷却水分配器としての弁V8が設けられている。分岐部18と第4熱交換器9との間の第2流路部分15bの途中には弁V9が設けられている。尚、以下の説明では、第4熱交換器9のことを放熱用熱交換器と記載することもある。
【0029】
第1流路部分15aは、冷却水が、エンジン4と弁(冷却水分配器)V8と排熱回収用熱交換器10とを流れた後で合流部16に至り、共通流路部分15cを通ってエンジン4に戻るときに流れる流路である。
第2流路部分15bは、冷却水が、エンジン4と弁(冷却水分配器)V8と弁V9と放熱用熱交換器9とを流れた後で合流部16に至り、共通流路部分15cを通ってエンジン4に戻るときに流れる流路である。
共通流路部分15cには冷却水ポンプP1が設けられており、冷却水ポンプP1が動作することで冷却水循環路15に冷却水が流れる。
迂回路15dは、冷却水が、第2流路部分15bの途中で弁V9によって分流されることで、放熱用熱交換器9を迂回して循環するときに流れる流路である。迂回路15dを流れる冷媒は、共通流路部分15cの途中に合流される。
【0030】
放熱用熱交換器9は、第2流路部分15bを流れる冷却水から放熱させることができる装置である。放熱用熱交換器9には室外ファンFが併設されている。そして、室外ファンFが動作すると、室外機1の内部に取り込まれた外気が室外熱交換器8と放熱用熱交換器9とを順に流れ、その後、室外機1の外部に排出される。つまり、室外ファンFによって取り込まれた外気は、先ず室外熱交換器8において冷媒循環路3の主循環路3aを流れる冷媒と熱交換し、その後で放熱用熱交換器9において冷却水循環路15の第2流路部分15bを流れる冷却水と熱交換する。
【0031】
〔冷房運転〕
図1に示すように、制御部21は、冷媒の循環状態を切り替えながら室内熱交換器14を通流する冷媒によって空調対象空間の空気を冷却する冷房運転を行う。図中では、冷媒及び冷却水の流れる経路を太実線で描いている。この場合、室外熱交換器8は凝縮器として作用し、室内熱交換器14は蒸発器として作用する。
【0032】
具体的には、圧縮機5から送出された冷媒は、冷媒循環路3の主循環路3aを通ってオイルセパレータ6に流入し、その後、四方弁7に至る。四方弁7は、圧縮機5から送出された冷媒が先ず室外熱交換器8に流入するように切り替えられている。弁V1及び弁V4及び弁V2及び弁V5及び弁V10は開放される。尚、副循環路3bの途中にある弁V3が閉止されることで副循環路3bの排熱回収用熱交換器10には冷媒は流れず、及び、副循環路3cの途中にある弁V6が閉止されることで副循環路3cには冷媒は流れない。従って、圧縮機5から送出された冷媒は、室外熱交換器8と弁V1とレシーバ60と弁V4と弁V2と室内熱交換器14と弁V5と四方弁7とアキュムレータ11とを順に流れた後、圧縮機5に帰還する。このとき、弁V2は膨張弁として作用し、設定する開度に応じて冷媒の圧力が低下させられる。また、弁V7は、オイル戻しの必要に応じて、適切な開度で調整されている。更に、弁V10は膨張弁として作用し、設定する開度に応じ、過冷却流路61を通流する冷媒の温度が調整されレシーバ60に貯留される冷媒が冷却されることで、冷媒の過冷却度が調整される。
【0033】
このように、
図1に示す例では、弁V3(第3膨張弁の一例)及び排熱回収用熱交換器10(第3熱交換器の一例)を経由して冷媒を循環させない状態で、圧縮機5から送出された冷媒が室外熱交換器8(第1熱交換器の一例)と弁V1(第1膨張弁の一例)とレシーバ60と弁V2(第2膨張弁の一例)と室内熱交換器14(第2熱交換器の一例)とを順に通流した後で圧縮機5に帰還するように冷媒の循環状態を切り替えることで、蒸発器として作用する室内熱交換器(第2熱交換器)14において、冷媒循環路3を流れる冷媒によって空調対象空間の空気(熱交換対象流体)を冷却する冷房運転を行っている。尚、説明は省略するが、四方弁7やレシーバ60に出入りする配管(図示せず)を切り替えることで、冷媒の循環方向を変化させて、空調対象空間の空気を加熱する暖房運転を行うこともできる。
【0034】
この冷房運転が行われているとき、制御部21は、冷却水循環路15において、エンジン4から排熱を回収した冷却水を第2流路部分15bに流して、放熱用熱交換器9において冷却水からの放熱を行わせる。具体的には、制御部21は、冷却水ポンプP1を動作させることで共通流路部分15cに冷却水を流し、及び、エンジン4から排熱を回収した冷却水の全量が第2流路部分15bに流れるように弁V8を動作させ、及び、迂回路15dを冷却水が流れないように弁V9を動作させ、及び、放熱用熱交換器9に外気が導入されて、冷却水からの放熱が行われるように室外ファンFを動作させる。また、制御部21が室外ファンFを動作させると、室外熱交換器8にも外気が導入される。
また、エンジン4に戻ってくる冷却水の温度を所定の温度にする、或いはエンジン4から排出される冷却水の温度を所定の温度にするために、一部の冷却水を第1流路部分15aや迂回路15dに流す場合がある。
図1に示す例では、一部の冷却水を第1流路部分15aに流す状態を示している。
【0035】
〔検査運転〕
次に、ヒートポンプシステムの検査方法について説明する。この検査方法は、満液化工程と、漏洩検知性能向上工程と、状態値検出工程と、冷媒充填量判定工程とを有する。
