特許第6979940号(P6979940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979940粗さのある表面による核酸の迅速な単離のための方法および試験キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979940
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】粗さのある表面による核酸の迅速な単離のための方法および試験キット
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20211202BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C12N15/10 110Z
   B01D15/00 M
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-506477(P2018-506477)
(86)(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公表番号】特表2018-520696(P2018-520696A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】EP2016054178
(87)【国際公開番号】WO2016169677
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2019年2月25日
(31)【優先権主張番号】102015207481.1
(32)【優先日】2015年4月23日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102015211393.0
(32)【優先日】2015年6月19日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102015211394.9
(32)【優先日】2015年6月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517368349
【氏名又は名称】エイ・ジェイ イヌスクリーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AJ Innuscreen GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ティモ ヒレブラント
(72)【発明者】
【氏名】トアステン シュトロー
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0069555(US,A1)
【文献】 特表2008−529509(JP,A)
【文献】 特表2004−513634(JP,A)
【文献】 国際公開第01/062976(WO,A1)
【文献】 特開2002−212198(JP,A)
【文献】 特開2003−204799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を含有する水性試料から核酸を単離するための方法であって、遊離の核酸または溶解によって遊離された核酸を含有する水溶液を、該水溶液の極性を低下させる前にまたはその後に、粗さのある表面または構造化された表面を有する固相と接触させることで、核酸を固相へと沈着させ、引き続きこの水溶液から固相と一緒に取り出す方法であり、
固相として、粗面化されたピペットチップが使用される方法。
【請求項2】
核酸を含有する水性試料から核酸を単離するための方法であって、遊離の核酸または溶解によって遊離された核酸を含有する水溶液を、該水溶液の極性を低下させる前にまたはその後に、粗さのある表面または構造化された表面を有する固相と接触させることで、核酸を固相へと沈着させ、引き続きこの水溶液から固相と一緒に取り出す方法であり、
固相として、粗面化されたプラスチックコームが使用される方法。
【請求項3】
核酸を含有する水性試料から核酸を単離するための方法であって、遊離の核酸または溶解によって遊離された核酸を含有する水溶液を、該水溶液の極性を低下させる前にまたはその後に、粗さのある表面または構造化された表面を有する固相と接触させることで、核酸を固相へと沈着させ、引き続きこの水溶液から固相と一緒に取り出す方法であり、
固相として、コームに嵌められた粗面化されたリングが使用される方法。
【請求項4】
前記核酸は、固相へと同時に結合される核酸であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液の極性を低下させるために、有機溶剤が使用されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶剤は、5容量%から90容量%の間の濃度で使用されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶液は、
a)塩、および/または
b)少なくとも1種の界面活性剤、および/または
c)アミノアルコールまたはpH値の調整のための物質
をさらに含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
a)前記塩が、1mMから5Mの間の濃度で存在すること、
b)前記界面活性剤が、0.1容量%から30容量%の間の濃度で存在すること、
c)TRISが、1mMから2Mの間の濃度で存在すること
を特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液は、さらなる添加剤ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
粗さのある表面または構造化された表面は、平滑でない金属表面、プラスチック表面もしくはゴム表面であるか、または磁性粒子であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
平滑でないプラスチック表面は、3Dプリントによるか、またはプラスチックの粗面化によって作製されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
