特許第6980115号(P6980115)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980115情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、積層造形装置およびプロセスウィンドウ生成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980115
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、積層造形装置およびプロセスウィンドウ生成方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/85 20210101AFI20211202BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20211202BHJP
   B22F 10/22 20210101ALI20211202BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20211202BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20211202BHJP
【FI】
   B22F10/85
   B22F10/28
   B22F10/22
   B22F12/90
   B33Y50/02
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2020-537992(P2020-537992)
(86)(22)【出願日】2018年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2018031389
(87)【国際公開番号】WO2020039581
(87)【国際公開日】20200227
【審査請求日】2020年11月18日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代型産業用3Dプリンタの造形技術開発・実用化事業(委託事業)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】514227988
【氏名又は名称】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】青柳 健大
(72)【発明者】
【氏名】千葉 晶彦
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−088066(JP,A)
【文献】 特開2018−024242(JP,A)
【文献】 特開2010−243451(JP,A)
【文献】 特開2013−140548(JP,A)
【文献】 特開2017−204712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00−12/90
B29C 64/00−64/40
B33Y 50/00
B22F 3/105
B22F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスウィンドウ内に散在するように、積層造形を制御する少なくとも2つのパラメータの組を生成するパラメータ生成部と、
散在する前記少なくとも2つのパラメータの組を用いて、積層造形部に対して試料の積層造形を指示する試料造形指示部と、
積層造形された前記試料の画像を取得して、前記試料の品質の良否を評価する試料品質評価部と、
前記試料の評価結果をマッピングして生成されたプロセスマップにおいて、前記評価結果における品質の良否の境界を機械学習によって決定する境界決定部と、
決定された前記境界を含む境界領域を新たなプロセスウィンドウとして、前記パラメータ生成部によるパラメータ生成処理、前記試料造形指示部による試料造形指示処理、前記試料品質評価部による品質評価処理および前記境界決定部による境界決定処理を繰り返し、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保証するプロセスウィンドウとして生成するプロセスウィンドウ生成部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記パラメータ生成部は、前記積層造形部で設定可能なパラメータの最大値から最小値までの範囲を含む初期のプロセスウィンドウを用いる請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記試料造形指示部は、1回の試料の積層造形において、異なる前記パラメータの組を用いて所定数の試料を前記積層造形部内に並列に積層造形し、
次の試料の積層造形までの間に、造形しない所定の粉末層の生成を指示する粉末層生成指示部を備える請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記試料品質評価部は、
積層造形された前記試料を撮像部により撮像するよう指示する撮像指示部と、
前記撮像部で撮像された前記試料の画像に基づいて、前記試料の品質の良否を評価して評価値を割り当てる評価値割当部と、
を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記境界決定部は、前記機械学習として、サポートベクターマシン、ロジスティック回帰、k近傍法、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、または、ナイーブベイズ判定によって前記境界を決定する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記少なくとも2つのパラメータの組は、熱源出力に対応する熱源に供給される電流値、走査速度、走査線間隔、走査線長さ、積層厚み、造形温度、および、ビーム径から選択される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記境界決定部は、前記走査速度と前記電流値との関係として知られるスキャン速度の指標を、前記プロセスマップの軸となるパラメータの1つとして用いる請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記プロセスウィンドウ生成部は、前記境界決定部において前記境界が決定できない状態になった場合、または、前記パラメータ生成処理、前記試料造形指示処理、前記品質評価処理および前記境界決定処理を所定回数繰り返した場合に、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保証するプロセスウィンドウとする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記プロセスウィンドウ生成部により生成された前記積層造形の品質を保証するプロセスウィンドウを示す情報を、ユーザによる前記少なくとも2つのパラメータの組の設定を支援する情報として、前記ユーザに提示する提示部と、
前記提示部に提示された情報を参照して設定された前記少なくとも2つのパラメータの組を用いて、前記積層造形部に対して積層造形物の積層造形を指示する積層造形指示部と、
をさらに備える請求項1乃至8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記積層造形指示部は、前記積層造形の品質を保証するプロセスウィンドウ内で、前記境界から所定距離以上離れた前記少なくとも2つのパラメータの組を設定する請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記積層造形部は、金属粉末を用いて積層造形する金属積層造形部であって、
前記金属積層造形部の造形法は、パウダーベッド法とパウダーデポジション法とを含み、
前記パウダーベッド法は、電子ビーム溶融法とレーザ溶融法とを含む請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
請求項9または10に記載の情報処理装置と、
前記積層造形物の造形に先立って、前記試料造形指示部による前記試料の積層造形の指示に基づいて前記試料を積層造形すると共に、前記積層造形指示部による前記積層造形物の積層造形の指示に基づいて前記積層造形物を積層造形する前記積層造形部と、
積層造形された前記試料の画像を取得する画像取得部と、
を備える積層造形装置。
【請求項13】
プロセスウィンドウ内に散在するように、積層造形を制御する少なくとも2つのパラメータの組を生成するパラメータ生成ステップと、
散在する前記少なくとも2つのパラメータの組を用いて、積層造形部に対して試料の積層造形を指示する試料造形指示ステップと、
積層造形された前記試料の画像を取得して、前記試料の品質の良否を評価する試料品質評価ステップと、
前記試料の評価結果をマッピングして生成されたプロセスマップにおいて、前記評価結果における品質の良否の境界を機械学習によって決定する境界決定ステップと、
決定された前記境界を含む境界領域を新たなプロセスウィンドウとして、前記パラメータ生成ステップ、前記試料造形指示ステップ、前記試料品質評価ステップおよび前記境界決定ステップを繰り返し、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保証するプロセスウィンドウとして生成するプロセスウィンドウ生成ステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項14】
プロセスウィンドウ内に散在するように、積層造形を制御する少なくとも2つのパラメータの組を生成するパラメータ生成ステップと、
散在する前記少なくとも2つのパラメータの組を用いて、積層造形部に対して試料の積層造形を指示する試料造形指示ステップと、
積層造形された前記試料の画像を取得して、前記試料の品質の良否を評価する試料品質評価ステップと、
前記試料の評価結果をマッピングして生成されたプロセスマップにおいて、前記評価結果における品質の良否の境界を機械学習によって決定する境界決定ステップと、
決定された前記境界を含む境界領域を新たなプロセスウィンドウとして、前記パラメータ生成ステップ、前記試料造形指示ステップ、前記試料品質評価ステップおよび前記境界決定ステップを繰り返し、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保証するプロセスウィンドウとして生成するプロセスウィンドウ生成ステップと、
をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【請求項15】
プロセスウィンドウ内に散在する、積層造形を制御する少なくとも2つのパラメータの組を用いて、試料の積層造形を行う試料造形ステップと、
積層造形された前記試料の品質の良否を評価した評価結果をマッピングして生成されたプロセスマップにおいて、前記評価結果における品質の良否の境界を機械学習によって決定する境界決定ステップと、
決定された前記境界を含む境界領域を新たなプロセスウィンドウとして、前記試料造形ステップおよび前記境界決定ステップを繰り返し、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保証するプロセスウィンドウとして生成するプロセスウィンドウ生成ステップと、
を含むプロセスウィンドウ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形におけるプロセスウィンドウの生成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、非特許文献1や非特許文献2には、以下のように積層造形の最適条件を得る技術が開示されている。例えば、種々の条件で造形した造形物の表面形態の観察を行い、表面は比較的平坦であるが未溶融粉末が残っている状態(Porous)、粉末が完全に溶融し表面が平坦な状態(Even)、表面の凹凸が大きい状態(Uneven)の3つに分類する。次に、各表面状態の間に境界を引くことでEvenな状態の条件範囲をプロセスウィンドウとする。さらに、アルキメデス法や、X線CT、造形物の断面組織観察画像の解析による欠陥の定量評価などの手法を用いることで造形物の密度を測定し、最も密度の大きい条件を最適条件としている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】H.E. Helmer, C. Korner, and R.F. Singer: “Additive manufacturing of nickel-based superalloy Inconel 718 by selective electron beam melting: Processing window and microstructure Harald”, Journal of Materials Research, Vol. 29, No. 17 (2014), p. 1987-1996.
