(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、
車両用内燃機関に備えられる可変圧縮比機構100
の一態様を模式的に示した概略構成図である。
可変圧縮比機構100は、車両用内燃機関の機械圧縮比を可変とする機構である。
可変圧縮比機構100は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダ内を往復運動するピストン1とクランクシャフト4を連結するリンク機構110と、リンク機構110の姿勢を制御する連結機構120と、減速機構21と駆動モータ22とを有し連結機構120を回転駆動するアクチュエータ130と、を備えている。
【0010】
リンク機構110は、ピストン1のピストンピン2に上端が回転自在の連結されたアッパリンク3と、クランクシャフト4のクランクピン4aに回転自在に連結されたロアリンク5と、を備える。そして、ロアリンク5は、一端部が連結ピン6を介してアッパリンク3の下端が回転自在に連結されている。
連結機構120は、一端部がロアリンク5の他端部に連結ピン8を介して回転自在に連結された各気筒に有する制御リンク7と、各制御リンク7の他端部と連結された第1制御軸10と、第1制御軸10に連結リンク12とリンクアーム13を介して回転自在に連結された第2制御軸14と、を備えている。
【0011】
第1制御軸10は、クランクシャフト4と平行に機関内部を気筒列方向に延びており、機関本体に回転自在に支持される第1ジャーナル部10aと、各気筒の各制御リンク7の下端部が回転自在に取り付けられる複数の第1偏心軸部10bと、連結リンク12の一端部12aが回転自在に取り付けられた第2偏心軸部10cと、を備えている。
第1偏心軸部10bは、第1アーム部10dを介して第1ジャーナル部10aに対して所定量偏心した位置に設けられている一方、第2偏心軸部10cは、第2アーム部10eを介して第1ジャーナル部10aに対して所定量偏心した位置に設けられている。
【0012】
連結リンク12は、
図2に示すように、レバー状に形成されて、第2偏心軸部10cに連結された一端部12aがほぼ直線状に形成されているのに対して、リンクアーム13が連結された他端部12bがほぼ湾曲状に折曲形成されている。
一端部12aの先端部には、第2偏心軸部10cが回動自在に挿通される挿通孔12cが貫通形成されている。
【0013】
一方、他端部12bは、二股状に形成された先端部12dの間に前記リンクアーム13の突起部13bが挟持状態に保持されると共に、突起部13bと連結する連結ピン11が圧入固定される図外の固定用孔が貫通形成されている。
リンクアーム13は、第2制御軸14とは分離して形成され、円環状の本体13aの中央位置に第2制御軸14の前後の各ジャーナル部の間に形成された固定部に圧入固定される圧入用孔13cが貫通形成されていると共に、本体13aの外周には、径方向へ突出したU字形状の突起部13bが一体に設けられている。
【0014】
この突起部13bには、連結ピン11が回動自在に支持される連結用孔13dが形成されている。そして、連結用孔13dの軸心(連結ピン11)が突起部13bを介して第2制御軸14の軸心から径方向へ所定量偏心している。
第2制御軸14は、ハウジング20内に複数のジャーナル部を介して回転自在に支持されていると共に、連結リンク12の他端部12bにリンクアーム13を介して連結されている。
【0015】
第2制御軸14は、一体に形成された軸部本体23と、該軸部本体23の後端部に一体に設けられた図外の固定用フランジとを有している。
軸部本体23は、リンクアーム13が圧入用孔13cを介して圧入される固定部23aを有している。
【0016】
そして、第2制御軸14は、アクチュエータ130の一部である減速機構21を介して駆動モータ22から伝達された回転力によって回転位置が変更され、係る第2制御軸14の回転位置の変更に伴い、連結リンク12などを介して第1制御軸10が回転して制御リンク7の下端部の位置が移動する。
これにより、ロアリンク5の姿勢が変化してピストン1のストローク特性が変化し、機関圧縮比が変化するようになっている。
【0017】
マイクロコンピュータを備えた電子制御装置(ECU)140は、駆動電流の制御によって駆動モータ22の正逆回転を制御する。
