【実施例1】
【0033】
ヒト多能性幹細胞からの、機能性有毛細胞を有する内耳オルガノイドの生成
ヒト内耳は、機械感受性不動毛束を介して音および動きを検出するおよそ20,000個の感覚有毛細胞を含有する
1。遺伝子突然変異または大きな雑音などの環境障害は、これらの有毛細胞に対して回復不能な損傷を引き起こして、眩暈または聴力損失を引き起こし得る
2、3。本発明者らはこれまでに、3D培養系においてFGF、TGFβ、BMPおよびWntシグナル伝達経路の時限操作を使用して、マウス多能性幹細胞(PSC)から内耳オルガノイドをどのように生成するかを示した
4〜6。本発明者らは、マウス内耳オルガノイドが、マウス内耳における自然前庭有毛細胞に類似した構造および機能を有する感覚有毛細胞を含有することを示してきた
7。さらに、本発明者らの過去の見解は、BMPシグナル伝達活性化およびTGFβ阻害が非神経外胚葉を最初に特定し、続くBMP阻害およびFGF活性化が前耳の運命を誘導するという
8、9、耳誘導シグナル伝達動態の実用モデルを支持した。幾つかの最近の試みにもかかわらず、ヒトPSC(hPSC)から機能性有毛細胞を獲得するための発生的に忠実なアプローチは、いまだに記載されていない
10〜15。ここで、hPSCからヒト内耳組織を生成するために、本発明者らはまず、in vitroでのヒト内耳器官形成の時系列を確立させた(
図1A、
図1B)。内耳は、外胚葉層から生じ、ヒトでは、受胎のおよそ52日後(dpc)までに、第1の最終分化有毛細胞を生じる
16。エピブラストにおける多能性細胞から始まって、内耳誘導は、外胚葉上皮の形成を伴って、およそ12dpcで開始される。続いて、上皮は、非神経外胚葉(表面外胚葉としても知られている)および神経外胚葉に分割する(
図1A、
図1B)。非神経外胚葉は、最終的には内耳および皮膚の表皮を生じ、したがって、本発明者らの初期の実験では、本発明者らは、非神経外胚葉上皮の標的誘導に関して、化学的に明確な3D培養系を確立しようとしており、本発明者らは、それから内耳オルガノイドを得ることができた(
図1A〜
図1C)。
【0034】
本発明者らはまず、解離ヒト胚幹細胞(hESC、WA25細胞株、WiCell)が、ROCK阻害剤、Y−27632を含有するE8培地において良好に凝集し、化学的に明確な分化培地(これ以降、CDM、
図2A〜
図2Hおよび表1)において凝集した細胞と比較して、優れた一様性および細胞生存を示した。
【0035】
【表1】
【0036】
E8培地中での2日間のインキュベーション後、本発明者らは、凝集体を、低濃度のMatrigelおよびFGF−2を含有するCDMへ移動して、凝集体表面上で上皮化および外胚葉分化を刺激した。本発明者らは、BMP4およびTGFβ阻害剤SB−431542(これ以降、「SB」)の組合せが、マウスPSC(mPSC)からの非神経誘導を促進することをこれまでに示した
6。本発明者らは、10ng/ml BMP4および10μM SBを組み合わせること(「SBB」と称される二重SB/BMP4処理)により、TFAP2およびDLX3などの非神経マーカー遺伝子だけでなく、胚外マーカーCDX2も誘導することを見出した(
図1D;
図3A〜
図3G)
17。対比して、SB処理単独は、相当するCDX2発現を伴わずに、TFAP2およびDLX3発現の増加をもたらした(
図1D)。注目すべきことに、SB処理凝集体の100%は、ヒト胚形成と一致する時間尺度である、分化の4〜6日目までに表面外胚葉形態を伴って、TFAP2
+E−カドヘリン(ECAD)
+上皮を生成した(n=15個の凝集体、3回の実験、
図1B〜
図1E、
図3A〜
図3G)。20日の期間にわたって、上皮は、TFAP2
+ケラチン−5(KRT5)
+ケラチノサイト様細胞で構成されるシストへと増殖した(
図6A〜
図6E)。これらの見解から、本発明者らは、WA25細胞凝集体をSBで処理することが、非神経上皮を誘導するのに十分であると結論付けた。
【0037】
内因性BMP活性が、非神経特定に十分であるかどうかに関心を持ったので、本発明者らは、BMP阻害剤であるLDN−193189で同時処理を実施した(これ以降、LSB;LSBと称される二重LDN/SB処理)。hESC単層培養においてこれまでに示されるように
18、WA25凝集体へのLSB処理は、PAX6およびN−カドヘリン(NCAD)などの神経外胚葉マーカーをアップレギュレートして、TFAP2およびECAD発現を消滅させ、内因性BMPシグナルが、非神経変換を駆動させることを示唆した(
図1F、
図7A〜
図7D)。本発明者らのアプローチをさらに確証するために、本発明者らは、ヒトiPSC(mND2−0、WiCell)をSBで処理して、WA25hESCを用いた場合の本発明者らの結果に反して、SBのみの条件が、PAX6
+神経外胚葉およびTFAP2
+ECAD
−神経堤様細胞を生成した(
図8A〜
図8G)。本発明者らは、内因性BMPレベルにおける変動が、種々の結末の根底にある可能性があり、BMP濃度を、各細胞株に関して微調整する必要があり得ると推論した。したがって、SB(SBB)に加えて、低濃度のBMP4(2.5ng/ml)は、mND2−0iPSCからTFAP2
+ECAD
+非神経上皮を生成することができた(
図1G、
図8A〜
図8G)。SBまたはSBBアプローチのいずれかを用いて、得られた上皮は、mPSCを用いて生成された非上皮に酷似していた
5、6。本発明者らのマウス培養と比較して、非神経変換は、ブラキュリ(BRA)
+中内胚葉細胞のオフターゲット誘導を伴わずに起きる(
図9A〜
図9C)。下記データは、SB(WA25)またはSBB(mND2−0)アプローチのいずれかを使用して作成された。
【0038】
次に、本発明者らは、ケラチノサイト決定(commitment)前に、非神経上皮を耳プラコード上皮へ変換しようと試みた。ヒト頭蓋プラコードは、およそ18〜24dpcで生じ、したがって、hPSCは、およそ12dpcの細胞を表すと仮定して、耳プラコードは、適正なシグナル伝達調節によって、分化の最初の6〜12日以内に本発明者らの培養物において発生する(
図1B)。FGF活性化およびBMP阻害が、mPSC培養物からの前プラコードおよび耳誘導に必須であるという本発明者らのこれまでの見解に着目して、本発明者らは、4日目の凝集体を、FGF−2およびLDNの組合せ(これ以降、「SBFL」)で処理した。SBFL処理を用いた場合、外側上皮は、SB処理試料に対して肥厚し、PAX8、SOX2、TFAP2、ECADおよびNCADなどの後プラコードマーカーの組合せを発現し、耳プラコードが生じる耳上鰓前駆体ドメイン(OEPD)に類似した表現型を示した(
図1H〜
図1K;
図10A〜
図10D)。最小培地において自己誘導分化を受けることが可能である場合、本発明者らは、SBFL凝集体が、10〜30日目の間にBRN3A