【非特許文献2】W.J. Sames, F.A. List, S. Pannala, R.R. Dehoff and S.S. Babu: “The metallurgy and processing science of metal additive manufacturing”, International Materials Reviews, Vol. 61, No. 5 (2016), p.315-360.
【非特許文献3】Christopher J.C. Burges “A Tutorial on Support Vector Machines for Pattern Recognition”,Data Mining and Knowledge Discovery, 2, 121-167(1998), Kluwer Academic Publishers, Boston. Manufactured in The Netherlands.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、造形で変化させるパラメータの種類が多く(熱源出力、走査速度、走査線間隔、走査線長さ、積層厚み、造形温度、など)、振る範囲も広いため(例えば、市販の3kW電子ビーム積層造形装置の場合、電流は0〜50mA、走査速度は0〜8000m/sの範囲で振ることが可能)、実験計画法を用いたとしても最適な条件を求めるために数多くの造形物を製造して評価を行う必要があった。そのため、プロセスウィンドウの構築には、膨大なコストと時間とを要し、実験する人間によって個人差のあるプロセスウィンドウが構築されるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る情報処理装置は、
プロセスウィンドウ内に散在するように、積層造形を制御する少なくとも2つのパラメータの組を生成するパラメータ生成部と、
散在する前記少なくとも2つのパラメータの組を用いて、積層造形部に対して試料の積層造形を指示する試料造形指示部と、
積層造形された前記試料の画像を取得して、前記試料の品質の良否を評価する試料品質評価部と、
前記試料の評価結果をマッピングして生成されたプロセスマップにおいて、前記評価結果における品質の良否の境界を機械学習によって決定する境界決定部と、
決定された前記境界を含む境界領域を新たなプロセスウィンドウとして、前記パラメータ生成部によるパラメータ生成処理、前記試料造形指示部による試料造形指示処理、前記試料品質評価部による品質評価処理および前記境界決定部による境界決定処理を繰り返し、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保証するプロセスウィンドウとして生成するプロセスウィンドウ生成部と、
を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る積層造形装置は、
上記情報処理装置と、
前記積層造形物の造形に先立って、前記試料造形指示部による前記試料の積層造形の指示に基づいて前記試料を積層造形すると共に、前記積層造形指示部による前記積層造形物の積層造形の指示に基づいて前記積層造形物を積層造形する前記積層造形部と、
積層造形された前記試料の画像を取得する画像取得部と、
を備える。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る情報処理方法は、
プロセスウィンドウ内に散在するように、積層造形を制御する少なくとも2つのパラメータの組を生成するパラメータ生成ステップと、
散在する前記少なくとも2つのパラメータの組を用いて、積層造形部に対して試料の積層造形を指示する試料造形指示ステップと、
積層造形された前記試料の画像を取得して、前記試料の品質の良否を評価する試料品質評価ステップと、
前記試料の評価結果をマッピングして生成されたプロセスマップにおいて、前記評価結果における品質の良否の境界を機械学習によって決定する境界決定ステップと、
決定された前記境界を含む境界領域を新たなプロセスウィンドウとして、前記パラメータ生成ステップ、前記試料造形指示ステップ、前記試料品質評価ステップおよび前記境界決定ステップを繰り返し、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保証するプロセスウィンドウとして生成するプロセスウィンドウ生成ステップと、
を含む。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る情報処理プログラムは、
プロセスウィンドウ内に散在するように、積層造形を制御する少なくとも2つのパラメータの組を生成するパラメータ生成ステップと、
散在する前記少なくとも2つのパラメータの組を用いて、積層造形部に対して試料の積層造形を指示する試料造形指示ステップと、
積層造形された前記試料の画像を取得して、前記試料の品質の良否を評価する試料品質評価ステップと、
前記試料の評価結果をマッピングして生成されたプロセスマップにおいて、前記評価結果における品質の良否の境界を機械学習によって決定する境界決定ステップと、
決定された前記境界を含む境界領域を新たなプロセスウィンドウとして、前記パラメータ生成ステップ、前記試料造形指示ステップ、前記試料品質評価ステップおよび前記境界決定ステップを繰り返し、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保証するプロセスウィンドウとして生成するプロセスウィンドウ生成ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るプロセスウィンドウ生成方法は、
プロセスウィンドウ内に散在する、積層造形を制御する少なくとも2つのパラメータの組を用いて、試料の積層造形を行う試料造形ステップと、
積層造形された前記試料の品質の良否を評価した評価結果をマッピングして生成されたプロセスマップにおいて、前記評価結果における品質の良否の境界を機械学習によって決定する境界決定ステップと、
決定された前記境界を含む境界領域を新たなプロセスウィンドウとして、前記試料造形ステップおよび前記境界決定ステップを繰り返し、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保証するプロセスウィンドウとして生成するプロセスウィンドウ生成ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コストと時間とを節約しながら、汎用的なプロセスウィンドウを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る情報処理装置を含む積層造形システムによる処理の概要を示す図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る情報処理装置を含む積層造形システムにおけるプロセスウィンドウ生成方法を示すフローチャートである。
図4A】本発明の第2実施形態に係る情報処理装置を含む積層造形システムの構成を示すブロック図である。
図4B】本発明の第2実施形態に係る積層造形部の構成を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るプロセスウィンドウを説明する図である。
図7A】本発明の第2実施形態に係る試料品質評価テーブルの構成を示す図である。
図7B】本発明の第2実施形態に係る試料品質評価方法を説明する図である。
