(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持流体ノズルと前記トッププレートは隙間を空けて重なるように配置され、前記隙間を介して前記トッププレートの他方主面側に前記保持流体を通し、前記トッププレートに設けられた複数の穴を介して前記トッププレートの前記他方主面側から前記一方主面側に保持流体を通す、請求項1に記載の半導体製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<前提技術>
本発明の実施形態を説明する前に、前提技術に係る半導体製造装置について説明する。
図16は、前提技術に係る半導体製造装置のステージ構造を示す概略図である。
図17は、前提技術に係る半導体製造装置のスクラバーノズル2がウエハ端部1a以外にある場合を示す概略図である。
図18は、前提技術に係る半導体製造装置のスクラバーノズル2がウエハ端部1a近傍にある場合を示す概略図である。説明を簡単にするために、ウエハ1とチャックピン51bとの関係を示す部分に限定して説明する。
【0013】
図16と
図17に示すように、前提技術に係る半導体製造装置は、チャックステージ51およびスクラバーノズル2を備えている。
【0014】
チャックステージ51は円状であり、チャックステージ51の周縁部にチャックピンベース51a、チャックピン51b、および支持ピン51cが複数配置されている。ウエハ1は、支持ピン51cで重力に対して支持されており、チャックピン51bで径方向に挟持されている。この状態でチャックステージ51ごとウエハ1を回転させながら、ウエハ1に処理を施す。
【0015】
図17に示すように、ウエハ1が薄く加工されたものである場合、スクラバーノズル2から処理面上に吐出されるスクラブ流体3の圧力でウエハ1が容易に反ってしまい、処理面の対面側がチャックステージ51に接触し、接触によって破損するリスクがある。そのため、スクラブ流体3を異物除去に十分な圧力まで上げられず、十分な異物除去性が得られないという問題があった。
【0016】
特に、
図18に示すように、スクラバーノズル2がウエハ端部1aの近傍にある場合には、スクラブ流体3の圧力で支持ピン51cを起点にウエハ1の割れが発生しやすい。そのため、スクラバーノズル2をウエハ端部1aまで寄せられず、ウエハ端部1aに残留した異物が後の工程で問題になることもあった。以下で説明する本発明の実施形態はこのような課題を解決するものである。
【0017】
<実施の形態1>
本発明の実施の形態1について、図面を用いて以下に説明する。最初に
図1〜
図3を用いて、実施の形態1に係る半導体製造装置の特徴を簡単に説明する。
図1(a)は、実施の形態1に係る半導体製造装置のスクラブ流体3を示す概略図であり、
図1(b)は、スクラブ流体3の圧力分布を示す概略図である。
図2は、ウエハ保持圧力6とウエハ保持引力7を示す概略図である。
図3は、スクラブ範囲内外でのウエハ保持圧力6a,6b,6cとウエハ保持引力7a,7bを示す概略図である。
【0018】
実施の形態1に係る半導体製造装置は、ウエハ1の対面側に保持流体5を吐出する保持流体ノズル4aと、保持流体ノズル4aを周縁部よりも中心側に配置し、一方主面である平坦面をウエハ1の対面に向けたトッププレート4bとを有する保持ステージ4とを備えている。保持流体ノズル4aから吐出された保持流体5をウエハ1の対面とトッププレート4bの平坦面との間の領域に通すことで、領域に保持力を発生させる。保持力により、スクラバーノズル2から吐出されるスクラブ流体3によりウエハ1の処理面に掛かる圧力を対面で保持させる。換言すると、領域は、スクラバーノズル2から吐出されるスクラブ流体3によりウエハ1の処理面における局所的に所定以上の圧力が掛かる範囲に対応する部分を含むものである。
【0019】
ここで、ウエハ1の処理面はウエハ1の上面である。ウエハ1の処理面の対面は、ウエハ1の処理面とは反対側の面であり、具体的にはウエハ1の下面である。
【0020】
保持力は、保持流体5の圧力、および保持流体5の流速によって発生する引力で構成されており、ウエハ1の対面とトッププレート4bの平坦面との間の距離は、圧力と引力とのバランスでほぼ決まっていると考えてよい。圧力と引力は保持流体ノズル4aからの距離によって異なるため、ウエハ1の対面とトッププレート4bの平坦面との間の距離も保持流体ノズル4aからの距離によって異なっていることになる。
【0021】
図1(a),(b)に示すように、スクラバーノズル2から吐出されるスクラブ流体3は、液体、気体、または液体と気体の混合物が考えられる。代表的なものとして、液体は純水、または純水に二酸化炭素を溶解した水、気体は窒素または空気である。液体と気体を混合する手段としては、2流体ノズルを用いて純水または純水に二酸化炭素を溶解した水と、窒素または空気を混合することが一般的である。いずれにおいても、スクラバーノズル2の吐出口が円形の場合、スクラブ流体
