特許第6979946号(P6979946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979946ヒト内耳感覚上皮および感覚ニューロンを生成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979946
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ヒト内耳感覚上皮および感覚ニューロンを生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20211202BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALI20211202BHJP
【FI】
   C12N5/071ZNA
   C12N5/0793
【請求項の数】11
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2018-520429(P2018-520429)
(86)(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公表番号】特表2018-531031(P2018-531031A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】US2016058121
(87)【国際公開番号】WO2017070471
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年10月8日
(31)【優先権主張番号】62/244,568
(32)【優先日】2015年10月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507277642
【氏名又は名称】インディアナ ユニバーシティー リサーチ アンド テクノロジー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INDIANA UNIVERSITY RESEARCH AND TECHNOLOGY CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】コーラー,カール,アール.
(72)【発明者】
【氏名】橋野 惠里
【審査官】 山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0004556(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/134652(WO,A1)
【文献】 特開2004−159471(JP,A)
【文献】 特表2009−512423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00−28
C12Q 1/00−3/00
C12M 1/00−3/10
MEDLINE/BIOSIS/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト内耳感覚組織を含む三次元組成物を得る方法であって、
(a)トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)シグナル伝達の小分子阻害剤、骨形成タンパク質(BMP)、およびFGF−2を含む培養培地中で、約4日間、ヒト誘導多能性幹細胞凝集体を培養するステップと、
(b)(a)の培養した凝集体を、線維芽細胞増殖因子(FGF)、およびBMPシグナル伝達の小分子阻害剤の存在下で約4日間、さらに培養するステップと、
(c)(b)のさらに培養した凝集体を、Wntアゴニストに約4日間接触させるステップであって、それにより、接触させた凝集体内の細胞が、前耳上皮細胞へ分化する、ステップと、
(d)細胞外マトリックスタンパク質を含む半固体培養培地中に、前耳上皮細胞を包埋するステップと、
(e)包埋した前耳上皮細胞を、Wntアゴニストの存在下で少なくとも28〜48日間、包埋した前耳上皮細胞の耳胞への自己集合を促進する条件下で培養し、それにより、ヒト内耳感覚組織を含む三次元組成物が得られる、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記FGFがFGF−2である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記BMPが、BMP2、BMP4およびBMP7からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
BMPシグナル伝達の前記阻害剤が、LDN−193189である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
TGFβ1媒介性シグナル伝達の前記阻害剤が、SB431542およびA−83−01からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記Wntアゴニストが、GSK3の阻害剤である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
GSK3の前記阻害剤が、CHIR99021、塩化リチウム(LiCl)および6−ブロモインジルビン−3’−オキシム(BIO)からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞外マトリックスが、基底膜抽出物(BME)である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記三次元組成物が、1つまたは複数の機械感覚細胞を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記三次元組成物が、1つまたは複数の感覚ニューロン細胞を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記三次元組成物が、機械感覚細胞とシナプス結合を形成する1つまたは複数の感覚ニューロン細胞を含む、請求項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2015年10月21日に出願された米国特許仮出願公開第62/244,568号明細書の利点を主張し、それは、その全体が記載されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦支援の研究または開発に関する記述
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたDC015624、DC012617およびDC013294の下で、政府支援を受けて行われた。政府は本発明においてある特定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
ヒト多能性幹細胞の、内耳感覚上皮および感覚ニューロンへの分化を導く方法が、本明細書中で提供される。より詳細には、ヒト多能性幹細胞由来の前耳(pre-otic)上皮、耳胞、ならびに有毛細胞および支持細胞を含有する内耳感覚上皮、ならびに感覚上皮を神経支配する感覚ニューロンを含む三次元培養物を獲得する方法が、本明細書中で提供される。
【背景技術】
【0004】
世界中でおよそ5億人の人々が、聴力損失しており、いまだに、聴力損失を治療することができる薬理学的療法、遺伝子療法または細胞療法が存在しない。この方法は、細胞療法のための、または創薬における使用のためのヒト内耳幹細胞、支持細胞、有毛細胞およびニューロンを生成するのに使用することができる。
【0005】
したがって、ヒト多能性幹細胞を、臨床的な細胞療法に適した内耳感覚組織へ分化させる効率的で再現性があり、かつ異種材料を含まない方法が、当該技術分野で依然として必要である。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様では、ヒト前耳上皮細胞を獲得する方法が、本明細書中で提供される。本明細書中に記載するように、上記方法は、(a)骨形成タンパク質(BMP)、およびトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)シグナル伝達の阻害剤を含む培養培地中で、約8〜約10日間、ヒト多能性幹細胞凝集体を培養するステップと、(b)(a)の培養した凝集体を、線維芽細胞増殖因子(FGF)、およびBMPシグナル伝達の阻害剤の存在下で約4日間、さらに培養するステップと、(b)さらに培養した凝集体を、Wntアゴニストに約4日間接触させるステップであって、それにより、接触させた凝集体内の細胞が、前耳上皮細胞へ分化する、ステップとを含む。FGFは、FGF−2であり得る。BMPは、BMP2、BMP4またはBMP7であり得る。BMPシグナル伝達の阻害剤は、LDN−193189であり得る。TGFβ1媒介性シグナル伝達の前記阻害剤は、SB431542およびA−83−01からなる群から選択され得る。Wntアゴニストは、GSK3の阻害剤であり得る。GSK3の阻害剤は、CHIR99021、塩化リチウム(LiCl)および6−ブロモインジルビン−3’−オキシム(BIO)からなる群から選択される。
【0007】
別の態様では、ヒト内耳感覚組織を含む三次元組成物を獲得する方法であって、(a)細胞外マトリックスタンパク質を含む半固体培養培地中に、請求項1に記載の方法に従って獲得されるヒト前耳上皮細胞を包埋するステップと、(b)包埋した前耳上皮細胞を、Wntアゴニストの存在下で約40〜約60日間、包埋した前耳上皮細胞の耳胞への自己集合を促進する条件下で培養するステップであって、それにより、ヒト内耳感覚組織を含む三次元組成物が獲得される、ステップとを含む方法が、本明細書中で提供される。Wntアゴニストは、GSK3の阻害剤であってもよく、ここで、GSK3の阻害剤は、CHIR99021、塩化リチウム(LiCl)および6−ブロモインジルビン−3’−オキシム(BIO)からなる群から選択される。細胞外マトリックスは、基底膜抽出物(BME)であり得る。三次元組成物は、1つまたは複数の機械感覚細胞を含み得る。三次元組成物は、1つまたは複数の感覚ニューロン細胞を含み得る。三次元組成物は、機械感覚細胞とシナプス結合を形成する1つまたは複数の感覚ニューロン細胞を含み得る。
【0008】
本明細書中に記載するこれらのおよび他の特徴、態様ならびに利点は、下記図面、詳細な説明および併記の特許請求の範囲を考慮して、より良好に理解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1-1】耳プラコード様上皮の段階的誘導に関する例示的なプロトコールを示す図である。a、耳プラコード頭蓋領域における哺乳動物外胚葉発生の概説。b、ヒト耳誘導の重要な事象に関する時系列。時系列に関する0日目は、hPSCによって表される発生のおおよその段階を示す:およそ12dpc。c、非神経外胚葉(NNE)、耳上鰓前駆体ドメイン(otic-epibranchial progenitor domain、OEPD)、および耳プラコード誘導に関する分化戦略。潜在的に任意選択の、または細胞株依存性の処理を括弧内に示す。d、DMSO(対照)、10μM SB、またはSBBとして表される10μM SB+10ng/ml BMP4で処理したWA25細胞凝集体の分化の2日目のqPCR分析。遺伝子発現は、未分化hESCに対して標準化した;n=3つの生物学的試料、2回の技術的反復;P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;エラーバー=最大/最小。e、f、10μM SB、または200nM LDN+10μM SBで6日間処理したWA25凝集体における代表的なTFAP2、ECADおよびPAX6発現。g、10μM SB+2.5ng/ml BMP4(SBB)で6日目に処理したmND2−0iPSCにおけるTFAP2、ECADおよびPAX6発現。h、i、8日目のSB処理WA25凝集体の代表的な画像:生存している(h)ならびにPAX8およびTFAP2抗体で免疫染色した(i)。パネル(h)およびパネル(i)において形態を比較する場合、外側上皮は、凍結切片プロセス中に凝集体コアへとしわになることに留意されたい。j、k、4日目の50ng/ml FGF−2および200nM LDN(SBFL)による処理の8日後のSB処理WA25凝集体の代表的な画像:生存している(j)ならびにPAX8およびTFAP2抗体で免疫染色した(k)。l〜n、12日目のWA25SBFL処理凝集体。外側上皮は、PAX8ECAD細胞(I)およびPAX8PAX2耳プラコード様細胞の臨時のパッチ(m、n)を含有する。示した検体は、8日目にさらなるCDM 25μlで処理した。スケールバー、100μm(e〜m)、50μm(n)。
図1-2】耳プラコード様上皮の段階的誘導に関する例示的なプロトコールを示す図である。a、耳プラコード頭蓋領域における哺乳動物外胚葉発生の概説。b、ヒト耳誘導の重要な事象に関する時系列。時系列に関する0日目は、hPSCによって表される発生のおおよその段階を示す:およそ12dpc。c、非神経外胚葉(NNE)、耳上鰓前駆体ドメイン(OEPD)、および耳プラコード誘導に関する分化戦略。潜在的に任意選択の、または細胞株依存性の処理を括弧内に示す。d、DMSO(対照)、10μM SB、またはSBBとして表される10μM SB+10ng/ml BMP4で処理したWA25細胞凝集体の分化の2日目のqPCR分析。遺伝子発現は、未分化hESCに対して標準化した;n=3つの生物学的試料、2回の技術的反復;P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;エラーバー=最大/最小。e、f、10μM SB、または200nM LDN+10μM SBで6日間処理したWA25凝集体における代表的なTFAP2、ECADおよびPAX6発現。g、10μM SB+2.5ng/ml BMP4(SBB)で6日目に処理したmND2−0iPSCにおけるTFAP2、ECADおよびPAX6発現。h、i、8日目のSB処理WA25凝集体の代表的な画像:生存している(h)ならびにPAX8およびTFAP2抗体で免疫染色した(i)。パネル(h)およびパネル(i)において形態を比較する場合、外側上皮は、凍結切片プロセス中に凝集体コアへとしわになることに留意されたい。j、k、4日目の50ng/ml FGF−2および200nM LDN(SBFL)による処理の8日後のSB処理WA25凝集体の代表的な画像:生存している(j)ならびにPAX8およびTFAP2抗体で免疫染色した(k)。l〜n、12日目のWA25SBFL処理凝集体。外側上皮は、PAX8ECAD細胞(I)およびPAX8PAX2耳プラコード様細胞の臨時のパッチ(m、n)を含有する。示した検体は、8日目にさらなるCDM 25μlで処理した。スケールバー、100μm(e〜m)、50μm(n)。
図1-3】耳プラコード様上皮の段階的誘導に関する例示的なプロトコールを示す図である。a、耳プラコード頭蓋領域における哺乳動物外胚葉発生の概説。b、ヒト耳誘導の重要な事象に関する時系列。時系列に関する0日目は、hPSCによって表される発生のおおよその段階を示す:およそ12dpc。c、非神経外胚葉(NNE)、耳上鰓前駆体ドメイン(OEPD)、および耳プラコード誘導に関する分化戦略。潜在的に任意選択の、または細胞株依存性の処理を括弧内に示す。d、DMSO(対照)、10μM SB、またはSBBとして表される10μM SB+10ng/ml BMP4で処理したWA25細胞凝集体の分化の2日目のqPCR分析。遺伝子発現は、未分化hESCに対して標準化した;n=3つの生物学的試料、2回の技術的反復;P<0.05、**P<0.01、***P<0.001;エラーバー=最大/最小。e、f、10μM SB、または200nM LDN+10μM SBで6日間処理したWA25凝集体における代表的なTFAP2、ECADおよびPAX6発現。g、10μM SB+2.5ng/ml BMP4(SBB)で6日目に処理したmND2−0iPSCにおけるTFAP2、ECADおよびPAX6発現。h、i、8日目のSB処理WA25凝集体の代表的な画像:生存している(h)ならびにPAX8およびTFAP2抗体で免疫染色した(i)。パネル(h)およびパネル(i)において形態を比較する場合、外側上皮は、凍結切片プロセス中に凝集体コアへとしわになることに留意されたい。j、k、4日目の50ng/ml FGF−2および200nM LDN(SBFL)による処理の8日後のSB処理WA25凝集体の代表的な画像:生存している(j)ならびにPAX8およびTFAP2抗体で免疫染色した(k)。l〜n、12日目のWA25SBFL処理凝集体。外側上皮は、PAX8ECAD細胞(I)およびPAX8PAX2耳プラコード様細胞の臨時のパッチ(m、n)を含有する。示した検体は、8日目にさらなるCDM 25μlで処理した。スケールバー、100μm(e〜m)、50μm(n)。
