(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のレンズに含まれる正のパワーを有する全ての樹脂製の正レンズのレンズ面のうち、空気層に隣接する全てのレンズ面上に直接的に反射防止層が存在する、請求項1に記載のレンズユニット。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の例示的な第1の実施形態に係る撮像装置1の断面図である。撮像装置1は、レンズユニット11と、撮像素子12と、回路基板13と、を含む。レンズユニット11は、複数のレンズ20と、絞り31と、赤外線フィルタ32と、支持部33と、を含む。本実施形態では、複数のレンズ20は、第1レンズ211と、第2レンズ212と、第3レンズ213と、第4レンズ214と、第5レンズ215と、を含む。以下の説明における「レンズ」は、レンズとして機能する部材、すなわち、レンズ本体のレンズ面上に、必要に応じて所望の機能を有する層が形成されたレンズ部材である。レンズ面上の層は、薄膜である。また、負のパワーを有するレンズを「負レンズ」、正のパワーを有するレンズを「正レンズ」と呼ぶ。複数のレンズ20は、光軸J1に沿って配置される。
【0010】
支持部33は、複数のレンズ20と、絞り31と、赤外線フィルタ32と、を支持するホルダである。支持部33は、「鏡筒」あるいは「バレル」とも呼ばれる。本実施形態では支持部33は樹脂製であるが、樹脂製には限定されない。第1レンズ211、第2レンズ212、第3レンズ213、絞り31、第4レンズ214、第5レンズ215および赤外線フィルタ32は、光軸J1に沿って、物体側から像側に向かってこの順に配置される。すなわち、これらの構成要素はこの順で光軸J1上に位置している。回路基板13は、赤外線フィルタ32の像側にて支持部33に取り付けられる。撮像素子12は、回路基板13上に実装される。撮像素子12は、レンズユニット11の像側に位置する。レンズユニット11により、撮像素子12上に像が形成される。撮像素子12は2次元イメージセンサである。
【0011】
第1レンズ211は、かしめにより支持部33に固定される。第1レンズ211と支持部33との間には、シール部材34が配置される。シール部材34は、例えば、Oリングである。第1レンズ211およびシール部材34により、筒状の支持部33の物体側の開口が密閉される。第2レンズ212、第3レンズ213、絞り31および赤外線フィルタ32は、支持部33に圧入されている。第4レンズ214と第5レンズ215とは、接着剤にて接合された接合レンズとなっている。接合レンズは、支持部33に圧入されている。「圧入されている」という表現は、「圧入された状態である」と同義である。
【0012】
第1レンズ211は、ガラス製である。第2レンズ212、第3レンズ213、第4レンズ214および第5レンズ215は、樹脂製である。第1レンズ211および第2レンズ212は、物体側に凸となる負メニスカスレンズである。第3レンズ213は、像側に凸となる負メニスカスレンズである。第4レンズ214は、物体側に凸となる負メニスカスレンズである。第5レンズ215は、両凸の正レンズである。
【0013】
第1レンズ211の物体側のレンズ面上には、反射防止層が直接的に形成される。反射防止層上には撥水層やその他の機能性層を設けてもよいし、なくてもよい。第1レンズ211の像側のレンズ面上には、反射防止層のみが直接的に形成される。以下の説明において「層が形成される」は、「層が存在する」と同義である。
【0014】
図2は、第2レンズ212の物体側のレンズ面501近傍を拡大して示す図である。正確には、レンズ面501は曲面であるが、
図2では直線にて示している。レンズ面501上には、すなわち、樹脂製のレンズ本体51上には、緩衝層53が直接的に形成される。緩衝層53上に反射防止層52が形成される。緩衝層53により、樹脂であるレンズ本体51と反射防止層52との間の熱膨張率の差により反射防止層52に生じる応力が低減される。その結果、反射防止層52にクラックが生じることが防止される。
【0015】
本明細書において、熱膨張率は線膨張率を指す。また、反射防止層の「クラック」とは、反射防止層に生じる微細な割れや微細な剥離等の損傷を意味する。
【0016】