粗さのある複合材料が固相として使用されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ネジのねじ山、金属スポンジまたは粒状物、穿孔材料または二次元もしくは三次元の網目構造が、構造化された表面を有する固相として働くことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記固相は、水溶液内で動かすことができることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水溶液の極性を低下させるための少なくとも1種の物質と、粗さのある表面または構造化された表面を有する核酸の結合のための少なくとも1種の固相と、溶出バッファーとを含み、固相として、粗面化されたピペットチップ、粗面化されたプラスチックコームまたはコームに嵌められた粗面化されたリングが使用されている、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法における核酸を含有する水性試料から核酸を単離するための試験キット。
【請求項16】
粗さのある表面または構造化された表面を有する、粗面化されたピペットチップ、粗面化されたプラスチックコームまたはコームに嵌められた粗面化されたリングの、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法における核酸を含有する試料からの核酸の単離のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、核酸を含有する非常に様々な出発材料から核酸を単離するための、単離されるべき核酸の非常に高い品質を保証するだけでなく、その単離が極めて高い核酸収率を可能にする、全く新しい、汎用的で、大幅に単純化された、極めて迅速な方法である。該方法は、研究所において現場条件下で手動式で実施することができるだけでなく、完全に自動化された形式で実施することもできる。該方法は、核酸の平滑でない表面への結合を基礎としている。
【0002】
古典的な条件下では、細胞および組織からのDNAの単離は、核酸を含有する出発材料を強力に変性し還元する条件下で、部分的にタンパク質分解酵素を使用して可溶化させ、出てきた核酸フラクションをフェノール/クロロホルム抽出ステップを介して精製し、核酸を透析またはエタノール沈殿によって水相から取得することによって行われる(Sambrook,J.,Fritsch,E.F.およびManiatis,T.,1989,CSH,“Molecular Cloning”)。
【0003】
核酸を細胞から、特に組織から単離するためのこれらの「古典的な方法」は、非常に時間がかかるものであり(一部では48時間より長い)、かなりの装置上のコストが必要となり、さらにまた現場条件下で実現することもできない。さらに、そのような方法は、僅かではない規模で使用されるフェノールおよびクロロホルム等の化学薬品に基づき健康を脅かすものである。
【0004】
核酸の単離のための次世代の方法は、VogelsteinおよびGillespie(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1979,76,615−619)によって開発され初めて記載されたアガロースゲルからのDNA断片の分取的および分析的な精製のための方法を基礎としている。該方法は、単離すべきDNAバンドを含むアガロースをカオトロピック塩(NaI)の飽和溶液中で溶解させることと、DNAをガラス粒子に結合させることを組み合わせている。ガラス粒子上に固定されたDNAは、引き続き、洗浄溶液(20mMのTris塩酸[pH7.2];200mMのNaCl;2mMのEDTA;50%(容量/容量)のエタノール)で洗浄され、次いで担体粒子から引き離される。この方法は、今日まで一連の改変を経ており、現時点までに様々な起源由来の核酸の抽出および精製の様々な方法のために使用され、最終的には、核酸の手動式の単離と自動化された単離を問わないほぼ全ての市販のキットのための基礎となっている。さらに、VogelsteinおよびGillespieによって初めて公表された、場合によりさらなる利点を持つ核酸の単離の基本原理に関連する多くの特許および公開公報が存在する。これらの別形は、種々な無機担体材料が使用されることにも、核酸の結合のために使用されるバッファーの種類にも関係している。それらの例は、とりわけ、担体材料として微粉砕されたガラス粉末(BIO 101、カリフォルニア州ラホヤ)、珪藻土(Sigma社)またはシリカゲルもしくはシリカ懸濁液またはガラス繊維フィルタまたは鉱物粘土(独国特許出願公開第4139664号明細書(DE4139664A1)、米国特許第5,234,809号明細書(US5,234,809)、国際公開第95/34569号パンフレット(WO−A95/34569)、独国特許第4321904号明細書(DE4321904)、独国特許第20207793号明細書(DE20207793))が使用される、種々のカオトロピック塩の溶液の存在下での無機担体への核酸の結合である。これら全ての刊行物は、核酸を、ガラスまたはケイ素を基礎とする無機担体材料へと、カオトロピック塩溶液の存在下で結合させることを基礎としている。より新しい特許文献においては、核酸を、当業者に公知の使用される無機材料への吸着のために、溶解バッファー/結合バッファー系の成分として、いわゆるアンチカオトロピック塩が非常に効率的かつ効果的に使用することができることが開示されている(欧州特許第1135479号明細書(EP1135479))。
【0005】
まとめると、先行技術は、つまり核酸を無機材料へと、カオトロピック塩もしくはアンチカオトロピック塩を含有するバッファーの存在下で、またはカオトロピック塩およびアンチカオトロピック塩の混合物を含むバッファーの存在下で結合させ、このようにしてさらに単離することもできるという旨の説明をすることができる。この場合に、追加で脂肪族アルコールを結合の媒介のために使用する好ましい別形も存在する。核酸の単離および精製のための全ての慣用の市販製品がこの原理に基づいていることも当業者には公知である。この場合に、使用される無機担体は、緩い充填物の形で、濾過膜の形で、または懸濁液の形でも存在する。自動化された形式の抽出過程の実施のために、しばしば常磁性粒子または磁性粒子が使用される。この粒子は、例えば、磁性コアもしくは常磁性コアを有するケイ酸塩系材料であるが、さもなくばまた表面が核酸の結合のために必要な官能性を有するように表面変性された酸化鉄粒子である。この場合に、核酸の単離のための抽出過程はまた、出発試料を溶解させて核酸を遊離させ、核酸を相応の無機担体材料へと結合させ、結合された核酸を洗浄し、担体材料を乾燥させ、そして最後に結合された核酸を担体材料から溶離させるという原則的に同じスキームに基づいている。これらの方法がその真価を発揮するとはいえ、一連の欠点も存在する。ここで、使用される材料の結合能力は、特に遠心濾過膜が使用される場合には制限される。出発試料に含まれる核酸が多すぎる場合に、しばしば膜が詰まることもある。磁性粒子を使用した自動化されたプロセス過程は、比較的費用がかかり、用途に応じては比較的大きな時間の浪費を要することもある。現場条件下での核酸単離の簡単な実施は挙げられていない。