+TUJ1
+感覚様ニューロンを生成することを見出した(
図11A〜
図11F)。上鰓プラコードおよび耳胞の両方が、感覚ニューロンを生じるため、本発明者らは、どの組織型が発生したかに興味を持った。とりわけ、本発明者らは、耳マーカーPAX2の発現も検出せず、また本発明者らは、SBFL処理凝集体においていかなる小胞も観察せず、それらは耳誘導を示す(データは示していない)。したがって、本発明者らは、SBFL処理が、上鰓ニューロンを誘導するのに十分である場合があるが、まだ耳誘導を開始させることはできないと結論付けた。
【0039】
PAX2発現および小胞形成を促進するために、本発明者らは、様々なシグナル伝達モジュレーターを試験し始めた(
図12A〜
図12C)。本発明者らが試験した条件はいずれも、qPCR分析を使用したPAX2遺伝子発現に対して検出可能な効果を持たなかったが、広範な免疫染色により、in vivoでの耳プラコードを連想させる12日目の対照試料の凝集体の上皮におけるPAX2
+PAX8
+ECAD
+細胞の小集団に、本発明者らは注目を集めた(
図1L〜
図1N)。本発明者らは、細胞外マトリックスが、小胞形成に関する構造的な支持を提供することができると感じ、したがって、本発明者らは、12日目の凝集体を、最小培地においてMatrigel液滴に移動させた(
図4A)。これらの培養物において、本発明者らは、遊走性細胞の放射状の産生を観察したが、小胞様構造またはPAX2
+細胞は明白ではなかった(
図2B)。Wnt活性化は、in vivoで耳の発生に関して必須であるようだが、上鰓発生に関しては必須ではないようであり、in vitroでは、マウス内耳オルガノイドの産生を増強させることができる
4、19〜21。注目すべきことに、12〜16日目の間にWntシグナル伝達アゴニストであるCHIR99021で処理したMatrigel(登録商標)包埋凝集体(n=84、7回の実験)の90.9±5.2%において、本発明者らは、in vivoで小胞発生に先行する耳窩を連想させる上皮突出を目の当たりにした(
図4C)。本発明者らは、耳窩様構造が、PAX2
+PAX8
+SOX2
+SOX10
+JAG1
+であることを確定し、耳独自性を確認した(
図4D〜
図4H)。興味深いことに、耳窩は、in vivoでの内耳周囲の間葉に類似して、耳窩周辺に間葉を形成するTFAP2
+SLUG
+SOX10
+頭蓋神経堤様細胞を遊走することに付随した(
図4C〜
図4F)。
【0040】
本発明者らは、18日目まで定常液滴に含めた形で凝集体を培養し、続いて、さらなる自己組織化された成熟のために、オービタルシェーカー上の24ウェルプレートまたはスピナーフラスコへそれらを移動し、両方の方式が、匹敵する結果をもたらした。培養の20〜30日目に、小胞は、検査した凝集体の71.7±23.3%の表面の至るところで依然として可視的であった(n=37、3回の実験、
図13A〜
図13G)。本発明者らが免疫染色した各凝集体において、本発明者らは、基底ケラチノサイトマーカーTFAP2およびKRT5を発現する中心コア上皮周囲に、多重耳胞を見出した(
図4G〜
図4I)。35日目になってようやく、本発明者らは、表皮上皮に部分的に結合されるか、または組み込まれるように見える小胞および耳プラコード様上皮を観察した(
図4H)。さらに、より古い小胞(30日を超える)は、転写因子FBXO2を発現し、それは、マウスにおいて内耳上皮を発生させるのに非常に特異的であることが最近わかった(
図4I)
22。
【0041】
インキュベーションの40〜60日後に、複雑なマルチチャンバー形態を有する小胞が、凝集体表面の至るところで可視的であった(
図4J)。注目すべきことに、本発明者らは、WA25およびmND2−0由来の凝集体の両方における小胞のサブセットが、MYO7A、PCP4、ANXA4、SOX2およびCALB2を含む多重有毛細胞マーカーを発現する細胞を含有する上皮を発生させることを見出した(
図4K〜
図4Q、
図14A〜
図14E)。感覚様上皮はまた、哺乳動物卵形嚢における支持細胞を連想させるSOX2
+SOX10
+SPARCL1
+細胞を含有した
23。これらの上皮における管腔細胞は、内耳感覚上皮に特徴的なF−アクチンリッチな尖端接合部を有する形態を伸長させていた(
図4L〜
図4O)。有毛細胞マーカーを発現する細胞はまた、アセチル化アルファチューブリン(TUBA4A)
+動毛と関連付けられる小胞管腔へ突出するF−アクチンリッチで、またエスピン(ESPN)
+尖端不動毛束を有した(
図4M〜
図4P、
図4R)。まとめると、これらの見解により、hPSC由来の耳胞が、有毛細胞および支持細胞を含有する感覚上皮を有する内耳オルガノイドを生成することが確認される。
【0042】
生細胞画像化および電気生理学的実験を容易にするために、本発明者らは、緑色蛍光タンパク質(eGFP)の増強を伴って、有毛細胞を内因的に標識するように、新規hESCレポーター細胞株を操作した。本発明者らは、有毛細胞誘導および初期熟成中に高度に発現されるATOH1遺伝子の停止コドンで2A−eGFP遺伝子カセットを挿入するためにCRISPR/Cas9系を使用した(
図5A)
7。本発明者らは、本発明者らの確立されたプロトコールを使用して2A−eGFPカセットの適正な二対立遺伝子挿入を含有する2つのクローンからの内耳オルガノイド誘導を検証した(これ以降、ATOH1−2A−eGFP細胞)。注目すべきことに、早くも39日目に、本発明者らは、内耳オルガノイドにおいて出現するeGFP
+有毛細胞様細胞を観察した(データは示していない)。本発明者らは、個々のオルガノイドが多くの場合、数百ものeGFP
+細胞を伴う多重の別個のパッチを含有することを認めた(
図5B〜
図5D)。BRN3CおよびESPNなどの有毛細胞マーカーを用いた免疫染色により、eGFP
+細胞の有毛細胞独自性が確認された(
図5E、
図5F)。60〜100日目の間に、凝集体の17.4±4.0%が、少なくとも1つの有毛細胞を保有するオルガノイドを含有した(n=146、6回の実験)。有毛細胞誘導の外見上低い効率は、本発明者らが凝集体内の深部にあるオルガノイドを検出することができないことに起因し得るか、または感覚上皮形成に要される内因性シグナルが、凝集体間で変動することが示され得る。とりわけ、60〜100日目の間に検査したWA25およびmND2−0凝集体は全て、SOX10
+非感覚上皮を有するオルガノイドを含有し、オルガノイド誘導は、非常に再現性があり得るが、非感覚内耳上皮が優先的に誘導されることを示唆した(n=17、4回の実験、
図14E)。発生する2A−eGFP
+有毛細胞は、浮遊培養で150日にわたって維持され、切開および植え継ぎ培養後でさえ、毛束形態を保持することができる(
