特許第6979928号(P6979928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979928乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法、及び乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979928
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法、及び乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/22 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   B66B23/22 F
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-117826(P2018-117826)
(22)【出願日】2018年6月21日
(65)【公開番号】特開2019-218191(P2019-218191A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2021年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 知至
(72)【発明者】
【氏名】島崎 信吾
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−347650(JP,A)
【文献】 特開2007−084221(JP,A)
【文献】 特開2005−247573(JP,A)
【文献】 特開2005−213038(JP,A)
【文献】 特開2017−222469(JP,A)
【文献】 特開2001−019341(JP,A)
【文献】 米国特許第4646907(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客運搬装置の欄干部の下方側に設けられるインナーデッキ取付部に長尺のインナーデッキを取り付ける方法であって、
前記欄干部に固定治具を取り付ける工程と、
一方端に挟み部を有し、他方側に挟み操作部を有する挟み治具を用い、前記インナーデッキ取付部の取付ボルトを覆っているインナーパッキングである長尺の保護カバーの端部を挟み部で挟む工程と、
前記固定治具と前記挟み治具の前記挟み操作部との間に接続紐を接続し、前記挟み治具を上方側に引き上げることで前記保護カバーの前記端部を持ち上げて前記取付ボルトを露出させる工程と、
前記取付ボルトに、前記インナーデッキのボルト嵌込溝を嵌め込む工程と、
前記取付ボルトを締め付けて前記インナーデッキを前記インナーデッキ取付部に固定する工程と、
を含む、乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法。
【請求項2】
乗客運搬装置の欄干部の下方側に設けられるインナーデッキ取付部に長尺のインナーデッキを取り付ける方法であって、
前記欄干部の上方側に設けられる手摺の外形形状に対応する内面形状を有する手摺側固定部を前記手摺の外形形状に係合させて配置する工程と、
一方端に挟み部を有し、他方側に挟み操作部を有する挟み治具を用い、前記インナーデッキ取付部の取付ボルトを覆っているインナーパッキングである長尺の保護カバーの端部を挟み部で挟む工程と、
前記手摺側固定部と前記挟み治具の前記挟み操作部との間に、紐長さ調整部付きの接続紐を接続する工程と、
前記接続紐の前記紐長さ調整部を操作して前記挟み治具を上方側に引き上げることで前記保護カバーの前記端部を持ち上げて前記取付ボルトを露出させる工程と、
前記取付ボルトに、前記インナーデッキのボルト嵌込溝を嵌め込む工程と、
前記取付ボルトを締め付けて前記インナーデッキを前記インナーデッキ取付部に固定する工程と、
を含む、乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法。
【請求項3】
前記インナーデッキは、少なくとも1つの長尺部材で構成され、1つの前記長尺部材は長手方向に沿った複数の溝配置箇所に前記ボルト嵌込溝がそれぞれ配置され、前記欄干部の下方側には、複数の前記溝配置箇所に対応する複数のボルト配置箇所に前記取付ボルトがそれぞれ設けられ、
前記手摺側固定部を配置する工程は、複数の前記ボルト配置箇所に対応して、前記手摺の長手方向に沿って複数の前記手摺側固定部を配置し、
前記挟み部でつかむ工程は、複数の前記ボルト配置箇所のそれぞれにおいて、複数の前記挟み治具を用いて長尺の前記保護カバーについて複数個所を挟み、
前記接続紐を接続する工程は、複数の前記ボルト配置箇所のそれぞれに対応する前記挟み治具の前記挟み操作部と前記手摺側固定部とをそれぞれ前記接続紐で接続し、
前記取付ボルトを露出させる工程は、複数の前記ボルト配置箇所のそれぞれに対応する前記接続紐の前記紐長さ調整部を調整して、複数の前記ボルト取付箇所における前記取付ボルトを露出させ、
前記ボルト嵌込溝を嵌め込む工程は、一人の作業員が1つの前記長尺部材を両手で持って、複数の前記ボルト配置箇所の全部について、前記取付ボルトにそれぞれ前記ボルト嵌込溝を一度に嵌め込む工程である、請求項2に記載の乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法。
【請求項4】
乗客運搬装置の欄干部の下方側に設けられるインナーデッキ取付部に、取付ボルトを用いて取り付けられるインナーデッキの取付作業において、前記インナーデッキ取付部の前記取付ボルトを覆っているインナーパッキングである長尺の保護カバーの端部を持ち上げて前記取付ボルトを露出させるための支援治具であって、
前記保護カバーの前記端部を挟むための挟み部を一方端に有し、他方側に挟み操作部を有する挟み治具と、
前記欄干部に取り付けられた固定治具と、
前記固定治具と前記挟み治具の前記挟み操作部との間に設けられた接続紐と、
