【文献】
Chemistry and Biology,2013年02月21日,vol. 20,pp. 161-167
【文献】
Angew. Chem. Int. Ed.,2010年,Vol.49,pp.9995-9997
【文献】
JEGER, S.,Site-specific conjugation of tumour-targeting antibodies using transglutaminase,Doctoral Thesis,2009年,pp.51-85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式:抗体−T−A[式中、Tは、特異的部位で操作されたアシルドナーグルタミン含有タグであり、Aはアミンドナー物質である]を含む、操作されたポリペプチドコンジュゲートであって、アミンドナー物質は、抗体のカルボキシル末端、アミノ末端、または別の部位でアシルドナーグルタミン含有タグに部位特異的にコンジュゲートしており、操作されたポリペプチドコンジュゲートは、295位におけるグルタミンからアスパラギンへのアミノ酸置換(Q295N、EUナンバリングスキーム)を含み、アシルドナーグルタミン含有タグはLLQGPA(配列番号4)のアミノ酸配列を含む、操作されたポリペプチドコンジュゲートであって、
アシルドナーグルタミン含有タグが、ポリペプチド内で反応性Lysに空間的に隣接しておらず;
同一の位置の野生型ポリペプチドと比較して、カルボキシル末端の最後のアミノ酸位置にアミノ酸修飾を含み、その修飾がアミノ酸の欠失であり;
完全長の抗体重鎖および抗体軽鎖を含み;かつ
アシルドナーグルタミン含有タグが、重鎖、軽鎖、または重鎖および軽鎖の両方のカルボキシル末端に位置している、
操作されたポリペプチドコンジュゲート。
抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ダイアボディまたは抗体断片である、請求項1に記載の操作されたポリペプチドコンジュゲート。
アミンドナー単位−リンカー(X−Y)が、Ac−Lys−Gly、アミノカプロン酸、Ac−Lys−β−Ala、アミノ−PEG2−C2、アミノ−PEG3−C2、アミノ−PEG6−C2、Ac−Lys−Val−Cit−PABC、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC、[(3S,5S)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC、プトレシン、2−アミノエトキシ−PEG6、およびAc−Lys−プトレシンからなる群から選択される、請求項4に記載の操作されたポリペプチドコンジュゲート。
細胞傷害物質が、アントラサイクリン、オーリスタチン、カンプトセシン、コンブレタスタチン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン、インドリノ−ベンゾジアゼピン二量体、マイタンシン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、タキサン、ビンカアルカロイド、ツブリシン、ヘミアステリン、スプリセオスタチン、プラジエノライド、およびそれらの立体異性体、アイソスター、類似体もしくは誘導体からなる群から選択される、請求項6に記載の操作されたポリペプチドコンジュゲート。
細胞傷害物質が、MMAD(モノメチルオーリスタチンD)または0101(2−メチルアラニル−N−[(3R,4S,5S)−3−メトキシ−1−{(2S)−2−[(1R,2R)−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−3−{[(1S)−2−フェニル−1−(1,3−チアゾール−2−イル)エチル]アミノ}プロピル]ピロリジン−1−イル}−5−メチル−1−オキソヘプタン−4−イル]−N−メチル−L−バリンアミド)である、請求項6に記載の操作されたポリペプチドコンジュゲート。
アミンドナー物質が、Alexa 488カダベリン、5−FITCカダベリン、Alexa 647カダベリン、Alexa 350カダベリン、5−TAMRAカダベリン、5−FAMカダベリン、SR101カダベリン、5,6−TAMRAカダベリン、5−FAMリジン、Ac−LysGly−MMAD、アミノ−PEG3−C2−MMAD、アミノ−PEG6−C2−MMAD、アミノ−PEG3−C2−アミノ−ノナノイル−MMAD、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAD、アミノ−PEG−C2−Val−Cit−PABC−MMAD、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−MMAD、アミノカプロイル−MMAD、Ac−Lys−β−Ala−MMAD、アミノ−PEG2−C2−MMAE、アミノカプロイル−MMAE、アミノ−PEG3−C2−MMAE、アミノカプロイル−MMAF、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAE、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC−MMAE、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−MMAE、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAF、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC−MMAF、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−MMAF、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−0101、プトレシニル−ゲルダナマイシン、Ac−Lys−プトレシニル−ゲルダナマイシン、アミノカプロイル−3377、アミノ−PEG6−C2−3377、アミノカプロイル−0131、アミノ−PEG6−C2−0131、アミノカプロイル−0121、アミノ−PEG6−C2−0121、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC−MMAD、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC−MMAEおよび2−アミノエトキシ−PEG6−NODAGAからなる群から選択される、請求項4から8のいずれか1項に記載の操作されたポリペプチドコンジュゲート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、抗体の特異的部位で操作された特異的アシルドナーグルタミン含有タグと、アミンドナー物質(例えば、リンカーペイロード)とを含む、トランスグルタミナーゼ介在性の抗体−薬剤コンジュゲートを提供する。本発明はまた、295位におけるグルタミン(Q)
からアスパラギン(N)へのアミノ酸置換(Q295N、EUナンバリングスキーム)を含む、均質な部位特異的なトランスグルタミナーゼ介在性の抗体−薬剤コンジュゲートを提供する。本発明者らは、CHO細胞において発現された場合の、抗体の重鎖または軽鎖のC末端で操作されたアシルドナーグルタミン含有タグのタンパク質分解が、固有の配列(例えば、LLQGPA(配列番号4)、LLQGPP(配列番号11)、およびGGLLQGPP(配列番号13))を有するいくつかの新たに設計されたグルタミン含有タグを用いることによって予防され得ることを発見した。本発明者らはまた、抗体薬剤コンジュゲートの295位での突然変異(すなわち、Q295N、EUナンバリングスキーム)が、ごく一部の非グリコシル化された抗体の295位でのオフターゲットのコンジュゲーションを排除し、99.8%を超えて部位特異的な非常に均質なコンジュゲートをもたらすことを発見した。
【0028】
したがって、一態様において、本発明は、式:ポリペプチド−T−A[式中、Tは、特異的部位で操作されたアシルドナーグルタミン含有タグである]を含む、操作されたポリペプチドコンジュゲートであって、Aはアミンドナー物質であり、アミンドナー物質は、ポリペプチドのカルボキシル末端、アミノ末端、または別の部位でアシルドナーグルタミン含有タグに部位特異的にコンジュゲートしており、アシルドナーグルタミン含有タグは、XがAもしくはPであるアミノ酸配列LLQGPX(配列番号14)またはGGLLQGPP(配列番号13)を含む、操作されたポリペプチドコンジュゲートを提供する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、Fc含有ポリペプチドまたはFab含有ポリペプチドである。
【0029】
別の態様において、本発明は、式:(Fc含有ポリペプチド)−T−A[式中、Tは、特異的部位で操作されたアシルドナーグルタミン含有タグであり、Aはアミンドナー物質である]を含む、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートであって、アミンドナー物質は、Fc含有ポリペプチドのカルボキシル末端、アミノ末端、または別の部位でアシルドナーグルタミン含有タグに部位特異的にコンジュゲートしており、アシルドナーグルタミン含有タグは、Xが任意のアミノ酸であるアミノ酸配列XXQX(配列番号35)を含み、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートは、295位におけるグルタミンからアスパラギンへのアミノ酸置換(Q295N、EUナンバリングスキーム)を含む、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートを提供する。
【0030】
別の態様において、本発明は、式:ポリペプチド−T−A[式中、Tは、特異的部位で操作されたアシルドナーグルタミン含有タグであり、Aはアミンドナー物質である]を含む、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートであって、アミンドナー物質は、ポリペプチドのカルボキシル末端、アミノ末端、または別の部位でアシルドナーグルタミン含有タグに部位特異的にコンジュゲートしており、アシルドナーグルタミン含有タグは、XがAもしくはPであるアミノ酸配列LLQGPX(配列番号14)またはGGLLQGPP(配列番号13)を含む、操作されたポリペプチドコンジュゲートを調製するための方法であって、a)ポリペプチドおよびアシルドナーグルタミン含有タグを含む操作されたポリペプチド−T分子を提供するステップと、b)アミンドナー物質をトランスグルタミナーゼの存在下において、操作されたポリペプチド−T分子と接触させるステップと、c)操作されたポリペプチド−Tをアミンドナー物質に共有結合によって連結させて、操作されたポリペプチドコンジュゲートを形成するステップとを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、操作されたポリペプチドは、Fc含有ポリペプチドまたはFab含有ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、操作されたポリペプチド−T分子は、CHO細胞において発現される。
【0031】
一般的な技術および定義
本明細書において別段の定義がない限り、本発明に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有する。さらに、文脈により別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。全体として、本明細書において記載される細胞培養および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質化学および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連して用いられる命名、およびその技術は、当技術分野において周知であり、一般的に用いられる。
【0032】
本発明の方法および技術は、全体として、別段の指示がない限り、当技術分野において周知の従来の、ならびに本明細書を通して引用および議論される様々な一般的なおよびさらに具体的な参考文献において記載されているような方法に従って行われる。例えば、Sambrook J.& Russell D.Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2000);Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、Wiley,John & Sons,Inc.(2002);HarlowおよびLane Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1998);およびColiganら、Short Protocols in Protein Science、Wiley,John & Sons,Inc.(2003)を参照されたい。酵素反応および精製技術は、当技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書において記載されるように、製造者の説明に従って行われる。本明細書において記載される、分子生物学、生化学、免疫学、分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学および薬化学に関連して用いられる命名、ならびにその実験手順および実験技術は、当技術分野において周知であり一般的に用いられるものである。本明細書および特許請求の範囲を通して、語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変型は、言及された整数または整数群を含めるがいかなる他の整数または整数群も排除しないことを意味すると理解される。
【0033】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、任意の長さの、好ましくは比較的短い(例えば、10〜100アミノ酸の)アミノ酸鎖を指すために、本明細書において区別せずに使用する。鎖は、直鎖状または分岐鎖状であり得、これは、修飾されたアミノ酸を含み得、かつ/または非アミノ酸によって介在され得る。この用語はまた、天然にまたは介入によって、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションによって修飾されている、アミノ酸鎖を包含する。同様にこの定義に含まれるものは、例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸などを含む)の1つまたは複数の類似体、および当技術分野において知られている他の修飾を含有するポリペプチドである。ポリペプチドは、一本鎖または会合鎖として生じ得ることが理解される。
【0034】
本明細書において使用する用語「Fc含有ポリペプチド」は、免疫グロブリン重鎖のカルボキシル末端のポリペプチド配列を含むポリペプチド(例えば、抗体またはイムノアドヘシン)を指す。Fc含有ポリペプチドは、天然Fc領域または変異Fc領域(すなわち、配列)を含み得る。免疫グロブリンのFc領域は一般に、2つの定常ドメイン、すなわちCH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、CH4ドメインを含んでいてもよい。Fc含有ポリペプチドは、野生型ヒンジ配列の一部または全てを含み得る(一般に、Fc含有ポリペプチドのアミノ末端に)。Fc含有ポリペプチドはまた、二量体であり得る。Fc含有ポリペプチドは、任意の適切な免疫グロブリン、例えば、様々なIgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプもしくはIgG4サブタイプの少なくとも1つから、またはIgA、IgE、IgDもしくはIgMから得ることができるか、または誘導することができる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、例えば、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、Glu216位のアミノ酸残基から、またはAla231から、そのカルボキシル末端まで伸びていると定義される。
【0035】
Fc含有ポリペプチドは、1つまたは複数のポリペプチドがFc含有ポリペプチドに作動可能に連結している、Fc含有融合ポリペプチドであり得る。Fc融合体は、免疫グロブリンのFcポリペプチドと、一般に任意のタンパク質、ポリペプチドまたは低分子であり得る融合パートナーとを併せ持つ。ほとんど全てのタンパク質または低分子が、Fc領域に連結して、Fc含有融合ポリペプチドを生成し得る。Fc含有融合パートナーには、限定はしないが、受容体の標的結合領域、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモカイン、またはいくつかの他のタンパク質もしくはタンパク質ドメインが含まれ得る。