【0006】
発明の課題
したがって、本発明の課題は、先行技術に記載される技術的解決策の欠点を取り除くことであった。
【0007】
課題の解決
前記課題は、特許請求の範囲の特徴部によって解決された。請求項1によれば、遊離の核酸または溶解によって遊離された核酸を含有する水溶液を、該水溶液の極性を低下させる前にまたはその後に、粗さのある表面または構造化された表面を有する固相と接触させて、核酸を含有する水性試料から核酸を単離する方法であって、核酸を固相へと沈着させ、それとともに固相へと結合させ、引き続き、この水溶液から固相と一緒に取り出す方法が記載される。「水溶液の極性を低下させる前にまたはその後に」という概念は、その水溶液がまずは固相と接触され得、次いで水の極性が低下される可能性と同様に、まず最初に水の極性を低下させてから、固相との接触が行われる可能性も説明している。最初に挙げた方では、水の極性が、一般にアルコールの添加によって低下されたときにはじめて、核酸の固相への沈着が起こる。もう一方の別形では、接触したらすぐに、核酸の固相への沈着が起こる。水不溶性の有機溶剤が使用される場合に、固相上に核酸の沈着が起こるように、その混合物を動かさねばならない。好ましくは、それは、該混合物内で固相を動かすことによって行われる。
【0008】
請求項2〜請求項13は、特許請求の範囲に記載される本発明の好ましい実施形態を示している。また、本発明の主題は、該方法を実施するための試験キットおよびそのための装置である。
【0009】
本発明によれば、核酸の単離のための方法であって、実施が公知の方法よりも明らかに簡単であり、核酸単離を現場条件下でも(かつ熟練者でなくても)実施し得ることを可能にし、実施が、特に自動化された抽出との関連で極めて迅速であり、かつ極めて高い収率の核酸を高品質で単離することを可能にする方法が提供された。
【0010】
本発明は、以下の知見を基礎とするものである。核酸を含有する試料を市販のキット(例えば、innuPREP Blood DNA Kit/IPC16,Analytik Jena AG社;DNeasy Blood & Tissue Kit;Qiagen社)の抽出試薬で処理し、無機担体材料ではなく、粗さのある表面を有する任意のプラスチック材料(例えば、粗面化されたポリプロピレン)が使用され、そしてこの材料が処理中にある試料と接触されるときに、核酸は該プラスチック材料に結合する。
【0011】
概念「粗さのある表面」とは、表面に触れるかまたは表面を見ることによって、この表面が平滑でないと認識できるものと理解されるべきである。しかしながら、この表面は、ある構造(例えば複数の溝)を有する表面であってもよい。この構造によって、該構造自体、つまり複数の溝自体が平滑であり得るとしても、表面の平滑性は相殺される。本発明によれば、そのような表面は、「構造化された表面」と呼ばれる。その表面を見るかまたは触れることによって、該表面が平滑かまたは粗さがあるかを認識可能でない場合に、レーザ光線をこの表面に当てる試験を実施することができる。平滑な表面の場合に、レーザは、表面上で主方向でのみ反射される。粗さのある表面の場合には、あらゆる空間方向に散乱が起こる。そのような1つの試験は、キール大学のウェブサイト(http://www.tf.uni−kiel.de/matwis/amat/semitech_en/kap_3/illustr/oberflaechenstrukture.pdf)の7ページ目に記載されている。
【0012】
後続の洗浄ステップは、既知のアルコール含有の洗浄バッファーを用いて、またはアルコールだけを用いて実施することもでき、同様に、溶出のために既知の低塩バッファーを、または水を使用することもできる。唯一の違いは、無機担体材料ではなく、粗さのあるプラスチック材料が使用されることである。最初の実験後でさえも、それにより全てのプロセスステップを、大幅により簡単かつ迅速に実行し得ることが明らかになった。また、この効果が、使用された全ての粗さのあるプラスチック材料で観察できたことも明らかになる。実施された全ての試験における特徴は、しかしまずは、使用された粗さのあるプラスチック材料が3Dプリンタで作製されたことにあった。それによって、その表面は、平滑でなく、ぎざぎざしており、つまりは粗さがある。それというのも、3Dプリントでは積層形で造形された物体が形成されるからである。この場合に、最初の実験は、自動抽出装置(Thermo Electron社)、いわゆる磁性粒子プロセッサのKingFisher mlを利用して行われた。その装置は、磁性粒子によって核酸を抽出するための装置である。この場合に、該装置は、棒磁石が中に入るプラスチックコームを使用しており、前記棒磁石は、その後にウォークアウェイプロセスで磁性粒子を動かし、標準的抽出に必要とされるバッファーに浸漬する。これらのプラスチックコームは、本発明による方法のためには、本来の目的から外れて使用された。このために、3Dプリンタによって、種々の材料でできたシースをプリントし、それを次いでプラスチックコームに嵌めた。試料としては、それぞれ約1×106個のNIH 3T3細胞を使用した。核酸の単離のために使用される試薬は、この場合に、例えば部分的には、市販の抽出キット(innuPREP Blood DNA Mini Kit/IPC16;Analytik Jena AG社)から採用された。抽出の過程は、以下のワークフローに従った。溶解バッファー(溶解溶液CBV)およびプロテイナーゼKを使用して、細胞を60℃で15分間にわたって溶解させた。溶解の間に、KingFisher mlの反応プラスチック(Reaktionsplastik)を、以下の溶液で予め充填した:
キャビティ1: 400μlのイソプロパノール
キャビティ2: 800μlの洗浄溶液LS(抽出キットから)
キャビティ3: 800μlの80%エタノール
キャビティ4: 800μlの80%エタノール
キャビティ5: 200μlの溶出バッファー(抽出キットから)。
【0013】
