(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フレームと、前記フレームに設けられている加工具支持部材と、前記加工具支持部材に回転可能に設けられている主軸と、前記主軸に設けられており、ガイドレールの少なくとも一部を削り取る加工具と、前記加工具を回転させる加工具駆動装置とを有しており、前記ガイドレールに沿って移動される加工装置本体
を備え、
前記加工具支持部材と前記主軸と前記加工具とを含む組立体が、組み立てられた状態のまま、前記フレームに対して着脱可能となっており、
前記加工具駆動装置は、駆動軸と、前記駆動軸を回転させる駆動装置本体とを有しており、
前記加工装置本体は、前記フレームに対してスライド可能な可動支持部材をさらに有しているガイドレール加工装置。
フレームと、前記フレームに設けられている加工具支持部材と、前記加工具支持部材に回転可能に設けられている主軸と、前記主軸に設けられており、ガイドレールの少なくとも一部を削り取る加工具と、前記加工具を回転させる加工具駆動装置とを有している加工装置本体を、前記ガイドレールに沿って移動させながら、前記加工具により前記ガイドレールに加工を施す加工工程、及び
前記加工具支持部材と前記主軸と前記加工具とを含む組立体を、組み立てられた状態のまま、前記組立体と同じ構成を有する新たな組立体と交換する交換工程
を含み、
前記加工具駆動装置は、駆動軸と、前記駆動軸を回転させる駆動装置本体とを有しており、
前記加工装置本体は、前記フレームに対してスライド可能な可動支持部材をさらに有しているガイドレール加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータを示す構成図であり、リニューアル工事中の状態を示している。
図1において、昇降路1内には、一対のかごガイドレール2が設置されている。各かごガイドレール2は、複数本のレール部材を上下方向に継ぎ合わせて構成されている。また、各かごガイドレール2は、複数のレールブラケット9を介して昇降路壁に対して固定されている。
【0012】
昇降体であるかご3は、一対のかごガイドレール2間に配置されている。また、かご3は、かごガイドレール2に沿って昇降路1内を昇降する。
【0013】
かご3の上部には、懸架体4の第1の端部が接続されている。懸架体4としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。懸架体4の第2の端部には、図示しない釣合おもりが接続されている。かご3及び釣合おもりは、懸架体4により昇降路1内に吊り下げられている。
【0014】
懸架体4の中間部は、図示しない巻上機の駆動シーブに巻き掛けられている。かご3及び釣合おもりは、駆動シーブを回転させることにより、昇降路1内を昇降する。昇降路1内には、図示しない一対の釣合おもりガイドレールが設置されている。釣合おもりは、釣合おもりガイドレールに沿って昇降路1内を昇降する。
【0015】
かご3の下部には、非常止め装置5が搭載されている。非常止め装置5は、一対のかごガイドレール2を把持することにより、かご3を非常停止させる。
【0016】
かご3の上部の幅方向両端部とかご3の下部の幅方向両端部とには、かごガイドレール2に接するガイド装置6がそれぞれ取り付けられている。各ガイド装置6としては、スライディングガイドシュー又はローラガイド装置が用いられている。
【0017】
かご3の下方には、かごガイドレール2に対して加工を施す加工装置本体7が設けられている。
図1では加工装置本体7を単なるボックスで示しているが、詳細な構成は後述する。
【0018】
加工装置本体7は、吊り下げ部材8を介して、かご3の下部から昇降路1内に吊り下げられている。吊り下げ部材8としては、可撓性を有する紐状の部材、例えば、ロープ、ワイヤ又はベルトが用いられる。
【0019】
かご3は、加工装置本体7の上方に位置しており、加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させる。
【0020】
ガイドレール加工装置100は、加工装置本体7及び吊り下げ部材8を有している。また、ガイドレール加工装置100は、昇降路1に設置された状態のかごガイドレール2に加工を施す際に使用されるもので、エレベータの通常運転時には撤去される。
【0021】
図2は、
図1のII−II線に沿うかごガイドレール2の断面図である。かごガイドレール2は、ブラケット固定部2aと、案内部2bとを有している。ブラケット固定部2aは、レールブラケット9に固定される部分である。案内部2bは、ブラケット固定部2aの幅方向中央からかご3側へ直角に突出し、かご3の昇降を案内する。また、案内部2bは、かご3の非常停止時に非常止め装置5により把持される。
【0022】