【0036】
本明細書において使用する用語「アシルドナーグルタミン含有タグ」、「グルタミンタグ」、「Q含有タグ」、または「Qタグ」は、トランスグルタミナーゼアミンアクセプターとして作用する1つまたは複数のGln残基を含有するポリペプチドまたはタンパク質を指す。
【0037】
本明細書において使用する用語「アミンドナー物質」または「アシルアクセプター」は、1つまたは複数の反応性アミン(例えば、第一級アミン)を含有する作用物質を指す。例えば、アミンドナー物質は、アミンドナー単位(例えば、第一級アミンNH
2)、リンカー、および作用物質部分(例えば、低分子)を含み得る。アミンドナー物質はまた、反応性Lys(例えば、内因性Lys)を含有するポリペプチド(例えば、抗体)または生体適合性ポリマーであり得る。
【0038】
本明細書において用いられる場合、用語「生体適合性ポリマー」は、レシピエント(例えばヒト)においていかなる望ましくない局所的または全身的な影響も引き起こすことのない、レシピエントにおける治療または医療的処置に適切なポリマー(例えば、反復している単量体単位または構造単位)を指す。生体適合性ポリマー(合成の、組換えの、または天然の)は、水溶性のまたは水不溶性のポリマーであり得る。生体適合性ポリマーはまた、直鎖状または分岐鎖状のポリマーであり得る。
【0039】
明細書において用いられる場合、「部位特異性」、「部位特異的にコンジュゲートしている(された)」、または「部位特異的に架橋している」は、特異的部位(例えば、抗体または毒素ポリペプチドのカルボキシル末端またはアミノ末端、抗体(例えば、抗体軽鎖および/または重鎖のループ)または毒素ポリペプチド(例えば、ペプチドループ)内のアクセス可能部位)での、アシルドナーグルタミン含有タグで操作されたポリペプチドへのアミンドナー物質の特異的なコンジュゲーションまたは架橋を指す。アシルドナーグルタミン含有タグで操作されたポリペプチドは、Fc含有ポリペプチド、Fab含有ポリペプチド、または毒素ポリペプチド(例えば、イオンチャネルに結合したタンパク質)であり得る。用語「部位特異性」、「部位特異的にコンジュゲートしている(された)」、または「部位特異的に架橋している」はまた、特異的部位(例えば、生体適合性ポリマー内のアクセス可能部位)での、アシルドナーグルタミン含有タグで操作された生体適合性ポリマーへのポリペプチド(例えば、毒素ポリペプチド)の特異的コンジュゲーションまたは架橋を指し得る。部位特異性は、限定はしないが、質量分析(例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)、タンデム質量分析(MS)、および飛行時間型質量分析(TOF−MS))、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、部位特異的突然変異生成、蛍光標識、サイズ排除クロマトグラフィー、およびX線結晶学を含む、様々な技術によって測定することができる。
【0040】
明細書において用いられる場合、用語「空間的に隣接している」は、所望のトランスグルタミナーゼ反応との干渉を指す(例えば、アミンドナー物質として働くことによってコンジュゲーション反応に干渉し得るように位置しているリジン残基)。
【0041】
本明細書において用いられる場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、糖質、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的結合し得る、免疫グロブリン分子である。本明細書において用いられる場合、文脈によって別段の指示がない限り、この用語は、無傷のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体だけではなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fvなど)、サメおよびラクダ抗体を含む一本鎖(ScFv)抗体およびドメイン抗体、ならびに、本明細書において記載される、抗体部分、多価抗体、多重特異的抗体(例えば、それらが所望の生物学的活性を示す限りの、二重特異的抗体)、および抗体断片を含む、融合タンパク質、ならびに、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された立体構造も包含するものである。抗体は、IgG、IgA、またはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、また抗体は、何らかの特定のクラスのものである必要はない。抗体の重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体構造は周知である。1つの態様において、免疫グロブリンは、ヒト、マウス、またはウサギの免疫グロブリンである。
【0042】
本明細書において用いられる用語「Fab含有ポリペプチド」は、Fab断片、Fab’断片、または「(Fab’)2断片を含むポリペプチド」を指す。Fab含有ポリペプチドは、野生型ヒンジ配列の一部または全てを含み得る(通常は、ポリペプチドのFab部分のカルボキシル末端で)。Fab含有ポリペプチドは、任意の適切な免疫グロブリンから、例えば様々なIgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプ、もしくはIgG4サブタイプの少なくとも1つから、またはIgA、IgE、IgD、もしくはIgMから得ることができるか、または誘導することができる。Fab含有ポリペプチドは、1つまたは複数のポリペプチドがFab含有ポリペプチドに作動可能に連結している、Fab含有融合ポリペプチドであり得る。Fab融合体は、免疫グロブリンのFabポリペプチドを通常は任意のタンパク質、ポリペプチド、または低分子であり得る融合パートナーと組み合わせる。事実上任意のタンパク質または低分子が、Fabポリペプチドに連結して、Fab含有融合ポリペプチドを生成し得る。Fab含有融合パートナーには、限定はしないが、受容体の標的結合領域、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモカイン、またはいくつかの他のタンパク質もしくはタンパク質ドメインが含まれ得る。
【0043】
「Fab断片」は、1つの軽鎖およびCH1および1つの重鎖の可変領域を含む。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成し得ない。
【0044】
「Fab’断片」は、1つの軽鎖ならびにVHドメインおよびCH1ドメインを含有する1つの重鎖の一部、また、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域を含有し、その結果、鎖間ジスルフィド結合が2つのFab’断片の2つの重鎖の間で形成されて、F(ab’)2分子が形成され得る。
【0045】
「F(ab’)2断片」は、2つの軽鎖およびCH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域の一部を含有する2つの重鎖を含有し、その結果、鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖の間で形成される。F(ab’)2断片は、したがって、2つの重鎖の間のジスルフィド結合によって共に結び付けられている2つのFab’断片からなる。
【0046】
本明細書において用いられる「抗体断片」は、無傷抗体の一部分のみを含み、前記部分は好ましくは、無傷抗体内に存在する場合に前記部分に通常は関連する機能の、少なくとも1つ、好ましくはほとんどまたは全てを保持する。
【0047】
「多重特異的抗体」は、2つ以上の抗原またはエピトープを標的化する抗体である。「二重特異的な(bispecific)」、「二重特異的な(dual−specific)」、または「二官能性の」抗体は、2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異的抗体は、多重特異的抗体の種であり、限定はしないがハイブリドーマの融合、またはFab’断片の連結を含む、様々な方法によって生産することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann(1990)、Clin.Exp.Immunol.79:315〜321;およびKostelnyら(1992)、J.Immunol.148:1547〜1553を参照されたい。二重特異的抗体の2つの結合部位は、同一のまたは異なるタンパク質標的上に存在し得る2つの異なるエピトープに結合する。
【0048】
本明細書において用いられる用語「モノクローナル抗体」は、ほぼ均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個別の抗体は、微量に存在し得る、考えられる天然の突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一抗原に対するものである。さらに、異なる抗原決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の抗原決定基に対するものである。
【0049】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、一部の実施形態において、所望の生物学的活性を示す限りの、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に同一であるかまたは相同であり、一方、鎖(1つまたは複数)の残りが、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に同一であるかまたは相同である、「キメラ」抗体、ならびにこのような抗体の断片を具体的に含み得る(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851〜6855(1984))。
【0050】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化された」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。ヒト化抗体は、さらに、レシピエント抗体またはドナー抗体において見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに向上させるために行われる。通常、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインのほぼ全てを含み、超可変ループの全てまたはほぼ全ては、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたはほぼ全ては、ヒト免疫グロブリン配列のFRに対応する。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含んでいてもよい。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 321:522〜525(1986);Riechmannら、Nature 332:323〜329(1988);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593〜596(1992)を参照されたい。また、総説:VaswaniおよびHamilton、Ann.Allergy、Asthma & Immunol.1:105〜115(1998);Harris、Biochem.Soc.Transactions 23:1035〜1038(1995);HurleおよびGross、Curr.Op.Biotech.5:428〜433(1994)、およびそこで引用される参考文献も参照されたい。
【0051】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、および/または本明細書において開示されるヒト抗体を作製する技術のいずれかを用いて作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に排除する。
【0052】
本明細書において用いられる場合、用語「イムノアドヘシン」は、異種タンパク質(「アドヘシン」、例えば、受容体、リガンド、または酵素)の「結合ドメイン」を免疫グロブリン定常ドメイン(すなわち、Fcドメイン)のエフェクター成分と組み合わせる抗体様分子または免疫グロブリン様分子を指す。構造的に、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識および結合部位(抗原結合部位)以外の(すなわち「異種の」)、所望の結合特異性を有するアドヘシンアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合体を含む。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプ、もしくはIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
【0053】
本明細書において使用する「ヒンジ領域」、「ヒンジ配列」、およびその変型は、例えば、Janewayら、ImmunoBiology:the immune system in health and disease、(Elsevier Science Ltd.、NY)(第4版、1999);Bloomら、Protein Science(1997)、6:407〜415;Humphreysら、J.Immunol.Methods(1997)、209:193〜202において説明されている、当技術分野において知られている意味を含む。
【0054】
本明細書において用いられる場合、用語「野生型アミノ酸」、「野生型IgG」、「野生型二重特異的抗体」、または「野生型mAb」は、ある集団(例えば、ヒト、マウス、ラット、細胞など)内で天然に生じるアミノ酸または核酸の配列を指す。
【0055】
本明細書において用いられる場合、用語「コンジュゲーション効率」または「架橋効率」は、操作されたポリペプチドコンジュゲートの実験的に測定された量を、操作されたポリペプチドコンジュゲートの最大期待量で割った値の間の比率である。コンジュゲーション効率または架橋効率は、疎水性相互作用クロマトグラフィーなどの当業者に周知の様々な技術によって測定することができる。コンジュゲーション効率はまた、室温または37℃などの異なる温度で測定することができる。
【0056】
用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体のエフェクター機能の例としては、限定はしないが、抗体依存性の細胞介在性細胞傷害性(ADCC)、Fc受容体の結合、補体依存性の細胞傷害性(CDC)、食作用、C1qの結合、および細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方調節が挙げられる。例えば、米国特許第6,737,056号を参照されたい。このようなエフェクター機能は通常、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることを要し、このような抗体エフェクター機能を評価するための当技術分野において知られている様々なアッセイを用いて評価することができる。エフェクター機能の典型的な測定は、Fcγ3および/またはC1qの結合を介する。
【0057】
本明細書において用いられる場合、「抗体依存性の細胞介在性細胞傷害性」または「ADCC」は、Fc受容体(FcR)(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)を発現する非特異的な細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、次いで標的細胞の溶解を生じさせる、細胞介在性の反応を指す。目的の分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号または米国特許第5,821,337号において記載されているような、インビトロADCCアッセイを用いて評価することができる。このようなアッセイのための有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)およびNK細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynesら、1998、PNAS(USA)、95:652〜656において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することができる。
