(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の面に突設され、内部に空洞がある複数の補強リブを有するフラットデッキと、前記フラットデッキの前記一方の面に突き合わされる区画材と、前記補強リブ内部に充填され、難燃剤を含有するウレタンフォームとを備え、前記難燃剤が赤リンを含む、区画構造。
前記難燃剤が、さらにリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤及び金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の区画構造。
前記区画材が、石膏ボード、押出成形セメント板、軽量気泡コンクリート、プレキャストコンクリート板、又はガラス繊維強化コンクリート板のいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の区画構造。
前記区画材の端面に複数の切り欠きが設けられ、前記切り欠きそれぞれの内部に各補強リブが配置されるように、前記区画材の端面が、前記フラットデッキの一方の面に突き合わされる請求項1〜4のいずれか1項に記載の区画構造。
一方の面に突設され、内部に空洞がある複数の補強リブを有し、かつ前記補強リブの内部に難燃剤を含有するウレタンフォームが充填されたフラットデッキを、建築構造物に敷設する工程と、
前記フラットデッキの前記補強リブが設けられた前記一方の面に区画材を突き合せる工程と
を備え、前記難燃剤が赤リンを含む、区画構造の施工方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1、2は、本発明の一実施形態に係る区画構造10を示す。以下、図面を参照しつつ、区画構造について詳細に説明する。
図1、2に示すように、区画構造10は、フラットデッキ11と、区画材20と、ウレタンフォーム30を備える。
【0010】
フラットデッキ11は、上面11Uが平坦面、又は平坦面に微小な凹凸が形成されたフラット部を有し、フラット部の下面11Dに、複数の補強リブ12が突設されている。各補強リブ12は、内部に空洞がある突条であり、長手方向に沿って延在して配置され、長手方向における両端部12A,12Bは圧潰されて閉塞される場合もある。なお、フラットデッキ11は、例えば、鋼板などの金属板やその他の材料をロール成形やプレス成形などすることで得ることができる。フラットデッキ11の補強リブ12の断面形状は、
図2においては、三角形であるが特に限定されず、内部に空洞が形成される限り、四角形などの他の形状でもよい。
【0011】
フラットデッキ11は、建築構造物などに敷設され、床構造、屋根構造などを形成するために使用される。フラットデッキ11は、例えば、長手方向における両端部それぞれが梁などの支持材14、14に載せられて、支持材14、14間に架設されることで、床構造、屋根構造などを構成する。フラットデッキ11は、例えば、型枠材などとして使用され、型枠材として使用される場合には、上面11U上にコンクリート(図示しない)が打設される。
【0012】
区画材20は、区画を形成するための部材であり、本実施形態では、石膏ボード21、21よりなる。また、建築構造物には壁25が設けられ、石膏ボード21、21は、壁25を構成する。壁25には、建築構造物に据え付けられた支持枠体26が設けられる。支持枠体26は、例えば、水平方向に延在する横桟と、鉛直方向に延在する縦桟よりなる枠状部材であり、その支持枠体26の両面に石膏ボード21、21がビスなどにより固定される。
【0013】
石膏ボード21は、
図2に示すように、上端面21Uに複数の切り欠き22が設けられており、切り欠き22それぞれの内部に各補強リブ12が配置されるように、上端面21Uが、フラットデッキ11の一方の面を構成する下面11Dに突き合わされる。
【0014】
フラットデッキ11の補強リブ12内部の空洞には、難燃剤を含有するウレタンフォーム30が充填される。ウレタンフォーム30は、難燃剤を含有することで不燃性を付与することができる。より具体的には、ウレタンフォーム30は、ISO−5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m
2にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m
2以下となるものが好ましく使用される。
ウレタンフォーム30は、例えば、補強リブ12の側面などに設けられた注入口13より後述する液状のウレタン樹脂組成物を注入して、補強リブ12の内部で硬化かつ発泡させて形成させるとよい。
【0015】
また、フラットデッキ11の補強リブ12と切り欠き22の間には、隙間23が設けられ、その隙間23は隙間埋め材27によって閉塞される。隙間埋め材27としては、ロックウール、グラスウールなど公知の隙間埋め材を使用できる。
【0016】
以下、本実施形態に係る区画構造の施工方法を説明する。まず、本実施形態においては、内部にウレタンフォーム30が充填されたフラットデッキ11を用意する。具体的には、例えば公知の方法でフラットデッキ11を作製し、そのフラットデッキ11の補強リブ12に注入口13を形成し、その注入口13より液状のウレタン樹脂組成物を補強リブ12の内部の空洞に注入し、ウレタン樹脂組成物を内部で発泡及び硬化させるとよい。
【0017】
補強リブ12の内部にウレタンフォーム30が充填されたフラットデッキ11は、建築構造物に敷設する。例えば、フラットデッキ11は、
図1に示すように、梁などの支持材14、14の間に架け渡して敷設するとよい。
【0018】
その後、区画材20を、フラットデッキ11の一方の面に突き合わせるように配置させる。具体的には、石膏ボード21、21を、その上端面21U、21Uがフラットデッキ11の下面11Dに突き合わされるように配置する。そして、その状態で、建築構造物の内部に据え付けられた支持枠体26に石膏ボード21、21をビスなどにより取り付けるとよい。この場合、石膏ボード21は、石膏ボード21に設けられた切り欠き22の内部に補強リブ12が挿入されるように配置される。その後、石膏ボード21、21(区画材20)と補強リブ12の間にある隙間23に隙間埋め材27を充填させ、