さらに、案内部2bは、互いに対向する一対の制動面2cと、先端面2dとを有している。先端面2dは、案内部2bのブラケット固定部2aとは反対側、即ちかご3側の端面である。一対の制動面2c及び先端面2dは、かご3の昇降時に、ガイド装置6が接する案内面として機能する。また、一対の制動面2cは、かご3の非常停止時に非常止め装置5が接する面である。
【0023】
図3は、
図1の加工装置本体7の詳細な構成を示す斜視図である。
図4は、
図3の加工装置本体7を
図3とは異なる角度から見た斜視図である。
図5は、
図3の加工装置本体7を
図3及び
図4とは異なる角度から見た斜視図である。
図6は、
図3の加工装置本体7を
図3〜5とは異なる角度から見た斜視図である。
【0024】
加工装置本体7は、フレーム11、接続具12、加工具13、加工具駆動装置14、第1のガイドローラ15、第2のガイドローラ16、第1の押付ローラ17、第2の押付ローラ18、第1の先端面ローラ19、及び第2の先端面ローラ20を有している。
【0025】
フレーム11は、フレーム本体21とフレーム分割体22とを有している。接続具12、加工具13、加工具駆動装置14、第1のガイドローラ15、第2のガイドローラ16、第1の先端面ローラ19、及び第2の先端面ローラ20は、フレーム本体21に設けられている。
【0026】
第1の押付ローラ17及び第2の押付ローラ18は、フレーム分割体22に設けられている。
【0027】
接続具12は、フレーム本体21の上端部に設けられている。接続具12には、吊り下げ部材8が接続される。
【0028】
加工具駆動装置14は、フレーム本体21の加工具13とは反対側に配置されている。また、加工具駆動装置14は、加工具13を回転させる。加工具駆動装置14としては、例えば電動モータが用いられている。
【0029】
加工具13は、制動面2cに加工を施す。加工具13としては、砥石が用いられる。砥石としては、外周面に多数の砥粒が設けられている円筒状の平形砥石が用いられる。また、加工具13として、切削工具等を用いてもよい。
【0030】
加工具13の外周面を制動面2cに接触させた状態で加工具13を回転させることにより、制動面2cの少なくとも一部、即ち一部又は全面を削り取ることができる。これにより、例えば制動面2cの表面粗さを粗くし、非常止め装置5に対する制動面2cの摩擦係数をより適正な値にすることができる。
【0031】
フレーム本体21には、図示しないカバーが設けられている。加工具13により制動面2cに加工を施す際には、加工屑が発生する。カバーは、加工屑が加工装置本体7の周囲に散乱することを防止する。
【0032】
第1のガイドローラ15及び第2のガイドローラ16は、加工具13と並んでフレーム本体21に設けられている。吊り下げ部材8によりフレーム11を吊り下げた状態で、第1のガイドローラ15は加工具13の上方に配置され、第2のガイドローラ16は加工具13の下方に配置される。加工具13は、第1のガイドローラ15と第2のガイドローラ16との中間に配置されている。
【0033】
第1のガイドローラ15及び第2のガイドローラ16は、加工具13とともに制動面2cに接することにより、加工具13の外周面を制動面2cに平行に接触させる。即ち、加工具13の幅方向全体で加工具13の外周面を制動面2cに均等に接触させる。
【0034】
ガイドローラ15,16の制動面2cとの接触部である2本の線分と、加工具13の制動面2cとの接触部である1本の線分とは、1つの平面内に存在できるように設定されている。
【0035】
第1の押付ローラ17は、第1のガイドローラ15との間に案内部2bを挟み込む。第2の押付ローラ18は、第2のガイドローラ16との間に案内部2bを挟み込む。即ち、加工具13、第1のガイドローラ15、及び第2のガイドローラ16が、加工対象となっている側の制動面2cに接するとき、第1の押付ローラ17及び第2の押付ローラ18は、反対側の制動面2cに接する。
【0036】
加工具13及びローラ15,16,17,18の回転軸は、互いに平行又はほぼ平行、かつ、かごガイドレール2の加工時には水平又はほぼ水平である。
【0037】
第1の先端面ローラ19は、フレーム本体21の上端部に設けられている。第2の先端面ローラ20は、フレーム本体21の下端部に設けられている。即ち、第1及び第2の先端面ローラ19,20は、上下方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0038】
フレーム分割体22は、挟み込み位置と解放位置との間で、フレーム本体21に対して直線的に移動可能になっている。挟み込み位置は、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを挟み込む位置である。解放位置は、挟み込み位置よりも押付ローラ17,18がガイドローラ15,16から離れた位置である。
【0039】
フレーム本体21には、一対の棒状のフレームガイド23が設けられている。フレームガイド23は、フレーム本体21に対するフレーム分割体22の移動を案内する。また、フレームガイド23は、フレーム分割体22を貫通している。
【0040】