3の圧力分布3aは、吐出口の円形の中心から離れるほど圧力が弱くなる。そのため、薄く加工されたウエハ1にダメージを与える所定圧力以上の範囲も吐出口の中心を中心とした円形の範囲となる。以降、スクラバーノズル2として、吐出口が円形である2流体ノズルを例に説明を進める。
【0022】
図2に示すように、保持ステージ4は、保持流体ノズル4aとトッププレート4bから構成されている。保持流体5を供給すると、保持流体5は保持流体ノズル4aを通り、保持流体ノズル4aのトッププレート4bとの接続部に形成された保持流体吐出口4cからウエハ1とトッププレート4bとの間を流れる保持流体5aとなる。保持流体5には供給するための圧力が掛けられており、その圧力がウエハ保持圧力6となり、保持流体5aがウエハ1とトッププレート4bとの間を流れる流速によって発生する引力がウエハ保持引力7となる。保持流体5aが通る面は、ウエハ1では処理面の対面であり、トッププレート4bでは平坦面である。トッププレート4bの上面が平坦面であることにより、ウエハ保持圧力6とウエハ保持引力7の斑が抑制され、ウエハ保持圧力6とウエハ保持引力7で構成されている保持力の斑も抑制される。
【0023】
図3に示すように、薄く加工されたウエハ1上でスクラブ流体3の圧力が掛かる部分では、ウエハ1が反ってウエハ1の処理面の対面とトッププレート4bの平坦面との間の距離が狭くなるが、これにより圧損が高くなり、流体が流れ難くなる。そのため、スクラブ範囲内でのウエハ保持引力7bのように引力が低下すると共にスクラブ範囲内上流側のウエハ保持圧力6bおよびスクラブ中心でのウエハ保持圧力6cのように上流側の流体の圧力が上がり、スクラブ流体
3の圧力分布3aを支えるように作用すると考えられる。なお、
図3において、6aはスクラブ範囲外でのウエハ保持圧力、7aはスクラブ範囲外でのウエハ保持引力である。
【0024】
ウエハ1の処理面の対面とトッププレート4bの平坦面との間で保持力を発生させる領域は、スクラブ流体3によりウエハ1の処理面における局所的に所定以上の圧力が掛かる範囲を含めることで、上記の作用を利用して、スクラブ流体3の圧力によって処理面の対面が対向するチャックステージ等の機構部品に接触しないステージ構造が実現できる。さらに、ウエハ1の処理面の対面とトッププレート4bの平坦面との間の距離が圧力と引力のバランスでほぼ決まっていることを踏まえて、割れの起点となる支持ピンを必要としないチャック構造も実現できることになる。以下、具体的な実施の形態を示す。
【0025】
図4は、実施の形態1に係る半導体製造装置の処理チャンバの一部を示す概略図である。なお、図を見やすくするために、異物除去技術に直接関係しない部分は図から省略しており、説明を簡単にするために、異物除去技術に関係する部分に限定して説明する。
【0026】
図4に示すように、半導体製造装置は、チャックステージ8、スクラバーノズル2、スクラバーノズルスキャン機構11、ステージ回転機構12、保持ステージ41、保持流体供給配管13、操作用PC101、および制御用PLC102を備えている。または、半導体製造装置は、保持ステージ41の代わりに保持ステージ42を備えている。ここでは、半導体
製造装置が保持ステージ41を備える場合について説明する。
【0027】
チャックステージ8は、平面視にて円状であり、ウエハ1を端部で挟持する。具体的には、チャックステージ8の周縁部には、所定の間隔を空けて複数のチャックピンベース8aが配置され、複数のチャックピンベース8aに複数のチャックピン8bがそれぞれ立設されている。各チャックピン8bは外周側と内周側との間で移動可能である。複数のチャックピン8bを外周側に移動させて開くことで、ウエハ1をチャックステージ8に載置することが可能である。また、複数のチャックピン8bを内周側に移動させて閉じることで、ウエハ1の端部が複数のチャックピン8bで挟持される。
【0028】
スクラバーノズル2は、チャックステージ8の上側に配置され、ウエハ1の処理面にスクラブ流体3を吐出する。スクラバーノズルスキャン機構11は、スクラバーノズル2が接続され、スクラバーノズル2をウエハ1の処理面上でスキャンさせる。ステージ回転機構12は、チャックステージ8の下側に配置され、チャックステージ8を回転させる。
【0029】
保持ステージ41は、ウエハ1の処理面の対面側に保持流体5を吐出する保持流体ノズル41a(
図6参照)と、保持流体ノズル41aを周縁部よりも中心側に配置し、平坦面をウエハ1の対面に向けたトッププレート41bとを備えている。最も簡単には、トッププレート41bは保持流体ノズル41aを中心に配置している。保持ステージ41はチャックステージ8に組み込まれ、保持流体ノズル41aは回転せず、トッププレート41bはチャックステージ8と共に回転するようになっている。