図5B〜
図5F)。
【0043】
最終的に、本発明者らは、得られた有毛細胞が、自然哺乳動物有毛細胞と類似して機能するかどうかに興味を持った。ATOH1−2A−eGFP細胞から生じる凝集体を使用して、本発明者らは、分化の63〜67日目の間に、内耳オルガノイドを切開して、平らにマウントした(flat-mounted)。本発明者らの知る限りでは、これらは、hPSCに由来するヒト有毛細胞の第1の読取りを構成する。細胞は、大きな外向き整流性電流を有したが、Na
+電流(発生中の齧歯類有毛細胞で見られるが、ほとんどの成熟有毛細胞では存在しない)は、本発明者らの試料においては検出されなかった(
図5G、
図5J)。公称100mVでのK
+電流振幅は、下記の通りであった:63日目:399、747、340pA;64日目:4695、2538、2609pA;67日目:5198、6528、6127pA。これは、22日目のマウスオルガノイド有毛細胞に関する6099pAの平均値に匹敵する。ステップおよび正弦波電流注入に対する応答(
図5H、
図5I)は、初期ピーク、続く再分極を伴い、脱分極電流よりも加分極電流により大きく偏っており、齧歯類有毛細胞の応答と似ていた。しかしながら、細胞の静止電位は、齧歯類で見られるよりも一貫してわずかに高かった:64日目:−43、−45;67日目:−48、−49mV。おそらく関連して、有毛細胞分化において初期に発生し、全ての齧歯類前庭有毛細胞およびマウスオルガノイド有毛細胞中に存在するKir2.1によって保有されると考えられる顕著な閾値以下の内向き整流性電流は、ヒトオルガノイド細胞において、存在しなかったか、または大幅に低減された(
図5K)
24、25。Kir2.1の発生、発現、機能または調節は、ヒト組織では異なる可能性がある。重要なことに、ほとんどの60日齢を超えるオルガノイドにおいて、および読取りに使用するオルガノイド全てにおいて見られる収縮管腔形態は、メカノトランスダクション分析用の毛束への直接的な接近を厳しくさせた(
図5B〜
図5E)。それにもかかわらず、本発明者らのデータは、マウス内耳オルガノイド
25と同様に、ヒトオルガノイドは、未熟前庭有毛細胞を含有することを強力に示唆する。
【0044】
結論として、本発明者らは、培養においてヒト内耳オルガノイドの発生を導くための頑強な培養系を確立した(
図15)。本発明者らの見解は、in vitroでの前耳誘導の本発明者らのこれまでのモデルをさらに支持し、耳前駆体分化におけるWntシグナル伝達の重要性を強調する。興味深いことに、ヒト内耳オルガノイドの得られた渦巻き状のマルチチャンバー形態は、内耳の膜迷路に非常によく似ており、それは、感覚および非感覚上皮を含有する一連の管およびチャンバーで構成される。さらに、マウスオルガノイドにかなり類似して、hPSC由来のオルガノイドは、デフォルトによって前庭感覚上皮のみを形成するようであり、したがって、さらなるシグナル伝達操作が、蝸牛器官形成を開始するのに必要とされる
6、25。本発明者らは、この培養系が、ヒト内耳発生のメカニズムを明らかにして、潜在的な内耳療法を試験するための強力なツールであることを期待する。
【0045】
方法および材料
hPSC培養:ヒトPSC(WA25hESC、継代数22〜50;mND2−0iPSC、継代数28〜46)を、確立したプロトコールに従って、組換えヒトビトロネクチン−N(Invitrogen)でコーティングした6ウェルプレート上で、100μg/ml ノルモシン(Invitrogen)を補充したEssential 8(E8)培地またはEssential 8 Flex培地(E8f)(Invitrogen)中で培養した
12、13。80%コンフルエンシーで、または4〜5日毎に、EDTA溶液を使用して、1:10〜1:20の分割比で、細胞を継代培養した。細胞株はともに、WiCell Research Instituteから獲得し、検証および信頼性の記述とともに届けられた。さらなる確証および試験情報は、ワールドワイドウェブ上のwicell.org/home/stem-cell-lines/catalog-of-stem-cell-lines/wa25.cmsxおよびwicell.org/home/stem-cell-lines/catalog-of-stem-cell-lines/mirjt7i-mnd2-0.cmsxで利用可能な細胞株ウェブページに見出すことができる。細胞株は、MycoAlert Mycoplasma検出キット(Lonza)を使用して、マイコプラズマ混入を含まないと確定された。
【0046】
hPSC分化。分化を開始するために、hPSC細胞をStemPro Accutase(Invitrogen)を用いて解離して、1ウェル当たり5,000個の細胞を、20μM Y−27632(Stemgent)およびノルモシンを含有するE8培地中で、96ウェルV底プレート上へ分配した。48時間のインキュベーション後に、凝集体を、4ng ml
−1FGF−2(Peprotech)、10μM SB−431542(Stemgent)、および幾つかの実験に関しては、2.5ng ml
−1BMP4(Stemgent)、および2%増殖因子低減(GFR)Matrigel(Corning)を含有する化学的に明確な培地(CDM)100μl中で、96ウェルU底プレートへ移動して、非神経誘導を開始させた−即ち、分化0日目。CDMは、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、1×化学的に明確な脂質濃縮物(Invitrogen)、7μg ml
−1インスリン(Sigma)、15μg ml
−1トランスフェリン(Sigma)、450μM モノチオグリセロールおよびノルモシンをさらに補充した、GlutaMAXを有するF−12栄養分混合物(Gibco)とGlutaMAXを有するイスコブ改変ダルベッコ培地(IMDM;Gibco)の50:50の混合物(Gibco)を含有した(詳細な配合に関しては表1を参照)。4日のインキュベーション後に、250ng ml
−1FGF−2(最終濃度50ng/ml)および1μM LDN−193189(最終濃度200nM)を含有するCDM 25μlを、各ウェルにおける既存の100μlの培地に添加した。さらに4日(総計8日)後、CDM 25μlを培地に添加した。幾つかの実験に関しては、18μM CHIR99021(最終濃度3μM;Stemgent)を含有するCDMを、各ウェルにおける既存の125μlの培地に添加して、本発明者らは、この処理が、内耳オルガノイド産生にとって任意選択であるが、耳プラコード様細胞の誘導を改善し得ると確定した。分化の12日目に、凝集体を一緒にプールして、0.5×N2サプリメント(Gibco)、ビタミンAを有さない0.5×B27(Gibco)、1×GlutaMAX(Gibco)、0.1mM β−メルカプトエタノール(Gibco)およびノルモシンを補充した、Advanced DMEM:F12(Gibco)およびNeurobasal培地(Gibco)の50:50の混合物を含有する調製したてのオルガノイド成熟培地(OMM)で洗浄した(詳細な配合に関しては表3を参照)。
