(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の変速段を有する多段変速機(5)と、前記変速段を切り替える変速操作機構(9)と、同変速操作機構(9)への入力軸となるシフトスピンドル(97)と、前記多段変速機(5)および前記変速操作機構(9)を収納するクランクケース(30)とを備え、同クランクケース(30)の側部を覆うクランクケースカバー(110)が備えられたパワーユニット(3)を搭載した鞍乗型車両(1)において、
前記シフトスピンドル(97)は、前記クランクケースカバー(110)の周囲に設けられ、前記クランクケースカバー(110)に設けられたシフトアクチュエータ(100)と連結ロッド(99)を介して連結され、
前記シフトアクチュエータ(100)は、ギヤーボックス(102)と電動モーター(103)とを備え、前記ギヤーボックス(102)は、前記クランクケースカバー(110)と一体成型されたことを特徴とする鞍乗型車両。
前記クランクケースカバー(110)は、前記クランクケース(30)の側部に取付けられてドライブスプロケット(55)を覆うドライブスプロケットカバー(110)であり、同ドライブスプロケットカバー(110)の上面(110a)に前記シフトアクチュエータ(100)が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
前記シフトアクチュエータ(100)の電動モーター(103)のモーター軸(103a)は、前記ドライブスプロケット(55)と後輪(15)のドリブンスプロケット(56)とに亘るドライブチェーン(57)の方向に沿って、前後方向に配向されたことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
前記ギヤーボックス(102)にはギヤーボックスカバー(104)が取付けられ、前記電動モーター(103)は前記ギヤーボックス(102)に対して着脱可能に取付けられたことを特徴とする請求項5に記載の鞍乗型車両。
前記ギヤーボックス(102)には、減速ギヤ軸(106,107)が前記モーター軸(103a)と平行に配置され、複数の前記減速ギヤ軸(106,107)と前記出力軸(101)とが前記モーター軸(103a)を囲むように周囲に配置されたことを特徴とする請求項7に記載の鞍乗型車両。
前記ギヤーボックス(102)の最終段減速ギヤ(108F)は、前記出力軸(101)に設けられた扇型歯車であり、軸方向視で前記モーター軸(103a)と重なることを特徴とする請求項8に記載の鞍乗型車両。
前記出力軸(101)の前記最終段減速ギヤ(108F)と噛合する小径減速ギヤ(108E)を備えた前記減速ギヤ軸(107)に設けられた大径減速ギヤ(108D)は、軸方向視で前記モーター軸(103a)と重なることを特徴とする請求項9に記載の鞍乗型車両。
前記出力軸(101)と前記シフトスピンドル(97)とを連結する前記連結ロッド(99)は、車両側面視で、ACジェネレータカバー(65c)と前記ドライブスプロケットカバー(110)との間に位置することを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
前記出力軸(101)と前記シフトスピンドル(97)とを連結する前記連結ロッド(99)は、車両後面視で、ACジェネレータカバー(65c)より車両中心側に位置することを特徴とする請求項11に記載の鞍乗型車両。
前記鞍乗型車両(1)は、ヘッドパイプ(20)から後方へ延びるバックボーンフレーム(21)の下方に前記パワーユニット(3)を取付け、前記シフトアクチュエータ(100)の前記電動モーター(103)のモーター軸線(Y)が、車両側面視で、前下がり、後上がりの車体カバー(19)の下縁部(19a)で覆われたことを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
前記鞍乗型車両(1)において、前記パワーユニット(3)は、ヘッドパイプ(20)から後方へ延びるバックボーンフレーム(21)の下方において車体フレーム(2)に取付けられ、前記バックボーンフレーム(21)から下方に延出し前記クランクケース(30)の上部を支持する上部エンジンハンガー(25)と前記シフトアクチュエータ(100)とは、車両側面視で、車両前後方向にずれて位置し、車両後面視で、前記電動モーター(103)は、前記ドライブスプロケットカバー(110)の上面(110a)に沿う水平仮想線(A)と前記上部エンジンハンガー(25)の外側面(25a)に沿う垂直仮想線(B)との間に形成された隅部(C)に配置されたことを特徴とする請求項2ないし請求項12のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来技術に鑑みなされたものであり、シフトアクチュエータによりシフトスピンドルが回動操作されるパワーユニットを搭載した鞍乗型車両において、シフトスピンドルとシフトアクチュエータとの組み合わせの構成が小型化し、シフトスピンドルとシフトアクチュエータとを連結する連結ロッドの小型化が図られ、連結ロッドの組付け性が向上する鞍乗型車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、