溶解が行われた後に、溶解物(400μl)を、キャビティ1中のそこに既に存在するイソプロパノール中に入れ、抽出プロセスを開始させた。このプロセスでは、プラスチックコームは、キャビティ1からキャビティ5まで逐次移動する。この場合に、各々のキャビティにおいて、プラスチックコームのその都度存在するバッファー溶液中への垂直運動が行われる。この場合に、抽出プロセスは、磁性粒子を使用した古典的な核酸単離の原理に基づいている。しかしながら、粒子は使用されない。キャビティ1では、シースが嵌められたプラスチックコーム上へ核酸の結合が行われる。結合された核酸は、逐次、キャビティ2〜4を通じて移動される。ここで洗浄ステップが行われる。その後に引き続き、エタノールの除去のために短時間の乾燥ステップが行われる。最後に、核酸を、キャビティ5においてシースを有するプラスチックコームから引き離す。この場合に、磁性粒子が処理されなかったため、その過程は明らかに簡略化されている。なにしろ抽出のために粒子が使用されなかったので、必要とされる磁性粒子の回収はステップとして省かれる。それによって、その方法は、約15分間で完了した。既に述べたように、使用される全てのプラスチック材料では、市販の抽出用化学薬品が使用されるとともに、標準的な抽出プロトコールを用いて、核酸を、使用されるプラスチック材料への結合を介して単離することができることが明らかになった。これらの知見は、驚くべきことであった。確かに、生体分子は非特異的にプラスチック材料に吸着することが知られているが、それは、前記生体分子が存在する水溶液からであって、それはまた極めて少量であるにすぎない。また、プラスチック材料を核酸の単離のために使用するという記載も存在する。しかしながら、そのことは、プラスチック材料が、化学的にその表面で、ケイ酸塩系材料と同じ官能基(OH基)を有するか、またはプラスチック表面でその他の官能基(COOH基)も合成されるように変性されていることによるものである。そのことは、例えば欧州特許第1135479号明細書(EP1135479)に挙げられている。しかしながら、当業者には、そのような核酸の単離のための剤が、結合能力があまりにも低すぎるため、実際には真価を発揮しないことも知られている。これらの最初の実験後に、プリントされたプラスチックシースを用いて核酸を単離することが可能であることを明らかにすることができた。しかしながら、なぜそれが可能であるのかははっきりしなかった。驚くべきことに、その解釈は、かなり簡単な実験で見出すことができた。改めて、KingFisher mlを使用した。しかし、この試験では、プリントされたプラスチックシースは使用しなかった。磁性粒子処理のために使用される標準的なプラスチックコームを使用した。この場合に、幾つかのプラスチックコームは、そのままで使用し、それ以外のコームは、彫刻機によってその表面を粗面化した。既に記載されたように、細胞からの抽出は、同じ記載された試薬および同じ過程で行った。詳細な結果は、実施例1に記載されている。
【0014】
その実験が印象的に示すことは、未処理のコームには核酸が結合しないことである。それに対して、核酸は、粗面化されたコームには高効率で結合する。それにより、高効率でかつ標準的な抽出試薬を使用して核酸を単離するためには、プラスチック材料の表面を粗面化せねばならないことだけであることを立証することができた。しかしながら、実験的考察は、さらにまた別の興味深い事実を示している。最初の試験において、既に記載されたように、市販のキットの試薬が、核酸の単離のために使用された。核酸を無機固相(例えば、遠心濾過膜または磁性粒子)へと結合させるのではなく、使用される本発明による粗さのある表面による核酸の単離が行われた。この場合に、使用される試薬は、常に、アルコールである結合バッファーと組み合わせた溶解バッファーであった。溶解バッファーは、塩、湿潤剤および分散剤、錯形成剤ならびにその他の成分からの組み合わせであることは知られている。これらのバッファー組成物がアルコールと組み合わされることで、知られている無機材料への核酸の結合が媒介される。また既に、高濃度のカオトロピック塩が、無機材料への核酸の結合を媒介することも非常に長い間知られている。しかしながら、高濃度のカオトロピック塩の水溶液の存在下で、核酸は、無機材料には結合するが、粗面化されたプラスチック表面には結合しないことが明らかになった。これらの考察から、粗さのある表面による核酸の単離についての機構は、今までに知られ、または推測されていた無機材料への核酸の結合の機構とは異なっているはずであるという疑念が生じた。
【0015】
既に挙げられた先行技術から知られているように、古典的な条件下では、細胞および組織からのDNAの単離は、核酸を含有する出発材料を強力に変性し還元する条件下で、部分的にタンパク質分解酵素を使用して可溶化させ、出てきた核酸フラクションをフェノール/クロロホルム抽出ステップで精製し、核酸を透析またはエタノール沈殿によって水相から取得することによって行われた。この関連で、非常に高濃度の高分子DNAの場合にエタノール沈殿後にDNAは「糸状物」として沈殿し、ガラス棒によって試験管から巻取ることができることは当業者に公知である。しかしそのことは、高濃度のDNAの場合で、かつDNAが高分子でもあるという前提のもとに働く。したがって、エタノール沈殿は、大抵は、アルコール添加後に試料を遠心分離し、DNAをペレットとして沈殿させることを基礎としている。DNAの濃度が低い場合には、さらに試料を−20℃で数時間にわたってインキュベートせねばならず、それから核酸の沈殿のために試料を遠心分離することができる。この場合に、遠心分離時間は、さらに大幅に延長せねばならず、数時間を要することがある。そのため、高濃縮された高分子DNAをガラス棒に「巻取る」ことは、一つの特殊な事例に相当する。これは、確かに長い年月にわたり知られているが、自動化することはできない。
【0016】
それに対して、核酸の遠心分離をベースとする沈着は、時間のかかるものであり、同様に自動化することが困難である。この時間の理由から、先行技術は、それどころか印象深いことに、核酸の単離および精製のための技術の進展が、古典的な方法から核酸の無機担体材料への結合に向けて起こったことも記している。これらの技術は、遠心分離または真空によって核酸を含有する試料をフィルタ材料に結合させる形か、または磁気的分離によって核酸を磁性粒子もしくは常磁性粒子に結合させる形に置き換えられる。粗さのある表面への「結合」による核酸の本発明による単離に関しては、この単離は、試料と粗さのある表面とを接触させた後に、試料中に含まれる核酸がその粗さのある表面上に沈着することを基礎とすると思われる。この場合に、それは、例えばアルコールの添加によって環境の極性がより低くなり、それによって核酸の可溶性が低下することによって起こる。驚くべきことに、核酸の粗さのある表面への「沈着」は極めて効率的に働き、したがってまた簡単かつ迅速に、そして自動化された形式で、低濃度の核酸を有する試料を単離することが可能となる。この場合に、遠心分離ステップは必要とされない。