フレーム本体21のフレーム分割体22に対向する面には、一対のロッド固定部24が設けられている。各ロッド固定部24には、フレームばねロッド26が固定されている。各フレームばねロッド26は、フレーム分割体22を貫通している。
【0041】
フレーム分割体22のフレーム本体21とは反対側の面には、一対の第1のフレームばね受け25が設けられている。各フレームばねロッド26は、対応する第1のフレームばね受け25を貫通している。
【0042】
各フレームばねロッド26の先端には、第2のフレームばね受け27が取り付けられている。各第1のフレームばね受け25と対応する第2のフレームばね受け27との間には、フレームばね28が設けられている。各フレームばね28は、フレーム分割体22を挟み込み位置へ移動させる力を発生している。
【0043】
フレームばね28による押付ローラ17,18の加圧力は、加工装置本体7の重心位置の偏心によって、加工装置本体7が傾こうとする力に打ち勝ち、ガイドローラ15,16の外周面と制動面2cとの平行を維持できるような大きさに設定されている。
【0044】
また、フレームばね28による押付ローラ17,18の加圧力は、加工具13を回転させながら加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させたときにも、ガイドローラ15,16の外周面と制動面2cとの平行を維持できるような大きさに設定されている。
【0045】
フレーム本体21とフレーム分割体22との間には、図示しない解放位置保持機構が設けられている。解放位置保持機構は、フレームばね28のばね力に抗して、フレーム分割体22を解放位置に保持する。
【0046】
加工具13及び加工具駆動装置14は、加工位置と離隔位置との間でフレーム本体21に対して直線的に移動可能になっている。加工位置は、ガイドローラ15,16が制動面2cに接した状態で、加工具13が制動面2cに接する位置である。離隔位置は、ガイドローラ15,16が制動面2cに接した状態で、加工具13が制動面2cから離れる位置である。
【0047】
上記のように、押付ローラ17,18は、制動面2cに対して直角の方向へ移動可能になっている。また、加工具13及び加工具駆動装置14も、制動面2cに対して直角の方向へ移動可能になっている。
【0048】
図4及び
図5に示すように、加工具駆動装置14は、加工具支持部材としての平板状の駆動装置支持部材29に固定されている。また、駆動装置支持部材29は、4本の締結ボルト31により、可動支持部材30に着脱可能に取り付けられている。
【0049】
なお、締結ボルト31の本数は、4本に限定されない。但し、駆動装置支持部材29と可動支持部材30とを互いに回転できないよう固定するためには、締結ボルト31の本数は2本以上が望ましい。
【0050】
フレーム本体21には、一対の棒状の駆動装置ガイド32が固定されている。可動支持部材30は、駆動装置ガイド32に沿ってスライド可能になっている。これにより、加工具13及び加工具駆動装置14は、フレーム本体21に対して直線的に移動可能になっている。
【0051】
可動支持部材30とフレーム本体21との間には、加工具ばね33が設けられている。加工具ばね33は、加工具13及び加工具駆動装置14を加工位置側へ移動させる力を発生する。加工具ばね33による加工具13の加圧力は、ビビリなどの不具合が発生しない大きさに設定されている。
【0052】
フレーム本体21と可動支持部材30との間には、図示しない離隔位置保持機構が設けられている。離隔位置保持機構は、加工具ばね33のばね力に抗して、加工具13及び加工具駆動装置14を離隔位置に保持する。
【0053】
なお、
図7は、
図3の加工装置本体7をかごガイドレール2にセットした状態を示す斜視図である。
図8は、
図4の加工装置本体7をかごガイドレール2にセットした状態を示す斜視図である。
図9は、
図5の加工装置本体7をかごガイドレール2にセットした状態を示す斜視図である。
【0054】
図10は、
図3の加工装置本体7の要部断面図であり、加工具13の中心線に沿う断面を示している。加工具駆動装置14は、駆動装置本体14aと、主軸としての駆動軸14bとを有している。駆動装置本体14aは、駆動軸14bを回転させる。即ち、駆動軸14bは、加工具駆動装置14の回転軸である。駆動軸14bの先端部は、駆動装置本体14aから突出している。
【0055】
加工具13は、締結具により、駆動軸14bの先端部に機械的に固定されている。締結具としては、例えば、加工具13を駆動軸14bにキーレスで固定する摩擦締結具が用いられている。
【0056】
フレーム本体21には、第1の孔21aが設けられている。可動支持部材30には、第2の孔30aが、第1の孔に連続して設けられている。第1の孔21a及び第2の孔30aは、それぞれ加工具13の軸線方向に沿って加工具13が通過可能な大きさ及び形状となっている。
【0057】
