(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクス(power electronics、略称パワエレ)は、電気の直流、交流または周波数などの変換などを迅速、かつ、効率的に行う技術である。パワエレでは、従来からの電力工学に加え、近年の半導体を基礎とした電子工学と制御工学とが融合された技術である。このようなパワエレは、今日では動力用、産業用、輸送用、さらには家庭用など、電気が使われるところには必ずといってよいほど応用されている。
【0003】
近年、全エネルギー消費に占める電気エネルギーの比率、すなわち、電力化率は、日本のみならず、世界的にみても上昇傾向が続いている。その背景として、近年では、電気の利用面において利便性及び省エネルギー性に優れた機器が開発され、電気の利用率が向上していることが挙げられる。これらの基礎を担っている技術が、パワエレ技術である。
【0004】
パワエレ技術は、変換対象となる電気の状態(例えば、周波数、電流または電圧の大きさなど)がいかなるものであれ、利用する機器に適した電気の状態に入力を変換する技術であるともいえる。パワエレ技術における基本要素は、整流部及びインバータである。そして、それらの基礎をなすのが、半導体、ひいては半導体を応用したダイオードまたはトランジスタなどの半導体素子である。
【0005】
現在のパワエレ分野において、半導体整流素子であるダイオードは、電気機器をはじめとする、様々な用途に利用されている。そして、ダイオードは、幅広い範囲の周波数帯に応用されている。
【0006】
近年では、高耐圧、かつ、大容量の用途において、低損失、かつ、高周波数で動作可能なスイッチング素子が開発され、実用化されている。また、半導体素子に用いられる材料もワイドギャップ材料に移行し、素子の高耐圧化が図られている。高耐圧化が図られる代表的な素子としては、ショットキーバリアダイオード(Schottky barrier diode、すなわち、SBD)、または、pnダイオード(PND)などがあり、これらのダイオードは、様々な用途に幅広く使われている。
【0007】
酸化ガリウムを半導体層に利用した素子として、特許文献1に例示されるような、トレンチMOS型SBDが開発されている。一般的に、絶縁破壊強度の大きな半導体材料を用いたSBDに逆方向電圧を印加すると、アノード電極と半導体材料層との間のリーク電流が大きくなってしまう。これに対して特許文献1のトレンチMOS型SBDによれば、アノード電極端にかかる電界を分散、緩和し、素子の逆方向耐圧を向上させることが可能となっている。
【0008】
また、特許文献2に例示された技術では、終端構造とドリフト層との界面であるpn接合部から発生する空乏層によって、電界集中を緩和する。これによって、半導体装置の順方向電圧及び逆方向リーク電流を低減することができ、整流動作を簡単に行うことが可能となっている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付される図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさ及び位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得る。
【0018】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0019】
<実施の形態1>
以下、本実施の形態1に係る酸化物半導体装置、及び、酸化物半導体装置の製造方法について説明する。まず、本実施の形態1に係る酸化物半導体装置の構成について説明をする。なお、以下の説明では、酸化物半導体装置を「半導体装置」とのみ記載することもある。
【0020】
図1は、本実施の形態1に係る半導体装置を実現するための構造を概略的に例示する断面図である。本実施の形態1に係る半導体装置では、ショットキーバリアダイオード(SBD)の終端構造にp型酸化物半導体層6が配設されている。
【0021】
以下、本実施の形態1に係る半導体装置は、基板上側の電極をアノード電極1として有し、基板下側の電極をカソード電極2として有するSBDであるものとして説明する。しかしながら本実施の形態1に係る半導体装置は、SBDに限定されるものではなく、スイッチング素子などの他のパワーデバイス素子などであってもよい。
【0022】
図1に例示される半導体装置は、n型酸化ガリウム層を備える。以下、n型酸化ガリウム層が、n型単結晶酸化ガリウム基板3及びn型酸化ガリウムエピタキシャル層4を含む例について説明するが、n型酸化ガリウム層はこの例に限ったものではない。
【0023】