【0058】
「補体依存性の細胞傷害性」または「CDC」は、補体の存在下での標的の溶解を指す。補体の活性化経路は、同族抗原と複合した分子(例えば抗体)への補体系(C1q)の第1の成分の結合によって開始される。補体の活性化を評価するために、例えばGazzano−Santoroら、J.Immunol.Methods、202:163(1996)において記載されているような、CDCアッセイを行うことができる。
【0059】
本明細書において用いられる場合、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載する。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)を結合するものであり、対立遺伝子変異体を含むFcγRIサブクラス、FcγRIIサブクラス、FcγRIIIサブクラス、およびFcyRIVサブクラスの受容体を含み、あるいは、これらの受容体のスプライシングされた形態を含む。FcyRII受容体には、その細胞質ドメインが主に異なる類似のアミノ酸配列を有する、FcyRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれる。FcRは、RavetchおよびKinet、1991、Ann.Rev.Immunol.、9:457〜92;Capelら、1994、Immunomethods、4:25〜34;de Haasら、1995、J.Lab.Clin.Med.、126:330〜41;Nimmerjahnら、2005、Immunity 23:2〜4において概説されている。「FcR」にはまた、胎児への母親IgGの移入に関与する新生児受容体FcRnが含まれる(Guyerら、1976、J.Immunol.、117:587;およびKimら、1994、J.Immunol.、24:249)。
【0060】
本明細書中で使用する「治療(処置)」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の解釈上、有益なまたは所望の臨床結果には、限定はしないが、以下の1つまたは複数が含まれる:新生物細胞もしくは癌性細胞の増殖低減(もしくは破壊)、新生物細胞の転移阻害、腫瘍の縮小もしくは腫瘍サイズの減少、癌寛解、癌症状の減少、癌を患っている人のクオリティオブライフの向上、癌の治療に必要な他の医薬品の用量の減少、癌進行の遅延、癌の治癒、および/または癌患者の生存期間の延長。
【0061】
本明細書中で使用する、薬剤、化合物または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」は、任意の1つまたは複数の有益なまたは所望の結果をもたらすのに充分な量である。予防的使用に関しては、有益なまたは所望の結果には、疾患の生化学的症状、組織学的症状および/もしくは行動症状、その合併症ならびに疾患の発症中に見つかる中間の病理学的表現型を含む疾患の、リスクの排除もしくは低減、重症度の低下または発生の遅延が含まれる。治療的使用に関しては、有益なまたは所望の結果には、様々な癌関連疾患もしくは状態(例えば、胃癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌および膵臓癌)の1つもしくは複数の症状の発生率の低下もしくは寛解、疾患の治療に必要な他の医薬品の用量の減少、別の医薬品の効果の増強、および/または患者における癌の進行の遅延などの臨床結果が含まれる。有効投与量は、1回は複数回の投与で投与し得る。本発明の解釈上、薬剤、化合物または医薬組成物の有効投与量は、直接的または間接的に予防的処置または治療的処置を行うのに充分な量である。臨床に関連して理解されるように、薬剤、化合物もしくは医薬組成物の有効投与量は、別の薬剤、化合物もしくは医薬組成物と併用して達成してもよいし、または達成しなくてもよい。したがって、「有効投与量」は、1種または複数の治療薬の投与との関連において考慮することができ、単剤は、1種または複数の他の作用物質と併用した場合に望ましい結果が達成され得るまたは達成されるならば、有効量で投与されると考えることができる。
【0062】
用語「精製する」およびその文法上の変型は、組成物内のポリペプチドの純度レベルを向上させる(すなわち、組成物内の不純物(1つまたは複数)の量(ppm)を減少させることによって)、ポリペプチドおよび1つまたは複数の不純物を含有する混合物からの少なくとも1つの不純物の完全なまたは部分的な除去を意味するために用いられる。
【0063】
本明細書における「約」値またはパラメーターへの言及は、それ自体がその値またはパラメーターに向けられた実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含む。
【0064】
「個体」または「対象」は、哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。哺乳動物にはまた、限定はしないが、家畜、スポーツ用の動物、ペット、霊長類、ウマ、犬、猫、マウス、およびラットが含まれる。
【0065】
「含む(comprising)」という記載を用いて実施形態が本明細書において記載されている場合は全て、「からなる」および/または「から基本的になる」と言う用語で記載されているそれ以外の類似の実施形態もまた提供される。
【0066】
本発明の態様または実施形態がマーカッシュグループまたは選択肢の他のグループ分けに関して記載されている場合、本発明は、列挙されたグループ全体をまとめて包含するだけではなく、グループの各メンバーを個別におよびメイングループの全ての考えられるサブグループも包含し、しかしまた、グループメンバーの1つまたは複数が欠けているメイングループも包含する。本発明はまた、特許請求の範囲に記載の発明におけるグループメンバーのいずれかの1つまたは複数を明確に排除することも想定する。
【0067】
本出願における残基の呼称は、定常ドメインのEUナンバリングスキームに基づく(Edelmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、63(1):78〜85(1969))。
【0068】
別段の定義がない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。典型的な方法および材料が本明細書において記載されるが、本明細書において記載されるものに類似または同等の方法および材料もまた本発明の実施または試験において用いることができる。本明細書において言及される全ての刊行物および他の参考文献は、参照することによってその全体が組み込まれる。一致しない場合には、定義を含む本明細書が優先される。多くの文献が本明細書において引用されるが、この引用は、これらの文献のいずれかが当技術分野における一般常識の一部を形成することを承認するものではない。本明細書および特許請求の範囲を通して、語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変型は、言及された整数または整数群を含めることを意味するが、いかなる他の整数または整数群も排除するものではない。文脈により別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。材料、方法、および例は例示的なものにすぎず、限定するためのものではない。
【0069】
操作されたポリペプチドコンジュゲート
本明細書における操作されたポリペプチドコンジュゲートは、特異的アシルドナーグルタミン含有タグに操作されたポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチド、Fab含有ポリペプチド、または抗体)を含み、ポリペプチドは、アシルドナーグルタミン含有タグを介してアミンドナー物質(例えば、リンカーに結合している低分子)に部位特異的にコンジュゲートしている。操作されたポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチドまたは抗体)はまた、アシルドナーグルタミン含有タグとアミンドナー物質との間のオフターゲットのコンジュゲーションを排除して、少なくとも約
99%部位特異的な非常に均質なポリペプチドコンジュゲートを達成するように修飾され得る。
【0070】
一態様において、式:ポリペプチド−T−A[式中、Tは、特異的部位で操作されたアシルドナーグルタミン含有タグであり、Aはアミンドナー物質である]を含む、操作されたポリペプチドコンジュゲートであって、アミンドナー物質は、ポリペプチドのカルボキシル末端、アミノ末端、または別の部位でアシルドナーグルタミン含有タグに部位特異的にコンジュゲートしており、アシルドナーグルタミン含有タグは、XがAもしくはPであるアミノ酸配列LLQGPX(配列番号14)またはGGLLQGPP(配列番号13)を含む、操作されたポリペプチドコンジュゲートが提供される。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、Fc含有ポリペプチドまたはFab含有ポリペプチドである。
【0071】
別の態様において、式:(Fc含有ポリペプチド)−T−A[式中、Tは、特異的部位で操作されたアシルドナーグルタミン含有タグであり、Aはアミンドナー物質である]を含む、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートであって、アミンドナー物質は、Fc含有ポリペプチドのカルボキシル末端、アミノ末端、または別の部位でアシルドナーグルタミン含有タグに部位特異的にコンジュゲートしており、アシルドナーグルタミン含有タグは、Xが任意のアミノ酸であるアミノ酸配列XXQX(配列番号35)を含み、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートは、295位におけるグルタミンからアスパラギンへのアミノ酸置換(例えば、Q295N、EUナンバリングスキーム)を含む、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートが提供される。
【0072】
本明細書中に記載するアシルドナーグルタミン含有タグとアミンドナー物質はいずれも、トランスグルタミナーゼの基質であり、アシルドナーグルタミン含有タグとアミンドナー物質との間の連結は、式CH
2−CH
2−CO−NH−[式中、NH−は、リンカーおよび作用物質部分に連結されている]のものである。本明細書中に記載する本発明に使用するトランスグルタミナーゼは、様々な供給源から得るか、もしくは作製することができる。いくつかの実施形態において、トランスグルタミナーゼは、酵素の立体構造の変化を誘発するためおよび酵素活性を可能にするためにカルシウムを要する、カルシウム依存性のトランスグルタミナーゼである。例えば、トランスグルタミナーゼは、モルモットの肝臓に由来することができ、市販の供給源(例えば、Sigma−Aldrich(St Louis、MO)およびMP Biomedicals(Irvine、CA))を介して得ることができる。いくつかの実施形態において、トランスグルタミナーゼは、酵素の立体構造の変化を誘発するためおよび酵素活性を可能にするためにカルシウムを要しない、カルシウム非依存性のトランスグルタミナーゼである。いくつかの実施形態において、トランスグルタミナーゼは、ストレプトベルティシリウム属(Streptoverticillium)またはストレプトマイセス属(Streptomyces)(例えば、ストレプトマイセス・モバレンシス(Streptomyces mobarensis)またはストレプトベルティシリウム・モバレンシス(Streptoverticillium mobarensis))からのトランスグルタミナーゼなどの、微生物ゲノムに由来する微生物トランスグルタミナーゼである。ACTIVA(商標)(味の素、日本)などの市販されているカルシウム非依存性のトランスグルタミナーゼは、本発明に適している。いくつかの実施形態において、トランスグルタミナーゼは、哺乳動物タンパク質(例えば、ヒトトランスグルタミナーゼ)、細菌タンパク質、植物タンパク質、真菌タンパク質(例えば、卵菌(Oomycetes)および放線菌(Actinomycetes)トランスグルタミナーゼ)、または原核生物タンパク質である。いくつかの実施形態において、トランスグルタミナーゼは、ミクロコッカス属(Micrococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、トルロプシス属(Turolpsis)、クモノスカビ属(Rhizopus)、モナスカス属(Monascus)、またはバチルス属(Bacillus)からのものである。
【0073】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載する本発明において使用するトランスグルタミナーゼは、1つもしくは複数のリジン残基またはアミンドナー物質中の反応性アミンによる、1)アシルドナーグルタミン含有タグ上の1つもしくは複数の外因性グルタミン残基、および追加で/場合によって、2)抗体中の内因性グルタミン残基のアミド基転移を触媒する、操作されたトランスグルタミナーゼである。例えば、天然トランスグルタミナーゼ中の1つまたは複数の野生型アミノ酸残基を、欠失させ、別のアミノ酸残基(1つまたは複数)に置き換えるもしくはそれで置換して、操作されたトランスグルタミナーゼを作製する。
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される、本発明において用いられるトランスグルタミナーゼはまた、当業者に知られている組換え技術を用いて生産された組換えタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される、本発明において用いられるトランスグルタミナーゼは、精製タンパク質であり得る。例えば、精製トランスグルタミナーゼは、少なくとも約50%の純度である。本明細書において用いられる場合、「純粋な」または「精製」タンパク質は、他の汚染タンパク質を有さないタンパク質(例えば、トランスグルタミナーゼ)を指す。いくつかの実施形態において、精製トランスグルタミナーゼは、少なくとも約55%〜60%、60%〜65%、65%〜70%、70%〜75%、75%〜80%、80%〜85%、85%〜90%、90%〜95%、95%〜98%、または99%の純度のいずれかである。いくつかの実施形態において、精製トランスグルタミナーゼは、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の純度のいずれかである。
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される操作されたポリペプチド(例えば、Fc含有、Fab含有ポリペプチド、または抗体)コンジュゲートのアシルドナーグルタミン含有タグは、ポリペプチド内で反応性Lysに空間的に隣接していない。例えば、アシルドナーグルタミン含有タグは、ポリペプチドのカルボキシル末端、アミノ末端、またはカルボキシル末端およびアミノ末端の両方において反応性Lysに空間的に隣接していない。
【0076】
いくつかの実施形態において、アシルドナーグルタミン含有タグは、アミノ酸配列XXQX(配列番号35)[式中、Xは、本明細書中に記載する従来のまたは非従来のアミノ酸であり得、かつ同一のまたは異なるアミノ酸であり得る]を含む。いくつかの実施形態において、Xは、L(Leu)、A(Ala)、G(Gly)、S(Ser)、V(Val)、F(Phe)、Y(Tyr)、H(His)、R(Arg)、N(Asn)、E(Glu)、D(Asp)、C(Cys)、Q(Gln)、I(Ile)、M(Met)、P(Pro)、T(Thr)、K(Lys)またはW(Trp)である。いくつかの実施形態において、アシルドナーグルタミン含有タグは、LLQGG(配列番号16)、LLQG(配列番号17)、LSLSQG(配列番号18)、GGGLLQGG(配列番号19)、GLLQG(配列番号20)、LLQ、GSPLAQSHGG(配列番号21)、GLLQGGG(配列番号22)、GLLQGG(配列番号23)、GLLQ(配列番号24)、LLQLLQGA(配列番号25)、LLQGA(配列番号26)、LLQYQGA(配列番号27)、LLQGSG(配列番号28)、LLQYQG(配列番号29)、LLQLLQG(配列番号30)、SLLQG(配列番号31)、LLQLQ(配列番号32)、LLQLLQ(配列番号33)、LLQGR(配列番号34)、LLQGPP(配列番号11)、LLQGPA(配列番号4)、GGLLQGPP(配列番号13)、GGLLQGA(配列番号12)、LLQGA(配列番号1)、LLQGPGK(配列番号2)、LLQGPG(配列番号3)、LLQGP(配列番号5)、LLQP(配列番号6)、LLQPGK(配列番号7)、LLQAPGK(配列番号8)、LLQGAPG(配列番号9)、およびLLQGAP(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、アシルドナーグルタミン含有タグは、アミノ酸配列LLQGPA(配列番号4)、LLQGP(配列番号5)、LLQGPP(配列番号11)、またはGGLLQGPP(配列番号13)を含む。いくつかの実施形態において、アシルドナーグルタミン含有タグは、LGGQGGG(配列番号41)、GGGQGGL(配列番号42)、GXGQGGG(配列番号43)、GGXQGGG(配列番号44)、GGGQXGG(配列番号45)、およびGGGQGXG(配列番号46)[式中、XはG、A、S、L、V、F、Y、R、NまたはEである]からなる群から選択されるアミノ酸配列を含まない。
