特許第6980117号(P6980117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980117熱交換器、熱交換器ユニット、及び冷凍サイクル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980117
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】熱交換器、熱交換器ユニット、及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/20 20060101AFI20211202BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20211202BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20211202BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   F28F1/20
   F28D1/053 A
   F28F1/02 B
   F25B39/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-539169(P2020-539169)
(86)(22)【出願日】2018年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2018031502
(87)【国際公開番号】WO2020044391
(87)【国際公開日】20200305
【審査請求日】2020年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 晃
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】中村 伸
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2002/016834(WO,A2)
【文献】 特開2006−284123(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第2154366(DE,A)
【文献】 実開平03−096574(JP,U)
【文献】 特開2006−162141(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0027098(US,A1)
【文献】 西独国特許出願公開第1927605(DE,A)
【文献】 特開2000−088297(JP,A)
【文献】 特開平07−305986(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/064696(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第208238599(CN,U)
【文献】 国際公開第2018/185824(WO,A1)
【文献】 国際公開第2019/026243(WO,A1)
【文献】 国際公開第2019/026239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00−1/22
F28D 1/053
F25B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸を平行にして並列された複数の扁平管を備える第1扁平管群と、
前記第1扁平管群に隣合って配置され、前記管軸を平行にして並列された前記複数の扁平管を備える、第2扁平管群と、
前記第1扁平管群が備える前記複数の扁平管のうちの1つである第1の扁平管と、前記第2扁平管群が備える前記複数の扁平管のうちの1つである第2の扁平管と、
前記第1の扁平管と前記第2の扁平管とに設置されるフィンと、を備え、
前記フィンは、
前記第1の扁平管の前記管軸に垂直な断面における長軸の端部と、前記第2の扁平管の前記管軸に垂直な断面における前記長軸の端部と、を接続する第1の部分
前記第1の扁平管の側壁と接合される第2の部分と、
前記第2の扁平管の側壁と接合される第3の部分と、を備え、
前記第2の部分は、
前記第1の扁平管と当該フィンの板面の一方の面側で接合され、
前記第3の部分は、
前記第2の扁平管と前記板面の他方の面側で接合される、熱交換器。
【請求項2】
前記第1扁平管群の前記複数の扁平管と前記第2扁平管群の前記複数の扁平管とは、
千鳥状に配置される、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
隣合う前記複数の扁平管群の間に位置する前記フィンの前記第1の部分は、
前記複数の扁平管の前記長軸に対し傾斜している、請求項1又2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第1の部分は、
前記板面から前記管軸に交わる方向に延設されるルーバーと、
前記ルーバーの前記板面側の根元部に形成される前記板面を貫通する開口部と、を備える、請求項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記ルーバーは、