図8A】本発明の第2実施形態に係るプロセスマップを説明する図である。
図8B】本発明の第2実施形態に係る他のプロセスマップを説明する図である。
図9A】本発明の第2実施形態に係る機械学習を説明する図である。
図9B】本発明の第2実施形態に係る機械学習を説明する図である。
図10】本発明の第2実施形態に係るプロセスウィンドウの提示例を示す図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る情報処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
図13】本発明の実施例に係る処理条件を示す図である。
図14】本発明の実施例に係る試料画像を示す図である。
図15A】本発明の実施例に係るプロセスマップを示す図である。
図15B】本発明の実施例に係る機械学習結果を示す図である。
図16】本発明の実施例に係る最適条件で造形された試料を示す図である。
図17】本発明の第3実施形態に係る情報処理装置を含む積層造形システムの構成を示すブロック図である。
図18】本発明の第3実施形態に係る試料品質評価テーブルの構成を示す図である。
図19】本発明の第4実施形態に係る情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図20】本発明の第5実施形態に係る情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素は単なる例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての情報処理装置100について、図1を用いて説明する。情報処理装置100は、積層造形の品質を保障するプロセスウィンドウを生成する装置である。
【0015】
図1に示すように、情報処理装置100は、パラメータ生成部101と、試料造形指示部102と、試料品質評価部103と、境界決定部104と、プロセスウィンドウ生成部105と、を含む。パラメータ生成部101は、プロセスウィンドウ内に散在するように、積層造形を制御する少なくとも2つのパラメータの組を生成する。試料造形指示部102は、散在する前記少なくとも2つのパラメータの組を用いて、積層造形部110に対して試料の積層造形を指示する。試料品質評価部103は、積層造形された試料の画像120を取得して、試料の品質を評価する。境界決定部104は、試料の評価結果をマッピングして生成されたプロセスマップにおいて、評価結果の境界を機械学習によって決定する。プロセスウィンドウ生成部105は、決定された前記境界を含む境界領域を新たなプロセスウィンドウとして、パラメータ生成部101によるパラメータ生成処理、試料造形指示部102による試料造形指示処理、試料品質評価部103による品質評価処理および境界決定部104による境界決定処理を繰り返し、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保障するプロセスウィンドウとして生成する。
【0016】
本実施形態によれば、パラメータ生成処理、積層造形指示処理、品質評価処理および境界決定処理を自動的に繰り返すことで積層造形の品質を保障するプロセスウィンドウを生成するので、コストと時間とを節約しながら、汎用的なプロセスウィンドウを構築することができる。
【0017】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る情報処理装置について説明する。本実施形態に係る情報処理装置は、プロセスウィンドウ内に散在するパラメータ組を設定して試料を造形して、造形した試料の品質を評価する。そして、評価結果から機械学習により境界(決定関数)を求めながら、初期のプロセスウィンドウからプロセスウィンドウを更新していき、積層造形の品質を保障するプロセスウィンドウを生成してユーザに提示する。
【0018】
《情報処理装置を含む積層造形システム》
以下、図2図4Bを参照して、本実施形態に係る情報処理装置を含む積層造形システムの構成および動作について説明する。
【0019】
(処理概要)
図2は、本実施形態に係る情報処理装置を含むシステムによる処理の概要を示す図である。本処理は、積層造形物の造形に先立ってパラメータ調整(キャリブレーション)として行われる例を示すが、これに限定されるものではない。なお、図2におけるパウダー層、造形物の高さ、造形物の数などは図2に限定されない。
【0020】
本実施形態においては、プロセスマップ自動構築手法を提供する。なお、後出の「表面形態のモニタリング」では、表面の凹凸を観察して、主に、平坦でないもの(未溶融粉末が観察されるもの、表面の凹凸が大きいもの)と平坦なものとに分類する。
【0021】
(ステップS201):初期のプロセスウィンドウにおいて、プロセスパラメータ(ビーム出力、ビーム径、走査速度、ラインオフセット(走査線間隔)、走査パス長、積層厚み、など)を振る範囲を決め、初期プロセスウィンドウの中で均一に分布するようにデータ点(パラメータ組)を設定する。なお、初期のプロセスウィンドウとしては、必ず高品質の試料と低品質の試料とを造形するため、積層造形部で設定可能なパラメータの最大値から最小値までの範囲を含むプロセスウィンドウを用いる。
【0022】
(ステップS202):積層造形部のベースプレート上にパウダー層(3〜5mm程度)を形成し、そのパウダー層上に設定した条件で造形(造形物の高さ:10〜15mm程度)する。なお、1回の試料の積層造形において、異なるパラメータの組を用いて所定数の試料を積層造形部内に並列に積層造形する。図2では、9個の試料を形成しているが、これに限定されない。
【0023】
(ステップS203):表面形態をモニタリングし、平坦なものと平坦でないものとに分類する。平坦なものが無い場合は、さらに、エネルギー不足で未溶融粉末のあるものと、エネルギー過多で表面凹凸の大きいものと、に分類する。あるいは、平坦なものが有る場合でも、平坦でないものをエネルギー不足で未溶融粉末のあるものと、エネルギー過多で表面凹凸の大きいものと、に分類する。すなわち、積層造形された試料を撮像部により撮像するよう指示し、撮像部で撮像された試料の画像に基づいて、試料の品質を評価して評価値を割り当てる。
【0024】
(ステップS204):機械学習で、平坦なものと平坦でないものとの境界を求める。
【0025】
(ステップS205):求めた境界領域を含む新たなプロセスウィンドウを構築し、境界の精度を高めるための不足データ点を再設定する。この際、分類境界近傍(決定関数が“0”の近傍)を含むプロセスウィンドウにデータ点を設定することにより、境界の精度を高める。
【0026】
(ステップS206):ステップS204およびS205を実施している間に、パウダー層(3〜5mm)を造形物の上に形成し、その上に再設定した条件で造形(造形物の高さ:10〜15mm程度)する。すなわち、次の試料の積層造形までの間に、粉末層生成指示部として造形しない所定の粉末層の生成を指示する。
【0027】
(ステップS207):再度、表面形態をモニタリングし、平坦なものと平坦でないものとに分類する。平坦なものが無い場合は、エネルギー不足で未溶融粉末のあるものと、エネルギー過多で表面凹凸の大きいものと、に分類する。あるいは、平坦なものが有る場合でも、平坦でないものをエネルギー不足で未溶融粉末のあるものと、エネルギー過多で表面凹凸の大きいものと、に分類する。
【0028】
(ステップS208):機械学習で境界を求め、プロセスウィンドウを構築して更新する。
【0029】