図3は、第2レンズ212の像側のレンズ面502近傍を拡大して示す図である。正確には、レンズ面502は曲面であるが、
図3では直線にて示している。レンズ面502上には、反射防止層52のみが直接的に形成される。
【0017】
第3レンズ213の物体側および像側のレンズ面上には、反射防止層のみが直接的に形成される。第4レンズ214の物体側のレンズ面上には、反射防止層のみが直接的に形成される。第4レンズ214の像側のレンズ面と第5レンズ215の物体側のレンズ面とは接着剤にて接合される。第5レンズ215の像側のレンズ面上には、反射防止層のみが直接的に形成される。
【0018】
図4は、本発明の例示的な第2の実施形態に係る撮像装置1の断面図である。
図4では、各レンズを除き、
図1に示すものと同様の機能を有する構成要素に同様の符号を付している。
図4に示す撮像装置1の基本構造は、
図1に示すのと比べて、レンズユニット11の複数のレンズ20の数が6である点を除いて同様である。複数のレンズ20は、第1レンズ221と、第2レンズ222と、第3レンズ223と、第4レンズ224と、第5レンズ225と、第6レンズ226と、を含む。
【0019】
第1レンズ221、第2レンズ222、第3レンズ223、第4レンズ224、絞り31、第5レンズ225、第6レンズ226および赤外線フィルタ32は、光軸J1に沿って、物体側から像側に向かってこの順に配置される。
【0020】
第1レンズ221は、かしめにより支持部33に固定される。第1レンズ221と支持部33との間には、シール部材34が配置される。第2レンズ222、第3レンズ223、第4レンズ224および赤外線フィルタ32は、支持部33に圧入されている。絞り31は、支持部33の内周面上に形成された微小な突起を利用して、支持部33内に嵌め込まれて固定されている。第5レンズ225と第6レンズ226とは、接着剤にて接合された接合レンズとなっており、接合レンズは、支持部33に圧入されている。
【0021】
第1レンズ221は、ガラス製である。第2レンズ222、第3レンズ223、第4レンズ224、第5レンズ225および第6レンズ226は、樹脂製である。第4レンズ224はガラス製でもよい。第1レンズ221および第2レンズ222は、物体側に凸となる負メニスカスレンズである。第3レンズ223は、像側に凸となる負メニスカスレンズである。第4レンズ224は、両凸の正レンズである。第5レンズ225は、物体側に凸となる負メニスカスレンズである。第6レンズ226は、両凸の正レンズである。
【0022】
第1レンズ221の物体側のレンズ面上には、反射防止層が直接的に形成される。反射防止層上には撥水層やその他の機能性層を設けてもよいし、なくてもよい。第1レンズ221の像側のレンズ面上には、反射防止層のみが直接的に形成される。第2レンズ222の物体側のレンズ面上には、緩衝層が直接的に形成される。緩衝層上には反射防止層が形成される。第2レンズ222の像側のレンズ面上には、反射防止層のみが直接的に形成される。緩衝層により、第1の実施形態と同様に、第2レンズ222の物体側のレンズ面上の反射防止層にクラックが生じることが防止される。
【0023】
第3レンズ223および第4レンズ224の物体側および像側のレンズ面上には、反射防止層のみが直接的に形成される。第5レンズ225の物体側のレンズ面上には、反射防止層のみが直接的に形成される。第5レンズ225の像側のレンズ面と第6レンズ226の物体側のレンズ面とは接着剤にて接合される。第6レンズ226の像側のレンズ面上には、反射防止層のみが直接的に形成される。
【0024】
ところで、上記2つの実施形態において、全ての樹脂製のレンズの全てのレンズ面上に緩衝層を設けると、レンズユニット11の製造コストが増大する。ここで、負レンズでは光軸J1上においてレンズ面の間の距離が最も小さい。正確には、負レンズにおいて、レンズとして機能する部位の厚さが光軸J1上において最も小さく、レンズとして機能する部位のうち、外周部は厚い。そのため、負レンズでは、温度が高くなると外周部が大きく膨張する傾向があり、中央に大きな応力が発生する。
【0025】