【0036】
図2は、ヒートポンプシステムにおいて、状態値検出工程を実施するときの冷媒の循環状態を説明する図である。具体的には、
図2に示す例において、圧縮機5から送出された冷媒は、冷媒循環路3の主循環路3aを通ってオイルセパレータ6に流入し、その後、四方弁7に至る。四方弁7は、圧縮機5から送出された冷媒が先ず室外熱交換器8に流入するように切り替えられている。このとき、弁V2及び弁V6及び弁V10は閉止され、弁V1及び弁V3及び弁V4及び弁V5は開放されている。従って、圧縮機5から送出された冷媒は、室外熱交換器8と弁V1とレシーバ60と弁V3と排熱回収用熱交換器10とアキュムレータ11とを順に流れた後、圧縮機5に帰還する。このとき、弁V1及び弁V3は膨張弁として作用し、設定する開度に応じて冷媒の圧力が低下させられる。また、弁V7は、オイル戻しの必要に応じて、適切な開度で調整されている。このように、検査運転を実行するときには、制御部21は、弁V1(過冷却膨張弁の一例)を得閉止して過冷却流路への冷媒の通流を禁止している。
【0037】
この検査運転が行われているとき、制御部21は、冷却水循環路15において、エンジン4から排熱を回収した冷却水を第1流路部分15aに流して、排熱回収用熱交換器10において冷却水からの放熱を行わせ、その熱を冷媒循環路3を流れる冷媒に伝達する。つまり、排熱回収用熱交換器10において、冷却水循環路15の第1流路部分15aを流れる冷却水と、副循環路3bを流れる冷媒との間での熱交換が行われることで、エンジン4から回収した排熱が冷媒に伝達される。その結果、排熱回収用熱交換器10は、エンジン4から回収した排熱を副循環路3bに流れる冷媒に吸熱させる蒸発器として作用させることができる。具体的には、制御部21は、冷却水ポンプP1を動作させることで共通流路部分15cに冷却水を流し、及び、エンジン4から排熱を回収した冷却水が第1流路部分15aに流れるように弁V8を動作させる。尚、
図2に示す例では、冷却水の全量が第1流路部分15a及び共通流路部分15cに流れる場合を示しているが、エンジン4に戻ってくる冷却水の温度を所定の温度にする或いはエンジン4から排出される冷却水の温度を所定の温度にするために、一部の冷却水は第2流路部分15bや迂回路15dに流す場合がある。また、弁V6を開き、第3熱交換器10に流れる冷媒流量を調整する場合もある。また、制御部21は、室外熱交換器8に外気が導入されるように室外ファンFを動作させる。このように、検査運転では、上記冷房運転において蒸発器として作用する室内熱交換器14に代えて、排熱回収用熱交換器10が蒸発器として作用する。
【0038】
ヒートポンプシステムの検査方法において、満液化工程は、弁V2(第2膨張弁の一例)及び室内熱交換器14(第2熱交換器の一例)を経由して冷媒を循環させない遮断状態で、圧縮機5から送出された冷媒を室外熱交換器8と弁V1(第1膨張弁の一例)とレシーバ60と弁(第3膨張弁)V3と排熱回収用熱交換器10とを順に通流させた後で圧縮機5に帰還させるように冷媒の循環状態を切り替えて検査運転を行いながら、レシーバ60へ貯留される冷媒を満液化する工程である。
状態値検出工程は、検査運転を行いながら、満液化工程によるレシーバ60の満液化状態を維持した状態で、循環中の冷媒の状態値を検出する工程である。
冷媒充填量判定工程は、状態値検出工程で検出した状態値に基づいて、冷媒循環路3内に存在する冷媒充填量の適否を判定する工程である。
この検査方法は、冷媒循環路3内に冷媒を新たに充填するときにその冷媒充填量の適否を判定するため、或いは、冷媒循環路3への冷媒の充填を完了した後、冷媒循環路3内の冷媒充填量の適否(即ち、冷媒循環路3からの冷媒の漏れの有無)を判定するため等に利用できる。
【0039】
図1に示した冷房運転での冷媒の循環状態から
図2に示した検査運転での冷媒の循環状態(遮断状態)への移行は、以下のような各弁の操作により実施できる。
例えば、
図1に示した冷房運転を行っているとき、弁V1及び弁V2を所定の開度で開き、弁V3及び弁V6及び弁V10を閉止し、弁V4及び弁V5を開放した状態で冷媒を循環させている。そして、
図2に示した検査運転を行うとき、弁V2を閉止し、弁V1及び弁V3を所定の開度で開いて冷媒を循環させる。検査運転でも、弁V4及び弁V5は開放した状態のまま及び弁V6は閉止した状態のまま(ただし、場合によって弁V6は少し開放することもある)である。
【0040】
このように、状態値検出工程を実施するときの冷媒循環路3における冷媒の循環状態(
図2の循環状態)と、状態値検出工程を実施しないときの冷媒循環路3における冷媒の循環状態(
図1の循環状態)とは、制御部21による各弁の遠隔操作により切り替えることができる。また、
図1から
図2への冷却水の循環経路の切り替えも、制御部21による遠隔操作により行うことができる。冷却水の弁がワックス弁等の場合は、その開度は自動調整される。その結果、状態値検出工程を実施するときに、作業員が現場に出向くこと等は不要になる。
【0041】
以下、満液化工程、状態値検出工程、冷媒充填量判定工程について、具体的に説明する。
尚、状態値検出工程で検出する状態値は、例えば、冷媒の過冷却度であるので、以下、状態値が過冷却度である場合を主として説明する。尚、当該明細書において、状態値としての過冷却度は、室外熱交換器8の出口での圧力から算出できる凝縮温度から、その場所の冷媒温度を減算した値に相当する(ただし、当該明細書及び図面においては、正負を逆にして表示している)。例えば、
