特許第6979952号(P6979952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979952積層レンズ構造体、カメラモジュール、及び積層レンズ構造体の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979952
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】積層レンズ構造体、カメラモジュール、及び積層レンズ構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20211202BHJP
【FI】
   G02B7/02 B
   G02B7/02 Z
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-534288(P2018-534288)
(86)(22)【出願日】2017年6月27日
(86)【国際出願番号】JP2017023612
(87)【国際公開番号】WO2018034063
(87)【国際公開日】20180222
【審査請求日】2020年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-159249(P2016-159249)
(32)【優先日】2016年8月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】松谷 弘康
(72)【発明者】
【氏名】前田 兼作
(72)【発明者】
【氏名】荻田 知治
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−003130(JP,A)
【文献】 特表2012−533775(JP,A)
【文献】 特開2015−011072(JP,A)
【文献】 特開2007−163889(JP,A)
【文献】 特表2011−508253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開孔部が設けられた基板と、
前記開孔部に挿入されて前記基板に固定されたレンズと、
前記開孔部の側面と前記基板の表面とが交わる部位に設けられ、前記基板の表面よりも凹んだ凹み部と、
を有するレンズ構造体を複数備え、
それぞれの前記基板が接合されることで前記レンズが光軸方向に配列され
1のレンズに対応する前記基板は複数の単位基板を貼り合わせることで構成され、
前記基板の一方の面側に位置する前記単位基板に形成された前記開孔部は、前記基板の他方の面側に位置する前記単位基板よりも大きい、
積層レンズ構造体。
【請求項2】
前記凹み部は、前記開孔部の縁に設けられた、請求項1に記載の積層レンズ構造体。
【請求項3】
前記凹み部は、前記基板の表面と平行であり、前記基板の表面よりも低い第1の面と、前記基板の表面と前記第1の面とを接続する第2の面と、から構成される、請求項1に記載の積層レンズ構造体。
【請求項4】
前記第2の面は、前記基板の表面に対して所定の角度を有する斜面である、請求項3に記載の積層レンズ構造体。
【請求項5】
前記第2の面は、前記基板の表面に対して垂直な面である、請求項3に記載の積層レンズ構造体。
【請求項6】
前記凹み部は、前記基板の表面に対して所定の角度を有する斜面から構成される、請求項1に記載の積層レンズ構造体。
【請求項7】
前記凹み部は、前記基板の表面に対して溝状に構成される、請求項1に記載の積層レンズ構造体。
【請求項8】
前記凹み部は、前記基板の表面に対して凹んだ曲面から構成される、請求項1に記載の積層レンズ構造体。
【請求項9】
前記凹み部は、前記基板の表面に形成された鋭角の切り込みから構成される、請求項1に記載の積層レンズ構造体。
【請求項10】
前記基板の前記表面には前記基板を積層する際の位置決めとなるアライメントマークが形成された、請求項1に記載の積層レンズ構造体。
【請求項11】
前記基板の前記開孔部の側面はテーパー面とされ、
複数の前記基板の一部は、前記テーパー面が前記基板の一方の側に向くように配置され、
複数の前記基板の残りは、前記テーパー面が前記基板の他方を向くように配置された、請求項1に記載の積層レンズ構造体。
【請求項12】
開孔部が設けられた基板と、前記開孔部に挿入されて前記基板に固定されたレンズと、前記開孔部の側面と前記基板の表面とが交わる部位に設けられ、前記基板の表面よりも凹んだ凹み部と、を有するレンズ構造体を複数備え、それぞれの前記基板が接合されることで前記レンズが光軸方向に配列された、積層レンズ構造体と、