図2-1】未分化WA25hESC、細胞凝集、および初期非神経外胚葉分化分析を示す図である。a、b、準備刺激した(primed)多能性幹細胞のE8培地発現マーカーにおけるビトロネクチン−Nでコーティングしたプレート上で維持されるWA25細胞。c、分化戦略および実験条件の概説。d、e、E8+20μM Y−27632における単一細胞のhESCの凝集は、CDM+20μM Y−27632における凝集よりも少ない細胞残屑を産生した。f、未分化細胞に対して、多能性マーカーは、ビヒクル対照を除く全ての条件で、2日目までに著しくダウンレギュレートされた。g、非神経マーカーTFAP2およびDLX3は、SBおよびSBB条件でアップレギュレートされた。h、中内胚葉マーカーBRAおよびEOMESは、BMP4(B)処理によってアップレギュレートされた。遺伝子発現は、d0凝集体に対して標準化した。統計学的検定に関して、処理値を、対照(CTRL)値と比較した;n=3つの生物学的試料、2回の技術的反復;P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、ns=有意でない;エラーバー=最大/最小。スケールバー、100μm(a、d、e)、25μm(b)。
図2-2】未分化WA25hESC、細胞凝集、および初期非神経外胚葉分化分析を示す図である。a、b、準備刺激した(primed)多能性幹細胞のE8培地発現マーカーにおけるビトロネクチン−Nでコーティングしたプレート上で維持されるWA25細胞。c、分化戦略および実験条件の概説。d、e、E8+20μM Y−27632における単一細胞のhESCの凝集は、CDM+20μM Y−27632における凝集よりも少ない細胞残屑を産生した。f、未分化細胞に対して、多能性マーカーは、ビヒクル対照を除く全ての条件で、2日目までに著しくダウンレギュレートされた。g、非神経マーカーTFAP2およびDLX3は、SBおよびSBB条件でアップレギュレートされた。h、中内胚葉マーカーBRAおよびEOMESは、BMP4(B)処理によってアップレギュレートされた。遺伝子発現は、d0凝集体に対して標準化した。統計学的検定に関して、処理値を、対照(CTRL)値と比較した;n=3つの生物学的試料、2回の技術的反復;P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、ns=有意でない;エラーバー=最大/最小。スケールバー、100μm(a、d、e)、25μm(b)。
図3-1】WA25hESCを使用した非神経誘導を示す図である。a、b、分化戦略の概説。c〜e、培養における経時的な凝集体直径(c)および真円度(d)。凝集体の真円度は、外側上皮がしわになるにつれ、経時的に減少する(e)。f、g、OCT4発現細胞、コアにおけるSOX2/ECAD発現細胞、ならびに外側コアおよび上皮におけるTFAP2/ECAD発現細胞のほぼ完全な欠如を示す代表的な4日目の凝集体。エラーバーは、最大/最小である。スケールバー、100μm。
図3-2】WA25hESCを使用した非神経誘導を示す図である。a、b、分化戦略の概説。c〜e、培養における経時的な凝集体直径(c)および真円度(d)。凝集体の真円度は、外側上皮がしわになるにつれ、経時的に減少する(e)。f、g、OCT4発現細胞、コアにおけるSOX2/ECAD発現細胞、ならびに外側コアおよび上皮におけるTFAP2/ECAD発現細胞のほぼ完全な欠如を示す代表的な4日目の凝集体。エラーバーは、最大/最小である。スケールバー、100μm。
図4-1】Wntシグナル伝達活性化が、前庭様有毛細胞を含有する内耳オルガノイドの自己組織化および成熟を開始させることを示す図である。a、内耳オルガノイド誘導戦略。12日目の凝集体は、Matrigel液滴中に包埋して、小胞(vesicle)形成を支持した。b〜d、CHIR処理試料では、耳窩様構造が、外側上皮から膨出する(evaginate)が、DMSO(対照)試料では、膨出しない(d)。e〜i、14〜35日目の間に、窩および小胞は、SOX10、SOX2、JAG1、PAX8、PAX2およびFBXO2などの耳特異的マーカーを発現した。小胞が生じる上皮は、35日目までに表皮ケラチノサイトマーカーKRT5を発現し始める(h)。j、40〜60日目までに、凝集体は、多重オルガノイド、通常、DIC画像化下で可視性の単一表皮単位を含有する。内耳オルガノイドは、およそ25〜40μmの見かけの厚さを有する規定上皮および管腔(挿入図j)によって識別可能である。k、内耳オルガノイドは通常、表皮単位周辺に配向され、ANXA4PCR4有毛細胞を有する感覚上皮を含有する。オルガノイドの管腔表面は、ファロイジン染色によって示されるように、アクチンリッチである(k’’)。l〜o、有毛細胞は、MYO7ASOX2であり、支持細胞はSOX2である。F−アクチンリッチな毛束は、有毛細胞から管腔へ突出する(n、o;アスタリスクは、mにおける毛束位置を示す)。p、q、mND−2−0iPSC由来感覚上皮は、WA25hESC由来の感覚上皮に類似した形態を有し、PCP4ANXA4有毛細胞を含有する。SOX10は、支持および非感覚上皮細胞集団全体にわたって発現されるが、有毛細胞では発現されない(p)。支持細胞は、卵形嚢支持細胞マーカーSPARCL1を発現する(q)。r、オルガノイドにおける有毛細胞は、単一のアセチル化チューブリン(TUBA4A)動毛を有するESPN毛束を有する。スケールバー、200μm(j)、100μm(b、c、e)、50μm(g、h、k)、25μm(d、f、i、l、m、p)、10μm(n、q)、5μm(r)、2.5μm(o)。
図4-2】Wntシグナル伝達活性化が、前庭様有毛細胞を含有する内耳オルガノイドの自己組織化および成熟を開始させることを示す図である。a、内耳オルガノイド誘導戦略。12日目の凝集体は、Matrigel液滴中に包埋して、小胞(vesicle)形成を支持した。b〜d、CHIR処理試料では、耳窩様構造が、外側上皮から膨出するが、DMSO(対照)試料では、膨出しない(d)。e〜i、14〜35日目の間に、窩および小胞は、SOX10、SOX2、JAG1、PAX8、PAX2およびFBXO2などの耳特異的マーカーを発現した。小胞が生じる上皮は、35日目までに表皮ケラチノサイトマーカーKRT5を発現し始める(h)。j、40〜60日目までに、凝集体は、多重オルガノイド、通常、DIC画像化下で可視性の単一表皮単位を含有する。内耳オルガノイドは、およそ25〜40μmの見かけの厚さを有する規定上皮および管腔(挿入図j)によって識別可能である。k、内耳オルガノイドは通常、表皮単位周辺に配向され、ANXA4PCR4有毛細胞を有する感覚上皮を含有する。オルガノイドの管腔表面は、ファロイジン染色によって示されるように、アクチンリッチである(k’’)。l〜o、有毛細胞は、MYO7ASOX2であり、支持細胞はSOX2である。F−アクチンリッチな毛束は、有毛細胞から管腔へ突出する(n、o;アスタリスクは、mにおける毛束位置を示す)。p、q、mND−2−0iPSC由来感覚上皮は、WA25hESC由来の感覚上皮に類似した形態を有し、PCP4ANXA4有毛細胞を含有する。SOX10は、支持および非感覚上皮細胞集団全体にわたって発現されるが、有毛細胞では発現されない(p)。支持細胞は、卵形嚢支持細胞マーカーSPARCL1を発現する(q)。r、オルガノイドにおける有毛細胞は、単一のアセチル化チューブリン(TUBA4A)動毛を有するESPN毛束を有する。スケールバー、200μm(j)、100μm(b、c、e)、50μm(g、h、k)、25μm(d、f、i、l、m、p)、10μm(n、q)、5μm(r)、2.5μm(o)。
図4-3】Wntシグナル伝達活性化が、前庭様有毛細胞を含有する内耳オルガノイドの自己組織化および成熟を開始させることを示す図である。a、内耳オルガノイド誘導戦略。12日目の凝集体は、Matrigel液滴中に包埋して、小胞(vesicle)形成を支持した。b〜d、CHIR処理試料では、耳窩様構造が、外側上皮から膨出するが、DMSO(対照)試料では、膨出しない(d)。e〜i、14〜35日目の間に、窩および小胞は、SOX10、SOX2、JAG1、PAX8、PAX2およびFBXO2などの耳特異的マーカーを発現した。小胞が生じる上皮は、35日目までに表皮ケラチノサイトマーカーKRT5を発現し始める(h)。j、40〜60日目までに、凝集体は、多重オルガノイド、通常、DIC画像化下で可視性の単一表皮単位を含有する。内耳オルガノイドは、およそ25〜40μmの見かけの厚さを有する規定上皮および管腔(挿入図j)によって識別可能である。k、内耳オルガノイドは通常、表皮単位周辺に配向され、ANXA4PCR4有毛細胞を有する感覚上皮を含有する。オルガノイドの管腔表面は、ファロイジン染色によって示されるように、アクチンリッチである(k’’)。l〜o、有毛細胞は、MYO7ASOX2であり、支持細胞はSOX2である。F−アクチンリッチな毛束は、有毛細胞から管腔へ突出する(n、o;アスタリスクは、mにおける毛束位置を示す)。p、q、mND−2−0iPSC由来感覚上皮は、WA25hESC由来の感覚上皮に類似した形態を有し、PCP4ANXA4有毛細胞を含有する。SOX10は、支持および非感覚上皮細胞集団全体にわたって発現されるが、有毛細胞では発現されない(p)。支持細胞は、卵形嚢支持細胞マーカーSPARCL1を発現する(q)。r、オルガノイドにおける有毛細胞は、単一のアセチル化チューブリン(TUBA4A)動毛を有するESPN毛束を有する。スケールバー、200μm(j)、100μm(b、c、e)、50μm(g、h、k)、25μm(d、f、i、l、m、p)、10μm(n、q)、5μm(r)、2.5μm(o)。
図4-4】Wntシグナル伝達活性化が、前庭様有毛細胞を含有する内耳オルガノイドの自己組織化および成熟を開始させることを示す図である。a、内耳オルガノイド誘導戦略。12日目の凝集体は、Matrigel液滴中に包埋して、小胞(vesicle)形成を支持した。b〜d、CHIR処理試料では、耳窩様構造が、外側上皮から膨出するが、DMSO(対照)試料では、膨出しない(d)。e〜i、14〜35日目の間に、窩および小胞は、SOX10、SOX2、JAG1、PAX8、PAX2およびFBXO2などの耳特異的マーカーを発現した。小胞が生じる上皮は、35日目までに表皮ケラチノサイトマーカーKRT5を発現し始める(h)。j、40〜60日目までに、凝集体は、多重オルガノイド、通常、DIC画像化下で可視性の単一表皮単位を含有する。内耳オルガノイドは、およそ25〜40μmの見かけの厚さを有する規定上皮および管腔(挿入図j)によって識別可能である。k、内耳オルガノイドは通常、表皮単位周辺に配向され、ANXA4PCR4有毛細胞を有する感覚上皮を含有する。オルガノイドの管腔表面は、ファロイジン染色によって示されるように、アクチンリッチである(k’’)。l〜o、有毛細胞は、MYO7ASOX2であり、支持細胞はSOX2である。F−アクチンリッチな毛束は、有毛細胞から管腔へ突出する(n、o;アスタリスクは、mにおける毛束位置を示す)。p、q、mND−2−0iPSC由来感覚上皮は、WA25hESC由来の感覚上皮に類似した形態を有し、PCP4ANXA4有毛細胞を含有する。SOX10は、支持および非感覚上皮細胞集団全体にわたって発現されるが、有毛細胞では発現されない(p)。支持細胞は、卵形嚢支持細胞マーカーSPARCL1を発現する(q)。r、オルガノイドにおける有毛細胞は、単一のアセチル化チューブリン(TUBA4A)動毛を有するESPN毛束を有する。スケールバー、200μm(j)、100μm(b、c、e)、50μm(g、h、k)、25μm(d、f、i、l、m、p)、10μm(n、q)、5μm(r)、2.5μm(o)。
図5-1】自然有毛細胞の電気生理学的特性に類似した電気生理学的特性を有するhESC由来の有毛細胞を示す図である。a、ATOH1−2A−eGFP CRISPR設計。2つのガイドRNA(青色、PAM配列は赤色で)は、ATOH1の停止コドン(ピンク色の背景で下線を付してある)付近に2つのニック(赤色三角形)を作製するようにCas9nを導く。生じたDNA二重鎖切断は、ドナーベクターによって修復され、それは、2A−eGFP−PGK−Puroカセットならびに1kbの左および右相同性アーム(LHAおよびRHA)を有する。続いて、LoxP隣接PGK−Puroサブカセットは、Creリコンビナーゼによって除去される。有毛細胞を発現するATOH1において、eGFPは、ATOH1と一緒に転写される。b〜d、50および100日齢の内耳オルガノイドにおける2A−eGFP有毛細胞の代表的な生細胞画像。パネル(b)において、軟骨結節(cn)およびアスタリスクは、別々の2A−eGFP有毛細胞パッチを示す。パネル(c)におけるアスタリスクは、パネル(d)における有毛細胞のおおよその位置を示す。e、140日齢のeGFP有毛細胞におけるBRN3Cの発現。f、100日齢のeGFP有毛細胞の毛束におけるESPNの発現。g、ヒトオルガノイド有毛細胞は、顕著な外向き電流を示した(d64)。h、細胞は、マウス前庭II型有毛細胞において見られるのと類似した特徴を有する整流電位の偏りをもって電流注入に応答した。i、ヒトオルガノイド有毛細胞は、上昇期時に初期ピークを伴う正弦波刺激に続くことが可能である(周波数掃引を除く)。j、電位依存性電流は、培養においてこの時点でわずかに小さかったが、全体の電位依存性は、マウス有毛細胞において見られるのと密接に類似していた(64〜67日間プールされた非漏出性の記録、P4マウス卵形嚢からの比較)。k、しかしながら、マウス卵形嚢およびオルガノイド細胞において−80mV以下で見られる内向き整流電流は、ヒトオルガノイド細胞では顕著ではなかった。スケールバー、200μm(b)、100μm(c)、25μm(e)、5μm(d、f)。
図5-2】自然有毛細胞の電気生理学的特性に類似した電気生理学的特性を有するhESC由来の有毛細胞を示す図である。a、ATOH1−2A−eGFP CRISPR設計。2つのガイドRNA(青色、PAM配列は赤色で)は、ATOH1の停止コドン(ピンク色の背景で下線を付してある)付近に2つのニック(赤色三角形)を作製するようにCas9nを導く。生じたDNA二重鎖切断は、ドナーベクターによって修復され、それは、2A−eGFP−PGK−Puroカセットならびに1kbの左および右相同性アーム(LHAおよびRHA)を有する。続いて、LoxP隣接PGK−Puroサブカセットは、Creリコンビナーゼによって除去される。有毛細胞を発現するATOH1において、eGFPは、ATOH1と一緒に転写される。b〜d、50および100日齢の内耳オルガノイドにおける2A−eGFP有毛細胞の代表的な生細胞画像。パネル(b)において、軟骨結節(cn)およびアスタリスクは、別々の2A−eGFP有毛細胞パッチを示す。パネル(c)におけるアスタリスクは、パネル(d)における有毛細胞のおおよその位置を示す。e、140日齢のeGFP有毛細胞におけるBRN3Cの発現。f、100日齢のeGFP有毛細胞の毛束におけるESPNの発現。g、ヒトオルガノイド有毛細胞は、顕著な外向き電流を示した(d64)。h、細胞は、マウス前庭II型有毛細胞において見られるのと類似した特徴を有する整流電位の偏りをもって電流注入に応答した。i、ヒトオルガノイド有毛細胞は、上昇期時に初期ピークを伴う正弦波刺激に続くことが可能である(周波数掃引を除く)。j、電位依存性電流は、培養においてこの時点でわずかに小さかったが、全体の電位依存性は、マウス有毛細胞において見られるのと密接に類似していた(64〜67日間プールされた非漏出性の記録、P4マウス卵形嚢からの比較)。k、しかしながら、マウス卵形嚢およびオルガノイド細胞において−80mV以下で見られる内向き整流電流は、ヒトオルガノイド細胞では顕著ではなかった。スケールバー、200μm(b)、100μm(c)、25μm(e)、5μm(d、f)。