一方、正レンズでは、レンズとして機能する部位の厚さが光軸J1上において最も大きく、レンズとして機能する部位のうち、外周部は薄い。そのため、正レンズでは温度上昇により生じる応力は、負レンズと比較すると相対的に小さい。その結果、レンズ面上に直接的に反射防止層を設けた場合、負レンズでは正レンズよりも反射防止層にクラックが生じる可能性が高い。このことから、レンズユニット11の製造コストを削減するには、いずれかの正レンズにおいて緩衝層を省くことが好ましいといえる。もちろん、負レンズにおいても緩衝層を省くことが可能な場合は省かれてよい。
【0026】
一般的に表現すれば、好ましいレンズユニット11では、いずれかの負レンズの2つのレンズ面の少なくとも1つのレンズ面上に、緩衝層と反射防止層とが順に存在し、いずれかの正レンズの2つのレンズ面の少なくとも1つのレンズ面上に、直接的に反射防止層が存在する。これにより、画質の低下を抑制しつつレンズユニット11の製造コストを削減することができる。反射防止層が設けられるレンズ面は、空気層に隣接するレンズ面である。さらに好ましくは、複数のレンズ20に含まれる正のパワーを有する全ての樹脂製の正レンズのレンズ面のうち、空気層に隣接する全てのレンズ面上に直接的に反射防止層が存在する。これにより、レンズユニット11の製造コストをさらに削減することができる。
【0027】
ここで、負レンズは、負メニスカスレンズ、両凹レンズ、または、平凹レンズである。正レンズは、正メニスカスレンズ、両凸レンズ、または、平凸レンズである。
【0028】
負レンズにおいて正レンズよりも温度上昇による発生応力が大きいという特性は、レンズの外周が支持部33により保持される場合に顕著になる。さらには、負レンズの樹脂材料の熱膨張率が支持部33の熱膨張率よりも大きい場合や、負レンズの外周全体が支持部33により保持される場合や、負レンズが支持部33に圧入される場合や、負レンズがメニスカスレンズの場合にさらに顕著になる。
【0029】
小型のレンズユニット11では、通常、複数のレンズ20の数が5、6または7の場合、物体側から2番目のレンズが、樹脂製レンズのうち最も物体側のレンズとなる。そのため、2番目のレンズの劣化が画質に最も影響を与える。したがって、物体側から2番目のレンズが樹脂製の負レンズである場合、このレンズの少なくとも一方のレンズ面上に緩衝層と反射防止層とがこの順で存在し、他の負レンズおよび正レンズのレンズ面には反射防止層が直接的に存在することが好ましい。
【0030】
さらに、2番目のレンズの物体側のレンズ面は像側のレンズ面よりも画質に影響を与えるため、上記実施形態では、第2レンズ212,222の物体側のレンズ面上にのみ緩衝層と反射防止層とが順に存在する。また、第2レンズ212,222の像側のレンズ面上に直接的に反射防止層が存在する。これにより、取得される画像の質の低下を抑制しつつレンズユニット11の製造コストを大幅に削減することができる。もちろん、第2レンズ212,222の像側のレンズ面と反射防止層との間にも緩衝層が設けられてよい。さらには、樹脂製の全ての負レンズの空気層に隣接する全てのレンズ面上に、緩衝層と反射防止層とが順に存在してもよい。
【0031】
次に、第2レンズの具体例と耐熱試験について説明する。この具体例では、第1の実施形態と同様のレンズユニットを想定しているが、第2レンズの両レンズ面上に緩衝層および反射防止層が順に形成される。
【0032】
第2レンズのレンズ本体の樹脂としては、JSR株式会社製のARTON(登録商標)を用いた。光軸に沿って見た場合の物体側のレンズ面の直径は5.4mm、像側のレンズ面の直径は2.3mmであり、中心厚は0.9mmである。レンズ本体は負のパワーを有するメニスカスレンズである。レンズ本体は射出成形により製造された。
【0033】
レンズ本体の樹脂材料としては、様々なものが利用可能である。例えば、非結晶ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が利用可能である。樹脂製の他のレンズに関しても同様である。
【0034】
緩衝層用のコーティング液として、アモルファスシリカ、アクリル樹脂、光重合開始剤、および、PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を主成分とする溶剤、を所望の割合で混合した液を調製した。コーティング液を、レンズ本体の物体側のレンズ面にスピンコート法により塗布し、コーティング液に積算光量15000mJ/cm2の紫外線を照射し、コーティング液を硬化させた。その後、レンズ本体の像側のレンズ面上にも同様の操作を行った。両レンズ面には厚さ3μmの緩衝層が形成された。
