(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980121
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ブレーキ倍力装置用の圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/14 20060101AFI20211202BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20211202BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
G01L19/14
B60T17/00 C
B60T17/22 Z
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-545506(P2020-545506)
(86)(22)【出願日】2019年2月14日
(65)【公表番号】特表2021-515223(P2021-515223A)
(43)【公表日】2021年6月17日
(86)【国際出願番号】EP2019053608
(87)【国際公開番号】WO2019166225
(87)【国際公開日】20190906
【審査請求日】2020年8月31日
(31)【優先権主張番号】102018203031.6
(32)【優先日】2018年3月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアート マイタート
(72)【発明者】
【氏名】カルロス ナシメント
(72)【発明者】
【氏名】江藤 昌也
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ブルクハルト
【審査官】
大森 努
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−134251(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103398819(CN,A)
【文献】
特開2017−171297(JP,A)
【文献】
特開2007−062729(JP,A)
【文献】
特開2006−329192(JP,A)
【文献】
特表2013−502537(JP,A)
【文献】
特開平06−151894(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0178474(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0064815(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第105699005(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32,27/00−27/02,
B60T 15/00−17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ倍力装置用の圧力センサ(1)であって、
圧力センサ素子(9.1)を収容し且つ第1の流体接続部(7)を有するハウジング(3,3A)を備え、前記第1の流体接続部(7)を介して前記圧力センサ(1)が前記ブレーキ倍力装置に接続可能である、圧力センサ(1)において、
前記ハウジング(3,3A)は、収容開口(10.1,10.1A)を有する第2の流体接続部(10,10A)を有し、前記収容開口(10.1,10.1A)は、通流弁(12)と真空ポンプ用の接続管片(11)とを少なくとも部分的に収容しており、前記通流弁(12)は、真空ポンプの方向で流体の流れを解放し、逆方向で流体の流れを遮断し、前記通流弁(12)は、ダイヤフラムインサート(13,13A)として形成されていて、前記収容開口(10.1,10.1A)内に導入されており、
前記ダイヤフラムインサート(13,13A)は、ディスク状の基体を備えたダイヤフラム(14)と、幾何学的なシール部(16.1)を備えたダイヤフラム収容体(16,16A)とを有していることを特徴とする、圧力センサ(1)。
【請求項2】
前記ダイヤフラム(14)の前記ディスク状の基体は、中心の開口を有し、該開口を介して前記ダイヤフラムが前記ダイヤフラム収容体(16,16A)に設けられた取付け用ピン(16.2)に嵌め込まれていて、前記幾何学的なシール部(16.1)に載置されており、該幾何学的なシール部(16.1)に少なくとも1つの貫通開口(16.3)が加工されており、前記ダイヤフラム(14)が前記少なくとも1つの貫通開口(16.3)を、遮断状態では完全に覆っていて、解放状態では少なくとも部分的に解放していることを特徴とする、請求項1記載の圧力センサ(1)。