図1に示すような区画構造10が得られる。
【0019】
以上のように、本実施形態においては、補強リブ12内部の空洞に難燃剤を含有するウレタンフォーム30が充填されることで、補強リブ12の内部に形成された空洞により、区画に隙間ができることが防止され、良好な防火性、遮音性、断熱性などを有する区画を形成できる。また、ウレタンフォーム30は、補強リブ12の内部の空洞に予め充填させておくと、建築現場において、ウレタン樹脂組成物を注入するなどの作業を行う必要がないので施工性が良好となる。
また、上記のように、隙間に埋められたウレタンフォーム30を不燃性とすることで、防火性、断熱性などがより良好となる。さらに、補強リブ12と、区画材20との間にできる隙間23も、隙間埋め材27によって埋めることで防火性能を向上させることができる。
【0020】
さらに、補強リブ12は、内部に狭い隙間が設けられることが多いが、液状のウレタン樹脂組成物を補強リブ12の内部に注入してウレタンフォーム30を形成することで、ウレタンフォーム30は、補強リブ12内部の狭い隙間に対しても追従することが可能になる。また、ウレタンフォーム30は、自己接着性を有し、補強リブ12の内面に接着することで、隙間充填性が良好となる。
加えて、ウレタンフォーム30は、耐湿性が良好であるので、多湿下でも収縮などせずに、防火性能が優れたものとなる。また、ウレタンフォーム30は、発泡及び硬化が、例えば、ウレタン樹脂組成物作製後5分以内などの短時間で完了するので、フラットデッキ11の内部に短時間で形成することができる。
【0021】
なお、区画構造10は、上記の構造に限定されず、様々な変更が可能である。例えば、区画材20と、補強リブ12の間に形成される隙間23は、隙間埋め材27によって閉塞させなくてもよい。隙間埋め材27によって閉塞されなくても、区画材20の切り欠き22を、補強リブ12の形状にできる限り一致させ隙間23の大きさを小さくすることで、区画材20と、補強リブ12の間に形成される隙間23によって防火や断熱、遮音性能が低下するのを抑えることができる。
【0022】
また、区画材20は、石膏ボード21に限定されず、様々なものを使用可能であり、押出成形セメント板、軽量気泡コンクリート(ALC)板、プレキャストコンクリート(PC)板、ガラス繊維強化コンクリート(GRC)板等などの他の面材であってもよい。また、区画材の種類に応じて、支持枠体26は適宜省略してもよいし、他の支持体を代わりに使用してもよい。
【0023】
さらに、区画材20は、フラットデッキ11に突き合せる端面(
図2における上端面21U)に切り欠きが設けられなくてもよい。そのような場合、区画材20の端面は、補強リブ12(
図2では、リブ12の下面12D)に突き合わされてフラット部に突き合わせることができず、区画材21とフラットデッキ11の間の隙間が大きくなるが、そのような場合でも隙間埋め材27で隙間を閉塞することで、一定の防火、断熱、遮音性能を確保できる。また、フラットデッキ12の上面に補強リブ13が設けられ、下面が平坦となり、区画材20がフラットデッキ11の上面に突き合わされてもよい。
【0024】
[ウレタンフォーム]
次に、補強リブの空洞内部に充填されるウレタンフォームについてより詳細に説明する。本発明で使用するウレタンフォームは、ウレタン樹脂組成物を硬化させ、発泡させることで形成されるものである。ウレタンフォームに含まれるウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを混合させ反応させることで得られる反応生成物である。ウレタン樹脂組成物は、補強リブ12内部に容易に注入でき、かつ補強リブ12内部において隙間なく充填できるように、各種成分を混合して作製した直後においては常温(23℃)で液状である。
【0025】
ウレタンフォームに使用するポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物は一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
ポリイソシアネート化合物は、使い易いこと、入手し易いこと等の理由から、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。
【0027】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどの水酸基含有化合物と、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる
【0028】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシクロヘキシルメタンジオール等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0029】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
ここで多塩基酸としては、具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等が挙げられる。また多価アルコールとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
またヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0030】
ポリマーポリオールとしては、例えば、上記した芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、メタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、多価アルコールの変性ポリオールまたは、これらの水素添加物等が挙げられる。
多価アルコールの変性ポリオールとしては、例えば、原料の多価アルコールにアルキレンオキサイドを反応させて変性したもの等が挙げられる。