(ステップS209):ステップS205〜S208を繰り返す。なお、プロセスウィンドウに変化が無くなる、もしくは、ベースプレートから最表面までの高さがあらかじめ設定した値(装置で可能な最大造形高さ)を超える、のどちらかの条件を満たしたら終了する。すなわち、境界が決定できない状態になった場合、または、所定回数の繰り返しを終了した場合に、繰り返しを終了する。なお、図2の手順に限定されず、例えば、ステップS206の手順は、ステップS203〜S205と並行に実行されてもよい。
【0030】
(システムフロー)
図3は、本実施形態に係る情報処理装置を含む積層造形システムにおけるプロセスウィンドウ生成方法を示すフローチャートである。なお、図3では、図2のステップS206の処理は省かれている。
【0031】
積層造形システムにおけるプロセスウィンドウ生成方法は、試料造形処理(S301)と、境界決定処理(S303)と、プロセスウィンドウ生成処理(S305)と、を含む。
【0032】
試料造形処理(S301)は、図2のステップS201およびS202に相当し、プロセスウィンドウ内に散在する、積層造形を制御する少なくとも2つのパラメータの組を用いて、試料の積層造形を行う。試料造形処理(S301)は、プロセスウィンドウ内に散在するパラメータ組を設定するステップS311と、パラメータ組を用いた試料の積層造形処理であるステップS313と、を有する。
【0033】
また、境界決定処理(S303)は、図2のステップS203およびS204に相当し、積層造形された試料の品質を評価した評価結果をマッピングして生成されたプロセスマップにおいて、評価結果の境界を機械学習によって決定する。境界決定処理(S303)は、積層造形された試料の画像から試料の品質を評価するステップS331と、試料の品質評価をマッピングしたプロセスマップにおける境界を、機械学習により決定するステップS333と、を有する。
【0034】
そして、プロセスウィンドウ生成処理(S305)は、図2のステップS205乃至S209に相当し、決定された前記境界を含む境界領域を新たなプロセスウィンドウとして、試料造形ステップおよび前記境界決定ステップを繰り返し、最後に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保障するプロセスウィンドウとして生成する。プロセスウィンドウ生成処理(S305)は、境界精度は十分か否かを判定するステップS351と、境界精度が十分でない場合に、境界を含む境界領域を新たなプロセスウィンドウとするステップS353と、境界精度が十分な場合などの終了条件で、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保障するプロセスウィンドウとするステップS355と、を有する。
【0035】
(システム構成)
図4Aは、本実施形態に係る情報処理装置410を含む積層造形システム400の構成を示すブロック図である。
【0036】
積層造形システム400は、本実施形態の情報処理装置410と、積層造形装置420と、造形試料撮像部430と、を備える。なお、造形試料撮像部430は、積層造形装置420に内蔵されていても、別途に設置されていてもよい。
【0037】
情報処理装置410は、積層造形部422で試料を造形しながら、パラメータのキャリブレーション(調整)を行う本実施形態のパラメータ調整部411と、積層造形部422で積層造形物を造形するための積層造形データ提供部412と、を有する。
【0038】
積層造形装置420は、情報処理装置410からの指示に従って試料または積層造形物を造形するため、積層造形部422を制御する造形制御部421と、造形制御部421の制御に従って試料または積層造形物を造形する積層造形部422と、を有する。
【0039】
造形試料撮像部430は、造形試料の表面を撮像する。なお、造形試料撮像部430は、造形試料の切断などの加工なしに内部構造を撮像可能なX線カメラなどであってもよい。
【0040】
(積層造形部)
図4Bは、本実施形態に係る積層造形部422の構成を示す図である。図4Bには、金属粉末を用いて積層造形する金属積層造形部であって、造形法としては、パウダーベッド法の例を示すが、図示しないパウダーデポジション法であってもよい。
【0041】
図4Bの積層造形部441は、レーザ溶融法を用いるパウダーベッド法の積層造形部であり、レーザ積層造形(SLM:Selective Laser Melting)と称される。一方、図4Bの積層造形部442は、電子ビーム溶融法を用いるパウダーベッド法の積層造形部であり、電子ビーム積層造形(EBM:Electron Beam Melting)と称される。本実施形態においては、電子ビーム積層造形(EBM)を例に説明するが、レーザ積層造形(SLM)に対して適用でき、同様の効果を奏する。なお、図4Bに示した積層造形部441、442の構成は、一例でありこれらに限定されるものではない。例えば、積層造形部442の粉末供給は、積層造形部441のような構成であってもよい。
【0042】
《情報処理装置の機能構成》
図5は、本実施形態に係る情報処理装置410の機能構成を示すブロック図である。なお、図5では、積層造形データ提供部412については省略している。
【0043】
情報処理装置410は、通信制御部501と、入出力インタフェース502と、表示部521と、操作部522と、図4Aに示したパラメータ調整部411と、を備える。なお、実際には、積層造形データ提供部412から本実施形態の試料となる造形物のデータが造形制御部421に送られるが、図5においては、積層造形データ提供部412は煩雑さを避けるため省略している。
【0044】
通信制御部501は、積層造形装置420の造形制御部421と、造形試料撮像部430と、の通信を制御する。なお、通信制御部501は、他の外部装置との通信を制御してもよい。また、造形試料撮像部430は、通信制御部501を介さずに入出力インタフェース502に接続されてもよい。
【0045】
入出力インタフェース502は、表示部521や操作部522などの入出力機器とのインタフェースを行う。上述のように、造形試料撮像部430が接続されてもよい。
【0046】
パラメータ調整部411は、散在するパラメータ組生成部511と、プロセスウィンドウ生成部512と、データベース513と、を備える。また、パラメータ調整部411は、試料画像取得部514と、試料品質評価部515と、プロセスマップ生成部516と、境界決定部(機械学習)517と、を備える。さらに、パラメータ調整部411は、終了判定部518と、プロセスウィンドウ出力部519と、を備える。
【0047】
散在するパラメータ組生成部511は、プロセスウィンドウ生成部512が生成したプロセスウィンドウ内に、試料の評価結果から境界が決定可能なように、散在するパラメータ組を生成する。プロセスウィンドウ生成部512は、初期には、データベース513に保持された初期プロセスウィンドウ531を用い、その後の繰り返しでは、境界決定部517で決定された境界を含む領域を新たなプロセスウィンドウとして生成する。データベース513は、初期プロセスウィンドウ531と、更新中プロセスウィンドウ532と、調整済プロセスウィンドウ533と、を保持する。なお、詳細な説明は省略するが、データベース513には、他のパラメータ調整部411の機能構成部が使用するデータも保持されている。
【0048】
