(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979937
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ハイサイド駆動回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/687 20060101AFI20211202BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20211202BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20211202BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
H03K17/687 A
H01L27/04 B
H02M1/08 A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-218752(P2018-218752)
(22)【出願日】2018年11月22日
(65)【公開番号】特開2020-88546(P2020-88546A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2020年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】外薗 和也
(72)【発明者】
【氏名】王 東
(72)【発明者】
【氏名】福留 淳
【審査官】
竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−133938(JP,A)
【文献】
特開2015−095807(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/098909(WO,A1)
【文献】
特開2007−201595(JP,A)
【文献】
特開2005−167901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00−17/70
H03K 19/0175−19/0185
H01L 21/822
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電位を電源電位とするハイサイド駆動回路であって、
第2電位を基準電位として動作し、前記第1電位から、前記第1電位より低く前記第2電位より高い第3電位を生成する定電圧回路と、
前記第3電位を基準電位として動作する論理回路と、
前記論理回路の出力信号を受け、前記出力信号の基準電位を前記第3電位から前記第2電位にシフトするレベルシフト回路と、
前記レベルシフト回路によりシフトされた前記第2電位を基準電位とし、前記論理回路の出力信号によってスイッチング素子を駆動する駆動回路と、
を備える、
ハイサイド駆動回路。
【請求項2】
前記論理回路は低耐圧素子で構成される、
請求項1に記載のハイサイド駆動回路。
【請求項3】
前記定電圧回路は、
カソードが前記第1電位に接続されたツェナーダイオードと、
前記ツェナーダイオードのアノードに接続され、前記ツェナーダイオードに電流を供給するバイアス回路と、を備える、
請求項1または2に記載のハイサイド駆動回路。
【請求項4】
入力信号をローサイドからハイサイドにレベルシフトして前記論理回路に入力する高圧レベルシフト回路をさらに備え、
前記高圧レベルシフト回路は、
前記入力信号がゲートに入力される第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子のドレインにドレインが接続され、前記第1電位にソースが接続される第2スイッチング素子と、
前記第2スイッチング素子のドレインにカソードが接続され、前記第2電位にアノードが接続されるダイオードと、を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載のハイサイド駆動回路。
【請求項5】
入力信号をローサイドからハイサイドにレベルシフトして前記論理回路に入力する高圧レベルシフト回路をさらに備え、
前記高圧レベルシフト回路は、
前記入力信号がゲートに入力される第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子のドレインにドレインが接続され、前記第1電位にソースが接続される第2スイッチング素子と、
前記第2スイッチング素子のドレインにアノードが接続され、前記第2電位にカソードが接続されるツェナーダイオードと、を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載のハイサイド駆動回路。
【請求項6】
前記第2スイッチング素子は低耐圧素子である、