n型単結晶酸化ガリウム基板3は、上面(第1主面)と、上面の逆側の下面(第2主面)とを有するn型酸化物半導体である。n型酸化ガリウムエピタキシャル層4は、n型単結晶酸化ガリウム基板3の上面上に配設されたエピタキシャル層である。
【0024】
図1に例示される半導体装置は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4の上面上に、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4と電気的にショットキー接合された第1電極であるアノード電極1を備える。また、
図1に例示される半導体装置は、n型単結晶酸化ガリウム基板3の下面上に、n型単結晶酸化ガリウム基板3の下面と電気的にオーミック接合された第2電極であるカソード電極2を備える。
【0025】
図1に例示される半導体装置は、ガリウムと異なる元素を主成分として有し、p型の導電性を有するp型酸化物半導体層6を備える。本実施の形態1では、互いに離間された複数のp型酸化物半導体層6が、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4の上面から内部に埋設されているが、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4の上方に配設されていればよい。なお、上述したアノード電極1は、p型酸化物半導体層6と電気的にオーミック接合されている。
【0026】
図1に例示される半導体装置は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4とp型酸化物半導体層6との間に配設され、これらを隔てる酸化物層7を備える。酸化物層7の材料は、酸化ガリウムと異なる材料であり、かつp型酸化物半導体層6の材料と少なくとも一部が異なる材料である。酸化物層7の材料が、p型酸化物半導体層6の材料と少なくとも一部が異なる材料であることは、例えば、(i)酸化物層7の化合物がp型酸化物半導体層6の化合物と異なること、(ii)酸化物層7の複数の化合物のうちの一部の化合物がp型酸化物半導体層6の化合物と同じであるが、残部の化合物がp型酸化物半導体層6の化合物と異なること、(iii)p型酸化物半導体層6の複数の化合物のうちの一部の化合物が酸化物層7の化合物と同じであるが、残部の化合物が酸化物層7の化合物と異なること、などを含む。
【0027】
このような酸化物層7により、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4とp型酸化物半導体層6との間のpn界面における化学反応を抑制することができ、正常な界面を維持することができる。この結果、酸化物半導体装置の例えば耐熱性及び耐圧性などの特性の劣化を抑制することができる。
【0028】
図1に例示される半導体装置は、終端構造においてn型酸化ガリウムエピタキシャル層4とアノード電極1との間に配設されたフィールドプレート用絶縁材料層5を備える。フィールドプレート用絶縁材料層5とアノード電極1とが積層された部分がフィールドプレート構造を構成することによって、半導体装置に逆電圧が印加された場合の半導体装置の耐圧が向上している。
【0029】
次に、上述した構成要素についてさらに詳細に説明する。
【0030】
n型単結晶酸化ガリウム基板3は、Ga
2O
3の単結晶からなるn型の酸化物半導体であり、より好ましくは、β−Ga
2O
3の単結晶からなるn型の酸化物半導体である。n型単結晶酸化ガリウム基板3は、結晶中の酸素欠損によってn型の伝導性を示すため、n型不純物を含まなくてもよいが、シリコン(Si)または錫(Sn)などのn型不純物を含むものであってもよい。すなわち、n型単結晶酸化ガリウム基板3は、酸素欠損のみでn型の伝導性を示すもの、n型不純物のみでn型の伝導性を示すもの、及び、酸素欠損とn型不純物との両方でn型の伝導性を示すものうちのいずれであってもよい。
【0031】
n型不純物を含むn型単結晶酸化ガリウム基板3の電子キャリア濃度は、酸素欠損とn型不純物との合計の濃度となる。n型単結晶酸化ガリウム基板3の電子キャリア濃度は、例えば、1×10
17cm
−3以上、かつ、1×10
19cm
−3以下であってよい。また、n型単結晶酸化ガリウム基板3とカソード電極2とのコンタクト抵抗を低減するために、不純物濃度は、その数値範囲よりも高濃度であってもよい。
【0032】
n型酸化ガリウムエピタキシャル層4は、n型単結晶酸化ガリウム基板3の上面上に配設される。n型酸化ガリウムエピタキシャル層4は、Ga
2O
3の単結晶からなるn型の酸化物半導体であり、より好ましくは、β−Ga
2O
3の単結晶からなるn型の酸化物半導体である。n型酸化ガリウムエピタキシャル層4のn型キャリア濃度は、n型単結晶酸化ガリウム基板3よりも低濃度であることが望ましく、例えば、1×10