試料画像取得部514は、通信制御部501または入出力インタフェース502を介して、造形試料撮像部430が撮像した造形試料の画像を取得する。試料品質評価部515は、試料画像取得部514が取得した造形試料の画像から、後述の試料品質評価テーブル710を用いて、試料の品質を評価する。例えば、試料の造形サイズ、試料周囲のギザギザ、試料表面の凹凸、試料表面の粉末残、などが評価の基準となる。なお、試料品質評価部515は、積層造形された試料を撮像部により撮像するよう指示する撮像指示部と、撮像部で撮像された試料の画像に基づいて、試料の品質を評価して評価値を割り当てる評価値割当部と、を有する。プロセスマップ生成部516は、試料品質評価部515の評価結果をプロセスウィンドウにマッピングすることでプロセスマップを生成する。境界決定部(機械学習)517は、プロセスマップ生成部516が生成したプロセスマップから、機械学習を用いて評価結果の決定関数を求め境界を決定する。なお、本実施形態においては、機械学習としてサポートベクターマシンを用いたが、ロジスティック回帰、k近傍法、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、または、ナイーブベイズ判定によって境界を決定してもよく、同様の効果を奏する。
【0049】
終了判定部518は、試料の造形→観察→評価→プロセスウィンドウ構築の繰り返しの終了を判定する。判定基準は、例えば、プロセスウィンドウに変化が無くなる、もしくは、ベースプレートから最表面までの高さがあらかじめ設定した値(装置で可能な最大造形高さ)を超える、の条件を含む。すなわち、境界が決定できない状態になった場合、または、所定回数の繰り返しを終了した場合に、繰り返しを終了する。プロセスウィンドウ出力部519は、終了判定部518が繰り返しの終了を判定した場合に、現在生成されているプロセスウィンドウを表示部521に提示して、ユーザのパラメータ設定を支援する提示部として機能する。なお、現在生成されているプロセスウィンドウをそのまま提示しても、プロセスウィンドウ内の品質保証が可能な範囲にパラメータを設定できるように提示して支援することもできる。
【0050】
(プロセスウィンドウ)
図6は、本実施形態に係るプロセスウィンドウ620、640を説明する図である。
【0051】
図6のプロセスウィンドウ設定値610は、プロセスウィンドウ620を生成するための値である。プロセスウィンドウ設定値610としては、Scan Speed範囲611とCurrent範囲612とが設定されている。
【0052】
図6のプロセスウィンドウ設定値630は、プロセスウィンドウ640を生成するための別の値である。プロセスウィンドウ設定値630としては、Current範囲631とSpeed Function範囲632とが設定されている。なお、Speed Function(SF)は、走査速度と電流値との関係として知られ、スキャン速度の指標としてプロセスマップの軸となるパラメータの1つとして用いられる。本実施形態においては、プロセスウィンドウ640が使用され、境界を跨ぐ試料品質の評価結果が得られるようにパラメータ組641、642、…、64nが生成される。ここで、Current(電流値)は、レーザや電子ビームなどの熱源出力に対応する熱源に供給される電流値である。なお、パラメータ組641、642、…、64nの生成は、境界を跨ぐ試料品質の評価結果が得られるのであれば図6に限定されない。
【0053】
なお、図6においては、図示の限界から2つのパラメータによる2次元のプロセスウィンドウ620、640を示したが、走査線間隔、走査線長さ、積層厚み、造形温度、および、ビーム径などの他のパラメータも含むn次元のプロセスウィンドウであってもよい。ただし、試料の造形→観察→評価→プロセスウィンドウ構築の繰り返しにおいて変化しない、あるいは、変更できない固定パラメータについては、プロセスウィンドウの次元から省いてもよい。また、n次元のパラメータからプロセスウィンドウでの境界を求めるのに適切なパラメータを選択するのが望ましい。
【0054】
(試料品質12評価テーブル)
図7Aは、本実施形態に係る試料品質評価テーブル710の構成を示す図である。試料品質評価テーブル710は、試料の画像から試料の品質を評価するために試料品質評価部515が使用する。また、各評価指標テーブル721〜724は、試料品質評価テーブル710の各評価指標の評価例を示すテーブルである。
【0055】
まず、図7Bを参照に、本実施形態に係る試料品質評価方法720を説明する。
【0056】
図7Bの入熱過多(High energy)721においては、粉末層が深くまで溶融して表面に凹凸ができ、その凹部分に次の粉末が入り込み、その結果、造形物内に未溶融粉末が残り微細な形状ができず表面に凹凸ができる。また、レーザ溶融法では気泡が残存するキーホール型の欠陥になる。
【0057】
図7Bの入熱不足(Low energy)723においては、粉末層の表面に溶融しない粉末が残り、その上に次の粉末が積層され、その結果、溶融が不完全となって表面に凹凸ができる。
【0058】
そして、入熱過多(High energy)の試料形状と、入熱不足(Low energy)の試料形状との間に、入熱最適(Optimum energy)722があり、微細な形状ができ表面が平になるとして、本実施形態においては試料評価結果における境界の決定を繰り返す。
【0059】
図7Aの試料品質評価テーブル710は、評価条件として、試料の造形サイズ良否711、側面の凹凸大小712、試料表面の凹凸大小713、試料表面の粉末残多少714、その他715の、試料の画像から認識した判定結果を記憶する。そして、評価条件の総合評価として評価結果716を記憶する。なお、図7Aにおいては、どの評価条件の1つにおいても“×”があれば、評価結果716は“×”としている。しかしながら、評価基準に評価に関わる重みを付けて、トータルスコアに基づいた評価をしてもよい。また、評価条件を図7Aの一部にして、初期段階では評価を簡略化してもよい。
【0060】
図7Aの評価指標テーブル721は、撮像画像から試料の造形サイズ良否711を判定するためのテーブルである。評価指標テーブル721により、例えば造形サイズ(径)と径の閾値とを比較して、造形目標サイズとのズレにより良否を判定する。評価指標テーブル722は、撮像画像から試料の側面の凹凸大小712を判定するためのテーブルである。評価指標テーブル722により、例えば造件サイズ(径)のバラツキや、画像から抽出した造形物の周囲の輪郭の長さなどから、試料の側面の凹凸が大きいか/小さいかを判定する。評価指標テーブル723は、撮像画像から試料の表面の凹凸大小713を判定するためのテーブルである。評価指標テーブル723により、例えば画像の輝度のバラツキや、奥行きの異なる(焦点の異なる)画像の表面の相違などから、試料の表面の凹凸が大きいか/小さいかを判定する。評価指標テーブル724は、撮像画像から試料の表面に残った未溶融の粉末の多少714を判定するためのテーブルである。評価指標テーブル724により、例えば表面画像の階調の変化(周波数)や、表面の凹凸の細かさなどから、試料の表面の未溶融の粉末が多いか/少ないかを判定する。なお、各評価指標の判定条件は、これらに限定されない。
【0061】
(プロセスマップ)
図8Aは、本実施形態に係るプロセスマップ820を説明する図である。プロセスマップ820は、図6のプロセスウィンドウ620に試料品質の評価結果をマッピングしたプロセスマップである。
【0062】
プロセスマップ820を生成するための、試料品質の評価結果のテーブル810を示す。テーブル810は、造形された各試料にScan Speed(SF)811とCurrent812とに対応付けて、評価結果813を記憶し、この評価結果813がマッピングされる。
