(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記過渡応答加速器が、前記TSUの第3のポートを介して、前記VRMの前記電力スイッチのゲート駆動回路の入力に接続された、請求項1に記載のプラグアンドプレイ遷移抑制ユニット(TSU)。
前記電圧調整器モジュール(VRM)の前記電圧出力より高い電圧源に接続された第4のポートを更に含み、前記双方向電流源が、不連続導電モードで動作するバックコンバータを含む、請求項1に記載のプラグアンドプレイ遷移抑制ユニット(TSU)。
前記過渡応答加速器が、第1のプルアップトランジスタと第2のプルダウントランジスタを含み、前記トランジスタが相補的であり、前記トランジスタが前記電圧調整器モジュール(VRM)の誤差増幅器の補償ポートに接続され、前記トランジスタが前記VRMのデューティ比を飽和させるように適応された、請求項1に記載のプラグアンドプレイ遷移抑制ユニット(TSU)。
ローディング又はアンローディング遷移が、一定又は出力電圧に比例する低基準定常電圧と高基準定常電圧の間の窓を超えたときに検出される、請求項1に記載のプラグアンドプレイ遷移抑制ユニット(TSU)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
a.VRMの電圧出力に並列にTSUの高電圧ポートと低電圧ポートを介して接続され、負荷に供給される電流を直ちにシンク又はソースするように適応された双方向電流源と、
b.基準定常電圧に対するVRMの電圧出力間の不一致を検出するための検出回路であって、
i.基準定常電圧に対するVRMの電圧出力間の一致を検出するための第1の比較器と、
ii.基準定常電圧より高い所定閾値に対するVRMの電圧出力間の不一致を検出するための第2の比較器と、
iii.基準定常電圧値より低い所定の閾値に対するVRMの電圧出力間の不一致を検出するための第3の比較器とを含む検出回路と、
c.VRM誤差増幅器の出力補償ポートにTSUの第3のポートを介して接続され、VRMのデューティ比飽和を制御するように適応された過渡応答加速器とを含み、
ローディング遷移が第3の比較器によって検出され、それに基づいて、VRMの電圧出力が予測定常電圧と一致することを第1の比較器が検出するまで、VRMのデューティ比が過渡応答加速器によって最大値に飽和され、電流が電流源から出力にソースされ、
アンローディング遷移が第2の比較器によって検出され、それに基づいて、VRMの電圧出力が予測定常電圧と一致することを第1の比較器が検出するまで、VRMのデューティ比が過渡応答加速器によって最小値に飽和され、電流が、出力から電流ソースにシンクされる、電圧調整器モジュール(VRMs)用のプラグアンドプレイ遷移抑制ユニット(TSU)を対象とする。
【0009】
用語「プラグアンドプレイ」ユニットを使用することにより、この用語は、システムの固有インタフェース接続に接続された後で、物理装置構成、ユーザ介在又は追加接続の必要なしに、システムによって発見され、システム内で機能を開始する、システム内の任意のハードウェア構成要素又は物理装置を含むことを意味する。本発明の場合、「プラグアンドプレイ」ユニットは、TSUであり、「プラグアンドプレイ」TSUが接続されたシステムは、VRMのコントローラである。
【0010】
双方向電流源は、ジャイレータ共振スイッチドキャパシタコンバータ(GRSCC)を含みうる。
【0011】
過渡応答加速器は、TSUの第3のポートを介して、VRMの電力スイッチのゲート駆動回路の入力に接続されうる。
【0012】
一実施形態では、TSUは、更に、電圧調整器モジュール(VRM)の電圧出力より高い電圧源に接続された第4のポートを含み、双方向電流源は、
a.TSUの第4ポートとTSUの高電圧ポートの間に接続され、ローディング遷移中に電流をソースするように適応された高いR
DS(ON)値を有する第1のMOSFETと、
b.TSUの高電圧ポートとTSUの低電圧ポートの間に接続され、アンローディング遷移中に電流をシンクするように適応された高いR
DS(ON)値を有する第2のMOSFETとを含む。
【0013】
TSUは、更に、電圧調整器モジュール(VRM)の電圧出力よりも高い電圧源に接続された第4のポートを含み、双方向電流源は、不連続導電モードで動作するバックコンバータを含む。