図1及び
図2の位置Xで、室外熱交換器8の出口での冷媒の圧力及び温度を測定して、測定された圧力から換算できる凝縮温度から、測定された冷媒温度を減算することで、冷媒の過冷却度を導出できる。
【0042】
通常、レシーバ60が設けられない冷媒循環路3を備えたヒートポンプシステムにあっては、状態値としての過冷却度と冷媒充填量との相関関係は、過冷却度が大きくなるほど(本願の図面においてはマイナス側へ値が変化するほど)、冷媒充填量が増加する関係を有する。
しかしながら、発明者らは、検討した結果、レシーバ60が満液未満の液位である場合、冷媒充填量が変動したとしても、過冷却度が変化しないことを見出した。
以下、
図3の計算結果に基づいて説明を追加する。尚、
図3の計算は、ヒートポンプシステムの各機器を、レシーバ60の容量:10L、アキュムレータ11の容量:8L、オイルセパレータ6の容量:4L、レシーバ60から室内熱交換器14までの冷媒循環路C(液管):長さが20mで直径が13.9mm、室内熱交換器14からアキュムレータ11までの冷媒循環路C(ガス管):長さが20mで直径が26.6mm、蒸発器を構成する冷媒配管:長さが2200mmで直径が4.6mm、段数18、列数3、個数4個、凝縮器を構成する冷媒配管:長さが1600mmで直径が6.8mm、段数54、列数3、個数2個、であるとして行った。
また、固定条件として、冷房能力:定格50kW(圧縮機回転数:1792rpm)、圧縮効率:80%、体積効率:90%、圧縮機5の入口でのSH:5K、外気温度:35℃、室外ファン空気流速:1.6m/s、室内温度:27℃(WB19℃)、室内ファン空気流速:0.8m/s、過冷却ラインへ分配した冷媒の熱交換後の過熱度:10K、冷媒:R410Aとした。
【0043】
図3の計算結果において、まず、弁V1(第1膨張弁の一例)前後の圧力差が高い場合(
図3で700kPa)を参酌すると、
図3(b)で、レシーバ60の液位が満液未満である場合(レシーバ液位が0%より大きく100%未満の場合)、
図3(a)において、冷媒充填量が変化しているにも関わらず、過冷却度が変化していないことがわかる。
一方、
図3(b)で、レシーバ60の液位が満液である場合(レシーバ液位が100%である場合)、
図3(a)において、冷媒充填量の増加に伴って、過冷却度が大きくなっている(
図3(a)において、マイナス側に変化している)ことが示されている。
これらの結果より、レシーバ60の液位を満液化することで、状態値検出工程を適切に実行できると言える。
上述の現象について
図4のP−h線図を用いて説明を加えると、レシーバ60が満液未満の液位である場合、
図4(a)に示すように、レシーバ60は、常に飽和液線上に位置するため、レシーバの液位が変動するのみで、過冷却度は変化しない。一方、レシーバ60が満液である場合、
図4(b)に示すように、レシーバ60が、圧縮液領域に位置することとなり、冷媒充填量の増減により、p−h線図上でレシーバ60の比エンタルピが変動する(水平方向に移動)し、過冷却度が変化するのである。
【0044】
前述したが、レシーバが設けられたヒートポンプ装置の冷房運転にあっては、第1膨張弁前後の圧力差を調整し、COPが極大値をとるように制御される。このような運転にあっては、第1膨張弁前後の圧力差が高く設定されることが多い。
ここで、
図3(a)を参酌すると、弁V1(第1膨張弁の一例)前後の圧力差が高い場合(
図3(a)で700kPaである場合)が、この通常の冷房運転に相当しており、レシーバで液位が存在するような冷媒量が充填される。
このような冷媒充填量で、弁V1前後の圧力差を低減すると(
図3(a)で100kPaである場合)、レシーバが満液、つまり冷媒充填量と過冷却度とが線形の相関関係を有するような状況が発生する(
図3(a)で冷媒充填量が概ね23kg以上)。
【0045】
ヒートポンプシステムの各機器の条件を上述したものと同一条件とし、固定条件を、圧縮機回転数:1250rpm、凝縮圧力:3.30MPaA、蒸発圧力:0.48MPaA、弁V1前後の圧力差:100kPa、圧縮効率:80%、体積効率:90%、圧縮機5の入口SH=5K、外気温度:25℃、冷媒:R410A、過冷却流路61への冷媒の通流:無の条件では、過冷却度と冷媒充填量との相関関係は、
図5に示す関係となる。
なお、本来の満液化工程は、第2熱交換器14には冷媒は流通させずに、第3熱交換器10を蒸発器として運転させるが、今回のすべての計算は第2熱交換器14で蒸発させる条件で行った。この場合、本来の第3熱交換器10で蒸発させる場合に比べて、蒸発器自体の体積が比較的大きい条件となり、蒸発器自体に保有される冷媒量が増加する方向となるため、満液化しにくい条件となる。そのため、この第2熱交換器14で蒸発させる条件で満液化できれば、実際の第3熱交換器10で蒸発させる場合も満液化がより実現しやすくなると考える。
ここでは、
図5を例にとって説明すると、−2Kを過冷却度の上限閾値とすると、冷媒充填量が23kgが充填量の適正状態であるとすると、過冷却度範囲は、充填量の適正状態である23kgに対応する−10Kから上限閾値の−2Kまでとなり、約2kgまでの冷媒漏洩を検知することができることになる。