第1及び第2の孔21a,30aの形状は、例えば、円形、四角形、又はその他の多角形のいずれであってもよい。例えば、第1及び第2の孔21a,30aの形状が長方形の場合、短辺を加工具13の直径以上とすればよい。また、第1及び第2の孔21a,30aの形状が円形の場合、第1及び第2の孔21a,30aの直径を加工具13の直径よりも大きくすればよい。
【0058】
また、第1の孔21aの形状と第2の孔30aの形状とが、互いに異なっていてもよい。例えば、第1の孔21aの形状を円形とし、第2の孔30aの形状を四角形としてもよい。
【0059】
実施の形態1の組立体41は、加工具13、加工具駆動装置14、及び駆動装置支持部材29を含んでいる。組立体41は、組み立てられた状態のまま、フレーム本体21に対して着脱可能となっている。即ち、組立体41は、締結ボルト31を取り外すことにより、可動支持部材30から一体の状態で取り外すことができる。また、組立体41は、締結ボルト31により、一体の状態で可動支持部材30に取り付けることができる。
【0060】
組立体41を可動支持部材30に対して着脱する際、加工具13は、第1及び第2の孔21a,30aを通過する。
【0061】
図11は、
図7の加工具13とかごガイドレール2との接触状態を示す断面図である。加工具13の外周面の幅寸法は、制動面2cの幅寸法よりも大きい。これにより、加工具13は、制動面2cの幅方向の全体に接触している。
【0062】
図12は、
図7の第1のガイドローラ15、第2のガイドローラ16、第1の押付ローラ17、及び第2の押付ローラ18と、かごガイドレール2との接触状態を示す断面図である。第1及び第2のガイドローラ15,16の外周面は、円筒状である。即ち、第1及び第2のガイドローラ15,16の回転中心C1に沿う断面における第1及び第2のガイドローラ15,16の外周面の形状は、直線である。
【0063】
第1及び第2の押付ローラ17,18の外周面は、球面状である。即ち、第1及び第2の押付ローラ17,18の回転中心C2に沿う断面における第1及び第2の押付ローラ17,18の外周面の形状は、円弧状である。
【0064】
次に、
図13は、実施の形態1のガイドレール加工方法を示すフローチャートである。なお、
図13に示す工程のうち、ステップS1の工程のみはエレベータが設置されている現場以外での作業で、その他の工程は全てエレベータが設置されている現場での作業である。このため、ステップS1以外の工程の実施中は、対象のエレベータの運転を停止させる必要がある。
【0065】
加工装置本体7によりかごガイドレール2に加工を施す場合、まずステップS1において、複数個の組立体41を組み立てる。また、各組立体41の組立に際して、加工具13と加工具駆動装置14との同軸度調整を実施する。
【0066】
具体的には、駆動装置支持部材29に取り付けられている加工具駆動装置14に加工具13を取り付ける。この後、加工具駆動装置14により加工具13を回転させる。このとき、加工具13の振れを、例えばダイヤルゲージで測定する。そして、加工具13の振れが規定の値以下になるように、加工具13の位置を調整する。
【0067】
用意する組立体41の個数は、加工対象のエレベータの台数及び昇降距離に比例する。また、組立体41のうちの1個は、加工装置本体7の可動支持部材30に締結ボルト31で予め組み付けておく。
【0068】
次に、エレベータが設置されている現場に、ガイドレール加工装置100、複数個の予備の組立体41、図示しない制御装置、及び図示しない電源を搬送する。制御装置は、加工装置本体7を制御する装置である。そして、ステップS2において、制御装置及び電源をかご3に搬入する。また、ステップS3において、ガイドレール加工装置100を昇降路1のピットに搬入する。
【0069】
続いて、かご3を昇降路1の下部に移動させておき、ステップS4において、吊り下げ部材8をかご3に接続して、ガイドレール加工装置100を昇降路1内に吊り下げる。また、ステップS5において、加工装置本体7を制御装置及び電源に接続する。そして、ステップS6、7において、加工装置本体7をかごガイドレール2にセットする。
【0070】
具体的には、ステップS6において、
図14に示すように、加工具13が離隔位置に保持され、フレーム分割体22が解放位置に保持された状態で、ガイドローラ15,16を一方の制動面2cに接触させる。また、先端面ローラ19,20を先端面2dに接触させる。
【0071】
この後、ステップS7において、フレーム分割体22を挟み込み位置に移動させ、
図15に示すように、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを挟み込ませる。
【0072】
このようにして加工装置本体7をかごガイドレール2にセットした後、ステップS8において、加工具13を回転させる。そして、ステップS9において、
図16に示すように、加工具13及び加工具駆動装置14を加工位置に移動させるとともに、かご3を定格速度よりも低速の一定速度で最上階へ移動させる。即ち、加工具13によって制動面2cに加工を施しながら、加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させる。