前記接続紐の紐長さ調整部であって、前記挟み治具を前記欄干部の上方側に引き上げて前記保護カバーの前記端部を持ち上げ前記取付ボルトを露出させる状態の紐長さとする調整機構を有する前記紐長さ調整部と、
を含む、乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具。
【請求項5】
前記固定治具は、
前記欄干部の上方側の手摺の外形形状に対応する内面形状を有する手摺側固定部である、請求項4に記載の乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具。
【請求項6】
前記手摺側固定部の前記内面形状は、
前記手摺におけるインナーデッキ側の側面の外形形状との係合代は、前記インナーデッキ側と反対側の側面の外形形状の係合代よりも小さく設定されている、請求項5に記載の乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具。
【請求項7】
乗客運搬装置の欄干部の下方側に設けられるインナーデッキ取付部に、取付ボルトを用いて取り付けられるインナーデッキの取付作業において、前記インナーデッキ取付部の前記取付ボルトを覆っているインナーパッキングである長尺の保護カバーの端部を持ち上げて前記取付ボルトを露出させるための支援治具であって、
前記保護カバーの前記端部を挟むための挟み部を一方端に有し、他方側に挟み操作部を有する挟み治具と、
前記欄干部に対し吸着及び脱着が自在な吸盤である固定治具と、
前記固定治具と前記挟み治具の前記挟み操作部との間に設けられた接続紐と、
を含む、乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具。
【請求項8】
前記挟み治具は、挟み状態を維持できる挟みロック機構付きのロッキングプライヤである、請求項4または請求項7に記載の乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法、及び乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターは、建物の上方階の乗降口と建物の下方階の乗降口との間に、複数のステップが無端状に接続された移動通路を設け、移動通路を駆動して乗客を運搬する乗客運搬装置である。エスカレーターは、移動通路の両側に欄干部が設けられ、欄干部の上部には移動通路と共に移動する無端状の手摺が設けられ、欄干部の下部には無端状の手摺が戻る空間を覆う金属製の板部材であるインナーデッキが設けられる。
【0003】
本発明の関連技術として、特許文献1には、エスカレーターの手摺に関する保守作業において、手摺を支持する欄干部のガラスパネルを一時的に外して保持するために、手摺に固定される手摺側固定部と、手摺側固定部に支持されるパネル受部とを有するパネル保持具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−165185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インナーデッキは、欄干部の下部のインナーデッキ取付部に取付ボルトで締結されるが、締結箇所を覆うために欄干部の下部に沿って長尺の保護カバーが設けられている。保護カバーは、欄干部の下部とインナーデッキとの隙間を埋めるために柔軟で弾性を有する剛性ゴム等の材質で構成される。インナーデッキの取付は、保護カバーを持ち上げてインナーデッキ取付部にインナーデッキを配置し、取付ボルトで固定する作業となるが、保護カバーは弾性を有する長尺体であるので、取付作業において保護カバーが倒れ込み、作業がやりにくい。そこで、保護カバーの倒れ込みを抑制して取付作業性を向上できるインナーデッキの取付方法及びそれに適した支援治具が要望される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法は、乗客運搬装置の欄干部の下方側に設けられるインナーデッキ取付部に長尺のインナーデッキを取り付ける方法であって、欄干部に固定治具を取り付ける工程と、一方端に挟み部を有し、他方側に挟み操作部を有する挟み治具を用い、インナーデッキ取付部の取付ボルトを覆っているインナーパッキングである長尺の保護カバーの端部を挟み部で挟む工程と、固定治具と挟み治具の挟み操作部との間に接続紐を接続し、挟み治具を上方側に引き上げることで保護カバーの端部を持ち上げて取付ボルトを露出させる工程と、取付ボルトに、インナーデッキのボルト嵌込溝を嵌め込む工程と、取付ボルトを締め付けてインナーデッキをインナーデッキ取付部に固定する工程と、を含む。
【0007】
上記構成によれば、欄干部に取り付けられた固定治具と、保護カバーの端部を挟む挟み治具との間が接続紐で接続され、挟み治具が上方側に引き上げられる。これによって、保護カバーが安定して上方側に引き上げられるので、インナーデッキの取付作業における保護カバーの倒れ込みが抑制され、取付作業性が向上する。
本開示に係る乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法は、乗客運搬装置の欄干部の下方側に設けられるインナーデッキ取付部に長尺のインナーデッキを取り付ける方法であって、欄干部の上方側に設けられる手摺の外形形状に対応する内面形状を有する手摺側固定部を手摺の外形形状に係合させて配置する工程と、一方端に挟み部を有し、他方側に挟み操作部を有する挟み治具を用い、インナーデッキ取付部の取付ボルトを覆っているインナーパッキングである長尺の保護カバーの端部を挟み部で挟む工程と、手摺側固定部と挟み治具の挟み操作部との間に、紐長さ調整部付きの接続紐を接続する工程と、接続紐の紐長さ調整部を操作して挟み治具を上方側に引き上げることで保護カバーの端部を持ち上げて取付ボルトを露出させる工程と、取付ボルトに、インナーデッキのボルト嵌込溝を嵌め込む工程と、取付ボルトを締め付けてインナーデッキをインナーデッキ取付部に固定する工程と、を含む。
【0008】