【0035】
緩衝層の厚さは、1μm以上3μm以下であることが好ましい。緩衝層の厚さが1μm以下であると緩衝効果が低下する。緩衝層の厚さが3μm以上であると塗りムラが生じ易い。
【0036】
反射防止層の設計波長λは500nmとした。反射防止層は、レンズ本体に近い側から、二酸化ケイ素(18.1nm)/酸化チタン(15.0nm)/二酸化ケイ素(31.2nm)/酸化チタン(51.5nm)/二酸化ケイ素(14.2nm)/酸化チタン(35.9nm)/二酸化ケイ素(91.8nm)の薄膜が積層されたものである。ここで、二酸化ケイ素の屈折率は約1.46、酸化チタンの屈折率は約2.38であった。ただし、形成条件によって屈折率が若干変化するため、膜厚の調整が行われた。
【0037】
次に、第1の実施形態と同様の第1レンズ、第3ないし第5レンズのレンズ面に、適宜、反射防止層を直接的に形成した。第1レンズないし第5レンズを用いて第1の実施形態と同様のレンズユニットを組み立て、耐熱試験を行った。
【0038】
また、第2レンズに緩衝層を設けない同様のレンズユニットを比較例として製造し、耐熱試験を行った。
【0039】
耐熱試験では、レンズユニットを大気オーブンに入れ、90℃から10℃おきに温度を上昇させた。各温度で1000時間放置した後に反射防止層のクラックの観察を行った。クラックが発生する温度を耐熱温度とした。クラックの有無の判別は、顕微鏡にて目視にて行った。サンプル数を3とし、3サンプルの平均を最終的な耐熱温度とした。
【0040】
緩衝層を設ける場合、第2レンズの耐熱温度は120℃であった。一方、緩衝層を設けない比較例では、第2レンズの耐熱温度は90℃であった。既述のように、樹脂と反射防止層との熱膨張率は大きく異なるが、上記耐熱試験にて示されるように、緩衝層により、高温下にて反射防止層のクラックの発生が防止される。
【0041】
反射防止層は、上記例には限定されず、様々な多層の無機酸化膜が利用可能である。例えば、反射防止層が3層構造の場合は、設計波長をλとして、反射防止層を構成する各層(以下、「要素層」という。)の厚さをλ/4としたり、レンズ面に近い第1要素層とレンズ面から遠い第3要素層の厚さをλ/4とし、中間の第2要素層の厚さをλ/2とする構成が採用可能である。設計波長λは、可視光の中心波長である500nm付近が好ましい。要素層の材料としては、酸化ケイ素、酸化チタン、チタン酸ランタン、酸化タンタル、酸化ニオブ等を挙げることができる。反射防止層により樹脂製のレンズの透過率が向上する。
【0042】
120℃という耐熱温度は、車載用の撮像装置に適している。特に、レンズユニット11の最も物体側のレンズまたは当該レンズの外に配置される保護部材が車外に露出する場合に適している。そのため、120℃以上の耐熱温度を有するレンズユニット11は、自動運転等の高画質のセンシング用撮像装置に利用されることが好ましい。もちろん、レンズユニット11は単純なモニタ用としても利用可能である。
【0043】
上記撮像装置1およびレンズユニット11では、様々な変形が可能である。
【0044】
レンズユニット11におけるレンズの数は5ないし7には限定されず、4以下でも8以上でもよい。第1レンズ211,221は樹脂製でもよい。光軸J1も直線には限定されず、折れ曲がってもよい。支持部33は、レンズの外周全体を保持するものである必要はなく、外周の一部を保持するものでもよい。レンズが別のホルダに保持された状態で支持部33に支持されてもよい。
【0045】
上記実施形態では、レンズ面上に緩衝層が直接的に接して存在し、緩衝層上に反射防止層が直接的に接して存在するが、レンズ面上に緩衝層と反射防止層とがこの順で存在するのであれば、他の層が存在してもよい。緩衝層および反射防止層が設けられる樹脂製の負レンズは、物体側から2番目以外のレンズであってもよい。
【0046】
レンズユニット11に対する撮像素子12の固定方法は、様々に変更されてよい。撮像装置1は、車載以外の目的に用いられてもよい。
【0047】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。