駆動モータ22は、例えばブラシレス型の電動モータであって、出力軸の回転角度を検出するレゾルバなどのモータ回転角センサ22aを備える。
【0018】
電子制御装置140は、モータ回転角センサ22aが検出する回転角度に応じてモータコイルに流れる電流を切り換えて駆動モータ22を駆動する。
また、第2制御軸14の回転角度を検出する制御軸回転角センサ150が設けられている。
電子制御装置140は、内燃機関の運転状態に応じた目標圧縮比に相当する第2制御軸14の目標回転角度を取得し、この目標回転角度と制御軸回転角センサ150で検出される実回転角度とを比較し、目標回転角度(目標圧縮比)に実回転角度(実圧縮比)が近づくように、駆動モータ22の正逆回転を制御する制御電流を出力する。
【0019】
なお、電子制御装置140による圧縮比の制御範囲は、
図3に示すように、リンクアーム13が第1ストッパ57によって回転規制された第2制御軸14の回転角度位置を低圧縮比側の絶対値0とし、第1制御軸10が第2ストッパ58によって回転規制された第2制御軸14の回転角度位置を高圧縮比側の絶対値0’とし、この両絶対値0,0’間の角度が回転可能範囲Yであって、この回転可能範囲Yよりも内側にある目標圧縮比の設定範囲X内で圧縮比制御が行われるようになっている。
【0020】
上記の可変圧縮比機構100において、第2制御軸14は移動可能に支持される移動体であり、第1ストッパ57は、移動体である第2制御軸14の移動領域(回転領域)の一端で当接して第2制御軸14の回転を停止させ、第2ストッパ58は、移動体である第2制御軸14の移動領域(回転領域)の他端で当接して第2制御軸14の回転を停止させる。
更に、減速機構21と駆動モータ22とを有するアクチュエータ130は、移動体である第2制御軸14を回転させるアクチュエータであり、制御軸回転角センサ150は、移動体である第2制御軸14の回転角度を検出するセンサである。
【0021】
また、電子制御装置140は、リンクアーム13が第2制御軸14の軸部本体23に圧入固定される部分でのスリップの発生の有無を検出する診断部としての機能(以下、スリップ診断ともいう)をソフトウェアとして備える。
図4のフローチャートは、電子制御装置140におけるスリップ診断の手順の一態様を示す。
【0022】
ステップS401で、電子制御装置140は、第1ストッパ57の当接状態での制御軸回転角センサ150の出力と、第2ストッパ58の当接状態での制御軸回転角センサ150の出力との少なくとも一方について学習済であるか否かを判断する。
電子制御装置140は、ストッパの当接状態でのセンサ出力を学習し、学習結果に基づき、制御軸回転角センサ150の出力と第2制御軸14の回転角度の検出値との相関を校正する。
【0023】
ストッパの当接状態でのセンサ出力を学習済である場合、電子制御装置140は、ステップS402に進み、スリップ診断の実施条件が成立しているか否かを判断する。
後述するように、電子制御装置140は、スリップ診断においてストッパ57,58を当接状態に安定させるための押し付け制御を実施するが、ストッパ57,58の耐力を超える押し付けトルクが要求されることを抑止する必要がある。
【0024】
そこで、ストッパ57,58の耐力が比較的小さい場合は、内燃機関の負荷(反力)が小さくストッパ57,58の押し付けトルクを低く抑制できる条件下でスリップ診断を行わせる。
なお、内燃機関の負荷の小さい状況とは、例えば、暖機完了状態であって低回転低負荷領域で運転されている状態である。
【0025】
一方、ストッパ57,58の耐力が比較的大きい場合は、内燃機関の負荷がより高い条件下でスリップ診断を行うことが可能であり、内燃機関の負荷(反力)がより高い条件でスリップ診断を行なえば、スリップを誘発させることができ、スリップしかかっている状態の検知性が向上する。
そこで、ストッパ57,58の耐力が比較的大きい場合は、内燃機関の負荷がより高い条件下、例えば、機関温度がより低く、かつ、内燃機関の回転速度及び負荷がより高い状況で、スリップ診断を行わせる。
この他、スリップ診断の実施条件として、制御軸回転角センサ150の診断処理で正常判定されていることや、圧縮比の変化が車両の運転性に影響しない状態であることなどを含めることができる。
