特許第6979967号(P6979967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979967ニューロモジュレーションの改良されたフィードバック制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979967
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ニューロモジュレーションの改良されたフィードバック制御
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   A61N1/36
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-552138(P2018-552138)
(86)(22)【出願日】2017年4月5日
(65)【公表番号】特表2019-510576(P2019-510576A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】AU2017050296
(87)【国際公開番号】WO2017173493
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2020年4月1日
(31)【優先権主張番号】2016901264
(32)【優先日】2016年4月5日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】513144730
【氏名又は名称】サルーダ・メディカル・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ハミルトン・レアード−ワ
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−523261(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0360031(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0082265(US,A1)
【文献】 特表2013−500779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経刺激を制御する自動化方法であって、
制御装置によって、神経経路上に誘発活動電位反応を生じさせるために前記神経経路に前記神経刺激を印加するステップであって、前記刺激が少なくとも1つの刺激パラメータによって定義される、ステップと、
前記制御装置によって、前記刺激によって誘発される前記誘発活動電位反応を測定し、前記測定された前記誘発活動電位反応からフィードバック変数を導出するステップと、
前記制御装置によって、前記フィードバック変数を用いて前記少なくとも1つの刺激パラメータ値を制御することにより、フィードバックループを実施するステップと、
前記制御装置によって、前記フィードバック変数に補償伝達関数を適用することにより、前記神経経路に対する電極移動によってもたらされる前記フィードバックループのゲインの変化を適応的に補償するステップであって、前記補償伝達関数が、(i)刺激の距離依存伝達関数および(ii)(i)とは異なる測定の距離依存伝達関数の両方を補償するための関数である、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
刺激電流(I)と観察されるECAP電圧(V)との単一の測定値対を用いることにより、一定の動員がもたらされ、前記刺激電流(I)は前記刺激パラメータの値を示し、前記ECAP電圧(V)は前記誘発活動電位反応を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補償伝達関数が、動員パラメータnおよび測定パラメータmの両方を反映する単一のパラメータkを含み、m≠nである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
動員された線維の総数NがN∝Ix−n−Tとして変化し、前記測定されるECAP電圧の振幅Vが、∝Nx−mとして近似され、k=m/nである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
kが、使用時の刺激および記録構成に対して好適な値をとるように選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
三極刺激が、SCSリードの第1電極から第3電極を用いて送達され、同じリードの第6電極を用いて記録が取られ、kが0.1〜0.7の範囲にあるように選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
kが0.22〜0.53の範囲にあるように選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
kが約0.37であるように選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
kが、動員データを用いて臨床的に求められる、請求項〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記動員データが、患者の知覚閾値、不快閾値、ある部位または身体部分の適用範囲、患者の刺激の知覚の定性的特徴、患者の最適な快適さの知覚、電気生理学的基準、筋反応/痙攣の発現および神経活動の基準のうちの1つまたは複数を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
患者が一続きの姿勢をとるステップと、
前記制御装置によって、各姿勢で、要求される動員データが達成されるまで前記刺激の強度を調整するステップと、
前記制御装置によって、異なる姿勢における一定の動員データからkを推定するステップと
をさらに含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
kが、記録電極を用いて、複数の姿勢で末梢刺激に対する神経反応を測定して、各姿勢におけるViデータを取得し、刺激電極を用いて、各姿勢においてそれぞれのViをもたらす電流レベルIiに調整された刺激を送達し、一定の動員の(I,V)対の組を用いてkを導出することにより、臨床的に求められる、請求項〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
kが、前記患者をある範囲の姿勢iに配置し、各姿勢において前記刺激強度をスイープし、成長曲線を記録して、各それぞれの姿勢に対する前記成長曲線を線形に当てはめて、それぞれの閾値Tおよび成長の傾きMを求め、対数Tに対して対数Tを比較してkを導出することによって臨床的に求められる、請求項〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