変性ポリオールに使用する多価アルコールとしては、例えば、グリセリン及びトリメチロールプロパン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体等の四〜八価のアルコール、フェノール、フロログルシン、クレゾール、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1−ヒドロキシナフタレン、1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン、アントロール、1,4,5,8−テトラヒドロキシアントラセン、1−ヒドロキシピレン等のフェノールポリブタジエンポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの重合体又は共重合体、及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2〜100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)が挙げられる。
【0031】
前記多価アルコールの変性方法は特に限定されないが、アルキレンオキサイド(以下、AOと略す)を付加させる方法が好適に用いられる。
AOとしては、炭素数2〜6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略す)、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略す)、1,3−プロピレオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも性状や反応性の観点から、PO、EOおよび1,2−ブチレンオキサイドが好ましく、POおよびEOがより好ましい。
AOを二種以上使用する場合(例えば、POおよびEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0032】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも一種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
ポリエーテルポリオールにおいて使用する活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、ブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0033】
ウレタンフォームにおいて使用するポリオールは、燃焼した際の総発熱量の低減効果が大きいことからポリエステルポリオール、またはポリエーテルポリオールを使用することが好ましく、ポリエステルポリオールがより好ましい。その中でも分子量200〜800のポリエステルポリオールを用いることが好ましく、分子量300〜500のポリエステルポリオールを用いることがさらに好ましい。
【0034】
ウレタン樹脂のイソシアネートインデックスは、120〜1000の範囲であることが好ましく、200〜800の範囲であればより好ましく、300〜600の範囲であればさらに好ましい。イソシアネートインデックスが120以上となると、イソシアネート基が水酸基より過剰となり、三量化されやすくなり、不燃性を付与しやすくなる。また、1000以下となると、不燃性と製造コストとのバランスが良好になる。
【0035】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0036】
[難燃剤]
ウレタンフォームに含有される難燃剤は、赤リンを含むことが好ましく、赤リンに加えて、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。ウレタンフォームは、これら難燃剤を含有することで、不燃性を付与しやすくなる。
ウレタンフォームに使用される難燃剤は、不燃性、取り扱い性などの観点から、赤リンとリン酸エステルを含むことがさらに好ましい。また、難燃剤は、赤リンとリン酸エステルと、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種とからなるものも好ましい。
【0037】
(赤リン)
本発明に使用する赤リンに限定はなく、市販品を適宜選択して使用することができる。赤リンは、赤リン単体で配合される必要はなく、適宜、表面処理などがされていてもよい。
ウレタンフォームにおける赤リンの配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、3.0〜18質量部の範囲であることが好ましく、4.0〜12質量部であることがより好ましい。赤リンの配合量を3.0質量部以上とすることで、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、ウレタンフォームに不燃性を付与しやすくなる。また18質量部以下とすることでウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。なお、ウレタン樹脂は、上記したように、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物の反応生成物であり、ウレタン樹脂100質量部とは、ウレタン樹脂組成物におけるポリイソシアネート化合物とポリオール化合物の合計100質量部を意味する。
【0038】
(リン酸エステル)
上記リン酸エステルは特に限定されないが、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用することが好ましい。モノリン酸エステルは、分子中にリン原子を1つ有する化合物である。
モノリン酸エステルとしては、特に限定はないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート等が挙げられる。
【0039】
縮合リン酸エステルとしては、特に限定はないが、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート(大八化学工業社製、商品名PX−200)、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物等の縮合リン酸エステルを挙げられる。