図5-3】自然有毛細胞の電気生理学的特性に類似した電気生理学的特性を有するhESC由来の有毛細胞を示す図である。a、ATOH1−2A−eGFP CRISPR設計。2つのガイドRNA(青色、PAM配列は赤色で)は、ATOH1の停止コドン(ピンク色の背景で下線を付してある)付近に2つのニック(赤色三角形)を作製するようにCas9nを導く。生じたDNA二重鎖切断は、ドナーベクターによって修復され、それは、2A−eGFP−PGK−Puroカセットならびに1kbの左および右相同性アーム(LHAおよびRHA)を有する。続いて、LoxP隣接PGK−Puroサブカセットは、Creリコンビナーゼによって除去される。有毛細胞を発現するATOH1において、eGFPは、ATOH1と一緒に転写される。b〜d、50および100日齢の内耳オルガノイドにおける2A−eGFP有毛細胞の代表的な生細胞画像。パネル(b)において、軟骨結節(cn)およびアスタリスクは、別々の2A−eGFP有毛細胞パッチを示す。パネル(c)におけるアスタリスクは、パネル(d)における有毛細胞のおおよその位置を示す。e、140日齢のeGFP有毛細胞におけるBRN3Cの発現。f、100日齢のeGFP有毛細胞の毛束におけるESPNの発現。g、ヒトオルガノイド有毛細胞は、顕著な外向き電流を示した(d64)。h、細胞は、マウス前庭II型有毛細胞において見られるのと類似した特徴を有する整流電位の偏りをもって電流注入に応答した。i、ヒトオルガノイド有毛細胞は、上昇期時に初期ピークを伴う正弦波刺激に続くことが可能である(周波数掃引を除く)。j、電位依存性電流は、培養においてこの時点でわずかに小さかったが、全体の電位依存性は、マウス有毛細胞において見られるのと密接に類似していた(64〜67日間プールされた非漏出性の記録、P4マウス卵形嚢からの比較)。k、しかしながら、マウス卵形嚢およびオルガノイド細胞において−80mV以下で見られる内向き整流電流は、ヒトオルガノイド細胞では顕著ではなかった。スケールバー、200μm(b)、100μm(c)、25μm(e)、5μm(d、f)。
図6-1】SB処理凝集体が、ケラチノサイトを生成することを示す図である。a、非神経およびケラチノサイト誘導プロセスの概説。b〜d、3D培養において、非神経外胚葉誘導は、特徴的な形態学的変化を伴う。6〜8日までに、上皮がコアから分離して、半透明の球体を形成する(c)。上皮は、依然としてスポーク様構造を介してコアに結合されたままである(a、c)。20日後、コア由来のスポークは存在せず、上皮球体は通常、細胞残屑で充填される(d)。e、20日目の上皮は、TFAP2+KRT5+細胞を含有し、表皮ケラチノサイトを示す。スケールバー、250μm(b〜d)、100μm(e)、5μm(e’)。
図6-2】SB処理凝集体が、ケラチノサイトを生成することを示す図である。a、非神経およびケラチノサイト誘導プロセスの概説。b〜d、3D培養において、非神経外胚葉誘導は、特徴的な形態学的変化を伴う。6〜8日までに、上皮がコアから分離して、半透明の球体を形成する(c)。上皮は、依然としてスポーク様構造を介してコアに結合されたままである(a、c)。20日後、コア由来のスポークは存在せず、上皮球体は通常、細胞残屑で充填される(d)。e、20日目の上皮は、TFAP2+KRT5+細胞を含有し、表皮ケラチノサイトを示す。スケールバー、250μm(b〜d)、100μm(e)、5μm(e’)。
図7-1】SB処理WA25凝集体における非神経外胚葉誘導が、内因性BMPシグナル伝達に起因することを示す図である。a、内因性BMPシグナル伝達が、非神経誘導に影響を与えるかどうかを試験するための実験の概説。b〜d、LSB処理は、凝集体全体にわたって、NCAD発現を引き起こす。NCAD+PAX6+細胞の亜集団(図1Eを参照)が、SB処理凝集体のコアにおいて出現することに留意されたい。スケールバー、50μm。
図7-2】SB処理WA25凝集体における非神経外胚葉誘導が、内因性BMPシグナル伝達に起因することを示す図である。a、内因性BMPシグナル伝達が、非神経誘導に影響を与えるかどうかを試験するための実験の概説。b〜d、LSB処理は、凝集体全体にわたって、NCAD発現を引き起こす。NCAD+PAX6+細胞の亜集団(図1Eを参照)が、SB処理凝集体のコアにおいて出現することに留意されたい。スケールバー、50μm。
図8-1】mND2−0iPSCによる非神経外胚葉誘導を示す図である。a、b、E8培地においてビトロネクチン−Nでコーティングしたプレート上に維持したWA25細胞は、準備刺激した多能性幹細胞のマーカーを発現する。c、分化戦略および実験条件の概説。他のBMP濃度を、予備実験で試験し(1.25、2.5、5、10、20、40ng/ml)、2.5ng/mlを、SB処理WA25細胞において見られる形態学的変化(即ち、半透明の球体)をもたらす最小濃度として選択した(図6Cを参照)。d、0〜6日目のSBまたはSBB処理凝集体の代表的な画像。e、f、SB処理凝集体は、6日目までに、PAX6+NCAD+上皮、TFAP2+遊走性細胞および数個のECAD+細胞を生成し、神経外胚葉および神経堤細胞の異種ミックスを示唆する。g、内因性のBMPシグナル伝達は、mND2−0iPSCにおいて、非神経変換には不十分であり、したがって、さらなるBMP4が必要である。スケールバー、100μm(d)、25μm(a、b、e、f)。
図8-2】mND2−0iPSCによる非神経外胚葉誘導を示す図である。a、b、E8培地においてビトロネクチン−Nでコーティングしたプレート上に維持したWA25細胞は、準備刺激した多能性幹細胞のマーカーを発現する。c、分化戦略および実験条件の概説。他のBMP濃度を、予備実験で試験し(1.25、2.5、5、10、20、40ng/ml)、2.5ng/mlを、SB処理WA25細胞において見られる形態学的変化(即ち、半透明の球体)をもたらす最小濃度として選択した(図6Cを参照)。d、0〜6日目のSBまたはSBB処理凝集体の代表的な画像。e、f、SB処理凝集体は、6日目までに、PAX6+NCAD+上皮、TFAP2+遊走性細胞および数個のECAD+細胞を生成し、神経外胚葉および神経堤細胞の異種ミックスを示唆する。g、内因性のBMPシグナル伝達は、mND2−0iPSCにおいて、非神経変換には不十分であり、したがって、さらなるBMP4が必要である。スケールバー、100μm(d)、25μm(a、b、e、f)。
図9】非神経外胚葉誘導が、中内胚葉細胞のオフターゲット誘導を伴わずに起きることを示す図である。0日目に10ng/ml BMP4(a)、10μM SB(b)および10μM SB+2.5ng/ml BMP4(c)で処理した4日目の凝集体における代表的なブラキュリ(BRA)免疫組織化学。スケールバー、50μm。
図10-1】FGF−2およびLDN(「FL」)処理によるWA25hESCおよびmND2−0iPSC凝集体におけるOEPD様上皮の誘導を示す図である。a、b、SOX2、TFAP2およびECADは、4日目のFL処理後に、8日目にSB処理WA凝集体全体にわたって発現される。PAX8発現は、外側上皮に制限される。上鰓および耳プラコードの独自の特徴は、ECADおよびNCADの同時発現である。ここで、NCAD発現は、最も内部のコアを除いて、凝集体全体にわたって観察された。c、d、SBBで処理したiPSCは、PAX8を全く発現しない。4日目のFL処理は、より厚い外側上皮形態およびPAX8の発現を誘導する。ECADおよびTFAP2は、SBB+FL(d4)処理iPSC凝集体全体にわたって発現される。スケールバー、100μm。
図10-2】FGF−2およびLDN(「FL」)処理によるWA25hESCおよびmND2−0iPSC凝集体におけるOEPD様上皮の誘導を示す図である。a、b、SOX2、TFAP2およびECADは、4日目のFL処理後に、8日目にSB処理WA凝集体全体にわたって発現される。PAX8発現は、外側上皮に制限される。上鰓および耳プラコードの独自の特徴は、ECADおよびNCADの同時発現である。ここで、NCAD発現は、最も内部のコアを除いて、凝集体全体にわたって観察された。c、d、SBBで処理したiPSCは、PAX8を全く発現しない。4日目のFL処理は、より厚い外側上皮形態およびPAX8の発現を誘導する。ECADおよびTFAP2は、SBB+FL(d4)処理iPSC凝集体全体にわたって発現される。スケールバー、100μm。
図11-1】OEPD誘導凝集体が、最小培地浮遊培養において感覚様ニューロンを自発的に生成することを示す図である。a、実験の概説。SBFL処理凝集体を、分化の8日目にOMMに移動した。b〜d、20日目に、凝集体は、BRN3A+TUJ1+HUC+ECAD周囲のニューロン+上皮のパッチで構成された。ニューロンパッチは通常、PAX8+上皮と関連付けられた。凝集体をMatrigel(商標)液滴に含めた形で蒔いた場合、それらは、神経突起伸長をもたらした(e)。f、PAX8+ECAD+上皮から出現するBRN3A+ニューロンは、上鰓プラコードニューロン新生と一致するが、これらのデータは、感覚ニューロンの起源として、PAX8+ECAD+上皮を直接的に確立しない。スケールバー、100um(b、c、d)、50μm(e)。
図11-2】OEPD誘導凝集体が、最小培地浮遊培養において感覚様ニューロンを自発的に生成することを示す図である。a、実験の概説。SBFL処理凝集体を、分化の8日目にOMMに移動した。b〜d、20日目に、凝集体は、BRN3A+TUJ1+HUC+ECAD周囲のニューロン+上皮のパッチで構成された。ニューロンパッチは通常、PAX8+上皮と関連付けられた。凝集体をMatrigel(商標)液滴に含めた形で蒔いた場合、それらは、神経突起伸長をもたらした(e)。f、PAX8+ECAD+上皮から出現するBRN3A+ニューロンは、上鰓プラコードニューロン新生と一致するが、これらのデータは、感覚ニューロンの起源として、PAX8+ECAD+上皮を直接的に確立しない。スケールバー、100um(b、c、d)、50μm(e)。
図12】分化の8日〜10日間のWNTおよびFGFシグナル伝達調節およびPAX8/PAX2発現を示す図である。a、これらのqPCRデータは、OEPD誘導後にPAX2発現を増加させることができるシグナル伝達モジュレーターを同定することに焦点を当てた予備的な実験の1つを代表する。b、c、PD−173074を使用したFGF阻害は、発生研究に基づいて予想されるように、PAX2発現を阻害する可能性が高い(Groves et al., Development 139, 245-257 (2012))。対比して、WNT阻害剤であるXAV939、およびWNTアゴニストであるCHIR99021は、DMSO対照と比較して、PAX2発現に対して控えめの正または負の影響を有するに過ぎなかった。これらの結果およびPAX2発現に関する広範な免疫染色に基づいて、本発明者らは、OEPD上皮が、それが耳誘導性の指示に応答する前に多くの時間を要し得ると推論した。したがって、本発明者らは、初期培養期を12日に延長すること(8日目の新鮮な培地の添加を伴う)、および凝集体をMatrigel(商標)液滴へ移行することの効果を試験することによって戦略を変更した。
図13-1】耳胞が表皮ケラチノサイトのコア上皮付近で放射状に膨出することを示す図である。a〜c、表皮および耳胞上皮の内部組織化を示す35日目の凝集体を通しての系列切片。KRT5発現は、表皮に制限される一方で、ECADは、表皮および耳胞上皮細胞の両方において発現される。(a)において、矢頭は、SOX10+耳胞を標識する。凝集体の間葉系層におけるCNC様SOX10+TFAP2−およびSOX10+TFAP2+細胞に留意されたい。パネル(c)で強調される小胞の対は、パネル(b)では、より低倍率および異なる配向性で標識される。(c)で見られる小胞は、耳胞マーカーSOX10、PAX2、FBXO2、JAG1およびECADを同時発現することが示されていた。d〜g、表皮コアおよび周囲耳胞を明らかにするためのECADに関してホールマウント免疫染色した35日目の凝集体。スケールバー、250μm(d、f)、100μm(a、b)、25μm(c、g)。
図13-2】耳胞が表皮ケラチノサイトのコア上皮付近で放射状に膨出することを示す図である。a〜c、表皮および耳胞上皮の内部組織化を示す35日目の凝集体を通しての系列切片。KRT5発現は、表皮に制限される一方で、ECADは、表皮および耳胞上皮細胞の両方において発現される。(a)において、矢頭は、SOX10+耳胞を標識する。凝集体の間葉系層におけるCNC様SOX10+TFAP2−およびSOX10+TFAP2+細胞に留意されたい。パネル(c)で強調される小胞の対は、パネル(b)では、より低倍率および異なる配向性で標識される。(c)で見られる小胞は、耳胞マーカーSOX10、PAX2、FBXO2、JAG1およびECADを同時発現することが示されていた。d〜g、表皮コアおよび周囲耳胞を明らかにするためのECADに関してホールマウント免疫染色した35日目の凝集体。スケールバー、250μm(d、f)、100μm(a、b)、25μm(c、g)。
図14-1】内耳オルガノイドが前庭様感覚上皮を生成することを示す図である。a、3つの可視的な内耳オルガノイド(矢頭)を有する48日目の凝集体。この検体は、図2Jで見られる検体とは別個の実験に由来していたことに留意されたい。b、オルガノイド有毛細胞は、II型前庭および内蝸牛有毛細胞マーカーCALB2を発現する。c、支持細胞全体にわたってSPARCL1の発現を示す感覚上皮の断面。SOX2は、支持細胞およびPCP4+有毛細胞の両方において発現している。d〜f、SOX10は、支持細胞および非感覚上皮細胞全体にわたって発現される。F−アクチンリッチな外周ベルトは、感覚および非感覚上皮の両方において観察された。スケールバー、100μm(a、d、e)、25μm(b、c)、10μm(f)。
図14-2】内耳オルガノイドが前庭様感覚上皮を生成することを示す図である。a、3つの可視的な内耳オルガノイド(矢頭)を有する48日目の凝集体。この検体は、図2Jで見られる検体とは別個の実験に由来していたことに留意されたい。b、オルガノイド有毛細胞は、II型前庭および内蝸牛有毛細胞マーカーCALB2を発現する。c、支持細胞全体にわたってSPARCL1の発現を示す感覚上皮の断面。SOX2は、支持細胞およびPCP4+有毛細胞の両方において発現している。d〜f、SOX10は、支持細胞および非感覚上皮細胞全体にわたって発現される。F−アクチンリッチな外周ベルトは、感覚および非感覚上皮の両方において観察された。スケールバー、100μm(a、d、e)、25μm(b、c)、10μm(f)。
図15】ヒト内耳誘導研究の比較を示す図である。2D、二次元。3D、三次元。OEP、耳上皮前駆体。注釈:Chen et al. (2002)のプロトコールでは、OEP生成の効率は、細胞株、播種密度および細胞分離の度合いに依存する。Ronaghi et al. (2014)のプロトコールでは、有毛細胞様細胞生成効率1.79%が、中レベルのAtoh1−nGFP発現を伴う細胞から算出され(19.8%×9.03%=1.79%)、それは、「潜在的な有毛細胞表現型の指標」であると考えられる。高いAtoh1−nGFP発現を有する細胞およびAtoh1−nGFP発現に関して陰性である細胞も考慮すると、有毛細胞様細胞生成効率は、5.89%である(77.1%×5.24%+19.8%×9.03%+3.1%×2.08%=5.89%)。
図16】耳ニューロン新生を示す図である。(a〜b)SOX2+耳胞および窩は通常、ISL1+TUJ1+神経芽細胞と関連付けられる(14日目)。耳胞の上皮は、この段階で高度にニューロン原性であるようであり、全体にわたって弱いTUJ1染色を伴う。(c)NGN1およびNGN2は、CHIR処理試料において14日目に発現される。未分化PSCに対して標準化(n=3)。スケール、100(a)、20(b)μm。