【0030】
操作用PC101は、タッチパネルディスプレイ等のMM−IF(man machine interface)101aと、PC(personal computer)101bで構成されている。制御用PLC102は、PLC(programmable logic controller)102a、保持流体供給配管13用のガス供給バルブ102bと水供給バルブ102c、スクラバーノズル2用のガス供給バルブ102dと水供給バルブ102e、ステージ回転機構12用のモータードライバー102f、およびスクラバーノズルスキャン機構11用のモータードライバー102gで構成されている。
【0031】
作業者は、ウエハ1を収納したキャリア(図示せず)をロードポート(図示せず)にセットし、MM−IF101a上で予めPC101bに登録されているレシピを選択して処理開始を入力する。PC101bは、レシピに設定されている処理パラメータをPLC102aに引き渡してPLC102aの一連の制御動作を起動する。
【0032】
PLC102aは、搬送ロボット(図示せず)と処理チャンバ等を制御している。PLC102aは、搬送ロボットによってキャリア内のウエハ実装スロットのマッピング、およびキャリアと処理チャンバ間のウエハ1の搬送を行い、処理チャンバでウエハ1へのスクラブ処理を行う。
【0033】
本実施の形態1で行われるスクラブ処理とは、ウエハ1を回転させながらスクラバーノズル2をウエハ1の中心を通る円弧上または直線上にスキャンさせて、ウエハ1の処理面に万遍なくスクラブ流体3を当てることにより、ウエハ1の処理面に付着している異物を除去する処理である。そのため、
図4に示すように、スクラバーノズル2と、スクラバーノズル2をウエハ1の処理面上でスキャンさせるスクラバーノズルスキャン機構11と、ウエハ1を端部で挟持するチャックステージ8と、チャックステージ8を回転させるステージ回転機構12が必要である。
【0034】
次に、処理チャンバでウエハ1にスクラブ処理を施す工程について説明する。
図5は、処理チャンバでウエハ1にスクラブ処理を施す工程を示すフローチャートである。
【0035】
PLC102aは、ステップS201では、キャリアに収納されているウエハ1を搬送ロボットのロボットハンドでキャリアから払い出し、ステップS202では、チャックピンベース8aを回転させてチャックピン8bを開く。
【0036】
PLC102aは、ステップS203では、ロボットハンドをチャックステージ8上の受渡し位置に位置付け、ステップS204では、ガス供給バルブ102bを開いて保持ステージ41(または保持ステージ42)上に保持流体5を供給する。
【0037】
PLC102aは、ステップS205では、ロボットハンドから保持ステージ41(または保持ステージ42)にウエハ1を渡し、ステップS206では、チャックピンベース8aを回転させてチャックピン8bを閉じる。これにより、保持ステージ41(または保持ステージ42)上にウエハ1が載置される。
【0038】
PLC102aは、ステップS207では、ロボットハンドを処理チャンバ外に移動させ、ステップS208では、スクラブ処理時の飛沫回収のためのカップ(図示せず)をチャックステージ8の周辺まで上げる。
【0039】
PLC102aは、ステップS209では、ステージ回転機構12によりチャックステージ8ごとウエハ1を回転させ、ガス供給バルブ102dと水供給バルブ102eを開いてスクラバーノズル2からスクラブ流体3を吐出させ、スクラバーノズルスキャン機構11によりスクラバーノズル2をスキャンさせてウエハ1の処理面をスクラブ処理する。また、必要に応じて水供給バルブ102cを開いてガスである保持流体5に水を混合させることにより処理面の対面も同時にスクラブ処理する。
【0040】
PLC102aは、ステップS210では、ガス供給バルブ102d、水供給バルブ102e、および水供給バルブ102cを閉じてスクラブ流体3と保持流体5に混合した水を停止し、スクラバーノズル2を待機位置に戻してウエハ1を回転乾燥させる。
【0041】
PLC102aは、ステップS211では、カップを下げ、ステップS212では、ロボットハンドを受渡し位置に位置付け、ステップS213では、チャックピンベース8aを回転させてチャックピン8bを開く。
【0042】
PLC102aは、ステップS214では、保持ステージ41または保持ステージ42からロボットハンドにウエハ1を渡し、ステップS215では、ガス供給バルブ102bを閉じて保持流体5の供給を停止させる。
【0043】
PLC102aは、ステップS216では、ロボットハンドでウエハ1をキャリアに収納し、ステップS217では、チャックピンベース8aを回転させてチャックピン8bを閉じる。
【0044】