上記構成によれば、保護カバーの端部を挟む挟み治具と、欄干部の上部の手摺に係合して配置される手摺側固定部との間が接続紐で接続され、接続紐の長さを調整できる。これによって、安定して保護カバーが上方側に引き上げられるので、インナーデッキの取付作業における保護カバーの倒れ込みが抑制され、取付作業性が向上する。
【0009】
本開示に係る乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法において、インナーデッキは、少なくとも1つの長尺部材で構成され、1つの長尺部材は長手方向に沿った複数の溝配置箇所にボルト嵌込溝がそれぞれ配置され、欄干部の下方側には、複数の溝配置箇所に対応する複数のボルト配置箇所に取付ボルトがそれぞれ設けられ、手摺側固定部を配置する工程は、複数のボルト配置箇所に対応して、手摺の長手方向に沿って複数の手摺側固定部を配置し、挟み部でつかむ工程は、複数のボルト配置箇所のそれぞれにおいて、複数の挟み治具を用いて長尺の保護カバーについて複数個所を挟み、接続紐を接続する工程は、複数のボルト配置箇所のそれぞれに対応する挟み治具の挟み操作部と手摺側固定部とをそれぞれ接続紐で接続し、取付ボルトを露出させる工程は、複数のボルト配置箇所のそれぞれに対応する接続紐の紐長さ調整部を調整して、複数のボルト取付箇所における取付ボルトを露出させ、ボルト嵌込溝を嵌め込む工程は、一人の作業員が1つの長尺部材を両手で持って、複数のボルト配置箇所の全部について、取付ボルトにそれぞれボルト嵌込溝を一度に嵌め込む工程であることが好ましい。
【0010】
乗客運搬装置の走行距離が長い場合、インナーデッキは複数の長尺部材で構成される。インナーデッキの取付作業は、1つ1つの長尺部材の取付作業となる。長尺部材が複数の溝配置箇所にボルト嵌込溝を有している場合、欄干部の下部には、複数の溝配置箇所に対応して複数のボルト取付箇所が設けられる。上記構成によれば、複数のボルト取付箇所に対応して、手摺には複数の手摺側固定部が係合され、長尺の保護カバーは、複数個所の端部が挟み治具で挟まれ、手摺側固定部と挟み治具とが取付紐で接続される。取付紐の長さを調整することで、安定して保護カバーの複数個所の端部が上方側に引き上げられる。これによって、作業者は一人で長尺部材を両手で持ち、複数のボルト配置箇所の全部について、取付ボルトにそれぞれボルト嵌込溝を一度に嵌め込むことができ、取付作業性が向上する。
【0011】
本開示に係る乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具は、乗客運搬装置の欄干部の下方側に設けられるインナーデッキ取付部に、取付ボルトを用いて取り付けられるインナーデッキの取付作業において、インナーデッキ取付部の取付ボルトを覆っているインナーパッキングである長尺の保護カバーの端部を持ち上げて取付ボルトを露出させるための支援治具であって、保護カバーの端部を挟むための挟み部を一方端に有し、他方側に挟み操作部を有する挟み治具と、欄干部に取り付けられた固定治具と、固定治具と挟み治具の挟み操作部との間に設けられた接続紐と、接続紐の紐長さ調整部であって、挟み治具を欄干部の上方側に引き上げて保護カバーの端部を持ち上げ取付ボルトを露出させる状態の紐長さとする調整機構を有する紐長さ調整部と、を含む。
【0012】
上記構成によれば、インナーデッキの取付作業支援治具として、欄干部に取り付けられた固定治具と、保護カバーの端部を挟むための挟み治具と、固定治具と挟み治具を接続する接続紐と、接続紐の紐長さ調整部と、を一組として用いることができる。これらを用いて、保護カバーを安定して上方側に引き上げることが可能になるので、インナーデッキの取付作業における保護カバーの倒れ込みが抑制され、取付作業性が向上する。
【0013】
本開示に係る乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具において、欄干部の上方側の手摺の外形形状に対応する内面形状を有する手摺側固定部であることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、手摺に手摺側固定部をしっかりと係合することが可能になり、安定して保護カバーを上方側に引き上げることが可能になるので、インナーデッキの取付作業における保護カバーの倒れ込みが抑制され、取付作業性が向上する。
【0015】
本開示に係る乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具において、手摺側固定部の内面形状は、手摺におけるインナーデッキ側の側面の外形形状との係合代は、インナーデッキ側と反対側の側面の外形形状の係合代よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、手摺側固定部と手摺との間の係合代が、インナーデッキ側とその反対側とで異なる。そこで、係合代の大きい側を先に手摺に嵌め込み、次に係合代の小さい側を嵌め込むことで、手摺側固定部の嵌め込みが容易になる。
【0017】
本開示に係る乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具は、乗客運搬装置の欄干部の下方側に設けられるインナーデッキ取付部に、取付ボルトを用いて取り付けられるインナーデッキの取付作業において、インナーデッキ取付部の取付ボルトを覆っているインナーパッキングである長尺の保護カバーの端部を持ち上げて取付ボルトを露出させるための支援治具であって、保護カバーの端部を挟むための挟み部を一方端に有し、他方側に挟み操作部を有する挟み治具と、欄干部に対し吸着及び脱着が自在な吸盤である固定治具と、固定治具と挟み治具の挟み操作部との間に設けられた接続紐と、を含む。
【0018】
上記構成によれば、固定治具として、市販の吸盤を用いることができる。吸盤は、欄干部の任意の位置に取り付けることが可能であるので、接続紐は一定の長さに定めることができ、特別な紐長さ調整部を要しない。
【0019】