【0017】
したがって、本発明の骨子は、遊離の核酸または溶解により遊離された核酸が水性環境中に存在し、その水性環境の極性が有機物質によって、核酸の可溶性が低下するように調整されており、その後にこの水性環境を粗さのある表面と接触させることで、核酸がその粗さのある表面上で沈着し、引き続き沈着されたDNAをその粗さのある表面から再び引き離して提供することにある。任意に、粗さのある表面上に沈着された核酸を洗浄し、洗浄ステップ後に引き離すこともできる。
【0018】
それにより、本発明は、理想的には既に挙げられた目標設定の変更を可能にする。抽出のために、表面が粗面化されている材料と、単離されるべき核酸が存在する水性環境であって、その条件が有機物質によって、核酸の可溶性が下がって核酸が粗さのある表面に沈着するように調整されている水性環境とが必要とされるにすぎない。この粗さのある表面への沈着は、粗さのある表面を試料と接触させることによるか、または試料を粗さのある表面と接触させることによって行われる。抽出試薬としては、例えば様々な種類の古典的なキット試薬(例えば、溶解バッファー)を使用することができる。核酸の粗さのある表面への沈着のために必要とされる条件は、有機物質の添加によって調整される。同様に、抽出プロトコールは、既知のスキームである溶解−結合−洗浄−溶出に従って行われる。その一方で、洗浄ステップは、省いてもよい。しかし、該方法は、もはや極めて簡単かつ迅速に実施される。該方法は、以下のステップで行うことができる。
【0019】
1. 核酸を含有する試料を溶解させる(または核酸を含有する液体試料を準備する)ステップ。試料の溶解のために、該試料には古典的な溶解バッファーまたは今までに核酸の単離方法から知られていたバッファーが加えられる。これらのバッファーは、カオトロピック塩もしくは非カオトロピック塩またはこれらの2つの群の混合物を含有してよい。これらのバッファーは、キレート形成剤、Tris緩衝液、湿潤剤および分散剤等のようなその他の成分をさらに含有してよい。しかしながら、該方法は、塩を含有せずに、例えば界面活性剤、TrisおよびEDTAのみからなるバッファーを用いても機能する。しかしながら、さらにまた、タンパク質分解酵素さえも使用することができる。
【0020】
2. アルコール性成分およびその他の添加剤を含有する結合バッファーを添加するステップ、またはアルコールだけを添加するステップ、またはアセトンもしくはベンジンを添加するステップ。
【0021】
3. この混合物を、表面が平滑でない材料と接触させるステップ。該表面は、粗さがあってよく、または構造を有してよい。
【0022】
4. 核酸が結合された粗さのある材料もしくは構造を有する材料を混合物から除去するステップ、または該混合物から該材料を除去するステップ。
【0023】
5. 任意に該材料を洗浄するステップ。
【0024】
6. 任意に該材料を乾燥させるステップ。
【0025】
7. 核酸を該材料から溶出バッファー(低塩バッファーまたは水)を用いて引き離すステップ。
【0026】
該方法は、汎用的に使用することが可能であり、自動化された形式でも手動式でも実施することができる。それにより、該方法はまた、理想的には必要なステップが簡単に実施可能であるため、核酸抽出の使用のために利用可能である。使用されるべき本発明による材料は、同様に制限されない。
【0027】
ポリマーおよび、例えば有機成分または金属成分からなる混合物に相当する、いわゆる複合材料を使用することもできる。粗面化された表面または構造を有する表面を準備することだけは必須である。本発明による材料の構造は、同様に制限されない。粗さのある磁性材料の使用も有利である。そのような材料は、粒状物として商品名TECACOPM(登録商標)で知られている。例えば、標準的なピペットチップのその内側を本発明により粗面化させ、該ピペットチップを、核酸の抽出のために手動式でまたは自動化された形式で使用することもできる。そのために、記載された抽出ワークフローに応じて、多重ピペッティング操作ステップを用いることによって抽出プロトコールは逐次実行される。それにより、本発明によって今や核酸の抽出がどのようにして極めて簡単に実施され得るかは当業者には明らかである。本発明は、さらなる大きな利点を示す。生物学的試料が多量の核酸を含有する場合に、本発明による方法および本発明によるプラスチックによって、極めて多量の核酸を抽出することができる。この場合に、その収率は、無機担体材料を使用した公知の抽出法で達成できる収率を何倍も上回る。それにより、該方法はまた、理想的には大量の試料容量の処理のために適している。また、ゲノムDNA、RNAも、プラスミドDNAも単離することができることも明らかになる。本発明による方法は、自動化された方式での抽出方法として、多くの試料を極めて迅速に処理することができる。例えば、本発明による方法によって、KingFisher mlの本来の目的を離れた使用において、15個の試料を15分間で同時に処理することができる。また、この方法は、単離されるべき核酸の量および品質を損なうことなく、さらに短縮することもできる。それは、さらにまた別の自動式ステーションにも転用することができる。例えば、該抽出は、粗面化されたピペットチップ中でも、あらゆる通常の自動ピペッティング装置を用いて実行することができる。それにより、本発明では、核酸の単離および精製のための、公知の抽出法に対するかなり明らかな利点を多数示す全く新しいプラットフォーム技術を提供する。したがってまた、本発明の主題は、粗面化されたピペットチップを含む、核酸の単離のための装置である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】アガロースゲル上でのDNAの検出を示す図である。
図2】アガロースゲル上でのDNAの検出を示す図である。
図3】アガロースゲル上でのDNAの検出を示す図である。
図4】アガロースゲル上でのDNAの検出を示す図である。
図5】アガロースゲル上でのDNAの検出を示す図である。
【0029】
以下で本発明を、実施例をもとにより詳細に説明するつもりである。この場合に、それらの実施例は、本発明をなんら制限するものではない。
【0030】
実施例
実施例1. 市販の抽出用化学薬品を利用して、核酸が粗さのある表面へと結合することの実証