なお、説明を簡単にするために、各ステップを大枠で順番に記述したが、実際には細かい動作ステップが併行して進行しており、動作に関わる様々な入出力が作動していることは言うまでもない。
【0045】
また、ステップS209では、スクラバーノズルスキャン動作11aとステージ回転動作12aにより、ウエハ1の処理面に万遍なくスクラブ流体3が当たり、ウエハ1の処理面に付着している異物を除去できる。また、異物の除去性は落ちるものの、必要に応じてガスである保持流体5に水を混合させることにより処理面の対面にも微細化した水滴が当たり同時にスクラブ処理を行うことができる。
【0046】
次に、チャックステージ8に保持ステージ41を組み込んだステージ構造と、チャックステージ8に保持ステージ42を組み込んだステージ構造について説明する。
図6は、チャックステージ8に保持ステージ41を組み込んだステージ構造を示す概略図である。
【0047】
図6に示すように、保持ステージ41は、保持流体ノズル41a、トッププレート41b、および保持流体吐出口41cを備えている。保持流体ノズル41aとトッププレート41bは重なるように配置され、トッププレート41bのうち保持流体ノズル41aと重なる部分が開口された構造になっている。
【0048】
図4と
図6に示すように、保持ステージ41の構成要素である保持流体ノズル41aは、チャックステージ8と分離してチャックステージ8の中心に位置付けられている。保持流体ノズル41aは、ステージ回転機構12のモーターの中空シャフト(図示せず)を貫通している保持流体供給配管13と接続され、回転しない。また、保持ステージ41の構成要素であるトッププレート41bは、チャックステージ8に固定されており、チャックステージ8と共に回転する。
【0049】
保持流体ノズル41aは回転しないため、保持流体ノズル41aの範囲に被っているウエハ1との擦れを避けるためにウエハ1の処理面の対面との距離をトッププレート41bよりも多く設けておく必要があり、保持力は小さくなってしまう。つまり、中心部の保持力を高めるために、トッププレート41bの範囲を保持流体ノズル41aの範囲のギリギリまで寄せておくことが重要となる。
【0050】
図7は、
図6に示した範囲を平面的に見た概略図である。
図7において、ウエハ1内部でのスクラブ流体圧力分布3b、およびウエハ端部1aでのスクラブ流体圧力分布3cが示されている。
【0051】
本実施の形態1でのトッププレート41bの外形は円状であり、チャックピンベース8aの上面側でチャックピン8bがウエハ端部1aを挟持している位置の近くまで張り出すように、ウエハ1の外径からトッププレート41bの外径を引いた値は4mm以下である。つまり、ウエハ1とトッププレート41bの中心が合っていれば、ノッチおよびオリフラの部分を除き、ウエハ端部1aから最大2mm内側までの範囲にトッププレート41bの端部があることになる。これにより、スクラバーノズル2をデバイス取得有効領域の一般的な最外位置(約3mm)にスキャンさせた場合でも、十分に保持できる状態にしている。
【0052】
ところで、ウエハ保持圧力6は、保持流体吐出口41cから遠ざかるにつれて保持流体5に掛かる圧損が低下していくために小さくなり、ウエハ保持引力7は、保持流体吐出口41cから遠ざかるにつれて保持流体5aの流速が低下していくために小さくなり、ウエハ保持圧力6とウエハ保持引力7で構成されている保持力は、保持流体吐出口41cから遠ざかるにつれて低下することになる。
【0053】
本実施の形態1での実績として、スクラバーノズル2が液体と気体を混合吐出する2流体ノズルで、保持流体ノズル41aが気体を吐出するノズルの場合、6インチで100μm程度に薄く加工したウエハ1では、スクラバーノズル2から吐出される気体の流量が50L/min以上、150L/min以下の範囲において、保持流体ノズル41aから吐出される気体の保持流体5の流量が、スクラバーノズル2から吐出される気体の流量の半分以上であれば、ウエハ1の処理面の対面がトッププレート41bに接触することはなかった。
【0054】
ウエハ1の大径化を考えた場合、ウエハ端部1aでの保持力を確保する為に、単純に保持流体5の供給圧力を上げて保持流体5aの流量を拡大することが考えられる。しかし、保持ステージ41のように保持流体吐出口41cが保持流体ノズル41aの中心1箇所のみの場合、中心にガスの吐出が集中するため、特に薄く加工されたウエハ1へのダメージが懸念される。
【0055】
そこで、保持流体吐出口41cの周辺部分での保持力の低下を補うように適所に保持流体5aの吐出口を分散させて保持流体5aの流量を増やすことが有効となる。
【0056】
図8は、チャックステージ8に保持ステージ42を組み込んだステージ構造を示す概略図である。
【0057】
図8に示すように、保持ステージ42は、保持流体ノズル42a、トッププレート42b、保持流体吐出口42c、トッププレート中央吐出口42d、およびトッププレート周辺吐出口42eを備えている。