【0014】
過渡応答加速器は、第1のプルアップトランジスタと第2のプルダウントランジスタを含むことができ、これらのトランジスタは、相補的であり、電圧調整器モジュール(VRM)の誤差増幅器の補償ポートに接続され、VRMのデューティ比を飽和させるように適応される。
【0015】
ローディング又はアンローディング遷移は、一定又は出力電圧に比例する低い基準定常電圧と高い基準定常電圧の間にある窓を超えたときに検出されうる。
【0016】
検出回路は、
a)異なる基準電圧を比較器のそれぞれに設定するための第1の分圧器ラダーと、
b)VRMの出力電圧を測定するための第2の分圧器ラダーとを含みうる。
【0017】
あるいは、検出回路は、
a)出力電圧を検出するための第1の電流源及び回路と、
b)出力電圧と関係なく低閾値電圧を生成するための第2の電流源及び回路と、
c)出力電圧と関係なく高閾値電圧を生成するための第3の電流源及び回路と、
d)低閾値電圧と出力電圧を受け取り、出力電圧が低閾値電圧より低下したときに指示を提供するための第1の比較器と、
e)高閾値電圧と出力電圧を受け取り、出力電圧が高閾値電圧を超えたときに指示を提供する第2の比較器とを含みうる。
【0018】
別の実施形態では、過渡応答加速器は、
a)第1のプルアップトランジスタと第2のプルダウントランジスタであって、相補的であり、電圧調整器モジュール(VRM)の電流モードコントローラの誤差増幅器の補償ポートに接続され、VRMのデューティ比を飽和させるように適応された、第1のプルアップトランジスタと第2のプルダウントランジスタと、
b)誤差増幅器であって、その補償ポートが抵抗要素を介してトランジスタに接続された誤差増幅器と、
c)インダクタ電流の変化を追跡するためのピーク検出器と、
d)キャパシタであって、補償ポートと接地の間に接続され、遷移期間の終わりなどにキャパシタ上の電圧によって表わされたインダクタ電流を蓄積し、インダクタ電流の新しい定常点に対応する電圧を蓄積するキャパシタとを含む。
【0019】
TSUは、更に、TSUが活動状態のときに帰還ループから基準キャパシタC
Irefを切断し、TSUが活動状態で遷移が終了した後で、基準キャパシタC
Irefを電流モードコントローラに再接続するためのスイッチを含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】バックコンバータに接続された電子キャパシタ回路のブロック表現を概略的に示す図である。
【
図2】制御電流源としてモデル化された補助回路を有する単純化されたVRM回路を概略的に示す図である。
【
図3】連続的なローディング及びアンローディング遷移の波形を概略的に示す図である。
【
図4】電子キャパシタ回路動作アルゴリズムのフローチャート400を概略的に示す図である。
【
図5】応答加速器がある場合とない場合のインダクタ電流応答を概略的に示す図である。
【
図6】電圧モードコントローラの過渡応答加速器の使用を概略的に示す図である。
【
図7】電流モードコントローラの過渡応答加速器の使用を概略的に示す図である。
【
図8】許容されるデューティ比増大を概略的に示す図である。
【
図9】検出電流に従って補償回路網キャパシタの値を制御する仕組みを概略的に示す図である。
【
図10】ローディング遷移中にピーク検出器回路として働く構成を概略的に示す図である。
【
図11】ローディング及びアンローディング遷移中の
図10の回路の出力の例を概略的に示す図である。
【
図12a】検出回路の可能な実施態様を概略的に示す図である。
【
図12b】検出回路の可能な実施態様を概略的に示す図である。
【
図13】GRSCC出力電流波形を概略的に示す図である。
【
図14】ローディング及びアンローディング遷移のGRSCCの補助電流波形を概略的に示す図である。
【
図15】補助電流源の実施態様を概略的に示す図である。
【
図16】
図15の実施態様を使用している間のローディング及びアンローディング遷移中の補助電流波形を概略的に示す図である。
【
図17】補助電流源の別の実施態様を使用している間のローディング及びアンローディング遷移中の補助電流波形を概略的に示す図である。
【
図18】別の補助電流源の実施態様を概略的に示す図である。
【