入来するECAPの測定値(V)に、そのECAPを発生させるために使用された前記刺激電流(I)の累乗したもの(I)が掛け合わされ、設定値に対して誤差信号が生成され、次の刺激強度を決定するコントローラに提供される、請求項〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
神経刺激を制御可能に印加する植込み型デバイスであって、
1つまたは複数の名目刺激電極と1つまたは複数の名目検知電極とを含む複数の電極と、
神経経路に誘発活動電位反応を生じさせるために、前記1つまたは複数の刺激電極から前記神経経路に送達されるように刺激を提供する刺激源と、
前記1つまたは複数の検知電極において検知される前記誘発活動電位反応の信号を記録する測定回路と、
制御装置であって、
少なくとも1つの刺激パラメータによって定義されるように神経刺激の印加を制御し、
前記測定回路を介して、前記刺激によって誘発される前記誘発活動電位反応を測定し、
前記測定された誘発活動電位反応からフィードバック変数を求め、
前記フィードバック変数を用いて前記少なくとも1つの刺激パラメータ値を制御することによりフィードバックループを実施し、
前記フィードバック変数に補償伝達関数を適用することにより、前記神経経路に対する電極移動によってもたらされる前記フィードバックループのゲインの変化を適応的に補償するように構成され、前記補償伝達関数が、(i)刺激の距離依存伝達関数および(ii)(i)とは異なる測定の距離依存伝達関数の両方を補償するための関数である
制御装置と、
を含む植込み型デバイス。
【請求項16】
前記制御装置が、ECAPの測定値(V)にそれぞれのECAPを発生させるために使用された前記刺激電流(I)の累乗したもの(I)を掛け合わせることにより適応的に補償するように構成され、設定値に対して誤差信号を生成し、前記誤差信号をその後の刺激強度を決定するコントローラに提供するようにさらに構成されており、前記刺激電流(I)は前記刺激パラメータの値を示し、前記ECAPの測定値(V)は前記誘発活動電位反応を示す、請求項15に記載の植込み型デバイス。
【請求項17】
神経刺激を制御可能に印加するための非一時的コンピュータ可読媒体であって、1つまたは複数のプロセッサによって実行される以下の命令、すなわち、
神経経路上に誘発活動電位反応を生じさせるために前記神経経路に前記神経刺激を印加するコンピュータプログラムコード手段であって、前記刺激が少なくとも1つの刺激パラメータによって定義されるように印加される、コンピュータプログラムコード手段と、
前記刺激によって誘発される前記誘発活動電位反応を測定し、前記測定された誘発活動電位反応からフィードバック変数を導出するコンピュータプログラムコード手段と、
前記フィードバック変数を用いて前記少なくとも1つの刺激パラメータ値を制御することにより、フィードバックループを実施するコンピュータプログラムコード手段と、
前記フィードバック変数に補償伝達関数を適用することにより、前記神経経路に対する電極移動によってもたらされる前記フィードバックループのゲインの変化を適応的に補償するコンピュータプログラムコード手段であって、前記補償伝達関数が、(i)刺激の距離依存伝達関数および(ii)(i)とは異なる測定の距離依存伝達関数の両方を補償するための関数である、コンピュータプログラムコード手段と、
を含む非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺激に対する神経反応を制御することに関し、特に、後に印加される刺激を制御するようにフィードバックを提供するために、神経経路に対して近位側に植え込まれた1つまたは複数の電極を用いることによる複合活動電位の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
誘発複合活動電位(ECAP)を生じさせるために神経刺激を印加することが望ましいさまざまな状況がある。たとえば、慢性神経障害性疼痛、パーキンソン病および偏頭痛を含む種々の疾患を治療するために、ニューロモジュレーションが使用される。ニューロモジュレーションシステムは、治療効果を発生させるために神経組織に電気パルスを印加する。
【0003】
胴体および四肢に発する神経障害性疼痛を緩和するために使用される場合、電気パルスは、脊髄の後索(DC)に印加される(脊髄刺激療法(SCS)と呼ばれる)。こうしたシステムは、通常、植え込まれる電気パルス発生器と、経皮誘導伝導により再充電可能であり得るバッテリ等の電源とを備える。パルス発生器に電極アレイが接続され、標的神経経路に隣接して配置される。電極によって神経経路に印加される電気パルスにより、ニューロンの脱分極がもたらされ、伝播する活動電位が発生する。このように刺激されている線維は、脊髄内のそのセグメントから脳に痛みが伝達するのを阻止する。痛み緩和効果を持続させるために、刺激は、たとえば30Hz〜100Hzの範囲の周波数で実質的に連続して印加される。
【0004】
有効かつ快適な動作のために、刺激振幅または送達電荷を動員閾値上に維持する必要がある。動員閾値未満の刺激では、いかなる活動電位も動員することができない。快適閾値未満の刺激を印加することも必要であり、この快適閾値を超えると、Aβ線維の動員の増大により、不快なまたは痛みの知覚がもたらされる。Aβ線維は、動員が大きすぎる場合に不快な感覚をもたらし、高刺激レベルでは激痛、冷覚および圧覚に関連する感覚神経線維さえも動員する可能性がある。略すべてのニューロモジュレーション応用において、単一クラスの線維の反応が望ましいが、採用される刺激波形は、他のクラスの線維に対する活動電位を動員する可能性があり、それにより、望ましくない副作用がもたらされる。適切な神経動員を維持する作業は、電極の移動および/またはインプラント受容者の姿勢の変化によりさらに困難になり、これらはいずれも、刺激が電極の位置または使用者の姿勢の変化の前に加えられたかまたは後に加えられたかに応じて、所与の刺激から生じる神経動員を著しく変化させる可能性がある。硬膜外腔に電極アレイが移動する余地があり、こうしたアレイの移動により、電極−線維距離が変化し、したがって、所与の刺激の動員効力が変化する。さらに、脊髄自体が脳脊髄液(CSF)内で硬膜に対して移動する可能性がある。姿勢が変化する間、CSFの量および脊髄と電極との間の距離は、著しく変化する可能性がある。この影響は、姿勢の変化のみにより以前は快適かつ有効であった刺激レジメンが、効果がなくなるかまたは痛みを伴うものとなる可能性があるほど大きい。
【0005】
すべてのタイプのニューロモジュレーションシステムが直面する別の制御問題は、治療効果に必要な十分なレベルの神経動員を、ただし最小限のエネルギー消費で達成することである。刺激パラダイムの電力消費は、バッテリ要件に直接の影響を及ぼし、それがさらに、デバイスの物理的なサイズおよび寿命に影響を与える。充電式システムの場合、電力消費の増大により充電がより頻繁になり、バッテリが限られた回数の充電サイクルしか可能でない場合、最終的に、これによりデバイスの植込み寿命が短縮される。
【0006】