【0047】
【表2】
【0048】
表3に記載する配合は、培地50mLを提供し、それは、2週未満で使用すべきである。OMMは、脳および胃オルガノイドを生成するのにこれまでに使用されている2つの培地の特注ハイブリッドである
6、7。ビタミンAを有さないB27を使用して、内因的に産生されるレチノイン酸の影響を制限した。
【0049】
凝集体は、氷冷した未希釈GFR Matrigel中に再懸濁させて、100mmの細菌培養プレートの表面上で液滴およそ25μl中に配置させた。37℃で少なくとも30分のインキュベーション後、液滴を3μM CHIR99021を含有するOMM 10ml中に浸した。非液滴耳誘導のために、凝集体を洗浄して、3μM CHIRおよび1%GFR Matrigelを含有するOMM中で、24ウェル低細胞接着プレートの各ウェルへ個々に蒔いた。分化の18日後、CHIRを、洗浄することによって培地から除去して、液滴凝集体を浮遊培養へと動かした。広口1000Pチップを使用して、液滴を慎重に取り出して、125mlの使い捨てスピナーフラスコ(Corning)中の新鮮なOMM 75mlに移動させた。スピナーフラスコは、インキュベーター内攪拌プレート(Thermo Scientific)上で65RPMにて、分化の最大180日間維持した。幾つかの実験に関しては、凝集体は、インキュベーター内オービタルシェーカー(Thermo Scientific)上で、OMM 1ml中で、24ウェル低細胞接着プレートの個々のウェルにおいて、最大140日間維持した。
【0050】
培地構成成分の選択:本発明者らは、規定の欠如またはヒト細胞との乏しい適合性に起因した結果における変動を招き得る2つの培地構成成分を使用した:GFR MatrigelおよびBSA。GFR(増殖因子低減)Matrigelは、0.1pg ml
−1未満のFGF−2、0.5ng ml
−1未満のEGF、5ng ml
−1 IGF−1、5pg ml
−1未満のPDGF、0.2ng ml
−1未満のNGFおよび1.7ng ml
−1 TGFβを含有する。特に、本発明者らは、培養のその相中では培地中にTGFβ阻害剤を含まなかったため、GFR MatrigelにおけるTGFβは、12日目またはそれ以降に、細胞運命特定に影響を与えてきた。GFR Matrigelは、それが、3D培養において多能性幹細胞からの自己組織化用上皮の信頼性のある誘導物質であることが示されているため選択した
26。GFR Matrigelは、Egf、Igf1、Fgf2およびTGFβなどの増殖因子の濃度は、細胞運命特定に対してごくわずかな影響を及ぼすはずであるレベルにまで最低限に抑えられている、Matrigelに対するより規定された代替物である。Matrigelに対する他の代替物として、基底膜形成およびPSCを上皮へ分化する自己組織化を支持する合成ヒドロゲルおよび組換えタンパク質ベースのマトリックスが挙げられるが、限定されない。例えば、精製ラミニン/エンタクチン複合体(Corning)は、適切な完全に化学的に明確なの代替物であり得る
27。CDMにおいて、BSAは、費用効率がよく、それぞれヒト血清アルブミンおよびポリビニルアルコール(PVA)に対する溶解しやすい代替物として選択された。PVAは、CDM中のBSAに代わる適切な化学的に明確な代用品であることがわかっている
28。
【0051】
シグナル伝達分子および組換えタンパク質。下記小分子および組換えタンパク質を使用した:組換えヒトBMP4(2.5〜10ng ml
−1;Stemgent)、ヒトFGF−2(25ng ml
−1;Peprotech)、SB−431542(10μM;Tocris Bioscience)、CHIR99021(3μM;Stemgent)、およびLDN−193189(200nM;Stemgent)。
【0052】
定量的PCR。分析は、ABI PRISM 7900HT配列検出システム(Applied Biosystems)またはBio−Rad CFX96定量的PCR機(Bio−Rad)で、これまでに記載されるように実施した
6。データは、L27発現(内部対照)に対して標準化され、倍率変化は、ΔΔCT法を使用して、d0 WA25凝集体からのCt値に対して算出した。別記しない限り、データは、別個の実験からの少なくとも3つの別個の生物学的試料を表す。統計学的有意性の指標は全て、所定の条件と対照群との間の比較を指す。プライマーの詳細については、表4を参照されたい。
【0053】
【表3-1】
【0054】
【表3-2】
【0055】
免疫組織化学。凝集体を、4%パラホルムアルデヒドで、室温で20分間、または4℃で一晩固定した。固定した検体を、15%および30%ショ糖の段階的処理で凍結保護し、続いて組織凍結培地中に包埋した。凍結組織ブロックを、Leica CM−1860クリオスタット上で12μmの凍結切片に切片化した。免疫染色に関して、0.1% Triton X−100 1×PBS溶液中の10%ヤギまたはウマ血清をブロッキングに使用し、0.1% Triton X−100 1×PBS溶液中の3%ヤギまたはウマ血清を、一次/二次抗体インキュベーションに使用した。Alexa Fluorコンジュゲート抗マウス、ウサギまたはヤギIgG(Invitrogen)を二次抗体として使用した。DAPIを有するProlong Gold(Thermo Scientific)を使用して、試料をマウントし、細胞核を可視化させた。ホールマウント染色に関して、類似の染色パラダイムを使用したが、Triton X−100濃度を0.5%に増加させ、ブロッキングおよび一次/二次インキュベーションは、37℃にて回転シェーカー上で、それぞれ24時間および48時間行った。各インキュベーション後、試料を、37℃にて回転シェーカー上で、0.5% Triton X−100を含有する1×PBS中で1時間の洗浄を3回行った。ホールマウント試料は、ScaleA2クリアリング溶液中で1〜2日間、またはScaleSQ(5)クリアリング溶液中で1〜2時間マウントした後に画像化した