前記積層レンズ構造体の前記レンズによって被写体像が結像される撮像面を有する撮像素子と、
を備え
前記積層レンズ構造体は、
1のレンズに対応する前記基板は複数の単位基板を貼り合わせることで構成され、
前記基板の一方の面側に位置する前記単位基板に形成された前記開孔部は、前記基板の他方の面側に位置する前記単位基板よりも大きい、
カメラモジュール。
【請求項13】
開孔部を有する基板であって、前記開孔部の側面と前記基板の表面とが交わる部位に前記基板の表面よりも凹んだ凹み部が設けられた前記基板に対し、前記凹み部が設けられていない側から第1の型を前記開孔部に挿入して前記開孔部を封止する工程と、
前記開孔部に樹脂を充填する工程と、
前記凹み部が設けられた側から第2の型を前記開孔部に挿入して前記第2の型を樹脂に押し当てる工程と、
前記樹脂を硬化させる工程と、
を含む、積層レンズ構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層レンズ構造体、カメラモジュール、及び積層レンズ構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1には、光硬化性樹脂と転写形状部が形成された転写体とを互いに接触させ、光硬化性樹脂を転写体の転写形状にならって変形させることで、レンズアレイ等の造形物を造形することを想定した技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−18578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法でレンズアレイ等を成形する場合、転写体を光硬化性樹脂に接触させる際に、毛細管現象により光硬化性樹脂が浸み出してしまう問題がある。
【0005】
そこで、毛細管現象に起因してレンズ成形時に樹脂が流れ出てしまうことを抑止することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、開孔部が設けられた基板と、前記開孔部に挿入されて前記基板に固定されたレンズと、前記開孔部の側面と前記基板の表面とが交わる部位に設けられ、前記基板の表面よりも凹んだ凹み部と、を有するレンズ構造体を複数備え、それぞれの前記基板が接合されることで前記レンズが光軸方向に配列され、1のレンズに対応する前記基板は複数の単位基板を貼り合わせることで構成され、前記基板の一方の面側に位置する前記単位基板に形成された前記開孔部は、前記基板の他方の面側に位置する前記単位基板よりも大きい、積層レンズ構造体が提供される。
【0007】
また、本開示によれば、開孔部が設けられた基板と、前記開孔部に挿入されて前記基板に固定されたレンズと、前記開孔部の側面と前記基板の表面とが交わる部位に設けられ、前記基板の表面よりも凹んだ凹み部と、を有するレンズ構造体を複数備え、それぞれの前記基板が接合されることで前記レンズが光軸方向に配列された、積層レンズ構造体と、前記積層レンズ構造体の前記レンズによって被写体像が結像される撮像面を有する撮像素子と、を備え、前記積層レンズ構造体は、1のレンズに対応する前記基板は複数の単位基板を貼り合わせることで構成され、前記基板の一方の面側に位置する前記単位基板に形成された前記開孔部は、前記基板の他方の面側に位置する前記単位基板よりも大きい、カメラモジュールが提供される。
【0008】
また、本開示によれば、開孔部を有する基板であって、前記開孔部の側面と前記基板の表面とが交わる部位に前記基板の表面よりも凹んだ凹み部が設けられた前記基板に対し、前記凹み部が設けられていない側から第1の型を前記開孔部に挿入して前記開孔部を封止する工程と、前記開孔部に樹脂を充填する工程と、前記凹み部が設けられた側から第2の型を前記開孔部に挿入して前記第2の型を樹脂に押し当てる工程と、前記樹脂を硬化させる工程と、を含む、積層レンズ構造体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本開示によれば、毛細管現象に起因してレンズ成形時に樹脂が流れ出てしまうことを抑止することが可能となる。
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】半導体プロセスで製造されるレンズモジュールの製造工程の一部を示す模式図である。