図19】ローディング遷移に対応するためにバックコンバータを支援する補助電流源としてGRSCCのシミュレーション波形結果を示す図である。
【
図20】タイプIII補償回路網を有するアナログコントローラを概略的に示す図である。
【
図21A】6Aのローディング遷移中の電子キャパシタの支援がないバックコンバータの応答の波形を示す図である。
【
図21B】6Aのローディング遷移中の電子キャパシタの支援があるバックコンバータの応答の波形を示す図である。
【
図22A】6Aのアンローディング遷移中の電子キャパシタの支援がないバックコンバータの応答の波形を示す図である。
【
図22B】6Aのアンローディング遷移中の電子キャパシタの支援があるバックコンバータの応答の波形を示す図である。
【
図23】電子キャパシタがある場合とない場合に測定された連続的な6Aローディング及びアンローディング過渡応答の波形を示す図である。
【
図24】アンローディングイベントの電子キャパシタ動作の波形の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、電圧調整器モジュール(VRM)用途のプラグアンドプレイ遷移抑制ユニット(TSU)を提供する。TSUは、定常状態の動作、最初に設計された補償回路網及び入力フィルタに影響を及ぼすことなく、シリコンベース解決策によって出力キャパシタンスを交換する。
【0022】
図1は、バックコンバータに接続された電子キャパシタ回路のブロック図を示す。
図1に示されたように、TSU100は、バックコンバータの出力キャパシタ102に並列に接続する双方向電流源101と、誤差増幅器104の出力に並列に接続する過渡応答加速器103とを含む。電子キャパシタ100は、負荷遷移中のみ活動状態なので、定常状態の精度が損なわれず、バックコンバータの設計手順は完全なままである。
【0023】
様々な実施形態では、電流源101は、特許文献1に記載されたジャイレータ共振スイッチキャパシタコンバータ(GRSCC)によって実現されうる。GRSCCは、磁気要素を必要とせず、それにより一体化に理想的で、シンプルで、コスト効率が高い。
【0024】
遷移抑制の概念
負荷遷移から主コンバータの回復を支援する重要な要素は、新しい負荷電流と主インダクタ電流の間の電流不一致を即座にシンク又はソースする補助回路の性能である。
【0025】
図2は、双方向制御電流源201としてモデル化された補助回路を有する単純化されたVRM回路200を概略的に示し、負荷に対する電流の関係を示す。補助TSUの必要な挙動及び制御メカニズムを分析するために、バックコンバータ202の出力端子203a及び203bに接続された理想的な双方向電流源を想定する。
【0026】
図3は、ΔI
outの大きさを有する連続的なローディング及びアンローディング遷移の波形を示す。グラフ301は、負荷i
loadによって消費される電流301aと比較したバック電流i
buck、301bのグラフ表示である。波形302は、バックコンバータの出力電圧v
outのグラフ表示であり、電圧は、V
ref,HとV
ref,Lによって制限される。V
ref,Mは、定常電圧レートである。波形303は、補助回路から供給された電流のグラフ表示である。波形304、305及び306は、バックの出力電圧をV
ref,L、V
ref,M及びV
ref,Hとそれぞれ比較する比較器出力のグラフ表示である。
【0027】
図4は、電子キャパシタ回路動作アルゴリズムのフローチャート400を示す。フローチャート400の左側は、ローディング遷移中に実行されたステップを表し、フローチャート400の右側は、アンローディング遷移中に実行されたステップを表す。遷移動作は、ステップ401a又は401bでそれぞれ上側又は下側比較器による検出時(即ち、v
outをV
ref,H及びV
ref,Lと比較することにより、またそれぞれ波形306及び304で表されたような)に開始され、検出は、出力キャパシタ(
図2の数字204)における電荷不一致を示す。遷移が検出されると、2つのアクションが同時に実行され、即ち、主(バック)コンバータのデューティ比が、遷移タイプにより、最大値(ステップ402b)又は最小値(ステップ402a)に飽和される。即ち、ローディング遷移では、トランジスタQ
uがオンであり、Q