29。顕微鏡法は、Leica DMi8倒立顕微鏡、Nikon TE2000倒立顕微鏡、またはOlympus FV1000−MPE Confocal/Multiphoton顕微鏡で実施した。3D再構築は、Indiana Center for Biological Microscopyで収納されているImaris 8ソフトウェアパッケージ(Bitplane)を使用して実施した。セグメンテーション分析に関して、2A−eGFP細胞は、Imarisにおける「Spots」モジュールを使用して加工処理した。分類は、推定サイズ、品質およびシグナル強度に基づいた。画像の境界に触れる物体は排除した。下記構築パラメーターを使用して、2A−eGFP
+細胞体を同定した:推定XY直径=3.50μm;推定Z直径=7.00μm;20.0を超える「品質」;0.001μmを超える「境界XYZを画像化するための距離」;1,500を超える「強度中心Ch=1」。原画像フィルムからImarisにおいて、動画を作成し、Adobe Premiere Proで編集して、表題および本文を加えた。抗体のリストに関しては、表5を参照されたい。
【0056】
【表4】
【0057】
電気生理学的記録。ヒトオルガノイドを、62日目に、1×GlutaMax、1×B27サプリメントおよびノルモシンを補充した冷Hibernate A培地中で輸送した。それらは、63日目に、5%CO
2および37℃のインキュベーターにおいて、OMMへ戻した。記録日に、オルガノイドは、鋭いタングステン針(Fine Science Tools)を使用してばらばらにして、カバーガラス上にピンで留めた。2A−eGFP
+シグナルを使用して、有毛細胞を有する領域を見出して、記録に関して有毛細胞を標的とした。ホールセルパッチクランプを、4〜5MΩのガラス電極を用いて、セミインタクト組織に関して実施した。データは、Axopatch 200B増幅器(Molecular Devices)を使用して獲得し、5000Hzでフィルタリングして、続いてDigidata 1322A変換機により20kHzでデジタル化した。記録用ピペット溶液は、135 KCl、5 HEPES、5 EGTA、2.5 MgCl
2、2.5 K
2−ATP、0.1 CaCl
2を含有し(mMで)、KOHを用いてpH7.4に調節された。およそ285mmol kg
−1。外部溶液は、137 NaCl、5.8 KCl、0.7 NaH
2PO
4、10 HEPES、1.3 CaCl
2、0.9 MgCl
2、5.6 グルコースを含有し、ビタミンおよび必須アミノ酸(Invitrogen、カールズバッド、CA)を補充し、NaOHを用いてpH7.4に調節された。およそ310mmol kg
−1。記録は、40%補正して、細胞は、電位クランプに関して−66mVで維持した。平均値は、記録値±SEMである。
【0058】
ATOH1−2A−eGFPレポーター細胞株の生成。ATOH1の停止コドン領域を標的とするgRNA(5’−TCGGATGAGGCAAGTTAGGA−3’(配列番号17)および5’−GTCACTGTAATGGGAATGGG−3’(配列番号18)、オフセット=0bp)を、CBhプロモーター(Addgene#48873)の制御下でCas9nを発現するpSpCas9n(BB)ベクターにクローニングした
30。ドナーベクターを構築するために、抽出したWA25hESCゲノムDNAから増幅させた2つの1kbの相同性アームPCRに隣接される2A−eGFP−PGK−Puroカセット(Addgene#31938)
17を、pUC19バックボーンにクローニングした。2つのgRNAベクターおよびドナーベクター、ならびにCMVプロモーターの制御下でCas9nを発現するベクター(Addgene#41816)
18を、P3 Primary Cell 4D−Nucleofector XキットおよびProgram CB−150を使用して、4D Nucleofector(Lonza)を用いてWA25hESCにトランスフェクトした。ヌクレオフェクション(nucleofection)後、細胞を、細胞生存率の改善のための1×RevitaCell(Thermo Fisher)、およびより高いHDR効率のための1μMのScr7(Xcessbio)を含有する成長培地中に蒔いた
31。0.5μg μl
−1ピューロマイシン選択は、ヌクレオフェクションの48時間後に始めて、10日間実施した。2つのLoxP部位に隣接されるPGK−Puroサブカセットを、Creリコンビナーゼ発現ベクター(Addgene#13775)のヌクレオフェクションによるピューロマイシン選択後に、ゲノムから除去した。クローン細胞株を、解離単一hESCの低密度播種(1〜3個の細胞cm
−2)によって樹立した後、増殖の5〜7日後に、hESCコロニーの単離を行った。クローン細胞株の遺伝子型を、PCR増幅、続くゲル電気泳動によって、およびTOPOベクターへクローニングされた総PCRアンプリコンまたは個々のPCRアンプリコンのSanger配列決定によって分析した。二対立遺伝子2A−eGFP組込みを有する細胞株を、内耳有毛細胞分化に使用した。
【0059】
統計学的分析。統計学は全て、GraphPad Prism 7ソフトウェアを使用して実施した。Shapiro−Wilk正規性検定は、データが正規分布を有することを確定するために分析前に使用した。統計学的有意性は、一元配置分散分析(ANOVA)、続く対照群(例えば、ビヒクル処理)に対する多重比較用のDunnettの事後検定を使用して確定した。試料群間の変動が類似していることを確定するために、Brown−Forsythe検定を使用した。標本サイズを予め確定するのに統計学的検定を使用せず、研究者らは、治療群に対して盲検ではなく、試料は、無作為化されなかった。
【0060】
代表的なデータおよび再現性。別記しない限り、画像は、少なくとも3回の別個の実験から獲得される検体を代表している。0〜12日目の間の凝集体のIHC分析に関して、本発明者らは通常、各実験における各条件から、3〜6個の凝集体を切片化した。プロトコールの後期段階に関するIHC分析は、実験1回当たり各条件からの少なくとも2個の凝集体で実施した。仕上げの培養方法は、WA25(野生型またはATOH1−2A−eGFP)細胞株を使用して、4人の独立した研究者によって、15回首尾よく再現された。顕著な修飾を含む方法は、mND2−0iPSC株を使用して3回再現された。再現は、12〜18日の間に窩/小胞形成を確認すること、および分化の50〜100日目に少なくとも1つの凝集体において内耳オルガノイドを明確に同定することによって、首尾よいとみなされた。窩が、12〜18日の間に観察されなかった場合、実験は、分析から排除した。
【0061】
参照文献
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【実施例3】
【0065】
内耳オルガノイドのin vitroでの産生に関する例示的なプロトコール