【請求項3】
前記ダイヤフラムインサート(13,13A)は、前記収容開口(10.1,10.1A)の壁に対して軸線方向でかつ/または半径方向で密封されていることを特徴とする、請求項1または2記載の圧力センサ(1)。
【請求項4】
前記ダイヤフラムインサート(13,13A)は、流体密な結合技術によって前記収容開口(10.1,10.1A)の前記壁に結合されていることを特徴とする、請求項3記載の圧力センサ(1)。
【請求項5】
前記ダイヤフラムインサート(13,13A)に、該ダイヤフラムインサート(13,13A)を前記収容開口(10.1,10.1A)の前記壁に対して密封するシールリップが配置されていることを特徴とする、請求項3または4記載の圧力センサ(1)。
【請求項6】
前記ダイヤフラムインサート(13,13A)と前記収容開口(10.1,10.1A)の前記壁との間で収容溝(18,18A)内に、前記ダイヤフラムインサート(13,13A)を前記収容開口(10.1,10.1A)の前記壁に対して密封するシール要素(19)が配置されていることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の圧力センサ(1)。
【請求項7】
前記収容溝(18)は、完全に前記ダイヤフラムインサート(13)内に設けられていることを特徴とする、請求項6記載の圧力センサ(1)。
【請求項8】
前記収容溝(18A)は、部分的には前記ダイヤフラムインサート(13A)によって形成されていて、部分的には前記収容開口(10.1A)の前記壁によって形成されていることを特徴とする、請求項6記載の圧力センサ(1)。
【請求項9】
前記接続管片(11)は、前記収容開口(10.1,10.1A)を流体密に閉鎖していることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の圧力センサ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の前提部に記載の形式の、ブレーキ倍力装置用の圧力センサに関する。
【0002】
従来技術から公知の低圧センサは、付属するブレーキ倍力装置内の負圧を測定して、対応する信号を制御装置に伝送する。ブレーキ倍力装置内で真空を生ぜしめるためには、一般に、真空ポンプと通流弁とを介して負圧が生ぜしめられる。通流弁の役割は、ひとたびブレーキ倍力装置からの空気の吸出しを許容し、さらに、吸出しの過程が終了した際に、ブレーキ倍力装置内における真空を、可能な限り長い期間保持することである。従来技術から公知の複数の解決策では、圧力センサと通流弁とは、それぞれアダプタによってブレーキ倍力装置に接続されている。これらの解決策では、通流弁の幾何学的なシール部を最適化し、かつ非強化プラスチックから製造することができるので、比較的良好な表面性状を得ることができる。このことは、良好な長期シール特性をもたらす。
【0003】
発明の開示
独立請求項1に記載の諸特徴を有する、ブレーキ倍力装置用の圧力センサは、通流弁が、通流弁のシール特性を悪化させることなしに、圧力センサ内に組み込まれているという利点を有する。ダイヤフラムインサートとして形成され、非強化プラスチックから作製されて圧力センサ内に組み込まれている通流弁によって、圧力センサと通流弁とがそれぞれアダプタによってブレーキ倍力装置に接続されている従来技術から公知の解決策よりも、所要スペースおよび組付けの手間を減じながら、同様の長期シール特性を得ることができる。
【0004】
本発明の実施形態は、ブレーキ倍力装置用の圧力センサであって、ハウジングを備えており、このハウジングが、圧力センサ素子を収容していて、第1の流体接続部を有し、この第1の流体接続部を介して、圧力センサが、ブレーキ倍力装置に接続可能である、圧力センサを提供する。本発明では、ハウジングが、収容開口を有する第2の流体接続部を有し、収容開口が、通流弁と真空ポンプ用の接続管片とを少なくとも部分的に収容しており、通流弁が、真空ポンプの方向で流体の流れを解放し、逆方向で流体の流れを遮断する。通流弁は、ダイヤフラムインサートとして形成されていて、収容開口内に導入されている。
【0005】
従属請求項に記載の手段および発展形態によって、独立請求項1に記載したブレーキ倍力装置用の圧力センサの有利な改良が可能である。
【0006】