【0058】
保持流体ノズル42aとトッププレート42bは隙間を空けて重なるように配置され、隙間を介してトッププレート42bの他方主面側である平坦面の対面側に保持流体5を通し、トッププレート42bに設けられた複数の穴であるトッププレート中央吐出口42dおよびトッププレート周辺吐出口42eを介してトッププレート42bの対面側から平坦面側に保持流体5を通す。
【0059】
保持ステージ42の構成要素である保持流体ノズル42aは、チャックステージ8と分離してチャックステージ8の中心に位置付けられている。保持流体ノズル42aは、ステージ回転機構12のモーターの中空シャフト(図示せず)を貫通している保持流体供給配管13と接続され、回転しない。また、保持ステージ42の構成要素であるトッププレート42bは、チャックステージ8に固定されており、チャックステージ8と共に回転する。
【0060】
図9は、
図8に示した範囲を平面的に見た概略図である。本実施の形態1でのトッププレート42bの外形は円状であり、チャックピンベース8aの上面側でチャックピン8bがウエハ端部1aを挟持している位置の近くまで張り出すように、ウエハ1の外径からトッププレート42bの外径を引いた値は4mm以下である。つまり、ウエハ1とトッププレート42bの中心が合っていれば、ノッチおよびオリフラの部分を除き、ウエハ端部1aから最大2mm内側までの範囲にトッププレート42bの端部があることになり、スクラバーノズル2をデバイス取得有効領域の一般的な最外位置(約3mm)にスキャンさせた場合でも、十分に保持できる状態にしている。
【0061】
保持流体5は、トッププレート中央吐出口42dを通ってウエハ1とトッププレート42bの間を流れる保持流体5aになる分の他に、トッププレート周辺吐出口42eを通って途中から保持流体5aに合流する分があり、合流する毎に保持流体5aが増えていく。
【0062】
なお、トッププレート周辺吐出口42eを通って途中から保持流体5aの合流する分は、保持流体5aの流れを大きく妨げない流量にしなければならないため、小さなトッププレート周辺吐出口42eを多数分散させて配置することが望ましい。保持ステージ41よりも保持ステージ42の方が、周辺部分での保持流体5aの流量を増やせるため、保持流体5aの圧力、および保持流体5aの流速によって発生する引力の低下を抑制して保持流体吐出口42cの周辺部分での保持力の低下を補うことができるようになる。
【0063】
<効果>
以上のように、実施の形態1に係る半導体製造装置では、保持流体ノズル41a,42aから吐出された保持流体5をウエハ1の処理面の対面とトッププレート41b,42bの平坦面との間の領域に通すことで、領域に保持力を発生させ、保持力により、スクラバーノズル2から吐出されるスクラブ流体3によりウエハ1の処理面に掛かる圧力を対面で保持させる。したがって、薄く加工されたウエハ1であっても、ウエハ全面に渡って十分な異物除去性が得られる。
【0064】
保持力は、保持流体5aの圧力、および保持流体5aの流速によって発生する引力で構成されているため、ウエハ1を安定して保持できる。
【0065】
保持ステージ41,42はチャックステージ8に組み込まれ、保持流体ノズル41a,42aは回転せず、トッププレート41b,42bはチャックステージ8と共に回転する。したがって、チャックステージ8と保持ステージ41,42を一体化することで、構造がシンプルになる。
【0066】
トッププレート41b,42bの外形は円状であり、ウエハ1の外径からトッププレート41b,42bの外径を引いた値は4mm以下である。したがって、トッププレート41b,42bの外形がウエハ1のほぼ全体を網羅することで、保持ステージ41,42のスキャン機能が不要になる。
【0067】
保持流体ノズル41aとトッププレート41bは重なるように配置され、トッププレート41bのうち保持流体ノズル41aと重なる部分が開口された。したがって、固定された保持流体ノズル41aと重なる部分以外の領域を全て回転するトッププレート41bの範囲とすることで、トッププレート41bの中心部の保持力を高めることができる。
【0068】
保持流体ノズル42aとトッププレート42bは隙間を空けて重なるように配置され、隙間を介してトッププレート42bの平坦面の対面側に保持流体5を通し、トッププレート42bに設けられたトッププレート中央吐出口42dおよびトッププレート周辺吐出口42eを介してトッププレート42bの平坦面の対面側から平坦面側に保持流体5を通す。したがって、周辺部分での保持流体5aの流量を増やすことにより、ウエハ1の大径化に対応することができる。
【0069】