市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(商品名CR−733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名CR−741)、芳香族縮合リン酸エステル(商品名CR747)、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(ADEKA社製、商品名アデカスタブPFR)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名FP−600、FP−700)等を挙げることができる。
【0040】
上記の中でも、硬化前の組成物中の粘度の低下させる効果と初期の発熱量を低減させる効果が高いためモノリン酸エステルを使用することが好ましく、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェートを使用することがより好ましい。リン酸エステルは一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0041】
リン酸エステルの配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5〜52質量部の範囲であることが好ましく、1.5〜20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0〜15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0〜10質量部の範囲であることが最も好ましい。
前記リン酸エステルを1.5質量部以上とすることで、火災時にウレタンフォームから形成される緻密残渣が割れることを防止でき、52質量部以下とすることでウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。また、上記範囲内とすることで不燃性を付与しやすくなる。
【0042】
(リン酸塩含有難燃剤)
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、前記各種リン酸と周期律表IA族〜IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンから選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩を挙げることができる。
リン酸は特に限定はないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等の各種リン酸が挙げられる。
前記周期律表IA族〜IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。前記脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。また前記芳香族アミンとして、ピリジン、トリアジン、メラミン、アンモニウム等が挙げられる。
なお、上記のリン酸塩含有難燃剤は、シランカップリング剤処理、メラミン樹脂で被覆する等の公知の耐水性向上処理を加えてもよい。
【0043】
前記リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。
モノリン酸塩としては特に限定されないが、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ニアンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩等が挙げられる。
【0044】
またポリリン酸塩としては特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
これらの中でも、前記リン酸塩含有難燃剤の自己消火性が向上するため、モノリン酸塩を使用することが好ましく、リン酸二水素アンモニウムを使用することがより好ましい。
リン酸塩含有難燃剤は一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0045】
リン酸塩含有難燃剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5〜52質量部の範囲であることが好ましく、1.5〜20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0〜15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0〜10質量部の範囲であることが最も好ましい。
リン酸塩含有難燃剤の配合量が1.5質量部以上であると、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、耐火性が付与されやすくなる。また、52質量部以下とするとウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
【0046】
(臭素含有難燃剤)
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有する化合物であれば特に限定はないが、例えば、芳香族臭素化化合物等を挙げることができる。
芳香族臭素化化合物の具体例としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー有機臭素化合物が挙げられる。
また、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌールおよび臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(−メチルスチレン)等のハロゲン化された臭素化合物ポリマーが挙げられる。
燃焼初期の発熱量を制御する観点から、臭素化ポリスチレン、ヘキサブロモベンゼン等が好ましく、ヘキサブロモベンゼンがより好ましい。
臭素含有難燃剤は一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0047】
本発明に使用する臭素含有難燃剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5〜52質量部の範囲であることが好ましく、1.5〜20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0〜15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0〜10質量部の範囲であることが最も好ましい。