【0046】
さて、上述した満液化工程によるレシーバ60を満液化する制御では、制御部21は、弁V1前後の圧力差を冷房運転の定格負荷時より低減させる圧力差低減制御、圧縮機5の回転数を冷房運転の定格負荷時より低減させる回転数低減制御、蒸発圧力低減制御(例えば、冷房定格運転時の0.9MPaA以上1.0MPaA以下程度の蒸発圧力から、0.4MPaA以上0.7MPaA以下程度の蒸発圧力へ低下)、室外ファンFの回転数制御による凝縮圧力上昇制御(例えば、冷房定格運転時の3.0MPaA程度の蒸発圧力から、3.1MPaA以上3.3MPaA以下程度の蒸発圧力へ上昇)の少なくとも何れか一つ以上が実行されることになる。
【0047】
満液化工程として、弁V10を閉止して過冷却流路61への冷媒の通流を禁止している状態で、上述した圧力差低減制御、圧縮機回転数低減制御、蒸発圧力低減制御、凝縮圧力上昇制御を実行した場合のp−h線図を
図6に示すと共に、その時の各種パラメータの計算値を〔表1〕に示す。
当該計算結果より、満液化処理の実行により、レシーバ60の液位が54%から100%へ変化する過程において、主に、凝縮器としての第1熱交換器8、レシーバ60から膨張弁V2までの間の冷媒配管(液管)、蒸発器としての第2熱交換器14、室内熱交換器14からアキュムレータ11までの間の冷媒配管(ガス管)の夫々に充填されていた冷媒が、レシーバ60に移動して、レシーバ60が満液化されていることがわかる。尚、通常運転時と満液化処理時の充填量に差異があるが、これは計算での収束で生じた差異であり、前述の冷媒充填の移動内容に関する傾向は概ね変わりはない。また、表1では、四捨五入による数値上のズレが生じている場合もある。
【0049】
検査運転を行いながら、上述の満液化工程によるレシーバ60の満液化状態を維持した状態で、状態値検出工程が実行される。
状態値検出工程は弁V2及び室内熱交換器14を経由して冷媒を循環させない遮断状態に維持されている間に、圧縮機5から送出された冷媒を室外熱交換器8と弁V1(第1膨張弁の一例)及びレシーバ60及び弁V3(第3膨張弁の一例)と排熱回収用熱交換器10(第3熱交換器)とを順に通流させた後で圧縮機5に帰還させるように冷媒の循環状態を切り替えて、循環中の冷媒の状態値を検出する工程である。
制御部21は、状態値検出工程において状態値を検出するとき、検査運転を行うことで循環中の冷媒の排熱回収用熱交換器10での蒸発圧力を、冷房運転を行うことで循環中の冷媒の室内熱交換器(第2熱交換器)14での蒸発圧力よりも低下させることが好ましい。そして、ヒートポンプサイクルにおいて蒸発圧力が低下するということは、冷媒を圧縮するための動力に対して冷媒を蒸発させるのに必要な熱量割合が小さくなることを意味するので、エンジン排熱割合が少ない場合でもヒートポンプサイクルの運転が可能になる。
【0050】
上述したように、検査運転を行いながら、上述の満液化工程によるレシーバ60の満液化状態を維持した状態では、
図5に示すように、過冷却度と冷媒充填量との相関関係が得られる。当該
図5に示されるように、過冷却度が増大するのに伴って(
図5では、マイナス側に大きくなるに伴って)、冷媒充填量が大きくなることがわかる。つまり、状態値としての過冷却度を指標として、冷媒充填量の多少を判断できることがわかる。
【0051】
具体的には、制御部21は、弁V2及び室内熱交換器14を経由して冷媒を循環させない遮断状態に維持されている間、p−h線図で所定の凝縮温度(例えば40℃など)及び所定の蒸発温度(例えば−10℃など)となるように上記検査運転を行って冷媒を循環させながら、満液化工程にてレシーバ60の満液化状態を維持しながら、その循環中の冷媒の過冷却度を検出する。そして、制御部21は、予め記憶部22に記憶させている、過冷却度と冷媒充填量との相関関係と、状態値検出工程で検出した過冷却度とに基づいて、冷媒充填量の多少及びその程度を判定できる
図5に示す相関関係例に基づくと、制御部21は、状態値検出工程で検出した過冷却度が10K(
図5では−10K)であれば、冷媒充填量は100%(基準量:適切状態)であると判定する。これに対して、制御部21は、状態値検出工程で検出した過冷却度が2K(
図5では−2K)であれば冷媒充填量が90%程度である(基準量より少ない)と判定し、過冷却度が14Kであれば冷媒充填量が104%である(基準量より多い)と判定する。更に、制御部21は、冷媒循環路3内に存在する冷媒充填量が上記基準量よりも少ないことを示している場合には、冷媒充填量が不足している、或いは、冷媒循環路3内から冷媒が漏れているというように、冷媒充填量が適当ではないとの判定結果を下すことができる。
このように、本実施形態では、制御部21が弁V2(第2膨張弁)及び室内熱交換器14を経由して冷媒を循環させない遮断状態で、圧縮機5から送出された冷媒を室外熱交換器8と弁V1(第1膨張弁)とレシーバ60と弁V3(第3膨張弁)と排熱回収用熱交換器10とを順に通流させた後で圧縮機5に帰還させるように冷媒の循環状態を切り替えて検査運転を行わせながら検出した、循環中の冷媒の状態値に基づいて、冷媒循環路3内に存在する冷媒充填量の適否を判定する。
【0052】
このように、