核酸が粗さのある表面に結合し、単離することができることの実証は、以下のように実施した。この場合に、抽出は自動化された形式で実行した。磁性粒子プロセッサ(KingFisher ml;Thermo Electron社)が使用された。該装置は、棒磁石が中に入るプラスチックコームを使用しており、前記棒磁石は、その後にウォークアウェイプロセスで、核酸の単離のために使用される磁性粒子を動かす。これらのプラスチックコームは、本発明による方法のためには、本来の目的から外れて使用されており、それは核酸の結合および引き続いての抽出に用いられるものである。そのプラスチック材料は、ポリプロピレンである。本発明によれば、プラスチックコームは、研磨装置によって粗面化された。同様に、未処理のプラスチックコームも使用した。試料としては、それぞれ約1×106個のNIH 3T3細胞を使用した。核酸の単離のために使用される抽出用化学薬品は、この場合に、部分的には、市販の抽出キットinnuPREP Blood DNA Kit/IPC16X(Analytik Jena AG社)から採用された。溶解バッファー(溶解溶液CBV)およびプロテイナーゼKによって、細胞を60℃で15分間にわたって溶解させた。溶解の間に、KingFisher mlの反応プラスチックを、以下の溶液で充填した:
キャビティ1: 400μlのイソプロパノール
キャビティ2: 800μlの洗浄溶液LS(抽出キットから)
キャビティ3: 800μlの80%エタノール
キャビティ4: 800μlの80%エタノール
キャビティ5: 200μlの溶出バッファー(抽出キットから)。
【0031】
溶解が行われた後に、溶解物(400μl)を、キャビティ1中のそこに既に存在するイソプロパノール中に入れ、抽出過程を開始させた。この過程では、プラスチックコームは、キャビティ1からキャビティ5まで逐次移動する。この場合に、各々のキャビティにおいて、プラスチックコームのその都度存在するバッファー溶液内での垂直運動が行われる。この場合に、抽出プロセスは、磁性粒子を使用した古典的な核酸単離の原理に基づいている。しかしながら、粒子は使用されない。キャビティ1では、そのプラスチックコームへの核酸の結合が行われる。結合された核酸は、逐次、キャビティ2〜4を通じて移動される。ここで洗浄ステップが行われる。その後に引き続き、エタノールの除去のために短時間の乾燥ステップが行われる。最後に、キャビティ5において、該プラスチックコームから核酸を引き離す。既に述べたように、この場合に、表面が粗面化されたプラスチックコームと、本来の未処理のプラスチックコームを使用した。単離された核酸の検出は、分光測光的測定により行われるだけでなく、アガロースゲル上でも行われた。収量の他に、単離された核酸の純度も測定した。
【0032】
分光測光的測定の結果:
【表1】
【0033】
図1は、アガロースゲル上でのDNAの検出を示している。レーン毎に、200μlの全溶出物のうち4μlの核酸を使用した。レーンは、以下の意味を有する:
1. DNAラダー(1bラダー)
2. 未処理のプラスチックコーム
3. 未処理のプラスチックコーム
4. 粗面化されたプラスチックコーム1
5. 粗面化されたプラスチックコーム2
6. 粗面化されたプラスチックコーム3。
【0034】
その結果が印象的に示しているように、核酸(DNAもRNAも)は未処理のコームには結合しない。しかしながら、核酸は、粗面化されたコームに高効率で結合し、引き続き古典的な洗浄バッファーで洗浄でき、最終的に再びコームから引き離すことができる。そのため、そのプロセスは、磁性粒子によるまたは当業者に公知の無機担体材料による核酸の単離の古典的な過程にまさに相当する。しかしながら、そのプロセスは、非常に大幅により迅速かつ簡単に実施される。そのため、この実施例により、プラスチック表面の粗面化だけによって、この材料を、既知の抽出試薬を使用する核酸の抽出のために使用することができることが示された。
【0035】
実施例2. 市販の抽出用化学薬品を利用した、粗さのある表面を有する様々なプラスチック材料の、核酸の抽出のための試験
核酸が様々なプラスチック材料の粗さのある表面に結合し、単離することができることの実証は、以下のように実施した。この場合に、抽出は自動化された形式で実行した。磁性粒子プロセッサKingFisher mlが再び使用された。それらのプラスチックコームは、本発明による方法のためには、ここでも本来の目的から外れて使用された。核酸の結合のための材料としては、実施例1と同様に粗面化されたプラスチックコームを使用した。コントロールとして、未処理のコームを使用した。それ以外の材料の試験のために、3Dプリンタによって様々な材料でできたプラスチックリングを製造し、それらのリングを次いでKingFisher ml機器のコームに嵌めた。これらのリングも、またもや研磨装置で粗面化した。前記の様々な材料は、KingFisher mlのプラスチック(ポリプロピレン)の粗面化されたコームであり、さらに、材料Biofila Linen(TwoBEars社)、つまりリグニンおよび芳香族アルコールでできた錯体ポリマーからなる複合材料、材料アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)でできた材料、材料ポリカーボネート(PC)ならびに材料ポリスチレン(PS)である。この場合に、KingFisher mlのコームには、異なる粗面化がなされた(A型:コームの約3cm、B型:コームの約1cm;C型:コームの先端だけ)。試料としては、それぞれ約1×106個のNIH 3T3細胞を使用した。核酸の単離のために使用される抽出用化学薬品は、ここでも、部分的には、市販の抽出キットinnuPREP Blood DANN Kit/IPC16(Analytik Jena AG社)から採用された。溶解バッファー(溶解溶液CBV)およびプロテイナーゼKを使用して、細胞を60℃で15分間にわたって溶解させた。溶解の間に、KingFisher mlの反応プラスチックを、以下の溶液で充填した:
キャビティ1: 400μlのイソプロパノール
キャビティ2: 800μlの洗浄溶液LS(抽出キットから)
キャビティ3: 800μlの80%エタノール
キャビティ4: 800μlの80%エタノール
キャビティ5: 200μlの溶出バッファー(抽出キットから)。
【0036】