【0073】
かご3が最上階に到着すると、ステップS10において、加工具13及び加工具駆動装置14を離隔位置に移動させる。また、ステップS11において、加工具13の回転を停止させるとともに、かご3を停止させる。
【0074】
この後、ステップS12において、かご3を最下階へ移動させながら、加工量の測定を行う。この例では、かご3の上昇時のみ制動面2cに加工を施すので、かご3の下降時には、加工具13を制動面2cから離しておくのが好ましい。加工量の測定は、例えば、案内部2bの厚さ寸法を測定、又は制動面2cの表面粗さを測定することにより行う。
【0075】
かご3が最下階に到着すると、ステップS13において、加工量が予め設定した値に達していたかどうかを確認する。加工量が十分であった場合、加工完了となる。
【0076】
加工量が不十分であった場合、ステップS14において、加工具13の損耗状態を確認する。加工具13の摩耗が進んでいなかった場合、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを挟み込み、ステップS8〜13を再度実施する。
【0077】
加工具13の損耗が進んでおり、加工効率の低下が予想される場合、ステップS15において、加工具13を交換する。このとき、加工具13のみを交換するのではなく、既設の組立体41を、組み立てられた状態のまま、同じ構成を有する新たな組立体41と交換する。
【0078】
具体的には、締結ボルト31を取り外すことにより、既設の組立体41を一体の状態で、加工装置本体7から取り外す。このとき、加工装置本体7における加工具13側及び加工具駆動装置14側のうち、加工具駆動装置14側から、既設の組立体41を取り外す。この後、ステップS1にて用意しておいた新たな組立体41を、加工装置本体7に取り付け、締結ボルト31で固定する。
【0079】
組立体41の交換後、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを挟み込み、ステップS8〜13を再度実施する。そして、ステップS13において、加工量が十分になると、加工完了となる。
【0080】
反対側の制動面2cに対して加工を施す場合、
図3とは左右対称の加工装置本体7を用いるか、又は
図3の加工装置本体7を上下反対向きに吊り下げればよい。後者の場合、フレーム本体21の下端部にも接続具12を追加すればよい。
【0081】
上記の加工方法を残りのかごガイドレール2に対しても施すことにより、全ての制動面2cに加工を施すことができる。また、2台以上の加工装置本体7により2面以上の制動面2cに同時に加工を施すこともできる。
【0082】
実施の形態1のガイドレール加工方法は、吊り下げ工程、加工工程、及び交換工程を含んでいる。吊り下げ工程では、加工装置本体7が、昇降路1内に吊り下げられるとともに、かごガイドレール2に対してセットされる。また、吊り下げ工程では、かごガイドレール2に沿って昇降するかご3から、加工装置本体7が吊り下げられる。
【0083】
加工工程では、加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させながら、加工具13によりかごガイドレール2に加工が施される。交換工程では、組立体41が、組み立てられた状態のまま、新たな組立体41と交換される。
【0084】
次に、実施の形態1のエレベータのリニューアル方法について説明する。実施の形態1では、既設のかごガイドレール2を残したまま、既設のかご3及び既設の非常止め装置5を新設のかご及び新設の非常止め装置に入れ換える。また、実施の形態1のリニューアル方法は、レール加工工程及び入れ換え工程を含む。
【0085】
レール加工工程では、既設のかごガイドレール2の制動面2cの少なくとも一部を、上記のような加工装置本体7を用いて削り取る。このとき、吊り下げ部材8を介して加工装置本体7を既設のかご3に接続し、既設のかご3の移動により加工装置本体7を既設のかごガイドレール2に沿って移動させる。
【0086】
この後、入れ換え工程を実施する。入れ換え工程では、既設のかごガイドレール2を残したまま、既設のかご3及び既設の非常止め装置5を、新設のかご及び新設の非常止め装置に入れ換える。
【0087】
上記のようなガイドレール加工装置100では、組立体41が、組み立てられた状態のまま、フレーム本体21に対して着脱可能となっている。このため、加工具駆動装置14に対する加工具13の同軸度の調整を、エレベータの設置現場以外で実施することができる。また、加工具13の交換時における同軸度の再現が容易となり、全加工区間に渡って均一な加工精度を確保することができる。即ち、これにより、加工具13を容易に交換しつつ、かごガイドレール2に安定して加工を施すことができる。
【0088】