図2】本開示の一実施形態に係る下レプリカ基板、基板、上レプリカ基板の構成を示す模式図である。
図3】樹脂Rを硬化した後、下レプリカ基板、上レプリカ基板を取り外した状態を示す概略断面図である。
図4】樹脂Rを硬化した後、下レプリカ基板、上レプリカ基板を取り外した状態を示す概略断面図である。
図5】本実施形態に係る積層レンズ構造体と、積層レンズ構造体を備えるカメラモジュールを示す模式図である。
図6A】凹み部の形状のバリエーションを示す模式図である。
図6B】凹み部の形状のバリエーションを示す模式図である。
図6C】凹み部の形状のバリエーションを示す模式図である。
図6D】凹み部の形状のバリエーションを示す模式図である。
図6E】凹み部の形状のバリエーションを示す模式図である。
図6F】凹み部の形状のバリエーションを示す模式図である。
図6G】凹み部の形状のバリエーションを示す模式図である。
図6H】凹み部の形状のバリエーションを示す模式図である。
図7A】凹み部と隣接してアライメントマークを設けた例を示す概略断面図である。
図7B】凹み部と隣接してアライメントマークを設けた例を示す概略断面図である。
図7C】凹み部と隣接してアライメントマークを設けた例を示す概略断面図である。
図7D】凹み部と隣接してアライメントマークを設けた例を示す概略断面図である。
図7E図7Fに示す構成において、アライメントマークを設けていない構成を示す概略断面図である。
図7F】基板を貫通するアライメントマークを設けた例を示す概略断面図である。
図8】2枚の基板を積層して1枚の基板とし、開孔部内にレンズを成形する様子を示す概略断面図である。
図9A】3枚の基板を積層した状態を示す概略断面図である。
図9B】3枚の基板を積層した状態を示す概略断面図である。
図9C】3枚の基板を積層した状態を示す概略断面図である。
図10】熱膨張係数の差に起因して基板に反りが生じる様子を示す概略断面図である。
図11図9Cに示す構成のレンズを2つ備えた複眼の構成を示す概略断面図である。
図12】基板200の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
図13】基板200の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
図14】基板200の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.前提となる技術
2.本開示に係るレンズ構造体の構成例
3.凹み部の形状のバリエーション
4.基板の積層について
5.凹み部を有する基板の製造方法
【0013】
1.前提となる技術
先ず、本開示の一実施形態の前提となる技術について説明する。図1は、半導体プロセスで製造されるレンズモジュールの製造工程の一部を示す模式図である。図1において、レンズモジュールを構成する基板2000は、例えばシリコン(Si)等の材料から構成され、基板2000には半導体プロセスによって開孔部2100が形成されている。開孔部2100の側面は、結晶方位に従い、55°程度の角度のテーパー面として形成される。開孔部2100の側面には、反射を抑えるための反射防止膜が形成されている。
【0014】
図1は、下型1100が設けられた下レプリカ基板1000を開孔部2100が形成された基板2000に下側から密着させ、開孔部2100内に樹脂Rを充填した後、上型3100が設けられた上レプリカ基板3000を上側から基板2000に密着させる工程を示している。インプリントの型となる下レプリカ基板1000と上レプリカ基板3000によって開孔部2100内の樹脂Rが成形される。樹脂Rは、例えば光(紫外線など)硬化型の樹脂であり、下型1100と上型3100との間に樹脂Rが充填された状態で紫外線を照射すると、開孔部2100内には、下型1100と上型3100の形状に倣ったレンズが成形される。レンズを成形後、下型1100と上型3100は基板2000から取り外される。
【0015】
しかしながら、図1に示す方法でレンズを形成する際に、上レプリカ基板3000の下面3010を基板2000の上面2010に近づけると、下面3010と上面2010との間隔が狭くなり、毛細管現象により樹脂Rが基板2000の上面2010にはみ出してしまう。このため、紫外線を照射すると、基板2000の上面2010にはみ出した樹脂が硬化してしまい、上面2010に凹凸ができてしまう。この上面2010は、複数の基板2000を積層してレンズアレイを構成する際に、隣接する基板2000と当接する面である。このため、レンズが形成された基板2000を積層してレンズアレイを形成する際に、はみ出した樹脂Rにより上面2010に凹凸が形成されていると、接合不良が発生したり、積層したレンズの間隔に誤差が生じるなどの問題が発生する。