臭素含有難燃剤の配合量を0.1質量部以上とすると、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、耐火性が付与されやすくなる。また52質量部以下とすると、ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
【0048】
(ホウ素含有難燃剤)
ホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。
酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。
具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛であればより好ましい。
ホウ素含有難燃剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0049】
ホウ素含有難燃剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5〜52質量部の範囲であることが好ましく、1.5〜20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0〜15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0〜10質量部の範囲であることが最も好ましい。
ホウ素含有難燃剤を1.5質量部以上とすると、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、耐火性が付与されやすくなる。また52質量部以下とするとウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
【0050】
(アンチモン含有難燃剤)
また本発明に使用するアンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。
酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、酸化アンチモンであることが好ましい。
アンチモン含有難燃剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0051】
アンチモン含有難燃剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5〜52質量部の範囲であることが好ましく、1.5〜20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0〜15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0〜10質量部の範囲であることが最も好ましい。アンチモン含有難燃剤の配合量を1.5質量部以上とすると、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、耐火性が付与されやすくなる。また52質量部以下とするとウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
【0052】
(金属水酸化物)
金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することもできる。
【0053】
金属水酸化物の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5〜52質量部の範囲であることが好ましく、1.5〜20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0〜15質量部の範囲であることが更に好ましく、2.0〜10質量部の範囲であることが最も好ましい。金属水酸化物の配合量を1.5質量部以上とすると、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、耐火性が付与されやすくなる。また52質量部以下とするとウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
【0054】
上記難燃剤の好ましい組み合わせとしては、例えば、下記の(a)〜(n)のいずれか等が挙げられ、これらの中では赤リンとリン酸エステルとを少なくとも含む組み合わせが好ましい。
(a)赤リンおよびリン酸エステル
(b)赤リンおよびリン酸塩含有難燃剤
(c)赤リンおよび臭素含有難燃剤
(d)赤リンおよびホウ素含有難燃剤
(e)赤リンおよびアンチモン含有難燃剤
(f)赤リンおよび金属水酸化物
(g)赤リン、リン酸エステルおよびリン酸塩含有難燃剤
(h)赤リン、リン酸エステルおよび臭素含有難燃剤
(i)赤リン、リン酸エステルおよびホウ素含有難燃剤
(j)赤リン、リン酸塩含有難燃剤および臭素含有難燃剤
(k)赤リン、リン酸塩含有難燃剤およびホウ素含有難燃剤
(l)赤リン、臭素含有難燃剤およびホウ素含有難燃剤
(m)赤リン、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤および臭素含有難燃剤
(n)赤リン、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤およびホウ素含有難燃剤
【0055】
難燃剤の合計配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、4.5〜70質量部の範囲であることが好ましく、4.5〜40質量部の範囲であることがより好ましく、4.5〜30質量部の範囲であることが更に好ましく、4.5〜20質量部の範囲であることが最も好ましい。
前記難燃剤の配合量を4.5質量部以上とすると、ウレタンフォームに不燃性を付与しやすくなる。また、火災時に、ウレタンフォームから形成される緻密残渣が割れることを防止できる。70質量部以下とすると、ウレタン樹脂組成物の発泡が難燃剤により阻害されない。