本出願人による国際公開第2012155188号パンフレットに示される方法による等、フィードバックにより、こうした問題に対処する試みがなされてきた。フィードバックは、一定のECAP振幅を維持するように送達される刺激を制御することにより、神経および/または電極の移動を補償しようとする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に含まれている文献、行為、材料、装置、物品等のいかなる考察も、単に本発明に対する背景を提供することを目的とするものである。これらの事項のいずれかまたはすべてが従来技術の基礎の一部を形成するか、または本出願の各請求項の優先日前に存在していたものとして本発明に関連する分野における共通の一般知識であったと認めるものとして解釈されるべきではない。
【0008】
本明細書を通して、「含む(comprise)」という用語または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」等の変形は、述べられている要素、完全体もしくはステップ、または要素、完全体もしくはステップ群を包含することを意味し、他のあらゆる要素、完全体もしくはステップ、または要素、完全体もしくはステップ群を排除することを意味するものではないことが理解されるであろう。
【0009】
本明細書において、要素が選択肢のリストの「少なくとも1つ」であり得ると述べる場合、それは、その要素が列挙された選択肢のうちの任意の1つであり得るか、または列挙された選択肢のうちの2つ以上の任意の組合せであり得ると理解されるべきである。
【0010】
第1態様によれば、本発明は、神経刺激を制御する自動化方法であって、
神経経路上に誘発活動電位を生じさせるために神経経路に神経刺激を印加するステップであって、刺激が少なくとも1つの刺激パラメータによって定義される、ステップと、
刺激によって誘発される神経複合活動電位反応を測定し、測定された誘発反応からフィードバック変数を導出するステップと、
フィードバック変数を用いて少なくとも1つの刺激パラメータ値を制御することにより、フィードバックループを完成するステップと、
フィードバック変数に補償伝達関数を適用することにより、神経経路に対する電極移動によってもたらされるフィードバックループのゲインの変化を適応的に補償するステップであって、補償伝達関数が、(i)刺激の距離依存伝達関数および(ii)(i)とは異なる測定の距離依存伝達関数の両方を補償するように構成される、ステップとを含む方法を提供する。
【0011】
第2態様によれば、本発明は、神経刺激を制御可能に印加する植込み型デバイスであって、
1つまたは複数の名目刺激電極と1つまたは複数の名目検知電極とを含む複数の電極と、
神経経路に誘発活動電位を生じさせるために、1つまたは複数の刺激電極から神経経路に送達されるように刺激を提供する刺激源と、
1つまたは複数の検知電極において検知される神経複合活動電位信号を記録する測定回路と、
制御装置であって、
少なくとも1つの刺激パラメータによって定義されるように神経刺激の印加を制御し、
測定回路を介して、刺激によって誘発される神経複合活動電位反応を測定し、
測定された誘発反応からフィードバック変数を求め、
フィードバック変数を用いて少なくとも1つの刺激パラメータ値を制御することによりフィードバックループを完成し、
フィードバック変数に補償伝達関数を適用することにより、神経経路に対する電極移動によってもたらされるフィードバックループのゲインの変化を適応的に補償するように構成され、補償伝達関数が、(i)刺激の距離依存伝達関数および(ii)(i)とは異なる測定の距離依存伝達関数の両方を補償するように構成されている、
制御装置と、
を含む植込み型デバイスを提供する。
【0012】
第3態様によれば、本発明は、神経刺激を制御可能に印加するための非一時的コンピュータ可読媒体であって、1つまたは複数のプロセッサによって実行される以下の命令、すなわち、
神経経路上に誘発活動電位を生じさせるために神経経路に神経刺激を印加するコンピュータプログラムコード手段であって、刺激が少なくとも1つの刺激パラメータによって定義されるように印加される、コンピュータプログラムコード手段と、
刺激によって誘発される神経複合活動電位反応を測定し、測定された誘発反応からフィードバック変数を導出するコンピュータプログラムコード手段と、
フィードバック変数を用いて少なくとも1つの刺激パラメータ値を制御することにより、フィードバックループを完成するコンピュータプログラムコード手段と、
フィードバック変数に補償伝達関数を適用することにより、神経経路に対する電極移動によってもたらされるフィードバックループのゲインの変化を適応的に補償するコンピュータプログラムコード手段であって、補償伝達関数が、(i)刺激の距離依存伝達関数および(ii)(i)とは異なる測定の距離依存伝達関数の両方を補償するように構成されている、コンピュータプログラムコード手段と、
を含む非一時的コンピュータ可読媒体を提供する。
【0013】
本発明は、(i)所与の刺激による神経経路に対する誘発複合活動電位の動員は、神経経路からの刺激電極の距離に基づいて変化し、(ii)神経経路からの所与のECAPの観察される波形は、神経経路からの検知電極の距離に基づいて変化すること、さらに、(i)に対する伝達関数は(ii)に対する伝達関数とは異なり、それにより、患者の動き、姿勢の変化、心拍等によってもたらされる可能性のある電極移動が、刺激のフィードバック制御を用いるシステムの動員挙動に影響を与えることを認める。
【0014】
いくつかの実施形態は、刺激閾値または反応成長曲線を推定または測定しなければならないのではなく、単一のIおよびVの測定値(Iは刺激電流の基準であり、Vは観察されるECAP電圧の基準である)を用いることにより一定の動員をもたらす制御方法を提供することができる。こうした実施形態では、その伝達関数は、好ましくは、動員パラメータnおよび測定パラメータmの両方を反映する単一のパラメータkを含み、刺激伝達関数は測定伝達関数とは異なるため、mおよびnは等しくない。たとえば、動員される線維の総数Nは、∝Ix−n−Tとして距離xによって変化し、測定されるECAP電圧振幅Vは、V∝Nx−mとして近似される場合、いくつかの実施形態では、k=m/nである。重要なことには、本発明は、刺激伝達関数が測定伝達関数とは異なるため、フィードバックパラメータkは1に等しくない、ということを認める。フィードバックパラメータkは、好ましくは、刺激電極から記録電極までの距離によって決まり、かつ/または参照電極に対する刺激電極の構成によって決まり、かつ/または二極刺激であるか三極刺激であるか等の刺激構成によって決まる値のように、使用時の刺激および記録構成に対して好適な値をとるように選択される。たとえば、三極刺激がSCSリードの第1電極〜第3電極を用いて送達され、記録が同じリードの第6電極を用いて取られる1つのこうした構成では、フィードバックパラメータkは、好ましくは、0〜0.8、より好ましくは0.1〜0.7、より好ましくは0.16〜0.61、より好ましくは0.22〜0.53、より好ましくは0.3〜0.43の範囲、最も好ましくは約0.37であるように選択される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、kは、動員データを用いて臨床的に求められる。