また、エレベータの設置現場における作業時間を短縮することができ、エレベータの停止期間を短縮することができる。
【0089】
また、実施の形態1の組立体41には、加工具13、加工具駆動装置14、及び駆動装置支持部材29が含まれている。このため、加工装置本体7の構成が単純になり、メンテナンス性が向上する。
【0090】
また、フレーム本体21には、加工具13が通過可能な第1の孔21aが設けられている。そして、可動支持部材30には、加工具13が通過可能な第2の孔30aが第1の孔21aに連続して設けられている。このため、簡単な構成により、フレーム本体21に対して、組立体41を一体のまま容易に着脱することができる。
【0091】
また、実施の形態1のガイドレール加工方法では、組立体41が、組み立てられた状態のまま、新たな組立体41と交換される。このため、加工具13を容易に交換しつつ、かごガイドレール2に安定して加工を施すことができる。
【0092】
ここで、従来のエレベータのリニューアル工事において、既設のかごを新設のかごと入れ換える場合がある。この場合、既設のかごに搭載されている既設の非常止め装置も、新設の非常止め装置に入れ換えられる。また、既設のかごガイドレールの案内面は、既設のかごに搭載されているガイド装置との長期間の接触により摩耗し、非常止め装置に対する摩擦係数が小さくなっていることがある。このため、既設のかごを新設のかごと入れ換える場合、既設のかごガイドレールも新設のかごガイドレールと入れ換えられる。
【0093】
しかし、この場合、既設のかごガイドレール及び新設のかごガイドレールの搬送等に手間がかかり、工期が長くなる。また、コストも高くなる。
【0094】
これに対して、上記のようなガイドレール加工装置100及びガイドレール加工方法では、吊り下げ部材8を介して加工装置本体7が昇降路1内に吊り下げられる。そして、加工具13により制動面2cに加工を施しながら加工装置本体7がかごガイドレール2に沿って移動される。このため、非常止め装置5に対するかごガイドレール2の摩擦係数を、かごガイドレール2を昇降路1に設置したまま、より適正化することができる。
【0095】
また、かごガイドレール2のほぼ全長に渡って、制動面2cを均等に加工することができる。
【0096】
また、加工装置本体7は、吊り下げ部材8により吊り下げられている。このため、制動面2cの加工中に、かご3の振動が加工装置本体7に伝わるのを防止することができる。これにより、加工不具合の発生を防止し、制動面2cを安定して加工することができる。
【0097】
また、加工装置本体7は、かご3から吊り下げられる。このため、加工装置本体7を揚重する装置を別途用意する必要がない。また、かごガイドレール2の非常止め装置5が把持する領域に、効率的に加工を施すことができる。また、昇降行程が長いエレベータにおいても、長い吊り下げ部材を用いることなく、かごガイドレール2のほぼ全長に渡って容易に加工を施すことができる。
【0098】
また、加工装置本体7には、ガイドローラ15,16が設けられている。このため、加工具13の外周面をより確実に制動面2cに平行に接触させることができ、削り残しを発生させずに、制動面2cに均等に加工を施すことができる。
【0099】
また、案内部2bは、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に挟み込まれる。このため、加工具13の外周面をより安定して制動面2cに平行に接触させることができる。また、制動面2cに上下方向の傾きがあった場合にも、加工具13の外周面と制動面2cとの平行を維持することができる。
【0100】
また、フレーム本体21には、接続具12が設けられている。このため、接続具12に吊り下げ部材8を接続して昇降路1内に吊り下げた状態で、加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させることができる。これにより、非常止め装置5に対するかごガイドレール2の状態を、昇降路1にかごガイドレール2を設置したまま、より適正な状態にすることができる。
【0101】
また、加工具13の上方に第1のガイドローラ15が配置され、加工具13の下方に第2のガイドローラ16が配置されている。このため、加工具13の外周面と制動面2cとの平行をより安定して維持することができる。これにより、かごガイドレール2の上下方向の傾き、曲がり、又はうねりがあった場合にも、加工具13の外周面と制動面2cとの平行を維持することができる。
【0102】
また、加工具13は、第1及び第2のガイドローラ15,16の中間位置に配置されている。このため、フレーム本体21に対する加工具13の移動方向を、制動面2cに直角な方向とすることができる。これにより、加工具13を制動面2cに押し付ける力を安定させることができる。また、加工のムラ、即ち削り取る量の不均一が発生することがなく、安定した加工を施すことができる。
【0103】