複数の変速段を有する多段変速機と、前記変速段を切り替える変速操作機構と、同変速操作機構への入力軸となるシフトスピンドルと、前記多段変速機および前記変速操作機構を収納するクランクケースとを備え、同クランクケースの側部を覆うクランクケースカバーが備えられたパワーユニットを搭載した鞍乗型車両において、
前記シフトスピンドルは、前記クランクケースカバーの周囲に設けられ、前記クランクケースカバーに設けられたシフトアクチュエータと連結ロッドを介して連結され
、
前記シフトアクチュエータは、ギヤーボックスと電動モーターとを備え、前記ギヤーボックスは、前記クランクケースカバーと一体成型されたことを特徴とする鞍乗型車両である。
【0006】
上記構成によれば、
クランクケースカバーの周囲に、シフトスピンドルとシフトアクチュエータとが配置されて相互の位置が近付けられたので、シフトスピンドルとシフトアクチュエータとの組み合わせの構成が小型化する。また、シフトスピンドルとシフトアクチュエータとがともにパワーユニットに取付けられたので、シフトスピンドルとシフトアクチュエータとを連結する連結ロッドの小型化が図られ、連結ロッドの組付け性が向上する。
また、シフトアクチュエータのギヤーボックスとクランクケースカバーとが一体成型されたので、ギヤーボックスの部品の単独成形が不要となり、部品点数が削減される。
【0008】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記クランクケースカバーは、前記クランクケースの側部に取付けられてドライブスプロケットを覆うドライブスプロケットカバーであり、同ドライブスプロケットカバーの上面に前記シフトアクチュエータが設けられる。
そのため、ドライブスプロケットと後輪のドリブンスプロケットとに亘るドライブチェーンの方向に沿って、前後方向に延びるドライブスプロケットカバーの上面の広いスペースが、シフトアクチュエータを設けるのに有効利用される。
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記連結ロッドは、車両側面視で、上端側が下端側に対して前傾して取付けられる。
そのため、連結ロッドの下端部を、ドライブスプロケットカバーの下縁に近付けることができ、連結ロッドの下端部の張り出し防止を図ることができる。
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記連結ロッドは、車両前面視で、前記ドライブスプロケットカバーの外側面より車両中心側に位置する。
そのため、連結ロッドが、運転者の足に当たることから保護される。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記シフトアクチュエータの電動モーターのモーター軸は、前記ドライブスプロケットと後輪のドリブンスプロケットとに亘るドライブチェーンの方向に沿って、前後方向に配向される。
そのように、シフトアクチュエータの電動モーターのモーター軸が、前後方向に延びるドライブスプロケットカバーの上面に、同じく前後方向に配向されたことで、シフトアクチュエータがコンパクトに配置される。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記ギヤーボックスにはギヤーボックスカバーが取付けられ、前記電動モーターは前記ギヤーボックスに対して着脱可能に取付けられる。
そのため、ギヤーボックスとギヤーボックスカバーとを分解する事無く、電動モーターをギヤーボックスに着脱でき、電動モーターのメンテナンス性を向上できる。
【0013】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記電動モーターの動力が伝達される前記シフトアクチュエータの出力軸は、前記ギヤーボックスカバーを貫通して配置され、
前記電動モーターは、モーター軸が前記ギヤーボックスカバー側と反対側から前記ギヤーボックス内に貫入するように、前記ギヤーボックスに取付けられる。
そのように、シフトアクチュエータの出力軸と電動モーターのモーター軸とが、互いにギヤーボックスの反対側に配置されたので、出力軸の配置の自由度を増すとことと、電動モーターのメンテナンス性向上との、両立が可能となる。
【0014】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記ギヤーボックスには、減速ギヤ軸が前記モーター軸と平行に配置され、複数の前記減速ギヤ軸と前記出力軸が前記モーター軸を囲むように周囲に配置される。
そのため、減速比の増加に伴うギヤーボックスの大型化が、防止される。