動員データは、患者の知覚閾値、不快閾値、ある部位または身体部分の適用範囲、最適な快適さ等の患者の刺激の知覚の定性的特徴、筋反応/痙攣の発現等、電気生理学的基準、または神経活動の基準のうちの1つまたは複数を含むことができる。こうした基準は、脊椎、末梢神経、脳または体内の他の場所に現れる可能性がある、刺激によって誘発される反応の振幅、潜時または他の特徴を使用することができる。こうした実施形態では、kの臨床的決定は、患者が一続きの姿勢をとることと、各姿勢で、要求される動員データが達成されるまで刺激の強度を調整することと、好適な当てはめまたは近似により異なる姿勢における一定の動員データからkを推定するステップとをさらに含むことができる。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、kは、記録電極を用いて、複数の姿勢で、一定のTENS刺激等の末梢刺激に対する神経反応を測定して、各姿勢におけるViデータを取得することにより、臨床的に求められる。そして、末梢刺激を取り除くことができ、インプラントの刺激電極は、その後、各姿勢において、それぞれのViをもたらし、したがって姿勢とは無関係に一定の動員を達成したことが分かっている電流レベルIiに調整された刺激を、送達することができる。そして、一定の動員の(I,V)対の組を当てはめるかまたは近似して、kをもたらすことができる。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、特に、狭い範囲の線維直径を有する線維集団を含む応用の場合、kは、患者をある範囲の姿勢iに配置し、各姿勢において刺激強度をスイープし、成長曲線を記録することによって、臨床的に求めることができる。各それぞれの姿勢に対する成長曲線から、曲線の線形部分に線が当てはめられて、閾値Tおよび成長傾きMが求められる。対数Tに対して対数Tをプロットし、これらの点に線を当てはめることにより、傾き−m/n=−kが得られる。
【0018】
いくつかの実施形態では、nおよびmは、動作範囲を通してそれぞれの伝達関数に適用可能なべき乗則を近似する定数として扱われる。しかしながら、代替実施形態は、たとえば、nおよびmが、より高い動員で、わずかに、かつ異なる程度低減する可能性があることを反映するように、変数nおよび/または変数mを提供することができる。nおよびmのこうした適応性は、デバイスが低い動員のレジメンで動作しているか高い動員のレジメンで動作しているかによって決まるより正確な補償を提供するように実施することができる。
【0019】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、以下のようにフィードバックループを実施することができる。すなわち、入来するECAPの測定値(V)に、それらを発生させるために使用された刺激電流(I)の累乗したもの(I−k)が掛け合わされる。設定値に対して誤差信号が生成され、次の刺激強度を決定するコントローラGに提供される。したがって、I−V制御は、フィードバックループとして実施され、選択された設定値
【数1】
から導出された誤差信号
【数2】
を用いて形式F=IVの項を制御することができる。
【0020】
フィードバック変数は、いくつかの実施形態では、全誘発複合活動電位、たとえば刺激後0〜2msの測定窓における高速神経反応、たとえば刺激後2〜6msの測定窓における低速神経反応、または反応のフィルタリングされたもののうちの任意のものの振幅、エネルギー、パワー、積分、信号強度または微分のうちの任意の1つであり得る。フィードバック変数は、いくつかの実施形態では、複数の刺激/測定サイクルにわたって求められる任意のこうした変数の平均であり得る。フィードバック変数は、いくつかの実施形態では、変化する刺激電流に対するECAP振幅の反応の線形部分のゼロ切片または傾きであり得る。いくつかの実施形態では、フィードバック変数は、上述した基準のうちの2つ以上から導出することができる。
【0021】
制御変数または刺激パラメータは、いくつかの実施形態では、総刺激電荷、刺激電流、パルス振幅、位相持続時間、相間ギャップ持続時間もしくはパルス形状のうちの1つもしくは複数、またはこれらの組合せであり得る。
【0022】
したがって、本発明は、一定のECAPを維持するためのフィードバックループの使用は、患者の姿勢の変化により信号入力が生成されるとともに、(i)刺激電極から神経の伝達関数と(ii)神経から検知電極の伝達関数との両方のループ特徴を変化させるため、困難な課題である、ということを認める。
【0023】
フィードバックループの設定値は、ECAP振幅の一定値を求めるように構成することができ、または、たとえば、参照により本明細書に援用される、本出願人による国際公開第2012155188号パンフレットに記載されているような治療マップによって定義されるように、経時的に変化する標的ECAP振幅を求めるように構成することができる。
【0024】
ここで、添付図面を参照して本発明の例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】植込み型脊髄刺激器を概略的に示す。
図2】植込み型神経刺激器のブロック図である。
図3】植込み型刺激器の神経との相互作用を示す概略図である。
図4】電気的誘発複合活動電位の典型的な形態を示す。
図5】観察されたECAPのピークツーピーク振幅のプロットである。
図6】電流の関数としての動員のプロットである。
図7】記録振幅の関数としての動員を示す。
図8】各距離xに対する対応する刺激電流を示す。
図9】ECAPモデルから計算された電圧−距離曲線を示す。
図10】IV値と動員との関係を示す。
図11a】以前の定電流手法、以前の定ECAP電圧手法およびI−V手法の性能を示す。
図11b】以前の定電流手法、以前の定ECAP電圧手法およびI−V手法の性能を示す。
図12】所望の動員値の範囲にわたるI−V手法の性能を示す。
図13】kの各値に対する全誤差を示す。
図14】電極の間のkの変動を示す。
図15】二相刺激による、異なる電極における、I−V技法の性能に対するkの異なる値の影響を示す。
図16】二相刺激によるI制御、V制御およびI−V制御の性能を示す。
図17】I−V制御を用いる、一定の動員を維持するためのフィードバックループを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、植込み型脊髄刺激器100を概略的に示す。刺激器100は、患者の下腹部部位または上後臀部領域の好適な位置に植え込まれた電子機器モジュール110と、硬膜外腔内に植え込まれ、好適なリードによってモジュール110に接続された電極アセンブリ150とを含む。植込み型神経デバイス100の動作の多くの態様は、外部制御装置192によって再構成可能である。さらに、植込み型神経デバイス100は、データ収集の役割を果たし、収集されたデータは外部装置192に通信される。
【0027】
図2は、植込み型神経刺激器100のブロック図である。モジュール110は、バッテリ112およびテレメトリモジュール114を含む。本発明の実施形態では、テレメトリモジュール114は、赤外線(IR)、電磁、容量性および誘導伝達等、任意の好適なタイプの経皮通信190を使用して、外部装置192と電子機器モジュール110との間で電力および/またはデータを伝送することができる。