【0026】
スリップ診断の実施条件が成立している場合、電子制御装置140は、ステップS403に進み、第2制御軸14の低圧縮比方向の回転を規制する第1ストッパ57を当接状態にするために、圧縮比が低下する方向に第2制御軸14を回転駆動する(
図5参照)。
電子制御装置140は、第1ストッパ57を当接状態にするために圧縮比が低下する方向に第2制御軸14を回転駆動すると、ステップS404で、制御軸回転角センサ150の出力が低圧縮比方向に変化した後で安定状態になったか否かを判定することで、第1ストッパ57の安定当接状態になったか否かを判断する。
【0027】
そして、制御軸回転角センサ150の出力が安定すると(
図5参照)、電子制御装置140は、ステップS405に進み、第1ストッパ57の当接状態から第2ストッパ58の当接状態に推移させるために、圧縮比が増加する方向に第2制御軸14を最大トルク(最大印加電圧での駆動トルク)若しくは最大トルク近傍の高トルクで駆動する(
図5参照)。
なお、上記の高トルクとは、リンクアーム13が第2制御軸14の軸部本体23に圧入固定される部分でのスリップを誘発できる所定の高トルクである。換言すれば、圧入部分でスリップしかかっているときに、高トルクで第2制御軸14を駆動することでスリップを誘発させ、圧入部分の保持力の低下(不足)を検知できるようにする。
【0028】
係る高トルクでの駆動を開始した後、電子制御装置140は、ステップS406に進み、駆動トルクを弱めるタイミングになったか否かを、ストッパ位置学習の結果に基づき設定した閾値に制御軸回転角センサ150の出力が達したか否かに基づいて判断する。
第1ストッパ57の当接状態でのセンサ出力を学習し、第2ストッパ58の当接状態でのセンサ出力を学習していない場合であっても、第1ストッパ57の当接状態でのセンサ出力から第2ストッパ58の当接状態でのセンサ出力を推定でき、ストッパ位置学習済であれば、第2ストッパ58の当接状態でのセンサ出力は既知である。
【0029】
ここで、制御軸回転角センサ150のばらつきを考慮すると、ストッパ位置学習で求められた第2ストッパ58の当接状態でのセンサ出力(基準出力)を含む、センサ出力の正常範囲(
図5参照)を設定できる。
そして、
図5に示すように、正常範囲の手前のセンサ出力を、トルクを弱めるタイミングを規定するセンサ出力の閾値SL1とすれば、センサ出力のばらつきを考慮しても、第2ストッパ58が当接する前のタイミングで駆動トルクを弱めることができる。
【0030】
そこで、電子制御装置140は、ステップS406で、前記正常範囲の手前に設定したセンサ出力の閾値SL1と制御軸回転角センサ150の出力とが一致したか否かを判断する。
そして、電子制御装置140は、閾値SL1と制御軸回転角センサ150の出力とが一致すると、ステップS407に進み、第2制御軸14を高圧縮比方向に回転駆動するトルクを最大トルクよりも弱め、弱めたトルクで第2ストッパ58を当接させる(
図5参照)。
【0031】
つまり、電子制御装置140は、ステップS407で、圧入部分のスリップを誘発させるような高トルクから、第2ストッパ58が耐えられる衝突エネルギーになるトルクにまで低下させ、スリップの検知性を可及的に高めつつ、第2ストッパ58が損傷することを抑止する。
このように、電子制御装置140は、ストッパ位置学習の結果に基づき、スリップを誘発させるような高トルクで駆動できる期間の終期を特定する。換言すれば、第2ストッパ58が当接状態になるセンサ出力を予め推定しておくことで、当接位置の手前までの期間でスリップを誘発させるような高トルクで駆動することが可能となり、高トルクの駆動によってスリップしかかっている異常を検知できる。
【0032】
電子制御装置140は、ステップS407で駆動トルクを弱めた後、ステップS408に進み、制御軸回転角センサ150の出力が高圧縮比方向に変化した後で安定状態になったか否かを判定することで、第2ストッパ58の安定当接状態になったか否かを判断する。
ここで、制御軸回転角センサ150の出力が変動している場合、電子制御装置140は、ステップS409へ進んで、第2ストッパ58の当接に向けた駆動を開始してからの経過時間が設定時間内であるか否かを判断する。
【0033】