15cm
−3以上、かつ、1×10
17cm
−3以下であってよい。
【0033】
カソード電極2は、n型単結晶酸化ガリウム基板3の下面上に配設される。カソード電極2は、n型単結晶酸化ガリウム基板3とオーミック接合されるため、n型単結晶酸化ガリウム基板3の仕事関数よりも仕事関数が小さい金属材料で構成されることが好ましい。また、n型単結晶酸化ガリウム基板3の下面上にカソード電極2を形成した後の熱処理によって、n型単結晶酸化ガリウム基板3とカソード電極2との接触抵抗が小さくなるような金属材料で、カソード電極2が構成されることが好ましい。
【0034】
このような金属材料としては、例えば、チタン(Ti)であってよい。また、カソード電極2は、複数の金属材料を積層して構成されてもよい。例えば、n型単結晶酸化ガリウム基板3の下面に酸化しやすい金属材料が接触している場合には、当該金属材料の下面上に酸化しにくい金属材料をさらに形成した積層構造のカソード電極2を構成してもよい。例えば、n型単結晶酸化ガリウム基板3に接触するTiからなる第1層を配設し、第1層の下面上に、金(Au)または銀(Ag)からなる第2層を配設することによってカソード電極2を構成してもよい。また、カソード電極2は、n型単結晶酸化ガリウム基板3の下面の全体に配設されてもよく、n型単結晶酸化ガリウム基板3の下面の一部に配設されてもよい。
【0035】
アノード電極1は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4の上面上に配設される。アノード電極1は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4とショットキー接合されるため、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4の仕事関数よりも仕事関数が大きい金属材料で構成されることが好ましい。さらに、アノード電極1は、p型酸化物半導体層6とオーミック接合されるため、p型酸化物半導体層6(p型酸化物半導体材料)の仕事関数よりも仕事関数が小さい金属材料で構成されることがより好ましい。
【0036】
このような金属材料としては、例えば、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、金(Au)、または、パラジウム(Pd)であってよい。アノード電極1は、カソード電極2と同様に積層構造であってよい。例えば、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4とのショットキー接合に適した金属材料からなる第1層を、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4に接触させて配設し、第1層の上面上に、他の金属材料からなる第2層を配設することによってアノード電極1を構成してもよい。
【0037】
p型酸化物半導体層6は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4の上面からn型酸化ガリウムエピタキシャル層4内に埋設されている。p型酸化物半導体層6は、酸化銅(Cu
2O)、酸化銀(Ag
2O)、酸化ニッケル(NiO)、または、酸化錫(SnO)などのように、p型不純物を添加しなくてもp型の伝導性を示すp型酸化物半導体で構成される。例えば、金属酸化物であるCu
2Oでは、Cuの3d軌道がホール伝導を担う価電子帯上端を形成しており、Cu欠損に起因して正孔が発現するためp型の伝導性を示す。そして、Cu
2Oは酸化によってCuOに変化した場合には、Cuの3d軌道が価電子帯上端を形成しなくなり、p型の伝導性が消失する。p型酸化物半導体層6は、このような性質を有する金属酸化物からなるp型酸化物半導体で構成される。ここで説明したCu
2Oなどのように、p型酸化物半導体は、一般的にp型不純物を添加しなくてもp型の伝導性を示す。
【0038】
p型酸化物半導体層6は、上記のようにp型不純物を添加しなくてもp型の伝導性を示すp型酸化物半導体で構成されるが、p型不純物を添加してもよい。例えば、p型酸化物半導体層6がCu
2Oである場合には、窒素(N)をp型不純物として用いることができる。p型キャリア濃度は、p型不純物を添加していない場合には、p型酸化物半導体の金属原子欠損の濃度であり、p型不純物を添加した場合には、p型酸化物半導体の金属原子欠損とp型不純物との合計の濃度である。
【0039】
p型酸化物半導体層6にp型不純物が添加されている場合には、p型酸化物半導体の金属酸化物が酸化されてp型の伝導性を消失しても、p型酸化物半導体全体としてはp型不純物によってp型の伝導性を示す場合がある。ただし、p型酸化物半導体の金属酸化物が酸化されてその分のp型の伝導性を消失すると、p型酸化物半導体全体のp型の伝導性が低下するので、p型酸化物半導体の金属酸化物を酸化させないことが好ましい。