【0015】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記ギヤーボックスの最終段減速ギヤは、前記出力軸に設けられた扇型歯車であり、軸方向視で前記モーター軸と重なる。
そのため、シフトアクチュエータのギヤーボックスの小型化が可能となる。
【0016】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記出力軸の前記最終段減速ギヤと噛合する小径減速ギヤを備えた前記減速ギヤ軸に設けられた大径減速ギヤは、軸方向視で前記モーター軸と重なる。
そのため、シフトアクチュエータのギヤーボックスのより小型化が可能となる。
【0017】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記出力軸と前記シフトスピンドルとを連結する前記連結ロッドは、車両側面視で、ACジェネレータカバーと前記ドライブスプロケットカバーとの間に位置する。
そのため、ACジェネレータカバーとドライブスプロケットカバーの車両側方への膨出部を避けることができ、連結ロッドの車両側方への張り出しが抑制される。
【0018】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記出力軸と前記シフトスピンドルとを連結する前記連結ロッドは、車両後面視で、ACジェネレータカバーより車両中心側に位置する。
そのため、連結ロッドより前方のACジェネレータカバーの車両側方への膨出部によって、車両前方からの飛び石等からの連結ロッドの保護がなされる
【0019】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記鞍乗型車両は、ヘッドパイプから後方へ延びるバックボーンフレームの下方に前記パワーユニットを取付け、前記シフトアクチュエータの前記電動モーターのモーター軸線が、車両側面視で、前下がり、後上がりの車体カバーの下縁部で覆われる。
そのため、上部から流下する雨水からの車体カバーによるシフトアクチュエータの保護と、電動モーターの半露出による走行風による電動モーター冷却、および外観の向上が図れる。
【0020】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記鞍乗型車両において、前記パワーユニットは、ヘッドパイプから後方へ延びるバックボーンフレームの下方において車体フレームに取付けられ、前記バックボーンフレームから下方に延出し前記クランクケースの上部を支持する上部エンジンハンガーと前記シフトアクチュエータとは、車両側面視で、車両前後方向にずれて位置し、車両後面視で、前記電動モーターは、前記ドライブスプロケットカバーの上面に沿う水平仮想線と前記上部エンジンハンガーの外側面に沿う垂直仮想線との間に形成された隅部に配置される。
そのため、上部エンジンハンガーとパワーユニットとのボルト組付け作業性が向上し、シフトアクチュエータの側方への張り出し防止と保護性向上が図られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の鞍乗型車両によれば、
クランクケースカバーの周囲に、シフトスピンドルとシフトアクチュエータとが配置されて相互の位置が近付けられたので、シフトスピンドルとシフトアクチュエータとの組み合わせの構成が小型化する。また、シフトスピンドルとシフトアクチュエータとがともにパワーユニットに取付けられたので、シフトスピンドルとシフトアクチュエータとを連結する連結ロッドの小型化が図られ、連結ロッドの組付け性が向上する。
また、シフトアクチュエータのギヤーボックスとクランクケースカバーとが一体成型されたので、ギヤーボックスの部品の単独成形が不要となり、部品点数が削減される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から
図10に基づき、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両につき説明する。
なお、以下の説明における前後左右上下等の向きは、本実施形態の自動二輪車等鞍乗型車両の、車両の向きに従うものとする。また、図中矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る自動二輪車1の左側面を示す。本実施形態において鞍乗型車両は自動二輪車1である。
自動二輪車(本発明における「鞍乗型車両」)1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ20から後方斜め下向きにバックボーンフレームとしてメインフレーム21が1本延出し、メインフレーム(本発明における「バックボーンフレーム」)21の後端部に、左右一対のピボットプレート22,22が下方に垂設され、メインフレーム21の後部からは後方へ斜め上向きに左右一対のリヤフレーム23,23が延び、メインフレーム21とリヤフレーム23,23との間にサブフレーム24,24が架設されている。