スクラバーノズル2は、液体と気体を混合吐出する2流体ノズルであり、保持流体ノズル41a,42aは、気体のみの吐出、または気体と液体の混合吐出が可能なノズルであり、ウエハ1の処理面と対面の両面にスクラブ処理が施される。したがって、ウエハ1の処理面と対面の両面に付着した異物を効果的に除去することができる。
【0070】
スクラバーノズル2は、液体と気体を混合吐出する2流体ノズルであり、保持流体ノズル41aは、気体のみの吐出、または気体と液体の混合吐出が可能ノズルであり、保持流体ノズル41aから吐出される気体の流量は、スクラバーノズル2から吐出される気体の流量の半分以上である。したがって、ウエハ1の処理面の対面がトッププレート41bに接触することを抑制できる。
【0071】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2に係る半導体製造装置について説明する。
図10は、実施の形態2に係る半導体製造装置の処理チャンバの一部を示す概略図である。なお、実施の形態2において、実施の形態1で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。なお、図を見やすくするために、異物除去技術に直接関係しない部分は図から省略しており、説明を簡単にするために、異物除去技術に関係する部分に限定して説明する。
【0072】
図10に示すように、半導体製造装置は、チャックステージ9、スクラバーノズル2、スクラバーノズルスキャン機構14、保持ステージスキャン機構15、ステージ回転機構16、保持ステージ43、操作用PC103、および制御用PLC104を備えている。
【0073】
チャックステージ9は、平面視にて円環状であり、ウエハ1を端部で挟持する。具体的には、チャックステージ9の周縁部には、所定の間隔を空けて複数のチャックピンベース9aが配置され、複数のチャックピンベース9aに複数のチャックピン9bがそれぞれ設けられている。各チャックピン9bは外周側と内周側との間で移動可能である。複数のチャックピン9bを外周側に移動させて開くことで、ウエハ1をチャックステージ9に載置することが可能である。また、複数のチャックピン9bを内周側に移動させて閉じることで、ウエハ1の端部が複数のチャックピン9bで挟持される。
【0074】
スクラバーノズルスキャン機構14は、スクラバーノズル2が接続され、スクラバーノズル2をウエハ1の処理面上でスキャンさせる。ステージ回転機構16は、チャックステージ9の外周側に配置され、チャックステージ9を回転させる。
【0075】
保持ステージ43は、ウエハ1の処理面の対面側に保持流体5を吐出する保持流体ノズル43a(
図12参照)と、保持流体ノズル43aを周縁部よりも中心側に配置し、平坦面をウエハ1の対面に向けたトッププレート43bとを備えている。最も簡単には、トッププレート43bは保持流体ノズル43aを中心に配置している。トッププレート43bの外形は円状であり、チャックステージ9は保持ステージ43の外周側に配置されている。保持ステージスキャン機構15は、保持ステージ43が接続され、保持ステージ43をスキャンさせる。
【0076】
操作用PC103は、タッチパネルディスプレイ等のMM−IF(man machine interface)103aと、PC(personal computer)103bで構成されている。制御用PLC104は、PLC(programmable logic controller)104a、保持ステージ43用のガス供給バルブ104bと水供給バルブ104c、スクラバーノズル2用のガス供給バルブ104dと水供給バルブ104e、ステージ回転機構16用のモータードライバー104f、スクラバーノズルスキャン機構14用のモータードライバー104g、および保持ステージスキャン機構15用のモータードライバー104hで構成されている。
【0077】
作業者は、ウエハ1を収納したキャリア(図示せず)をロードポート(図示せず)にセットし、MM−IF103a上で予めPC103bに登録されているレシピを選択して処理開始を入力する。PC103bは、レシピに設定されている処理パラメータをPLC104aに引き渡してPLC104aの一連の制御動作を起動する。
【0078】
PLC104aは、搬送ロボット(図示せず)と処理チャンバ等を制御しており、搬送ロボットでキャリア内のウエハ実装スロットのマッピング、およびキャリアと処理チャンバ間のウエハ1の搬送を行い、処理チャンバでウエハ1へのスクラブ処理を行う。
【0079】
本実施の形態2で行われるスクラブ処理とは、ウエハ1を回転させながらスクラバーノズル2をウエハ1の中心を通る円弧上または直線上にスキャンさせて、ウエハ1の処理面に万遍なくスクラブ流体3を当てることにより、ウエハ1の処理面に付着している異物を除去する処理である。そのため、
図10に示すように、スクラバーノズル2と、スクラバーノズル2をウエハ1の処理面上でスキャンさせるスクラバーノズルスキャン機構14と、ウエハ1を端部で挟持するチャックステージ9と、チャックステージ9を回転させるステージ回転機構16が必要である。