図2に示した検査運転では、空調対象空間の空気との熱交換が行われる室内熱交換器14を経由しない状態で冷媒が循環しているため、室内熱交換器14を通って冷媒を流すのに要する冷媒循環路3の長さ、空調対象空間の空気の温度及び量に応じて変化する室内熱交換器14での熱交換の状況、室内熱交換器14の設置個数等など、冷媒の状態値が変化し得る要因の多くを排除した状態で、循環中の冷媒の状態値を検出できる。
【0053】
次に、状態値検出工程において状態値を検出するときの検査運転の具体的な内容について説明する。
【0054】
〔検査運転において、排熱回収用熱交換器10に供給される冷却水の流量を調節する〕
上述したように、ヒートポンプシステムは、エンジン4から放出される排熱を回収する冷却水が循環する冷却水循環路15を備え、排熱回収用熱交換器10では、冷媒循環路3を流れる冷媒と冷却水循環路15を流れる冷却水との間での熱交換を行わせることができる。
そして、制御部21は、状態値検出工程において状態値を検出するとき、冷却水循環路15を通って排熱回収用熱交換器10に供給される冷却水の単位時間当たりの流量を設定冷却水量以下にする。つまり、排熱回収用熱交換器10に供給される冷却水の単位時間当たりの流量を設定冷却水量以下に低下させると、冷媒の蒸発器としての排熱回収用熱交換器10では、冷却水から冷媒に対する熱交換性能が低下する。そのため、凝縮圧力や圧縮機入口の冷媒の過熱度が同程度の場合は蒸発圧力が下がるようになり、エンジン排熱割合が少ない場合でも、ヒートポンプサイクルの運転が可能になる。
【0055】
具体的には、冷却水循環路15は、冷却水が排熱回収用熱交換器10をバイパスして循環できる第1バイパス路(第2流路部分15b、迂回路15d)と、その第1バイパス路(第2流路部分15b、迂回路15d)への冷却水の分配状態を調節可能な冷却水分配器としての弁V8及び弁V9とを有する。つまり、
図13に示すように、制御部21は、冷却水を第1流路部分15aと第2流路部分15bとに分配して流すことができる。或いは、図示は省略するが、迂回路15dに冷却水を分配して流すこともできる。
【0056】
そして、制御部21は、状態値検出工程において状態値を検出するとき、冷却水循環路15を通って排熱回収用熱交換器10に供給される冷却水の単位時間当たりの流量、即ち、冷却水循環路15の第1流路部分15aを通って排熱回収用熱交換器10に供給される冷却水の単位時間あたりの流量を冷却水分配器(弁V8、弁V9)を用いて設定冷却水量以下にすることができる。例えば、制御部21は、冷却水ポンプP1によって共通流路部分15cを流れる冷却水の単位時間あたりの流量を一定にしつつ、弁V8によって冷却水を第1流路部分15aと第2流路部分15bとに分配して流すことで、冷却水循環路15の第1流路部分15aを通って排熱回収用熱交換器10に供給される冷却水の単位時間あたりの流量を弁V8を用いて設定冷却水量以下にすることができる。
【0057】
或いは、冷却水循環路15には、冷却水の単位時間当たりの流量を調節可能な冷却水ポンプP1が設けられている。よって、制御部21は、弁V8によって冷却水を第1流路部分15aと第2流路部分15bとに分配して流さなくても、状態値検出工程において状態値を検出するとき、冷却水循環路15を通って排熱回収用熱交換器10に供給される冷却水の単位時間当たりの流量を冷却水ポンプP1を用いて設定冷却水量以下にすることができる。
【0058】
〔検査運転において、排熱回収用熱交換器10に供給される冷媒の流量を調節する〕
冷媒循環路3は、冷媒が排熱回収用熱交換器10及び室内熱交換器14をバイパスして循環できる第2バイパス路(副循環路3c)と、当該第2バイパス路(副循環路3c)への冷媒の分配状態を調節可能な冷媒分配器としての弁V6とを有する。本実施形態では、この冷媒分配器としての弁V6は、副循環路3cの途中に設けられた開閉弁又は開閉量を調節可能な弁である。よって、弁V6が閉止されていれば副循環路3cには冷媒は分配されず(流れず)、弁V6が開放されていれば副循環路3cには冷媒は分配される(流れる)。また、弁V6の開閉量を調節すれば、副循環路3cに流れる冷媒の流量を調節できる。このようにして、
図14に示すように、制御部21は、冷媒を冷媒循環路3のうちの副循環路3bと副循環路3cとに分配して流すことができる。そして、副循環路3cを流れる冷媒の流量が増加すれば、冷媒循環路3のうちの副循環路3bを流れる冷媒の流量は減少し、副循環路3cを流れる冷媒の流量が減少すれば、冷媒循環路3のうちの副循環路3bを流れる冷媒の流量は増加する。そして、制御部21は、状態値検出工程において状態値を検出するとき、冷媒循環路3を通って排熱回収用熱交換器10に供給される冷媒の単位時間当たりの流量を冷媒分配器としての弁V6を用いて設定冷媒流量以下にすることができる。つまり、排熱回収用熱交換器10に供給される冷媒の単位時間当たりの流量を設定冷媒流量以下に低下させると、冷媒の蒸発器としての排熱回収用熱交換器10では、冷却水から冷媒に対する熱交換性能が低下する。そのため、凝縮圧力や圧縮機5の入口の冷媒の過熱度が同程度の場合は蒸発圧力が下がるようになり、エンジン排熱量が少ない場合でも、ヒートポンプサイクルの運転が可能になる。
【0059】
<第2実施形態>