【0040】
フィールドプレート用絶縁材料層5は、例えば、二酸化ケイ素(SiO
2)または酸化アルミニウム(Al
2O
3)など材料で構成されている。これらの材料は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4を構成するGa
2O
3よりも絶縁破壊電界強度の大きな材料である。フィールドプレート用絶縁材料層5の層厚は数100nm程度であってよく、例えば、100nm以上、かつ、200nm以下であってよい。
【0041】
酸化物層7は、例えば、Cu
2OとAl
2O
3との混晶材料で構成される。酸化物層7は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4とp型酸化物半導体層6とを隔てるように、それらの界面全面に配設される。酸化物層7の膜厚は、特にp型酸化物半導体層6に含まれる金属酸化物が酸化物層7の混晶材料に含まれる場合は、3nm以上であることが望ましく、例えば、3nm以上かつ200nm以下であってよい。
【0042】
なお、例えば、酸化物層7の材料がCu
2O及びAl
2O
3からなる混晶材料であり、p型酸化物半導体層6の材料がAg
2Oである場合には、酸化物層7の化合物は、p型酸化物半導体層6の化合物と異なっている。また、例えば、酸化物層7の材料がCu
2O及びAl
2O
3からなる混晶材料であり、p型酸化物半導体層6の材料がCu
2Oである場合には、酸化物層7の化合物のうちの一部の化合物(Cu
2O)はp型酸化物半導体層6の化合物(Cu
2O)と同じであるが、残部の化合物(Al
2O
3)はp型酸化物半導体層6の化合物(Cu
2O)と異なっている。
【0043】
<酸化物半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態1に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0044】
まず、
図2に示すように、n型単結晶酸化ガリウム基板3を準備する。n型単結晶酸化ガリウム基板3には、融液成長法で作製されたβ−Ga
2O
3の単結晶バルクから基板状に切り出されたものを用いることができる。
【0045】
次に、
図3に示すように、n型単結晶酸化ガリウム基板3の上面上に、エピタキシャル成長によってn型酸化ガリウムエピタキシャル層4を堆積させる。n型酸化ガリウムエピタキシャル層4は、n型単結晶酸化ガリウム基板3の上面上に、有機金属化学気相堆積(metal organic chemical vapor deposition、すなわち、MOCVD)法、分子線エピタキシー(molecular beam epitaxy、すなわち、MBE)法、または、ハライド気相成長(halide vapor phase epitaxy、すなわち、HVPE)法などの方法によって形成することができる。
【0046】
次に、
図4に示すように、三塩化ホウ素(BCl
3)などのガスを用いたドライエッチング用を用いて、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4の上面に溝部であるトレンチ4aを形成する。トレンチ4aの形成方法は特に限定されるものではなく、ドライエッチング法やウェットエッチング法等の既存の形成方法を用いることができる。
【0047】
次に、
図5に示すように、n型単結晶酸化ガリウム基板3の下面上に、蒸着法またはスパッタリング法によってカソード電極2となる金属材料を堆積させる。例えば、電子ビーム蒸着(EB蒸着)でTi層をn型単結晶酸化ガリウム基板3の下面上に100nmの厚さで堆積させ、その後、電子ビーム蒸着でAg層を300nmの厚さで当該Ti層上に堆積させることによって、2層構造のカソード電極2を形成する。その後、例えば、窒素雰囲気または酸素雰囲気で550℃、かつ、5分間の熱処理を行う。この結果、n型単結晶酸化ガリウム基板3とオーミック接合されたカソード電極2が、n型単結晶酸化ガリウム基板3の下面上に形成される。なお、n型単結晶酸化ガリウム基板3とカソード電極2との間のコンタクト抵抗を低下させるために、カソード電極2の形成前に、BCl
3などのガスを用いたRIE処理をn型単結晶酸化ガリウム基板3の下面に行ってもよい。
【0048】
次に、トレンチ4aを覆うように、酸化物層7を形成する。酸化物層7の形成方法としては、次の2通りの方法がある。
【0049】
一つ目の方法は、
図6に示すように、同時スパッタ法やパルスレーザー堆積法(Pluse Laser Deposition、すなわち、PLD)法等の方法を用いて、所望の物性の酸化物層7をトレンチ4aに直接形成する方法である。この方法ではその後、