なお、第2ストッパ58の当接に向けた駆動を開始してからの経過時間とは、ステップS405で高トルク駆動を開始してからの経過時間、若しくは、ステップS407でトルクを低下させてからの経過時間などである。
そして、電子制御装置140は、第2ストッパ58の当接に向けた駆動を開始してからの経過時間が設定時間内であれば、ステップS407に戻って、第2ストッパ58が耐えられる衝突エネルギーになるトルクで圧縮比を増加させる方向に第2制御軸14を駆動する制御を継続させる。
【0034】
制御軸回転角センサ150の出力が安定し、第2ストッパ58の安定当接状態になったことが推定される場合、電子制御装置140は、ステップS411に進み、第2ストッパ58の当接状態での制御軸回転角センサ150の出力が、予め実施されたストッパ位置学習の結果に基づく正常範囲内であるか否かを判断する。
第2ストッパ58の当接状態での制御軸回転角センサ150の出力が正常範囲内であれば、圧入部分のスリップは発生していないと推定できる状況であるので、電子制御装置140は、ステップS412に進み、可変圧縮比機構100のアクチュエータ130の正常判定を行って、係る診断履歴を保存する。
【0035】
なお、アクチュエータ130が正常であれば、電子制御装置140は、可変圧縮比機構100の通常制御を継続する。
一方、第2ストッパ58の当接状態での制御軸回転角センサ150の出力が、第1ストッパ57の当接状態で求めた基準出力に基づき設定した正常範囲外である場合(
図5参照)、圧入部分のスリップの発生によって、第2制御軸14とリンクアーム13とが一体に回転せず、リンクアーム13が第1ストッパ57によって回転規制されるようになるまでの第2制御軸14の回転角量が標準からずれたと推定できる。
【0036】
そこで、電子制御装置140は、ステップS413に進み、可変圧縮比機構100のアクチュエータ130の異常判定(第2制御軸14とリンクアーム13との圧入部分におけるスリップ発生判定)を行って、係る診断履歴を保存する。
なお、ステップS413でアクチュエータ130の異常(スリップ)を判定した場合、電子制御装置140が制御軸回転角センサ150の出力から認識する圧縮比と実圧縮比とに乖離が生じ、目標圧縮比への制御精度が低下する。
【0037】
したがって、電子制御装置140は、可変圧縮比機構100の制御を停止して圧縮比をデフォルトに保持したり、ストッパ位置の再学習後に第2制御軸14の駆動トルクを通常よりも低く制限して圧縮比制御を行うなどのフェイルセーフを実施する。
一方、制御軸回転角センサ150の出力が安定せず、第2ストッパ58の当接に向けた駆動を開始してからの経過時間が設定時間を超えた場合、第2制御軸14とリンクアーム13との圧入部分における空転が発生している可能性がある。
【0038】
そこで、電子制御装置140は、ステップS409で、第2ストッパ58の当接に向けた駆動を開始してからの経過時間が設定時間を超えたと判断すると、ステップS410に進み、可変圧縮比機構100のアクチュエータ130の異常判定(第2制御軸14とリンクアーム13との圧入部分における空転発生判定)を行って、係る診断履歴を保存する。
ステップS410でアクチュエータ130の異常(空転)を判定した場合、第2制御軸14の回転駆動による圧縮比制御は不能であるので、電子制御装置140は、可変圧縮比機構100の制御を停止して圧縮比をデフォルトに保持し、圧縮比の制御不能状態を運転者に警告したりする。
【0039】
なお、
図4のフローチャートに示したスリップ診断において、電子制御装置140は、第1ストッパ57の当接状態から第2ストッパ58の当接状態に推移させるが、逆に、第2ストッパ58の当接状態から第1ストッパ57の当接状態に推移させ、第1ストッパ57の当接状態におけるセンサ出力に基づきアクチュエータ130の異常判定を行うことができる。
ここで、第1ストッパ57の当接状態におけるセンサ出力に基づきアクチュエータ130の異常判定を行うか、第2ストッパ58の当接状態におけるセンサ出力に基づきアクチュエータ130の異常判定を行うかは、各ストッパ57,58の剛性に基づき選定することができる。
つまり、両ストッパ57,58のうち、剛性がより高い方のストッパの当接状態におけるセンサ出力に基づきアクチュエータ130の異常判定を実施する構成とすれば、より高いトルクで第2制御軸14を駆動でき、スリップをより誘発させ易くなって、スリップの検知性が向上する。