【0025】
ヘッドパイプ20に軸支されたフロントフォーク10が車体前部下方に延び、その下端に前輪11が軸支され、フロントフォーク10の上方には、操向ハンドル12が設けられている。
ピボットプレート22には、スイングアーム13がピボット軸14で前端を軸支されて上下に揺動自在に連結され、スイングアーム13の後端に後輪15が軸支されている。
スイングアーム13と上方のリヤフレーム23との間にリヤクッション16が介装されている。左右一対のリヤフレーム23,23とサブフレーム24,24の上方には乗用シート17が支持され、乗用シート17の下部には図示しない収納ボックスと燃料タンクが設けられている。
車体フレーム2とそれに支持された機器は、車体カバー19で覆われる。
ピボットプレート22の下部にはメインスタンド18が取り付けられる。
【0026】
メインフレーム21の中央より後部寄りには、上部エンジンハンガー25が下方に突設され、パワーユニット3が、上部エンジンハンガー25とピボットプレート22に支持されて、車体フレーム2に懸架される。
パワーユニット3は、4ストロークサイクル1気筒空冷式の内燃機関4を備えるとともに、クランクケース30内に多段変速機5を備えている。
【0027】
図2は、
図1中のパワーユニット3を取出して示す拡大左側面図である。
図2に示されるように、クランクケース30から前方には、内燃機関4のシリンダブロック32、シリンダヘッド33が順に重ねられて突出し、シリンダヘッド33にはヘッドカバー34が取り付いている。
パワーユニット3は、内燃機関4のクランク軸31を左右方向に指向させた横置き姿勢で、シリンダ軸線Xを略水平に前傾させてして車体フレーム2に搭載されている。
【0028】
図3は、
図2中III−III矢視によるパワーユニット3の断面展開図である。
図3に示されるように、クランクケース30は、左右割構造で、左ケース30Lと右ケース30Rとが締結されて構成される。
クランクケース30に内設される多段変速機5は、ギヤ常時噛み合い式の多段変速機であり、クランク軸31と平行なメイン軸51とカウンタ軸52と備え、メイン軸51のメイン
軸変速ギヤ群
51gとカウンタ軸52のカウンタ
軸変速ギヤ群
52gとによって、複数の変速段を有する。
クランクケース30の後部に、多段変速機5の出力軸であり、パワーユニット3の出力軸でもあるカウンタ軸52が左方に突出し、その端部にドライブスプロケット55が嵌着され、後輪15の車軸に嵌着されたドリブンスプロケット56との間にドライブチェーン57が巻き掛けられ(
図1参照)、内燃機関4の動力が後輪15に伝達されるようになっている。
【0029】
前方へ向け略水平に配置されたシリンダヘッド33の上面からは吸気管60が上方に延出し、吸気管60は燃料噴射弁を一体に備えるスロットルボディ61(
図2参照)を介してメインフレーム21に取り付けられた図示しないエアクリーナに接続されている。
図1に示されるように、シリンダヘッド33の下面から下方へ延出する排気管62は、屈曲して後方に延び、クランクケース30より後方で車体右側に配置されたマフラ63に接続されている。
【0030】
図3に示されるように、パワーユニット3の内燃機関4は、クランク軸31がクランクケース30に左、右一対の主軸受35L、35Rを介して回転自在に支持され、シリンダブロック32のシリンダボア32a内に摺動自在に嵌合されたピストン36の往復動が、コンロッド37を介してクランク軸31の回転動に変換される。
ピストン36の頂面がシリンダヘッド33の天井面との間に形成する燃焼室33aには、シリンダヘッド33の天井壁に嵌入された点火プラグ38が先端の電極を臨ませている。
【0031】
クランク軸31の左主軸受35Aから左方に延びる左軸側部には、左主軸受35A側から左方に向かって動弁系駆動スプロケット40、スタータドリブンギヤ39、ACジェネレータ65が順次設けられる。
【0032】
クランク軸31と一体に結合された動弁系駆動スプロケット40と、シリンダヘッド33に回転自在に支持された動弁系のカム軸41に一体に嵌着された動弁系受動スプロケット42との間には、タイミングチェーン43が巻き掛けられて、カム軸41がクランク軸31の1/2の回転数で回転駆動され、カム軸41の吸気カム41iと排気カム41eに各々接して揺動する吸気ロッカアーム44iと排気ロッカアーム44eが図示しない吸気バルブと排気バルブを所定のタイミングで開閉駆動して内燃機関4の吸排気を行う。
【0033】
また、クランク軸31にニードル軸受を介して回転自在に軸支されたスタータドリブンギヤ39は、一方向クラッチ39aを介してクランク軸31に一体に結合されたACジェネレータ65のアウタロータ65aに連結される。
なお、ACジェネレータ65のインナステータ65bは、ACジェネレータカバ
ー65cに固定支持されている。
スタータドリブンギヤ39には、クランクケース30の上部に突設されたスタータモータ39b(