【0016】
2.本開示に係るレンズ構造体の構成例
図2は、本開示の一実施形態に係る下レプリカ基板100、基板200、上レプリカ基板300の構成を示す模式図である。図1と同様に、基板200には開孔部210が形成され、開孔部210の側面212は上に向かって広がるテーパー面とされている。基板200の上面202と側面212が交わる位置には、上面202よりも凹んだ凹み部220が設けられている。
【0017】
図2に示すように、下型110が設けられた下レプリカ基板100を開孔部210が形成された基板200に下側から密着させ、開孔部210内に樹脂Rを充填した後、上型310が設けられた上レプリカ基板300を上側から基板200に密着させる。この際、上レプリカ基板300の下面302を基板200の上面202に近づけると、下面302と上面202との間隔が狭くなるが、開孔部210の縁に凹み部220が設けられているため、凹み部220が空気のバッファ層として機能し、毛細管現象による樹脂Rの上面202への浸み出しが低減される。これにより、樹脂Rが上面202上にはみ出してしまうことを抑止できる。
【0018】
図3及び図4は、樹脂Rを硬化した後、下レプリカ基板100、上レプリカ基板300を取り外した状態を示す概略断面図である。樹脂Rを硬化させることでレンズ400が成形される。成形により、レンズ400の側面402は、開孔部210の側面212と接合(固定)されている。レンズ400は、下型110と上型310の形状に倣ったレンズ面404,406を有している。図3は、凹み部220の上面222がレンズ面406の最上部よりも低い位置にある場合を示している。また、図4は、凹み部220の上面222がレンズ面406の最上部よりも高い位置にある場合を示している。図3に示すように、レンズ400が開孔部210内の比較的高い位置にある場合は、上レプリカ基板300を上側から基板200に密着させる際に樹脂Rが上面222に浸み出し易くなるが、凹み部220を設けることで樹脂Rの上面222への浸み出しを確実に抑えることが可能である。
【0019】
図5は、本実施形態に係る積層レンズ構造体800と、積層レンズ構造体800を備えるカメラモジュール900を示す模式図である。積層レンズ構造体800は、図3図4に示したようなレンズ400を有する基板200を積層することで構成される。図5において、上側の基板200と下側の基板200は接合されている。また、カメラモジュール900は、積層レンズ構造体800と撮像素子700を備える。積層レンズ構造体800は被写体像を撮像素子700の撮像面に結像し、撮像素子700は光電変換により被写体像の光量に応じた画像信号を出力する。
【0020】
3.凹み部の形状のバリエーション
図6A図6Hは、凹み部220の形状のバリエーションを示す模式図である。凹み部220は、上面202への樹脂Rの浸み出しを抑えるための空気のバッファ層として機能するものであれば、その形状は特に限定されるものではない。図6Aは、凹み部220を平坦な上面222とテーパーの側面224から構成した例を示している。側面224の角度は、開孔部210の側面と同じ55°程度とすることができる。図6Bは、凹み部220を平坦な上面222と垂直の側面226から構成した例を示している。特にドライエッチングを製造工程で用いることで、垂直の側面226を形成することができる。図6Cは、凹み部220をテーパー面228のみから構成した例を示している。図6Dの右側では、凹み部220を溝230から構成した例を示している。図6Dの左側の凹み部220は、図6Bと同様である。
【0021】
図6Eは、平坦でない曲面232から凹み部220を構成した例を示している。図6Fは、鋭角状の切り込み234から凹み部220を構成した例を示している。図6G及び図6Hは、複数の鋭角状の切り込み236から凹み部220を構成した例を示している。
【0022】
図7A図7Dは、凹み部220と隣接してアライメントマーク250を設けた例を示す概略断面図である。図7Aは、図6Bに示す凹み部220と隣接してアライメントマーク250を設けた例を示している。また、図7Bは、図6Aに示す凹み部220と隣接してアライメントマーク250を設けた例を示している。図7Cは、図6Bに示す凹み部220と隣接してアライメントマーク250を設けた例であって、開孔部210の側面212を垂直に構成した例を示している。また、図7Dは、図6Aに示す凹み部220と隣接してアライメントマーク250を設けた例であって、開孔部210の側面212を垂直に構成した例を示している。