【0040】
また、スリップ診断において、動作開始位置から一旦第1ストッパ57の当接状態にし、その後、第2ストッパ58の当接状態に推移させる場合、動作開始位置が第2ストッパ58に近いと、第2制御軸14の回転量が多くなって時間を要する場合がある。
そこで、電子制御装置140は、動作開始位置から第1ストッパ57の当接位置までが所定角度以上であるときに、動作開始位置から直接第2ストッパ58の当接状態に推移させるようにして、診断に要する時間を短く抑えることができる。
【0041】
図6のフローチャートは、動作開始位置に応じて駆動方向を切り換える構成としたスリップ診断の手順を示す。
電子制御装置140は、ステップS501でストッパ位置の学習済であるか否かを、ステップS401と同様に判断し、ストッパ位置学習済であれば、ステップS502に進む。
【0042】
電子制御装置140は、ステップS502で、ステップS402と同様に、スリップ診断の実施条件が成立しているか否かを判断し、診断条件が成立していれば、ステップS503に進む。
電子制御装置140は、ステップS503で、スリップ診断開始時点における制御軸回転角センサ150の出力(第2制御軸14の回転角度)と、第1ストッパ57の当接状態での出力と第2ストッパ58の当接状態での出力との中間値である閾値SL2(
図7参照)とを比較する。
【0043】
そして、スリップ診断開始時点における制御軸回転角センサ150の出力(動作開始位置)が閾値SL2よりも低圧縮比側である場合、換言すれば、現在の第2制御軸14の角度位置が閾値SL2よりも第1ストッパ57に近い場合、電子制御装置140は、ステップS504に進み、第2制御軸14の低圧縮比方向の回転を規制する第1ストッパ57を当接状態にするために、圧縮比が低下する方向に第2制御軸14を回転駆動する(
図5参照)。
以下、電子制御装置140は、ステップS505−ステップS514に進み、前述のステップS404−413と同様な診断処理を実施する。つまり、電子制御装置140は、現在の第2制御軸14の角度位置(動作開始位置)が閾値SL2よりも第1ストッパ57に近い場合、第1ストッパ57の当接状態にした後、第2ストッパ58の当接状態に推移させ、第2ストッパ58の当接状態におけるセンサ出力に基づきアクチュエータ130の異常診断(スリップ診断)を実施する。
【0044】
一方、現在の第2制御軸14の角度位置(動作開始位置)が閾値SL2に一致するか又は閾値SL2よりも第2ストッパ58に近い場合、電子制御装置140は、ステップS504及びステップS505を迂回してステップS506に進む。
そして、ステップS560で電子制御装置140は、第2制御軸14の高圧縮比方向の回転を規制する第2ストッパ58を当接状態にするために、スリップ診断の開始時点の角度位置から圧縮比が増加する方向に第2制御軸14を回転駆動する(
図7参照)。
【0045】
つまり、動作開始位置が第2ストッパ58に近い場合に、第1ストッパ57に当接させてから第2ストッパ58に当接させるようにすると、動作開始から第2ストッパ58の当接状態になるまでに時間を要し、スリップ診断に要する時間が長くなるので、中間位置から直接第2ストッパ58の当接状態に推移させる。
これにより、診断時間に制約がある場合であっても、制約される時間内で診断処理を終えることができる。
【0046】
上記実施形態で説明した各技術的思想は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合わせて使用することができる。
また、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【0047】
電子制御装置140は、例えば、第2ストッパ58に押し当てる動作を所定回数繰り返しても、制御軸回転角センサ150の出力が正常範囲内であるときに正常判定する構成とすることができる。
また、制御軸回転角センサ150に代えて、モータ回転角センサ22aの出力に基づき第2制御軸14の回転角度を検出して圧縮比を調整する場合にも、電子制御装置140は、ストッパ位置のセンサ出力が学習済であることを条件として、スリップ診断を実施することができる。