(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979943
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】構造的ろう付けテープ
(51)【国際特許分類】
B23K 35/14 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
B23K35/14 F
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-512872(P2018-512872)
(86)(22)【出願日】2016年8月11日
(65)【公表番号】特表2018-526226(P2018-526226A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】US2016046500
(87)【国際公開番号】WO2017044242
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2018年3月9日
【審判番号】不服2020-2779(P2020-2779/J1)
【審判請求日】2020年2月28日
(31)【優先権主張番号】14/851,134
(32)【優先日】2015年9月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カズィム オズベイサル
【合議体】
【審判長】
平塚 政宏
【審判官】
村川 雄一
【審判官】
井上 猛
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第5952042(US,A)
【文献】
特開2000−153394(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3190985(JP,U)
【文献】
特開昭63−11604(JP,A)
【文献】
特開2014−213371(JP,A)
【文献】
特開2002−160091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K35/00-35/40
B22F7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超合金材料(22)を含有する第一層(14);
ろう付け材料(32)を含有する第二層(16)であり、前記ろう付け材料が、ろう付け合金粉末と超合金粉末の混合物であり、前記ろう付け合金粉末が、ホウ素およびケイ素を含有しておらず、Ni−Cr−Tiからなり;および
ポリテトラフルオロエチレンを含有するフラックス材料を含有する第三層(18)
を有し、
前記第一層の厚さが、0.010インチ〜0.040インチ、前記第二層の厚さが、0.010インチ〜0.040インチであるろう付けテープ(12)。
【請求項2】
第三層が、第一層と第二層の間に配置されている両面接着フルオロポリマーテープ(46)を含む、請求項1記載のろう付けテープ。
【請求項3】
前記両面接着フルオロポリマーテープがポリテトラフルオロエチレンを含有する、請求項2記載のろう付けテープ。
【請求項4】
第一層がさらにポリテトラフルオロエチレン粉末を含有する、請求項1記載のろう付けテープ。
【請求項5】
合金層;
ろう付け材料層であり、前記ろう付け材料層が、ろう付け合金粉末及び超合金粉末を含有し、前記ろう付け材料層が、ホウ素を含有せず、前記ろう付け材料層の化学組成が、Ni−Cr−Tiであり;および
前記合金層と前記ろう付け材料層との間に配置されたポリテトラフルオロエチレン含有フラックス層
を有し、
前記合金層の厚さが、0.010インチ〜0.040インチ、前記ろう付け材料層の厚さが、0.010インチ〜0.040インチであるろう付けテープ。
【請求項6】
前記フラックス層と前記合金層との間および前記フラックス層と前記ろう付け材料層との間に接着剤をさらに有する、請求項5記載のろう付けテープ。
【請求項7】
前記合金層が合金粉末を含有する、請求項5記載のろう付けテープ。
【請求項8】
前記フラックス層と接着剤とを有する両面接着ポリテトラフルオロエチレンテープをさらに有する、請求項5記載のろう付けテープ。
【請求項9】
前記合金層がさらにポリテトラフルオロエチレンを含有する、請求項5記載のろう付けテープ。
【請求項10】
前記合金層が高温ニッケル基超合金を含有する、請求項5記載のろう付けテープ。
【請求項11】
超合金材料粉末を含有する層の上に配置された、ホウ素およびケイ素を含有しないろう付け材料粉末を含有する層を有し、前記ろう付け材料粉末の化学組成が、Ni−Cr−Tiであり、
前記超合金材料粉末を含有する層の厚さが、0.010インチ〜0.040インチ、前記ろう付け材料粉末を含有する層の厚さが、0.010インチ〜0.040インチであるろう付けテープ。
【請求項12】
前記ろう付け材料粉末を含有する層と前記超合金材料粉末を含有する層との間に配置され、かつこれらに付着した両面接着フルオロカーボンポリマーテープをさらに有する、請求項11記載のろう付けテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超合金材料から形成されるガスタービンエンジン要素での使用に適した構造的ろう付けテープに関し、このろう付けテープは、例として、Ni−Cr−TiまたはNi−Zr−TiまたはNi−Cr−Zr−Tiの層を有するテープを含む。
【0002】
背景技術