前記複数の扁平管の前記長軸と平行である、請求項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記フィンは、
前記第1の扁平管の前記長軸の端部のうち、前記第1の部分が延設される端部と反対側の端部から延設される第4の部分と、
前記第2の扁平管の前記長軸の端部のうち、前記第1の部分が延設される端部と反対側の端部から延設される第5の部分と、を備え、
前記第4の部分及び前記第5の部分の少なくとも一方は、
前記板面にスリットが形成されている、請求項1〜の何れか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
請求項1〜の何れか1項に記載の熱交換器を備える、熱交換器ユニット。
【請求項8】
請求項に記載の熱交換器ユニットを備える、冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、熱交換器を備えた熱交換器ユニット、及び冷凍サイクル装置に関し、特に扁平管に取り付けられたフィンの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱交換器において熱交換性能を向上させるために、2枚の板を貼り合わせ、細径の管体部を千鳥構造に配列し、管体部の間を伝熱フィンにより接続した多列管熱交換器が知られている。(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−084078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示されている従来の熱交換器においては、2枚の板を貼り合わせて管体部を構成しているため、管体部の耐圧性能を確保するために伝熱フィンも肉厚になり重量が増加するという課題があった。また、2枚の板を貼り合わせ、接合するロウ材が管体部の内部の冷媒流路に浸入してしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためのものであり、冷媒が流通する管の耐圧性能を向上させ、伝熱フィンの重量も低減させ、かつ製造も容易な熱交換器、熱交換器ユニット、及び冷凍サイクル装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱交換器は、管軸を平行にして並列された複数の扁平管を備える第1扁平管群と、前記第1扁平管群に隣合って配置され、前記管軸を平行にして並列された前記複数の扁平管を備える、第2扁平管群と、前記第1扁平管群が備える前記複数の扁平管のうちの1つである第1の扁平管と、前記第2扁平管群が備える前記複数の扁平管のうちの1つである第2の扁平管と、前記第1の扁平管と前記第2の扁平管とに設置されるフィンと、を備え、前記フィンは、前記第1の扁平管の前記管軸に垂直な断面における長軸の端部と、前記第2の扁平管の前記管軸に垂直な断面における前記長軸の端部と、を接続する第1の部分と、前記第1の扁平管の側壁と接合される第2の部分と、前記第2の扁平管の側壁と接合される第3の部分と、を備え、前記第2の部分は、前記第1の扁平管と当該フィンの板面の一方の面側で接合され、前記第3の部分は、前記第2の扁平管と前記板面の他方の面側で接合される
【0007】
本発明に係る熱交換器ユニットは、上記熱交換器を備える。
【0008】
本発明に係る冷凍サイクル装置は、上記熱交換器ユニットを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の扁平管により構成された複数の扁平管群をフィンにより接続したため、冷媒を流通させる管の耐圧性能が向上し、かつ、フィンを肉薄に形成できるためフィンの重量も低減させることができる。また、熱交換性能が高く製造も容易な熱交換器、熱交換器ユニット、及び冷凍サイクル装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る熱交換器を示す正面図である。
図2】実施の形態1に係る熱交換器を示す側面図である。
図3】実施の形態1に係る熱交換器が適用された冷凍サイクル装置の説明図である。
図4図2の熱交換器の断面構造の説明図である。
図5】実施の形態1に係る熱交換器の変形例の熱交換器の側面図である。
図6】実施の形態1に係る熱交換器の変形例の熱交換器の断面構造の説明図である。
図7】スリットのx方向から見た拡大図である。
図8】実施の形態1に係る熱交換器の変形例の熱交換器の断面構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、熱交換器及び熱交換器ユニットの実施の形態について説明する。なお、図面の形態は一例であり、本発明を限定するものではない。また、各図において同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。さらに、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る熱交換器100を示す正面図である。図2は、実施の形態1に係る熱交換器100を示す側面図である。図3は、実施の形態1に係る熱交換器100が適用された冷凍サイクル装置1の説明図である。図1及び図2に示された熱交換器100は、空気調和装置又は冷蔵庫等の冷凍サイクル装置1に搭載されるものである。図3に示される様に冷凍サイクル装置1は、圧縮機3、四方弁4、室外熱交換器5、膨張装置6、及び室内熱交換器7を冷媒配管90により接続し、冷媒回路を構成したものである。例えば冷凍サイクル装置1が空気調和装置である場合には、冷媒配管90内には冷媒が流通し、四方弁4により冷媒の流れを切り換えることにより、暖房運転、冷凍運転、又は除霜運転に切り換えることができる。