また、フレーム11は、フレーム本体21とフレーム分割体22とに分割されている。そして、フレームばね28は、フレーム分割体22を挟み込み位置側へ移動させる力を発生している。このため、簡単な構成により、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを安定して挟み込むことができる。
【0104】
また、加工具13及び加工具駆動装置14は、加工位置と離隔位置との間で移動可能となっている。そして、加工具ばね33は、加工具13及び加工具駆動装置14を加工位置側へ移動させる力を発生している。このため、簡単な構成により、加工具13を安定して制動面2cに押し当て、安定した加工を施すことができる。また、加工具13を離隔位置に移動させることで、制動面2cを加工せずに加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って移動させることもできる。
【0105】
また、フレーム本体21には、先端面ローラ19,20が設けられている。このため、加工装置本体7をかごガイドレール2に沿って安定した姿勢でスムーズに移動させることができる。
【0106】
また、ガイドローラ15,16の外周面は円筒状であり、押付ローラ17,18の外周面の断面形状は円弧状である。これにより、ガイドローラ15,16の外周面と制動面2cとが平行になるように自動調整される。
【0107】
例えば、
図17に示すように、加工する側の制動面2cと反対側の制動面2cとが平行でない場合にも、加工具13の外周面と加工する側の制動面2cとの平行をより確実に維持することができる。
【0108】
これに対して、
図18に示すように、押付ローラ17,18の外周面を円筒状とした場合、押付ローラ17,18の外周面が反対側の制動面2cと平行になる。これにより、ガイドローラ15,16の外周面が加工する側の制動面2cに対して傾斜し、加工具13も制動面2cに対して傾斜する恐れがある。但し、一対の制動面2cが互いに平行であれば、押付ローラ17,18の外周面は円筒状であってもよい。
【0109】
また、上記のようなエレベータのリニューアル方法では、既設のかごガイドレール2の制動面2cの少なくとも一部を削り取る加工を施す。この後、既設のかごガイドレール2を残したまま、既設のかご3及び既設の非常止め装置5を、新設のかご及び新設の非常止め装置に入れ換える。このため、新設の非常止め装置に対する既設のかごガイドレール2の摩擦係数を、かごガイドレール2を昇降路1に設置したまま、より適正化することができる。
【0110】
これにより、既設のかごガイドレール2を取り換えることなく、エレベータのリニューアルを実現することができる。従って、工期を大幅に短縮することができるとともに、工事にかかる費用も大幅に削減することができる。
【0111】
また、加工装置本体7を既設のかご3を利用して移動させるので、加工時に発生する加工屑等が新設のかご及び新設の非常止め装置5に付着するのを防止することができる。
【0112】
実施の形態2.
次に、
図19は、この発明の実施の形態2によるガイドレール加工装置の加工装置本体7を示す斜視図である。また、
図20は、
図19の加工装置本体7の要部断面図であり、加工具13の中心線に沿う断面を示している。
【0113】
実施の形態2の駆動装置支持部材29は、複数本、ここでは4本の支柱34を介して可動支持部材30に固定されている。これにより、駆動装置支持部材29は、可動支持部材30に対向している。
【0114】
可動支持部材30には、複数の締結ボルト35により、軸受保持部材36が固定されている。軸受保持部材36は、可動支持部材30の駆動装置支持部材29とは反対側の面に接している。実施の形態2の加工具支持部材は、軸受保持部材36である。
【0115】
軸受保持部材36には、軸受37が保持されている。軸受37には、主軸38が保持されている。主軸38は、軸受37を介して、軸受保持部材36に回転可能に保持されている。
【0116】
加工具13は、締結具により、主軸38の軸方向の第1の端部に機械的に固定されている。締結具としては、例えば、加工具13を主軸38にキーレスで固定する摩擦締結具が用いられている。
【0117】
主軸38の軸方向の第2の端部は、円筒状のカップリング39を介して、加工具駆動装置14の駆動軸14bに連結されている。カップリング39は、複数の止めねじ40により、主軸38及び駆動軸14bに固定されている。駆動軸14bの回転は、カップリング39を介して、主軸38及び加工具13に伝達される。
【0118】
また、主軸38は、止めねじ40を緩めることにより、駆動軸14bに対して切り離し可能となっている。なお、カップリング39と主軸38及び駆動軸14bとの固定方法は、止めねじ40による固定方法に限定されず、例えば、スリット式又はクサビ式であってもよい。
【0119】
実施の形態2の組立体42は、加工具13、軸受保持部材36、軸受37、及び主軸38を含んでいる。組立体42は、組み立てられた状態のまま、フレーム本体21に対して着脱可能となっている。即ち、組立体41は、カップリング39から主軸38を切り離し、締結ボルト35を取り外すことにより、可動支持部材30から一体の状態で取り外すことができる。