【0077】
いくつかの実施形態において、操作されたポリペプチドコンジュゲートのポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチド、Fab含有ポリペプチド、または抗体)は、同一の位置の野生型ポリペプチドと比較して、カルボキシル末端の最後のアミノ酸位置にアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、アミノ酸の欠失、挿入、置換、突然変異またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、置換は、野生型アミノ酸を別のアミノ酸(例えば、非野生型アミノ酸)に置き換えることを含む。いくつかの実施形態において、挿入は、1つまたは複数のアミノ酸を挿入する(例えば、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアミノ酸を挿入する)ことを含む。いくつかの実施形態において、他の(例えば、非野生型)または挿入されるアミノ酸は、Argである。いくつかの実施形態において、他の(例えば、非野生型)アミノ酸は、Ala、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValである。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、抗体の重鎖)のカルボキシル末端の最後のアミノ酸は、欠失させることができ、ポリペプチドのC末端に対して操作されたアシルドナーグルタミン含有タグは、アミノ酸配列LLQGPA(配列番号4)またはLLQGPP(配列番号11)を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、操作されたポリペプチドコンジュゲートのポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチドまたは抗体)は、同一の位置の野生型ポリペプチドと比較して、222、340または370位(EUナンバリング)にアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、アミノ酸の欠失、挿入、置換、突然変異またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、置換は、野生型アミノ酸を別のアミノ酸(例えば、非野生型アミノ酸)に置き換えることを含む。いくつかの実施形態において、他の(例えば、非野生型)または挿入されるアミノ酸は、Arg(例えば、K222R、K340RまたはK370R(EUナンバリング))である。いくつかの実施形態において、挿入は、1つまたは複数のアミノ酸を挿入する(例えば、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアミノ酸を挿入する)ことを含む。いくつかの実施形態において、他の(例えば、非野生型)アミノ酸は、Ala、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValである。例えば、いくつかの態様において、K222R置換を含むポリペプチド(例えば、抗体)は、抗体の軽鎖のC末端でアシルドナーグルタミン含有タグに操作され、グルタミン含有タグは、GGLLQGPP(配列番号13)のアミノ酸配列を含む。
【0079】
いくつかの態様において、ポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチド、Fab含有ポリペプチド、または抗体)は、同一の位置の野生型ポリペプチドと比較して、アミノ末端の最初のアミノ酸位置にアミノ酸修飾を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、アミノ酸の欠失、挿入、置換、突然変異またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、置換は、野生型アミノ酸を別の(例えば、非野生型)アミノ酸に置き換えることを含む。いくつかの実施形態において、挿入は、アミノ酸を挿入することを含む。いくつかの実施形態において、非野生型のまたは挿入されるアミノ酸は、Argである。いくつかの実施形態において、他の(非野生型のまたは挿入された)アミノ酸は、Ala、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValである。
【0080】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載するポリペプチドコンジュゲートは、完全長の抗体重鎖および抗体軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、アシルドナーグルタミン含有タグは、重鎖、軽鎖、または重鎖および軽鎖の両方のカルボキシル末端でポリペプチドに連結/位置している。例えば、アシルドナーグルタミン含有タグGGLLQGPP(配列番号13)は、軽鎖のカルボキシル末端でポリペプチドに連結している。一変形形態において、アシルドナーグルタミン含有タグGGLLQGPP(配列番号13)は、軽鎖のカルボキシル末端でQ295N突然変異(EUナンバリングスキーム)を含むポリペプチドに連結している。別の変形形態において、アシルドナーグルタミン含有タグLLQGPA(配列番号4)、LLQGP(配列番号5)、またはLLQGPP(配列番号11)は、重鎖のカルボキシル末端でQ295N突然変異を含むポリペプチドに連結している。
【0081】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載するポリペプチドは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ダイアボディまたは抗体断片である。
【0082】
いくつかの実施形態において、抗体はIgGである。いくつかの実施形態において、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態において、抗体は、IgA、IgE、IgD、またはIgMである。
【0084】
いくつかの態様において、アシルドナーグルタミン含有タグは、本明細書中に記載するポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチド、Fab含有ポリペプチド、または抗体)上の別の部位における1つまたは複数の野生型アミノ酸の挿入または置き換えによってポリペプチド内に位置し、他方の部位は、アミノ末端またはカルボキシル末端ではない。例えば、アシルドナーグルタミン含有タグは、抗体ループの一部である。アシルドナーグルタミン含有タグは、1つまたは複数の重鎖ループに連結し得る。アシルドナーグルタミン含有タグはまた、抗体の1つまたは複数の軽鎖ループに連結し得る。いくつかの実施形態において、アシルドナーグルタミン含有タグは、重鎖ループおよび軽鎖ループの両方に位置する。いくつかの実施形態において、別の部位は、ヒトIgG1抗体のアミノ酸位置108、135、160、168、189〜192、190〜192、200〜202、222〜223、251〜254、252〜253、293〜297、294〜297、295、297または385(EUナンバリングスキーム)である。
【0085】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される操作されたポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチドまたは抗体)コンジュゲートのエフェクター機能(例えば、Fcγ3および/またはC1qの結合によって測定される)は、野生型ポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチドまたは抗体)と比較して、約1倍以上に増加する、または最大約2分の1、3分の1、4分の1、または5分の1のいずれかまで低下する。いくつかの態様において、操作されたポリペプチドコンジュゲートはIgGであり、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して最大約2分の1まで低下する。他の実施形態において、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して約2分の1に低下する。他の実施形態において、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して約2分の1未満に低下する。いくつかの実施形態において、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートはIgGであり、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して約1倍以上に増加する。他の実施形態において、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して約1倍である。いくつかの実施形態において、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して約1分の1、3分の1、4分の1、または5分の1のいずれか未満に低下する。
【0086】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される操作されたポリペプチド(Fc含有ポリペプチドまたは抗体)コンジュゲートのエフェクター機能(例えば、Fcγ3および/またはC1qの結合によって測定される)は、野生型ポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチドまたは抗体)と比較して、少なくとも約1倍から3000倍に増大する。いくつかの実施形態において、操作されたポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチドまたは抗体)コンジュゲートのエフェクター機能は、野生型ポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチドまたは抗体)と比較して、少なくとも約1倍から5倍、6倍から10倍、11倍から15倍、16倍から20倍、21倍から25倍、26倍から30倍、31倍から35倍、36倍から40倍、41倍から45倍、46倍から50倍、51倍から55倍、56倍から60倍、61倍から65倍、66倍から70倍、71倍から75倍、76倍から80倍、81倍から85倍、86倍から90倍、91倍から95倍、96倍から100倍、101倍から200倍、201倍から300倍、301倍から500倍、501倍から1000倍、1001倍から1500倍、1501倍から2000倍、2001倍から2500倍、2501倍から3000倍のいずれかに増大する。いくつかの実施形態において、操作されたポリペプチドコンジュゲートはIgGであり、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して、約1倍から300倍に増大する。いくつかの実施形態において、IgGのエフェクター機能は、野生型IgGと比較して、約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、40倍、60倍、80倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、1500倍、2000倍、2500倍、または3000倍のいずれかに増大する。
【0087】
いくつかの実施形態において、アミンドナー物質は、式:X−Y−Z[式中、Xはアミンドナー単位であり、Yはリンカーであり、Zは作用物質部分である]を有する。
【0088】
アシルドナーグルタミン含有タグを介してポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチド、Fab含有ポリペプチド、または抗体)にコンジュゲートし得るアミンドナー物質の数は、ポリペプチドに連結/挿入されるアシルドナーグルタミン含有タグの数およびアシルドナーグルタミン含有タグ上のGlnの数によって異なる。例えば、2つのアミンドナー物質が、2つの重鎖のカルボキシル末端で抗体に部位特異的にコンジュゲートすることができ、かつ/または2つのアミンドナー物質が、2つの軽鎖のカルボキシル末端で同一の抗体に部位特異的にコンジュゲートすることができる。
【0089】
本発明のアミンドナー単位は、アシルドナーグルタミン含有タグを介するポリペプチドへの作用物質部分のコンジュゲーションを可能にするトランスグルタミナーゼの基質を提供する第一級アミン(NH
2)である。したがって、アシルドナーグルタミン含有タグとアミンドナー単位との間の連結は、式CH
2−CH
2−CO−NH−[式中、NH−は、リンカーおよび作用物質部分に連結している]を有する。
【0090】
本発明のリンカーは、切断可能なまたは切断不可能なリンカーであり得る。例えば、リンカー(アミンドナー単位を有する)またはアミンドナー物質は、ポリペプチドから放出され得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、ペプチドリンカー(例えば、従来のまたは非従来のアミノ酸(1つまたは複数))および/または非ペプチドリンカーであり得る。非ペプチドリンカーの例としては、アルキルリンカーおよびPEGリンカーが挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態において、アミンドナー単位−リンカー(例えば、X−Y)は、作用物質部分を含む直鎖状の単位である。他の実施形態において、アミンドナー単位−リンカーは、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれ以上の作用物質部分を含む、分岐鎖状の単位(例えば、少なくとも2つの単位)である。
【0092】
典型的なアミンドナー単位−リンカーには、限定はしないが、Ac−Lys−Gly、アミノカプロン酸、Ac−Lys−β−Ala、アミノ−PEG2−C2、アミノ−PEG3−C2、アミノ−PEG6−C2、Ac−Lys−Val−Cit(シトルリン)−PABC(p−アミノベンジルオキシカルボニル)、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC、[(3S,5S)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC−、Ac−Lys−プトレシンまたは2−アミノエトキシが含まれる。
【0093】
本発明の操作されたポリペプチドの作用物質部分には、低分子、タンパク質またはポリペプチド、および生体適合性ポリマーが含まれる。
【0094】
いくつかの実施形態において、低分子は、細胞傷害物質、免疫抑制物質またはイメージング剤(例えば、フルオロフォア)である。いくつかの実施形態において、細胞傷害物質は化学療法薬である。
【0095】
細胞傷害物質の例としては、限定はしないが、アントラサイクリン、オーリスタチン、カンプトセシン、コンブレタスタチン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン、インドリノ−ベンゾジアゼピン二量体、マイタンシン、ピューロマイシン、タキサン、ビンカアルカロイド、SN−38、ツブリシン、ヘミアステリン、スプリセオスタチン、プラジエノライド、およびそれらの立体異性体、アイソスター、類似体または誘導体が挙げられる。
【0096】
アントラサイクリンは、ストレプトマイセス属(Strepomyces)の細菌に由来し、広範な癌、例えば、白血病、リンパ腫、乳癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌の治療に使用されている。典型的なアントラサイクリンには、限定はしないが、ダウノルビシン、ドキソルビシン(すなわち、アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシンおよびミトキサントロンが含まれる。
【0097】
ドラスタチンならびにそのペプチド類似体および誘導体、オーリスタチンは、抗癌活性および抗真菌活性を有することが示されている、非常に強力な抗有糸分裂物質である。例えば、米国特許第5,663,149号、およびPettitら、Antimicrob.Agents Chemother.42:2961〜2965(1998)を参照されたい。典型的なドラスタチンおよびオーリスタチンには、限定はしないが、ドラスタチン10、オーリスタチンE、オーリスタチンEB(AEB)、オーリスタチンEFP(AEFP)、MMAD(モノメチルオーリスタチンDまたはモノメチルドラスタチン10)、MMAF(モノメチルオーリスタチンFまたはN−メチルバリン−バリン−ドライソロイイン−ドラプロイン−フェニルアラニン)、MMAE(モノメチルオーリスタチンEまたはN−メチルバリン−バリン−ドライソロイイン−ドラプロイン−ノルエフェドリン)、5−ベンゾイル吉草酸−AEエステル(AEVB)および他の新規オーリスタチン(例えば、米国特許出願公開第2013/0129753号に記載されているもの)が含まれる。いくつかの実施形態において、オーリスタチンは、下記構造
【0098】
【化1】
を有する0101(2−メチルアラニル−N−[(3R,4S,5S)−3−メトキシ−1−{(2S)−2−[(1R,2R)−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−3−{[(1S)−2−フェニル−1−(1,3−チアゾール−2−イル)エチル]アミノ}プロピル]ピロリジン−1−イル}−5−メチル−1−オキソヘプタン−4−イル]−N−メチル−L−バリンアミド)である。
【0099】
いくつかの実施形態において、オーリスタチンは、下記構造
【0100】
【化2】
を有する3377(N,2−ジメチルアラニル−N−{(1S,2R)−4−{(2S)−2−[(1R,2R)−3−{[(1S)−1−カルボキシル−2−フェニルエチル]アミノ}−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]ピロリジン−1−イル}−2−メトキシ−1−[(1S)−1−メチルプロピル]−4−オキソブチル}−N−メチル−L−バリンアミド)である。
【0101】
他の実施形態において、オーリスタチンは、下記構造
【0102】
【化3】
を有する0131(2−メチル−L−プロリル−N−[(3R,4S,5S)−1−{(2S)−2−[(1R,2R)−3−{[(1S)−1−カルボキシ−2−フェニルエチル]アミノ}−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]ピロリジン−1−イル}−3−メトキシ−5−メチル−1−オキソヘプタン−4−イル]−N−メチル−L−バリンアミド)である。
【0103】
他の実施形態において、オーリスタチンは、下記構造
【0104】
【化4】
を有する0121(2−メチル−L−プロリル−N−[(3R,4S,5S)−1−{(2S)−2−[(1R,2R)−3−{[(2S)−1−メトキシ−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル]アミノ}−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]ピロリジン−1−イル}−3−メトキシ−5−メチル−1−オキソヘプタン−4−イル]−N−メチル−L−バリンアミド)である。
【0105】
カンプトセシンは、酵素トポイソメラーゼIを阻害する細胞傷害性キノリンアルカロイドである。カンプトセシンおよびの誘導体の例としては、限定はしないが、トポテカンおよびイリノテカンならびにそれらの代謝産物、例えば、SN−38が挙げられる。
【0106】
コンブレタスタチンは、腫瘍における血管破壊性を有する天然のフェノールである。典型的なコンブレタスタチンおよびその誘導体には、限定はしないが、コンブレタスタチンA−4(CA−4)およびオンブラブリンが含まれる。
【0107】
デュオカルマイシンは、細胞傷害性能力を有するDNAアルキル化剤である。BogerおよびJohnson、PNAS 92:3642〜3649(1995)を参照されたい。典型的なデュオカルマイシンには、限定はしないが、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンB1、デュオカルマイシンB2、デュオカルマイシンC1、デュオカルマイシンC2、デュオカルマイシンD、デュオカルマイシンSA、およびCC−1065が含まれる。
【0108】
エンジインは、9員環および10員環またはコンジュゲートした三重−二重−三重結合の環状系の存在を特徴とする、1つのクラスの抗腫瘍細菌産物である。典型的なエンジインには、限定はしないが、カリケアマイシン、エスペラマイシンおよびダイネミシンが含まれる。
【0109】
ゲルダナマイシンは、Hsp90(熱ショックタンパク質90)に結合するベンゾキノンアンサマイシン抗生物質であり、抗腫瘍薬として使用されている。典型的なゲルダナマイシンには、限定はしないが、17−AAG(17−N−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン)および17−DMAG(17−ジメチルアミノエチルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン)が含まれる。
【0110】
ヘミアステリンおよびその類似体(例えば、HTI−286)は、チューブリンに結合し、正常な微小管ダイナミクスを破壊し、化学量論量で微小管を脱重合する。
【0111】
マイタンシンまたはその誘導体であるマイタンシノイドは、チューブリンの重合の阻害を介して有糸分裂の間の微小管形成を阻害することによって、細胞増殖を阻害する。Remillardら、Science 189:1002〜1005(1975)を参照されたい。典型的なマイタンシンおよびマイタンシノイドには、限定はしないが、メルタンシン(DM1)およびその誘導体ならびにアンサミトシンが含まれる。
【0112】
ピロロベンゾジアゼピン二量体(PBD)およびインドリノ−ベンゾジアゼピン二量体(IGN)は、二本鎖のDNAに結合する、1つまたは複数のイミン(immine)官能基またはそれらの等価物を含有する抗腫瘍薬である。PBD分子およびIGN分子は、天然産物アントラマイシン(athramycin)をベースとし、配列選択的様式でDNAと相互作用し、プリン−グアニン−プリン配列が好ましい。典型的なPBDおよびその類似体には、限定はしないが、SJG−136が含まれる。
【0113】
スプリセオスタチンおよびプラジエノライドは、スプライシングを阻害しかつスプライセオソーム、SF3bと相互作用する抗腫瘍化合物である。スプリセオスタチンの例としては、限定はしないが、スプリセオスタチンAおよびFR901464が挙げられる。プラジエノライドの例としては、限定はしないが、プラジエノライドB、プラジエノライドDおよびE7107が挙げられる。
【0114】
タキサンは、抗チューブリン物質または有糸分裂阻害物質として作用するジテルペンである。典型的なタキサンには、限定はしないが、パクリタキセル(例えば、TAXOL(登録商標))およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))が含まれる。
【0115】
ツブリシンは、微小管を脱重合して有糸分裂停止を誘発することが示されている、粘液細菌の菌株から分離される天然産物である。典型的なツブリシンには、限定はしないが、ツブリシンA、ツブリシンBおよびツブリシンDが含まれる。
【0116】
ビンカアルカロイド(alkyloid)もまた、抗チューブリン物質である。典型的なビンカアルカロイドには、限定はしないが、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンが含まれる。
【0117】
いくつかの実施形態において、作用物質部分は免疫抑制物質である。免疫抑制物質の例としては、限定はしないが、ガンシクロビル(gancyclovier)、エタネルセプト、タクロリムス、シロリムス、ボクロスポリン、シクロスポリン、ラパマイシン、シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolgate mofetil)、メトトレキセート(methotrextrate)、ならびに糖質コルチコイドならびにその類似体が挙げられる。
【0118】
いくつかの実施形態において、作用物質部分は、イメージング剤(例えば、フルオロフォアまたはキレート剤)、例えば、フルオレセイン、ローダミン、ランタニド蛍光体およびそれらの誘導体である。フルオロフォアの例としては、限定はしないが、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(例えば、5−FITC)、フルオレセインアミダイト(FAM)(例えば、5−FAM)、エオシン、カルボキシフルオレセイン、エリスロシン、Alexa Fluor(登録商標)(例えば、Alexa 350、405、430、488、500、514、532、546、555、568、594、610、633、647、660、680、700または750)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)(例えば、5−TAMRA)、テトラメチルローダミン(TMR)およびスルホローダミン(SR)(例えば、SR101)が挙げられる。キレート剤の例としては、限定はしないが、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N’’’−四酢酸(DOTA)、1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸(NOTA)、1,4,7−トリアザシクロノナン、1−グルタル酸−4,7−酢酸(NODAGA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)および1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸)(BAPTA)が挙げられる。
【0119】
いくつかの実施形態において、作用物質部分はポリペプチドである。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、抗体、例えば、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体またはマウスモノクローナル抗体である。
【0120】
いくつかの実施形態において、作用物質部分は、毒素ポリペプチド(または毒素タンパク質)である。毒素ポリペプチドの例としては、限定はしないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖、リジンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテセン、阻害剤シスチンノット(ICK)ペプチド(例えば、セラトトキシン)、およびコノトキシン(例えば、KIIIAまたはSmIIIa)が挙げられる。
【0121】
いくつかの実施形態において、治療用放射性同位体または他の標識を、キレート剤を有するアミンドナー物質へのポリペプチド(例えば、Fc含有またはFab含有ポリペプチド)のコンジュゲーションのための作用物質部分内に(例えば、キレート剤への結合によって)組み込むことができる。放射性同位体または他の標識の例としては、限定はしないが、
3H、
14C、
15N、
35S、
18F、
32P、
33P、
64Cu、
68Ga、
89Zr、
90Y、
99Tc、
123I、
124I、
125I、
131I、
111In、
131In、
153Sm、
186Re、
188Re、
211At、
212Biおよび
153Pbが挙げられる。
【0122】
いくつかの実施形態において、作用物質部分は、生体適合性ポリマーである。ポリペプチドは、ポリペプチドの生物学的特性を向上させるように、例えば、血清の半減期および生物活性を増大させるように、ならびに/またはインビボでの半減期を延長させるように、アシルドナーグルタミン含有タグを介して生体適合性ポリマーにコンジュゲートし得る。生体適合性ポリマーの例としては、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはその誘導体および両性イオン含有生体適合性ポリマー(例えば、ホスホリルコリン含有ポリマー)が挙げられる。
【0123】
いくつかの実施形態において、アミンドナー物質(X−Y−Z)は、
【0124】
【化5】
であり、式中、Xは、NH
2であり(すなわち、CH
2−CH
2−CO−NH−としてグルタミンと共有結合を形成する)、mは0から20であり、nは1から8であり、pは0から3であり、qは0または1であり、アミノ酸は、任意の従来のまたは非従来のアミノ酸であり、Zは、細胞傷害物質またはイメージング剤である。
【0125】
従来のアミノ酸または天然アミノ酸は、共通の側鎖特性に基づいていくつかの群に分けられる:(1)非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、(2)電荷を有さない極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、(3)酸性(負に荷電している):Asp、Glu、(4)塩基性(正に荷電している):Lys、Arg、および(5)鎖の方向に影響する残基:Gly、Pro、および(6)芳香族性:Trp、Tyr、Phe、His。従来のアミノ酸には、LまたはDの立体化学が含まれる。
【0126】
非従来のアミノ酸は、非天然アミノ酸である。非従来のアミノ酸の例としては、限定はしないが、アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、アミノ酪酸、ピペリジン酸、アミノカプロン酸、アミノヘプタン酸、アミノイソ酪酸、アミノピメリン酸、シトルリン、ジアミノ酪酸、デスモシン、ジアミノピメリン酸、ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン(ethylaspargine)、ヒドロキシリジン(hyroxylysine)、アロ−ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、サルコシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン(orithine)、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン、および他の類似のアミノ酸およびアミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態において、アミンドナー物質は、Alexa 488カダベリン、5−FITCカダベリン、Alexa 647カダベリン、Alexa 350カダベリン、5−TAMRAカダベリン、5−FAMカダベリン、SR101カダベリン、5,6−TAMRAカダベリン、5−FAMリジン、Ac−Lys−Gly−MMAD、アミノ−PEG3−C2−MMAD、アミノ−PEG6−C2−MMAD、アミノ−PEG3−C2−アミノ−ノナノイル−MMAD、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAD、Ac−Lys−β−Ala−MMAD、アミノカプロイル−MMAD、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC−MMAD、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−MMAD、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−0101、アミノ−PEG3−C2−Val−Cit−PABC−MMAD、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC−0101、アミノカプロイル−MMAE、アミノ−PEG3−C2−MMAE、アミノ−PEG2−C2−MMAE、アミノカプロイル−MMAF、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAE、アミノ−PEG6−C2−Val−Cit−PABC−MMAF、アミノカプロイル−Val−Cit−PABC−MMAF、アミノ−PEG2−C2−MMAF、アミノ−PEG3−C2−MMAF、プトレシニル−ゲルダナマイシン、Ac−Lys−プトレシニル−ゲルダナマイシン、アミノカプロイル−3377、アミノカプロイル−0131、アミノ−PEG6−C2−0131、アミノ−PEG6−C2−3377、アミノカプロイル−0121、アミノ−PEG6−C2−0121、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC−MMAD、[(3R,5R)−1−{3−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]プロパノイル}ピペリジン−3,5−ジイル]ビス−Val−Cit−PABC−MMAEおよび2−アミノエトキシ−PEG6−NODAGA(または2,2’−(7−(1−アミノ−28−カルボキシ−25−オキソ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサ−24−アザオクタコサン−28−イル)−1,4,7−トリアゾナン−1,4−ジイル)二酢酸)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、アシルドナーグルタミン含有タグは、アミノ酸配列LLQGPA(配列番号4)、LLQGP(配列番号5)、LLQGPP(配列番号11)またはGGLLQGPP(配列番号13)を含み、アミンドナー物質は、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−MMAD、Ac−Lys−Val−Cit−PABC−0101またはアミノ−PEG6−C2−MMADである。アミンドナー物質の典型的な構造を、表1に列挙する。