【0080】
次に、処理チャンバでウエハ1にスクラブ処理を施す工程について説明する。
図11は、処理チャンバでウエハ1にスクラブ処理を施す工程を示すフローチャートである。
【0081】
PLC104aは、ステップS251では、キャリアに収納されているウエハ1を搬送ロボットのロボットハンドでキャリアから払い出し、ステップS252では、チャックピンベース9aを回転させてチャックピン9bを開く。
【0082】
PLC104aは、ステップS253では、ロボットハンドをチャックステージ9上の受渡し位置に位置付け、ステップS254では、ガス供給バルブ104bを開いて保持ステージ43上に保持流体5を供給する。
【0083】
PLC104aは、ステップS255では、ロボットハンドから保持ステージ43とチャックピン9bにウエハ1を渡し、ステップS256では、チャックピンベース9aを回転させてチャックピン9bを閉じる。これにより、保持ステージ43上にウエハ1が載置される。
【0084】
PLC104aは、ステップS257では、ロボットハンドを処理チャンバ外に移動させ、ステップS258では、スクラブ処理時の飛沫回収のためのカップ(図示せず)をチャックステージ9の周辺まで上げる。
【0085】
PLC104aは、ステップS259では、ステージ回転機構16によりチャックステージ9ごとウエハ1を回転させ、ガス供給バルブ104dと水供給バルブ104eを開いてスクラバーノズル2からスクラブ流体3を吐出させ、スクラバーノズルスキャン機構14によりスクラバーノズル2をスキャンさせてウエハ1の処理面をスクラブ処理する。このとき、保持ステージ43が保持力を発生させる領域が、スクラバーノズル2から吐出されるスクラブ流体3によりウエハ1の処理面における局所的に所定以上の圧力が掛かる範囲に対応する部分を含むように、保持ステージスキャン機構15により保持ステージ43をスキャンさせる。また、必要に応じて水供給バルブ104cを開いてガスである保持流体5に水を混合させることによりウエハ1の処理面の対面にも同時にスクラブ処理する。
【0086】
PLC104aは、ステップS260では、ガス供給バルブ104d、水供給バルブ104e、および水供給バルブ104cを閉じてスクラブ流体3と保持流体5に混合した水を停止し、スクラバーノズル2を待機位置に戻してウエハ1を回転乾燥させる。
【0087】
PLC104aは、ステップS261では、カップを下げ、ステップS262では、ロボットハンドを受渡し位置に位置付け、ステップS263では、チャックピンベース9aを回転させてチャックピン9bを開く。
【0088】
PLC104aは、ステップS264では、保持ステージ43とチャックピン9bからロボットハンドにウエハ1を渡し、ステップS265では、ガス供給バルブ104bを閉じて保持流体5を停止させる。
【0089】
PLC104aは、ステップS266では、ロボットハンドでウエハ1をキャリアに収納し、ステップS267では、チャックピンベース9aを回転させてチャックピン9bを閉じる。
【0090】
なお、説明を簡単にするために、各ステップを大枠で順番に記述したが、実際には細かい動作ステップが併行して進行しており、動作に関わる様々な入出力が作動していることは言うまでもない。
【0091】
なお、ステップS259では、スクラバーノズルスキャン動作14aとステージ回転動作16aにより、ウエハ1の処理面に万遍なくスクラブ流体3が当たり、ウエハ1の処理面に付着している異物を除去できる。また、異物の除去性は落ちるものの、必要に応じてガスである保持流体5に水を混合させることによりウエハ1の処理面の対面にも微細化した水滴が当たり同時にスクラブ処理を行うことができる。
【0092】
図12は、チャックステージ9と保持ステージ43のステージ構造を示す概略図である。
図12に示すように、保持ステージ43は、保持流体ノズル43a、トッププレート43b、および保持流体吐出口43cを備えている。
【0093】
チャックピン9bはウエハ端部1aを広く下から支えるつばが有る構造をしており、ロボットハンドとの受渡し時にウエハ1の反りおよび脱落を防止している。保持ステージ43の構成要素である保持流体ノズル43aとトッププレート43bは一体化されており、保持ステージ43はチャックステージ9から独立している。すなわち、保持ステージ43はチャックステージ9に組み込まれていない。
【0094】
図13は、
図12に示した範囲を平面的に見た概略図である。
図13に示すように、本実施の形態
2でのトッププレート43bの外形は円状であり、トッププレート43bの平坦面として、スクラバーノズル2から吐出されるスクラブ流体3によりウエハ1の処理面における局所的に所定以上の圧力が掛かる範囲に対応する部分よりも十分に広い面積が確保されている。