【0120】
また、組立体42は、締結ボルト35により、一体の状態で可動支持部材30に取り付けることができる。組立体42を可動支持部材30に固定することにより、主軸38及び加工具13は、駆動軸14bの軸線上に配置される。
【0121】
フレーム本体21には、収容孔21bが設けられている。軸受保持部材36は、収容孔21b内に収容されている。収容孔21bの径は、加工具13の径よりも小さい。
【0122】
可動支持部材30には、貫通孔30bが設けられている。主軸38は、貫通孔30bに通されている。貫通孔30bの径は、主軸38の径よりも大きく、収容孔21bの径よりも小さい。
【0123】
実施の形態2のガイドレール加工方法では、
図13のステップS1において、複数個の組立体42を組み立てる。ステップS15における組立体42の交換時には、加工装置本体7の加工具13側から、既設の組立体42を取り外す。
【0124】
他の構成、ガイドレール加工方法、及びリニューアル方法は、実施の形態1と同様である。
【0125】
このようなガイドレール加工装置100では、組立体42が、組み立てられた状態のまま、フレーム本体21に対して着脱可能となっている。このため、加工具13を容易に交換しつつ、かごガイドレール2に安定して加工を施すことができる。
【0126】
また、加工装置本体7における加工具13の回転中心の位置は、軸受37によって決まる。このため、組立体42を精度良く組み立てておくことで、組立体42を交換しても、加工具13と加工具駆動装置14との同軸度は保持される。これにより、組立体42の交換時に、加工具駆動装置14をフレーム本体21に残すことができる。
【0127】
このため、加工具駆動装置14は1台で済み、コストを削減することができる。また、組立体42の交換時に加工具駆動装置14の再配線作業が不要となり、作業効率を向上させることができる。
【0128】
また、収容孔21bの径、及び貫通孔30bの径は、加工具13の径よりも小さいため、フレーム本体21及び可動支持部材30の剛性を高めることができる。これにより、精度の高い加工を実施することができる。
【0129】
また、実施の形態2のガイドレール加工装置100、ガイドレール加工方法、及びリニューアル方法によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0130】
なお、加工装置本体7の加工具13側には、かごガイドレール2、及びかごガイドレール2が固定されている壁面又は鋼材が存在する。このため、加工具13を加工装置本体7の加工具駆動装置14側又は加工具13側のどちらから取り外す構成とするかの選択は、エレベータの設置現場のレイアウトに応じて適宜選択することが望ましい。
【0131】
また、上記の例では、加工具及び押付ローラを制動面に押し付ける力をばねにより発生させたが、例えば、空気圧シリンダ、油圧シリンダ、又は電動アクチュエータにより発生させてもよい。
【0132】
また、接続具は、フレームに一体に形成してもよい。
【0133】
また、上記の例では、既設のかごから加工装置本体を吊り下げたが、新設のかごから吊り下げてもよい。
【0134】
また、上記の例では、加工装置本体をかごから吊り下げたが、昇降路の上部又はかごに設置したウインチ等の揚重装置から加工装置本体を吊り下げてもよい。
【0135】
また、上記の例では、昇降体がかごであり、加工対象がかごガイドレールである場合を示した。しかし、この発明は、昇降体が釣合おもりであり、加工対象が釣合おもりガイドレールである場合にも適用できる。この場合、加工装置本体は、釣合おもりから吊り下げてもよいし、揚重装置から吊り下げてもよい。
【0136】
また、上記の例では、加工装置本体を上昇させながら制動面に加工を施したが、加工装置本体を下降させながら制動面に加工を施してもよい。また、加工装置本体を上昇させながら加工量を測定してもよい。また、加工と加工量の測定とを同時に実施してもよい。
【0137】
また、上記の例では、リニューアル工事の際にかごガイドレールに加工を施した。しかし、例えば、新設のエレベータにおいて制動面の表面粗さを調整したい場合、又は既設のエレベータの保守時に制動面をリフレッシュしたい場合にも、この発明を適用できる。
【0138】
また、この発明は、機械室を有するエレベータ、機械室レスエレベータ、ダブルデッキエレベータ、ワンシャフトマルチカー方式のエレベータなど、種々のタイプのエレベータに適用できる。ワンシャフトマルチカー方式は、上かごと、上かごの真下に配置された下かごとが、それぞれ独立して共通の昇降路を昇降する方式である。
【0139】
また、加工対象となるガイドレールは、エレベータのガイドレールに限定されず、例えば鉄道レールであってもよい。この場合、鉄道を止めなければならない時間を短縮することができる。