図7に示すように、酸化物層7上にp型酸化物半導体層6が形成され、トレンチ4aがp型酸化物半導体層6によって埋められる。
【0050】
二つ目の方法は、図示しないが、p型酸化物半導体層6形成後の熱処理により、酸化物層7を形成する方法である。例えば、p型酸化物半導体層6の材料がCu
2Oである場合、酸化物層7となる材料としてAl
2O
3を選択することができる。この場合、トレンチ4aにAl
2O
3膜を形成し、当該Al
2O
3膜上にCu
2Oからなるp型酸化物半導体層6を形成し、その後に熱処理を行うことにより、Al
2O
3膜はCu
2Oとの混晶酸化物となる。この結果、Cu
2OとAl
2O
3との混晶材料からなる酸化物層7を形成することができる。この場合、Al
2O
3膜の膜厚は3nm以上であることが好ましい。また、上記熱処理、つまり酸化物層7の形成温度は400℃以上であることが望ましく、400℃以上1200℃以下であることがさらに望ましい。
【0051】
次に、
図8に示すように、終端構造においてn型酸化ガリウムエピタキシャル層4及びp型酸化物半導体層6上にフィールドプレート用絶縁材料層5を形成する。フィールドプレート用絶縁材料層5の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、塗布ガラス(Spin−on Glass、すなわちSOG)法を用いて形成することができる。
【0052】
最後に、
図9に示すように、フィールドプレート用絶縁材料層5から露出されたn型酸化ガリウムエピタキシャル層4及びp型酸化物半導体層6上にアノード電極1を形成して、本実施の形態1に係る半導体装置が完成する。
【0053】
<実施の形態1のまとめ>
以上のような本実施の形態1に係る酸化物半導体装置によれば、材料が酸化ガリウムと異なる材料であり、かつp型酸化物半導体層6の材料と少なくとも一部が異なる材料である酸化物層7が、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4とp型酸化物半導体層6との間に配設されている。このような構成によれば、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4とp型酸化物半導体層6との間のpn界面における化学反応を抑制することができるので、酸化物半導体装置の例えば耐熱性及び耐圧性などの特性の劣化を抑制することができる。
【0054】
<実施の形態2>
図10は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置の構成を概略的に例示する断面図である。なお、本実施の形態2に係る半導体装置の製造方法は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法と同様である。
【0055】
実施の形態1に係る半導体装置(
図1)では、複数のp型酸化物半導体層6がガードリングとして終端構造に配設されていた。本実施の形態2に係る半導体装置(
図10)では、複数のp型酸化物半導体層6が終端構造だけでなく、素子部分にも配設されている。つまり、互いに離間された複数のp型酸化物半導体層6が、フィールドプレート用絶縁材料層5から露出されたn型酸化ガリウムエピタキシャル層4の上面に埋設されている。これにより本実施の形態2では、pn接合とショットキー接合とを組み合わせたMPS(Merged PiN/Schottky)構造が配設されている。
【0056】
MPS構造によれば、PNDのバイポーラ動作によって、SBD単体と比較して、定格を超える大きなサージ電流を小さな電圧降下で流すことができる。そのため、本実施の形態2のようにMPS構造が配設された酸化物半導体装置によれば、順方向サージ耐量が改善される。これにより、順方向電圧降下の増大を抑制し、かつ、順方向サージ耐量の高い、整流機能を有する半導体装置が実現できる。
【0057】
<実施の形態3>
図11は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置の構成を概略的に例示する断面図である。なお、本実施の形態2に係る半導体装置の製造方法は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法と同様である。
【0058】
図11に例示される半導体装置では、トレンチ4aの底面、ひいてはp型酸化物半導体層6及び酸化物層7のそれぞれの底面が、実施の形態2に例示された半導体装置(
図10)のこれらの底面と異なっている。つまり本実施の形態3では、