請求項5に記載のハイサイド駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイサイド駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な集積回路は、耐圧が8V程度の低耐圧MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)と耐圧が24V程度の中耐圧MOSFETとで構成されている。耐圧が大きくなるほど素子単体の面積は大きくなってしまうため、中耐圧程度の耐圧が不要な論理回路などには、低耐圧MOSFETを用いる方がチップ面積の観点で有利である。従って、ローサイド駆動回路では低耐圧MOSFETの耐圧程度の定電圧を生成し、この定電圧を回路の電源電位とすることで低耐圧MOSFETを使用している。
【0003】
また、特許文献1ではハイサイド内に特殊な分離構造を有することで、ハイサイド回路内にVB電位よりも低いVL電位を電源電位とする半導体領域を形成し、低耐圧MOSFETを使用可能とする手法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/001926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自己分離型のHVICでは、一般的にp型基板の表面層に設けられるn型半導体領域との間で高電位の分離が形成されており、n型半導体領域は高電位側回路の電源電位と接続される。従って、このような分離構造を持つHVICでは回路の電源電位を下げることができないため、低耐圧MOSFETで構成可能な回路であっても中耐圧素子を用いて構成する必要があり、チップ面積が大きくなってしまう。
【0006】
特許文献1では、この課題に対して、特殊な分離構造を有する手法を開示しているが、特殊な分離構造である分チップ面積が大きくなってしまう。本発明はこの問題に鑑み、ハイサイド駆動回路のチップ面積を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のハイサイド駆動回路は、第1電位を電源電位とするハイサイド駆動回路であって、第2電位を基準電位として動作し、第1電位から、第1電位より低く第2電位より高い第3電位を生成する定電圧回路と、第3電位を基準電位として動作する論理回路と、論理回路の出力信号を受け、出力信号の基準電位を第3電位から第2電位にシフトするレベルシフト回路と、レベルシフト回路によりシフトされた第2電位を基準電位とし、論理回路の出力信号によってスイッチング素子を駆動する駆動回路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハイサイド駆動回路は、論理回路の基準電位を、定電圧生成回路が第1電位から作成した第3電位とする。これにより、特殊な分離構造を採用することなく、論理回路を低耐圧素子で構成することができる。したがって、ハイサイド駆動回路のチップ面積を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1の駆動回路のブロック図である。
【
図2】実施の形態1の高圧レベルシフト回路の回路図である。
【
図4】実施の形態1のレベルシフト回路の回路図である。
【
図5】実施の形態2の高圧レベルシフト回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<A.実施の形態1>
図1は実施の形態1の駆動回路101のブロック図を示している。駆動回路101は、ローサイド制御回路201とハイサイド駆動回路401とを備えている。ハイサイド駆動回路401は、高圧レベルシフト回路301、定電圧回路501、論理回路601、レベルシフト回路701および駆動回路801を備えている。高圧レベルシフト回路301、定電圧回路501、論理回路601、レベルシフト回路701および駆動回路801は第1電位であるVBを電源電位とする。高圧レベルシフト回路301、定電圧回路501、および駆動回路801は、第2電位であるVSを基準電位とする。論理回路601は、定電圧回路501が生成するHVREGを基準電位とする。また、レベルシフト回路701は、VSを第1の基準電位とし、HVREGを第2の基準電位とする。駆動回路101では、定電圧回路501で生成される第3電位であるHVREGが論理回路601の基準電位となるため、論理回路601を低耐圧MOSFETにより構成することができる。
【0011】
ハイサイド駆動回路401の電源電位VBと基準電位VSの間には、コンデンサ66が接続されている。コンデンサ66は、ローサイド制御回路201の電源電位VCCとハイサイド駆動回路401の電源電位VBとの間に接続されたダイオード67および抵抗68と共にブートストラップ回路を構成し、ハイサイド駆動回路401を駆動するフローティング電源として働く。駆動回路801は、スイッチング対象のIGBT62のゲート端子に接続される。IGBT62のコレクタ−エミッタ間にはダイオード63が接続されている。IGBT62のエミッタには、IGBT64のコレクタが接続されている。IGBT64のコレクタ−エミッタ間にはダイオード65が接続されている。また、IGBT62のエミッタには駆動回路101のVS端子が接続されている。
【0012】
ローサイド制御回路201には直流電源V1が接続されている。ローサイド制御回路201の電源電位はVCCであり、基準電位はGNDである。ローサイド制御回路201は高圧レベルシフト回路301に接続されている。