【0133】
別の態様において、本発明は、式:(毒素ポリペプチド)−T−A[式中、Tは、特異的部位で操作されたアシルドナーグルタミン含有タグであり、Aはアミンドナー物質である]を含む、操作された毒素ポリペプチドコンジュゲートであって、アミンドナー物質は、反応性アミンを含む生体適合性ポリマーであり、生体適合性ポリマーは、毒素ポリペプチドのカルボキシル末端、アミノ末端、または別の部位のどこかでアシルドナーグルタミン含有タグに部位特異的にコンジュゲートしており、アシルドナーグルタミン含有タグは、XがAもしくはPであるアミノ酸配列LLQGPX(配列番号14)またはGGLLQGPP(配列番号13)を含む、操作された毒素ポリペプチドコンジュゲートを提供する。例えば、毒素ポリペプチドは、毒素ポリペプチドの生物学的特性を向上させるように、例えば、血清の半減期および生物活性を増大させるように、ならびに/またはインビボでの半減期を延長させるように、本明細書中に記載するアシルドナーグルタミン含有タグを介して生体適合性ポリマーに部位特異的にコンジュゲートし得る。いくつかの実施形態において、毒素ポリペプチドは、セラトトキシンまたはコノトキシン(例えば、KIIIAまたはSmIIIa)である。いくつかの実施形態において、生体適合性ポリマーは、水溶性ポリマー、例えば、PEG誘導体または両性イオン含有生体適合性ポリマーである。
【0134】
操作されたポリペプチドコンジュゲートを作製するための方法
本明細書中に記載する操作されたポリペプチドコンジュゲートを作製するための方法もまた、本発明において提供される。一態様において、本発明は、式:ポリペプチド−T−A[式中、Tは、特異的部位で操作されたアシルドナーグルタミン含有タグであり、Aはアミンドナー物質である]を含む、操作されたポリペプチドコンジュゲートであって、アミンドナー物質は、ポリペプチドのカルボキシル末端、アミノ末端、または別の部位のどこかでアシルドナーグルタミン含有タグに部位特異的にコンジュゲートしており、アシルドナーグルタミン含有タグは、XがAもしくはPであるアミノ酸配列LLQGPX(配列番号14)またはGGLLQGPP(配列番号13)を含む、操作されたポリペプチドコンジュゲートを調製するための方法であって、a)ポリペプチドおよびアシルドナーグルタミン含有タグを含む操作されたポリペプチド−T分子を提供するステップと、b)アミンドナー物質をトランスグルタミナーゼの存在下において、操作されたポリペプチド−T分子と接触させるステップと、c)操作されたポリペプチド−Tをアミンドナー物質に共有結合によって連結させて、操作されたポリペプチドコンジュゲートを形成するステップとを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、Fc含有もしくはFab含有ポリペプチド、または抗体である。いくつかの実施形態において、操作されたポリペプチド−T分子は、CHO細胞において発現される。
【0135】
別の態様において、本発明は、式:(Fc含有ポリペプチド)−T−A[式中、Tは、特異的部位で操作されたアシルドナーグルタミン含有タグであり、Aはアミンドナー物質である]を含む、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートであって、アミンドナー物質は、Fc含有ポリペプチドのカルボキシル末端、アミノ末端、または別の部位のどこかでアシルドナーグルタミン含有タグに部位特異的にコンジュゲートしており、アシルドナーグルタミン含有タグは、Xが任意のアミノ酸であるアミノ酸配列XXQX(配列番号35)(例えば、Xは、同一のまたは異なるアミノ酸であり得る)を含み、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートは、295位におけるグルタミンからアスパラギンへのアミノ酸置換(例えば、Q295N、EUナンバリングスキーム)を含む、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートを調製するための方法であって、a)Fc含有ポリペプチドおよびアシルドナーグルタミン含有タグを含む操作された(Fc含有ポリペプチド)−T分子を提供するステップと、b)アミンドナー物質をトランスグルタミナーゼの存在下において、操作された(Fc含有ポリペプチド)−T分子と接触させるステップと、c)操作された(Fc含有ポリペプチド)−Tをアミンドナー物質に共有結合によって連結させて、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートを形成するステップとを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、操作された(Fc含有ポリペプチド)−Tは、CHO細胞において発現される。いくつかの実施形態において、アシルドナーグルタミン含有タグは、LLQGG(配列番号16)、LLQG(配列番号17)、LSLSQG(配列番号18)、GGGLLQGG(配列番号19)、GLLQG(配列番号20)、LLQ、GSPLAQSHGG(配列番号21)、GLLQGGG(配列番号22)、GLLQGG(配列番号23)、GLLQ(配列番号24)、LLQLLQGA(配列番号25)、LLQGA(配列番号26)、LLQYQGA(配列番号27)、LLQGSG(配列番号28)、LLQYQG(配列番号29)、LLQLLQG(配列番号30)、SLLQG(配列番号31)、LLQLQ(配列番号32)、LLQLLQ(配列番号33)、LLQGR(配列番号34)、LLQGPP(配列番号11)、LLQGPA(配列番号4)、GGLLQGPP(配列番号13)、GGLLQGA(配列番号12)、LLQGA(配列番号1)、LLQGPGK(配列番号2)、LLQGPG(配列番号3)、LLQGP(配列番号5)、LLQP(配列番号6)、LLQPGK(配列番号7)、LLQAPGK(配列番号8)、LLQGAPG(配列番号9)、およびLLQGAP(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、アシルドナーグルタミン含有タグは、アミノ酸配列LLQGPA(配列番号4)、LLQGP(配列番号5)、LLQGPP(配列番号11)、またはGGLLQGPP(配列番号13)を含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載する方法を用いて調製された操作されたポリペプチドコンジュゲートは、少なくとも約51%のコンジュゲーション効率を有する。いくつかの実施形態において、操作されたポリペプチドコンジュゲートは、少なくとも約51%〜60%、61%〜70%、71%〜80%、81%〜90%または91%〜100%のいずれかのコンジュゲーション効率を有する。いくつかの実施形態において、操作されたポリペプチドコンジュゲートは、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%または100%のいずれかのコンジュゲーション効率を有する。例えば、Q295N
突然変異(EUナンバリングスキーム)を含む操作されたポリペプチド(例えば、Fc含有ポリペプチド)は、少なくとも約99.8%のコンジュゲーション効率を有する。
【0137】
いくつかの実施形態において、接触されるアミンドナー物質と接触される操作されたポリペプチド−T分子との間の濃度比率は、約2:1〜約800:1である。例えば、トランスグルタミナーゼによって触媒されるコンジュゲーション反応のためにロードされるかまたは用いられる、アミンドナー物質(例えば、細胞傷害性薬剤)とアシルドナーグルタミン含有タグに結合した操作されたポリペプチドとの間の濃度比率は、約20:1であり得る。いくつかの実施形態において、接触されるアミンドナー物質と接触される操作されたポリペプチド−T分子との間の濃度比率は、約2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1、または800:1のいずれかである。
【0138】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド(例えば、抗体)が特異的部位(例えば、C末端)においてアシルドナーグルタミン含有タグを介してアミンドナー物質とコンジュゲートしている場合、抗体−薬剤コンジュゲートはより安定である(例えば、インビボでの半減期がさらに長い)。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載する操作されたポリペプチドコンジュゲートは、インビボで少なくとも約1日後に、対象(例えば、哺乳動物)内に少なくとも約50%で存在する。例えば、操作されたポリペプチドコンジュゲートは、インビボで少なくとも約2時間、2〜6時間、6〜12時間、12〜18時間、18〜24時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、または2週間のいずれかの後に、対象内に少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%のいずれかで存在する。
【0139】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法はさらに、精製ステップを含む。本明細書において記載される操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートは、様々な精製方法、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、透析、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(例えば、HICでの分画)、硫酸アンモニウム沈殿、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール誘導体沈殿、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、ゲル濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、および弱分割クロマトグラフィーなどを用いて精製することができる。
【0140】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの精製ステップは、アフィニティークロマトグラフィー方法のステップを含む。タンパク質Aリガンド(合成の、組換えの、または天然の)を、本明細書において記載される操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートをアフィニティー精製するために用いることができる。合成のまたは組換えのタンパク質Aリガンドは、GE Healthcare(Piscataway、NJ)、Pierce(Rockford、IL)、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)、またはApplied Biosystems(Foster City、CA)から商業的に購入することができ、天然タンパク質Aリガンド(例えば、MABSELECT(商標)、PROSEP(商標)Va、およびPROSEP(商標)Ultra Plus)は、GE Healthcare(Piscataway、NJ)またはMillipore(Billerica、MA)から商業的に購入することができる。
【0141】
いくつかの実施形態において、精製ステップから生じる、精製された操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲート、精製された操作されたFab含有ポリペプチドコンジュゲート、または精製された毒素ポリペプチドコンジュゲートは、非常に純度が高く、すなわち、少なくとも約70%〜75%、75%〜80%、80%〜85%、85%〜90%、90%〜95%、95%〜98%、または99%のいずれかの純度である。例えば、精製された操作されたポリペプチドコンジュゲートは、約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のいずれかの純度である。
【0142】
操作されたポリペプチドコンジュゲートを使用する方法
本発明の操作されたポリペプチドコンジュゲートは、限定はしないが、治療的処置法および診断的処置方法を含む様々な用途において有用である。
【0143】
一態様において、本発明は、対象において癌を治療するための方法を提供する。したがって、いくつかの実施形態において、それを必要としている対象において癌を治療する方法であって、本明細書中に記載する操作されたポリペプチドコンジュゲートを含む組成物(例えば、医薬組成物)の有効量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。本明細書中において使用する癌には、限定はしないが、固体癌(例えば、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、絨毛癌、結腸癌、食道癌、胃癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌および皮膚癌)、および液性癌(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリーセル白血病(HCL)、T細胞性前リンパ性白血病(T−PLL)、大顆粒リンパ球性白血病および成人T細胞白血病)が含まれる。
【0144】
いくつかの実施形態において、それを必要としている対象において腫瘍の成長または進行を阻害する方法であって、本明細書中に記載する操作されたポリペプチドコンジュゲートを含む組成物の有効量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。他の実施形態において、それを必要としている対象において癌細胞または腫瘍(例えば、固形腫瘍または液状腫瘍)の転移を阻害する方法であって、本明細書中に記載する操作されたポリペプチドコンジュゲートを含む組成物の有効量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。他の実施形態において、それを必要としている対象において腫瘍退縮を誘発する方法であって、本明細書中に記載する操作されたポリペプチドコンジュゲートを含む組成物の有効量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0145】
別の態様において、インビボまたはインビトロで癌関連タンパク質(例えば、Trop−2、BRCA1、BRCA2、HER2、VEGF、CD20、CD25、EFGR、5T4、CD22など)と関連する状態を検出、診断および/または監視する方法が提供される。したがって、いくつかの実施形態において、癌を患っている疑いがある対象において癌を診断する方法であって、a)対象の試料を本明細書中に記載する操作されたポリペプチドコンジュゲートと、操作されたポリペプチドコンジュゲートと癌関連タンパク質との結合をもたらす条件下で接触させるステップと、b)癌関連タンパク質への操作されたポリペプチドコンジュゲートの結合を測定するステップとを含む方法が提供される。
【0146】