上記状態値検出工程において状態値を検出するときの検査運転の具体的な内容については適宜変更可能である。例えば、以下に記載するような室外ファンFの動作制御を行ってもよい。
【0060】
上述したように、ヒートポンプシステムは、エンジン4から放出される排熱を回収する冷却水が循環する冷却水循環路15と、外気を流動させる室外ファンFとを備える。
図13に示した場合では、冷却水循環路15では、エンジン4から放出される排熱を回収した後の冷却水が分岐部18で第1流路部分15aと第2流路部分15bとに分岐して流れ、第1流路部分15aと第2流路部分15bとを流れた冷却水が合流部16で合流した後で再びエンジン4から放出される排熱の回収を行うように冷却水が循環可能である。冷却水循環路15の第2流路部分15bの途中には、当該第2流路部分15bを流れる冷却水と外気との間での熱交換を行わせることができる放熱用熱交換器9が設けられる。室外ファンFが動作することで、室外熱交換器8で冷媒循環路3を流れる冷媒と熱交換した後の外気が、放熱用熱交換器9で第2流路部分15bを流れる冷却水と熱交換するように流動する。
そして、制御部21は、状態値検出工程において状態値を検出するとき、放熱用熱交換器9で外気と熱交換する前後での冷却水の温度差が設定温度差以内になるように室外ファンFの回転速度を調節する。本実施形態では、制御部21は、温度センサT1で測定される放熱用熱交換器9の上流側での冷却水温度と、温度センサT2で測定される放熱用熱交換器9の下流側での冷却水温度とに基づいて、放熱用熱交換器9で外気と熱交換する前後での冷却水の温度差を導出できる。
【0061】
このような運転が行われることで、状態値検出工程において状態値を検出するとき、室外ファンFの回転速度が調節されて、冷却水は放熱用熱交換器9において設定温度差以内の温度変化を受けただけでエンジン4に帰還する。つまり、冷却水が回収したエンジン4の排熱は、放熱用熱交換器9で殆ど失われることがない。そのため、排熱回収用熱交換器10での熱交換性能を低下させるために、冷却水の一部を放熱用熱交換器9に流す必要がある場合でも、エンジン排熱が不足しないようにできる。
【0062】
<第3実施形態>
室外熱交換器8において所定の冷媒の凝縮性能を発揮させるために室外ファンFに対して動作指令を与えても、経時変化により室外ファンFや室外熱交換器8の性能が変化した場合には、室外熱交換器8での冷媒の凝縮性能が変化する可能性がある。その場合、室外熱交換器8での冷媒の凝縮圧力が目標値から逸脱することになる。
そこで、制御部21は、状態値検出工程において状態値を検出するとき、例えば
図1及び
図2に示した位置Xに設けられるセンサ(図示せず)で測定される、室外熱交換器8での冷媒の凝縮圧力が目標値になるように室外ファンFの回転速度を調節する。これにより、状態値検出工程において状態値を検出するとき、室外熱交換器8での冷媒の凝縮圧力が目標値になるように室外ファンFの回転速度を調節するので、室外熱交換器8での冷媒の凝縮圧力が目標値になることが確保される。このとき、凝縮圧力の目標値を固定にしてもいいし、外気温度に応じて変化させてもよい。
【0063】
<第4実施形態>
上記実施形態では、圧縮機5が1台の圧縮機で構成される例を説明したが、圧縮機5が複数台の圧縮機で構成されてもよい。
制御部21が、クラッチ45とクラッチ46との動作状態を切り替えて圧縮機の運転台数を変更することで、冷媒循環路3での冷媒の循環量を調節することができる。
【0064】
同じ冷媒流量を流す場合なら、動作する圧縮機の数が多く、圧縮機5の排除容積の合計が大きいほど、エンジン4の回転速度は低く(即ち、トルクは大きく)なり、動作する圧縮機の数が少なく、圧縮機5の排除容積の合計が小さいほど、エンジン4の回転速度は高く(即ち、トルクは小さく)なる。各圧縮機の効率が同じ場合は、この時に必要な動力は両者同じである。また、エンジン4の特性として、トルクが大きいほど熱効率は高くなり、トルクが小さいほど熱効率は低くなる傾向がある。そのため、動作する圧縮機の数が少なくなれば、回転速度が高く(トルクが小さく)なるのに伴ってエンジンの熱効率が低く(エンジン排熱効率が高く)なり、エンジン4の排熱割合が高まる。
そこで、制御部21は、状態値検出工程において状態値を検出するとき、駆動力伝達機構40によって、複数台の圧縮機のうちの一部の圧縮機のみにエンジン4の駆動力を伝達させる。
【0065】
<第5実施形態>
上記冷房運転を行うときのエンジン4の動作と、上記検査運転を行うときのエンジン4の動作とを異ならせてもよい。
具体的には、制御部21は、状態値検出工程において状態値を検出するとき、検査運転時のエンジン4の回転速度及びトルクに対して同じ回転速度及びトルクで冷房運転をするとした場合に比べてエンジン4の排熱割合を大きくすることができるエンジン運転設定でエンジン4を運転してもよい。
【0066】
例えば、制御部21は、エンジン4の点火時期のリタードや空気比調整(リーン度低減)等で、排ガス特性や燃焼安定性をあまり悪化させない範囲で意図的に熱効率を低下させ、エンジン4の排熱割合を増加させることで、蒸発圧力の低下度合いを抑制できる。つまり、通常の冷房運転では、排ガスを考慮しながらできる限りエンジン4の熱効率が高くなるようなエンジン4の設定(点火時期とか空気比等)をして運転させ、検査運転では意図的にエンジン4の熱効率が低くなる(排熱割合が多くなる)ような設定(点火時期を遅らせたり、空気比のリーン度合いを低減)をして運転させることができる。