図17】感覚ニューロン伸長および成熟を示す図である。Matrigel上に蒔いたHIR処理オルガノイドは、双極性形態を有するTUJ1+BRN3A+ニューロンを生じる。成長円錐(bにおける挿入図)。スケール、500(a)、50(b)、10(c)。
図18】内耳オルガノイド由来の有毛細胞が、リボンシナプス様構造を有し、感覚ニューロンによって神経交配されることを示す図である。A〜B、分化の60日目のWA25hESC由来のPCP4陽性有毛細胞におけるCTBP2陽性斑点。C、内耳オルガノイド感覚上皮を神経交配するニューロンの代表的な画像。スケールバー、100μm(C)、25μm(A、B)。
図19-1】ATOH1−2A−eGFP−PGK−Puroドナープラスミド配列(配列番号21)を表す図である。
図19-2】ATOH1−2A−eGFP−PGK−Puroドナープラスミド配列(配列番号21)を表す図である。
図20】ATOH1遺伝子座におけるホモ接合性/二対立遺伝子ATOH1−2A−eGFP細胞株のゲノム配列(配列番号22)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本明細書中で言及する刊行物、特許および特許出願は全て、それぞれ個々の刊行物、特許および特許出願が、具体的にかつ個々に、参照により組み込まれるように示されるかのように、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0011】
本発明は、分化およびリモデリングに対して許容的である条件下で培養されるヒト多能性幹細胞由来の前駆細胞が、ヒト内耳感覚上皮の複雑さおよび組織化を再現し、また機能性有毛細胞を含む内耳組織の高度に一様な組成物を形成するという本発明者らの発見に少なくとも部分的に基づいている。本発明者らは、大規模で定量的なin vitroでのモデリングおよびスクリーニング用途に必要な一様性を有する複雑なヒト組織を産生することが可能であることを発見した。
【0012】
したがって、本発明は、三次元組織構築物および培養物を含む組成物、ならびにヒト内耳組織の高度に一様なモデルのような組成物を使用する方法および薬物候補物をスクリーニングする方法に関する。特に、移植用のヒト有毛細胞の供給源として、感覚消失を理解するためのモデルとして、および薬物候補物をスクリーニングするためのプラットフォームとして適切な、複雑で組織化されたヒト内耳感覚組織を効率的にかつ再現性よく、産生ならびに増殖させる方法が、本明細書中に提供される。本明細書中に提供する方法および系の重要な利点は、単一細胞供給源から多重機能性細胞型を含む複雑な組織構築物を生成する能力である。さらに、本明細書中に提供する方法および系は、複雑で組織化された内耳構造層のin vivoでの発生を忠実に再現する。本発明は、ヒト内耳感覚組織を生成するための測定可能かつ頑強な系、ならびにin vitroでのヒトモデルにおいてかかる組織を研究するための重要な機会を提供する。さらに、本発明の方法は、材料を同定するのに、およびヒト組織工学に関するコンビナトリアル戦略に有用である。
【0013】
方法
例示的な実施形態では、本明細書中に提供する方法は、多能性幹細胞の内耳感覚組織への分化を促進する条件下で、ヒト多能性幹細胞を分化させることを含む。概して、内耳感覚組織の細胞は、それらの表面の表現型によって、増殖因子に応答する能力によって、および特定の細胞系列へin vivoまたはin vitroで分化することが可能であることによって同定される。
【0014】
第1の態様では、ヒト内耳感覚組織を獲得する方法は、ヒト多能性幹細胞をスフェロイドへ凝集させることと、非神経上皮(NNE)の誘導を促進する要素を含む培養培地の存在下で約3〜4日間、スフェロイドを培養することとを含む。かかる培養培地は、下記の化学的に明確な(chemically defined)構成成分:骨形成タンパク質−4(BMP4)および例えば、SB−431542(「SB」)などのトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)シグナル伝達の阻害剤を含むか、またはそれらから本質的になり、それにより、多能性幹細胞の少なくともサブセットが、分化するように誘導されて、各凝集体内で中胚葉細胞のコアを形成する。好ましくは、中胚葉細胞のコアを含む凝集体は、BMP4およびTGFβシグナル伝達の阻害剤(例えば、SB)の存在下で、約8日〜約10日間培養される。SB−431542は、アクチビン受容体様キナーゼ受容体ALK5、ALK4およびALK7の特異的な阻害剤である。8〜10日の培養後に、中胚葉コアの細胞は、凝集体の表面に遊走して、非神経上皮の層を生じ、その内部で、内耳オルガノイドが発生する。ここで凝集体のコアを裏打ちしている内耳オルガノイドを生じる非神経上皮は、最終的に表皮組織へ分化することができる。
【0015】
図1を参照すると、上記で概要する培養ステップに従って形成されるNNE細胞は、線維芽細胞増殖因子(FGF)(例えば、FGF−2)および骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達の阻害剤の組合せの存在下で培養され、それにより、NNE細胞は、耳上鰓前駆体ドメイン(OEPD)としても公知である前耳上皮へ分化し、耳プラコードはそれに由来する。OEPDは、TGFβシグナル伝達阻害剤単独の存在下で培養されるNNE細胞と比較して肥厚し、PAX8、SOX2、TFAP2、ECADおよびNCADなどの後プラコードマーカーの組合せを発現する。本明細書中に提供する方法に従う使用に適したBMPシグナル伝達の阻害剤として、LDN−193189およびSB−431542が挙げられるが、限定されない。LDN−193189は、BMP I型受容体ALK2およびALK3の転写活性を阻害する選択的BMPシグナル伝達阻害剤である。
【0016】
次に、前耳上皮(即ち、OEPD)を含む凝集体を、例えば細胞外マトリックスタンパク質の半固体組成物などの半固体培養培地中に包埋する。続いて、包埋した凝集体を、前耳上皮が、組織化された耳胞へ自己集合するまで、Wntアゴニストの存在下で培養する。幾つかの場合において、前耳上皮を含む凝集体を、Wntアゴニストの存在下で、約10日〜約14日(例えば、約10、11、12、13または14日)間培養する。
【0017】
耳胞を含んだ(Otic vesicle-laden)凝集体を、少なくとも約40日(例えば、約40日、約45日、約50日、約60日、約65日、約70日、約75日、またはそれ以上)の間さらに培養し、その間に、機械感覚細胞(例えば、有毛細胞)を含む内耳オルガノイドが獲得される。有毛細胞は、聴覚および平衡を媒介する脊椎動物内耳ならびに側線器官の特殊機械感覚受容体細胞である。
【0018】
凝集体を形成するために、多能性幹細胞のコンフルエントな培養物は、Matrigel(登録商標)などの表面から、凝集塊、凝集体、または単一細胞へと、化学的に、酵素的にまたは機械的に解離させることができる。例示的な実施形態では、解離された細胞(凝集塊、凝集体、または単一細胞として)は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/F12、mTeSR(商標)(StemCell Technologies;バンクーバー、ブリティッシュコロンビア、カナダ)およびTeSR(商標)などのタンパク質を含まない基本培地中の表面上へ蒔かれる。TeSR(商標)の完全な成分および使用方法は、Ludwigらにおいて記載されている。例えば、Ludwig T, et al., "Feeder-independent culture of human embryonic stem cells," Nat. Methods 3:637-646 (2006)およびLudwig T, et al., "Derivation of human embryonic stem cells in defined conditions," Nat. Biotechnol. 24:185-187 (2006)を参照されたい。それらはそれぞれ、その全体が記載されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中の使用に適した他のDMEM配合物として、例えば、X−Vivo(BioWhittaker、ウォーカーズビル、MD)およびStemPro(登録商標)(Invitrogen;カールズバッド、CA)が挙げられる。
【0019】
幾つかの場合において、多能性幹細胞の凝集体は、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤の存在下で培養される。ROCK阻害剤などのキナーゼ阻害剤は、単一細胞および細胞の小さな凝集体を保護することが知られている。例えば、その全体が記載されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0171385号明細書、およびWatanabe K, et al., "A ROCK inhibitor permits survival of dissociated human embryonic stem cells," Nat. Biotechnol. 25:681-686 (2007)を参照されたい。化学的に明確な表面上で多能性細胞生存を著しく増加させるためのROCK阻害剤を以下に示す。本明細書中の使用に適したROCK阻害剤として、(S)−(+)−2−メチル−1−[(4−メチル−5−イソキノリニル)スルホニル]ホモピペラジン二塩酸塩(非公式名称:H−1152)、1−(5−イソキノリンスルホニル)ピペラジン塩酸塩(非公式名称:H−100)、1−(5−イソキノリンスルホニル)−2−メチルピペラジン(非公式名称:H−7)、1−(5−イソキノリンスルホニル)−3−メチルピペラジン(非公式名称:イソH−7)、N−2−(メチルアミノ)エチル−5−イソキノリンスルホンアミド二塩酸塩(非公式名称:H−8)、N−(2−アミノエチル)−5−イソキノリンスルホンアミド二塩酸塩(非公式名称:H−9)、N−[2−p−ブロモシンナミルアミノ)エチル]−5−イソキノリンスルホンアミド二塩酸塩(非公式名称:H−89)、N−(2−グアニジノエチル)−5−イソキノリンスルホンアミド塩酸塩(非公式名称:HA−1004)、1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン二塩酸塩(非公式名称:HA−1077)、(S)−(+)−2−メチル−4−グリシル−1−(4−メチルイソキノリニル−5−スルホニル)ホモピペラジン二塩酸塩(非公式名称:グリシルH−1152)および(+)−(R)−trans−4−(1−アミノエチル)−N−(4−ピリジル)シクロヘキサンカルボキシアミド二塩酸塩(非公式名称:Y−27632)が挙げられるが、これらに限定されない。キナーゼ阻害剤は、細胞が生存して、表面上に結合したままであるほど十分高い濃度で供給され得る。約3μM〜約10μMの阻害剤濃度が適切であり得る。より低濃度では、またはROCK阻害剤が供給されない場合では、未分化細胞は通常、剥離するのに対して、分化細胞は、規定表面に結合したままである。
【0020】
FGF−2は、FGFシグナル伝達のアゴニストであり、FGFシグナル伝達は、例えば、小分子阻害剤PD−173074を使用して拮抗させることができる。BMP4は、BMPシグナル伝達のアゴニストであり、BMPシグナル伝達は、例えば、小分子阻害剤LDN−193189を使用して拮抗させることができる。TGFβ−1およびアクチビンAは、TGFβシグナル伝達のアゴニストであり、TGFβシグナル伝達は、例えば、小分子阻害剤SB−431542を使用して拮抗させることができる。CHIR−99021は、Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路のアゴニストであり、Wnt/β−カテニンシグナル伝達は、例えば、小分子阻害剤XAV−939を使用して拮抗させることができる。他のWntアゴニストとして、分子グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK3)の阻害剤/アンタゴニストが挙げられる。
【0021】
幾つかの場合において、細胞外マトリックスタンパク質の半固体組成物は、Geltrex(登録商標)基底膜マトリックスなどの市販の製品である。Geltrex(登録商標)基底膜マトリックスは、StemPro(登録商標)hESC SFMまたはEssential 8(商標)培地系を使用したヒト多能性幹細胞適用を用いた使用に適している。他の場合において、半固体組成物は、例えば、ラミニン、エンタクチン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、コラーゲン、またはそれらの組合せなどの2つまたはそれ以上の細胞外マトリックスタンパク質を含む。
【0022】
好ましくは、ヒト多能性幹細胞は、その全体が記載されるかのように、参照により本明細書に組み込まれるChen et al., Nature Methods 8:424-429 (2011)に記載されるように、培養培地「DF3S」の規定構成成分を含む化学的に明確な基本培養培地配合物中で培養される。本明細書中で使用する場合、「E7培養培地」および「E7」という用語は、交換可能に使用され、インスリン(20μg/mL)、トランスフェリン(10.67ng/mL)およびヒト線維芽細胞増殖因子2(FGF2)(100ng/mL)をさらに含むように補充されたDF3Sを含むか、またはそれから本質的になる化学的に明確な培養培地を指す。本明細書中で使用する場合、「E8培養培地」および「E8」という用語は、交換可能に使用され、インスリン(20μg/mL)、トランスフェリン(10.67ng/mL)、ヒトFGF2(100ng/mL)およびヒトTGFβ1(トランスフォーミング増殖因子ベータ1)(1.75ng/mL)の添加によって補充されたDF3Sを含むか、またはそれから本質的になる化学的に明確な培養培地を指す。
【0023】
任意の適切な方法を使用して、本明細書中に記載する細胞型に特徴的な生物学的マーカーの発現を検出することができる。例えば、1つまたは複数の生物学的マーカーの有無は、例えば、RNA配列決定、免疫組織化学、ポリメラーゼ連鎖反応、qRT−PCR、または遺伝子発現を検出もしくは測定する他の技法を使用して検出することができる。例示的な実施形態では、本明細書中に提供する方法に従って獲得される細胞集団を、Foxi1、Dlx遺伝子、Pax8、Pax2、Sox3、Eya1、Gata3、Gbx2およびSox9などの前耳上皮細胞および耳プラコードの生物学的マーカーの発現(またはそれらの非存在)に関して評価する。細胞集団においてタンパク質レベルでマーカーの発現を評価する定量的な方法もまた、当該技術分野で公知である。例えば、フローサイトメトリーは、目的の生物学的マーカーを発現するか、またはそれらを発現しない所定の細胞集団における細胞の割合を確定するのに使用される。分化細胞の独自性(identity)はまた、NANOGおよびOCT4などの多能性マーカーのダウンレギュレーション(ヒトES細胞または誘導多能性幹細胞に対して)と関連付けられる。
【0024】
本明細書中で使用する場合、本発明の方法に従う使用に適した「多能性幹細胞」は、3つの胚葉全ての細胞へ分化する能力を有する細胞である。本明細書中の使用に適した多能性細胞は、ヒト胚幹細胞(hESC)およびヒト誘導多能性幹(iPS)細胞を含む。本明細書中で使用する場合、「胚幹細胞」または「ESC」は、胚盤胞の内部細胞塊に由来する多能性細胞または多能性細胞の集団を意味する。Thomson et al., Science 282:1145-1147 (1998)を参照されたい。これらの細胞は、Oct−4、SSEA−3、SSEA−4、TRA−1−60およびTRA−1−81を発現し、細胞質に対する核の高い比および顕著な核小体を有する密集したコロニーとして現れる。ESCは、WiCell Research Institute(マディソン、Wis.)などの供給源から市販されている。本明細書中で使用する場合、「誘導多能性幹細胞」または「iPS細胞」は、元となるそれらの分化体細胞に関して変動する場合があり、効力決定因子の特異的な組に関して変動する場合があり、またそれらを単離するのに使用する培養条件に関して変動する場合があるが、それにも関わらず、元となるそれら各々の分化体細胞と実質的に遺伝的に同一であり、本明細書中に記載するように、ESCなどのより高い効率の細胞に類似した特徴を示す多能性細胞または多能性細胞の集団を意味する。例えば、Yu et al., Science 318:1917-1920 (2007)を参照されたい。