本開示に係る乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具において、挟み治具は、挟み状態を維持できる挟みロック機構付きのロッキングプライヤであることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、市販のロッキングプライヤを用いることができるので、特別な挟み治具を製作することを要しない。
【発明の効果】
【0021】
上記構成の乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法、及び乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具によれば、保護カバーの倒れ込みを抑制して、インナーデッキの取付作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態に係る乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法及び取付作業支援治具が適用されるエスカレーターを示す斜視図である。
図2図1のエスカレーターに、インナーデッキを取り付ける作業の一例を示す斜視図である。
図3】実施の形態に係る乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法の工程手順を示すフローチャートである。
図4図3の作業初期状態における欄干部の断面図である。
図5】実施の形態に係る乗客運搬装置のインナーデッキ取付作業支援治具の内の手摺側固定部を示す図で、図5(a)は上面図であり、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
図6図3の手摺側固定部の配置工程を示す図である。
図7】実施の形態に係る乗客運搬装置のインナーデッキ取付作業支援治具の内の挟み治具を用いて、図3の保護カバーを挟む工程を示す図である。
図8】実施の形態に係る乗客運搬装置のインナーデッキ取付作業支援治具の内の取付紐を用いて、図3の取付紐を接続する工程を示す図である。
図9】実施の形態に係る乗客運搬装置のインナーデッキ取付作業支援治具の内の紐長さ調整部を用いて、図3の取付ボルトを露出させる工程を示す図である。
図10図9における取付ボルトと、ボルト嵌込溝を有する長尺部材との関係を示す図で、図10(a)は上面図であり、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
図11】インナーデッキの取付状態を示す断面図である。
図12】固定治具の他の実施形態として吸盤を用いて保護カバーを持ち上げる例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、乗客運搬装置として、建物の上方階と下方階との間で乗客を運搬するエスカレーターについて述べるが、これは説明のための例示である。建物の上方階と下方階の間に設けられずに、平坦面、あるいは小さな勾配面に沿って乗客を運搬する動く歩道等であってもよい。場合によっては、建物内でなく屋外に設置されてもよい。
【0024】
以下では、インナーデッキを構成する1つの長尺部材が有する溝配置箇所の数を3つとし、1つの溝配置箇所にそれぞれ1つのボルト嵌込溝が設けられるものとするが、これは説明のための例示である。1つの長尺部材における溝配置箇所は複数であればよく、3つ以外の2つまたは4つ等であってもよい。また、1つの溝配置箇所に複数のボルト嵌込溝が設けられてもよい。また、1つの長尺部材に対応する複数のボルト配置箇所の数は3つで、1つのボルト配置箇所にそれぞれ1つの取付ボルトが設けられるとするが、これは、1つの長尺部材の溝配置箇所の数及びボルト配置箇所の数に対応させたに過ぎない。ボルト配置箇所の数及び取付ボルトの数は、溝配置箇所の数及びボルト嵌込溝の数に対応して設定される。
【0025】
以下で述べる材質、寸法、形状等は、説明のための例示であって、乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法、及び乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具の仕様に応じて適宜変更が可能である。また、以下では、全ての図面において対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
図1は、乗客運搬装置としてのエスカレーター10の構成図である。エスカレーター10は、建物12の上方階に設けられる一方の乗降口14から建物12の図示しない下方階に設けられる他方の乗降口との間に設けられた複数のステップ16で構成される移動通路18に乗客を乗せて運搬する乗客運搬装置である。移動通路18の左右両側には、それぞれ欄干部20が配置される。以下の図では、左側の欄干部20のみを示し、右側の欄干部の図示を省略する。以下の説明において、欄干部20は、左側の欄干部20を指す。
【0027】
図1に、走行方向と上下方向と幅方向とを示す。走行方向は移動通路18の移動方向であり、移動通路18が静止した状態では、エスカレーター10の上方階と下方階とを結ぶ斜行方向となる。走行方向の両側を区別するときは、上方階に向かう方向を一方側と呼び、下方階側に向かう方向を他方側と呼ぶ。上下方向は、建物12について上方階側か下方階側かを区別する方向で、上方階側の方向が上方側で、下方階側の方向が下方側である。幅方向は、移動通路18について左右を区別する方向で、下方階の乗降口から上方階の乗降口14を見たときに、右方が右側の方向であり、左方が左側の方向である。以下の図においても同様である。
【0028】
ステップ16は、踏段とも踏み板とも呼ばれ、図示されていない無端移動装置に取り付けた乗客運搬用の移動板である。ステップ16は、複数個が無端状に連結されて上方階の乗降口14と下方階の乗降口との間を循環移動して移動通路18として働く。ステップ16の上面には、滑り止め等のために、ステップ16の移動方向に平行な溝が設けられる(図示省略)。