【0023】
図7Fは、基板200を貫通するアライメントマーク250を設けた例を示す概略断面図である。図7Eは、図7Fに示す構成において、アライメントマーク250を設けていない構成を示す概略断面図である。アライメントマーク250は、凹み部220の形成とともに、または開孔部210の形成とともに形成できる。
【0024】
4.基板の積層について
基板200としてシリコン基板を用いる場合、一例として、基板200として用いるシリコンウェハの1枚の厚さは規格で定められた725μmまたは775μmとなる。レンズ400の厚さが大きく、基板200の厚さが不足する場合は、基板200を複数貼り合わせて1枚のレンズ400を成形する。
【0025】
図8は、2枚の基板200a,200bを積層して1枚の基板200とし、開孔部210内にレンズを成形する工程を示す概略断面図である。先ず、ステップS20では、下レプリカ基板100に基板200を載せ、下型110を開孔部210に挿入する。次のステップS22では、開孔部210内に樹脂Rを充填する。次のステップS24では、基板200の上から上レプリカ基板300を載せ、上型310を樹脂Rに押し当てる。そして、紫外線を照射することで、樹脂Rを硬化させてレンズ400を成形する。成形後、上レプリカ基板300及び下レプリカ基板100を基板200から取り外す。凹み部220は、上レプリカ基板300と接する基板200aに設けられている。このように、基板200を複数貼り合わせて1枚のレンズ400を成形する場合も、凹み部220を設けることで、樹脂Rの浸み出しを抑えることができる。
【0026】
また、図8に示すように、下側の基板200の開孔部210よりも上側の基板200の開孔部210の方が大きく形成されている。これにより、上側から紫外線を照射した場合に、紫外線が遮られることがなく、樹脂Rを確実に硬化させることができる。
【0027】
図9A図9Cは、3枚の基板200を積層した状態を示す概略断面図である。図9Aは、全ての基板200の開孔部210のテーパー面(側面212)を同一の向きとし、テーパー面を下に向けた例を示している。図9Bは、図9Aに対して、一番上の基板200を反転させて開孔部210のテーパー面を上に向けた例を示している。図9Cは、図9Aに対して、上から1番目と2番目の基板200を反転させて開孔部210のテーパー面を上に向けた例を示している。
【0028】
基板200と樹脂Rの熱膨張係数は異なり、樹脂Rの量が多いほど、両者の熱膨張係数の差に起因して基板200に反りが生じやすくなる。図10は、熱膨張係数の差に起因して基板200に反りが生じる様子を示す概略断面図である。図10に示す例では、基板200の上に行くほど、レンズ400の直径が大きくなり、樹脂Rの量が増加している。このため、樹脂Rと基板200の熱膨張係数の差に応じて、基板200の上に行くほど樹脂Rが基板200を引っ張る力Fが大きくなり、基板200の上面が凹面となるように基板200に反りが生じる。
【0029】
図9Aでは、基板200の開孔部210のテーパー面が全て下向きであり、各基板200の下に行くほどレンズ400の体積が大きくなるため、矢印で示す方向の反りが大きくなる。特に、一番下の基板200は他の基板200よりも厚く、レンズ400の体積も大きいため、反りも大きくなる。
【0030】
一方、図9Bのように一番上の基板200を反転させて開孔部210のテーパー面を上に向けると、一番上の基板200では上に行くほどレンズ400の体積が大きくなるため、一番上の基板200では2番目、3番目の基板200とは反対方向に反りが生じる。このため、一番上の基板200を反転させて開孔部210のテーパー面を上に向けたことで、積層された基板200全体の反りを低減することができる。図9Cでは、図9Aに対して、上から1番目と2番目の基板200を反転させて開孔部210のテーパー面を上に向けているため、積層された基板200全体の反りを更に低減することが可能となる。
【0031】
図11は、図9Cに示す構成のレンズ400を2組備えた複眼の構成を示す概略断面図である。図11に示す構成においても、上から1番目と2番目の基板200を反転させて開孔部210のテーパー面を上に向けているため、積層された基板200全体の反りを低減することが可能である。