【0013】
室外機8に搭載された室外熱交換器5及び室内機9に搭載された室内熱交換器7は、近傍に送風機2を備える。室外機8において送風機2は、室外熱交換器5に外気を送り込み、外気と冷媒との間で熱交換を行う。また、室内機9において送風機2は、室内熱交換器7に室内の空気を送り込み、室内の空気と冷媒との間で熱交換を行い、室内の空気の温度を調和する。また、熱交換器100は、冷凍サイクル装置1において室外機8に搭載された室外熱交換器5及び室内機9に搭載された室内熱交換器7として用いることができ、凝縮器又は蒸発器として機能する。なお、熱交換器100が搭載された室外機8及び室内機9等の機器を、特に熱交換器ユニットと呼ぶ。
【0014】
図1に示される熱交換器100は、2つの扁平管群10を備える。2つの扁平管群10のうち、一方を第1扁平管群10aと呼び、他方を第2扁平管群10bと呼ぶ。また、各扁平管群10a、10bを総称して扁平管群10と呼ぶ場合がある。第1扁平管群10aと第2扁平管群10bとは、x方向に並列されている。扁平管群10は、複数の扁平管20を備える。複数の扁平管20は、図1及び図2においては20a及び20bとして示されるものである。各扁平管群10の複数の扁平管20は、それぞれの管軸を互いに平行にしてy方向に並列されている。実施の形態1において、複数の扁平管20の管軸は、z方向に向けられている。実施の形態1においては、z方向逆向きが重力方向に一致しているが、熱交換器100は、z軸を重力方向に傾斜させて配置されていても良い。第1扁平管群10aの複数の扁平管20aは、管軸方向の下側の端部において下端ヘッダ50aと接続されており、管軸方向の上側の端部において上端ヘッダ51aと接続されている。また、第2扁平管群10bの複数の扁平管20bも同様に、管軸方向の下側の端部において下端ヘッダ50bと接続されており、管軸方向の上側の端部において上端ヘッダ51bと接続されている。なお、実施の形態1においては、熱交換器100は、2つの扁平管群10a、10bを備えるが、さらに多くの扁平管群10を備えていても良い。
【0015】
図4は、図2の熱交換器100の断面構造の説明図である。図4は、複数の扁平管群10のそれぞれが備える複数の扁平管20の管軸に垂直な断面を示しており、図2のA−A断面に対応する断面の構造の説明図である。なお、図4においては、各扁平管群10を構成する複数の扁平管20のうち一部を表示している。第1扁平管群10aの複数の扁平管20a及び第2扁平管群10bの複数の扁平管20bは、管軸に垂直な断面において長軸をx方向に、短軸をy方向に沿って配置されている。また、第1扁平管群10aの複数の扁平管20aと第2扁平管群10bの複数の扁平管20bとは、千鳥に配置されている。つまり、第2扁平管群10bを構成する第2の扁平管20bは、第1扁平管群10aを構成する第1の扁平管20aの長軸の延長線上からy方向にずれた位置に配置されており、x方向から見た時に、隣合う2つの第1の扁平管20aの間の隙間の延長線上に第2の扁平管20bが配置されている。以下、第1の扁平管20a及び第2の扁平管20bを総称して扁平管20と呼ぶ場合がある。
【0016】
図4に示される様に、第1扁平管群10aの第1の扁平管20a及び第2扁平管群10bの第2の扁平管20bには、フィン30が設置されている。フィン30は、1枚の板状部材を曲げて形成され、板面を第1の扁平管20a及び第2の扁平管20bに沿わせて設置されている。実施の形態1においては、第1の扁平管20a及び第2の扁平管20bの管軸が重力方向と一致しているため、フィン30は、板面が重力方向に沿って配置されている。そのため、熱交換器100は、蒸発器として機能する場合に結露によりフィン30に付着した凝縮水や着霜した場合にデフロスト運転による霜の融解水を、フィン30から滞りなく排出することができる。これにより、熱交換器100は、熱交換性能が高く維持される。
【0017】
フィン30は、第1の扁平管20aと第2の扁平管20bとの間に配置される第1の部分31、第1の扁平管20aと接合されている第2の部分32、第2の扁平管20bと接合されている第3の部分33、第1の扁平管20aの端部21aからx方向逆向きに延設されている第4の部分34、及び第2の扁平管20bの端部22bからx方向に延設されている第5の部分35を備える。
【0018】
フィン30と第1の扁平管20aとは、第2の部分32において接しており、ロウ付け等により接合されている。第2の部分32は、板状部材を曲げることにより第1の扁平管20aの側面形状に沿うように凹形状が形成されており、その凹形状に第1の扁平管20aが嵌る。また、フィン30と第2の扁平管20bとは、第3の部分33において接しており、ロウ付け等により接合されている。第3の部分33も板状部材を曲げることにより第2の扁平管20bの側面形状に沿うように凹形状が形成されており、その凹形状に第2の扁平管20bが嵌る。フィン30の第2の部分32と第3の部分33とは、凹形状が異なる方向を向いている。第2の部分32の凹形状は、y方向に凹形状が開いており、第3の部分33の凹形状はy方向逆向きに凹形状が開いている。つまり、フィン30のy方向を向いた一方の板面38に第1の扁平管20aが取り付けられており、フィン30のy方向逆向きを向いた他方の板面39に第2の扁平管20bが取り付けられている。