【0029】
欄干部20は、ステップ16の左側に立設される一組の内側板22及び外側板24と、内側板22及び外側板24の上部に設けられる手摺30と、内側板22及び外側板24の下部に設けられるインナーデッキ40を備える。さらに、インナーデッキ40の下部にはスカートガード56が設けられる。保護カバー60は、インナーデッキ40が欄干部20の下部において取り付けられるインナーデッキ取付部70(図2参照)を覆う部材である。
【0030】
内側板22は、内側パネルとも呼ばれる部材で、移動するステップ16に立つ乗客に対し、左右の安全位置を規定する壁部である。図1では、透明な内側板22を通して外側板24が示される。外側板24は、内側板22と共に欄干部20を構成し、上部の手摺30を支持する部材である。内側板22と外側板24のそれぞれの下部は、デッキボード26と呼ばれる下部板で支持される。内側板22及び外側板24は、板材等で構成される。板材としては、透明なアクリル板材が用いられる。アクリル板材に代えて透明ガラス板材を用いてもよい。透明な内側板22と外側板24との間の空間には、適当な照明具を配置することができる。エスカレーター10の仕様によっては、内側板22及び外側板24を不透明な樹脂パネルや金属パネルで構成してもよい。
【0031】
手摺30は、欄干部20の上方側で内側板22及び外側板24の上部に配置され、ステップ16の移動に伴って移動する無端状のレール形状を有する移動手摺である。手摺30は、例えば、上方階の乗降口14の側から内側板22及び外側板24の上部を矢印で示す移動方向21に移動し、下方階の乗降口の側において移動方向を反転して、内側板22及び外側板24の下方に設けられるデッキボード26の下の空間に潜る。そして、デッキボード26の下の空間の内部を下方階側から上方階側に移動し、上方階における乗降口14でデッキボード26の下の空間から外に出て、再び内側板22及び外側板24の上部を矢印で示す移動方向21に移動する。乗客は、手摺30を持つことで、移動するステップ16に立つとき、姿勢等を安定したものに保持できる。
【0032】
インナーデッキ40は、内側板22の下方に設けられ、デッキボード26の下の空間において下方階の乗降口と上方階の乗降口14側との間に配置される手摺30の移動機構等を覆う長尺のカバー部材である。インナーデッキ40は、移動通路18の長さに応じて、少なくとも1つの長尺部材42で構成される。移動通路18が短いエスカレーター10の場合には、1つの長尺部材42で済むが、移動通路18が長い場合は、例えば、10を超える数の長尺部材42でインナーデッキ40の全体が構成される。インナーデッキ40を構成する長尺部材42は、適当な金属板を所定の形状に折り曲げて形成される。長尺部材42の構成の詳細は後述する。
【0033】
スカートガード56は、インナーデッキ40の下方に設けられ、ステップ16の幅方向の側面に対し所定の隙間を空けて設けられる板部材である。スカートガード56は、適当な金属板を所定の形状に折り曲げて形成される。
【0034】
保護カバー60は、欄干部20の下部のインナーデッキ取付部70を外部から保護し、さらに、移動通路18の乗客に対して美観を損ねないように、欄干部20の下部に沿ってインナーデッキ取付部70を覆う長尺の部材である。保護カバー60は、インナーデッキ40が取り付けられた状態において、インナーデッキ40と内側板22との間の細長い隙間に埋め込まれる。埋め込みを容易に行うために、保護カバー60は、柔軟で弾性を有する合成ゴム等の材質で構成される。
【0035】
図2は、乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具を用いて、乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法を示す図である。以下では、乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具、乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法を、特に断らない限り、作業支援治具90、インナーデッキ取付方法と呼ぶ。図2には、移動通路18における作業者8が1つの長尺部材42を両手で持って、欄干部20の下方側のインナーデッキ取付部70に取り付ける作業が示される。長尺部材42の左端部には、インナーデッキ取付部70に設けられる取付ボルト78(図4参照)に嵌め込むためのボルト嵌込溝44が設けられている。インナーデッキ取付部70は保護カバー60で覆われているので、取付作業においては、インナーデッキ取付部70を作業者8が目視できるように、作業支援治具90を用いて、保護カバー60を持ち上げる。
【0036】
保護カバー60は長尺部材であるので、全長を持ち上げずに、取付作業に必要な限度で、複数個所の端部62が持ち上げられる。持ち上げられる端部62は、インナーデッキ取付部70に対応する箇所の部分である。図2の例では、長尺部材42のボルト嵌込溝44が3箇所に配置されることに対応して、インナーデッキ取付部70は3箇所に配置されるので、3組の作業支援治具90を用いて、3箇所の端部62が持ち上げられる。
【0037】
作業支援治具90は、取付作業中に保護カバー60がインナーデッキ取付部70の上に倒れ込まないように、端部62をしっかりと挟んで、欄干部20に固定する治具である。1組の作業支援治具90は、1つの手摺側固定部100、1つの挟み治具110、1つの接続紐130、及び1つの紐長さ調整部140で構成される。
【0038】
以下に、作業支援治具90と、インナーデッキ取付方法とについて、図3から図11を用いて詳細に説明する。図3は、インナーデッキ取付方法の工程手順を示すフローチャートであり、図4から図11は、各工程の内容を示す図である。作業支援治具90の内、手摺側固定部100については図5において、挟み治具110については図7において、接続紐130及び紐長さ調整部140については図8において、それぞれの構成を述べる。