本明細書中に記載する操作されたポリペプチドコンジュゲートの作用物質部分は、検出可能な部分、例えば、イメージング剤および酵素−基質標識であり得る。本明細書中に記載する操作されたポリペプチドコンジュゲートはまた、インビボ診断アッセイ、例えば、インビボイメージング(例えば、PETまたはSPECT)または染色試薬に使用し得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載する方法は、追加の治療法形態で対象を治療するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、追加の治療法形態は、限定はしないが、化学療法、放射線、手術、ホルモン療法および/または追加の免疫療法を含む追加の抗癌療法である。
【0148】
いくつかの実施形態において、追加の治療法形態は、本明細書中に記載する操作されたポリペプチドコンジュゲートに加えて、1種または複数の治療薬を投与するステップを含む。治療薬には、限定はしないが、抗体−薬剤コンジュゲート(例えば、ブレンツキシマブベドチン(ADCETRIS(登録商標))およびado−トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(登録商標)))、抗体(例えば、抗VEGF抗体、抗HER2抗体、抗CD25抗体および/または抗CD20抗体)、血管新生阻害薬、細胞傷害物質(例えば、ドセタキセル、シスプラチン、ドキソルビシン、マイトマイシン、タモキシフェンまたはフルオロウラシル)、および抗炎症薬(例えば、プレドニゾンおよびプロゲステロン)が含まれる。
【0149】
医薬組成物
本発明はまた、本明細書中に記載するより操作されたポリペプチドコンジュゲートを、薬学的に許容できる賦形剤または担体中に含む医薬組成物を提供する。操作されたポリペプチドコンジュゲートは、単独で、または本発明の1種もしくは複数の他の操作されたポリペプチドコンジュゲートと組み合わせて、または1種もしくは複数の他の薬剤と組み合わせて(またはその任意の組み合わせとして)投与することができる。したがって、本発明の医薬組成物、方法および使用はまた、以下に詳述されるように、他の活性物質との組み合わせ(同時投与)の実施形態を包含する。
【0150】
本明細書において用いられる場合、用語「同時投与」、「同時投与された」、または「と組み合わせて」は、(i)本明細書において開示される操作されたポリペプチドコンジュゲートおよび治療物質(1つまたは複数)が、このような成分を治療を必要としている患者にほぼ同時に放出する単回投与形態に共に製剤されている場合の、前記成分の組み合わせの、前記患者への同時投与、(ii)本明細書において開示される操作されたポリペプチドコンジュゲートおよび治療物質(1つまたは複数)が、治療を必要としている患者によってほぼ同時に摂取される(その際、前記成分が前記患者にほぼ同時に放出される)個別の投与形態に、互いに分かれて製剤されている場合の、前記成分のこのような組み合わせの、前記患者へのほぼ同時の投与、(iii)本明細書において開示される操作されたポリペプチドコンジュゲートおよび治療物質(1つまたは複数)が、各投与間の十分な時間間隔を伴って治療を必要としている患者によって連続的な時点で摂取される(その際、前記成分が前記患者に実質的に異なる時点で放出される)個別の投与形態に、互いに分かれて製剤されている場合の、前記成分のこのような組み合わせの、前記患者への連続投与、ならびに(iv)本明細書において開示される操作されたポリペプチドコンジュゲートおよび治療物質(1つまたは複数)が、制御された様式で前記成分を放出する(その際、これらの成分が、治療を必要としている患者に同時におよび/または異なる時点で同時放出、連続放出、および/またはオーバーラップ放出される)単回投与量に、共に製剤されている場合の、前記成分のこのような組み合わせの、前記患者への連続投与を意味するものであり、これを指すが、ここで、各部分は、同一のまたは異なる経路のいずれかによって投与され得る。
【0151】
全体として、本明細書において開示される操作されたポリペプチドコンジュゲートは、1つまたは複数の薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせた製剤として投与されることに適している。用語「賦形剤」は、本発明の化合物(1つまたは複数)以外の任意の成分を記載するために本明細書において用いられる。賦形剤(1つまたは複数)の選択は、特定の投与態様、溶解度および安定性に対する賦形剤の影響、ならびに投与形態の性質などの因子に大きく依存する。本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容できる賦形剤」には、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容できる賦形剤のいくつかの例として、水、生理食塩水、リン酸緩衝溶液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびその組み合わせがある。いくつかの実施形態において、限定はしないが、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、または塩化ナトリウムを含む等張剤が、医薬組成物内に含まれる。薬学的に許容できる物質のさらなる例としては、限定はしないが、抗体の保存期間または有効性を増強させる、湿潤剤または微量の補助物質、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤、または緩衝液が挙げられる。
【0152】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される操作されたポリペプチドコンジュゲートは、例えばPCT公開WO98/52976およびWO00/34317において記載されているような既知の技術を用いて、対象への投与の際に免疫原性を低減させるために脱免疫化することができる。
【0153】
本発明の医薬組成物およびその調製方法は、当業者に容易に明らかとなる。このような組成物およびその調製方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第22版(Mack Publishing Company、2012)において見ることができる。医薬組成物は、好ましくは、GMP条件下で製造される。
【0154】
本発明の医薬組成物は、大量に、1つの単一単位用量で、または複数の単一単位用量で、調製、包装、または販売することができる。本明細書において用いられる場合、「単位用量」は、所定の量の活性成分を含む、医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、通常、対象に投与される活性成分の投与量、またはこのような投与量の都合の良い画分、例えば、このような投与量の2分の1または3分の1に等しい。当技術分野において認められている、ペプチド、タンパク質、または抗体を投与するための任意の方法を、本明細書において開示される操作されたポリペプチドコンジュゲートに適切に採用することができる。
【0155】
本発明の医薬組成物は、典型的には、非経口投与に適している。医薬組成物の非経口投与には、対象組織の物理的破壊および組織内の破壊を介する医薬組成物の投与によって特徴付けされる、したがって通常は、血流内、筋肉内、または内臓内への直接的な投与をもたらす、任意の投与経路が含まれる。例えば、非経口投与には、限定はしないが、組成物の注射、外科的切開を介する組成物の適用、組織を貫通する非外科的な創傷を介する組成物の適用などによる、医薬組成物の投与が含まれる。特に、非経口投与には、限定はしないが、皮下の、腹腔内の、筋肉内の、胸骨内の、静脈内の、動脈内の、髄腔内の、脳室内の、尿道内の、頭蓋内の、滑液嚢内の注射または注入、および腎臓透析注入技術が含まれると考えられる。いくつかの実施形態において、非経口投与は、静脈内経路または皮下経路である。
【0156】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、典型的には、通常、滅菌水または無菌の等張生理食塩水などの薬学的に許容できる担体と組み合わされた活性成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で、調製、包装、または販売することができる。注射可能な製剤は、単位投与形態で、例えばアンプル、または防腐剤を含有する多回用量容器で、調製、包装、または販売することができる。非経口投与のための製剤には、限定はしないが、懸濁液、溶液、油性媒体または水性媒体内のエマルジョン、ペーストなどが含まれる。このような製剤はさらに、限定はしないが懸濁剤、安定剤、または分散剤を含む、1つまたは複数のさらなる成分を含み得る。非経口投与のための製剤の1つの実施形態において、活性成分は、適切な媒体(例えば、発熱性物質を有さない滅菌水)で再構成して、その後、再構成された組成物を非経口投与するために、乾燥(すなわち、粉末または粒状)形態で提供される。非経口製剤にはまた、塩、炭水化物、および緩衝剤(好ましくは3から9のpHまで)などの賦形剤を含有し得る水性溶液が含まれるが、一部の適用では、非経口製剤は、無菌の非水性溶液として、または発熱性物質を有さない滅菌水などの適切な媒体と組み合わせて用いるための乾燥形態として、さらに適切に製剤することができる。典型的な非経口投与形態には、無菌の水溶液、例えば水性プロピレングリコール溶液またはデキストロース溶液内の、溶液または懸濁液が含まれる。このような投与形態は、必要に応じて、適切に緩衝することができる。有用な他の非経口投与可能な製剤には、微晶質形態のまたはリポソーム調製物内の活性成分を含むものが含まれる。非経口投与のための製剤は、即時放出および/または調節放出となるように製剤することができる。調節放出製剤には、制御放出製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、標的放出製剤、およびプログラム放出製剤が含まれる。例えば、1つの態様において、無菌の注射可能な溶液は、所要の量の操作されたFc含有ポリペプチド、例えば抗体−薬剤コンジュゲートまたは二重特異的抗体を、上記に列挙された成分の1つまたは組み合わせを有する適切な溶媒内に組み込み、必要であればその後、濾過滅菌することによって、調製することができる。通常、分散は、活性化合物を、塩基性分散媒および上記に列挙されたもののうち所要の他の成分を含有する無菌媒体内に組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末のケースでは、好ましい調製方法は、活性成分の粉末と、先に滅菌濾過されたその溶液からの任意のさらなる所望の成分とをもたらす、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤を用いることによって、分散のケースでは所要の粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を用いることによって、維持することができる。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物内に含めることによってもたらされ得る。
【0157】
投与レジメンは、最適な所望の応答をもたらすように調節することができる。例えば、単一のボーラスを投与することができるか、複数の分割用量を経時的に投与することができるか、または用量を、急迫的な治療的状況によって指示されるように比例的に低減もしくは増大させることができる。投与の容易性および投与量の均一性のために、非経口組成物を投与単位形態に製剤することが、特に有利である。投与単位形態は、本明細書において用いられる場合、治療される患者/対象のための単位投与量として適した物理的に個別の単位を指し、各単位は、所要の薬学的担体と組み合わされた、所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態の仕様は、通常、(a)作用物質部分(例えば、細胞傷害物質などの低分子)の固有の特徴および達成されるべき特定の治療的効果または予防的効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためのこのような活性化合物の配合の当技術分野に特有の限定によって、およびこれらに直接的に応じて、決定される。
【0158】
したがって、当業者には、本明細書において提供される開示に基づいて、用量および投与レジメンが治療分野において周知の方法に従って調節されることが理解されよう。すなわち、最大耐用量を容易に確定することができ、検出可能な治療的利益を患者にもたらす有効量もまた、検出可能な治療的利益を患者にもたらすための各作用物質を投与するための時間的要件が可能であるように、確定することができる。したがって、特定の用量および投与レジメンが本明細書において例示されるが、これらの例は、本発明の実施において患者に提供され得る用量および投与レジメンを限定するものでは全くない。
【0159】
投与量値が、軽減されるべき症状のタイプおよび重症度で変化し得、単回用量または複数回用量を含み得ることに留意されたい。さらに、任意の特定の対象について、具体的な投与レジメンが、個体の要求および組成物を投与するかまたは投与を監督する人の専門的な判断に従って経時的に調節されるべきであること、ならびに本明細書において説明される投与量範囲は典型的なものにすぎず、本発明の組成物の範囲または実施を限定することを意図したものではないことも理解されたい。さらに、本発明の組成物を用いる投与レジメンは、疾患のタイプ、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、症状の重症度、投与経路、および採用される特定の抗体を含む、様々な因子に基づき得る。したがって、投与レジメンは広く変化し得るが、標準的な方法を用いて通常通りに決定することができる。例えば、用量は、毒性効果などの臨床効果および/または実験値を含み得る薬物動態学的または薬力学的なパラメーターに基づいて調節することができる。したがって、本発明は、当業者によって決定される、患者内での用量増加を包含する。適切な投与量およびレジメンの決定は、関連する分野において周知であり、本明細書において開示される教示を提供された当業者には、包含されることが理解されよう。
【0160】
ヒト対象への投与では、本明細書において開示される操作されたポリペプチドコンジュゲートの毎月用量の全量は、典型的には、当然のことながら投与態様に応じて、患者当たり約0.01mgから約1200mgの範囲である。例えば、静脈内の毎月用量は、患者当たり約1から約1000mgを要し得る。毎月用量の全量は、単回用量または分割用量で投与することができ、医師の指示で、本明細書によって示される典型的な範囲から外れてもよい。
【0161】
本明細書において開示される操作されたポリペプチドコンジュゲート、例えば、Fc含有ポリペプチドコンジュゲート、Fab含有ポリペプチドコンジュゲート、抗体コンジュゲート、または毒素ポリペプチドコンジュゲートの治療上または予防上有効な量の典型的な非限定的な範囲は、1月で患者当たり約0.01から約1000mgである。一部の実施形態において、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートは、1月で患者当たり約1から約200または約1から約150mgで投与することができる。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0162】
キット
本発明はまた、上記の障害の治療において用いるためのキット(または製品)を提供する。本発明のキットは、精製された操作されたポリペプチドコンジュゲートおよび疾患の治療にコンジュゲートを用いるための指示を含む、1つまたは複数の容器を含む。例えば、指示は、癌(例えば、結腸癌、食道癌、胃癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、または膵臓癌)などの疾患を治療するための操作されたポリペプチドコンジュゲートの投与についての記載を含む。キットはさらに、個体が疾患および疾患の段階を有しているかの同定に基づく、治療に適切な個体の選択についての記載を含み得る。
【0163】
操作されたポリペプチドコンジュゲートの使用に関する指示は、通常、目的の治療のための投与量、投与スケジュール、および投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、大量包装(例えば、多用量包装)、または小単位用量であり得る。本発明のキットにおいて提供される指示は、典型的には、ラベルまたは包装挿入物(例えば、キット内に含まれる紙片)上に書き込まれた指示であるが、機械で読み取り可能な指示(例えば、磁気ディスクまたは光学式記憶ディスク上に記録された指示)もまた許容できる。
【0164】