【0095】
保持ステージスキャン機構15は、スクラバーノズルスキャン動作14aに合わせて、保持ステージ43が保持力を発生させる領域が、スクラバーノズル2から吐出されるスクラブ流体3によりウエハ1の処理面における局所的に所定以上の圧力が掛かる範囲に対応する部分を含むように、保持ステージスキャン動作15aを行う。この場合、保持流体5aがウエハ1の処理面側に吹き上げてスクラブ流体3に影響を与えないように、保持流体ノズル43aの保持流体吐出口43cはウエハ1の範囲を超えないようにしなければならない。
【0096】
図14は、スクラバーノズルスキャン動作14aと保持ステージスキャン動作15aの1実施例を示す概略図である。
図15は、スクラバーノズルスキャン動作14aと保持ステージスキャン動作15aの他の実施例を示す概略図である。
図14と
図15において、1bはウエハ中心部の位置、1cはウエハ端部の位置、14bはスクラバーノズルスキャン動作14aの軌跡、15bと15cは保持ステージスキャン動作15aの軌跡、20は時間軸である。
【0097】
図14に示すように、スクラバーノズル2がウエハ中心部の位置1b側からウエハ端部の位置1c側に移動する場合、はじめはスクラバーノズル2と保持ステージ43が中心を揃えて軌跡14bで移動していくが、途中から保持ステージ43が軌跡15bに変わり、それ以上ウエハ1の端部側には移動しない。スクラバーノズル2がウエハ端部の位置1c側からウエハ中心部の位置1b側に移動する場合は、その逆の動作をする。
【0098】
図15に示すように、ウエハ中心部の位置1bでスクラバーノズル2と保持ステージ43が中心を揃えているが、保持ステージ43がウエハ端部の位置1c側に移動するにつれてスクラバーノズル2から離れていき、スクラバーノズル2がウエハ端部の位置1cに来ても保持ステージ43は途中までしか移動せず、それ以上ウエハ1の端部側には移動しない。保持ステージ43がウエハ端部の位置1c側からウエハ中心部の位置1bに移動する場合は、その逆の動作をする。
【0099】
図14と
図15に示したどちらの動作であっても、保持ステージ43が保持力を発生させる領域が、スクラバーノズル2から吐出されるスクラブ流体3によりウエハ1の処理面における局所的に所定以上の圧力が掛かる範囲に対応する部分を含むように動作している。
【0100】
<効果>
以上のように、実施の形態2に係る半導体製造装置は、保持ステージ43をスキャンさせる保持ステージスキャン機構15をさらに備え、保持ステージスキャン機構15は、スクラバーノズル2のスキャンに合わせて保持ステージ43をスキャンさせる際に、保持流体ノズル43aの保持流体吐出口43cがウエハ1の外形の範囲を超えないようにスキャンさせる。したがって、実施の形態1の場合と比べて構造が複雑になるものの、トッププレート43bを小さくできるため、トッププレート43bの中心とその周辺での保持力の差を小さくすることができる。
【0101】
チャックステージ9の外形は円環状であり、トッププレート43bの外形は円状であり、チャックステージ9は保持ステージ43の外周側に配置されたため、スクラバーノズル2のスキャンに合わせて保持ステージ43をスムーズにスキャンさせることができる。
【0102】
実施の形態1,2のいずれにおいても、スクラバーノズル2から吐出されるスクラブ流体3によりウエハ1の処理面における局所的に所定以上の圧力が掛かる範囲では、ウエハの処理面の対面に保持力が掛かっているため機構部品に接触しないステージ構造となっている。さらに、割れの起点となる支持ピンも使用していないため、薄く加工されたウエハであっても、ウエハ全面に渡って十分な異物除去性が得られる半導体製造装置および半導体製造方法を実現することができる。
【0103】
なお、実施の形態1,2の大きな違いは、トッププレートの大きさと保持ステージをスキャンするか否かであるが、実施の形態1は、従来から行われているステージ回転の中心に回転軸を設けた構造のものであり、保持ステージのスキャン機構も不要で、構造がシンプルである。一方で、実施の形態2は、構造が複雑になるものの、トッププレートを小さくできるため、トッププレートの中心と周辺での保持力の差を小さくでき、トッププレートの周辺での保持力を同じとした場合は、トッププレートが小さいほど保持流体の流量を少なくすることができる。
【0104】
また、実施の形態1,2の良いとこ取りで、実施の形態2から、保持ステージのスキャン機構を無くし、保持ステージの保持流体吐出口をスクラバーノズルのスキャン動作の軌道上に複数配置し、トッププレートの形状を複数の保持流体吐出口の周辺を網羅するように構成すること等も考えられることであり、本発明の実施の形態に含まれるものである。
【0105】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。