【0025】
誘導多能性幹細胞は、ESCと類似した形態学的特性(例えば、円形、大きな核小体および乏しい細胞質)および成長特性(例えば、約17〜18時間の倍加時間)を示す。さらに、iPS細胞は、多能性細胞特異的マーカー(例えば、Oct−4、SSEA−3、SSEA−4、Tra−1−60またはTra−1−81、但しSSEA−1ではない)を発現する。しかしながら、誘導多能性幹細胞は、胚から即時に得られるわけではない。本明細書中で使用する場合、「胚から即時に得られるわけでない」は、iPS細胞を産生するための開始細胞型が、多分化能細胞などの非多能性細胞または生後の個体から得られる体細胞などの最終分化細胞であることを意味する。
【0026】
ヒトiPS細胞は、本明細書中に記載する方法に従って使用して、特定のヒト対象の遺伝的相補体を有する原始マクロファージおよびミクログリア細胞を獲得することができる。例えば、特定の哺乳動物対象の特定の疾患または障害と関連付けられるか、またはそれから生じる1つまたは複数の特異的な表現型を示す内耳感覚細胞を獲得することは、好適であり得る。かかる場合において、iPS細胞は、当該技術分野で公知の方法に従って、特定のヒト対象の体細胞を再プログラミングすることによって獲得される。例えば、Yu et al., Science 324(5928):797-801 (2009);Chen et al., Nat. Methods 8(5):424-9 (2011);Ebert et al., Nature 457(7227):277-80 (2009);Howden et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 108(16):6537-42 (2011)を参照されたい。誘導多能性幹細胞由来の内耳感覚組織を使用して、例えば特定の疾患を有する個体において内耳感覚組織を再現する組織構築物における薬物候補物をスクリーニングすることができる。誘導多能性幹細胞へ再プログラミングするための対象特異的な体細胞は、バイオプシーまたは他の組織サンプリング方法によって、目的の標的組織から獲得または分離され得る。幾つかの場合において、対象特異的な細胞は、本発明の三次元組織構築物において使用する前に、in vitroで操作される。例えば、対象特異的な細胞は、増殖させることができるか、分化させることができるか、遺伝的に修飾することができるか、ポリペプチド、核酸もしくは他の因子に接触させることができるか、冷凍保存することができるか、またはそうでなければ、三次元組織構築物への導入前に修飾することができる。
【0027】
好ましくは、ヒト多能性幹細胞(例えば、ヒトESCまたはiPS細胞)は、フィーダー層(例えば、線維芽細胞層)、条件培地、またはあまり規定されていないか、もしくは未規定の構成成分を含む培養培地の非存在下で培養される。本明細書中で使用する場合、「化学的に明確な培地」および「化学的に明確な培養培地」という用語はまた、完全に開示されているか、または同定可能な成分の配合物を含有する培養培地を指し、それらの正確な量は、知られているか、または同定可能であり、個々に制御することができる。したがって、培養培地は、(1)培地成分全ての化学的および構造的独自性が未知である場合、(2)培地が、未知量の任意の成分を含有する場合、または(3)その両方の場合に、化学的に明確ではない。化学的に明確な培養培地を使用することによって培養条件を標準化することにより、細胞が細胞培養中に曝露される材料におけるロット間またはバッチ間変動の可能性が最低限に抑えられる。したがって、様々な分化因子の効果は、化学的に明確な条件下で培養された細胞および組織に添加する場合には、より予想可能である。本明細書中で使用する場合、「無血清」という用語は、動物(例えば、ウシ胎児)血液から獲得される血清を含まない細胞培養材料を指す。概して、動物由来の材料の非存在下で(即ち、異種を含まない条件下で)細胞または組織を培養することにより、種間ウイルスもしくはプリオン伝播の可能性が低減または排除される。
【0028】
別記しない限り、本明細書中で使用する技術および科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載する方法および材料に類似するか、またはそれらに等価な任意の方法および材料を、本発明の実施または実験において使用することができるが、好ましい方法および材料を本明細書中に記載する。
【0029】
本明細書中で使用する場合、「から本質的になる培地」は、指定成分およびその基本特性に実質的に影響を及ぼさない成分を含有する培地を意味する。
【0030】
本明細書中で使用する場合、「有効な量」は、本発明に従って、指定細胞効果を誘起するのに十分な作用物質の量を意味する。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「約」は、表明した濃度範囲、密度、温度または時間枠の5%以内を意味する。


本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
ヒト前耳上皮細胞を得る方法であって、
(a)骨形成タンパク質(BMP)、およびトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)シグナル伝達の阻害剤を含む培養培地中で、約8〜約10日間、ヒト多能性幹細胞凝集体を培養するステップと、
(b)(a)の培養した凝集体を、線維芽細胞増殖因子(FGF)、およびBMPシグナル伝達の阻害剤の存在下で約4日間、さらに培養するステップと、
(b)(b)のさらに培養した凝集体を、Wntアゴニストに約4日間接触させるステップであって、それにより、接触させた凝集体内の細胞が、前耳上皮細胞へ分化する、ステップと
を含む方法。
[2]
前記FGFがFGF−2である、請求項1に記載の方法。
[3]
前記BMPが、BMP2、BMP4およびBMP7からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
[4]
BMPシグナル伝達の前記阻害剤が、LDN−193189である、請求項1に記載の方法。
[5]
TGFβ1媒介性シグナル伝達の前記阻害剤が、SB431542およびA−83−01からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
[6]
前記Wntアゴニストが、GSK3の阻害剤である、請求項1に記載の方法。
[7]
GSK3の前記阻害剤が、CHIR99021、塩化リチウム(LiCl)および6−ブロモインジルビン−3’−オキシム(BIO)からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
[8]
ヒト内耳感覚組織を含む三次元組成物を得る方法であって、
(a)細胞外マトリックスタンパク質を含む半固体培養培地中に、請求項1に記載の方法に従って得られたヒト前耳上皮細胞を包埋するステップと、
(b)包埋した前耳上皮細胞を、Wntアゴニストの存在下で約40〜約60日間、包埋した前耳上皮細胞の耳胞への自己集合を促進する条件下で培養し、それにより、ヒト内耳感覚組織を含む三次元組成物が得られる、ステップと
を含む方法。
[9]
前記Wntアゴニストが、GSK3の阻害剤である、請求項8に記載の方法。
[10]
GSK3の前記阻害剤が、CHIR99021、塩化リチウム(LiCl)および6−ブロモインジルビン−3’−オキシム(BIO)からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
[11]
前記細胞外マトリックスが、基底膜抽出物(BME)である、請求項8に記載の方法。
[12]
前記三次元組成物が、1つまたは複数の機械感覚細胞を含む、請求項8に記載の方法。
[13]
前記三次元組成物が、1つまたは複数の感覚ニューロン細胞を含む、請求項8に記載の方法。
[14]
前記三次元組成物が、機械感覚細胞とシナプス結合を形成する1つまたは複数の感覚ニューロン細胞を含む、請求項8に記載の方法。
【0032】
本発明は、下記の非限定的な実施例を熟考して、より完全に理解される。開示する方法は、一般的に多能性幹細胞に適していることが、具体的に意図される。本明細書中に開示する論文および特許は全て、その全体が記載されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
[実施例]
【実施例1】
【0033】
ヒト多能性幹細胞からの、機能性有毛細胞を有する内耳オルガノイドの生成
ヒト内耳は、機械感受性不動毛束を介して音および動きを検出するおよそ20,000個の感覚有毛細胞を含有する。遺伝子突然変異または大きな雑音などの環境障害は、これらの有毛細胞に対して回復不能な損傷を引き起こして、眩暈または聴力損失を引き起こし得る2、3。本発明者らはこれまでに、3D培養系においてFGF、TGFβ、BMPおよびWntシグナル伝達経路の時限操作を使用して、マウス多能性幹細胞(PSC)から内耳オルガノイドをどのように生成するかを示した4〜6。本発明者らは、マウス内耳オルガノイドが、マウス内耳における自然前庭有毛細胞に類似した構造および機能を有する感覚有毛細胞を含有することを示してきた。さらに、本発明者らの過去の見解は、BMPシグナル伝達活性化およびTGFβ阻害が非神経外胚葉を最初に特定し、続くBMP阻害およびFGF活性化が前耳の運命を誘導するという8、9、耳誘導シグナル伝達動態の実用モデルを支持した。幾つかの最近の試みにもかかわらず、ヒトPSC(hPSC)から機能性有毛細胞を獲得するための発生的に忠実なアプローチは、いまだに記載されていない10〜15。ここで、hPSCからヒト内耳組織を生成するために、本発明者らはまず、in vitroでのヒト内耳器官形成の時系列を確立させた(図1A図1B)。内耳は、外胚葉層から生じ、ヒトでは、受胎のおよそ52日後(dpc)までに、第1の最終分化有毛細胞を生じる16。エピブラストにおける多能性細胞から始まって、内耳誘導は、外胚葉上皮の形成を伴って、およそ12dpcで開始される。続いて、上皮は、非神経外胚葉(表面外胚葉としても知られている)および神経外胚葉に分割する(図1A図1B)。非神経外胚葉は、最終的には内耳および皮膚の表皮を生じ、したがって、本発明者らの初期の実験では、本発明者らは、非神経外胚葉上皮の標的誘導に関して、化学的に明確な3D培養系を確立しようとしており、本発明者らは、それから内耳オルガノイドを得ることができた(図1A図1C)。
【0034】
本発明者らはまず、解離ヒト胚幹細胞(hESC、WA25細胞株、WiCell)が、ROCK阻害剤、Y−27632を含有するE8培地において良好に凝集し、化学的に明確な分化培地(これ以降、CDM、図2A図2Hおよび表1)において凝集した細胞と比較して、優れた一様性および細胞生存を示した。
【0035】
【表1】
【0036】
E8培地中での2日間のインキュベーション後、本発明者らは、凝集体を、低濃度のMatrigelおよびFGF−2を含有するCDMへ移動して、凝集体表面上で上皮化および外胚葉分化を刺激した。本発明者らは、BMP4およびTGFβ阻害剤SB−431542(これ以降、「SB」)の組合せが、マウスPSC(mPSC)からの非神経誘導を促進することをこれまでに示した。本発明者らは、10ng/ml BMP4および10μM SBを組み合わせること(「SBB」と称される二重SB/BMP4処理)により、TFAP2およびDLX3などの非神経マーカー遺伝子だけでなく、胚外マーカーCDX2も誘導することを見出した(図1D図3A図3G17。対比して、SB処理単独は、相当するCDX2発現を伴わずに、TFAP2およびDLX3発現の増加をもたらした(図1D)。注目すべきことに、SB処理凝集体の100%は、ヒト胚形成と一致する時間尺度である、分化の4〜6日目までに表面外胚葉形態を伴って、TFAP2E−カドヘリン(ECAD)上皮を生成した(n=15個の凝集体、3回の実験、図1B図1E図3A図3G)。20日の期間にわたって、上皮は、TFAP2ケラチン−5(KRT5)ケラチノサイト様細胞で構成されるシストへと増殖した(図6A図6E)。これらの見解から、本発明者らは、WA25細胞凝集体をSBで処理することが、非神経上皮を誘導するのに十分であると結論付けた。
【0037】
内因性BMP活性が、非神経特定に十分であるかどうかに関心を持ったので、本発明者らは、BMP阻害剤であるLDN−193189で同時処理を実施した(これ以降、LSB;LSBと称される二重LDN/SB処理)。hESC単層培養においてこれまでに示されるように18、WA25凝集体へのLSB処理は、PAX6およびN−カドヘリン(NCAD)などの神経外胚葉マーカーをアップレギュレートして、TFAP2およびECAD発現を消滅させ、内因性BMPシグナルが、非神経変換を駆動させることを示唆した(図1F図7A図7D)。本発明者らのアプローチをさらに確証するために、本発明者らは、ヒトiPSC(mND2−0、WiCell)をSBで処理して、WA25hESCを用いた場合の本発明者らの結果に反して、SBのみの条件が、PAX6神経外胚葉およびTFAP2ECAD神経堤様細胞を生成した(図8A図8G)。本発明者らは、内因性BMPレベルにおける変動が、種々の結末の根底にある可能性があり、BMP濃度を、各細胞株に関して微調整する必要があり得ると推論した。したがって、SB(SBB)に加えて、低濃度のBMP4(2.5ng/ml)は、mND2−0iPSCからTFAP2ECAD非神経上皮を生成することができた(図1G図8A図8G)。SBまたはSBBアプローチのいずれかを用いて、得られた上皮は、mPSCを用いて生成された非上皮に酷似していた5、6。本発明者らのマウス培養と比較して、非神経変換は、ブラキュリ(BRA)中内胚葉細胞のオフターゲット誘導を伴わずに起きる(図9A図9C)。下記データは、SB(WA25)またはSBB(mND2−0)アプローチのいずれかを使用して作成された。
【0038】
次に、本発明者らは、ケラチノサイト決定(commitment)前に、非神経上皮を耳プラコード上皮へ変換しようと試みた。ヒト頭蓋プラコードは、およそ18〜24dpcで生じ、したがって、hPSCは、およそ12dpcの細胞を表すと仮定して、耳プラコードは、適正なシグナル伝達調節によって、分化の最初の6〜12日以内に本発明者らの培養物において発生する(図1B)。FGF活性化およびBMP阻害が、mPSC培養物からの前プラコードおよび耳誘導に必須であるという本発明者らのこれまでの見解に着目して、本発明者らは、4日目の凝集体を、FGF−2およびLDNの組合せ(これ以降、「SBFL」)で処理した。SBFL処理を用いた場合、外側上皮は、SB処理試料に対して肥厚し、PAX8、SOX2、TFAP2、ECADおよびNCADなどの後プラコードマーカーの組合せを発現し、耳プラコードが生じる耳上鰓前駆体ドメイン(OEPD)に類似した表現型を示した(図1H図1K図10A図10D)。最小培地において自己誘導分化を受けることが可能である場合、本発明者らは、SBFL凝集体が、10〜30日目の間にBRN3ATUJ1感覚様ニューロンを生成することを見出した(図11A図11F)。上鰓プラコードおよび耳胞の両方が、感覚ニューロンを生じるため、本発明者らは、どの組織型が発生したかに興味を持った。とりわけ、本発明者らは、耳マーカーPAX2の発現も検出せず、また本発明者らは、SBFL処理凝集体においていかなる小胞も観察せず、それらは耳誘導を示す(データは示していない)。したがって、本発明者らは、SBFL処理が、上鰓ニューロンを誘導するのに十分である場合があるが、まだ耳誘導を開始させることはできないと結論付けた。
【0039】