本発明のキットは、適切な包装内にある。適切な包装には、限定はしないが、バイアル、ボトル、瓶、柔軟な包装(例えば、密封されたマイラーまたはプラスチック袋)などが含まれる。特定の装置、例えば吸入器、経鼻投与装置(例えば、アトマイザー)、またはミニポンプなどの注入装置と組み合わせて用いるための包装もまた検討される。キットは、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内の溶液袋、または皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。容器はまた、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内の溶液袋、または皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。組成物内の少なくとも1つの活性物質は、本明細書において記載される操作されたポリペプチドコンジュゲートである。容器はさらに、第2の薬学的に活性な作用物質を含み得る。
【0165】
キットは、緩衝液および説明情報などのさらなる成分を提供してもよい。通常、キットは、容器と、容器上のまたは容器と組み合わされたラベルまたは包装挿入物(1つまたは複数)とを含む。
【実施例】
【0166】
本明細書において記載される実施例および実施形態は例示的なものにすぎず、これらに照らした様々な修正または変更は当業者に示唆され、本願の趣旨および範囲に含まれる。
【0167】
(実施例1)
CHO発現の間のC末端重鎖TG6タグのタンパク質分解
アシルドナーグルタミン含有タグ(例えば、TG6タグ(LLQGA(配列番号1))の最後の2つのアミノ酸(−GA)のクリッピングは、TG6タグが抗体重鎖(例えば、本明細書中に記載する実施例の全てにおいて用いられる抗Trop2抗体であるmAb1)のC末端に位置している場合に観察された。試験対象の発現条件下では、TG6タグの10〜90%がタンパク質分解されたことが判明した。このC末端クリッピングはCHO細胞に特異的であると思われ、それは、このクリッピングが、HEK293細胞におけるAb−TG6の発現の間には観察されなかったためである。−GAがタグから失われた場合、抗体への所望のペイロード(例えば、薬剤または作用物質部分)のコンジュゲーションは、抗体のC末端にあるクリッピングされたTG6タグ(すなわち、LLQ)では観察されなかった。
【0168】
抗体(例えば、mAb1)のC末端の端にあるアシルドナーグルタミン含有タグの新たなセットを、観察されたクリッピングを防ぐために生成した。TG(トランスグルタミナーゼ)タグTG7〜TG17(配列番号2〜11、表1)を、タンパク質分解を最少化するためのプロリンを含有するように設計した。新たに設計されたタグをまずHEK293細胞において発現させ、参照により全体として本明細書中に組み込まれているStropら、Chem Biol.、20(2):161〜7(2013)によって記載されているように、HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)および質量分析によって、均質性およびコンジュゲーション能力について試験した。TG6とは対照的に、反応性グルタミンに対するC末端でプロリンを含有するTGタグ(例えば、TG11およびTG12)は、リンカーおよび所望のペイロード(例えば、AcLys−VC−PABC−0101(AcLys−VC−PABCは、アセチル−リジン−バリン−シトルリン−p−アミノベンジルオキシカルボニルであり、0101は、2−メチルアラニル−N−[(3R,4S,5S)−3−メトキシ−1−{(2S)−2−[(1R,2R)−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−3−{[(1S)−2−フェニル−1−(1,3−チアゾール−2−イル)エチル]アミノ}プロピル]ピロリジン−1−イル}−5−メチル−1−オキソヘプタン−4−イル]−N−メチル−L−バリンアミド)である)へのコンジュゲーションを示さなかった。残りのTGタグは、高い効率でコンジュゲートした。ある程度のC末端不均質性が、TG7、TG8、およびTG12〜15で観察された。
【0169】
HEK293において均質であると思われたTGタグTG9、TG10、およびTG17をCHO細胞において発現させて、C末端クリッピングが生じるかどうかを試験した。CHO細胞におけるTG10(−LLQGP(配列番号5)で終わるものであった)の発現は、−GPの11%のクリッピングを示した。残りの2つのタグ(TG9およびTG17)は、約33.6%のクリッピングがTG6タグにおいて観察されたものと同一の条件下で、いかなるC末端クリッピングも示さなかった。
図1A〜1D。したがって、これらの結果は、TG9およびTG17タグが、CHO細胞において発現された場合の抗体重鎖のC末端でのタンパク質分解を防ぐことを実証している。
【0170】
【表2】
【0171】
(実施例2)
CHO発現の間のC末端軽鎖LCQ04タグのタンパク質分解
LCQ04タグ(GGLLQGA(配列番号12))の最後の2つのアミノ酸(−GA)のクリッピングもまた、LCQ04タグが、K222R突然変異(EUナンバリングスキーム)を有する抗体軽鎖のC末端に位置している場合に観察されたが、その程度は、抗体重鎖におけるよりもかなり低かった。このC末端クリッピングはCHO細胞に特異的であると思われ、それは、このクリッピングが、HEK293の発現の間には観察されなかったためである。試験対象の発現条件下では、LCQ04タグの約5%がタンパク質分解されたことが判明した。
【0172】
上記のTG17と同様に2つのプロリンを有するLCQ05タグ(GGLLQGPP(配列番号13))を生成した。LCQ05 TGタグは、CHO細胞およびHEK293細胞の両方において発現した場合に均質であると思われ、LCQ04と同等のレベルで所望のリンカーペイロード(例えば、AcLys−VC−PABC−0101)にコンジュゲートし得た。
図2A〜2B。したがって、これらの結果は、LCQ05タグがCHO細胞において発現された場合の抗体軽鎖のC末端でのタンパク質分解を防ぐことを実証している。
【0173】
(実施例3)
TG6およびTG17タグの生物物理学性および有効性の比較
新規なアシルドナーグルタミン含有タグを、コンジュゲートしていないおよびコンジュゲートしているTG6タグおよびTG17タグの生物物理学的特性を比較することによって、有効性について確認した。より詳細には、分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、類似の低レベルの凝集体を示し、コンジュゲーション効率は、同一の条件下で同等であった。
図3A〜3B。SECにおいて、約15ugの試料(抗体−TG6および抗体−TG17、または抗体−TG6−AcLys−VC−PABC−0101および抗体−TG6−AcLys−VC−PABC−0101)を、Agilent HP 1100 HPLC(Santa Clara、CA)上のTSKGEL(登録商標)G3000SW(Tosoh Bioscience LLC、King of Prussia、PA)サイズ排除クロマトグラフィーカラムに注入し、移動相(170mMのKPi、210mMのKCl、15%イソプロパノール)で0.5mL/分でランした。試料は、HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)カラムにも適用され、TG6およびTG17タグについて、ならびに質量分析において、類似のDAR(薬剤抗体比率)を示した。
図4A〜4Bおよび5A〜5B。HICでは、0.75Mの硫酸アンモニウム内の20ugの抗体薬剤コンジュゲート(例えば、TG6またはTG17タグを有し、AcLys−VC−PABC−0101にコンジュゲートされた抗体)を、Agilent HP 1100 HPLC(Santa Clara、CA)上のTSKGEL(登録商標)Butyl−NPRカラム(Tosoh Bioscience、King of Prussia、PA)に装填した。移動相緩衝液Aは、pH=7.0の1.5Mの硫酸アンモニウムおよび50mMのリン酸カリウムであり、緩衝液Bは、pH=7.0の50mMのリン酸カリウムおよび20%イソプロパノールであった。ランは、35分の直線勾配0〜100%のBで、0.8mL/分で行った。質量分析(MS)では、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC/MS)分析の前に、抗体−薬剤コンジュゲートを、37℃において非変性条件下でPNGase F(NEB、カタログ番号P0704L)によって終夜脱グリコシル化させた。ADC(500ng)を逆相カラム(Michrom−Bruker、Auburn、CA)に装填した。LS/MS分析を、Orbitrap Velos Pro(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)質量分析計に連結されたAgilent 1100シリーズHPLCシステムを用いて行った。得られた質量スペクトルを、ProMassソフトウェア(Thermo Fisher Scientific)を用いてデコンヴォルーション(deconvolute)した。結果は、新規なグルタミンタグ(例えば、TG17)が、TG6タグと類似の生物物理学的特性を有することを実証している。
【0174】
BxPC3およびOVCAR3細胞系におけるインビトロでの有効性
抗体コンジュゲート(抗体−TG6−AcLys−VC−PABC−0101または抗体−TG17−AcLys−VC−PABC−0101)の両方をまた、細胞傷害性について、BxPC3およびOVCAR3細胞系に対するインビトロでの有効性について試験し、得られたIC50値は同等であった。表2および
図6A〜6Bを参照されたい。より詳細には、それぞれ2000および3000細胞/ウェルのBxPC3およびOVCAR3細胞を、100uLの成長培地(無血清DMEM、Cellgro Mediatech、Manassas、VA)内に希釈した。翌日、25uLの5回のADC(無血清DMEM内)を添加した。CelltiterGloアッセイ(Promega、Madison、WI)を、処理の4日後に行った。培地を除去した後、細胞に、1:1希釈された試薬を添加した。プレートを、MSpectraMax M5プレートリーダー(Molecular Devices、Downingtown、PA)で読み取った。
【0175】
【表3】
【0176】
これらの結果は、抗体−TG6−AcLys−VC−PABC−0101および抗体−TG17−AcLys−VC−PABC−0101が、細胞傷害性について、BxPC3およびOVCAR3細胞系において類似のインビトロでの有効性を有することを実証している。
【0177】
Pan0123異種移植モデルにおけるインビボ有効性
抗体コンジュゲートのインビボ有効性の研究を、抗体を発現するPancreatic Pan0123 PDX異種移植腫瘍を用いて行った。腫瘍サイズが少なくとも300mm
3に達するまで、2×2×2mm
3の腫瘍断片を、5〜8週齢のSCID(重症複合免疫不全)マウスに皮下移植した。対照抗体コンジュゲートおよびTrop−2標的化抗体コンジュゲート(Ab−TG6−AcLys−VC−PABC−0101およびAb−TG17−AcLys−VC−PABC−0101)を、SCIDマウスに、1.5mg/kgで、尾静脈を介して、単回用量ボーラス注射として投与した。全ての実験動物を、体重の変化について毎週監視した。腫瘍体積を、週に1回、キャリパー装置によって測定し、下記式:腫瘍体積=(長さ×幅
2)/2で計算した。腫瘍体積および体重を、腫瘍移植後80日まで観察した。これらの結果は、TG17タグを有する抗体コンジュゲートが、TG6タグを有する抗体コンジュゲートと比較して類似の活性を有していたことを実証している。
図7A〜7B。
【0178】
薬物動態
PK(薬物動態)を、単回用量のAB−TG6−AcLys−VC−PABC−0101またはAB−TG17−AcLys−VC−PABC−0101(174−2)を5mg/kgでメスラットに注射することによってさらに試験した。
【0179】
動物は、約3か月齢の、12頭の成体Sprague Dawleyメスラットであった(Harlan、Livermore、CA)。PKおよび血漿安定性の実験では、化合物は、尾静脈の側面を介して静脈内投与され、試料は、麻酔された成体ラットの心穿刺を介して得られた最終出血を除いて、適切な時点で、尾静脈の反対側から引き出された。1つのラット群から得られた試料は血清について処理され、一方、別のラット群から得られた試料は血漿について処理された。両試料タイプを、分析まで−80℃で凍結保存した。
【0180】
血清を、1群当たり3頭のラットで、14日目まで8時点で回収した。Stropら、Chem Biol.20(2):161〜167(2013)によって記載されているように、ELISA(酵素結合免疫吸着測定)を行って、血漿内の抗体および抗体コンジュゲートの総量を測定した。結果は、TG6およびTG17で類似していた。
図8。
【0181】
(実施例4)
mAbの重鎖におけるQ295N突然変異体は、mAb発現の間に発現された微量の非グリコシル化された抗体に起因する望ましくないコンジュゲーションを排除する
操作された部位における抗体と所望のペイロードのコンジュゲーションに加え、開始材料内に存在する少量の非グリコシル化された抗体は、Q295位での抗体−薬剤コンジュゲーションをもたらし、その結果、約1.3%のオフターゲットのコンジュゲーションが生じる。このようなオフターゲットのコンジュゲーションは、Q295N突然変異体(EUナンバリングスキーム)によって排除され得、これによって、99.8%の部位特異的より良好な非常に均質な抗体−薬剤コンジュゲートが生じる。
【0182】
より詳細には、トランスグルタミナーゼは、非グリコシル化されたIgGにおいてQ295を認識し得、コンジュゲーションは、この部位で達成され得る。
図9Aにおける、トリプシンペプチドEEQ
*YNSTYR(配列番号15)へのAmPEG6−MMADのコンジュゲーションのMS/MSでの確認を参照されたい。抗体がCHOまたはHEK293発現系において発現されると、生産されたタンパク質のほとんどは、N297位でグリコシル化される。N297位でのグリカンの存在は、Q295へのコンジュゲーションを防ぐ。しかし、非グリコシル化された抗体のわずかな画分もまた典型的に生産される。Q295位でのコンジュゲーションに適しているのは、この汚染非グリコシル化抗体画分である。
【0183】
Q295部位へのこのオフターゲットのコンジュゲーションの量を推定するために、コンジュゲートしたEEQ
*YNSTYR(配列番号15)の標準的なペプチドを、一定量(2.5μg)のコンジュゲートしていない、mAb1 HC(重鎖)のトリプシン消化物内にスパイクし、定量のための標準曲線を作成した。前駆体イオン抽出クロマトグラムを用いて、100%消化効率と仮定すると、注射された全Q295ペプチドの1.3%が、mAb1 HC分子内で、AmPEG6−MMAD(アミノ−ポリエチレングリコール−6プロピオニルモノメチルオーリスタチンD)とコンジュゲートしたことが推定された。
図9B。単一点突然変異体Q295Nを生じさせて、望ましくないコンジュゲーションをなくした。Q295N突然変異体のペプチド質量フィンガープリントによって、mAb1軽鎖および重鎖分子の両方で、設計されたグルタミンタグ部位でのコンジュゲーションのみが明らかになり、さらなる部位は同定されなかった。
【0184】
開示された教示は様々な適用、方法、および組成物に関して記載されているが、本明細書における教示および以下の特許請求の範囲に記載の発明から逸脱することなく、様々な変化および変更を行うことができることが理解されよう。前述の実施例は、開示される教示をより良く説明するために提供されており、本明細書において提示される教示の範囲を限定することを意図したものではない。本教示はこれらの典型的な実施形態に関して記載されているが、当業者には、これらの典型的な実施形態の多くの変型および変更が、不必要な実験を伴わずに可能であることが容易に理解されよう。全てのこのような変型および変更は、本教示の範囲内である。
【0185】
特許、特許出願、論文、教科書などおよびそれらに引用された参考文献を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献は、それらがまだ組み入れられていない限り、参照によってその全体を本明細書中に組み入れる。組み込まれた文献および同様の資料の1つまたは複数が、限定はしないが、定義された用語、用語の用法、記載された技術などを含めて、本出願と異なるまたは矛盾する場合には、本出願が優先する。
【0186】
前述の説明および実施例は、本発明のいくつかの特定の実施形態を詳述するものであり、本発明者らが企図する最良の形態を記載している。しかし、前述の事項が明細書中でいかに詳述されていても、本発明は多くの方法で実施でき、本発明は添付した特許請求の範囲およびそのあらゆる均等形態に従って解釈すべきであることがわかる。