uは、補償回路網の出力をその最大可能値に駆動し(VDDに飽和)、それを行うことによって、バックコントローラのPWMモジュレータの制御コマンドを最大化する。アンローディング遷移では、Q
dがオンであり、Q
dは、補償回路網の出力を最低値に駆動し(GNDに飽和)、PWMモジュレータへの制御コマンドが最小値になる。遷移検出の第2のアクションは、(双方向)電流源がイネーブルされ、波形303で表されたように、I
max(コンバータの公称電流)の一定の大きさでシンク(ステップ403a)又はソース(ステップ403b)することである。
【0028】
i
auxは、i
buckとi
load間の電流不一致より高く、したがって、出力電圧は定常値に戻る。これは、ステップ404a及び404bで、波形305で表されたようにV
ref,Mに設定された電圧基準を有する追加比較器によって検出される。この時点で、補助(双方向)電流源が、ステップ405a及び405bで停止され、同時にデューティ比が飽和され続ける。電流不一致がまだある場合、出力電圧は、定常値から離れ、比較器閾値と再び交差し、ステップ406a及び406bで検出され、ステップ403a及び403bで補助回路を再びトリガする。この手順は、定常状態比較器(閾値V
ref,Mを有する)が、ステップ407a及び407bで検出されたときに2回トリガされる(又は、トリガされ、新しい状態のままになる)まで続き、このことは、電荷平衡が達成されたこと(即ち、i
buck≒i
load;v
out=V
ref,M)を示し、ステップ408でデューティ比飽和が打ち切られる。
【0029】
過渡応答加速器
負荷遷移から首尾よく回復させるためには、出力電圧とインダクタ電流が両方とも、新しい定常状態動作点に移動しなければならない。この典型的な特徴は、実質的にゼロの出力電圧偏差が明らかな完全過渡応答の課題を示す。補助TSUが、無限キャパシタとして働き、厳密に補償された電圧調整器にその場で接続されるので、誤差増幅器(E/A)端子における誤差信号はゼロである。その結果、インダクタ電流が、
図5に表されたように新しい定常点まで増大又は減少せず、このことは、応答加速器がある場合(数字501)とない場合(数字502)のインダクタ電流応答を示す。この課題を克服するために、応答加速器ユニット(
図1の数字103)に接続された電子キャパシタの第3のポート(
図1の数字105)が追加される。
【0030】
図6は、電圧モードコントローラ602の過渡応答加速器601の使用を概略的に示し、ここで、プルアップ/プルダウン回路網103が、デューティ比を飽和させるために、誤差増幅器(E/A)603の補償ポートに接続される。
図6の602などの電圧モードコントローラでは、内部E/Aの出力が、PWMジェネレータに接続し、ほとんどの外部補償設計では外部ポートを介してアクセス可能である。2つの相補的トランジスタ(それぞれプルアップ604aとプルダウン604b)を接続することによって、負荷遷移中にデューティ比が飽和されうる。この動作中にE/A端子におけるゼロ誤差信号が維持されるので、E/Aは、過渡応答加速器によって瞬間的にバイアスされ、次に積分器ワインドアップ又は補償リセットの懸念なしで回復されうる。この手法が補償ループを妨げず、回路網の再設計を不要にし、これは、他のデュアルモードアプリケーションに勝る利点である。
【0031】
図7は、電流モードコントローラ702の過渡応答加速器701の使用を概略的に示す。デューティ比飽和は、電圧モードコントローラの場合と同様に、負荷遷移中にプルアップ及びプルダウントランジスタ(それぞれ604a及び605b)を作動させることによって行われうる。しかしながら、電圧モードコントローラと対照的に、新しい負荷のために電流を増大させ出力電圧を維持することは十分でない。電流モード制御では、2ループ補償手法の結果として、インダクタ電流の情報はやはり制御状態変数である。インダクタ電流の基準値の情報(外部電圧帰還ループの積)は、典型的には、補償回路網705のキャパシタ703(C
Iref)上に電圧として記憶され、TSUの動作中に適正値に更新されなければならず、したがって、遷移期間の終わりまで、インダクタ電流の新しい定常点の情報(即ち、関連電圧)を記憶する。
【0032】
一実施形態では、インダクタ電流基準は、飽和デューティ比での電流スルーと等価なレートで基準キャパシタを充電/放電することによって更新される。