【0028】
モジュールコントローラ116は、患者設定120、制御プログラム122等を格納する関連付けられたメモリ118を有する。コントローラ116は、患者設定120および制御プログラム122に従って、電流パルスの形態で刺激を発生させるようにパルス発生器124を制御する。電極選択モジュール126は、生成されたパルスを電極アレイ150の適切な電極に切り替えて、選択された電極の周囲の組織に電流パルスが送達されるようにする。測定回路128は、電極選択モジュール126によって選択される電極アレイの検知電極において検知される神経反応の測定値を捕捉するように構成されている。
【0029】
図3は、植込み型刺激器100の神経180との相互作用を示す概略図であり、この場合、神経は脊髄であるが、代替実施形態は、末梢神経、内臓神経、副交感神経または脳構造を含む任意の所望の神経組織に隣接して位置決めすることができる。電極選択モジュール126は、神経180を含む周囲の組織に電流パルスを送達するために電極アレイ150の刺激電極2を選択し、ゼロの正味電荷移動を維持するように刺激電流回復のためのアレイ150の戻り電極4も選択する。
【0030】
神経180に適切な刺激を送達することにより神経反応が誘発され、この神経反応は、慢性疼痛のための脊髄刺激器の場合、所望の位置で錯感覚をもたらすことであり得る治療目的で、図示するように神経180に沿って伝播する複合活動電位を含む。このために、刺激電極は、30Hzで刺激を送達するように使用される。デバイスを適合させるために、臨床医は、使用者が錯感覚として感じる感覚をもたらす刺激を印加する。錯感覚が、痛みによって影響を受ける使用者の身体の部位と一致する位置にありかつそうしたサイズである場合、臨床医は、継続して使用するためにその構成を指定する。
【0031】
デバイス100は、神経180に沿って伝播する複合活動電位(CAP)の存在および強度を、こうしたCPAが電極2および4からの刺激によって誘発されるかまたは他の方法で誘発されるかに関わらず、検知するようにさらに構成されている。このために、電極選択モジュール126は、測定電極6および測定参照電極8としての役割を果たす、アレイ150の任意の電極を選択することができる。測定電極6および8によって検知される信号は測定回路128に渡され、測定回路128は、たとえば、参照により内容が本明細書に援用される、本出願人による国際公開第2012155183号パンフレットの教示に従って動作することができる。
【0032】
本発明は、フィードバック制御ループを実施しようとして、ECAP記録に含まれる2つの距離依存伝達関数があることを認める。第1伝達関数は刺激に関し、すなわち、距離xが大きいほど、同じ神経線維を刺激するためにより高い電流が必要である。第2伝達関数は、記録に関し、距離xが大きいほど、所与の細胞動員によってより小さいECAPが観察されることになる。一定の観察されたECAP電圧振幅を求めるフィードバックは、記録伝達関数を考慮せず、その結果、脊髄の距離が増大するに従い、動員が実際に増大することになる。さらに、第1伝達関数および第2伝達関数は同じでなく、別個の補償を必要とする。
【0033】
本発明は、両方の距離依存伝達関数を、それらの伝達関数の差に応答する方法で考慮し、それにより、フィードバック制御の性能を向上させる手法を提供する。
【0034】
こうした方法は、細胞内パッチクランプ記録等によりヒトの神経動員を直接測定することが不可能であるかまたは少なくとも実現不可能であることによって必然的に制限され、実際のフィードバックシステムでは、フィードバックパラメータをこうした測定値なしに患者に適合させることが可能でなければならない。
【0035】
図4は、健康な被験者の電気的誘発複合活動電位の典型的な形態を示す。図4に示す複合活動電位の形状は予測可能であり、なぜなら、それは、刺激に反応して活動電位を発生させる軸索の集合によって生成されるイオン電流の結果であるためである。多数の線維の間で発生する活動電位は、足し合わさって複合活動電位(CAP)を形成する。CAPは、多数の単一線維の活動電位からの反応の総和である。記録されたCAPは、多数の異なる線維が脱分極した結果である。伝播速度は、主に線維の直径によって決まる。同様の線維群の発火から発生するCAPは、正のピーク電位P、その後、負のピークN、続いて第2の正のピークPとして測定される。これは、活動電位が個々の線維に沿って伝播する際に活性化領域が記録電極を通過することによってもたらされる。観察されるCAP信号は、典型的には、マイクロボルトの範囲の最大振幅を有する。
【0036】
CAPプロファイルは、典型的な形態をとり、図4にいくつかを示す任意の好適なパラメータによって特徴付けることができる。記録の極性に応じて、通常の記録されたプロファイルは、図4に示すものに対して逆の形態をとる、すなわち、2つの負のピークNおよびNと1つの正のピークPとを有する場合がある。
【0037】
例示の目的で、ECAP刺激は、SCSモデルにより、10の異なる脊髄位置の各々に対して、脊髄−電極距離を1.7mm〜5.2mm(1.7mm、2.1mm、2.5mm、2.9mm、3.3mm、3.6mm、4.0mm、4.4mm、4.8mm、5.2mm)で変化させて行った。第2カソード効果による測定値の混乱を回避するために、単相刺激を用いた。SCSにおいて一般に使用されるように、8電極線形アレイがモデル化される。刺激は電極2で送達され、電流は電極1および3で戻る。図5は、0〜30mAの範囲の刺激電流に反応して、これらの脊髄−電極距離における電極6において観察されたECAPのピークツーピーク振幅のプロットである。図示するように、脊髄が電極アレイにより近づくように移動すると、動員閾値は低下し、成長の傾きおよび飽和振幅は増大する。
【0038】
刺激方法を比較するために、5000の線維の標的動員が選択され、これは、治療刺激において一般に観察されるように、線形動員領域内にある。図6は、従来技術の手法による固定の刺激振幅(垂直線610)の使用を示す、電流の関数としての動員のプロットである。内側索位置において5000の線維を動員するために、固定の電流振幅(約4.8mA)が選択される。定刺激電流を用いて動員される線維の数は、検査される脊髄位置にわたってゼロの線維から約35000の線維の範囲である。これにより、従来のSCSが脊髄位置に影響されやすい程度が強調される。
【0039】
図7は、一定のN1−P2記録振幅(垂直線710)を求めるフィードバック制御を使用する場合の記録振幅関数としての動員を示す。内側索位置において5000の線維を動員するために、設定振幅(約47μV)が選択される。図6の定刺激振幅手法と比較して、図7の電極−神経離隔距離の変化からもたらされる動員変動は低減し、ここでは、動員は、検査される距離にわたって約3000から6500の線維で変動する。図7の変動は、図6の定電流刺激手法と比較すると逆転しており、すなわち、図7では、動員は脊髄距離が大きいほど増大することに留意されたい。それにも関わらず、図7の一定観察電圧手法は、電極−神経離隔距離の変化に応じて著しい程度の望ましくない動員変動を受け続け、動員は、電極−神経離隔距離が1.7mmであるとき、望ましい動員より略40%小さく、電極−神経離隔距離が5.2mmであるとき、望ましい動員より略60%大きい。