【0019】
図4に示される様に、第1の扁平管20aと第2の扁平管20bとは、1つのフィン30の凹形状に嵌っている。このような形態により、製造時においてフィン30と第1の扁平管20aと第2の扁平管20bとは、一体の部品として取り扱うことができる。つまり、下端ヘッダ50a、50b及び上端ヘッダ51a、51bとの接合前に、2つの扁平管20を1つのフィン30の凹形状に嵌め込み一体にすることができるため、接合前に2つの扁平管20の互いの位置決めが容易になり、組立作業性を向上させることができる。
【0020】
フィン30は、第1扁平管群10aと第2扁平管群10bとの間に位置する第1の部分31を備える。第1の部分31は、第1の扁平管20aが嵌っている凹形状の端部と第2の扁平管20bが嵌っている凹形状の端部とを接続するように配置されている。言い換えると、第1の部分31は、第1の扁平管20aの端部のうち第2扁平管群10b側に位置する端部22aと第2の扁平管20bの端部のうち第1扁平管群10a側に位置する端部21bとを接続するように配置されている。また、実施の形態1において、第1の部分31は、第1の扁平管20a及び第2の扁平管20bの長軸に対し傾斜して配置されている。
【0021】
図4に示される様に、実施の形態1において空気は熱交換器100に対しx方向に流入する。上述したように、フィン30の第1の部分31が傾斜して配置されていることにより、第1の扁平管20a、第2の扁平管20b、及びフィン30の間の隙間を空気が蛇行して流れる。そのため、熱交換器100は、伝熱面積が拡大すると共に伝熱性能が向上する。また、フィン30の第1の部分31において、風が曲げられることで第2の扁平管20bの側壁23bに流れる空気が衝突する。空気の衝突により第2の扁平管20bの間の空気の流れが乱れるため、第2の扁平管20bの各部に接触する空気の温度が平均化されやすくなり、第2の扁平管20b内を流れる冷媒の乾き度が均一化される。これにより、熱交換器100は、熱交換性能が向上する。
【0022】
また、フィン30は、第1の扁平管20aの端部のうちx方向逆向きを向いた端部21aから延設される平板状の第4の部分34を備える。つまり、第4の部分34は、第1の扁平管20aの端部のうち第1の部分31が延設されている端部22aと反対側の端部21aから延設されている。さらに、フィン30は、第2の扁平管20bの端部のうちx方向を向いた端部22bから延設される平板状の第5の部分35を備える。つまり、第5の部分35は、第2の扁平管20bの端部のうち第1の部分31が延設されている端部21bと反対側の端部22bから延設されている。フィン30が第4の部分34及び第5の部分35を備えることにより、熱交換器100は、伝熱面積が拡大すると共に伝熱性能が向上する。
【0023】
図5は、実施の形態1に係る熱交換器100の変形例の熱交換器100aの側面図である。図6は、実施の形態1に係る熱交換器100の変形例の熱交換器100aの断面構造の説明図である。図7は、スリット41のx方向から見た拡大図である。図6は、図5のB−B断面に対応する断面構造の説明図である。熱交換器100aは、フィン30の最も風上側にあり、第1の扁平管20aの端部21aから延設される第4の部分34にスリット41が設けられている。スリット41は、第4の部分34の一部を板面に垂直な方向に切り起こして形成される。図7に示される様に、板状の第4の部分34は、一部が切り起こされ、第4の部分34に略平行に位置する平行部45と、平行部45の両端から第4の部分34の板面を繋ぐ部分である立ち上がり部44とが形成されている。フィン30の第4の部分34の板面と平行に平行部45を設けることにより、第4の部分34の表面に対し平行に流れる空気の流れの境界層を小さくすることができ、伝熱性能を向上させつつ通風抵抗の増加を抑制できる。
【0024】
また、熱交換器100aは、フィン30の最も風下側にあり、第2の扁平管20bの端部21bから延設される第5の部分35にもスリット41が設けられている。第5の部分35においても、スリット41は第4の部分34と同様な構造で設置されている。そのため、第5の部分35の表面に対し平行に流れる空気の流れの境界層が小さくなり、伝熱性能を向上させつつ通風抵抗の増加を抑えることができる。
【0025】
さらに、熱交換器100aは、第1の扁平管20aと第2の扁平管20bとの間に位置する第1の部分31にルーバー40を備える。ルーバー40は、板状の第1の部分31の一部を切り起して形成され、第1の扁平管20a及び第2の扁平管20bの長軸と平行にしてx方向に延設される舌状片である。また、ルーバー40の根元部には、第1の部分31の板面を貫通する開口部が形成されている。ルーバー40は、第1の扁平管20aの間を通過する空気の流れと平行に延設されている。そのため、ルーバー40が設けられている部分の第1の部分31の板面に形成された穴を空気が通過する。これにより、第1の扁平管20aに対して傾斜している第1の部分31が設けられている部位においても、扁平管20の長軸と平行な空気の流れを形成できる。従って、ルーバー40により伝熱性能を向上させつつ熱交換器100aの通風抵抗の増加を抑制できる。