PAX2発現および小胞形成を促進するために、本発明者らは、様々なシグナル伝達モジュレーターを試験し始めた(図12A図12C)。本発明者らが試験した条件はいずれも、qPCR分析を使用したPAX2遺伝子発現に対して検出可能な効果を持たなかったが、広範な免疫染色により、in vivoでの耳プラコードを連想させる12日目の対照試料の凝集体の上皮におけるPAX2PAX8ECAD細胞の小集団に、本発明者らは注目を集めた(図1L図1N)。本発明者らは、細胞外マトリックスが、小胞形成に関する構造的な支持を提供することができると感じ、したがって、本発明者らは、12日目の凝集体を、最小培地においてMatrigel液滴に移動させた(図4A)。これらの培養物において、本発明者らは、遊走性細胞の放射状の産生を観察したが、小胞様構造またはPAX2細胞は明白ではなかった(図2B)。Wnt活性化は、in vivoで耳の発生に関して必須であるようだが、上鰓発生に関しては必須ではないようであり、in vitroでは、マウス内耳オルガノイドの産生を増強させることができる4、19〜21。注目すべきことに、12〜16日目の間にWntシグナル伝達アゴニストであるCHIR99021で処理したMatrigel(登録商標)包埋凝集体(n=84、7回の実験)の90.9±5.2%において、本発明者らは、in vivoで小胞発生に先行する耳窩を連想させる上皮突出を目の当たりにした(図4C)。本発明者らは、耳窩様構造が、PAX2PAX8SOX2SOX10JAG1であることを確定し、耳独自性を確認した(図4D図4H)。興味深いことに、耳窩は、in vivoでの内耳周囲の間葉に類似して、耳窩周辺に間葉を形成するTFAP2SLUGSOX10頭蓋神経堤様細胞を遊走することに付随した(図4C図4F)。
【0040】
本発明者らは、18日目まで定常液滴に含めた形で凝集体を培養し、続いて、さらなる自己組織化された成熟のために、オービタルシェーカー上の24ウェルプレートまたはスピナーフラスコへそれらを移動し、両方の方式が、匹敵する結果をもたらした。培養の20〜30日目に、小胞は、検査した凝集体の71.7±23.3%の表面の至るところで依然として可視的であった(n=37、3回の実験、図13A図13G)。本発明者らが免疫染色した各凝集体において、本発明者らは、基底ケラチノサイトマーカーTFAP2およびKRT5を発現する中心コア上皮周囲に、多重耳胞を見出した(図4G図4I)。35日目になってようやく、本発明者らは、表皮上皮に部分的に結合されるか、または組み込まれるように見える小胞および耳プラコード様上皮を観察した(図4H)。さらに、より古い小胞(30日を超える)は、転写因子FBXO2を発現し、それは、マウスにおいて内耳上皮を発生させるのに非常に特異的であることが最近わかった(図4I22
【0041】
インキュベーションの40〜60日後に、複雑なマルチチャンバー形態を有する小胞が、凝集体表面の至るところで可視的であった(図4J)。注目すべきことに、本発明者らは、WA25およびmND2−0由来の凝集体の両方における小胞のサブセットが、MYO7A、PCP4、ANXA4、SOX2およびCALB2を含む多重有毛細胞マーカーを発現する細胞を含有する上皮を発生させることを見出した(図4K図4Q図14A図14E)。感覚様上皮はまた、哺乳動物卵形嚢における支持細胞を連想させるSOX2SOX10SPARCL1細胞を含有した23。これらの上皮における管腔細胞は、内耳感覚上皮に特徴的なF−アクチンリッチな尖端接合部を有する形態を伸長させていた(図4L図4O)。有毛細胞マーカーを発現する細胞はまた、アセチル化アルファチューブリン(TUBA4A)動毛と関連付けられる小胞管腔へ突出するF−アクチンリッチで、またエスピン(ESPN)尖端不動毛束を有した(図4M図4P図4R)。まとめると、これらの見解により、hPSC由来の耳胞が、有毛細胞および支持細胞を含有する感覚上皮を有する内耳オルガノイドを生成することが確認される。
【0042】
生細胞画像化および電気生理学的実験を容易にするために、本発明者らは、緑色蛍光タンパク質(eGFP)の増強を伴って、有毛細胞を内因的に標識するように、新規hESCレポーター細胞株を操作した。本発明者らは、有毛細胞誘導および初期熟成中に高度に発現されるATOH1遺伝子の停止コドンで2A−eGFP遺伝子カセットを挿入するためにCRISPR/Cas9系を使用した(図5A。本発明者らは、本発明者らの確立されたプロトコールを使用して2A−eGFPカセットの適正な二対立遺伝子挿入を含有する2つのクローンからの内耳オルガノイド誘導を検証した(これ以降、ATOH1−2A−eGFP細胞)。注目すべきことに、早くも39日目に、本発明者らは、内耳オルガノイドにおいて出現するeGFP有毛細胞様細胞を観察した(データは示していない)。本発明者らは、個々のオルガノイドが多くの場合、数百ものeGFP細胞を伴う多重の別個のパッチを含有することを認めた(図5B図5D)。BRN3CおよびESPNなどの有毛細胞マーカーを用いた免疫染色により、eGFP細胞の有毛細胞独自性が確認された(図5E図5F)。60〜100日目の間に、凝集体の17.4±4.0%が、少なくとも1つの有毛細胞を保有するオルガノイドを含有した(n=146、6回の実験)。有毛細胞誘導の外見上低い効率は、本発明者らが凝集体内の深部にあるオルガノイドを検出することができないことに起因し得るか、または感覚上皮形成に要される内因性シグナルが、凝集体間で変動することが示され得る。とりわけ、60〜100日目の間に検査したWA25およびmND2−0凝集体は全て、SOX10非感覚上皮を有するオルガノイドを含有し、オルガノイド誘導は、非常に再現性があり得るが、非感覚内耳上皮が優先的に誘導されることを示唆した(n=17、4回の実験、図14E)。発生する2A−eGFP有毛細胞は、浮遊培養で150日にわたって維持され、切開および植え継ぎ培養後でさえ、毛束形態を保持することができる(図5B図5F)。
【0043】
最終的に、本発明者らは、得られた有毛細胞が、自然哺乳動物有毛細胞と類似して機能するかどうかに興味を持った。ATOH1−2A−eGFP細胞から生じる凝集体を使用して、本発明者らは、分化の63〜67日目の間に、内耳オルガノイドを切開して、平らにマウントした(flat-mounted)。本発明者らの知る限りでは、これらは、hPSCに由来するヒト有毛細胞の第1の読取りを構成する。細胞は、大きな外向き整流性電流を有したが、Na電流(発生中の齧歯類有毛細胞で見られるが、ほとんどの成熟有毛細胞では存在しない)は、本発明者らの試料においては検出されなかった(図5G図5J)。公称100mVでのK電流振幅は、下記の通りであった:63日目:399、747、340pA;64日目:4695、2538、2609pA;67日目:5198、6528、6127pA。これは、22日目のマウスオルガノイド有毛細胞に関する6099pAの平均値に匹敵する。ステップおよび正弦波電流注入に対する応答(図5H図5I)は、初期ピーク、続く再分極を伴い、脱分極電流よりも加分極電流により大きく偏っており、齧歯類有毛細胞の応答と似ていた。しかしながら、細胞の静止電位は、齧歯類で見られるよりも一貫してわずかに高かった:64日目:−43、−45;67日目:−48、−49mV。おそらく関連して、有毛細胞分化において初期に発生し、全ての齧歯類前庭有毛細胞およびマウスオルガノイド有毛細胞中に存在するKir2.1によって保有されると考えられる顕著な閾値以下の内向き整流性電流は、ヒトオルガノイド細胞において、存在しなかったか、または大幅に低減された(図5K24、25。Kir2.1の発生、発現、機能または調節は、ヒト組織では異なる可能性がある。重要なことに、ほとんどの60日齢を超えるオルガノイドにおいて、および読取りに使用するオルガノイド全てにおいて見られる収縮管腔形態は、メカノトランスダクション分析用の毛束への直接的な接近を厳しくさせた(図5B図5E)。それにもかかわらず、本発明者らのデータは、マウス内耳オルガノイド25と同様に、ヒトオルガノイドは、未熟前庭有毛細胞を含有することを強力に示唆する。
【0044】
結論として、本発明者らは、培養においてヒト内耳オルガノイドの発生を導くための頑強な培養系を確立した(図15)。本発明者らの見解は、in vitroでの前耳誘導の本発明者らのこれまでのモデルをさらに支持し、耳前駆体分化におけるWntシグナル伝達の重要性を強調する。興味深いことに、ヒト内耳オルガノイドの得られた渦巻き状のマルチチャンバー形態は、内耳の膜迷路に非常によく似ており、それは、感覚および非感覚上皮を含有する一連の管およびチャンバーで構成される。さらに、マウスオルガノイドにかなり類似して、hPSC由来のオルガノイドは、デフォルトによって前庭感覚上皮のみを形成するようであり、したがって、さらなるシグナル伝達操作が、蝸牛器官形成を開始するのに必要とされる6、25。本発明者らは、この培養系が、ヒト内耳発生のメカニズムを明らかにして、潜在的な内耳療法を試験するための強力なツールであることを期待する。
【0045】
方法および材料
hPSC培養:ヒトPSC(WA25hESC、継代数22〜50;mND2−0iPSC、継代数28〜46)を、確立したプロトコールに従って、組換えヒトビトロネクチン−N(Invitrogen)でコーティングした6ウェルプレート上で、100μg/ml ノルモシン(Invitrogen)を補充したEssential 8(E8)培地またはEssential 8 Flex培地(E8f)(Invitrogen)中で培養した12、13。80%コンフルエンシーで、または4〜5日毎に、EDTA溶液を使用して、1:10〜1:20の分割比で、細胞を継代培養した。細胞株はともに、WiCell Research Instituteから獲得し、検証および信頼性の記述とともに届けられた。さらなる確証および試験情報は、ワールドワイドウェブ上のwicell.org/home/stem-cell-lines/catalog-of-stem-cell-lines/wa25.cmsxおよびwicell.org/home/stem-cell-lines/catalog-of-stem-cell-lines/mirjt7i-mnd2-0.cmsxで利用可能な細胞株ウェブページに見出すことができる。細胞株は、MycoAlert Mycoplasma検出キット(Lonza)を使用して、マイコプラズマ混入を含まないと確定された。
【0046】
hPSC分化。分化を開始するために、hPSC細胞をStemPro Accutase(Invitrogen)を用いて解離して、1ウェル当たり5,000個の細胞を、20μM Y−27632(Stemgent)およびノルモシンを含有するE8培地中で、96ウェルV底プレート上へ分配した。48時間のインキュベーション後に、凝集体を、4ng ml−1FGF−2(Peprotech)、10μM SB−431542(Stemgent)、および幾つかの実験に関しては、2.5ng ml−1BMP4(Stemgent)、および2%増殖因子低減(GFR)Matrigel(Corning)を含有する化学的に明確な培地(CDM)100μl中で、96ウェルU底プレートへ移動して、非神経誘導を開始させた−即ち、分化0日目。CDMは、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、1×化学的に明確な脂質濃縮物(Invitrogen)、7μg ml−1インスリン(Sigma)、15μg ml−1トランスフェリン(Sigma)、450μM モノチオグリセロールおよびノルモシンをさらに補充した、GlutaMAXを有するF−12栄養分混合物(Gibco)とGlutaMAXを有するイスコブ改変ダルベッコ培地(IMDM;Gibco)の50:50の混合物(Gibco)を含有した(詳細な配合に関しては表1を参照)。4日のインキュベーション後に、250ng ml−1FGF−2(最終濃度50ng/ml)および1μM LDN−193189(最終濃度200nM)を含有するCDM 25μlを、各ウェルにおける既存の100μlの培地に添加した。さらに4日(総計8日)後、CDM 25μlを培地に添加した。幾つかの実験に関しては、18μM CHIR99021(最終濃度3μM;Stemgent)を含有するCDMを、各ウェルにおける既存の125μlの培地に添加して、本発明者らは、この処理が、内耳オルガノイド産生にとって任意選択であるが、耳プラコード様細胞の誘導を改善し得ると確定した。分化の12日目に、凝集体を一緒にプールして、0.5×N2サプリメント(Gibco)、ビタミンAを有さない0.5×B27(Gibco)、1×GlutaMAX(Gibco)、0.1mM β−メルカプトエタノール(Gibco)およびノルモシンを補充した、Advanced DMEM:F12(Gibco)およびNeurobasal培地(Gibco)の50:50の混合物を含有する調製したてのオルガノイド成熟培地(OMM)で洗浄した(詳細な配合に関しては表3を参照)。
【0047】
【表2】
【0048】
表3に記載する配合は、培地50mLを提供し、それは、2週未満で使用すべきである。OMMは、脳および胃オルガノイドを生成するのにこれまでに使用されている2つの培地の特注ハイブリッドである6、7。ビタミンAを有さないB27を使用して、内因的に産生されるレチノイン酸の影響を制限した。
【0049】
凝集体は、氷冷した未希釈GFR Matrigel中に再懸濁させて、100mmの細菌培養プレートの表面上で液滴およそ25μl中に配置させた。37℃で少なくとも30分のインキュベーション後、液滴を3μM CHIR99021を含有するOMM 10ml中に浸した。非液滴耳誘導のために、凝集体を洗浄して、3μM CHIRおよび1%GFR Matrigelを含有するOMM中で、24ウェル低細胞接着プレートの各ウェルへ個々に蒔いた。分化の18日後、CHIRを、洗浄することによって培地から除去して、液滴凝集体を浮遊培養へと動かした。広口1000Pチップを使用して、液滴を慎重に取り出して、125mlの使い捨てスピナーフラスコ(Corning)中の新鮮なOMM 75mlに移動させた。スピナーフラスコは、インキュベーター内攪拌プレート(Thermo Scientific)上で65RPMにて、分化の最大180日間維持した。幾つかの実験に関しては、凝集体は、インキュベーター内オービタルシェーカー(Thermo Scientific)上で、OMM 1ml中で、24ウェル低細胞接着プレートの個々のウェルにおいて、最大140日間維持した。
【0050】
培地構成成分の選択:本発明者らは、規定の欠如またはヒト細胞との乏しい適合性に起因した結果における変動を招き得る2つの培地構成成分を使用した:GFR MatrigelおよびBSA。GFR(増殖因子低減)Matrigelは、0.1pg ml−1未満のFGF−2、0.5ng ml−1未満のEGF、5ng ml−1 IGF−1、5pg ml−1未満のPDGF、0.2ng ml−1未満のNGFおよび1.7ng ml−1 TGFβを含有する。特に、本発明者らは、培養のその相中では培地中にTGFβ阻害剤を含まなかったため、GFR MatrigelにおけるTGFβは、12日目またはそれ以降に、細胞運命特定に影響を与えてきた。GFR Matrigelは、それが、3D培養において多能性幹細胞からの自己組織化用上皮の信頼性のある誘導物質であることが示されているため選択した26。GFR Matrigelは、Egf、Igf1、Fgf2およびTGFβなどの増殖因子の濃度は、細胞運命特定に対してごくわずかな影響を及ぼすはずであるレベルにまで最低限に抑えられている、Matrigelに対するより規定された代替物である。Matrigelに対する他の代替物として、基底膜形成およびPSCを上皮へ分化する自己組織化を支持する合成ヒドロゲルおよび組換えタンパク質ベースのマトリックスが挙げられるが、限定されない。例えば、精製ラミニン/エンタクチン複合体(Corning)は、適切な完全に化学的に明確なの代替物であり得る27。CDMにおいて、BSAは、費用効率がよく、それぞれヒト血清アルブミンおよびポリビニルアルコール(PVA)に対する溶解しやすい代替物として選択された。PVAは、CDM中のBSAに代わる適切な化学的に明確な代用品であることがわかっている28
【0051】
シグナル伝達分子および組換えタンパク質。下記小分子および組換えタンパク質を使用した:組換えヒトBMP4(2.5〜10ng ml−1;Stemgent)、ヒトFGF−2(25ng ml−1;Peprotech)、SB−431542(10μM;Tocris Bioscience)、CHIR99021(3μM;Stemgent)、およびLDN−193189(200nM;Stemgent)。