図2参照)の駆動軸の回転が、図示しない減速ギヤ機構を介して伝達されて内燃機関4の始動を行う。
【0034】
一方、クランク軸31の右主軸受35Bから右方に延びる右軸側部には、右端部に発進用の遠心クラッチ7が設けられ、遠心クラッチ7と右主軸受35Bとの間にクランク軸31に対して回動自在な筒状部材70が軸支される。
【0035】
遠心クラッチ7は、クランク軸31と一体に回転するドライブプレート71と、ドライブプレート71の外側に位置して筒状部材70と一体に回転する椀状のクラッチアウタ72とを有し、ドライブプレート71に固定された3つの支持軸71aには、3つの遠心ウェイトからなるクラッチシュー73が、それぞれ揺動自在に支持され、外側面に摩擦材からなるライニングを有する各クラッチシュー73は、クラッチシュー73の重心が支持軸71aの位置よりもクランク軸31の回転方向で遅れ側に位置するように配置されて、クランク軸31の回転とともに旋回して遠心力によりクラッチスプリング(図示せず)に抗して径方向外側に揺動し、所定の回転数を越えると、クラッチシュー73がクラッチアウタ72に接して摩擦力により遠心クラッチ7が接続する。
【0036】
筒状部材70の左端には駆動ギヤ74が一体に形成されている。
したがって、クランク軸31の回転は、所定の機関回転数を越えるまでは、遠心クラッチ7が切断状態で下流の筒状部材70以降に伝達されないが、所定の機関回転数を越えると、遠心クラッチ7が接続して筒状部材70および駆動ギヤ74に伝達される。
駆動ギヤ74と噛合する被動ギヤ81は、クランクケース30から右方に突出した多段変速機5のメイン軸51に回転自在に支持された変速クラッチ8のクラッチアウタ80に、ダンパ82を介して連結される。
【0037】
変速クラッチ8は、シフトアクチュエータ100により操作されるシフトスピンドル97と連動するレリーズ機構により摩擦接合または接合解除がなされる多数のクラッチ板84を有する摩擦式多板クラッチであり、多数のクラッチ板84がスプリング力により摩擦接合したとき、クラッチアウタ80のトルクが、メイン軸51と一体に結合されたクラッチインナ83に伝達されて、変速クラッチ8が接続状態となり、多数のクラッチ板84の摩擦接合が解除されたとき、クラッチアウタ80からクラッチインナ83へのトルクの伝達が断たれて、変速クラッチ8が切断状態となる。
【0038】
クランクケース30内でクランク軸31の後方に配置される多段変速機5は複数の変速段を有し、メイン軸変速ギヤ群51gが軸支されたメイン軸51およびカウンタ軸変速ギヤ群52gが軸支されたカウンタ軸52を備えている。
本実施形態においては、メイン軸変速ギヤ群51g中にメイン軸51上を軸方向に摺動するシフタギヤ51sが1つ備えられ、カウンタ軸変速ギヤ群52g中にカウンタ軸52上を軸方向に摺動するシフタギヤ52sが備えられ、変速操作機構9により、シフタギヤ51s、52sが左右方向に適宜移動することで、隣
り合うギヤと係合して変速操作に対応したメイン
軸変速ギヤ群
51gの1ギヤとカウンタ
軸変速ギヤ群
52gの1ギヤとの噛み合いが有効に動力を伝達するように選択されて変速が行われる。
【0039】
上記のように、変速段を切換えるためシフタギヤ51s、52sを移動する変速操作機構9を説明する。
図4は、
図2中IV−IV矢視と、IV′−IV′矢視の合成による、パワーユニット3の立面断面図である。
図4に示されるように、本実施形態の変速操作機構9は、シフトドラム90と2本のシフトフォーク91、92を有し、シフトドラム90の回動によりシフトフォーク91、92を軸方向に移動させることで、シフタギヤ51s、52sを摺動して、多段変速機5の変速段を切換えるものである。
【0040】
シフトドラム90は、クランクケース30の左右側壁に回動自在に架設されており、シフトドラム90の外周面には周方向に延びる2本のリード溝93、94が配列されて形成されている。
シフトドラム90の回転中心軸に平行にシフトフォーク軸95がシフトドラム90の周辺にクランクケース30の左右側壁に架設されており、シフトフォーク軸95に2本のシフトフォーク91、92が軸方向に移動自在に軸支されている。
【0041】
シフトフォーク91は、フォーク部91aがメイン軸51側のシフタギヤ51sに係合し、ピン部91bがシフトドラム90のリード溝93にスライド可能に係合する(
図3参照)。
シフトフォーク92は、フォーク部92aがカウンタ軸52側のシフタギヤ52sに係合し、ピン部92bがシフトドラム90のリード溝94にスライド可能に係合する。
【0042】
したがって、シフトドラム90が回動すると、リード溝93、94にそれぞれ案内されてシフトフォーク91、92が軸方向に移動して、シフタギヤ51s、52sを軸方向に摺動して変速段の切換えが実行される。
シフトドラム90の右端部90aには、シフトドラム90を間欠的に回動させる間欠送り機構96が設けられ、間欠送り機構96によって所定の回動位置に位置したシフトドラム90のリード溝93、94によって、シフトフォーク91、92の摺動位置が定まり、その時のシフタギヤ51s、52sの位置によって多段変速機5は所定の変速段となる。