特に有利には、ダイヤフラムインサートが、ディスク状の基体を備えたダイヤフラムと、幾何学的なシール部を備えたダイヤフラム収容体とを有していてもよい。この場合、ダイヤフラムのディスク状の基体は、中心の開口を有していてもよく、この開口を介して、ダイヤフラムは、ダイヤフラム収容体に設けられた取付け用ピンに嵌め込まれ、幾何学的なシール部に載置されてもよい。さらに、幾何学的なシール部に少なくとも1つの貫通開口を加工することができ、ダイヤフラムが少なくとも1つの貫通開口を、遮断状態では完全に覆うことができ、解放状態では少なくとも部分的に解放することができる。ダイヤフラムインサートとして形成された通流弁を介して、真空ポンプがブレーキ倍力装置内に負圧を生ぜしめることができ、この負圧を、圧力センサ素子によって測定することができる。したがって、通流弁は、少なくとも1つの貫通開口を介して、ブレーキ倍力装置からの空気の吸出しを可能にし、かつブレーキ倍力装置内に生ぜしめられた真空を、可能な限り長い期間保持する。
【0007】
圧力センサの有利な態様では、ダイヤフラムインサートが、収容開口の壁に対して軸線方向でかつ/または半径方向で密封されてもよい。これは、収容開口が、ダイヤフラムインサートを流体密に組み付け可能に成形されていることを意味する。
【0008】
圧力センサの別の有利な態様では、ダイヤフラムインサートが、流体密な結合技術によって収容開口の壁に結合されてもよい。したがって、ダイヤフラムインサートを、例えばシール溶接、シール接着等を介して、ハウジング内の収容開口の壁に永続的に流体密に結合することができる。これに加えまたはこれに代えて、ダイヤフラムインサートに、このダイヤフラムインサートを収容開口の壁に対して密封することができるシールリップが配置されてもよい。シールリップは、例えばダイヤフラムインサートと一体的に射出成形されてもよい。
【0009】
圧力センサの別の有利な態様では、ダイヤフラムインサートと収容開口の壁との間で、付加的または代替的に、収容溝内に、ダイヤフラムインサートを収容開口の壁に対して密封することができるシール要素が配置されてもよい。シール要素は、例えば収容溝内に案内されたOリングとして形成されてもよい。この場合、収容溝を、完全にダイヤフラムインサート内に設けることができる。これに代えて、収容溝は、部分的にはダイヤフラムインサートによって形成され、部分的には収容開口の壁によって形成されてもよい。
【0010】
圧力センサの別の有利な態様では、真空ポンプ用の接続管片が、収容開口を流体密に閉鎖することができる。これは、真空ポンプ用の接続管片が、収容開口内で通流弁の下流側に配置されていて、収容開口を閉鎖すると同時に、真空ポンプへの流体接続部を形成することを意味する。
【0011】
本発明の実施例を図面に示し、以下の記載においてより詳細に説明する。図面において、同一もしくは類似の機能を果たすコンポーネントもしくは要素には、同一の符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ブレーキ倍力装置用の本発明に係る圧力センサの第1の実施例を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したブレーキ倍力装置用の本発明に係る圧力センサを概略的に示す分解斜視図である。
【
図3】
図1および
図2に示したブレーキ倍力装置用の本発明に係る圧力センサの断面図である。
【
図4】
図1〜
図3に示したブレーキ倍力装置用の本発明に係る圧力センサのダイヤフラムインサートの第1の実施例を概略的に示す分解斜視図である。
【
図5】
図1〜
図3に示したブレーキ倍力装置用の本発明に係る圧力センサの第2の流体接続部を、
図4に示したダイヤフラムインサートとともに示す断面図である。
【
図6】ブレーキ倍力装置用の本発明に係る圧力センサの第2の流体接続部を、ダイヤフラムインサートの第2の実施例とともに示す断面図である。
【0013】
発明の実施形態
図1〜
図6から判るように、ブレーキ倍力装置用の本発明に係る圧力センサ1の図示された実施例は、それぞれハウジング3,3Aを有し、ハウジング3,3Aは、圧力センサ素子9.1を収容していて、第1の流体接続部7を有する。第1の流体接続部を介して、圧力センサ1をブレーキ倍力装置に流体接続することができる。ハウジング3,3Aは、収容開口10.1,10.1Aを備えた第2の流体接続部10,10Aを有し、収容開口10.1,10.1Aは、通流弁12と、真空ポンプ用の接続管片11とを、少なくとも部分的に収容している。通流弁12は、真空ポンプの方向で流体の流れを解放し、逆方向で流体の流れを遮断する。さらに、通流弁12はダイヤフラムインサート13,13Aとして形成されていて、収容開口10.1,10.1A内に導入されている。
【0014】
図1〜
図6からさらに判るように、第1の流体接続部7は接続管片として形成されており、この接続管片は、直接、圧力センサ1のハウジング3,3Aに一体化されている。接続管片として形成されたこの第1の流体接続部7を介して、圧力センサ1を、ブレーキ倍力装置に設けられた対応する収容開口(図示せず)内へ圧入することができる、またはこの収容開口にかしめて取り付けることができる。