【0013】
図2は高圧レベルシフト回路301の回路構成を示している。高圧レベルシフト回路301は、高耐圧のN型MOSFET90(以下、NMOS90とも称する)、バイアス回路21、ダイオード11、P型MOSFET52,53(以下、PMOS52,53とも称する)、抵抗71、バッファ81を備えている。NMOS90のゲートにはローサイド制御回路201からの信号が入力され、この信号によりNMOS90はスイッチングする。NMOS90を第1スイッチング素子とも称する。NMOS90のソースには、基準電位GNDとの間にバイアス回路21が接続されている。NMOS90のドレインには、電源電位VBとの間にPMOS52,53からなるカレントミラー回路が接続されている。PMOS52のドレインとPMOS53のゲートがNMOS90のドレインに接続されている。カレントミラー回路の2次側であるPMOS53のドレインには、抵抗71とバッファ81からなる電流電圧変換回路が接続されている。
【0014】
ローサイド制御回路201の出力信号により高耐圧のNMOS90のスイッチングが制御される。NMOS90がオンのとき、バイアス回路21により生成される電流がPMOS52のソース−ドレイン間を流れる。これにより、カレントミラー回路の2次側であるPMOS53のソース−ドレイン間にもPMOS52のソース−ドレイン間と同様の電流が流れる。PMOS52のドレイン電流が抵抗71に流れて、抵抗71の両端に電圧が発生する。この電圧がバッファ81を介して論理回路601に入力される。このように、高圧レベルシフト回路301では、NMOS90を介して供給される電流をハイサイドにて電圧に変換することで、ローサイドの信号をハイサイドにレベルシフトしている。
【0015】
PMOS52のドレインと基準電位VSとの間にダイオード11が接続されることが望ましい。PMOS52を第2スイッチング素子とも称する。PMOS52のドレイン電位は電源電位VBからPMOS52のドレイン−ソース間電圧分だけ降下した電位である。とはいえ、基準電位VSおよび電源電位VBが急峻に変動する際には、PMOS52のドレイン電位が電源電位VBの変動に追従できず、ドレイン−ソース間電圧が大きくなってしまう。そして、ドレイン−ソース間電圧がPMOS52の耐圧を超える電圧となると、PMOS52が破壊してしまう。しかし、PMOS52のドレインと基準電位VSとの間にダイオード11が挿入されることで、PMOS52のドレイン電位が基準電位VSよりも低い電位に下がることが抑制されるため、PMOS52の破壊が抑制される。なお、上記の理由によりPMOS52,53は中耐圧素子にて構成する必要がある。
【0016】
図3は定電圧回路501の回路構成を示している。定電圧回路501は、電源電位VBを基準としてHVREGを生成する。定電圧回路501は、ツェナーダイオード10、バイアス回路20および増幅器30を備えている。ツェナーダイオード10のカソードは電源電位VBに接続され、ツェナーダイオード10のアノードと基準電位VSとの間にはバイアス回路20が接続される。バイアス回路20から安定した電流が供給されることにより、ツェナーダイオード10の動作が安定する。
図3に示すように、ツェナーダイオード10の生成電圧は増幅器30で増幅されることが望ましい。これにより、論理回路601などの負荷によるHVREGの変動が抑制される。
【0017】
図4はレベルシフト回路701の回路構成を示している。レベルシフト回路701は、インバータ40、PMOS50,51、NMOS60,61、抵抗70、バッファ80を備えている。PMOS50とNMOS60はトーテムポール接続され、PMOS51とNMOS61はトーテムポール接続されている。PMOS50,51のソースは電源電位VBに接続されている。NMOS60,61のソースは基準電位VSに接続されている。NMOS60,61のドレインはそれぞれPMOS50,51のドレインに接続されている。NMOS60,61のゲートは互いのドレインに接続されている。NMOS61のドレインと基準電位VSとの間には抵抗70が接続されている。また、NMOS60のドレインはバッファ80の入力端子と接続される。バッファ80はVBを電源電位とし、VSを基準電位としている。バッファ80の出力はレベルシフト回路701の出力であり、駆動回路801に入力される。
【0018】
PMOS50,51のゲートには基準電位をHVREGとする信号が入力される。PMOS51には、PMOS50に入力される信号がインバータ40を介して反転した信号が入力される。
【0019】
例えば、PMOS50にハイの信号が入力されるとき、PMOS51にはローの信号が入力される。このとき、ローの信号の電位はHVREGであるが、PMOS51がオン状態となる電位よりは十分に低く、PMOS51はオン状態となる。また、PMOS50にはローの信号が入力されているため、PMOS50はオフ状態となる。PMOS50がオフ状態かつPMOS51がオン状態となることで、NMOS60はオン状態、NMOS61はオフ状態となる。PMOS51がオン状態かつNMOS61がオフ状態であるため、バッファ80の出力電位はハイとなる。このとき、バッファ80から出力されるハイ電位はVB電位となる。