【0040】
したがって、本発明は、電極−神経離隔距離が変化しやすい場合、図6の一定刺激手法および図7の一定観察電圧手法はともに、所望の治療効果のある数の神経線維を確実に動員しない、ということを認める。
【0041】
代わりに本発明は、(i)電極−神経離隔距離xに対する刺激伝達関数と、(ii)電極−神経離隔距離xに対する記録伝達関数との両方を補償する方法で、刺激振幅のフィードバック制御を提供し、(i)と(ii)との差を考慮する方法でそれを行う。
【0042】
刺激伝達関数および記録伝達関数の両方が、第1要素(それぞれ、刺激電極または神経)が容積導体において電界を放射し、この電界の一部が、第2要素(それぞれ、神経または検知電極)によって検知される、物理的プロセスを記述する。放射プロセスの結合は、通常、距離の何乗かで低減し、こうしたべき乗項を含む式によってモデル化することができる。しかしながら、重要なことには、刺激伝達関数は、測定伝達関数と同じではなく(逆数でもなく)、それは、少なくとも、発生波形が異なることにより(パルス刺激対典型的に3ローブECAP波形)、一方の手において刺激を送達し他方の手において神経測定値を取得するように不変に採用される電極構成が異なることにより、かつ少なくとも、刺激部位から離れる方向に移動する際のECAP波形のばらつきが増大することによる。
【0043】
等しくない伝達関数に適切に対処するために、本発明者らは、最初に、刺激強度Iと動員線維の数Nとの関係に対する式、すなわち刺激伝達関数を導出する。この関数は、標的組織と刺激電極との間の距離xによって決まる。Nは、刺激強度より低い閾値で線維の数に等しくなり、これらの閾値Tもまた以下のように距離によって変化する。
【数3】
【0044】
xによるTの変化は、単純な分析モデルによって近似することができる。距離xにある点電流源に露出されかつ絞輪間長Lである単一の有髄神経線維を考慮する場合、第qランヴィエ絞輪における電圧は以下の形式であり、
【数4】
式中、
【数5】
であり、第0絞輪が電極に最も近い線維の点であると想定する。
【0045】
所与の刺激によって活性化される線維の特性は、活性化関数として既知の関数によって近似される。これは、線維における各ランヴィエ絞輪に印加されている正味の脱分極電流を表し、閾値挙動を有し、すなわち、任意の絞輪において脱分極が十分である場合、線維は発火する。有髄線維の場合、活性化関数は、線維に沿った電界の第2差によって与えられる。これは、電極に最も近い絞輪において最大値を有し、以下の値を有する。
【数6】
したがって、閾値は、
【数7】
として、距離によって変化することになる。
【0046】
これは、特に扱いやすい式ではない。後索における絞輪間間隔は、概して、脊髄−電極距離より小さく、領域L<xでは、Tの4次以上の微分は極めて小さく、挙動は以下を近似する。
∝x
単極点電源刺激の場合、n∈[1,3]である。電極、周囲の組織および神経の他の構成では、nの値はこの範囲外である場合もある。
【0047】
集合的な挙動にこれを適用すると、所与の刺激によって動員される線維の総数は、線維閾値Tによって決まる。動員成長の線形領域では、NはIによって線形に増大し、そのため、Tは均一に分散されていると想定することができ、動員される数は、
N∝Ix−n−T
として変化し、式中、Tは、x=1における最も感受性の高い線維の閾値に対応する正規化閾値である。
【0048】
この導出から、べき乗n(刺激伝達関数パラメータとも呼ぶ)が、刺激電極と刺激される組織との電気的かつ幾何学的関係によって決まることが分かる。たとえば、治療SCSにおいて一般に見られるような多極刺激電極構成を使用して、近傍界活性化関数は、電界における変動の増大により増大する可能性があり、遠方界は、双極子の打ち消しのためにより迅速に減衰し得る。これらの効果はまた、刺激される神経線維の幾何学的形状により、かつ介在する組織および包囲する組織の電気的特性によっても決まり、たとえば、後索の白質の長手方向の異方性伝導性は、電界形状に影響を与える。本明細書に記載した実施形態における刺激強度Iは刺激電流であるが、代替的な刺激強度パラメータ(電圧、パルス幅等)を同等に使用することができる。
【0049】
この関係は、ECAPモデル結果を用いて検査される。所与の動員値Nに対して、各距離Xに対する対応する刺激電流が計算される。これは、図8において、動員曲線の線形部分内において、最大N=20,000の動員値に対して示す。図8の線は、正確に直線ではなく、それは、より大きい距離で同じ数の線維を動員するためには、不相応に高い電流が必要であることを示し、べき乗則のシフトを示す。nを定数として扱うことにより、曲線の傾きをnに対する推定値として使用することができ、すなわち、対数−対数軸にわたる線形回帰により、低い動員(N=1,000)でn≒1.64となり、より高い動員レベル(N=20,000)ではn≒1.55まで低下する。
【0050】
上記に示したように、刺激伝達関数に対処することが必要なだけでなく、記録伝達関数に対処することも必要である。したがって、本発明者らは、記録伝達関数に対する式、すなわち、動員された線維の数Nと観察されたN−PECAP振幅Vとの関係を導出するが、ECAP強度の他の基準を同等に使用することができる。記録された信号Vは、神経動員により距離に応じて変化する。活動電位は、ランヴィエ絞輪の間を有効に伝播する脱分極の領域からもたらされ、これはまた、脱分極の前方および後方の両方で膜電流をもたらし、二重の双極子または三極子電源に見合った電界を有効に生成する。有髄線維に沿った活動電位の伝播は、有意義な分析処理には複雑過ぎ、代わりに、点記録電極を用いる有髄神経線維の集合体のシミュレーションを行うことができ、それに対して、距離xにおける単一の線維の単一線維活動電位(SFAP)振幅Sが、法則
∝x−m
に従うということが分かり、式中、m=1は線維に近く、m=3は遠方界にある。前者は、x<<Lである場合に予期され、最も近い絞輪の活動電位が記録を支配し、後者は、伝わる活動電位のおよそ三極の性質からもたらされる。
【0051】
ECAP電圧Vは、多くの単一線維活動電位(SFAP)の総和からもたらされ、したがって、動員された線維の空間的かつ直径の分布によって決まる。直径の異なる線維は、異なるSFAP振幅を有するが、本発明の本実施形態は、それらの比が成長曲線の線形部分にわたって完全に一定であることに留意する。本発明の本実施形態は、動員される線維の空間的分布がxより小さく変化するとさらに想定し、それにより、
V∝Nx−m (2)
としてECAP振幅を近似することができ、式中、mは記録伝達関数パラメータである。
【0052】
実際には、記録電極は、点ではなく、神経および/または神経−電極距離と比較して著しい寸法の物理的構造体である。差分記録が使用されることが多く、そこでは、ECAPは、標的組織に近接する2つの電極の間の電位の差として測定される。ECAPはまた、ばらつき、線維終末等により開始点から離れて伝播するに従い波形が変化する。周囲の電気的環境もまた、記録伝達に影響を与える。神経線維の膜特性もまた、脱分極挙動に、したがって、誘導外部電流に影響を与える。これらの要因および他の要因が、mに対してさらなる影響をもたらす。