【0039】
図3において、インナーデッキ取付方法における最初の状態は、インナーデッキ40を構成する長尺部材42が欄干部20にまだ取り付けられていない作業初期状態である(S10)。図4は、作業初期状態における欄干部20の断面図である。
【0040】
欄干部20の下部には、インナーデッキ取付部70が設けられる。インナーデッキ取付部70は、長尺部材42の左端部を取り付ける左側取付部72と、長尺部材42の右端部を取り付ける右側取付部74を含む。左側取付部72、右側取付部74は、エスカレーター10の骨格部分であるトラス部(図示省略)に固定されて設けられる。インナーデッキ取付部70は、長尺部材42の左端部においてボルト嵌込溝44が配置される溝配置箇所に対応して設けられる。例えば、図2に示すように、1つの長尺部材42について、3つの溝配置箇所が設けられる場合は、3つの溝配置箇所に対応して、欄干部20の下部において、3つの取付部配置箇所にインナーデッキ取付部70が設けられる。
【0041】
左側取付部72は、取付部受板76、取付ボルト78、ナット80、ボルトガイド板81、及びワッシャ82を含む。ボルトガイド板81は、取付部受板76の上面側から裏面側に回り込むU字型断面を有する部材で、上面側と裏面側に取付ボルト78の軸部を通す長穴を有する(後述する図10(a)の上面図を参照)。ボルトガイド板81は、取付部受板76に対し取付ボルト78の配置位置を案内すると共に、取付部受板76の裏面側に配置されるナット80が脱落しないように保持する。取付ボルト78は、おねじ部を有する軸部と、頭部とを有するビスである。ワッシャ82は、取付ボルト78の頭部と、ボルトガイド板81の上面との間に配置される。ナット80は、取付部受板76の裏面とボルトガイド板81との間に保持されて配置される。図4における作業初期状態では、取付ボルト78は、ナット80に対し予め緩められた状態で、ワッシャ82とボルトガイド板81を介した取付部受板76との間には隙間がある状態である。なお、作業初期状態において取付ボルト78とナット80とがしっかり固定されていてもよい。その場合には、後述するS20の工程において、まず、取付ボルト78がナット80に対し緩められる。
【0042】
右側取付部74は、固定板部84、押え板ばね86、及びばね固定ボルト88を含む。固定板部84は、スカートガード56と互いに固定される。押え板ばね86は、一端がばね固定ボルト88によって固定板部84に固定される固定端で、他端は、スカートガード56を介して固定板部84の上面に配置される自由端である。自由端の部分は、右側に向かって上方側に跳ね上がる曲り形状を有し、これによって付勢力が発生する。作業初期状態では、押え板ばね86の自由端における底部は、スカートガード56を介して固定板部84の上面に付勢力で押し付けられた状態である。
【0043】
保護カバー60は、一端が欄干部20の内側板22に固定され、他端は、内側板22から離れて上方側で右側に曲る形状を有する。作業初期状態では、保護カバー60の他端の曲り部分は、左側取付部72の取付ボルト78を覆った状態である。
【0044】
図3に戻り、取付作業としての最初の工程は、固定治具配置工程である(S12)。固定治具は、保護カバー60の端部62を挟んだ状態の挟み治具110を上方側に引き上げて欄干部20に固定する治具である。ここでは、固定治具として、手摺側固定部100が用いられる。
【0045】
図5は、手摺側固定部100を示す図である。図5(a)は上面図であり、(b)は、(a)のB−B線に沿った断面図である。手摺側固定部100は、手摺30の外形形状に対応する内面形状を有する本体部102と、本体部102の裏側に配置される保護部材104とで構成される。本体部102は、手摺30の外形に沿って嵌め込むことで固定される形状と材質を有する部材である。本体部102の材質としては、ある程度の力で撓み、反発力で元の形状に復帰する軟質の樹脂材料が用いられる。かかる樹脂材料としては、軟質のポリエチレン樹脂が用いられる。保護部材104は、手摺側固定部100を手摺30に取り付ける場合に、手摺30を損傷しないように保護するために設けられる。かかる保護部材104としては、低反発力の弾性を有するスポンジが用いられる。スポンジの材質としては、発泡ウレタン樹脂が用いられる。上記の材質は、説明のための例示であって、これ以外の適当な特性を有する樹脂材料を用いてよい。
【0046】
本体部102の断面形状は、自然状態で手摺30の外形に倣って包み込むように覆う形状を有する。手摺30の断面形状は左右対称形であるが、本体部102の断面形状は左右非対称で、左側の湾曲部の深さDLが右側の湾曲部の深さDRよりも深く設定される。湾曲部の深さDL,DRは、手摺30に対する本体部102の係合代に相当するので、本体部102は、手摺30の左側に深く係合し、右側で浅く係合する。本体部102の右側はほぼ水平に延びる縁部となり、接続紐130を通す穴部106が設けられる。
【0047】
図6は、固定治具配置工程(S12)として、手摺側固定部100を手摺30に嵌め込んで配置する工程の途中を示す図である。手摺側固定部100を手摺30に嵌め込む手順としては、係合代が大きい湾曲部の深さDLを有する左側を先に手摺30の左側面に宛がい、図6において矢印で示す方向に下方側に押すようにして嵌め込む。右側の湾曲部の深さDRはDLよりも小さいので、軽い力で押すだけで手摺側固定部100の右側は簡単に下方側に移動し、手摺側固定部100は手摺30に装着される。手摺側固定部100の右側に設けられる穴部106には接続紐130(図8参照)が通されて、二点鎖線で示すように下方側に力Fで引っ張られる。これにより、手摺側固定部100は、左側の深い湾曲部で手摺30の外形にしっかりと係合し手摺30に固定されて外れにくい状態となる。
【0048】
図3に戻って、S14では、挟み治具110を用い、保護カバー60の端部62を挟む。S12とS14の手順は、いずれを先にしてもよい。図7に、S14の工程の内容を示す。挟み治具110は、一方端に挟み部112を有し、他方側に挟み操作部114を有するプライヤで、ロック部116とロック解除部118とを有する。挟み操作部114には、接続紐130を通すための穴部120が設けられる。