この実施例は、ヒト多能性幹細胞から非神経外胚葉および内耳感覚組織の形成を誘導するためのプロトコールについて記載する。下記パラグラフにおいてより詳細に記載するように、多能性幹細胞凝集体を、基底膜タンパク質に富んでいるMatrigelを含有する培地中で培養して、凝集体表面上に外胚葉発生および外胚葉上皮の産生を誘導した。次に、本発明者らは、骨形成タンパク質−4(BMP4)および小分子SB−431542(「SB」)などのトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤の組合せ処理を使用して、上皮において非神経分化を促進した。内耳誘導をさらに開始させるために、BMPシグナル伝達を阻害して、初期BMP4およびSB処理のおよそ24時間後に、組換えFGF−2を使用して、線維芽細胞増殖因子(FGF)シグナル伝達を活性化させた。意外にも、組合せ処理プロトコールは、機能性前庭感覚上皮を含有する内耳オルガノイドへ後に発生する耳胞の自己組織化を開始させた。
【0066】
方法
ビトロネクチンでコーティングされたプレート上でのE8培地におけるES細胞培養(ステップ1〜ステップ7)。本発明者らは、フィーダーを含まない条件下でE8培地において本発明者らのhPS細胞を維持して、継代培養にEDTAを使用する(Beersらによるこれまでのプロトコールを参照)。hPS細胞維持のこの方法は、本発明者らが扱う限り、限られた時間および労力で自発的な分化を低減させるので、本発明者らは、それを好む。
【0067】
非神経外胚葉および前耳誘導(ステップ8〜ステップ27)。分化を開始するために、hPS細胞を解離させて、96ウェルV底プレート上へ、ウェル1個当たり5,000個の細胞を分配した。この初期凝集ステップに関して、本発明者らは、強力なROCKシグナル伝達阻害剤であるY−27632を含有するE8培地を使用する。ROCKシグナル伝達阻害は、hPS細胞において、解離誘導性アポトーシスの量を制限することがわかっている。さらに、本発明者らは、E8培地における凝集が細胞生存に役立ち、より一様な細胞凝集体をもたらし、それは、プロトコールの再現性に影響を与えることを見出した。SB処理は、TGFβを阻害して、外胚葉発生を誘導する。内因性BMPシグナル伝達は、神経外胚葉ではなく、非神経外胚葉を生成する。FGF−2およびLDN処理は、前プラコード発生を誘導する。8日目までに、外側上皮は、PAX8を発現し始めて、耳上鰓プラコード(OEPD)様特性を示す。8日目のCHIR処理は、PAX2+細胞の小さなパッチを誘導して、12日目までに耳プラコード発生の最も初期の兆候を示す。
【0068】
耳プロセンサリー(prosensory)胞および内耳オルガノイド形成(ステップ28〜ステップ43)。低濃度の細胞外マトリックスタンパク質(例えば、Matrigel(商標))は、耳胞形成を支持しないようである。耳プラコード様パッチが、耳胞として上皮から膨出してくびれ切れるように促すために、本発明者らは、Matigel中に12日目の凝集体を包埋した。Matrigelに包埋した凝集体を、細胞皿の表面上に硬化させて、組織自己組織化を支持することがこれまで示されているN2およびB27サプリメントを含有する無血清培地(これ以降、オルガノイド培地)中に浸す。この支持的環境は、CHIRへの継続曝露と組み合わせて、12〜18日目の間に、多数の小胞を、上皮から発芽させる。耳胞形成は、4回の独立した実験にわたって95%を超える凝集体において観察された。さらに、12〜18日目の間に、神経芽細胞は、上皮の他の部分から離層して、感覚ニューロンへ分化する。これらの感覚ニューロンが、頭蓋神経VII、IXおよびXのニューロンなどの上鰓ニューロン、または前庭もしくはらせん神経節ニューロンなどの内耳ニューロンであるかどうかは、現時点で明らかでない。間葉含有軟骨細胞前駆細胞の形成もまた観察された。しかしながら、軟骨細胞前駆細胞が、外胚葉上皮から生じたか、または中胚葉細胞の別の集団から生じたかどうかは明らかではなかった。
【0069】
18日目に、Matrigel(登録商標)に包埋した凝集体を、静置培養皿から取り出して、任意の添加増殖因子または小分子を欠如するオルガノイド培地を含有するスピナーフラスコへピペッティングした(pipetted)。総計22日後に、10〜30個の小胞が、位相差画像法を使用して、各凝集体において観察された。これらの小胞は、PAX2、PAX8、SOX2およびJAG1タンパク質を発現した。これは耳細胞運命を示す。小胞は、22〜35日目の間には、ゆっくりと成長するように見え、それらが包埋される間葉系細胞塊の高まる密度に起因して、この期間中に位相差画像法を使用して小胞を観察することが困難となった。35〜40日目までに、小胞は概して、凝集体内部においてよりはっきり見えた。小胞は通常、簡素な球状または卵形状の耳胞と対比して、渦巻き状のマルチチャンバー形態を示した。45日目までに、小胞は、MYO7A
+有毛細胞様細胞を発生させて、内耳オルガノイドとして同定された。60〜80日目の間に、本発明者らは、F−アクチンリッチで、かつEspin
+毛束を有するMYO7A
+有毛細胞を観察し、決定的な有毛細胞独自性を示した。
【0070】
材料および試薬
hpSC培養:ヒトPSC(WA25hESC、継代数22〜50;mND2−0iPSC、継代数28〜46)を、確立したプロトコールに従って、組換えヒトビトロネクチン−N(Invitrogen)でコーティングした6ウェルプレート上で、100μg/ml ノルモシン(Invitrogen)を補充したEssential 8(E8)培地またはEssential 8 Flex培地(E8f)(Invitrogen)中で培養した
12、13。80%コンフルエンシーで、または4〜5日毎に、EDTA溶液を使用して、1:10〜1:20の分割比で、細胞を継代培養した。細胞株はともに、WiCell Research Instituteから獲得し、検証および信頼性の記述とともに届けられた。さらなる確証および試験情報は、ワールドワイドウェブ上のwicell.org/home/stem-cell-lines/catalog-of-stem-cell-lines/wa25.cmsxおよびwicell.org/home/stem-cell-lines/catalog-of-stem-cell-lines/mirjt7i-mnd2-0.cmsxで利用可能な細胞株ウェブページに見出すことができる。細胞株は、MycoAlert Mycoplasma検出キット(Lonza)を使用して、マイコプラズマ混入を含まないと確定された。
【0071】
この例示的なプロトコールにおいて使用する他の試薬を表6に記載する。
【0072】
【表5】
【0073】
培養培地およびストック溶液
ヒト組換えBMP7ストック溶液(100ng/μL):バイオセーフティキャビネットにおいて、滅菌4mM HCL 100μLを、BMP7 10μgに添加する;溶液をボルテックスして、卓上用遠心分離機において遠心沈殿させる。BMP4溶液を5μL分取量で、−20℃にて6カ月間または−80℃で1年間保管する。