溶解が行われた後に、溶解物(400μl)を、キャビティ1中のそこに既に存在するイソプロパノール中に入れ、抽出プロセスを開始させた。抽出の過程は、実施例1に記載されるようにして行った。プラスチックコーム(未処理または粗面化)ならびにプラスチックリングが嵌められたプラスチックコームを、ここでも、バッファー溶液が供された個々のキャビティを通じて逐次移動させた。最後に、キャビティ5において、該プラスチックコームから核酸を引き離した。単離された核酸の検出は、分光測光的測定により行われるだけでなく、アガロースゲル上でも行われた。濃度および収量の他に、単離された核酸の純度も測定した。
【0037】
分光測光的測定の結果:
【表2】
【0038】
図2は、アガロースゲル上でのDNAの検出を示している。レーン毎に、200μlの全溶出物のうち4μlの核酸を使用した。レーンは、以下のことを示している:
1. DNAラダー(1bラダー)
2. 未処理のプラスチックコーム
3. 粗面化されたプラスチックコームA型
4. 粗面化されたプラスチックコームB型
5. 粗面化されたプラスチックコームC型
6. BioFila製の粗面化されたリングを備えるプラスチックコーム
7. ABS製の粗面化されたリングを備えるプラスチックコーム
8. PLA製の粗面化されたリングを備えるプラスチックコーム
9. PC製の粗面化されたリングを備えるプラスチックコーム
10. PS製の粗面化されたリングを備えるプラスチックコーム。
【0039】
その結果が示しているように、核酸は未処理のコームには結合しない。しかしながら、核酸は、粗面化されたコームおよび粗面化されたリングに高効率で結合する。それにより、結合は、材料とは無関係であることが示される。粗面化された全ての材料は、高効率で核酸を結合する。同様に、粗面化された面(コームの場合)は、核酸の結合のためには、非常に僅かだけでなければならないことが明らかになる。しかしながら、より大きい面は、またさらにより多量の核酸を結合できることも明らかになる(使用されたリングでの面がコームの粗面化された面よりも大きい)。核酸の品質は素晴らしい。
【0040】
実施例3: 核酸の単離のための古典的なキットと、本発明による方法との比較
この実施例により、核酸の単離のための古典的なキットと、本発明による方法との間の比較が行われるべきである。比較キットとして、Qiagen社のキットDNeasy Blood&Tissue Kitを使用した。このキットは、細胞を溶解させ、核酸をシリカ膜を有するスピンフィルタカラムの表面上に結合させ、引き続き結合された核酸を洗浄し、そして最後に核酸をシリカ膜から溶出させることを基礎としている。このキットは、核酸の抽出のための標準的なキットであり、世界的にそのために使用される。手元のマニュアルに従って作業した。
【0041】
本発明による方法のために、ここでもKingFisher mlを使用した。粗さのある表面として、粗面化されたコームと、コームに嵌められた粗面化されたPLA製のリングを使用した。本発明による方法による抽出の過程は、実施例1および実施例2の両方で述べられるように実施した。試料としては、それぞれ約1×106個のNIH 3T3細胞または約2×106個のNIH 3T3細胞を使用した。単離された核酸の検出は、分光測光的測定により行われるだけでなく、アガロースゲル上でも行われた。濃度および収量の他に、単離された核酸の純度も測定した。
【0042】
分光測光的測定の結果:
【表3】
【0043】
図3は、アガロースゲル上でのDNAの検出を示している。レーン毎に、200μlの全溶出物のうち2μlの核酸を使用した。レーンは、以下のことを示している:
1. DNAラダー(1bラダー)
2. Qiagenキット(約1×106個の細胞)
3. Qiagenキット(約2×106個の細胞)
4. 本発明による方法;粗面化されたプラスチックコーム(約1×106個の細胞)
5. 本発明による方法;粗面化されたプラスチックコーム(約2×106個の細胞)
6. 本発明による方法;粗面化されたPLA製のリングを備えるプラスチックコーム(約1×106個の細胞)
7. 本発明による方法;粗面化されたPLA製のリングを備えるプラスチックコーム(約2×106個の細胞)。
【0044】
それらの結果が示しているように、本発明による方法により、古典的なキットを用いたよりも非常に大幅なより多量の核酸を結合し、単離することができる。それにより、結合能力は、市販のシリカ膜法の結合能力よりも明らかに高い。そのことにより、本発明による方法の多大な利点が際立っている。
【0045】
実施例4:血液からの核酸の抽出
この実施例で、本発明による方法によって血液試料からもDNAを単離することができ、この場合に収量が極めて高いことが示される。3mlの全血試料を使用した。赤血球の溶解後に、有核細胞をペレット化し、再び、市販のキットinnuPREP Blood DNA Kit/IPC16(Analytik Jena AG社)からの溶解バッファー(溶解バッファーCBV)を添加後に、プロテイナーゼKを添加して60℃で30分間にわたって溶解させた。300μlの溶出バッファー中で溶出させた。
【0046】
本発明による方法のために、ここでもKingFisher mlを使用した。粗さのある表面として、コームに嵌められた粗面化された材料BioFila製のリングおよびPLA製のリングを使用した。本発明による方法による抽出の過程は、実施例1〜実施例3で述べられるように実施した。
【0047】
単離された核酸の検出は、分光測光的測定によって行われた。
【0048】
分光測光的測定の結果:
【表4】
【0049】
それらの結果が示しているように、本発明による方法では、核酸を全血試料からも単離することが可能であり、ここで、達成可能な収量は極めて高い。
【0050】
実施例5: 改変されたピペットチップを使用した本発明による方法によるNIH 3T3細胞および全血試料からの核酸の抽出
この実施例で、本発明による方法によって、核酸を、改変されたピペットチップを用いて極めて簡単かつ迅速に単離できることが示される。
【0051】
ピペットチップとして、Sarstedt社の1mlピペットチップを使用した。このピペットチップを、約5mmだけ短くした。本発明による方法に相応して、その際、ピペットチップの内側を研磨装置によって粗面化した。
【0052】