【0020】
また、PMOS50にローの信号が入力されるとき、PMOS51にはハイの信号が入力される。このとき、PMOS50はオン状態となり、PMOS51はオフ状態となる。これにより、NMOS60はオフ状態、NMOS61はオン状態となる。PMOS51がオフ状態でかつNMOS61がオン状態であるため、バッファ80の出力電位はローとなる。このとき、バッファ80から出力されるロー電位はVS電位となる。以上の動作により、レベルシフト回路701において、信号の基準電位がHVREGからVSにレベルシフトする。
【0021】
以上に説明したように、実施の形態1のハイサイド駆動回路401は、第1電位であるVBを電源電位とするハイサイド駆動回路であって、第2電位であるVSを基準電位として動作し、VBから、VBより低くVSより高い第3電位であるHVREGを生成する定電圧回路501と、HVREGを基準電位として動作する論理回路601と、論理回路601の出力信号を受け、出力信号の基準電位をHVREGからVSにシフトするレベルシフト回路701と、レベルシフト回路801によりシフトされた第2電位であるVSを基準電位とし、論理回路601の出力信号によってスイッチング素子であるIGBT62を駆動する駆動回路801を備える。このように、論理回路601はHVREGを基準電位とし、VBを電源電位として動作するため、低耐圧素子で構成されることが可能となる。これにより、ハイサイド駆動回路401のチップ面積を小さくすることができる。
【0022】
ハイサイド駆動回路401の定電圧回路501は、カソードがVBに接続されたツェナーダイオード10と、ツェナーダイオード10のアノードに接続され、ツェナーダイオード10に電流を供給するバイアス回路20と、を備える。バイアス回路20により安定した電流がツェナーダイオード10に供給されることで、定電圧回路501が作成する電位HVREGが安定する。
【0023】
実施の形態1のハイサイド駆動回路401は、入力信号をローサイドからハイサイドにレベルシフトして論理回路に入力する高圧レベルシフト回路301を備える。高圧レベルシフト回路301は、入力信号がゲートに入力される第1スイッチング素子であるNMOS90と、NMOS90のドレインにドレインが接続され、VBにソースが接続される第2スイッチング素子であるPMOS52と、PMOS52のドレインにカソードが接続され、VSにアノードが接続されるダイオード11と、を備える。これにより、PMOS52のドレイン電位が基準電位VSよりも低い電位に下がることが抑制され、PMOS52の破壊が抑制される。
【0024】
<B.実施の形態2>
実施の形態2の駆動回路は、
図1に示す駆動回路101において、高圧レベルシフト回路301を高圧レベルシフト回路302に置き換えたものである。
図5は実施の形態2の高圧レベルシフト回路302の回路図である。高圧レベルシフト回路302は、
図2に示した実施の形態1の高圧レベルシフト回路301の構成において、ダイオード11の代わりにツェナーダイオード12を備えたものである。ツェナーダイオード12のカソードがPMOS52のドレインに接続され、アノードが電源電位VBに接続される。このような構成により、電源電位VBが変動する際のPMOS52のドレイン電位を、電源電位VBからツェナーダイオード12の降伏電圧分低い電位にクランプすることが可能である。これにより、PMOS52,53を低耐圧素子にて構成することが可能となり、高圧レベルシフト回路302のチップ面積を小さくすることができる。
【0025】
実施の形態2のハイサイド駆動回路は、入力信号をローサイドからハイサイドにレベルシフトして論理回路に入力する高圧レベルシフト回路302を備える。高圧レベルシフト回路302は、入力信号がゲートに入力される第1スイッチング素子であるNMOS90と、NMOS90のドレインにドレインが接続され、VBにソースが接続される第2スイッチング素子であるPMOS52と、PMOS52のドレインにアノードが接続され、VSにカソードが接続されるツェナーダイオード12と、を備える。このような構成により、電源電位VBが変動する際のPMOS52のドレイン電位を、電源電位VBからツェナーダイオード12の降伏電圧分低い電位にクランプすることが可能である。これにより、PMOS52,53を低耐圧素子にて構成することが可能となり、高圧レベルシフト回路302のチップ面積を小さくすることができる。
【0026】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
10,12 ツェナーダイオード、11,63,65,67 ダイオード、20,21 バイアス回路、30 増幅器、40 インバータ、50,51,52,53 P型MOSFET、60,61,90 N型MOSFET、62,64 IGBT、66 コンデンサ、68,70,71 抵抗、80,81 バッファ、101,801 駆動回路、201 ローサイド制御回路、301,302 高圧レベルシフト回路、401 ハイサイド駆動回路、501 定電圧回路、601 論理回路、701 レベルシフト回路。