【0033】
図8は、デューティ比の許容される増大を示す。この手法を使用すると、基準電圧は、最大インダクタ電流スルーレート以下のレートで増大/減少しなければならず、したがって、インダクタンス値、デューティ比限度、入力電圧及び出力電圧に関する事前情報が必要である。この演繹的情報が入手可能な場合、抵抗要素(
図7の数字704)を追加して基準増大/減少を制限でき、同時に第2組のランプアップ/ダウントランジスタを使用してデューティ比を飽和させる。
【0034】
別の実施形態では、補償ループ内で既に利用可能なインダクタ電流の情報を利用することによって、主電力コンバータの事前知識が不要になる。
【0035】
図9は、検出電流によるC
Irefの値を制御する仕組みを概略的に示す。遷移中、C
Iref(電流モードコントローラの補償キャパシタ)が、プルアップ又はダウン(遷移タイプによる)される補償ノードから切り離される。この方法では、遷移中にインダクタ電流(又は、その検出バージョン)が使用され、補償(基準)キャパシタC
Iref(TSUの一部でない)が新しい動作点に設定される。この既存情報を利用することによって、遷移期間中に、新しい基準点が正確かつ連続的に更新され、したがって、補償器は、前述されたように、電圧モードTSU手法の動作と同じように常にゼロ誤差状態範囲内になる。
【0036】
電流モードTSUは、インダクタ電流(又は、その検出バージョン)を追跡し、それを(補償)基準キャパシタC
Irefに複製する被制御供給源を含む。また、TSUは、プルアップトランジスタQ
u1、プルダウントランジスタQ
d1及びオプションのスイッチ1を含む。
【0037】
TSUは、第2の外部帰還ループ(出力電圧v
outをサンプリングする)によってインダクタ電流を制御する第1の電流帰還ループを含む。
【0038】
負荷遷移期間の後で、インダクタ電流を示す新しい動作点が、基準キャパシタC
Iref上の直流電圧として反映される。ゼロ電圧誤差は、出力電圧v
outの動作点が基準電圧と等しいことを意味する。被制御供給源は、誤差電圧をゼロに維持し、デューティ比を飽和させて、ある動作点から別の動作点に移すために使用される。誤差電圧がゼロなので、帰還ループの補正は不要である。
【0039】
この手法の例は、ローサイドトランジスタ電流に関する情報しか入手できない一定オンタイム電流制御コンバータに関して示される。
【0040】
図10は、インダクタ電流を追跡するために使用されるローディング遷移中にピーク検出器回路として働きアンローディング遷移中にバッファとして働く構成を示す。インダクタ電流の新しい動作点によって基準キャパシタC
Irefの電圧を更新するには、電圧が、遷移開始前の動作点ではなく実際の動作点から始まることが重要である。これは、キャパシタI
sense出力(一般にVRMsにある)を介してインダクタ電流の値を受け取ることによって行われる。
【0041】
ローディング遷移に応じて、スイッチが開き(非導通)、それにより回路がピーク検出器を動作させうる。アンローディング遷移に応じて、スイッチが閉じ(導通)、それにより、回路が、基準キャパシタC
Irefに現われる電圧を追跡することが可能になる。この電圧は、
図11(青線)に示される。
【0042】
基準キャパシタC
Irefの電圧とTSUによって提供された帰還電圧の衝突を防ぐために、任意選択のスイッチ1が追加される。TSUが動作中、スイッチが開き、基準キャパシタC
Irefが帰還ループから切り離され、被制御供給源が、新しい電流に対応するために基準キャパシタC
Iref上の電圧を更新する。遷移が終了した後、スイッチ1が再び閉じられ、基準キャパシタC
Irefが、電流モードコントローラの一部に戻り、同時に更新された動作点まで充電される。
【0043】
図11は、ローディング及びアンローディング遷移中の
図10の回路の出力の例を示す。ローサイド電流i
LSは、
図11に示されたように、C
Irefを目標値に充電/放電するために小さい負オフセットεを有する回路に入る。この手法によって、インダクタ又は入出力電圧に関する事前情報が不要になる。インダクタ電流をプルアップ/ダウンすることによって、検出されたインダクタ電流自体を使用してインダクタ電圧をインダクタ電流に従わせることができ、補償ノードをプルアップ/ダウンしてデューティ比を飽和させるために1組のトランジスタが使用される。