【0067】
<第6実施形態>
検査運転時に冷媒が循環していない(冷媒が滞留している)箇所の冷媒循環路3に存在している滞留冷媒量を考慮して、冷媒循環路3内に存在する冷媒充填量の適否を判定してもよい。
【0068】
具体的には、制御部21は、遮断状態において冷媒が滞留している区間の体積と、当該区間に滞留している冷媒の密度とに基づいて滞留冷媒量を導出する滞留冷媒量導出工程を実行し、冷媒充填量判定工程において、状態値検出工程で検出した状態値と所定の基準値との比較結果と、滞留冷媒量とに基づいて、冷媒循環路3内に存在する冷媒充填量の適否を判定する。
【0069】
具体的に説明すると、
図1に示す冷房運転から
図2に示す検査運転に切り替えるために弁V2が閉止されたとき、冷媒循環路3の主循環路3aの分岐部50と合流部51との間(以下、「滞留部」と記載することもある)では冷媒が滞留する。このとき、分岐部50と弁V2との間の主循環路3aには密度の大きい液相の冷媒が滞留し、室内熱交換器14と合流部との間の主循環路3aには密度の小さい気相の冷媒が滞留する。本実施形態の滞留冷媒量導出工程では、分岐部50と弁V2との間の主循環路3aに滞留している密度の大きい液相の冷媒の量を導出する。例えば、分岐部50と弁V2との間の区間の主循環路3aの容積が既知であれば、そこでの冷媒の温度及び圧力を測定することでこの区間に滞留している冷媒の密度が算出でき、分岐部50と弁V2との間の区間に残されている滞留冷媒量を導出できる。そして、制御部21は、導出した滞留冷媒量に基づいて、冷媒循環路3全体の冷媒充填量を導出するという補正を行うことができる。
【0070】
具体的には、冷媒充填量判定工程において制御部21は、状態値検出工程で検出した状態値と所定の基準値との比較結果から、冷媒循環路3の冷媒充填量を算出した後、滞留冷媒量導出工程で導出した滞留冷媒量を用いて、滞留部も含めた冷媒循環路3全体の冷媒充填量を算出し、冷媒漏洩を判定する。例えば、上述のように滞留している冷媒の温度が基準値よりも低い場合、冷媒の密度は増加するため、滞留部には基準よりも多くの質量の冷媒が存在することになり、冷媒漏洩が無い場合でも冷媒充填量判定工程では基準値未満の冷媒充填量と判定される。逆に、滞留している冷媒の密度が低い場合は、滞留部には基準よりも少ない質量の冷媒が存在することになり、冷媒漏洩があった場合でも冷媒充填量判定工程では基準値相当の冷媒充填量と判定される可能性がある。しかし、上述のような滞留冷媒量の導出を行って、滞留部も含めた冷媒循環路3全体の冷媒充填量を算出するという補正を行うことで、そのような影響を抑制できる。特に、室外機1と室内機12との距離が長く、滞留部となる配管の体積が大きくなる場合に、有効である。このように、冷媒循環路3内には存在するが、検査運転時に冷媒循環路3を循環していない滞留冷媒量の存在を考慮して、冷媒循環路3内に存在する冷媒充填量の適否を正確に判定できる。
【0071】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、ヒートポンプシステムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成については適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、冷却水循環路15が第1流路部分15a及び第2流路部分15b及び共通流路部分15c及び迂回路15dとで構成され、各所に弁が設けられる例を説明したが、それらの構成は適宜変更可能である。迂回路15dがない状態でも構わない。
他にも、冷媒循環路3の途中に熱交換器を追加で設けてもよい。
【0072】
<2>
上記第4実施形態では、複数台の圧縮機5がエンジン4によって駆動されるヒートポンプシステムを説明したが、例えば複数台の圧縮機5の一部が電動モータによって駆動されるヒートポンプシステムに変更してもよい。
【0073】
<3>
上記実施形態では、ヒートポンプシステムがエンジン4を備えることで、エンジン4の駆動力が圧縮機5に伝達され及びエンジン4の排熱が排熱回収用熱交換器10(第3熱交換器の一例)に与えられる例を説明したが、ヒートポンプシステムが燃料電池及び電動モータを備えた構成を採用してもよい。この場合、燃料電池の発電電力によって動作する電動モータが圧縮機5を駆動し、燃料電池の排熱が排熱回収用熱交換器10に与えられるような構成となる。
【0074】
<4>
上記実施形態では、状態値検出工程で検出する状態値が冷媒の過冷却度である場合を例示したが、冷媒充填量の変化に応じた過冷却度の変化は、冷媒充填量に応じたp−h線図の変化の一例に過ぎず、状態値として過冷却度とは別の値、即ち、過冷却度とは別のp−h線図に現れる値を状態値として用いてもよい。
【0075】
<5>
本願に係るヒートポンプシステムの検査方法においては、検査運転を行いながら、凝縮圧力を上昇させる凝縮圧力上昇制御と、蒸発圧力を低下させる蒸発圧力低下制御と、圧縮機の回転数を低下する回転数低下制御との何れか一つ以上を実行する漏洩検知性能向上工程と有し、漏洩検知性能向上工程が実行されている状態で、状態値検出工程が実行されることが好ましい。