ろう付け材料は、ニッケル基またはコバルト基の超合金材料を有するガスタービンエンジン要素の製造および修理において使用することができる。例えば、ろう付け箔、スラリーまたはろう付けテープなどを損傷が生じた要素に適用することができる。この組立品を加熱し、それから冷却すると、ろう付けで修理された要素ができあがる。しかしながら、従来のホウ素またはケイ素でのろう付けによる修理は、本来の要素の構造強度に比べて構造強度が比較的低いと知られている。これは、1つとして、ろう付け合金の組成が原因となっている。それに加え、スラリーを使用する場合、このスラリーが非晶質性であるために、修理される領域の寸法の制御が困難である。結果として、当技術分野において改善の余地がある。
【0003】
本発明を、図面を参照して以下の記載で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本明細書で開示される構造的ろう付けテープの例示的実施形態の概略的な断面図を示す。
【
図2】本明細書で開示される構造的ろう付けテープの例示的実施形態の概略的な断面図を示す。
【
図3】本明細書で開示される構造的ろう付けテープの代替的な例示的実施形態の概略的な断面図を示す。
【
図4】本明細書で開示される構造的ろう付けテープの代替的な例示的実施形態の概略的な断面図を示す。
【
図5】本明細書で開示される構造的ろう付けテープの代替的な例示的実施形態の概略的な断面図を示す。
【0005】
発明の詳細な説明
本発明者等は、ニッケル基およびコバルト基の超合金の修理を可能にする組成物を有する構造的ろう付け媒体を開発した。この組成物は、幾つかの実施形態において、ホウ素およびケイ素、ならびにホウ素およびケイ素の弱化作用を有しない。それに加え、この組成物は、ろう付け作業の間に不純物を清浄化するフラックス剤を含有することができ、これにより、不純物およびこれに係る欠点がより少ない修理された部品ができあがる。構造的ろう付け媒体は、ろう付けテープの形を取ることができ、このろう付けテープは、箔より柔軟性があり(これにより要素に対するろう付けテープの一致性をより良好にすることができる)、かつスラリーより粘着性がある(これにより修理の寸法をより良好に制御することが可能になる)。
【0006】
図1は、合金層14、ろう付け材料層16およびその間のフラックス層18を有する構造的ろう付けテープ12として実施される構造的ろう付け媒体10の例示的実施形態の概略的な断面図である。合金層14は、合金20、例えば例示的にはニッケル基またはコバルト基の超合金を含有し、合金20は、合金粉末22として実施され得るか、または当業者に公知のあらゆる適切な形態を取ることができる。また、合金層14は、バインダー24、例えばアクリルバインダーまたはゼラチン系バインダーも含有することができる。
【0007】
構造的ろう付け媒体10をテープとして実施することで、その他の形態、例えばより柔軟性の低い箔で可能なものよりも多様なテープの輪郭加工/造形が可能になる。これは、構造的ろう付けテープ12を、箔では完全に輪郭加工することのできない高度に輪郭加工された要素に適用する場合、有利である。それに加え、超合金を成形して箔にすることは不可能ではないにしても、困難である。よって、合金層14が超合金を含有する例示的実施形態において、テープが解決策をもたらす。
【0008】
ろう付け材料層16は、ろう付け材料粉末32として実施可能な(または当業者に公知のあらゆる適切な形態を取る)ろう付け材料30、および任意でバインダー24、例えばアクリルバインダーまたはゼラチン系バインダーを含有する。また、ろう付け材料層16は、任意でさらなる合金20、例えば合金粉末22も含有することができる。この例示的実施形態において、ろう付け材料層16は、ろう付け材料粉末32と合金粉末22とをバインダー24に入れた混合物34を含有する。これらの実施形態において、ろう付け材料はホウ素を含有せず、例えば、ろう付け材料の化学組成は、Ni−Cr−Ti、Ni−Cr−Ti−ZrまたはNi−Ti−Zrを含む。適切なろう付け材料は、米国特許出願公開第2014/0007988号明細書(US2014/0007988A1)に開示されており、これを、その内容全体について、本明細書に参照により組み込む。これらのろう付け材料を使用する場合、テープ12で作製されたろう付け接合部は、隣接する超合金基材の構造強度に近い構造強度に達し得る。結果として、本明細書で開示される構造的ろう付けテープ12は、単に部品をろう付けにより表面的に修理できるだけでなく、ベースとなる要素に構造的一体性が類似してろう付けされる要素を修理および/または作製することができる。
【0009】
フラックス層18は、フラックス材料40および接着剤42を有する。フラックス材料40は、少なくともフッ化物を含有する。フッ化物は、フルオロカーボンポリマー44の一部であってよく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および/またはポリビニルテトラフルオリドを含むが、これらに限定されることはない。これらのフルオロカーボンポリマー44中のフッ化物は、フラックス剤として作用し、ろう付け作業を清浄化するのに役立つ。ポリテトラフルオロエチレンおよびポリビニルテトラフルオリドがどちらも炭素およびフッ化物を含有する一方で、ポリビニルテトラフルオリドは、さらに水素を含有する。フッ化物と水素とが化合すると、効果的な清浄剤でもあるフッ化水素(フッ化水素酸)が形成される。フラックス層18は、ろう付け温度より低い温度で揮発することができ、それから周囲が冷えると析出し得る。例えば、フラックス層18は、約1200の華氏温度で揮発することができ、最大ろう付け温度は、およそ2200の華氏温度であり得る。フッ化水素酸を析出させるためには、塩基を添加して、例えばろう付け炉の表面または要素自体の上に析出し得るあらゆる酸を中和する必要がある。ポリテトラフルオロエチレンおよびポリビニルテトラフルオリドは、フィブリル化されていないポリマーを有する樹脂として実施することができる。