【0044】
遷移前の定常状態中(左側)、基準キャパシタC
Iref上に現れた電圧(青線)が、電流動作点を表わす電圧(赤線)とほとんど同一であることが分かる。ローディング遷移に応じて、負荷電流I
loadがΔ
outだけ増大する。デューティサイクルの飽和の結果として、インダクタ電流が増大し、基準キャパシタC
Irefが、新しいインダクタ電流に対応する新しい値まで充電される。充電は、遷移期間の中間(青線)に達する方向に完了される。黒線は、インダクタ電流の変化を表わす。インダクタ電流が安定した後、基準キャパシタC
Irefに現われる電圧は一定に維持される。インダクタ電流が減少するとき、下方向遷移で類似のプロセスが起こる。
【0045】
比較器閾値の設定
前述したように、閾値は、許容される最悪ケースの電圧偏差を示す。遷移イベント中に電子キャパシタの動作がイネーブルされるので、定常状態の電圧リップルによって誤った遷移トリガリングが回避されるように閾値を設定しなければならない。誤検出を回避する追加手段は、補助回路の電流シンク又はソースによって引き起こされる電圧リップルを吸収するために閾値間の十分に大きいマージンを保証することである。電流源が公称電流をシンク又はソースするように設計されるので、補助回路によってこれらの2つの電流値が大きくなる。
【0046】
電流不一致が小さく(i
buck≒i
load)数式1で表されるときに、補助(双方向)電流源によって提供される電圧振幅が最大になり、ここで、Q
gは、単一放電サイクル中に補助回路から送られる電荷であり、C
gは、GRSCC共振タンクキャパシタであり、V
ref,Mは、数式2によって表される定常値である。
【数1】
【数2】
【0047】
図12aは、本発明の一実施形態による検出回路の可能な実施態様を示す。この検出回路は、基準電圧設定用の第1の分圧器ラダーと、出力電圧測定用の第2の分圧器ラダーを含む。この構成を使用して、基準電圧は、数式3a〜数式3cによって設計されうる。
【数3a】
【数3b】
【数3c】
【0048】
遷移検出回路の実施態様の重要な基準は、目標出力電圧よりも高い検出閾値と低い検出閾値を有する測定窓を作成することによる。これは、出力電圧又はその検出バージョンに直接基づいて行われうる。この場合、測定窓は、出力電圧レベルに比例する。
【0049】
図12bは、本発明の別の実施形態による検出回路の代替可能な実施態様を示す。この実施形態では、出力電圧が比較され、v
outより低いがv
outの変化を示すのに十分な指示信号v'
outを生成する電流源i
biasによってv
outがサンプリングされる。2つの閾値は、類似の電流源i
biasによって生成される。第1の閾値は、低閾値V'
L=i
bias*R
Lである。第2の閾値は、高閾値V'
H=i
bias*R
Hである。
【0050】
表示信号v'
outは、2つの比較器によって検出される。低閾値V'
Lは、ローディングの場合に出力電圧v
outがV'
Lより低くなることを検出し、v'
out<V'
Lであることを示す論理レベルを提供するために、第1の比較器120に入力される。高閾値V'
Hは、アンローディングの場合に出力電圧v
outがV'
Hより高くなることを検出し、v'
out>V'
Hであることを示す論理レベルを提供するために、第2の比較器121に入力される。R1及びR2の値は、所望のヒステリシスを決定し、ノイズ(又は、他の妨害信号)の結果として閾値を超えることを防ぐように選択される。この場合、測定窓は、出力電圧レベルに依存しない。
【0051】
補助電流源の実現
電子キャパシタ回路内に使用される補助電流源の幾つかの実施形態がある。主な概念は、直ちに応答でき、最大許容負荷ステップ大きさを有する電流I
maxをソース又はシンクできる双方向電流源を実現することである。この節では、補助電流源の3つの実施形態を紹介する。
【0052】
一実施形態で、補助電流源は、GRSCCの形のスイッチドキャパシタコンバータによって実現され、これは、この用途に最も適していることが分かっている。磁気要素を必要とせず、ソフトスイッチングによって高周波数で動作でき、幅広く連続したステップアップ/ステップダウン変換比で高効率を維持する。更に、これは、双方向電流ソーシング挙動を有し、その最大スイッチング周波数の最大半分の帯域幅で電流ステップ応答を作成するように直ちに応答できる。