【0026】
熱交換器100、100aは、以下のような工程で製造される。まず、複数のフィン30と第1扁平管群10a及び第2扁平管群10bとを組み合わせる。各扁平管20は、フィン30の凹形状に嵌め込まれる。第1の扁平管20a、第2の扁平管20b、及びフィン30が一体になった状態で第1の扁平管20aと第2の扁平管20bとは、管軸方向の端部を下端ヘッダ50a、50b又は上端ヘッダ51a、51bに差し込まれる。その後、フィン30は図4及び図6のx方向の両端に位置する第4の部分34及び第5の部分35から引っ張られる。これにより、フィン30は、第1の扁平管20aに第2の部分32が押し付けられ、第2の扁平管20bに第3の部分33が押し付けられる。これにより、フィン30と複数の扁平管20とがより接触するため、フィン30の扁平管20に対する取り付け精度が向上する。この状態のまま、複数の扁平管20a、20bは、下端ヘッダ50a、50b及び上端ヘッダ51a、51bに挿入される。そして複数の扁平管20a、20bと下端ヘッダ50a、50b及び上端ヘッダ51a、51bとの接合部、及び複数の扁平管20a、20bとフィン30との接合部にロウ材が配置され、炉中に入れられロウ付けが行われる。熱交換器100、100aは、複数のフィン30により第1扁平管群10a及び第2扁平管群10bとを一体にして取り扱うことができるため、組立が容易で、製造が容易になるという利点がある。
【0027】
なお、実施の形態1においては、第1の扁平管20aと第2の扁平管20bとは、長軸を平行にして千鳥状に配置されているため、第1の部分31が第1の扁平管20a及び第2の扁平管20bに対し傾斜して配置されているが、この形態だけに限定されるものではない。また、実施の形態1に係る熱交換器100の変形例として、ルーバー40とスリット41の両方が形成された熱交換器100aを説明したが、ルーバー40とスリット41のいずれか一方が形成された熱交換器であってもよい。
【0028】
図8は、実施の形態1に係る熱交換器100の変形例の熱交換器100bの断面構造の説明図である。図8は、図2のA−A断面に相当する断面の説明図である。変形例の熱交換器100bは、フィン30の第1の部分31、第1の扁平管20aが嵌る第2の部分32、及び第2の扁平管20bが嵌る第3の部分33が平行になっている。フィン30のうち、最も風上側に位置する第4の部分34及び最も風下側に位置する第5の部分35が、第1の部分31、第1の扁平管20aが嵌る第2の部分32、及び第2の扁平管20bが嵌る第3の部分33に対し傾斜している。そのため、熱交換器100に対しx方向に向かって流入した空気は、第1の扁平管20aの側壁23aに衝突する。空気の衝突により第1の扁平管20aの間の空気の流れが乱れるため、第1の扁平管20aの各部に接触する空気の温度が平均化されやすくなり、第1の扁平管20a内を流れる冷媒の乾き度が均一化される。これにより、熱交換器100bは、熱交換性能が向上する。
【0029】
実施の形態1に係る熱交換器100、100a、100bは、図3に示される冷凍サイクル装置1の室外熱交換器5及び室内熱交換器7の少なくとも一方に用いられることにより、エネルギ効率の高い冷凍サイクル装置1を提供することができる。ここで、エネルギ効率は、「暖房エネルギ効率=室内熱交換器(凝縮器)能力/全入力」、及び「冷房エネルギ効率=室内熱交換器(蒸発器)能力/全入力」で定義されるものである。
【0030】
また、上述の実施の形態1で述べた熱交換器100、100a、100b、熱交換器ユニット、及びそれを用いた冷凍サイクル装置1については、R410A、R32、HFO1234yf等の冷媒においてその効果を達成することが出来る。さらに、実施の形態1においては、作動流体として、空気と冷媒の例を示したが、他の気体、液体、気液混合流体を用いても、同様の効果を奏する。
【0031】
実施の形態1に係る熱交換器100、100a、100bのそれぞれの構造は、適宜組み合わせることも出来る。例えば、熱交換器100aのルーバー40およびスリット41の両方又はどちらか一方を熱交換器100bに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 冷凍サイクル装置、2 送風機、3 圧縮機、4 四方弁、5 室外熱交換器、6 膨張装置、7 室内熱交換器、8 室外機、9 室内機、10 扁平管群、10a (第1)扁平管群、10b (第2)扁平管群、20 扁平管、20a (第1の)扁平管、20b (第2の)扁平管、21a 端部、21b 端部、22a 端部、22b 端部、23a 側壁、23b 側壁、30 フィン、31 第1の部分、32 第2の部分、33 第3の部分、34 第4の部分、35 第5の部分、38 板面、39 板面、40 ルーバー、41 スリット、44 立ち上がり部、45 平行部、50 下端ヘッダ、50a 下端ヘッダ、50b 下端ヘッダ、51 上端ヘッダ、51a 上端ヘッダ、51b 上端ヘッダ、90 冷媒配管、100 熱交換器、100a 熱交換器、100b 熱交換器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8