【0032】
5.凹み部を有する基板の製造方法
次に、開孔部210の縁に凹み部220を設けた基板200の製造方法について説明する。ここでは、図12図14に示す3通りの製造方法についてそれぞれ説明する。図12図14は、基板200の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0033】
図12に示す方法は、凹み部220を形成する際に、同時に開孔部210を貫通させる方法である。先ず、ステップS30では、加工前の基板200の表面にレジスト500を形成し、フォトリソグラフィ及びこれに続くエッチング等を施すことで、レジスト500をパターニングする。次に、ステップS32では、レジスト500をマスクとし、ウェットエッチング又はドライエッチングにより、レジスト500で覆われていない基板200の領域をエッチングする。これにより、基板200の表面には、凹部600とアライメントマーク250が形成される。
【0034】
次のステップS34では、レジスト500を除去し、基板200の表面に新たなレジスト510を形成してパターニングする。この際、凹部600よりも広い領域が開口するようにレジスト510をパターニングする。
【0035】
次のステップS36では、ウェットエッチング又はドライエッチングにより、レジスト510をマスクとして基板200をエッチングする。これにより、凹部600の底が更にエッチングされて、基板200を貫通する開孔610が形成され、開孔部210が完成される。また、凹部600が水平方向に拡大することにより、凹み部220が形成される。次のステップS38では、レジスト510を除去する。以上により、開孔部210の縁に凹み部220が設けられた基板200を製造することができる。
【0036】
図13に示す方法は、凹み部220に相当する凹部620を形成した後、凹部620を貫通して開孔部210を形成する方法である。先ず、ステップS40では、加工前の基板200の表面にレジスト530を形成し、フォトリソグラフィ及びこれに続くエッチング等を施すことで、レジスト530をパターニングする。次に、ステップS42では、ウェットエッチング又はドライエッチングにより、レジスト530で覆われていない基板200の領域をエッチングする。これにより、基板200の表面には、凹部620とアライメントマーク250が形成される。
【0037】
次のステップS44では、レジスト530を除去し、基板200の表面に新たなレジスト540を形成してパターニングする。この際、凹部620の底よりも狭い範囲が開口するようにレジスト540をパターニングする。
【0038】
次のステップS46では、ウェットエッチング又はドライエッチングにより、レジスト540をマスクとして基板200をエッチングする。これにより、凹部620の底よりも狭い範囲が更にエッチングされて、基板200を貫通する開孔部210が形成される。凹部620の底よりも狭い範囲が更にエッチングされることにより、凹み部220が形成される。次のステップS48では、レジスト540を除去する。以上により、開孔部210の縁に凹み部220が設けられた基板200を製造することができる。
【0039】
図14に示す方法は、最初に開孔部210を形成し、その後に開孔部210の縁に凹み部を形成する方法である。先ず、ステップS50では、加工前の基板200の表面にレジスト550を形成し、フォトリソグラフィ及びこれに続くエッチング等を施すことで、レジスト550をパターニングする。次に、ステップS52では、レジスト550をマスクとし、ウェットエッチング又はドライエッチングにより、レジスト550で覆われていない基板200の領域が貫通するようにエッチングする。これにより、基板200の表面には、開孔部210とアライメントマーク250が形成される。
【0040】
次のステップS54では、レジスト550を除去する。次のステップS56では、開孔部210の縁に凹み部220を形成する。なお、凹み部220の形成方法は、エッチングによるものであっても良いし、機械加工等によるものであっても良い。
【0041】
なお、本実施形態では、凹み部220を基板200に設けたが、上レプリカ基板300に同様の機能を有する凹み部を設けて毛細管現象に起因する樹脂Rの浸み出しを抑えることも可能である。
【0042】