【0053】
図1の電子キャパシタ内の補助電流源101として、GRSCCの電圧倍増変形が示される。これは、従来の電圧倍増共振スイッチドキャパシタコンバータトポロジに依存して構成され、GRSCCの最適効率点をV
outからV
aux=2V
outにシフトする。このトポロジの選択の主な理由は、補助ストレージキャパシタC
auxの電力密度を、その定格電圧を高めるが、電圧ストレスをトランジスタに加えないことによって高めることである。倍増実現の別の利点は、共振回路網のより高い特性インピーダンスによって所望の電流(即ち、I
max)を得られることである。これは、所定のループ抵抗の場合にGRSCCのより高い目標効率が得られることを示す。
【0054】
GRSCCは、本質的に共振であり、GRSCC出力電流の波形を示す
図13と、ローディング及びアンローディング遷移にGRSCCを使用する補助電流波形を示す
図14で分かるように、各サイクルの後にゼロ電流で完全に停止されうる。その結果、公称電流は、1サイクル以内に再開されうる。このゼロ次電流ステップ性能によって、GRSCCを補助電流源ユニットとして使用できる。更に、任意の所望のV
outと動作周波数の場合に共振タンク値を決定できるのでスケーラビリティの制限がない。また、ブリッジ構成は、任意の所定のスイッチ上の最大ストレスが約V
outになることを保証し、これにより、パワートランジスタの小領域要件が可能になる。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、補助電流源は、
図15に表されたような比較的高いR
DS(on)を有する2つのMOSFETを使用して実現され、R
uとR
dはそれぞれQ
3とQ
4のMOSFETのR
DS(on)抵抗である。この実施形態によれば、入力電圧V
inの別のポートが使用されるが、このポートは、V
outより高いどの電圧源にも接続されうることに注意されたい。この予備ポートを使用して、1つのMOSFET(即ち、Q
3)が、ローディング遷移中の電流ソーシングのためにV
inとV
outの間に接続され、別のMOSFET(即ち、Q
4)は、アンローディング遷移中の電流シンキングのためにV
outとGNDの間に接続される。この構成を使用して得られた電流波形は、
図16に表されたようにI
max以上の振幅を有するパルスである。数式4の条件が続く限り、コントローラが所望抵抗と既存抵抗の間の不一致を補償するので、MOSFETを大雑把に選択でき、即ち正確なR
DS(on)が必須ではないことに注意されたい。
【数4】
【0056】
本発明の更に別の実施形態によれば、補助電流源は、不連続導電モード(DCM)で動作する同期バックコンバータを使用して実現される。更に、コンバータは、出力から入力への同期ブーストコンバータとして使用されうる。したがって、このトポロジは、
図17に表されたような電子キャパシタ回路のための双方向補助電流源として使用されてもよく、インダクタL
auxは、Q
3及びQ
4と共にDCMバックを表わす。前の実施形態と同様に、この解決策は、V
inに接続された追加ポート又はV
outより高い任意の電圧源を必要とする。
【0057】
ローディング遷移の場合、
図18の回路は、電流をV
OUTポートにソースするDCM内のバックコンバータとして作動する。アンローディング遷移の場合、回路は、V
OUTポートの電流をシンクするブーストコンバータとして動作する。ここで、補助電流波形は、
図17に表されたように、2I
max以上のピーク電流を有する三角形である。したがって、MOSFETのオンタイムジェネレータT
onは、ローディング及びアンローディング遷移で異なり、数式5によって示される。
【数5】
【0058】
シミュレーション結果
図19に、ローディング遷移に対応するためにバックコンバータを支援する補助電流源としてGRSCCのシミュレーションが表される。バックは、
図20に表されたようにタイプIII補償回路網を有するアナログコントローラによって制御された、12Vから5Vへのコンバータである。電子キャパシタの比較器の閾値は、出力電圧定常値から±50mVになるように設定され、GRSCCは、バックコンバータの出力端子に5Aの電流をソースするように設計される。