【0063】
図8Bは、本実施形態に係る他のプロセスマップ850を説明する図である。プロセスマップ850は、図6のプロセスウィンドウ640に試料品質の評価結果をマッピングしたプロセスマップである。
【0064】
プロセスマップ850を生成するための、試料品質の評価結果のテーブル840を示す。テーブル840は、造形された各試料にCurrent841とSpeed Function(SF)842とに対応付けて、評価結果843を記憶し、この評価結果843がマッピングされる。図8Bには、Speed Function(SF)842と、Current[mA]およびSpeed[mm/s]との関係830を示している。
【0065】
なお、本実施形態においては、図8Bのプロセスマップ850に基づいて、機械学習を行う。しかしながら、プロセスマップは図8Bのプロセスマップ850に限定されない。
【0066】
(機械学習:サポートベクターマシン)
図9Aおよび図9Bは、本実施形態に係る機械学習を説明する図である。
【0067】
図9Aは、本実施形態における機械学習である、サポートベクターマシンによって境界を決定する様子を示している。入力空間910のように実際の境界は直線にならないことが多く、座標変換関数940による座標変換により境界が直線となる特徴空間920に変換して、境界を求める。そして、その境界を表す決定関数950を逆変換することにより、入力空間910での境界を示す。境界を表す決定関数950は“0”であり、この決定関数からの距離が大きい程、外乱などの影響があっても安定した品質の積層造形が可能であることを示している。
【0068】
ここで、図9Aのプロセスウィンドウ961、962は、サポートベクターマシンによって決定された境界を含む領域を含む新たなプロセスウィンドウの例である。プロセスウィンドウ961は、境界全体を含むプロセスウィンドウの例であり、プロセスウィンドウ962は、境界をさらに明確にしたい領域のみを含むプロセスウィンドウの例である。なお、新たなプロセスウィンドウの生成方法は、図9Aに限定されず、機械学習により境界の精度を高められるように好適なプロセスウィンドウが生成される。なお、新たなプロセスウィンドウを生成せずに、元のプロセスウィンドウ内でのパラメータ組の選択領域を境界を含む領域に限定してもよい。
【0069】
また、サポートベクターマシンによる境界マージン内にも評価結果が存在する場合、図9Bに示すようにハードマージン970でなく、境界マージン内の評価結果も考慮したソフトマージン980を採用する。
【0070】
なお、サポートベクターマシンによる処理の詳細については、[非特許文献3]を参照されたい。さらに、境界を決定する機械学習としては、サポートベクターマシンの他に、ロジスティック回帰、k近傍法、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、または、ナイーブベイズ判定などがあり、これらも使用でき同様の効果を奏する。
【0071】
(プロセスウィンドウの提示)
図10は、本実施形態に係るプロセスウィンドウの提示例を示す図である。表示部521には、プロセスウィンドウ生成部により生成された積層造形の品質を保障するプロセスウィンドウを示す情報が、ユーザによる少なくとも2つのパラメータの組の設定を支援する情報として、ユーザに提示される。
【0072】
図10の提示例1010は、最終的なプロセスウィンドウ1011と、ユーザが入力するパラメータの入力領域1013とが表示されている。ユーザは、かかるプロセスウィンドウ1011を参照しながら、適切なパラメータを入力する。ここで、星印1012は、プロセスウィンドウ1011内の入力値に対応する位置を示している。このようにすれば、ユーザは境界線から離れた安定して品質を保証できるパラメータを入力できる。
【0073】
図10の提示例1020は、最終的なプロセスウィンドウ1021と、適切なパラメータの範囲内でユーザが入力できる設定領域1023,1024とが表示されている。ユーザは、かかるプロセスウィンドウ1021を参照しながら、設定領域1023,1024内の適切なパラメータが設定できる。ここで、星印1022は、プロセスウィンドウ1021内の設定値に対応する位置を示している。このようにすれば、ユーザは境界線から離れた安定して品質を保証できるパラメータを設定できる。
【0074】
そして、入力あるいは設定されたパラメータ組を用いて、積層造形指示部として、積層造形装置420の造形制御部421に対して積層造形物の積層造形を指示する。なお、プロセスウィンドウの提示例は図10に限定されず、ユーザが容易にかつ安定的に選択可能なユーザインタフェースであればよい。
【0075】
《情報処理装置のハードウェア構成》
図11は、本実施形態に係る情報処理装置410のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0076】
図11で、CPU(Central Processing Unit)1110は演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで図5の機能構成部を実現する。CPU1110は1つであっても複数であってもよい。ROM(Read Only Memory)1120は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびプログラムを記憶する。ネットワークインタフェース1130は、ネットワークを介して、造形制御部421や造形試料撮像部430との通信を制御する。
【0077】
RAM(Random Access Memory)1140は、CPU1110が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM1140には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する領域が確保されている。プロセスウィンドウ620、640は図6に示したプロセスウィンドウを示すデータである。散在するパラメータ組641〜64nは、図6に示したパラメータ組を示すデータである。試料の画像データ1141は、造形試料撮像部430が撮像した試料の画像のデータであり、その特徴量を含む。試料品質判定結果1142は、試料の画像特徴量と試料品質判定テーブル710とに基づいて判定された試料の品質判定結果のデータである。プロセスマップ820,850は、図8Aおよび図8Bに示した、プロセスマップを示すデータである。座標変換関数940は、図9Aに示した座標変換関数のデータである。決定関数950は、図9Aに示した境界を表す決定関数のデータである。新たなプロセスウィンドウ961、962は、図9Aに示したプロセスウィンドウ生成部が境界を考慮して新たに生成するプロセスウィンドウのデータである。終了フラグ1144は、繰り返しを終了するためのデータである。入出力データ1145は、入出力インタフェース502に接続された入出力機器と入出力されるデータである。送受信データ1146は、ネットワークインタフェース1130を介して、外部装置と送受信されるデータである。
【0078】
ストレージ1150は、CPU1110が使用する、データベースや各種のパラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。境界決定機械学習アルゴリズム1151は、プロセスマップの試料品質評価結果から境界を決定する機械学習アルゴリズムである。本実施形態では、サポートベクターマシンが用いられる。試料品質判定テーブル710は、図7Aに示した、試料の画像から試料の品質を評価するためのテーブルである。終了条件1152は、図2のステップS209で記載した繰り返しの終了条件を格納する。