図11に例示されるように、p型酸化物半導体層6及び酸化物層7のそれぞれの底面は湾曲しており、概ね円弧状を有している。このような本実施の形態3に係る酸化物半導体装置によれば、逆方向電圧が印加された場合に、電界集中を緩和することができるので、逆方向耐圧の向上が期待できる。
【0059】
<実施の形態4>
図12は、本発明の実施の形態4に係る半導体装置の構成を概略的に例示する断面図である。以下の説明においては、本実施の形態4に係る構成要素のうち、以上で説明された構成と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、異なる構成要素について主に説明する。
【0060】
図12に例示される半導体装置は、
図12における上下方向を電流方向とする、電界効果トランジスタである。
図12に例示される半導体装置は、基板上部に配設されたソース電極8及びゲート電極10と、基板の底部に配設されたドレイン電極9とを備える。ソース電極8は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4のうちp型酸化物半導体層6に隣接する部分と直接接合されている。ドレイン電極9は、n型単結晶酸化ガリウム基板3の下面と直接接合されている。第1電極であるゲート電極10は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4と接合されずに、p型酸化物半導体層6と直接接合されている。
【0061】
本実施の形態4に係る半導体装置では、上記実施の形態に示した構造と同様に、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4とp型酸化物半導体層6との界面に酸化物層7が挿入されている。このため、本実施の形態4に係る半導体装置でも同様に、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4とp型酸化物半導体層6との間のpn界面における化学反応を抑制することができ、正常な界面を維持することができる。この結果、酸化物半導体装置の例えば耐熱性及び耐圧性などの特性の劣化を抑制することができる。
【0062】
<実施の形態5>
図13は、本発明の実施の形態5に係る半導体装置の構成を概略的に例示する断面図である。以下の説明においては、本実施の形態5に係る構成要素のうち、以上で説明された構成と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、異なる構成要素について主に説明する。
【0063】
図13に例示される半導体装置は、
図13における左右方向を電流方向とする、電界効果トランジスタである。
図13に例示される半導体装置は、基板上部に配設されたソース電極8、ドレイン電極9及びゲート電極10を備える。ソース電極8は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4のうちp型酸化物半導体層6に隣接する第1部分と直接接合されている。ドレイン電極9は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4のうちp型酸化物半導体層6に第1部分と逆側で隣接する第2部分と直接接合されている。第1電極であるゲート電極10は、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4と接合されずに、p型酸化物半導体層6と直接接合されており、ソース電極8とドレイン電極9との間に配設されている。
【0064】
本実施の形態5に係る半導体装置では、上記実施の形態に示した構造と同様に、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4とp型酸化物半導体層6との界面に酸化物層7が挿入されている。このため、本実施の形態5に係る半導体装置でも同様に、n型酸化ガリウムエピタキシャル層4とp型酸化物半導体層6との間のpn界面における化学反応を抑制することができ、正常な界面を維持することができる。この結果、酸化物半導体装置の例えば耐熱性及び耐圧性などの特性の劣化を抑制することができる。
【0065】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態及び各変形例を自由に組み合わせたり、各実施の形態及び各変形例を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0066】
本発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての態様において、例示であって、本発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。