図1〜
図6からさらに判るように、圧力センサのハウジング3,3Aは、第1の流体接続部7とは反対の側の端部にセンサ収容部8を有し、このセンサ収容部8は、圧力センサ素子9.1を備えたセンサホルダ9を収容している。センサ収容部8とハウジング3,3Aのこの端部とは、カバー5によって閉鎖される。さらに、圧力センサ1は電気的な接続部4を有し、この電気的な接続部4は、コネクタ収容部4.1としてハウジング3,3Aに一体成形されている。コネクタ収容部4.1内には、(図では見えない)コンタクトピンが配置されており、コンタクトピンは圧力センサ素子9.1に電気的に接続されていて、コネクタ収容部4.1に導入されたコネクタを介して接触することができる。コネクタを介して、圧力センサ素子9.1の出力信号を取り出して、制御装置に伝送することができる。
【0015】
図1〜
図6からさらに判るように、第2の流体接続部10,10Aの収容開口10.1,10.1Aは、第1の流体接続部7に対して垂直に配置されている。さらに、接続管片11は、収容開口10.1,10.1Aを流体密に閉鎖する。第2の流体接続部10,10Aの接続管片11は、例えば収容開口10.1,10.1A内へ圧入することができるか、または収容開口10.1,10.1Aにかしめて取り付けることができる。
【0016】
図3〜
図6からさらに判るように、ダイヤフラムインサート13,13Aは、図示された実施例では、ディスク状の基体を備えたダイヤフラム14と、幾何学的なシール部16.1を備えたダイヤフラム収容体16,16Aとを有する。ダイヤフラム14のディスク状の基体は、中心の開口を有し、この開口を介して、ダイヤフラムは、ダイヤフラム収容体16,16Aに設けられた取付け用ピン16.2に嵌め込まれている。幾何学的なシール部16.1は内側に向かって湾曲するように形成されていて、複数の貫通開口16.3を有する。ダイヤフラム14は、遮断状態においては、予荷重がかけられて、湾曲した幾何学的なシール部16.1に当て付けられていて、貫通開口16.3を完全に覆っている。解放状態においては、少なくともダイヤフラム14の縁部領域15が、幾何学的なシール部16.1から持ち上げられていて、これにより貫通開口16.3が少なくとも部分的に解放されており、流体もしくは空気が、ブレーキ倍力装置から通流弁12を介して真空ポンプの方向へ吸い出されるようになっている。真空ポンプの停止後は、ブレーキ倍力装置内に生じた負圧がダイヤフラム14を吸引するので、ダイヤフラム14は、シールするように幾何学的なシール部16.1に当て付けられている。
【0017】
ダイヤフラムインサート13,13Aは、収容開口10.1,10.1Aの壁に対して軸線方向でかつ/または半径方向で密封されてもよい。ダイヤフラムインサート13,13Aを、例えば流体密な結合技術によって、収容開口10.1,10.1Aの壁に結合することができる。付加的または代替的に、ダイヤフラムインサート13,13Aに、ダイヤフラムインサート13,13Aを収容開口10.1,10.1Aの壁に対して密封するシールリップが配置されてもよい。
【0018】
図3〜
図6からさらに判るように、図示された実施例では、ダイヤフラムインサート13,13Aと収容開口10.1,10.1Aの壁との間で、収容溝18,18A内に、ダイヤフラムインサート13,13Aを収容開口10.1,10.1Aの壁に対して密封するシール要素19が配置されている。図示された実施例では、ダイヤフラムインサート13,13Aは、例えばシール要素としてのOリングによって、ハウジング3,3Aに対して密封される。さらに、Oリングとして形成されたシール要素19による半径方向での密封のほかに、軸線方向での密封が行われてもよい。
【0019】
図3〜
図5からさらに判るように、収容溝18は、図示された実施例では、完全にダイヤフラムインサート13に加工されている。
【0020】
図6からさらに判るように、収容溝18Aは、図示された実施例では、部分的にはダイヤフラムインサート13Aによって形成され、部分的には収容開口10.1Aの壁によって形成されている。
【0021】
圧力センサ1のハウジング3,3Aとカバー5とは、好適にはプラスチック射出成形部材として、射出成形時に同じプラスチック材料で取り囲まれたコンタクトピンを備えて形成されている。圧力センサ素子9.1は、ハウジング3,3A内に形成された圧力室に流体接続されており、この圧力室は、下方に向かっては第1の流体接続部7に移行し、側方では第2の流体接続部10,10Aに移行する。ハウジング3,3Aは、ダイヤフラムインサート13,13Aを流体密に組み付けることが可能であるように成形されている。