【0079】
ストレージ1150には、以下のプログラムが格納される。情報処理プログラム1153は、情報処理装置410全体を制御するプログラムである。パラメータ調整モジュール1154は、パラメータ調整部411を実現するモジュールである。パラメータ調整モジュール1154には、図5の機能構成部に対応して、プロセスウィンドウ生成モジュール、散在パラメータ組生成モジュール、試料画像取得モジュール、試料品質評価モジュール、プロセスマップ生成モジュール、境界決定モジュール、が含まれる。また、ストレージ1150には、積層造形データ提供モジュール1055も保持されている。
【0080】
入出力インタフェース502には、入出力機器として、表示部521や操作部522が接続される。また、造形試料撮像部430が入出力インタフェース502にに接続されてもよい。
【0081】
なお、図11のRAM1140やストレージ1150には、情報処理装置410が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関連するプログラムやデータは図示されていない。
【0082】
《情報処理装置の処理手順》
図12は、本実施形態に係る情報処理装置410の処理手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、図11のCPU1110がRAM1140を使用して実行し、図5の機能構成部を実現する。また、図12では、試料の積層造形間の粉末層生成指示の処理は省かれている。
【0083】
情報処理装置410は、ステップS1201において、プロセスウィンドウ内に散在するパラメータ組を設定する。情報処理装置410は、ステップS1203において、パラメータ組を用いた試料の積層造形を積層造形装置420に指示する。情報処理装置410は、ステップS1205において、積層造形された試料の画像を造形試料撮像部430から取得する。情報処理装置410は、ステップS1207において、取得した画像に基づいて、試料の品質評価を実行する。情報処理装置410は、ステップS1209において、試料の品質評価をプロセスウィンドウ内にマッピングしたプロセスマップを生成する。
【0084】
情報処理装置410は、ステップS1211において、プロセスマップにおける境界を、機械学習により決定する。情報処理装置410は、ステップS1213において、終了条件として、例えば境界精度は十分か否かを判定する。終了条件を満たしてなければ、情報処理装置410は、ステップS1215において、境界を含む境界領域を、新たなプロセスウィンドウとして、ステップS1201からの処理を繰り返す。
【0085】
終了条件を満たしていれば、情報処理装置410は、ステップS1217において、最終的に決定された境界により分離されたプロセスウィンドウを、積層造形の品質を保障するプロセスウィンドウとする。そして、情報処理装置410は、ステップS1219において、積層造形の品質を保障するプロセスウィンドウを表示部521からユーザに提示する。
【0086】
本実施形態によれば、パラメータ生成処理、積層造形指示処理、品質評価処理および境界決定処理を自動的に繰り返すことで積層造形の品質を保障するプロセスウィンドウを生成するので、コストと時間とを節約しながら、汎用的なプロセスウィンドウを構築することができる。
【0087】
すなわち、本実施形態は、(1)ある程度の高さの粉末層を形成、(2)ある程度の高さまで造形、(3)造形装置に実装したモニタリング装置での造形物表面の観察、(4)その表面形態を基に種々の造形条件を機械学習で分類、(5)不足データ点の決定・条件の追加、の手順を繰り返すことで、装置から造形物を取り出して密度などを評価することはない。また、造形試験の完了と同時に、プロセスウィンドウ構築と造形欠陥の入りにくいプロセス条件決定も完了する。したがって、ほぼ全ての工程で人の手を介する必要が無く自動で実施できるため、プロセスウィンドウ構築に要するコストと時間を大幅に削減する効果がある。
【実施例】
【0088】
以下、上記実施形態にしたがって実施した実施例とその結果について説明する。なお、以下の説明は、簡略化のためにある一巡のプロセスウィンドウ構築を説明するが、その繰り返しが同様に行われて適切なパラメータ条件のプロセスウィンドウが生成されることになる。
【0089】
(処理条件)
図13は、本実施例に係る処理条件を示す図である。
【0090】
本実施例で造形する試料は、医療用のCoCrMo合金(ASTM F75)の金属粉末である。かかる金属粉末を、Arcam A2X1310(Arcam社製)により、直径5mm、高さ5mmのパラメータ組の異なる11個の試料を造形した。
【0091】
各試料の表面画像を取得し、その特徴量から品質の良否判定を実行して、プロセスマップを生成した。かかるプロセスマップの品質の良否の境界を、サポートベクターマシンを用いて決定した。そして、決定された境界を含む領域を新たなプロセスウィンドウとして生成し、さらに異なるパラメータ組により11個の試料を造形した。
【0092】
このようにして、11個の試料を、粉末層を挟んで6層積層して、適切なパラメータ組の領域(プロセスウィンドウ)を決定した。
【0093】
本実施例には、造形時の温度履歴1330に示すように、試料造形には3時間、全体処理には7時間程を要した。しかしながら、造形試料の切断などの加工を必要とせず、一連の処理が自動的に行われ、実質的には積層造形装置による試料造形時間しか要しなかった。
【0094】
以下、試料画像、プロセスマップ、機械学習結果、については、繰り返しの一巡を示して、全体の手順の説明は省略する。
【0095】
(試料画像)
図14は、本実施例に係る試料画像1400を示す図である。
【0096】
試料画像1400には、同時に並列して造形した11個の試料の表面画像が示されている。この中で、○を記載した試料が正常と判断される試料であり、×を記載した試料が不良と判断される試料である。
【0097】
例えば、最初の(SF15,30.6mA)の組や4番目の(SF25,43.9mA)の組では、造形サイズが大きく(8mm>5mm)、周囲に凹凸があり、不良と判断された。入熱過多(High energy)が原因と思われる。2番目の(SF45,42.3mA)の組や3番目の(SF55,14.5mA)の組では、試料表面に金属粉末の残りが認識され、不良と判断された。入熱不足(Low energy)が原因と思われる。
【0098】
以上のように、11個の試料が、入熱過多(High energy)から入熱不足(Low energy)までを含んでおり、そのプロセスマップにおける境界が決定可能となるパラメータ組として造形されたことが分かる。
【0099】
(プロセスマップ)
図15Aは、本実施例に係るプロセスマップ1510を示す図である。
【0100】
図15Aは、図14の試料の評価結果を画像でプロセスウィンドウ内にマッピングしたものである。
【0101】
(機械学習結果)
図15Bは、本実施例に係る機械学習結果1520を示す図である。
【0102】
図15Bは、図15Aの画像位置を○(+1)/×(−1)として割り当て、サポートベクターマシンを用いて、境界を表す決定関数を求めた結果を示している。図15Bには、境界部分を明瞭とするため仮の破線1521で示されている。
【0103】
(最適条件)