【0049】
作業者8は、ロック解除部118を操作して挟み部112を開き、挟み部112の向かい合う開口に保護カバー60の端部62を挿入する。そして、挟み操作部114を操作して挟み部112の向い合う開口を縮め、端部62を挟み部112でしっかり挟み、ロック解除部118を元に戻し、ロック部116を働かせる。これにより、保護カバー60の端部62は、挟み部112によってしっかり挟み込まれ、ロック部116の作用によって挟み部112から外れることがない。挟み部112の向かい合う開口は、保護カバー60をしっかり挟めるように、適当な挟み面積と、挟み抵抗を大きくするために適当な凹凸を設けることが好ましい。適当な挟み面積における走行方向に沿った挟み幅の一例を挙げると、約30mmである。これは説明のための例示であって、保護カバー60を持ち上げた状態における重さや剛性等に応じて適宜変更される。かかる挟み治具110としては、汎用的に市販されている挟みロック機構付きのロッキングプライヤを用いることができる。
【0050】
S12とS14の工程が終わると、次に、手摺側固定部100の穴部106と、挟み治具110の穴部120との間を接続紐130で接続する(S16)。接続紐130としては、適当な強度を有する作業用紐が用いられる。接続紐130には、紐長さ調整部140が設けられる。図8に、紐長さ調整部140が設けられた接続紐130の接続状態を示す。接続紐130は、手摺側固定部100の穴部106と、挟み治具110の穴部120とを通り、無端状の環状形状に結ばれる。接続紐130の無端状の往部分132と復部分134が紐長さ調整部140に通される。紐長さ調整部140は、ケース体142、ケース体142に設けられた長穴ガイド144、及び、長穴ガイド144に沿って移動可能な歯車体146を備える。ケース体142は、一方側が幅広で他方側が幅狭の形状を有する筒体で、筒体の内壁面と歯車体146との間に、無端状の接続紐130の往部分132と復部分134が通される。紐長さ調整部140のケース体142の内部において、往部分132と復部分134とは、歯車体146を挟んで、互いに反対側の内壁面側を通される。
【0051】
上記構成の紐長さ調整部140の作用は以下の通りである。図8に示すように、長穴ガイド144に沿ってケース体142の幅広側に歯車体146が移動している場合には、歯車体146とケース体142に内壁面との間に十分な隙間があり、接続紐130の往部分132も復部分134も自由に動ける。これに対し、長穴ガイド144に沿ってケース体142の幅狭側に歯車体146を移動させると、歯車体146とケース体142の内壁面との間の隙間が狭くなって、接続紐130の往部分132も復部分134も移動できない状態となり、紐長さが固定される。このように、歯車体146を長穴ガイド144に沿って移動させることで、接続紐130を自由状態から固定状態にできる。自由状態の場合に、接続紐130に対し紐長さ調整部140を移動させて、手摺側固定部100の穴部106と挟み治具110の穴部120との間の紐長さを短くし、所望の紐長さとした状態で歯車体146をケース体142の幅狭の方向に移動させる。これによって、接続紐130において、手摺側固定部100の穴部106と挟み治具110の穴部120との間の紐長さを所望の紐長さとできる。このようにして、接続紐130の紐長さ調整を行うことができる。
【0052】
上記の紐長さ調整部140の構成は、説明のための例示であって、これ以外の構成を用いてもよい。例えば、接続紐130の一方端と他方端とを固定できる適当なクリップ機構を紐長さ調整部140として用いてもよい。
【0053】
S16の次は、手摺側固定部100の穴部106と挟み治具110の穴部120との間の紐長さを調整して挟み治具110を上方側に持ち上げることで、保護カバー60の端部62を上方側に持ち上げ、取付ボルト78を露出させる(S18)。紐長さ調整部140を用いて保護カバー60の端部62を持ち上げた状態を図9に示す。ここでは、紐長さ調整部140の歯車体146がケース体142の幅狭の方向に移動しており、保護カバー60の端部62が上方側に持ち上げられた状態で接続紐130の紐長さが固定される。保護カバー60の端部62が上方側に持ち上げられたことで、インナーデッキ取付部70の左側取付部72が保護カバー60に覆われた状態から開放され、取付ボルト78が露出する。この状態で、作業者8は、取付ボルト78を目視できるようになるので、長尺部材42をインナーデッキ取付部70に正しく取り付けることが可能になる。
【0054】
図10は、取付ボルト78が露出した状態において、左側取付部72と、長尺部材42のボルト嵌込溝44との配置関係を示す図である。図10(a)は上面図であり、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図である。(b)に示すように、長尺部材42は、断面形状において、エスカレーター10の移動通路18側に配置されるデッキ部46を有する。また、デッキ部46の左端から下方側に折れ曲がり所定の縦壁長さとなった後に左側に折れ曲がる左端部48を有する。さらに、デッキ部46の右端から下方側に折れ曲がり所定の縦壁長さとなった後に左側に折れ曲がる右端部50を有する。
【0055】
ボルト嵌込溝44は、長尺部材42の左端部48の溝配置箇所に設けられる。1つの長尺部材42には、3箇所の溝配置箇所が設けられ、1つの溝配置箇所に1つのボルト嵌込溝44が設けられる。1つの長尺部材42における溝配置箇所が3つ、1つの溝配置箇所におけるボルト嵌込溝44が1つというのは、説明のための例示であって、長尺部材42の長手方向の寸法に応じて適宜変更してよい。ボルト嵌込溝44は、長尺部材42の左端部48の左縁に溝開口部を有するU字状の切欠溝である。ボルト嵌込溝44の溝幅は、左側取付部72の取付ボルト78の軸部の外径よりも大きく、頭部の外径及びワッシャ82の外径よりも小さく設定される。