【0059】
0Aから3.5Aへのローディング遷移によって、出力電圧が低下しV
ref,Lと交差し、cmp
Lがトリガされ、ローディング遷移が電子キャパシタによって検出される。過渡応答加速器が活動化され、デューティ比が最大値に飽和され、GRSCCが5Aをソースする。i
aux+i
buck>i
loadなので、出力電圧が上昇し、V
ref,Mと交差し、GRSCC電流ソーシングを停止する。この時点で、負荷電流がまだインダクタ電流より高く(i
buck)、出力電圧が再び低下し、もう一度V
ref,Lと交差し、GRSCCを再トリガする。出力電圧が上昇した後で、V
ref,Mと2回目に交差するとき、GRSCC動作が再停止され、インダクタ電流が負荷電流より高く、電荷平衡が達成される。この時点で、遷移の終わりが検出され、過渡応答加速器が非活動化され、補償器のリセット又は更新の必要なしに定常状態動作が再開される。
【0060】
実験結果
電子キャパシタ概念の動作を有効にし、本発明のプラグアンドプレイ機能を実証するために、Texas Instruments Inc.からの30W 12−5Vアナログ制御同期バックコンバータの標準品評価モジュール(EVM)(TPS40055)が、既に補償され(タイプIIIスキーム)最適化された電圧調整器として働くように選択された。
図1に示されたように、電子キャパシタモジュールが、アドオン回路としてEVMリファレンス設計に接続された。補助回路は、前述されたように6Aのシンクキング及びソーシング電流機能を有するGRSCCによって実現された。遷移抑制ユニットのステートマシンは、Altera Cyclone IV FPGA上で実現される。表1は、実験プロトタイプ及び比較器の閾値電圧設定の構成要素値とパラメータを示す。負荷ステップ信号は、コントローラと同期せずにFPGAによって独立に生成される。
【表1】
【0061】
更に、電圧調整器が、材料の厳密費用を含むリファレンス設計によって規定されたように指定されたことに注意されたい。電子キャパシタの3つのポートは、出力電圧端子(V
OUT)、アナログコントローラのE/A(COMP)の出力、及びGNDに接続された。
【0062】
図21Aと
図21Bに表された6Aのローディング遷移は、電子キャパシタの支援がない場合(
図21A)と電子キャパシタの支援がある場合(
図21B)のバックコンバータの応答を比較するために生成される。電子キャパシタがない場合、出力電圧アンダーシュートが500mVであり、電子キャパシタの支援がある場合、25mVの出力電圧アンダーシュートを示すことが分かる。
図22Aと
図22Bは、同じ場合の6Aアンローディング過渡応答を示す。このとき、電子キャパシタのない出力電圧オバーシュートは、
図22Aに示されたように240mVであり、一方、電子キャパシタのある出力電圧オバーシュートは、
図22Bに示されたように合計30mVになる。システム性能と自動化TSU動作の全体像を得るために、
図23に表されたように、連続的な6Aローディング及びアンローディング過渡応答が、電子キャパシタがある場合とない場合で測定された。電子キャパシタを使用することによって、全遷移時間が、インダクタ電流のスルーレートのみによって限定され、これは、ローディングで80μsとアンローディングで30μsであり、これに対して、電子キャパシタのないシステムでは、全遷移時間はそれぞれ500μsと275μsである。
【0063】
図24は、アンローディングイベントの基準電圧V
ref,H、V
ref,Mに基づく電子キャパシタ動作の拡大図を示す。電子キャパシタが、出力電圧を2つの閾値の間で維持し、出力電圧がV
ref,Hと交差したときに電流をシンクし、出力電圧がV
ref,Mに達したときに動作を停止することが分かる。これにより、電子キャパシタを有するシステムの出力電圧偏差が、比較器の閾値によって決定され、これらの閾値間の差の最小化が、システム内の定常状態の電圧リップルとノイズの関数になる。その結果、負荷遷移の要件によるサイズ決めと対照的に、出力キャパシタンスを、出力電圧リプルの定常仕様に大幅に縮小しサイズ決めできる。
【0064】
本発明の実施形態を説明図によって述べてきたが、本発明が、特許請求の範囲を超えることなく多くの変形、修正及び適応で実行されうることを理解されよう。