【0043】
間欠送り機構96は、変速操作機構9への入力軸となるシフトスピンドル97の回動による、シフトスピンドル97に嵌着されたマスタアーム98の揺動により作動される。
本実施形態においては、シフトスピンドル97が、車載のシフトアクチュエータ100によって回動操作されることで、間欠送り機構96を介してシフトドラム90が間欠的に回動し、変速段の切換えがなされる。
【0044】
図1に示されるように、本実施形態において、ドライブスプロケット55とドリブンスプロケット56とに巻き掛けられたドライブチェーン57は、チェーンカバー58に覆われているが、その前部のドライブスプロケット55は、クランクケース30に取付けられたドライブスプロケットカバー(本発明における「クランクケースカバー」)110によって覆われている。
【0045】
図2に示されるように、本実施形態では、クランクケース30の左側面に取付けられたドライブスプロケットカバー110の上部には、シフトスピンドル97を回動操作するシフトアクチュエータ100が設けられ、一方、クランクケース30の左側面の下部にはドライブスプロケットカバー110の周囲に、すなわち外縁に近接して、シフトスピンドル97の左端が貫通突出している。
シフトアクチュエータ100の出力軸101と、シフトスピンドル97とは、連結ロッド99を介して連結されている。
【0046】
なお、シフトアクチュエータ100が設けられるのは、クランクケース30のシフトスピンドル97が貫通突出する側の側部を覆って取付けられたカバー、謂わば、クランクケースカバーであれば他の条件が合致すれ限定されない。
例えば、本実施形態と異なりACジェネレータカバー65c上に設けることも、ACジェネレータカバー65cとドライブスプロケットカバー110とが一体化したようなカバー上に設けることも可能である、
【0047】
そのように、クランクケース30のシフトスピンドル97が貫通突出する側の側部を覆って取付けられたカバー、すなわち上述のクランクケースカバーの周囲に、シフトスピンドル97とシフトアクチュエータ100とが配置されて相互の位置が近付けられたので、シフトスピンドル97とシフトアクチュエータ100との組み合わせの構成が小型化する。
また、シフトスピンドル97とシフトアクチュエータ100とがともにパワーユニット3に取付けられたので、シフトスピンドル97とシフトアクチュエータ100とを連結する連結ロッド99の小型化が図られ、連結ロッド99の組付け性が向上している。
【0048】
尤も、本実施形態のように、クランクケースカバーとしてのドライブスプロケットカバー110の上面にシフトアクチュエータ100を設ければ、
図1も参照して、ドライブスプロケット55と後輪15のドリブンスプロケット56とに亘るドライブチェーン57の方向に沿って、前後方向に延びるドライブスプロケットカバー110の上面の広いスペースが、シフトアクチュエータ100を設けるのに有効利用できるメリットがある。
【0049】
図5は、
図2中V−V矢視による、パワーユニット3の後面図である。
図6は、
図2中のドライブスプロケットカバー110と、シフトアクチュエータ100と、連結ロッド99と、シフトスピンドル97とを取出して示す拡大左側面図であり、
図5中VI−VI矢視図に相当する。
また、
図7は、
図6中VII−VII矢視による、ドライブスプロケットカバー110と、シフトアクチュエータ100と、連結ロッド99と、シフトスピンドル97の前面図である。
シフトアクチュエータ100は、ギヤーボックス102と電動モーター103とギヤーボックスカバー104とを備えており、ギヤーボックス102はドライブスプロケットカバー110と一体成型されている。102aは一体成型された支持脚部である。
そのように、ギヤーボックス102がドライブスプロケットカバー110と一体成型されたので、ギヤーボックス102の部品のドライブスプロケットカバー110に対する単独成形が不要となり、部品点数が削減されている。
【0050】
なお、
図6に示されるように、連結ロッド99は、車両側面視で、上端側が下端側に対して前傾して取付けられておいる。
そのため、連結ロッド99の下端部、すなわち本実施形態の場合、ピロボールジョイント99bを、ドライブスプロケットカバー110の下縁110cに近付けることができ、連結ロッド99の下端部の張り出し防止が図られている。
また、
図5、
図7に示されるように、連結ロッド99は、車両前面視で、ドライブスプロケットカバー110の外側面
110bより車両中心側に位置している。
そのため、連結ロッド99が、運転者の足に当たることから保護される。
【0051】
図1、
図2に示されるように、シフトアクチュエータ100の電動モーター103のモーター軸103aは、ドライブスプロケット55と後輪15のドリブンスプロケット56とに亘るドライブチェーン57の方向に沿って、前後方向に配向されている。