【0056】
左側取付部72は、欄干部20の下部において、長尺部材42の溝配置箇所の数に対応する数の取付部配置箇所に設けられる。上記の例において溝配置箇所は3箇所であるので、取付部配置箇所は3箇所である。取付部配置箇所は、取付ボルト78を配置するボルト配置箇所でもあるので、1つの長尺部材42に対するボルト配置箇所は3箇所である。1つのボルト配置箇所には、ボルト嵌込溝44の数に対応する数の取付ボルト78が設けられる。上記の例において1つの溝配置箇所についてボルト嵌込溝44の数は1であるので、1つのボルト配置箇所には1つの取付ボルト78が設けられる。1つの長尺部材42におけるボルト配置箇所が3つ、1つのボルト配置箇所における取付ボルト78が1つというのは、説明のための例示であって、長尺部材42の溝配置箇所の数、ボルト嵌込溝44の数の設定に応じて適宜変更される。
【0057】
左側取付部72において、(b)の断面図の概要は図4で述べたので、(a)の上面図と関連する点について補足し、それ以外の詳細な説明は省略する。(a)の上面図に示されるように、取付部受板76には、走行方向に平行な長穴79,83が設けられる。長穴79には、ナット80の上部外形が嵌め込まれ、これによって、取付部受板76において、取付ボルト78とナット80は一体となって走行方向に沿って移動可能となる。長穴83は、取付ボルト78の走行方向に沿った移動に伴ってボルトガイド板81が移動できるように設けられる。したがって、取付ボルト78がナット80に対し緩められている状態においては、取付ボルト78及びナット80の長穴79に対する位置はまだ定まっていない。
【0058】
図3に戻り、長尺部材42をインナーデッキ取付部70に取り付ける場合、作業者8は、長尺部材42を両手で持って、ボルト嵌込溝44を、まだ位置が定まっていない取付ボルト78及びナット80の現在位置に合わせて嵌め込む(S20)。嵌め込み方向を、図10(a),(b)の白抜矢印で示す。幅方向については、図10(a)に示すように左側に移動させる。上下方向については、図10(b)の白抜矢印で示すように、長尺部材42の左端部48の板厚が、ワッシャ82の下面とボルトガイド板81の上面との隙間に入るように合わせる。長尺部材42には、3箇所のボルト嵌込溝44が設けられるので、作業者8は、3箇所のボルト嵌込溝44について、それぞれに対応する取付ボルト78に対する位置合わせを同時に、一度に行う必要がある。位置合わせが正しくないと、取付ボルト78、ナット80、ボルト嵌込溝44等の損傷が生じ得るので、作業者8は、長尺部材42を両手で持ち、取付ボルト78の位置を目視で確認しながら、取付作業を行う。図2は、その位置合わせを行いながらの取付作業を示す図である。
【0059】
S20の嵌込工程において、長尺部材42の右端部50は、インナーデッキ取付部70の右側取付部74の押え板ばね86と、スカートガード56を介した固定板部84との間に挿入される。長尺部材42の右端部50は、押え板ばね86の付勢力によって、スカートガード56を介した固定板部84側にしっかりと固定される。
【0060】
S20の嵌込工程が済むと、取付ボルト78をドライバー等を用いて締め付ける(S22)。これによって、長尺部材42の左端部48が左側取付部72に固定され、右端部50は、右側取付部74に固定される。そこで、3組の作業支援治具90の取外しが行われ(S24)、長尺部材42の取付作業が終了する。インナーデッキ40が複数の長尺部材42で構成される場合は、上記の手順を全ての長尺部材42について繰り返すことで、インナーデッキ40の取付作業が完了する。図11は、インナーデッキ40の取付作業が完了した状態の欄干部20を示す図である。
【0061】
上記では、固定治具として、手摺側固定部100を用いたが、これに代えて、吸盤150を用いることができる。図12は、図2に対応する図で、固定治具として吸盤150も用いる作業支援治具92を示す。吸盤150は、欄干部20の内側板22に対し吸着及び脱着が自在な吸盤で、汎用的な市販品を用いることができる。吸盤150は、内側板22の任意の場所に吸着させて配置できるので、接続紐130は、吸盤150と挟み治具110との間を一定の長さで接続すればよく、特別な紐長さ調整部140を必要としない。
【0062】
上記構成の乗客運搬装置のインナーデッキ取付方法、及び乗客運搬装置のインナーデッキの取付作業支援治具によれば、保護カバー60の端部62を挟む挟み治具110と、欄干部20側の固定治具との間が接続紐130で接続される。これによって、安定して保護カバー60の端部62が上方側に引き上げられるので、インナーデッキ40の取付作業における保護カバー60の倒れ込みが抑制され、取付作業性が向上する。
【符号の説明】
【0063】
8 作業者、10 エスカレーター(乗客運搬装置)、12 建物、14 (上方階の)乗降口、16 ステップ、18 移動通路、20 欄干部、21 (手摺の)移動方向、22 内側板、24 外側板、26 デッキボード、30 手摺、40 インナーデッキ、42 長尺部材、44 ボルト嵌込溝、46 デッキ部、48 左端部、50 右端部、56 スカートガード、60 保護カバー、62 (保護カバーの)端部、70 インナーデッキ取付部、72 左側取付部、74 右側取付部、76 取付部受板、78 取付ボルト、79,83 長穴、80 ナット、81 ボルトガイド板、82 ワッシャ、84 固定板部、86 押え板ばね、88 固定ボルト、90,92 (インナーデッキの取付)作業支援治具、100 手摺側固定部、102 本体部、104 保護部材、106,120 穴部、110 挟み治具、112 挟み部、114 挟み操作部、116 ロック部、118 ロック解除部、130 接続紐、132 往部分、134 復部分、140 紐長さ調整部、142 ケース体、144 長穴ガイド、146 歯車体、150 吸盤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12