【0052】
定量的PCR。分析は、ABI PRISM 7900HT配列検出システム(Applied Biosystems)またはBio−Rad CFX96定量的PCR機(Bio−Rad)で、これまでに記載されるように実施した。データは、L27発現(内部対照)に対して標準化され、倍率変化は、ΔΔCT法を使用して、d0 WA25凝集体からのCt値に対して算出した。別記しない限り、データは、別個の実験からの少なくとも3つの別個の生物学的試料を表す。統計学的有意性の指標は全て、所定の条件と対照群との間の比較を指す。プライマーの詳細については、表4を参照されたい。
【0053】
【表3-1】
【0054】
【表3-2】
【0055】
免疫組織化学。凝集体を、4%パラホルムアルデヒドで、室温で20分間、または4℃で一晩固定した。固定した検体を、15%および30%ショ糖の段階的処理で凍結保護し、続いて組織凍結培地中に包埋した。凍結組織ブロックを、Leica CM−1860クリオスタット上で12μmの凍結切片に切片化した。免疫染色に関して、0.1% Triton X−100 1×PBS溶液中の10%ヤギまたはウマ血清をブロッキングに使用し、0.1% Triton X−100 1×PBS溶液中の3%ヤギまたはウマ血清を、一次/二次抗体インキュベーションに使用した。Alexa Fluorコンジュゲート抗マウス、ウサギまたはヤギIgG(Invitrogen)を二次抗体として使用した。DAPIを有するProlong Gold(Thermo Scientific)を使用して、試料をマウントし、細胞核を可視化させた。ホールマウント染色に関して、類似の染色パラダイムを使用したが、Triton X−100濃度を0.5%に増加させ、ブロッキングおよび一次/二次インキュベーションは、37℃にて回転シェーカー上で、それぞれ24時間および48時間行った。各インキュベーション後、試料を、37℃にて回転シェーカー上で、0.5% Triton X−100を含有する1×PBS中で1時間の洗浄を3回行った。ホールマウント試料は、ScaleA2クリアリング溶液中で1〜2日間、またはScaleSQ(5)クリアリング溶液中で1〜2時間マウントした後に画像化した29。顕微鏡法は、Leica DMi8倒立顕微鏡、Nikon TE2000倒立顕微鏡、またはOlympus FV1000−MPE Confocal/Multiphoton顕微鏡で実施した。3D再構築は、Indiana Center for Biological Microscopyで収納されているImaris 8ソフトウェアパッケージ(Bitplane)を使用して実施した。セグメンテーション分析に関して、2A−eGFP細胞は、Imarisにおける「Spots」モジュールを使用して加工処理した。分類は、推定サイズ、品質およびシグナル強度に基づいた。画像の境界に触れる物体は排除した。下記構築パラメーターを使用して、2A−eGFP細胞体を同定した:推定XY直径=3.50μm;推定Z直径=7.00μm;20.0を超える「品質」;0.001μmを超える「境界XYZを画像化するための距離」;1,500を超える「強度中心Ch=1」。原画像フィルムからImarisにおいて、動画を作成し、Adobe Premiere Proで編集して、表題および本文を加えた。抗体のリストに関しては、表5を参照されたい。
【0056】
【表4】
【0057】
電気生理学的記録。ヒトオルガノイドを、62日目に、1×GlutaMax、1×B27サプリメントおよびノルモシンを補充した冷Hibernate A培地中で輸送した。それらは、63日目に、5%COおよび37℃のインキュベーターにおいて、OMMへ戻した。記録日に、オルガノイドは、鋭いタングステン針(Fine Science Tools)を使用してばらばらにして、カバーガラス上にピンで留めた。2A−eGFPシグナルを使用して、有毛細胞を有する領域を見出して、記録に関して有毛細胞を標的とした。ホールセルパッチクランプを、4〜5MΩのガラス電極を用いて、セミインタクト組織に関して実施した。データは、Axopatch 200B増幅器(Molecular Devices)を使用して獲得し、5000Hzでフィルタリングして、続いてDigidata 1322A変換機により20kHzでデジタル化した。記録用ピペット溶液は、135 KCl、5 HEPES、5 EGTA、2.5 MgCl、2.5 K−ATP、0.1 CaClを含有し(mMで)、KOHを用いてpH7.4に調節された。およそ285mmol kg−1。外部溶液は、137 NaCl、5.8 KCl、0.7 NaHPO、10 HEPES、1.3 CaCl、0.9 MgCl、5.6 グルコースを含有し、ビタミンおよび必須アミノ酸(Invitrogen、カールズバッド、CA)を補充し、NaOHを用いてpH7.4に調節された。およそ310mmol kg−1。記録は、40%補正して、細胞は、電位クランプに関して−66mVで維持した。平均値は、記録値±SEMである。
【0058】
ATOH1−2A−eGFPレポーター細胞株の生成。ATOH1の停止コドン領域を標的とするgRNA(5’−TCGGATGAGGCAAGTTAGGA−3’(配列番号17)および5’−GTCACTGTAATGGGAATGGG−3’(配列番号18)、オフセット=0bp)を、CBhプロモーター(Addgene#48873)の制御下でCas9nを発現するpSpCas9n(BB)ベクターにクローニングした30。ドナーベクターを構築するために、抽出したWA25hESCゲノムDNAから増幅させた2つの1kbの相同性アームPCRに隣接される2A−eGFP−PGK−Puroカセット(Addgene#31938)17を、pUC19バックボーンにクローニングした。2つのgRNAベクターおよびドナーベクター、ならびにCMVプロモーターの制御下でCas9nを発現するベクター(Addgene#41816)18を、P3 Primary Cell 4D−Nucleofector XキットおよびProgram CB−150を使用して、4D Nucleofector(Lonza)を用いてWA25hESCにトランスフェクトした。ヌクレオフェクション(nucleofection)後、細胞を、細胞生存率の改善のための1×RevitaCell(Thermo Fisher)、およびより高いHDR効率のための1μMのScr7(Xcessbio)を含有する成長培地中に蒔いた31。0.5μg μl−1ピューロマイシン選択は、ヌクレオフェクションの48時間後に始めて、10日間実施した。2つのLoxP部位に隣接されるPGK−Puroサブカセットを、Creリコンビナーゼ発現ベクター(Addgene#13775)のヌクレオフェクションによるピューロマイシン選択後に、ゲノムから除去した。クローン細胞株を、解離単一hESCの低密度播種(1〜3個の細胞cm−2)によって樹立した後、増殖の5〜7日後に、hESCコロニーの単離を行った。クローン細胞株の遺伝子型を、PCR増幅、続くゲル電気泳動によって、およびTOPOベクターへクローニングされた総PCRアンプリコンまたは個々のPCRアンプリコンのSanger配列決定によって分析した。二対立遺伝子2A−eGFP組込みを有する細胞株を、内耳有毛細胞分化に使用した。
【0059】
統計学的分析。統計学は全て、GraphPad Prism 7ソフトウェアを使用して実施した。Shapiro−Wilk正規性検定は、データが正規分布を有することを確定するために分析前に使用した。統計学的有意性は、一元配置分散分析(ANOVA)、続く対照群(例えば、ビヒクル処理)に対する多重比較用のDunnettの事後検定を使用して確定した。試料群間の変動が類似していることを確定するために、Brown−Forsythe検定を使用した。標本サイズを予め確定するのに統計学的検定を使用せず、研究者らは、治療群に対して盲検ではなく、試料は、無作為化されなかった。
【0060】
代表的なデータおよび再現性。別記しない限り、画像は、少なくとも3回の別個の実験から獲得される検体を代表している。0〜12日目の間の凝集体のIHC分析に関して、本発明者らは通常、各実験における各条件から、3〜6個の凝集体を切片化した。プロトコールの後期段階に関するIHC分析は、実験1回当たり各条件からの少なくとも2個の凝集体で実施した。仕上げの培養方法は、WA25(野生型またはATOH1−2A−eGFP)細胞株を使用して、4人の独立した研究者によって、15回首尾よく再現された。顕著な修飾を含む方法は、mND2−0iPSC株を使用して3回再現された。再現は、12〜18日の間に窩/小胞形成を確認すること、および分化の50〜100日目に少なくとも1つの凝集体において内耳オルガノイドを明確に同定することによって、首尾よいとみなされた。窩が、12〜18日の間に観察されなかった場合、実験は、分析から排除した。
【0061】
参照文献
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【実施例2】
【0062】
耳ニューロン新生のモデリング
12日目の凝集体において、本発明者らは、耳プラコードを連想させるPAX8+PAX2+上皮のパッチを観察し、したがって、本発明者らは、耳胞形成を促進する培養条件に関してアッセイした。対照条件(DMSO)下で、本発明者らは、小胞形成を観察しなかった(データは示していない)。耳誘導は、Wntシグナル伝達に依存しているため、本発明者らは、12日目の凝集体を、12〜18日目の間に、強力なGSK3β阻害剤および公知のWntシグナル伝達アゴニスト27、CHIR99021(CHIR)で処理した。これらの条件下で、PAX8+PAX2+SOX10+小胞は、外側上皮から膨出する(凝集体1個当たりおよそ10〜30個の小胞、図4A図4R)。注目すべきことに、Islet1+(ISL1+)神経芽細胞は、耳胞から離層するようである(図16A図16B)。本発明者らはまた、DMSO処理凝集体において、およびCHIR処理凝集体の非耳内部において、神経芽細胞を確認する(図16A、矢頭)。したがって、本発明者らは、CHIR処理凝集体が、耳(即ち、小胞由来)および上鰓(即ち、上皮由来の)ニューロンの混合物を生じると仮定した(図4Aを参照)。この仮定の裏付けとして、本発明者らは、耳ニューロンのマーカーであるニューロン原性因子Neurog1(NGN1)、および上鰓ニューロンのマーカーであるNeurog2(NGN2)が、CHIR処理凝集体において発現されることを確認した(図16C)。
【0063】
分化の12日後、耳誘導凝集体を、3μM CHIRを含有する培地中のMatrigel液滴に含めた形で細菌皿上に蒔いた。図17A図17Cを参照されたい。22日目に、凝集体を固定して、感覚ニューロンのマーカーであるBRN3AおよびβIII−チューブリン(TUJ1)に関して抗体で免疫染色した。放射上に配向されるBRN3A+TUJ1+ニューロンは、成長円錐を伴って成長中の突起を生じて、オルガノイド培養において、広範な感覚ニューロン新生を確認した。
【0064】
本発明者らの培養系における内耳器官形成のさらなる証拠として、有毛細胞は、60〜70日の培養によってCTBP2斑点を示し、推定リボンシナプス様構造を示した(図18A図18B、n=7個の感覚上皮)。先述したように、本発明者らは、小胞形成段階中に、細胞凝集体において、BRN3a陽性感覚様ニューロンを観察した。さらに、本発明者らは、有毛細胞を有する感覚上皮に対して標的とされるTUJ1ニューロン突起を観察した(図18C)。まとめると、本発明者らの見解により、ヒト内耳オルガノイドモデルは、有毛細胞と感覚ニューロンとの間に感音性回路の構築を再現し得ることが示唆される。
【実施例3】
【0065】
内耳オルガノイドのin vitroでの産生に関する例示的なプロトコール
この実施例は、ヒト多能性幹細胞から非神経外胚葉および内耳感覚組織の形成を誘導するためのプロトコールについて記載する。下記パラグラフにおいてより詳細に記載するように、多能性幹細胞凝集体を、基底膜タンパク質に富んでいるMatrigelを含有する培地中で培養して、凝集体表面上に外胚葉発生および外胚葉上皮の産生を誘導した。次に、本発明者らは、骨形成タンパク質−4(BMP4)および小分子SB−431542(「SB」)などのトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤の組合せ処理を使用して、上皮において非神経分化を促進した。内耳誘導をさらに開始させるために、BMPシグナル伝達を阻害して、初期BMP4およびSB処理のおよそ24時間後に、組換えFGF−2を使用して、線維芽細胞増殖因子(FGF)シグナル伝達を活性化させた。意外にも、組合せ処理プロトコールは、機能性前庭感覚上皮を含有する内耳オルガノイドへ後に発生する耳胞の自己組織化を開始させた。
【0066】
方法
ビトロネクチンでコーティングされたプレート上でのE8培地におけるES細胞培養(ステップ1〜ステップ7)。本発明者らは、フィーダーを含まない条件下でE8培地において本発明者らのhPS細胞を維持して、継代培養にEDTAを使用する(Beersらによるこれまでのプロトコールを参照)。hPS細胞維持のこの方法は、本発明者らが扱う限り、限られた時間および労力で自発的な分化を低減させるので、本発明者らは、それを好む。
【0067】
非神経外胚葉および前耳誘導(ステップ8〜ステップ27)。分化を開始するために、hPS細胞を解離させて、96ウェルV底プレート上へ、ウェル1個当たり5,000個の細胞を分配した。この初期凝集ステップに関して、本発明者らは、強力なROCKシグナル伝達阻害剤であるY−27632を含有するE8培地を使用する。ROCKシグナル伝達阻害は、hPS細胞において、解離誘導性アポトーシスの量を制限することがわかっている。さらに、本発明者らは、E8培地における凝集が細胞生存に役立ち、より一様な細胞凝集体をもたらし、それは、プロトコールの再現性に影響を与えることを見出した。SB処理は、TGFβを阻害して、外胚葉発生を誘導する。内因性BMPシグナル伝達は、神経外胚葉ではなく、非神経外胚葉を生成する。FGF−2およびLDN処理は、前プラコード発生を誘導する。8日目までに、外側上皮は、PAX8を発現し始めて、耳上鰓プラコード(OEPD)様特性を示す。8日目のCHIR処理は、PAX2+細胞の小さなパッチを誘導して、12日目までに耳プラコード発生の最も初期の兆候を示す。
【0068】
耳プロセンサリー(prosensory)胞および内耳オルガノイド形成(ステップ28〜ステップ43)。低濃度の細胞外マトリックスタンパク質(例えば、Matrigel(商標))は、耳胞形成を支持しないようである。耳プラコード様パッチが、耳胞として上皮から膨出してくびれ切れるように促すために、本発明者らは、Matigel中に12日目の凝集体を包埋した。Matrigelに包埋した凝集体を、細胞皿の表面上に硬化させて、組織自己組織化を支持することがこれまで示されているN2およびB27サプリメントを含有する無血清培地(これ以降、オルガノイド培地)中に浸す。この支持的環境は、CHIRへの継続曝露と組み合わせて、12〜18日目の間に、多数の小胞を、上皮から発芽させる。耳胞形成は、4回の独立した実験にわたって95%を超える凝集体において観察された。さらに、12〜18日目の間に、神経芽細胞は、上皮の他の部分から離層して、感覚ニューロンへ分化する。これらの感覚ニューロンが、頭蓋神経VII、IXおよびXのニューロンなどの上鰓ニューロン、または前庭もしくはらせん神経節ニューロンなどの内耳ニューロンであるかどうかは、現時点で明らかでない。間葉含有軟骨細胞前駆細胞の形成もまた観察された。しかしながら、軟骨細胞前駆細胞が、外胚葉上皮から生じたか、または中胚葉細胞の別の集団から生じたかどうかは明らかではなかった。
【0069】