シフトアクチュエータ100の電動モーター103のモーター軸103aが、前後方向に延びるドライブスプロケットカバー110の上面110aに、同じく前後方向に配置されたことで、シフトアクチュエータ100をコンパクトに配置することができた。
【0052】
図5、
図6に示されるように、ギヤーボックス102を挟んで、後方に電動モーター103が取付けられ、前方にはギヤーボックスカバー104が取付けられる。
電動モーター103の動力が伝達されるシフトアクチュエータ100の出力軸101、すなわちギヤーボックス102の出力軸101は、出力軸線Zを示すように、ギヤーボックスカバー104を貫通して前方に向けて配置されている。
また、電動モーター103は、モーター軸103aが、ギヤーボックスカバー104側と反対側からギヤーボックス102内に貫入するようにギヤーボックス102に着脱可能に取付けられている。
【0053】
そのため、ギヤーボックス102とギヤーボックスカバー104とを分解すること無く、電動モーター103をギヤーボックス102に着脱でき、電動モーター103のメンテナンス性が向上している。
特に、後方に電動モーター103が取付けられたので、電動モーター103を取り外す方向がチェーン延出方向に沿って広くなっており、電動モーター103の着脱作業が容易となっている。
また、ギヤーボックス102の出力軸101と電動モーター103のモーター軸103aとが、互いにギヤーボックス102の反対側に配置されたので、出力軸101の配置の自由度が増しており、加えて、電動モーター103のメンテナンス性向上が図られている。
【0054】
連結ロッド99の取付けに係り、シフトアクチュエータ100の出力軸101における取付け金具101aは、出力軸101の出力軸線Z回りに回動するアーム部101aaを有し、また、シフトスピンドル97における取付け金具97aは、シフトスピンドル97回りに回動するアーム部97aaを有する。
連結ロッド99は、その上下の両端に球体軸受けを用いたピロボールジョイント99a、99bを備えている。
【0055】
ピロボールジョイント99aは、シフトアクチュエータ100の出力軸101側のアーム部101aaの先端に接続し、アーム部101aaの回動を受けて、連結ロッド99をその軸方向に移動する。
ピロボールジョイント99bは、シフトスピンドル97側のアーム部97aaの先端に接続し、連結ロッド99の軸方向に移動を受けて、アーム部97aaを回動し、シフトスピンドル97が回動操作される。
【0056】
したがって、シフトアクチュエータ100の出力軸101の回転が、シフトスピンドル97の回動として伝達され、シフトアクチュエータ100によるシフトスピンドル97を介した変速操作機構9が駆動される。
なお、
図6、
図7に示されるように、出力軸101側のアーム部101aaの作動平面101abと、シフトスピンドル97側のアーム部97aaの作動平面97abとは、90°直交しているが、各ピロボールジョイント99a、99bの球体軸受けが、相互の作動を許容する。
【0057】
図8は、
図6中VIII−VIII矢視による、シフトアクチュエータ100の前面図であり、
図9は、
図8中IX−IX矢視による、シフトアクチュエータ100の断面展開図である。
図8、
図9に示されるように、ギヤーボックスカバー104から前方に突出したシフトアクチュエータ100の出力軸101は、ギヤーボックスカバー104とギヤーボックス102とに挟まれた減速室105内において、ギヤーボックスカバー104とギヤーボックス102に軸受け101A、101Bを介して回転自在に支持されている。
【0058】
電動モーター103は、ギヤーボックスカバー104と反対側においてギヤーボックス102に締結され、そのモーター軸103aを減速室105内に、出力軸101と平行に、貫入させている。
図9に明示されるように、減速室105内において、モーター軸103aと出力軸101との間には、第1減速ギヤ軸(本発明における「減速ギヤ軸」)106と第2減速ギヤ軸(本発明における「減速ギヤ軸」)107が、モーター軸103aと平行に配置され、それぞれギヤーボックスカバー104とギヤーボックス102に、軸受け106A、106B、および軸受け107A、107Bを介して回転自在に支持されている。
なお、減速ギヤ軸は、求める減速比において、軸数は適宜増減設定され得る。
【0059】
第1減速ギヤ軸106は、モーター軸103aの先端に設けられたピニオン108Aと噛合する第1大径減速ギヤ108Bとそれより小径の第1小径減速ギヤ108Cとを備える。
第2減速ギヤ軸107は、第1減速ギヤ軸106の第1小径減速ギヤ108Cと噛合する第2大径減速ギヤ(本発明における「大径減速ギヤ」)108Dとそれより小径の第2小径減速ギヤ(本発明における「小径減速ギヤ」)108Eとを備える。
出力軸101は、第2減速ギヤ軸107の第2小径減速ギヤ
108Eと噛合する相対的に大径の最終段減速ギヤ
108Fを備える。
【0060】