【0074】
ヒト組換えFGF−2ストック溶液(200ng/μL):バイオセーフティキャビネットにおいて、滅菌PBSまたは5mM Tris(pH7.6) 250μLを、FGF−2 50μgに添加する;溶液をボルテックスして、卓上用遠心分離機において遠心沈殿させる。FGF−2溶液を6μL分取量で、−20℃にて6カ月間または−80℃で1年間保管する。
【0075】
ヒトトランスフェリンストック溶液(20mg/mL):バイオセーフティキャビネットにおいて、IMDM 5ml中に組換えヒトトランスフェリン100mgを溶解させる。完全に溶解させるために、チューブをボルテックスして、それを回転シェーカー上に、室温(RT)で5〜10分間配置する。トランスフェリン溶液を150μL分取量で、−20℃にて6カ月間または−80℃で1年間保管する。
【0076】
EDTA溶液(hES細胞を継代培養するため):バイオセーフティキャビネットにおいて、0.5M EDTA 50μlを、DPBS 50mlへ混合する。溶液を濾過滅菌する。EDTA溶液は、RTで6カ月間保管することができる。
【0077】
化学的に明確な培地(CDM):CDM 200mLを調製するために、250mLの瓶中にBSA 1gを量り分ける。F−12栄養分混合物+GlutaMAX 100mL、IMDM+GlutaMAX 100mL、化学的に明確な脂質濃縮物2mL、インスリン140μL、トランスフェリン150μLおよび1−チオグリセロール8μL中にBSAを溶解させる。低タンパク質結合フィルターを使用して、フィルターを滅菌する。CDMは、最大2週間使用され、4℃で保管されるべきである。CDM1mL当たり2μlの希釈で、使用直前にノルモシンを培地に添加する。迅速な参照レシピについては、表1を参照されたい。
【0078】
分化CDM:50mLのコニカルチューブにおいて、氷冷Geltrex 450μLを、氷冷CDM 34.5mLに添加する(最終濃度1.25%)。チューブを十分にボルテックスして、Geltrexを完全に溶解させる。この溶液30mLを、新たな50mLのコニカルチューブ中に配置させる。FGF−2 0.6μL(最終濃度4ng/mL)およびSB−431542 30μL(最終濃度10μM)を添加する。チューブを十分にボルテックスして、混合する。分化CDMは、分化の0日目に新鮮な状態にすべきである。CDM+Geltrexの残り5mLを使用して、蒔く前に凝集体を洗浄する。
【0079】
オルガノイド成熟培地(OMM):OMM 50mLを調製するために、Advanced DMEM/F12 24.5mL、Neurobasal培地 24.5mL、ビタミンAを有さないB−27サプリメント500μL、GlutaMAX 500μL、N2−サプリメント250μLおよびノルモシン100μLを、滅菌50mLのコニカルチューブにおいて組み合わせる。OMMは、4℃で保管される場合、最大2週間使用することができる。迅速な参照レシピについては、表3を参照されたい。
【0080】
手順
hES細胞維持および継代培養:
1.バイオセーフティキャビネットにおいて、DPBS 6mL中にビトロネクチン60μLを希釈して、希釈したビトロネクチン1mLを、6−ウェル培養プレートの各ウェルに添加する。RTで少なくとも1時間インキュベートして、平均時間で、ステップ2に進む。
【0081】
2.ノルモシンを含有するE8培地 少なくとも20mLをRTに平衡化する。
【0082】
3.70〜80%コンフルエントなhES細胞の解離を始めるために、消費したE8培地を1つのウェルから吸引して、DPBSで二度洗浄する。
【0083】
4.EDTA溶液1mLを添加して、37℃のインキュベーター中で、4〜8分間インキュベートする。顕微鏡下で、孔がコロニーの中心で形成されたことを確認する。
【0084】
5.EDTAインキュベーション中に、ビトロネクチン溶液を6ウェルプレートから除去して、E8培地1.5mLを各ウェルに迅速に添加した後、表面を乾燥させる。
【0085】
6.解離した細胞を、E8培地6mLへ収集する。重要:培地を激しく粉砕して、細胞クラスターをプレートから除去する必要がある場合がある。細胞をオーバーピペッティングして(over pipet)はならない。これは、アポトーシスを引き起こすためである。気泡を培地へ導入しないように注意を払うべきである。
【0086】
7.細胞を、調製した6ウェルプレート(ステップ5からの)上に蒔く。次に細胞を分割したい場合に基づいて、プレーティング密度を選択する。本発明者らは通常、細胞懸濁液500mL(2〜3日で継代培養)または250μL(4〜5日で継代培養)を、各ウェルに添加する。細胞を、継代培養または実験における使用の準備が整うまで、37℃にて5.0%CO
2中でインキュベートする。
【0087】
hES細胞分化(−2日目〜0日目まで);凝集:
8.バイオセーフティキャビネットにおいて、E8培地とノルモシンとを22mLおよび10mLを含有するコニカルチューブを調製する。Y−27632 44μLを、22mLのチューブに(最終濃度20μM、これ以降、E8−Y20)、およびY−27632 10μLを、10mLのチューブに(最終濃度10μM、これ以降、E8−Y10)添加する。
【0088】
9.細胞が、70〜80%コンフルエントである場合、E8培地を1つのウェルから吸引して、RTにてDPBSで三度洗浄する。
【0089】
10.TrypLE 350μLを添加して、37℃で2〜4分間インキュベートする。インキュベーション後、プレートを水平方向に振とうして、細胞をばらばらにする。顕微鏡下で、細胞が、円形であり、プレートの表面から剥離されることを確認する。
【0090】
11.解離した細胞を、E8−Y10培地5mLへ収集して、それらを15mLのコニカルチューブに移動する。
【0091】
12.細胞クランプを、P1000チップを用いてピペッティングすることによって単一細胞へと崩壊する。細胞を、200gで5分間の遠心分離によってペレット化する。
【0092】
13.上清を完全に除去して、細胞ペレットを、E8−Y10培地1mL中に再懸濁する。
【0093】
14.E8−Y10培地1mLを、細胞濾過器最上部の試験管に通して力強くピペッティングして、濾過器を準備する。hES細胞懸濁液1mLを、ピペッティングにより細胞濾過器上へ滴下する。次に、E8−Y10培地1mLを、ピペッティングにより細胞濾過器上へ滴下する。試験管中に3mLが存在すべきである。このステップは、細胞が完全に単一細胞に解離されることを保証するのに重要である。
【0094】
15.P1000チップを用いてピペッティングすることによって細胞懸濁液を混合して、血球計数器または自動細胞計数器を使用して、細胞の濃度を確定する。