18日目に、Matrigel(登録商標)に包埋した凝集体を、静置培養皿から取り出して、任意の添加増殖因子または小分子を欠如するオルガノイド培地を含有するスピナーフラスコへピペッティングした(pipetted)。総計22日後に、10〜30個の小胞が、位相差画像法を使用して、各凝集体において観察された。これらの小胞は、PAX2、PAX8、SOX2およびJAG1タンパク質を発現した。これは耳細胞運命を示す。小胞は、22〜35日目の間には、ゆっくりと成長するように見え、それらが包埋される間葉系細胞塊の高まる密度に起因して、この期間中に位相差画像法を使用して小胞を観察することが困難となった。35〜40日目までに、小胞は概して、凝集体内部においてよりはっきり見えた。小胞は通常、簡素な球状または卵形状の耳胞と対比して、渦巻き状のマルチチャンバー形態を示した。45日目までに、小胞は、MYO7A有毛細胞様細胞を発生させて、内耳オルガノイドとして同定された。60〜80日目の間に、本発明者らは、F−アクチンリッチで、かつEspin毛束を有するMYO7A有毛細胞を観察し、決定的な有毛細胞独自性を示した。
【0070】
材料および試薬
hpSC培養:ヒトPSC(WA25hESC、継代数22〜50;mND2−0iPSC、継代数28〜46)を、確立したプロトコールに従って、組換えヒトビトロネクチン−N(Invitrogen)でコーティングした6ウェルプレート上で、100μg/ml ノルモシン(Invitrogen)を補充したEssential 8(E8)培地またはEssential 8 Flex培地(E8f)(Invitrogen)中で培養した12、13。80%コンフルエンシーで、または4〜5日毎に、EDTA溶液を使用して、1:10〜1:20の分割比で、細胞を継代培養した。細胞株はともに、WiCell Research Instituteから獲得し、検証および信頼性の記述とともに届けられた。さらなる確証および試験情報は、ワールドワイドウェブ上のwicell.org/home/stem-cell-lines/catalog-of-stem-cell-lines/wa25.cmsxおよびwicell.org/home/stem-cell-lines/catalog-of-stem-cell-lines/mirjt7i-mnd2-0.cmsxで利用可能な細胞株ウェブページに見出すことができる。細胞株は、MycoAlert Mycoplasma検出キット(Lonza)を使用して、マイコプラズマ混入を含まないと確定された。
【0071】
この例示的なプロトコールにおいて使用する他の試薬を表6に記載する。
【0072】
【表5】
【0073】
培養培地およびストック溶液
ヒト組換えBMP7ストック溶液(100ng/μL):バイオセーフティキャビネットにおいて、滅菌4mM HCL 100μLを、BMP7 10μgに添加する;溶液をボルテックスして、卓上用遠心分離機において遠心沈殿させる。BMP4溶液を5μL分取量で、−20℃にて6カ月間または−80℃で1年間保管する。
【0074】
ヒト組換えFGF−2ストック溶液(200ng/μL):バイオセーフティキャビネットにおいて、滅菌PBSまたは5mM Tris(pH7.6) 250μLを、FGF−2 50μgに添加する;溶液をボルテックスして、卓上用遠心分離機において遠心沈殿させる。FGF−2溶液を6μL分取量で、−20℃にて6カ月間または−80℃で1年間保管する。
【0075】
ヒトトランスフェリンストック溶液(20mg/mL):バイオセーフティキャビネットにおいて、IMDM 5ml中に組換えヒトトランスフェリン100mgを溶解させる。完全に溶解させるために、チューブをボルテックスして、それを回転シェーカー上に、室温(RT)で5〜10分間配置する。トランスフェリン溶液を150μL分取量で、−20℃にて6カ月間または−80℃で1年間保管する。
【0076】
EDTA溶液(hES細胞を継代培養するため):バイオセーフティキャビネットにおいて、0.5M EDTA 50μlを、DPBS 50mlへ混合する。溶液を濾過滅菌する。EDTA溶液は、RTで6カ月間保管することができる。
【0077】
化学的に明確な培地(CDM):CDM 200mLを調製するために、250mLの瓶中にBSA 1gを量り分ける。F−12栄養分混合物+GlutaMAX 100mL、IMDM+GlutaMAX 100mL、化学的に明確な脂質濃縮物2mL、インスリン140μL、トランスフェリン150μLおよび1−チオグリセロール8μL中にBSAを溶解させる。低タンパク質結合フィルターを使用して、フィルターを滅菌する。CDMは、最大2週間使用され、4℃で保管されるべきである。CDM1mL当たり2μlの希釈で、使用直前にノルモシンを培地に添加する。迅速な参照レシピについては、表1を参照されたい。
【0078】
分化CDM:50mLのコニカルチューブにおいて、氷冷Geltrex 450μLを、氷冷CDM 34.5mLに添加する(最終濃度1.25%)。チューブを十分にボルテックスして、Geltrexを完全に溶解させる。この溶液30mLを、新たな50mLのコニカルチューブ中に配置させる。FGF−2 0.6μL(最終濃度4ng/mL)およびSB−431542 30μL(最終濃度10μM)を添加する。チューブを十分にボルテックスして、混合する。分化CDMは、分化の0日目に新鮮な状態にすべきである。CDM+Geltrexの残り5mLを使用して、蒔く前に凝集体を洗浄する。
【0079】
オルガノイド成熟培地(OMM):OMM 50mLを調製するために、Advanced DMEM/F12 24.5mL、Neurobasal培地 24.5mL、ビタミンAを有さないB−27サプリメント500μL、GlutaMAX 500μL、N2−サプリメント250μLおよびノルモシン100μLを、滅菌50mLのコニカルチューブにおいて組み合わせる。OMMは、4℃で保管される場合、最大2週間使用することができる。迅速な参照レシピについては、表3を参照されたい。
【0080】
手順
hES細胞維持および継代培養:
1.バイオセーフティキャビネットにおいて、DPBS 6mL中にビトロネクチン60μLを希釈して、希釈したビトロネクチン1mLを、6−ウェル培養プレートの各ウェルに添加する。RTで少なくとも1時間インキュベートして、平均時間で、ステップ2に進む。
【0081】
2.ノルモシンを含有するE8培地 少なくとも20mLをRTに平衡化する。
【0082】
3.70〜80%コンフルエントなhES細胞の解離を始めるために、消費したE8培地を1つのウェルから吸引して、DPBSで二度洗浄する。
【0083】
4.EDTA溶液1mLを添加して、37℃のインキュベーター中で、4〜8分間インキュベートする。顕微鏡下で、孔がコロニーの中心で形成されたことを確認する。
【0084】
5.EDTAインキュベーション中に、ビトロネクチン溶液を6ウェルプレートから除去して、E8培地1.5mLを各ウェルに迅速に添加した後、表面を乾燥させる。
【0085】
6.解離した細胞を、E8培地6mLへ収集する。重要:培地を激しく粉砕して、細胞クラスターをプレートから除去する必要がある場合がある。細胞をオーバーピペッティングして(over pipet)はならない。これは、アポトーシスを引き起こすためである。気泡を培地へ導入しないように注意を払うべきである。
【0086】
7.細胞を、調製した6ウェルプレート(ステップ5からの)上に蒔く。次に細胞を分割したい場合に基づいて、プレーティング密度を選択する。本発明者らは通常、細胞懸濁液500mL(2〜3日で継代培養)または250μL(4〜5日で継代培養)を、各ウェルに添加する。細胞を、継代培養または実験における使用の準備が整うまで、37℃にて5.0%CO中でインキュベートする。
【0087】
hES細胞分化(−2日目〜0日目まで);凝集:
8.バイオセーフティキャビネットにおいて、E8培地とノルモシンとを22mLおよび10mLを含有するコニカルチューブを調製する。Y−27632 44μLを、22mLのチューブに(最終濃度20μM、これ以降、E8−Y20)、およびY−27632 10μLを、10mLのチューブに(最終濃度10μM、これ以降、E8−Y10)添加する。
【0088】
9.細胞が、70〜80%コンフルエントである場合、E8培地を1つのウェルから吸引して、RTにてDPBSで三度洗浄する。
【0089】
10.TrypLE 350μLを添加して、37℃で2〜4分間インキュベートする。インキュベーション後、プレートを水平方向に振とうして、細胞をばらばらにする。顕微鏡下で、細胞が、円形であり、プレートの表面から剥離されることを確認する。
【0090】
11.解離した細胞を、E8−Y10培地5mLへ収集して、それらを15mLのコニカルチューブに移動する。
【0091】
12.細胞クランプを、P1000チップを用いてピペッティングすることによって単一細胞へと崩壊する。細胞を、200gで5分間の遠心分離によってペレット化する。
【0092】
13.上清を完全に除去して、細胞ペレットを、E8−Y10培地1mL中に再懸濁する。
【0093】
14.E8−Y10培地1mLを、細胞濾過器最上部の試験管に通して力強くピペッティングして、濾過器を準備する。hES細胞懸濁液1mLを、ピペッティングにより細胞濾過器上へ滴下する。次に、E8−Y10培地1mLを、ピペッティングにより細胞濾過器上へ滴下する。試験管中に3mLが存在すべきである。このステップは、細胞が完全に単一細胞に解離されることを保証するのに重要である。
【0094】
15.P1000チップを用いてピペッティングすることによって細胞懸濁液を混合して、血球計数器または自動細胞計数器を使用して、細胞の濃度を確定する。
【0095】
16.適切な容量の細胞懸濁液を、E8−Y20培地22mL中に希釈して、1mL当たり50,000個の細胞の最終濃度(即ち、1.1×10個の総細胞)を獲得する。例えば、細胞懸濁液が、1mL当たり1×10個の細胞を含有する場合、細胞懸濁液1.1mL(1.1×10個を1×10個で割る)は、E8−Y20培地20.9mL中に希釈する。数回反転させて、混合する。
【0096】
17.細胞懸濁液を容器に注ぎ、マルチチャネルピペットを使用して、細胞懸濁液100μlを、2つの96ウェルV底プレートの各ウェルに分取する。
【0097】
18.RTにて120gで5分間、プレートを遠心沈殿させる。
【0098】
19.プレートを、5.0%CO2を有する37℃のインキュベーター中で、48時間インキュベートする。24時間後、新鮮なE8培地(Y−27632を含有しない)50μlを、各ウェルに添加する。
【0099】
分化0日目:分化CDMへの移動
20.Geltrex、FGF−2およびSB−431542を含有する分化CDM30mlを調製する。培地をRTに平衡化させる。
【0100】
21. 125μl(即ち、各ウェルの容量よりも25μl少ない)に設定したマルチチャネルピペットを用いて、ステップ18からの96ウェルプレートの各ウェルから凝集体を慎重に。細菌皿中に凝集体を堆積させ、続いてそれらを2mlのチューブに移動する。
【0101】
22.凝集体を、CDMで少なくとも三度洗浄して、微量のE8培地を完全に除去する。
【0102】
23.凝集体を分化CDM中に再懸濁させて、それらを新たな細菌皿に移動する。
【0103】
24.P200ピペットを使用して、各凝集体を、培地100μlにおいて、2つの96ウェルU底プレートの各ウェルに個々に移動する。この段階で凝集体を確認することが困難である場合がある。本発明者らは通常、無反射白色表面(例えば、キムワイプ)上に細菌皿に配置して、凝集体のコントラストを増強する。
【0104】
25.プレートをインキュベーターに4日間戻す。凝集体の形態を毎日観察する。
【0105】
分化4日目:FGF−2およびLDN−193189(FGF/LDN)の添加
26. 15mlのコニカルチューブにおいて、FGF−2およびLDN−193189を、5倍濃度でCDMに添加する。例えば、本発明者らは、200ng/μl FGF−2 6.25μlおよび10mM LDN−193189 0.5μLを、CDM 5mlに添加する。
【0106】
27.FGF/LDNを含有するCDM 25μlを、ステップ24からのプレートの各ウェルに添加する。各ウェルはここで、50ng/ml FGF−2および200nM LDN−193189の最終濃度を有する培地125μlを含有する。細胞をさらに4日間インキュベートする。
【0107】
28.15mlのコニカルチューブにおいて、CHIR99021を、6倍濃度でCDMに添加する。例えば、本発明者らは、10mM CHIR99021 9μlを、CDM 5mlに添加する。
【0108】
29.CHIRを含有するCDM 25μlを、ステップ26からのプレートの各ウェルに添加する。各ウェルはここで、3μM CHIRの最終濃度を有する培地125μlを含有する。細胞をさらに4日間インキュベートする。
【0109】
分化12日目:静置ECM培養への移行
30.下記ステップを実施する約2時間前に、Geltrex 1ml分取量を冷凍庫から取り出し、それを氷上でまたは冷蔵庫内で、完全に融解させる。
【0110】
31.50mlのコニカルチューブにおいて、オルガノイド培地50mlを調製する。
【0111】
32.カットしたP1000ピペットチップを使用して、凝集体を、ステップ28におけるプレートの各ウェルから、2mlのチューブに移動する。
【0112】
33.凝集体をチューブの底部で定着させて、続いて、培地を慎重に吸引する。
【0113】
34.凝集体を、RTオルガノイド培地1〜2mlで少なくとも三度洗浄する。最終洗浄後に、できる限り多くの培地を除去する。
【0114】
35.凝集体を氷冷Geltrex中に再懸濁させる。ピペットを20μlに設定して、凝集体を100mmの細菌皿に個々に移動する。本発明者らは通常、20〜30液滴を各プレートに添加する。種々の方向でプレートを穏やかに振とうすることは、液滴を、平らにして、プレートの表面に接着させるのに役立つ。Geltrexは、RTで10〜15分後に、重合し始める。凝集体/Geltrex混合物が、ピペッティングステップ間で配置され得る場合、バイオセーフティキャビネットにおいて氷の小さな容器を保持することが推奨される。
【0115】
36.培地を有さないプレートを、37℃で30分間インキュベートする。
【0116】
37.CHIRを含有するオルガノイド培地10〜12mlを添加する。液滴がプレートから剥離しないように、オルガノイド培地をゆっくりと添加する。幾つかの液滴が剥離されてもかまわない。
【0117】
38.細胞をさらに6日間インキュベートする。培地半分の交換を3日後に実施する。
【0118】
分化18日目:スピナーフラスコへの移行
39.広口P1000チップを使用して、各凝集体を、細菌皿の表面から掻把して、ピペットで吸い上げる。凝集体を2mlのチューブに移動する。
【0119】
40.凝集体をオルガノイド培地で三度洗浄する。
【0120】
41.オルガノイド培地50〜75mlを、125mlのスピナーフラスコへ注ぐ。
【0121】
42.凝集体をスピナーフラスコへ添加する。側面ポートが1/4回転で開放されることを確認し、スピナーフラスコを、インキュベーターにおいて、攪拌機プレート上に配置させる。攪拌機制御器を60〜65rpmで設定する。
【0122】
43.細胞をさらに22〜42日間インキュベートする。培地は毎週完全に交換する。より長期の実験に関しては、凝集体は、スピナーフラスコ中で無制限に保持することができる。発生をモニタリングするために、本発明者らは、広口P1000を使用して、凝集体を細菌皿に定期的に移動して、倒立顕微鏡を使用して画像化する。
【0123】
タイミング
ステップ1〜ステップ7、hES細胞の維持および継代培養:30分
ステップ8〜ステップ19、hES細胞分化:凝集:40分
ステップ20〜ステップ25、分化0日目:分化CDMへの移動:1時間
ステップ26〜ステップ27、分化4日目:FGF−2およびLDN−193189の添加:20分
ステップ28〜ステップ29、分化8日目:CHIR99021の添加:20分
ステップ30〜ステップ38、分化12日目:静置ECM培養への移行:45分
ステップ39〜ステップ43、分化18日目:バイオリアクターへの移行:30分
ステップ1〜ステップ43、内耳オルガノイドを生成するための総時間:45〜60日から1年超。

図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15
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図17
図18
図19-1】
図19-2】
図20