【0053】
これらの導出から、nが、駆動電極および戻り電極の構成を含む刺激電極構成、電極の寸法および配置、周囲の組織の伝導特性ならびに神経組織の幾何学的形状を含む要因によって決まることが分かる。一方、mは、記録電極(および使用される場合は参照電極)、個々の神経線維の膜特性および幾何学的形状、刺激される全神経集団ならびに周囲の組織を含む要因によって決まる。したがって、mおよびnは、異なる値をとり、現脊髄−電極距離によってさらに変化する可能性があると予期される。
【0054】
ECAPモデルにおける記録伝達関数は、一定の動員での電圧距離曲線を用いて検査される。図9は、ECAPモデル結果から計算された電圧−距離曲線を示す。各線は、対数−対数軸において、1000の段階でN=1000(最下部曲線)からN=20,000(最上部曲線)までの範囲である固定動員に対する、ECAP振幅と距離との関係を示す。各線の傾きは、値−mの推定値である。これらの曲線は、動員の開始(小さいN)において約0.75のmに対する値を示し、mは、線形領域にわたり約0.6〜0.65まで低下する。理論によって限定されるように意図することなく、低減するmの値は、動員された線維の直径の範囲が広がることに対応し、それにより、有髄線維の直径依存伝導速度により、活動電位斉射の分散がもたらされ、これにより、膜電流を介してECAPに寄与している神経幹の領域が長くなる。そして、各線維によって放射される三相電界は幾分か相殺し、電界は距離によってより迅速に減衰することになる。
【0055】
刺激伝達関数パラメータnおよび記録伝達関数パラメータmは、電極の幾何学的形状および構成に関連し、治療中に著しく変化するように予期されないため、求めることができる。距離xは既知ではないが、刺激伝達関数および記録伝達関数を組み合わせて、xの変化を補償し、一定の動員を確保することができる。各刺激に対し、刺激電流Iを知ることができ、ECAP電圧Vを測定することができる。式(2)を式(1)に代入すると、
【数8】
が得られ、式中、Aは式2の比例定数である。
【0056】
フィードバック制御に望まれるように定数Nを維持するために、Im/nVは一定でなければならないということになる。動員制御の目的で、これは、
y=IV (4)
として最も容易に表され、式中、k=m/nであり、k>0である。
【0057】
したがって、本発明のこの実施形態は、mおよびnから導出されて、刺激伝達関数および記録伝達関数の両方を反映し、重要なことには、上記で考察したように、これらの伝達関数は同じではないことを反映する単一パラメータkにおいて、伝達関数挙動を取り込み、両方の一意の伝達関数を補償するように構成される。
【0058】
そして、IとVとの関係を維持するように、(さらに後に考察する図17に示すような)任意の好適なフィードバックアルゴリズムを用いて、刺激電流Iを調整することができ、yの所望の値は選択された設定値にされる。yの値が高いほど、動員が高くなる。
【0059】
このフィードバック方法の性能は、さまざまな距離に対して設定値−動員曲線を測定することによって検査される。この比較のために、mおよびnは、それぞれ0.6および1.6であると推定され、k=0.37の値を示した。図10に、IV値と動員との関係を示す。
【0060】
図に示す設定値は、範囲の中間において、3.2mmの脊髄−電極距離でN=5,000の線維動員に対して選択される。1.7mmから5.2mmの範囲の脊髄位置の全範囲にわたり、動員は狭い範囲内にとどまり、本発明のこの実施形態の利益を論証し、nおよびmが一定であるという想定が十分に機能することを示す。図11aは、本実施形態1106と比較した、以前の定電流手法1102、以前の定ECAP電圧1104の性能を示す。図11aの全体図に、定電流刺激1102の極めて不十分な性能が見え、図11bの詳細図は、定振幅制御1104と比較した本実施形態のI−V制御1106の性能の向上を示す。定振幅制御1104により、設定値からの変動が−30/+50%より大きくなるが、I−V制御1106は一定の動員を±5%よりよく維持する。
【0061】
さらに、図12に示すように、I−V制御1206は、所望の動員値の範囲にわたって一貫して良好に機能する。各所望の動員に対し、この場合もまた3.2mmの脊髄距離を用いて、各アルゴリズムに対して好適な設定値が求められた。動員は、その設定値を用いて各脊髄位置に対して計算され、平均からのRMS偏差が記録された。I−V制御1206により、広範囲の設定値にわたる動員の変動が、以前の定ECAP手法1204(通常、>25%)と比較して、小さくなる(典型的には、<5%)。
【0062】
本実施形態のI−V制御方法は、kに対する好適な値が選択されることが必要である。kを0〜1で変化させて、感度分析が行われた。各値に対し、図12に示すタイプのRMS偏差測定が行われた。kの各値に対する誤差全体が、図13に示す考慮されるすべての動員レベルに対してRMS偏差を平均することによって推定された。k=0では、フィードバック式から電流項(I)が除去され、I−V制御が、25%を超える比較的不十分な平均偏差(RMS)での定振幅制御と等価となる。図13は、I−V制御が、0〜0.8の任意のkの値に対して定振幅制御より優れていることを示す。
【0063】
こうしたシミュレーションでは、所与の性能を達成するために好適なkの範囲は、図13から読み取ることができ、たとえば、20%未満の平均偏差を達成するために、kは0.1〜0.7に設定されるべきであり、15%未満の平均偏差ではkは0.16〜0.61となり、10%未満の平均偏差ではkは0.22〜0.53となり、5%未満の平均偏差ではkは0.3〜0.43となり、最小平均偏差ではkは約0.37となる。しかしながら、実際には、後にさらに考察するように、図13のプロットは利用可能ではなく、インプラントを受容者に適合させるために、kを求めるために、間接的な措置が必要である。
【0064】
式(2)の記録伝達関数は、使用時の記録電極によって決まる。幾何学的因子は電極間で異なる可能性があり、活動電位斉射の分散は、刺激部位から離れる方向に移動するに従い増大する。分散が増大することによりmが低減し、そのため、kの正確な値は、刺激からの距離が増大すると低くなると予期することができる。これを図14に示す。刺激に最も近い電極4で記録している場合、最適なkは約0.45であるが、0〜1の任意の値が定振幅フィードバックより優れている。電極8の場合、最適値は約0.27であり、0〜0.55の値が定振幅より優れている。
【0065】
図5図14の結果は、第2カソードの影響およびその結果としての複雑化を考慮することなく原理を明確に論証するために、単相刺激を用いて準備された。しかしながら、記載する技法は、図15および図16に示すように、二相刺激が使用される場合にも等しく適用可能である。特に、図15は、二相刺激による異なる電極における、動員制御の本技法の性能に対するkの異なる値の影響を示す。二相刺激の場合に取得される最良の結果は、単相の場合の最良の結果と同様であるが、kに対する最適値は幾分か低い。二相の場合のI−V制御は、0〜0.65のkの値に対して定振幅制御より優れている。図16は、二相刺激の場合のI制御、V制御およびI−V制御の性能を示す。I−V制御に対して、0.35のk値が使用された。電圧モード(V)制御により、検査された距離の範囲にわたって−30/+50%より大きい変動がもたらされ、I−V制御により、動員は初期設定値の+10/−0%未満で維持される。