1×106個のNIH 3T3細胞および2mlの全血が使用された(赤血球を溶解し、有核細胞をペレット化し、それからこれらの細胞を使用した)。該細胞と同様に、ペレット化された有核血液細胞を、先行する実施例でのように処理し、溶解バッファーCBVで溶解させた。溶解物を2mlの反応容器に移し、そこに400μlのイソプロパノールを加えた。引き続き、粗面化されたピペットチップを使用し、ピペットを用いることによって、出し入れするピペッティング操作をそのバッチに20回行った。その後に、3個のさらなる2ml反応容器を、既知のアルコール性洗浄バッファー(LS、80%エタノール、80%エタノール)で充填した。次いでそのピペットチップを、逐次その都度の洗浄バッファー中に漬けて、出し入れするピペッティング操作をそれぞれ5回行った。最後の洗浄ステップの後に、チップを乾燥させ、それにより残留エタノールを除去した。結合された核酸の溶出は、NIH 3T3細胞については200μlの溶出バッファーを用いて行い、全血試料については400μlの溶出バッファーを用いて行った。これを再び、2mlの反応容器中に入れた。出し入れするピペッティング操作を20回行った。ピペットチップを取り出した後に、単離された核酸が反応容器中に存在する。該方法は、極めて簡単かつ迅速である。
【0053】
単離された核酸の検出は、分光測光的測定によって行われた。
【0054】
分光測光的測定の結果:
【表5】
【0055】
それらの結果が示しているように、本発明による方法で、内側が本発明により粗面化されたピペットチップを使用するだけで、核酸を結合させて単離することが可能である。ここでも、収量は極めて高いことが明らかになる。未処理のピペットチップによって、核酸を単離することはできない。
【0056】
実施例6: 本発明による方法による核酸の抽出のための、種々の溶解バッファーの試験と、種々のアルコール性または非アルコール性の溶液と組み合わせた試験
再び、磁性粒子プロセッサKingFisher mlを使用した。核酸の結合のための材料としては、KingFisher mlのプラスチックのコームに嵌められた、研磨装置で粗面化されたBioFila材料製のリングを用いた。試料としては、それぞれ約1×106個のNIH 3T3細胞を使用した。細胞の溶解は、3種の異なるバッファーで実施した:
1. カオトロピック塩を含有するバッファーA:尿素、SDS、Tris塩酸、EDTA
2. 塩を含有しないバッファーB:SDS、Tris塩酸、EDTA
3. 非カオトロピック塩を含有するバッファーC:塩化ナトリウム、CTAB、Tris塩酸、EDTA。
【0057】
前記細胞を、200μlのH2O中に再懸濁し、そこに、200μlのその都度の溶解バッファーおよび20μlを加え、60℃で15分間にわたり溶解させた。溶解の間に、KingFisher mlの反応プラスチックを、以下の溶液で充填した:
キャビティ1: 400μlのイソプロパノールまたは無水エタノールもしくはアセトン
キャビティ2: 800μlの洗浄溶液LS(抽出キットinnuPREP Blood DNA Kit/IPC16から)
キャビティ3: 800μlの80%エタノール
キャビティ4: 800μlの80%エタノール
キャビティ5: 200μlの溶出バッファー(抽出キットinnuPREP Blood DNA Kit/IPC16から)。
【0058】
溶解が行われた後に、溶解物(400μl)を、キャビティ1中のそこに既に存在する種々の溶液(イソプロパノール;無水エタノールもしくはアセトン)中に入れ、抽出プロセスを開始させた。抽出の過程は、実施例1に記載されるようにして行った。単離された核酸の検出は、分光測光的測定により行われるだけでなく、アガロースゲル上でも行われた。濃度および収量の他に、単離された核酸の純度も測定した。
【0059】
分光測光的測定の結果:
【表6】
【0060】
図4は、アガロースゲル上でのDNAの検出を示している。レーン毎に、200μlの全溶出物のうち4μlの核酸を使用した。レーンは、以下のことを示している:
1. DNAラダー(1bラダー)
2. 溶解バッファーA+イソプロパノール
3. 溶解バッファーA+無水エタノール
4. 溶解バッファーA+アセトン
5. 溶解バッファーB+イソプロパノール
6. 溶解バッファーB+無水エタノール
7. 溶解バッファーB+アセトン
8. 溶解バッファーC+イソプロパノール
9. 溶解バッファーC+無水エタノール
10. 溶解バッファーC+アセトン。
【0061】
それらの結果が示しているように、本発明による方法のために、種々の組成の溶解バッファーだけでなく、この溶解バッファーとアルコールとの組み合わせもしくはまた非アルコールとの組み合わせも使用することができる。この場合に、溶解バッファー中には、カオトロピック塩が含まれるか、塩が含まれないか、しかしまた非カオトロピック塩が含まれていてもよい。
【0062】
実施例7. ゲノムDNAが水溶液から回収されることの実証
血液から単離されたゲノムDNAを含有する水溶液を調製した。300μlのこのDNA溶液に、30μlの3モラーの酢酸ナトリウム溶液および300μlのイソプロパノールを加えた。既に単離された核酸も粗さのある表面に結合し、単離することができることの実証は、以下のように実施した。この場合に、抽出は自動化された形式で実行した。本発明による方法のために、ここでもKingFisher mlを使用した。粗さのある表面として、コームに嵌められた、BioFila材料製のリングを使用した。このリングは、3Dプリント技術によって製造され、表面上に溝構造を有していた。
【0063】
KingFisher mlの反応プラスチックを、以下の溶液で充填した:
キャビティ1: DNA溶液/酢酸ナトリウム/イソプロパノール
キャビティ2: 800μlの80%エタノール
キャビティ3: 空
キャビティ4: 空
キャビティ5: 150μlの水。
【0064】
抽出の過程は、実施例1に記載されるようにして行い、ここで今回は、洗浄ステップを1回だけ行った。単離された核酸の検出は、アガロースゲル上で行われた。
【0065】
図5は、アガロースゲル上でのDNAの検出を示している。レーン毎に、150μlの全溶出物のうち10μlの核酸を使用した。レーンは、以下の意味を有する:
1. DNAラダー(1bラダー)
2. 空
3. 未処理のプラスチックコーム
4. 未処理のプラスチックコーム
5. BioFila製の粗面化されたリングを備えた、溝構造を有するプラスチックコーム
6. BioFila製の粗面化されたリングを備えた、溝構造を有するプラスチックコーム。
【0066】
その結果が印象的に示しているように、核酸は未処理のコームには結合しない。しかしながら、核酸は、溝構造を有するリングに結合する。それにより、既に存在するDNAも水溶液から回収できることが実証された。イソプロパノールおよび酢酸ナトリウムの添加によって、DNAの可溶性が低下したので、そのDNAはプラスチック材料の表面上に結合することができた。
図1
図2
図3
図4
図5