図16は、本実施例に係る最適条件で造形された試料1620(1630)を示す図である。
【0104】
図15Bで求められた境界で隔てられた、パラメータ組の正常領域において、境界から離れた最適位置1610のパラメータ組(SF22,7.00mA)を最適条件として、直径5mm、高さ5mmの同じ試料を造形した。なお、図16の両矢印は、境界から所定距離以上離れた外乱による影響の無い安定した適切なパラメータ範囲を示している。
【0105】
その結果、図14において正常と判断された試料よりも歪みのない試料1620が得られた。図14と同じ倍率の画像1630を示す。
【0106】
このように、本実施例により、コストと時間とを節約しながら最適条件に近いパラメータ組を含むプロセスウィンドウを、ユーザに提示することが可能となった。
【0107】
本実施例によれば、コストと時間とを節約しながら汎用的なプロセスウィンドウが構築されるので、最適条件となるパラメータを設定して試料造形することができた。
【0108】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る情報処理装置について説明する。本実施形態に係る情報処理装置は、上記第2実施形態と比べると、積層造形の多様なパラメータを変化させながら試料を造形可能である点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0109】
《積層造形システム》
図17は、本実施形態に係る情報処理装置1710を含む積層造形システム1700の構成を示すブロック図である。本実施形態において、情報処理装置1710が積層造形の多様なパラメータを変化させながら試料を造形可能とするためには、積層造形装置1720が、一連の造形中に多様なパラメータを変更できることがその条件となる。
【0110】
図17において、積層造形装置1720の造形制御部1721は、情報処理装置1710からの多様なパラメータの変更指示に対応して、積層造形中にも積層造形部1722の造形を変更する。造形制御部1721には、電流値制御部、走査速度制御部、走査線間隔制御部、走査線長さ制御部、積層厚み制御部、造形温度制御部(予熱制御部)、ビーム径制御部などが準備される。また、積層造形部1722も、造形制御部1721の制御に従って、積層造形中も処理条件を変更する。
【0111】
(プロセスマップ)
図18は、本実施形態に係るプロセスマップのテーブル1840の構成を示す図である。プロセスマップのテーブル1840は、n次元のプロセスマップを生成するために使用する。
【0112】
プロセスマップのテーブル1840は、Current1841、Speed Function1842、走査線間隔1843、走査線長さ1844、積層厚み1845、造形温度1846、ビーム径1847、その他のParameters1848の次元数に対応付けて、評価結果1849を記憶する。かかるプロセスマップのテーブル1840に基づいてプロセスマップが生成され、機械学習によりn次元の境界が決定されることになる。
【0113】
本実施形態によれば、電流値と走査速度とに限定されず、走査線間隔、走査線長さ、積層厚み、造形温度、および、ビーム径なども変化させながら、適切な条件のプロセスウィンドウを生成することができる。なお、積層造形の多様なパラメータは、本実施形態に記載のパラメータに限定されるものではない。
【0114】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る情報処理装置について説明する。本実施形態に係る情報処理装置は、上記第2実施形態および第3実施形態と比べると、本実施形態のパラメータのキャリブレーション(調整)の後、ユーザ設定操作を介さずに自動的に適切なパラメータ組が設定されて積層造形物が造形される点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0115】
《情報処理装置の機能構成》
図19は、本実施形態に係る情報処理装置1910の機能構成を示すブロック図である。なお、図19において、図5と同様の機能構成部には同じ参照番号を付して、重複する説明を省略する。
【0116】
情報処理装置1910のパラメータ調整部2011は、自動的に適切なパラメータ組を設定する適切なパラメータ組生成部1920をさらに備える。適切なパラメータ組生成部1920は、プロセスウィンドウ出力部519からの出力、適切なパラメータ組の領域が明瞭になったプロセスウィンドウ、に基づいて、外乱によっても影響のない(境界からの距離が遠い)適切なパラメータ組を選んで積層造形を開始する。
【0117】
本実施形態によれば、ユーザの設定によらず適切なパラメータが設定されて、品質が保証された積層造形物を自動的に造形することができる。なお、ユーザが積層造形物や材料によりパラメータ組の条件を予め設定し、その条件を考慮して情報処理装置が自動的に適切なパラメータ組を設定する構成であってもよい。
【0118】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る情報処理装置について説明する。本実施形態に係る情報処理装置は、上記第2実施形態乃至第4実施形態と比べると、積層造形物を造形中にもパラメータ組の調整を並列して行う点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0119】
《情報処理装置の機能構成》
図20は、本実施形態に係る情報処理装置2010の機能構成を示すブロック図である。なお、図20において、図5と同様の機能構成部には同じ参照番号を付して、重複する説明を省略する。
【0120】
情報処理装置2010のパラメータ調整部2011は、積層造形物を造形中にもパラメータ組の調整を並列して行う調整したパラメータ組生成部2021をさらに備える。調整したパラメータ組生成部2021は、プロセスウィンドウ生成部512から調整されたプロセスウィンドウを取得し、そのプロセスウィンドウ内に調整されたパラメータ組を生成して、造形中の積層造形物をさらに改善する。なお、調整したパラメータ組生成部2021は、例えば、パラメータ組が境界に近付いた場合に境界から遠ざかるように調整する。閾値とパラメータ組の境界からの距離との比較に基づいてもよい。さらに、パラメータ組の調整タイミングは、各積層毎であっても、所定積層数毎であっても、積層造形物の造形毎であってもよい。
【0121】
本実施形態によれば、積層造形物の造形中においても適切なパラメータに調整されて、品質が保証された積層造形物を造形することができる。
【0122】
[他の実施形態]
本実施形態においては、機械学習としてサポートベクターマシンを用いたが、ロジスティック回帰、k近傍法、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、または、ナイーブベイズ判定などのよって、境界を決定しても同等の効果が得られる。
【0123】
また、本実施形態は、金属粉末を用いて積層造形する金属積層造形への適用に限定されない。
【0124】
また、本実施形態においては、電子ビーム溶融法によるパウダーベッド法を主に説明したが、レーザ溶融法に適用されても同様の効果を奏する。さらに、パウダーデポジション法に適用されても同様の効果を奏する。
【0125】
また、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0126】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20