以上説明したように本実施形態によれば、基板200の開孔部210にレンズ400が設けられた構成において、開孔部210の縁に凹み部220を形成したため、開孔部210に充填された樹脂Rに成形用の型を押し当てる際に、樹脂Rが開孔部210の外にはみ出してしまうことを確実に抑止することが可能となる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0044】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0045】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1) 開孔部が設けられた基板と、
前記開孔部に挿入されて前記基板に固定されたレンズと、
前記開孔部の側面と前記基板の表面とが交わる部位に設けられ、前記基板の表面よりも凹んだ凹み部と、
を有するレンズ構造体を複数備え、
それぞれの前記基板が接合されることで前記レンズが光軸方向に配列された、積層レンズ構造体。
(2) 前記凹み部は、前記開孔部の縁に設けられた、前記(1)に記載の積層レンズ構造体。
(3) 前記凹み部は、前記基板の表面と平行であり、前記基板の表面よりも低い第1の面と、前記基板の表面と前記第1の面とを接続する第2の面と、から構成される、前記(1)又は(2)に記載の積層レンズ構造体。
(4) 前記第2の面は、前記基板の表面に対して所定の角度を有する斜面である、前記(3)に記載の積層レンズ構造体。
(5) 前記第2の面は、前記基板の表面に対して垂直な面である、前記(3)に記載の積層レンズ構造体。
(6) 前記凹み部は、前記基板の表面に対して所定の角度を有する斜面から構成される、前記(1)又は(2)に記載の積層レンズ構造体。
(7) 前記凹み部は、前記基板の表面に対して溝状に構成される、前記(1)又は(2)に記載の積層レンズ構造体。
(8) 前記凹み部は、前記基板の表面に対して凹んだ曲面から構成される、前記(1)又は(2)に記載の積層レンズ構造体。
(9) 前記凹み部は、前記基板の表面に形成された鋭角の切り込みから構成される、前記(1)又は(2)に記載の積層レンズ構造体。
(10) 前記基板の前記表面には前記基板を積層する際の位置決めとなるアライメントマークが形成された、請求項1に記載の積層レンズ構造体。
(11) 1のレンズに対応する前記基板は複数の単位基板を貼り合わせることで構成され、
前記基板の一方の面側に位置する前記単位基板に形成された前記開孔部は、前記基板の他方の面側に位置する前記単位基板よりも大きい、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の積層レンズ構造体。
(12) 前記基板の前記開孔部の側面はテーパー面とされ、
複数の前記基板の一部は、前記テーパー面が前記基板の一方の側に向くように配置され、
複数の前記基板の残りは、前記テーパー面が前記基板の他方を向くように配置された、前記(1)〜(10)のいずれかに記載の積層レンズ構造体。
(13) 開孔部が設けられた基板と、前記開孔部に挿入されて前記基板に固定されたレンズと、前記開孔部の側面と前記基板の表面とが交わる部位に設けられ、前記基板の表面よりも凹んだ凹み部と、を有するレンズ構造体を複数備え、それぞれの前記基板が接合されることで前記レンズが光軸方向に配列された、積層レンズ構造体と、
前記積層レンズ構造体の前記レンズによって被写体像が結像される撮像面を有する撮像素子と、
を備える、カメラモジュール。
(14) 開孔部を有する基板であって、前記開孔部の側面と前記基板の表面とが交わる部位に前記基板の表面よりも凹んだ凹み部が設けられた前記基板に対し、前記凹み部が設けられていない側から第1の型を前記開孔部に挿入して前記開孔部を封止する工程と、
前記開孔部に樹脂を充填する工程と、
前記凹み部が設けられた側から第2の型を前記開孔部に挿入して前記第2の型を樹脂に押し当てる工程と、
前記樹脂を硬化させる工程と、
を含む、積層レンズ構造体の製造方法。
【符号の説明】
【0046】
100 下レプリカ基板
110 下型
200 基板
210 開孔部
212 側面
220 凹み部
222 上面
224,226 側面
228 テーパー面
230 溝
232 曲面
234,236 切り込み
250 アライメントマーク
300 上レプリカ基板
310 上型
400 レンズ
700 撮像素子
800 積層レンズ構造体
900 カメラモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14