【0095】
16.適切な容量の細胞懸濁液を、E8−Y20培地22mL中に希釈して、1mL当たり50,000個の細胞の最終濃度(即ち、1.1×10
6個の総細胞)を獲得する。例えば、細胞懸濁液が、1mL当たり1×10
6個の細胞を含有する場合、細胞懸濁液1.1mL(1.1×10
6個を1×10
6個で割る)は、E8−Y20培地20.9mL中に希釈する。数回反転させて、混合する。
【0096】
17.細胞懸濁液を容器に注ぎ、マルチチャネルピペットを使用して、細胞懸濁液100μlを、2つの96ウェルV底プレートの各ウェルに分取する。
【0097】
18.RTにて120gで5分間、プレートを遠心沈殿させる。
【0098】
19.プレートを、5.0%CO2を有する37℃のインキュベーター中で、48時間インキュベートする。24時間後、新鮮なE8培地(Y−27632を含有しない)50μlを、各ウェルに添加する。
【0099】
分化0日目:分化CDMへの移動
20.Geltrex、FGF−2およびSB−431542を含有する分化CDM30mlを調製する。培地をRTに平衡化させる。
【0100】
21. 125μl(即ち、各ウェルの容量よりも25μl少ない)に設定したマルチチャネルピペットを用いて、ステップ18からの96ウェルプレートの各ウェルから凝集体を慎重に。細菌皿中に凝集体を堆積させ、続いてそれらを2mlのチューブに移動する。
【0101】
22.凝集体を、CDMで少なくとも三度洗浄して、微量のE8培地を完全に除去する。
【0102】
23.凝集体を分化CDM中に再懸濁させて、それらを新たな細菌皿に移動する。
【0103】
24.P200ピペットを使用して、各凝集体を、培地100μlにおいて、2つの96ウェルU底プレートの各ウェルに個々に移動する。この段階で凝集体を確認することが困難である場合がある。本発明者らは通常、無反射白色表面(例えば、キムワイプ)上に細菌皿に配置して、凝集体のコントラストを増強する。
【0104】
25.プレートをインキュベーターに4日間戻す。凝集体の形態を毎日観察する。
【0105】
分化4日目:FGF−2およびLDN−193189(FGF/LDN)の添加
26. 15mlのコニカルチューブにおいて、FGF−2およびLDN−193189を、5倍濃度でCDMに添加する。例えば、本発明者らは、200ng/μl FGF−2 6.25μlおよび10mM LDN−193189 0.5μLを、CDM 5mlに添加する。
【0106】
27.FGF/LDNを含有するCDM 25μlを、ステップ24からのプレートの各ウェルに添加する。各ウェルはここで、50ng/ml FGF−2および200nM LDN−193189の最終濃度を有する培地125μlを含有する。細胞をさらに4日間インキュベートする。
【0107】
28.15mlのコニカルチューブにおいて、CHIR99021を、6倍濃度でCDMに添加する。例えば、本発明者らは、10mM CHIR99021 9μlを、CDM 5mlに添加する。
【0108】
29.CHIRを含有するCDM 25μlを、ステップ26からのプレートの各ウェルに添加する。各ウェルはここで、3μM CHIRの最終濃度を有する培地125μlを含有する。細胞をさらに4日間インキュベートする。
【0109】
分化12日目:静置ECM培養への移行
30.下記ステップを実施する約2時間前に、Geltrex 1ml分取量を冷凍庫から取り出し、それを氷上でまたは冷蔵庫内で、完全に融解させる。
【0110】
31.50mlのコニカルチューブにおいて、オルガノイド培地50mlを調製する。
【0111】
32.カットしたP1000ピペットチップを使用して、凝集体を、ステップ28におけるプレートの各ウェルから、2mlのチューブに移動する。
【0112】
33.凝集体をチューブの底部で定着させて、続いて、培地を慎重に吸引する。
【0113】
34.凝集体を、RTオルガノイド培地1〜2mlで少なくとも三度洗浄する。最終洗浄後に、できる限り多くの培地を除去する。
【0114】
35.凝集体を氷冷Geltrex中に再懸濁させる。ピペットを20μlに設定して、凝集体を100mmの細菌皿に個々に移動する。本発明者らは通常、20〜30液滴を各プレートに添加する。種々の方向でプレートを穏やかに振とうすることは、液滴を、平らにして、プレートの表面に接着させるのに役立つ。Geltrexは、RTで10〜15分後に、重合し始める。凝集体/Geltrex混合物が、ピペッティングステップ間で配置され得る場合、バイオセーフティキャビネットにおいて氷の小さな容器を保持することが推奨される。
【0115】
36.培地を有さないプレートを、37℃で30分間インキュベートする。
【0116】
37.CHIRを含有するオルガノイド培地10〜12mlを添加する。液滴がプレートから剥離しないように、オルガノイド培地をゆっくりと添加する。幾つかの液滴が剥離されてもかまわない。
【0117】
38.細胞をさらに6日間インキュベートする。培地半分の交換を3日後に実施する。
【0118】
分化18日目:スピナーフラスコへの移行
39.広口P1000チップを使用して、各凝集体を、細菌皿の表面から掻把して、ピペットで吸い上げる。凝集体を2mlのチューブに移動する。
【0119】
40.凝集体をオルガノイド培地で三度洗浄する。
【0120】
41.オルガノイド培地50〜75mlを、125mlのスピナーフラスコへ注ぐ。
【0121】
42.凝集体をスピナーフラスコへ添加する。側面ポートが1/4回転で開放されることを確認し、スピナーフラスコを、インキュベーターにおいて、攪拌機プレート上に配置させる。攪拌機制御器を60〜65rpmで設定する。
【0122】
43.細胞をさらに22〜42日間インキュベートする。培地は毎週完全に交換する。より長期の実験に関しては、凝集体は、スピナーフラスコ中で無制限に保持することができる。発生をモニタリングするために、本発明者らは、広口P1000を使用して、凝集体を細菌皿に定期的に移動して、倒立顕微鏡を使用して画像化する。
【0123】
タイミング
ステップ1〜ステップ7、hES細胞の維持および継代培養:30分
ステップ8〜ステップ19、hES細胞分化:凝集:40分
ステップ20〜ステップ25、分化0日目:分化CDMへの移動:1時間
ステップ26〜ステップ27、分化4日目:FGF−2およびLDN−193189の添加:20分
ステップ28〜ステップ29、分化8日目:CHIR99021の添加:20分
ステップ30〜ステップ38、分化12日目:静置ECM培養への移行:45分
ステップ39〜ステップ43、分化18日目:バイオリアクターへの移行:30分
ステップ1〜ステップ43、内耳オルガノイドを生成するための総時間:45〜60日から1年超。