図8に示されるように、ギヤーボックス102には、複数の減速ギヤ軸、すなわち第1減速ギヤ軸106および第2減速ギヤ軸107と、最終段減速ギヤ108Fを備える出力軸101とが、モーター軸103aを囲むようにモーター軸103aの周囲に配置されている。
そのため、
第1、第2減速ギヤ軸106、107と出力軸101の配置が稠密化され、減速比の増加に伴うキヤーボックス102の大型化が、防止されている。
【0061】
また、
図8に明示されるように、ギヤーボックス102における出力軸101に設けられた最終段減速ギヤ108Fは比較的大径となることから、回転範囲が限られることを考慮して、扇型ギヤとされており、且つ軸方向視でモーター軸103aと重なるように配置されている。
そのような配置により、シフトアクチュエータ100のギヤーボックス102の小型化が可能となっている。
【0062】
そして、出力軸101の最終段減速ギヤ108Fと噛合する第2小径減速ギヤ108Eを備えた第2減速ギヤ軸107に設けられた第2大径減速ギヤ108Dは、軸方向視でモーター軸103aと重なっている。
そのような配置により、シフトアクチュエータ100のギヤーボックス102のより小型化が可能となっている。
【0063】
図1、
図2を参照して、本実施形態において、シフトアクチュエータ100の出力軸101とシフトスピンドル97とをつなぐ連結ロッド99は、車両側面視で、ACジェネレータカバー65cとドライブスプロケットカバー110との間に位置している。
そのため、連結ロッド99はACジェネレータカバー65cとドライブスプロケットカバー110の車両側方への膨出部を避けることができ、連結ロッド99の車両側方への張り出しが抑制されている。
【0064】
また、
図1を参照して、本実施形態の自動二輪車1は、ヘッドパイプ20から後方へ延びるメインフレーム21の下方にパワーユニット3を取付け、シフトアクチュエータ100の電動モーター103のモーター軸103aのモーター軸線Yが、車両側面視で、前下がり、後上がりの車体カバー19の下縁部19aで覆われている。
そのため、上部から流下する雨水からの車体カバー19による保護と、電動モーター103の半露出による走行風による電動モーター103冷却、および外観の向上がなされている。
【0065】
図5は、
図2中V−V矢視による、パワーユニット3の後面図である。
図5に示されるように、本実施形態において、出力軸101とシフトスピンドル97とをつなぐ連結ロッド99は、車両後面視で、ACジェネレータカバー65cより車両中心側に位置しており、連結ロッド99より前方のACジェネレータカバー65cの車両側方への膨出部によって、車両前方からの飛び石等からの連結ロッド99の保護がなされている。
【0066】
また、本実施形態の自動二輪車1において、
図1に示されるように、パワーユニット3は、ヘッドパイプ20から後方へ延びるメインフレーム21の下方において車体フレーム2に取付けられ、メインフレーム21から下方に延出しクランクケース30の上部を支持する上部エンジンハンガー25とシフトアクチュエータ100とは、車両側面視で、車両前後方向にずれて位置している。
また、
図5に示されるように、車両後面視で、シフトアクチュエータ100の電動モーター103は、ドライブスプロケットカバー110の上面110aに沿う水平仮想線Aと上部エンジンハンガー25の外側面25aに沿う垂直仮想線Bとの間に形成された隅部Cに配置されている。
そのため、上部エンジンハンガー25とパワーユニット3とを締結する締結ボルト25bのボルト組付け作業性が向上するとともに、シフトアクチュエータ100の側方への張り出し防止と保護性向上が図られている。
【0067】
図10は、
図1中X矢視による、本実施形態の自動二輪車1の変速操作機構9操作用のスイッチボックス115を示す。スイッチボックス115は操向ハンドル12の右グリップ12r側に設けられており、シフトアップスイッチ116とシフトダウンスイッチ117を備えている。
運転者により、シフトアップスイッチ116またはシフトダウンスイッチ117が押されると、シフトアクチュエータ100が作動し、連結ロッド99を介してシフトスピンドル97が回動操作される。
シフトスピンドル97の回動操作によって、多段変速機5の変速操作機構9が駆動され、メイン軸変速ギヤ群51gとカウンタ軸変速ギヤ群52gとの組み合わせが変更され、変速がなされる。
なお、
図10は例示であって、スイッチボックス115は、操向ハンドル12の左グリップ側に設けられてもよいし、他の機能のスイッチを併せ備えたものであってもよい。
【0068】
以上、本発明の一実施形態につき説明したが、本発明の態様が上記実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むことは勿論である。
例えば、鞍乗型車両は実施形態に示す自動二輪車に限定されない。
また、説明の便宜上、装置の配置を実施形態のものに従って説明したが、実質的な作用効果が同じであれば、例えば左右反転した配置でもよい。