【0056】
本発明のウレタンフォームは、上記したとおり、ウレタン樹脂組成物を硬化し発泡して形成される。ウレタン樹脂組成物は、上記したポリオール化合物とイソシアネート化合物と難燃剤を含み、かつ一般的にはさらに、触媒、発泡剤、及び整泡剤を含む。
【0057】
(触媒)
ウレタン樹脂組成物は、触媒として、例えば樹脂化触媒、三量化触媒、又はこの両方を含有するとよいが、両方を含有することが好ましい。樹脂化触媒は、ポリオール化合物とポリイソシアネートとの反応を促進させる触媒である。
【0058】
樹脂化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチル,N´−ジメチルアミノエチルピペラジン、イミダゾール環中の第2級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物等の窒素原子含有触媒等が挙げられる。
樹脂化触媒の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.02〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.04〜3質量部の範囲であることがより好ましく、0.04〜2質量部の範囲であることが更に好ましく、0.06〜1質量部の範囲であることが最も好ましい。
0.02質量部以上とすることで、ウレタン結合の形成が促進され、硬化性が良好となる。また、5質量部以下とすることで適切な発泡速度を維持することができ取扱いやすい。
【0059】
三量化触媒は、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒を使用することで、不燃性を向上させやすくなる。
三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の窒素含有芳香族化合物、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができる。
【0060】
三量化触媒の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.6〜10質量部の範囲であることが好ましく、0.6〜8質量部の範囲であることがより好ましく、0.6〜6質量部の範囲であることが更に好ましく、0.6〜3.0質量部の範囲であることが最も好ましい。
0.6質量部以上とすると、イソシアネートの三量化が阻害される不具合が生じず、10質量部以下とすると、適切な発泡速度を維持することができ、取扱いやすい。
【0061】
(発泡剤)
ウレタン樹脂組成物に含有される発泡剤は、ウレタン樹脂の発泡を促進する。発泡剤の具体例としては、例えば、水、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン等のフッ素化合物、CHF
3、CH
2F
2、CH
3F等のハイドロフルオロカーボン、ジクロロモノフルオロエタン、(例えば、HCFC141b(1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン)、HCFC22(クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン))、HFC−245fa(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン)、HFC−365mfc(1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン)等のハイドロクロロフルオロカーボン化合物、ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物、あるいはこれらの化合物の混合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
【0062】
ウレタン樹脂組成物に使用する発泡剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲であることが好ましい。また、発泡剤は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1〜18質量部の範囲であることがより好ましく、0.5〜18質量部の範囲であることが更に好ましく、1〜10質量部の範囲であることが最も好ましい。
発泡剤の含有量を0.1質量部以上とすると、発泡が促進され、得られるウレタンフォームの密度を低減することができる。30質量部以下とすると、発泡体が破泡せず、発泡体が形成されないことを防ぐことができる。
【0063】
(整泡剤)
ウレタン樹脂組成物に含有される整泡剤は、ウレタン樹脂組成物の発泡性を向上させる。
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。
ウレタン樹脂に対する整泡剤の配合量は、例えば、前記ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲であれば好ましい。
樹脂化触媒、三量化触媒、発泡剤及び整泡剤はそれぞれ一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0064】
ウレタン樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有してもよい。無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
無機充填材は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0065】
さらにウレタン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0066】
ウレタンフォームの密度は、特に限定されないが、0.030〜0.130g/cm
3の範囲であることが好ましい。密度を0.130g/cm
3以下とすることで、ウレタンフォームが軽量となり、内部にウレタンフォームが充填されたフラットデッキを敷設しやすくなる。また、0.030g/cm