【0010】
接着剤42は、当業者に公知のあらゆる接着剤、例えば例示的にはアクリルバインダーなどであり得る。例示的実施形態において、フルオロカーボンポリマー44および接着剤42は、両面接着フルオロポリマーテープ46、例えば両面接着Teflon
(登録商標)テープ(PTFEテープ)の形態を取り、これは、CS Hyde Company of Lake Villa、イリノイ(cshyde.com)より購入することができる。
【0011】
任意で、合金層14は、フラックス材料40、例えばフッ化物を含有することができる。例示的実施形態において、フラックス材料40は、フラックス粉末50、例えば例示的にはポリテトラフルオロエチレン粉末またはポリビニルテトラフルオリド粉末などとして実施され得る。ここで示される例示的実施形態において、合金層14は、合金粉末22とフラックス粉末50との混合物52を含有する。
【0012】
代替的な例示的実施形態において、合金層14はバインダー24を含有しない。この例示的実施形態において、合金層14の厚さ54は、合金粉末22または混合物52を接着剤42だけでフラックス層18に固定する場合に達成され得る厚さに制限される。同様に、代替的な例示的実施形態において、ろう付け材料層16はバインダー24を含有しない。この例示的実施形態において、ろう付け材料層16の厚さ56は、ろう付け材料粉末32または混合物34を接着剤42だけでろう付け材料層16に固定する場合に達成され得る厚さに制限される。
【0013】
従来的には、粉末を、およそ0.001インチの厚さおよびそれを上回る厚さの直径で利用することができる。よって、合金層14および/またはろう付け材料層16は、バインダー24が存在せず、かつ粒子が接着剤42に付着している場合、0.001インチもの薄さであってよい。例示的実施形態において、合金層14の厚さ54は、0.010インチ〜0.040インチであり得る。ろう付け材料層16の厚さ56は、0.010インチ〜0.040インチであり得る。フラックス層18の厚さ58は、およそ0.010インチであり得る。幾つかの例では、これらの寸法が有益であると分かったが、必要に応じて、その他の寸法を使用することができる。
【0014】
構造的ろう付けテープ12における合金層14、ろう付け材料層16およびフラックス層18の相対的な位置は、その他の実施形態において相互に交換可能である。例えば、代替的な例示的実施形態において、合金層14およびろう付け材料層16は、互いに隣接していてよく、フラックス層18は、ろう付け材料層16またはフラックス層18のどちらかに隣接していてよい。
図2は、構造的ろう付けテープ12として実施される構造的ろう付け媒体10の代替的な例示的実施形態を示し、ここで合金層14およびろう付け材料層16は、互いに隣接しており、フラックス層18は、合金層14に隣接している。フラックス層が両面接着テープ46を有すると、この場合、両面接着テープ46を、ろう付けされる基材(図示せず)に固定することができる。一変法において、フラックス層18をろう付け材料層16に隣接して配置することができる。各層は1つ以上あってよく、これらの層を任意の順序で実施することができる。
【0015】
図3は、合金層14、ろう付け材料層16、その間のフラックス層18および接着剤42を有する構造的ろう付けテープ12として実施される構造的ろう付け媒体10の代替的な例示的実施形態を示す。この例示的実施形態において、混合物52を有する合金層14の代わりに、合金粉末22の個別層62の上に配置されたフラックス粉末50の個別層60がある。これらの層60、62の相対的な位置は入れ替え可能であり、これらの層60、62のうちどちらかまたは両方が1つより多くあってよい。同じように、混合物34を有するろう付け材料層16の代わりに、合金粉末22の個別層66の上に、ろう付け材料粉末32の個別層64がある。これらの層64、66の相対的な位置は入れ替え可能であり、これらの層64、66のうちどちらかまたは両方が1つより多くあってよい。
【0016】
図4は、合金層14、ろう付け材料層16およびその間のフッ化物含有フラックス層18を有する構造的ろう付けテープ12として実施される構造的ろう付け媒体10の代替的な例示的実施形態を示す。この例示的実施形態において、接着剤42は存在していない。ここに存在する層は、機械的プロセスにより、例えば例示的には、3つの層全てが対向ローラの間で、または焼結によりまとめてプレスされる機械的プロセスにより1つにまとめることができる。
【0017】
図5は、合金層14およびろう付け材料層16を有する構造的ろう付けテープ12として実施される構造的ろう付け媒体10の代替的な例示的実施形態を示す。ろう付け層16は、ホウ素を含有していなくてよく、合金は、ニッケル基またはコバルト基の超合金を含むことができる。粉末22、32、50をバインダー24で繋げて、テープ12を形成することができる。
【0018】
前述の内容より、本発明者等が、構造特性が改善されたろう付けをもたらし、ろう付けの洗浄の改善をもたらし、かつ便利で、成形が容易かつ輪郭加工が容易である新たな構造的ろう付けテープを開発したと理解できる。
【0019】
本明細書において本発明の様々な実施形態を示し、記載してきたが、その一方で、このような実施形態が例としてのみ与えられることは明らかであろう。ここで、数々の変法、変更および置き換えを、本発明から逸脱することなく行うことができる。よって、本発明が添付クレームの思想および範囲によってしか制限されないことが意図される。