図7は、(i)〜(Xii)で経時的に各種制御を実行したときのレシーバ液位と、過冷却度の変化を示すグラフ図である。
(ii)〜(iv)において弁V1前後の圧力差を、700kPaから100kPaへ低減すると、レシーバ60の液位が満液となるが、一方で、過冷却度が低下(
図7(b)では値が増加)することが見て取れる。このように、過冷却度が低下することは、例えば、
図5に示すような過冷却度と冷媒充填量との相関関係において、検知できる漏洩量の減少を意味する。
そこで、当該別実施形態に係る検査方法にあっては、漏洩検知性能向上工程として、凝縮圧力を上昇させる凝縮圧力上昇制御(
図7(b)で(vi)〜(viii))と、蒸発圧力を低下させる蒸発圧力低下制御(
図7(b)で(viii)〜(x))と、圧縮機の回転数を低下する回転数低下制御(
図7(b)で(x)〜(xii))との少なくとも何れか一つを実行する。これらの制御を実行することにより、過冷却度を増加(
図7(b)では値が減少)させることができ、漏洩検知性能の向上を図ることができる。
尚、
図7(b)の(iv)〜(vi)に示すように、外気温度が低い場合の方が過冷却度が向上することが判明しているので、制御部21は、一連の検査方法を実行するタイミングを、外気温度が低い時間帯(例えば、深夜等)に実行することが好ましい。
【0076】
<6>
各種制御指標の変化が、「過冷却度と冷媒充填量との相関関係」に与える影響について説明する。
〔弁V1(第1膨張弁)前後の圧力差の影響〕
図8は、過冷却度と冷媒充填量との相関関係を示している。
図8から、弁V1(第1膨張弁)前後の圧力差は、比較的小さい圧力差になっている範囲(100kPa)では、過冷却度と冷媒充填量との相関関係にほとんど影響がないことがわかる。
尚、
図8のグラフ図を導出する固定条件は、圧縮機5の回転数:1250rpm、凝縮圧力:3.30MPaA、蒸発圧力:0.48MPaA、圧縮効率:80%、体積効率90%、圧縮機5の入口でのSH:5K、外気温度:25℃、冷媒:R410A、過冷却流路61への冷媒の通流はないものとした。
【0077】
〔外気温度の影響〕
図9から判明するように、外気温度の変化は、冷媒充填量が多い場合ほど、過冷却度と冷媒充填量との相関関係に影響を与えることがわかる。
尚、
図9のグラフ図を導出する固定条件は、圧縮機5の回転数:1250rpm、凝縮圧力:3.30MPaA、蒸発圧力:0.48MPaA、V1前後の圧力差:100kPa、圧縮効率:80%、体積効率90%、圧縮機5の入口でのSH:5K、冷媒:R410A、過冷却流路61への冷媒の通流はないものとした。
【0078】
〔凝縮圧力の影響〕
図10から判明するように、凝縮圧力の変化は、過冷却度と冷媒充填量との相関関係に対して、比較的大きい影響を与えていることがわかる。
図10から判明するように、凝縮圧力が高いほど、過冷却度の検知下限における冷媒充填量を減少でき、冷媒充填量の検知範囲を拡大できることがわかる。このことから、制御部21は、漏洩検知性能を向上する観点から、運転に問題ない範囲で、凝縮圧力を上昇させる凝縮圧力上昇処理を実行することが好ましいと言える。 尚、
図10のグラフ図を導出する固定条件は、圧縮機5の回転数:1250rpm、蒸発圧力:0.48MPaA、V1前後の圧力差:100kPa、圧縮効率:80%、体積効率90%、圧縮機5の入口でのSH:5K、外気温度:25℃、冷媒:R410A、過冷却流路61への冷媒の通流はないものとした。
【0079】
〔蒸発圧力の影響〕
図11から判明するように、蒸発圧力の変化は、過冷却度と冷媒充填量との相関関係に対して、比較的大きい影響を与えていることがわかる。
図11から判明するように、蒸発圧力が低いほど、過冷却度の検知下限における冷媒充填量を減少でき、冷媒充填量の検知範囲を拡大できることがわかる。
このことから、制御部21は、漏洩検知性能を向上する観点から、運転に問題ない範囲で、蒸発圧力を低減する蒸発圧力低減処理を実行することが好ましいと言える。
尚、
図11のグラフ図を導出する固定条件は、圧縮機5の回転数:1250rpm、凝縮圧力:3.30MPaA、V1前後の圧力差:100kPa、圧縮効率:80%、体積効率90%、圧縮機5の入口でのSH:5K、外気温度:25℃、冷媒:R410A、過冷却流路61への冷媒の通流はないものとした。
【0080】
〔圧縮機の回転数の影響〕
図12から判明するように、圧縮機の回転数の変化は、過冷却度と冷媒充填量との相関関係に対して、比較的大きい影響を与えていることがわかる。
図12から判明するように、圧縮機の回転数が低いほど、過冷却度の検知下限における冷媒充填量を減少でき、冷媒充填量の検知範囲を拡大できることがわかる。
このことから、制御部21は、漏洩検知性能を向上する観点から、運転に問題ない範囲で、圧縮機の回転数を低減する圧縮機回転数低減処理を実行することが好ましいと言える。
尚、
図12のグラフ図を導出する固定条件は、凝縮圧力:3.30MPaA、蒸発圧力:0.48MPaA、V1前後の圧力差:100kPa、圧縮効率:80%、体積効率90%、圧縮機5の入口でのSH:5K、外気温度:25℃、冷媒:R410A、過冷却流路61への冷媒の通流はないものとした。
【0081】
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。