3以上とすることで、所望の不燃性を発現しやすくなる。これら観点から、ウレタンフォームの密度は、0.040〜0.100g/cm
3の範囲であることがより好ましく、0.040〜0.080g/cm
3の範囲であることがさらに好ましく、0.050〜0.060g/cm
3の範囲であることが最も好ましい。
【0067】
ウレタン樹脂組成物は反応して硬化するため、ウレタンフォーム成形前においては、2液に分割しておくとよい。具体的には、ポリオール化合物を含むポリオール液剤と、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート液剤に分割しておくとよい。この際、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物以外の成分は、適宜、ポリオール液剤又はイソシアネート液剤に配合しておくとよいが、好ましくはポリオール液剤に配合する。ポリオール化合物は、反応性が低く、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物以外の成分と混合させても、副反応が生じにくいためである。
【0068】
ウレタン樹脂組成物は、補強リブ内部に注入して、補強リブ内部で硬化かつ発泡させることで、ウレタンフォームにすることができる。補強リブ内部にウレタン樹脂組成物を注入する方法は、特に限定されないが、ポリオール液剤とイソシアネート液剤とを、補強リブ内部に注入する前に混合して混合物を得て、その混合物を補強リブ内部に注入してもよいし、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を、補強リブの内部に別々で注入して、補強リブ内部で混合してもよい。
具体的には、特に限定されないが、イソシアネート液剤と、ポリオール液剤とを2つの容器に別々に収容して、それらをコーキングガンなどにて混合して、その混合物をコーキングガンから吐出させ補強リブ内部に注入するとよい。
ウレタン樹脂組成物は、各成分を混合すると反応が開始し、時間の経過と共に粘度が上昇し、硬化及び発泡が進行し、流動性を失い、ポリウレタンフォームとなる。ウレタン樹脂組成物は、通常、常温付近(例えば、10〜40℃程度)に放置することで硬化及び発泡をさせるとよいが、必要に応じて、加熱等してもよい。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
[耐火性]
ウレタンフォームの耐火性は、以下の方法により評価した。ウレタンフォームを縦10cm、横10cmおよび厚み5cmに切断して、コーンカロリーメーター試験用サンプルを準備した。コーンカロリーメーター試験用サンプル用いて、ISO−5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/m
2にて20分間加熱したときのコーンカロリーメーター試験による20分経過後の総発熱量を測定して耐火性を評価した。
[硬化性]
ウレタン樹脂組成物からウレタンフォームを形成するときの硬化性を以下の評価基準により評価した。
A:ウレタン樹脂組成物を作製してから5分以内に、硬化及び発泡が十分に進行し、ウレタンフォームを形成できた。
B:ウレタン樹脂組成物を作製してから5分経過しても、硬化及び発泡が十分に進行せずに、ウレタンフォームが形成できなかった。
【0071】
実施例、比較例で使用した成分は、以下のとおりであった。
ポリオール化合物:p−フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRFK−505、水酸基価=250mgKOH/g)
難燃剤1:赤リン(燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140)
難燃剤2:トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
樹脂化触媒:N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(東ソー社製、製品名:TOYOCAT−DT)
三量化触媒1:2−エチルヘキサン酸カリウム(東京化成工業社製、製品コード:P0048)
三量化触媒2:3量化触媒(東ソー社製、製品名:TOYOCAT−TR20)
発泡剤1:水
発泡剤2(HFC):HFC−365mfc(1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、セントラル硝子社製)とHFC−245fa(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、日本ソルベイ社製)の混合物、混合比率:HFC−365mfc/HFC−245fa=7/3(質量比)
整泡剤:ポリオキシアルキレン系整泡剤(東レダウコーニング社製、製品名:SH−193)
ポリイソシアネート化合物:MDI(日本ウレタン工業社製、製品名:ミリオネートMR−200)
【0072】
[実施例1]
表1の配合に従い、ポリオール化合物に樹脂化触媒、三量化触媒、発泡剤、および整泡剤を加えて攪拌して混合物を得た。その混合物と難燃剤を1000mLポリプロピレンビーカーにはかりとり、25℃、1分間手混ぜで撹拌してポリオール液剤を得た。そのポリオール液剤に、ポリイソシアネート化合物からなるイソシアネート液剤を加え、ハンドミキサーで約10秒間攪拌してウレタン樹脂組成物を得た。得られたウレタン樹脂組成物は、時間の経過と共に流動性を失い、ウレタンフォームとなった。得られたウレタンフォームについて耐火性、硬化性を評価した。
【0073】
[比較例1]
難燃剤を配合しない以外は、実施例1と同様にしてウレタンフォームを作製して、耐火性、硬化性を評価した。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1の結果から明らかなように、難燃剤を含有するウレタンフォームは、難燃剤を含有しない比較例に比べて総発熱量が低く、不燃性を有していた。したがって、実施例1のウレタンフォームを補強リブ内部に充填すると、防火性、断熱性、遮音性が良好な区画構造とすることができる。また、実施例1のウレタンフォームは、硬化性が良好であるので、補強リブ内部にウレタン樹脂組成物を注入した後、短時間で作製できる。