【0066】
したがって、I−V制御方法は、患者の脊椎の幾何学的形状とともに刺激および記録構成によって決まる単一のパラメータkが必要である。本発明のいくつかの実施形態では、事前計算された表またはアルマナックからkを求めることができ、そこでは、刺激パラメータおよび記録パラメータのうちの1つまたは複数に基づいて、固定値が選択される。たとえば、刺激電極と記録電極との間の距離、刺激パルス幅、および測定参照電極の位置を用いて、kの最適な値を求めることができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、動員データを用いて、kを臨床的に求めることができる。動員データを基準点として用いて、刺激強度を調整し、異なる姿勢で同じレベルの神経動員を達成することができる。好適なデータとしては、患者の知覚閾値、不快閾値、ある部位または身体部分の適用範囲、または最適な快適さ等、患者の刺激の知覚の任意の定性的特徴を挙げることができる。筋反応/痙攣の発現または神経活動の何らかの基準等、電気生理学的基準も使用することができる。こうした基準は、脊椎、末梢神経、脳または体内の他の場所に現れる可能性がある、刺激によって誘発される反応の振幅、潜時または他の特徴を使用することができる。
【0068】
この実施形態では、患者は、一続きの姿勢をとるように指示され、各々、異なるが未知の脊髄−電極距離xを達成する。各姿勢において、動員データが達成されるまで、刺激強度が調整される。各姿勢iに対して、結果としての電流IおよびECAP基準Vが記録される。動員データの使用は、Nがこれらの測定値にわたって一定であることを意味するため、これは
∝x
∝x−m
であることを意味する。したがって、kを推定する1つの単純な方法は、対数Vに対して対数Iをプロットし、これらのデータ点に線を当てはめることであり、それにより、この線は、−n/m=−kの傾きを有する。こうした式に対する解を近似する他の方法も使用することができる。
【0069】
この作業に対して、神経線維の一定の部分集団を動員する他の方法もまた使用することができる。たとえば、経皮的末梢神経電気刺激(TENS)を用いる末梢神経刺激は、患者の姿勢が変化する際でも末梢神経の一定の動員を提供することができ、これらの末梢神経の幾分かの一部が記録電極の付近で脊椎内に延在する場合、各姿勢iにおいて誘発される信号Vを記録することができる。各姿勢においてVを記録した後、末梢刺激は取り除かれ、治療刺激が導入され、その強度は、Vに等しい振幅の誘発反応を再現するように調整され、この強度Iが記録される。この手順により、一定の動員の一組の(I,V)対が生成され、これを、他の動員基準データと同様にkに対して当てはめることができる。
【0070】
しかしながら、代替実施形態は、患者の知覚に関係なく、ECAP記録からkを直接求めようとすることができる。動員、距離およびECAP振幅の間の記録伝達関数は、特に、動員された線維集団の分散特徴によって決まるため複雑である。振幅測定値のみでは、動員の変化から分散の変化を常に識別することができるとは限らない。しかしながら、ここでは、非常に狭い範囲の直径を有する線維集団に対して好適な当てはめ技法が提示される。これは、脊柱の場合は当てはまらないが、以下の技法は、単一の記録電極を使用する場合、体内の他の場所で有用であり得る。場合により、特に、線維集団が非常に同質である場合、成長曲線の閾値および傾き測定値からkを求めることができる。
【0071】
典型的な成長曲線では、測定された変数が刺激強度により線形に成長する線形領域がある。治療SCSは、線形領域で動作する。図5に示す成長曲線は、こうした線形領域を示し、たとえば、1.7mmの脊髄−電極距離では、この領域は1.5mA〜3mAに広がり、5.2mmでは、これは、約9mA〜18mAに広がる。こうした線形領域は、それに線を当てはめることにより特徴付けることができ、それは、その線の傾きMおよびx切片(閾値)Tによって記述される。この線形領域におけるECAP測定値Vは、以下のように刺激強度Iの関数としてモデル化することができる。
V=M(I−T)
【0072】
そして、刺激のべき乗則モデルおよび記録伝達関数を考慮すると、
T∝x
M∝x−(m+n)
であることが明らかである。
【0073】
したがって、kを推定する方法は、患者をある範囲の姿勢iに配置し、各姿勢において、刺激強度をスイープし成長曲線を記録するというものである。各成長曲線から、線が当てはめられて閾値Tおよび成長傾きMが求められる。対数Tに対して対数Tの値をプロットすることができ、それにより、これらの点に当てはめられた線は傾き−m/n=−kを有する。別法として、これらの式に対する解を見つける他の方法を使用することができる。
【0074】
図17は、本実施形態によるI−V制御を用いて一定の動員を維持するフィードバックループを示す。入来するECAP(V)の測定値に、それらを発生させるために使用された刺激電流(I)の累乗したもの(I)が掛け合わされる。設定値に対して誤差信号が生成され、次の刺激強度を決定するコントローラGに提供される。したがって、I−V制御を、図示する方法でフィードバックループとして実施することができる。設定値は、患者の所望の刺激レベルによって求められる単位なしの値である。誤差信号に基づいて刺激電流を制御するために、離散時間コントローラG(z)が使用され、これは、単純なゲインシステム、またはPIDコントローラ等、より複雑なシステムの形態をとることができる。
【0075】
この特定の方式には、より優れた制御精度を提供することに加えてループ反応速度を向上させる可能性がある。定振幅フィードバックでは、(刺激からECAP振幅への)患者の伝達関数は、姿勢によって変化し、これが、ループを安定して維持しながら適用することができる最大コントローラゲインを制限し、そうする際に、あり得る帯域幅を制限する。G(z)への入力においてECAP振幅をスケーリングすることによりI−V制御が実施される場合、ループが正確に追跡しているとき、スケーリングは患者の変化する伝達関数を補償する。これは、安定性を損なうことなくG(z)のゲインを最大限にし、ループが反応することができる速度を上昇させることができることを意味する。
【0076】
当業者であれば、具体的な実施形態に示したような本発明に対して、後半に記載した本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、多くの変形および/または変更を行うことができることが理解されよう。したがって、本実施形態は、すべての点で限定または制限するものではなく例示するものとしてみなされるべきである。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15
図16
図17