(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
具体的な実施形態は、図面及び詳細な説明によって、より完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は、様々な形態で具現化されてもよく、図面及び詳細な説明に記載された特定のまたは具体的な実施形態に限定されるものではない。
【0022】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者であれば、本明細書で明示的に説明または図示されなくても、本開示の主旨及び範囲に含まれる、本開示の原理を具体化する様々な構成を考え出すことができることを理解されたい。
【0023】
さらに、本明細書で挙げる全ての実施例及び条件を示す用語は、本開示の原理及び本技術を推進するために本発明者らが提供するコンセプトの理解を助ける教育目的のためだけであることを意味し、具体的に挙げられた実施例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0024】
さらに、本開示の原理、態様及び実施形態、並びにその特定の実施例で挙げる本明細書の全てのステートメントは、その構成及び機能の均等物の両方を含むことを意味する。さらに、そのような均等物には、現在知られている均等物と、将来開発される均等物、すなわち構成に関係なく同じ機能を実現する、開発された要素の両方を含むことを意味する。
【0025】
したがって、例えば、本明細書の任意のブロック図は、本開示の原理を実施する回路の実例を示す概念図であることが当業者に理解されよう。
【0026】
本明細書では、特に明記しない限り、図を含む図面は、正確な縮尺率で描かれていない。
【0027】
いくつかの追加の背景として、分散型センサは、センシング要素の全長に沿って物理パラメータを検出できるセンサシステムの一種である。例えば、分散型光ファイバセンサ(DFOS:Distributed Optical Fiber Sensor)システムは、センシングファイバの全長に沿って、温度、振動、歪等の特定の物理パラメータを連続的にモニタできる。同様に、分散型無線周波数(RF:Radio Frequency)センサは、同軸ケーブルの全長に沿って特定のパラメータを連続的にモニタできる。したがって、分散型センサ及びそれらから構成されるシステムは、1つの位置のみを測定できるシングルポイントセンサ、またはアレイ内のセンサ素子数に基づいて固定数の位置のみを測定できるアレイセンサとは対照的に、長距離、精細空間分解能センシングに非常に有用であることが分かる。そのような有用性を考えると、分散型センサは、国境警備、油田/ガス田のモニタ、高速道路やその他の公共インフラのモニタ、自然災害の早期警戒等に至るまで、ますます多くの用途で提案され、配備される。
【0028】
周知のように、分散型センシングは、光ファイバケーブルの全長に沿って連続的なリアルタイム測定を可能にする一連の技術である。予め決められたポイントで測定する個別のセンサに依存する従来のセンサやシステムとは異なり、分散型センシングは、製造されたセンサを用いずに光ファイバを利用する。光ファイバは、光路内に追加のトランスデューサを持たないセンシング素子である。
【0029】
インテロゲータは、レーダースタイルのプロセスに従って動作する。それは連続するパルスをファイバ内に送信し、自然に発生する散乱信号のリターンを時間の関数として記録する。これを実行する際、分散型センサは光ファイバに沿った全てのポイントで測定する。
【0030】
ファイバがセンサであるため、最も過酷であり、最も特殊な環境においても容易に配備できる、費用対効果が高い技術である。分散型光センサのいくつかの例としては、分散型温度センサ(DTS:Distributed Temperature Sensor)、分散型振動センサ(DVS:Distributed Vibration Sensor)、分散型音響センサ(DAS:Distributed Acoustic Sensor)及び分散型温度歪みセンサ(DTSS:Distributed Temperature and Strain Sensor)、またはそれらの組み合わせを含む。これらの大部分は後方散乱現象に基づくものであり、この後方散乱現象では、連続する光パルスがセンサユニット(インテロゲータ)によってセンシングファイバの下流へ周期的に送信され、入射光パルスの様々なタイプの後方散乱光(レイリー後方散乱、ブリルアン後方散乱及びラマン後方散乱等)の変化が測定されて処理され、センシングケーブル内の光ファイバに沿って温度、歪み、振動等の物理情報が提供される。
図1は、後方散乱に基づく分散型光ファイバセンシングの原理を示すフロー図である。他の分散型センサにおいても、同様の原理及び動作のメカニズムを利用する。
【0031】
後方散乱ベースの分散型センサでは、受信した後方散乱光の往復のタイム・オブ・フライトが位置情報を提供する。ある特定の時間に光検出器へ到達する後方散乱光を検出することで、ファイバ全体に沿った、様々な位置に関連する物理情報を測定できる。それに続くパルスは、それに続く時間の物理情報等を提供する。したがって、連続する時間でセンシングファイバに沿った連続する位置における物理情報を得ることができる。
【0032】
図2は、本開示の態様による、分散型センサからのウォーターフォールプロットの実例を示している。図で示されるように、それは3次元プロットであり、x軸はセンシングケーブルに沿った位置であり、y軸は時間であり、z軸は振動等のモニタされている物理パラメータの値である。このプロットの実例では、各横線がセンシングケーブル全体に沿った、ある瞬間における振動を表し、各縦線が対応する位置における物理パラメータの時間変動を示している。この種のプロットは、通常、x軸が時間の経過と共に固定され、y軸が時間の経過と共にスクロールダウンするため、本技術分野では「ウォーターフォール」プロットと称される。y軸は、時間情報を記述しているため、t軸と称してもよい。
【0033】
上述したように、各横線は、ケーブル全体に沿った、ある瞬間における振動である。
図3は、本開示の態様による、分散型センサからのウォーターフォールプロットの実例を示している。より具体的には、
図3は、
図2の時間850(任意の単位)における振動の一例を示している。図から分かるように、事象ピークに非常に近いが、ノイズが非常に多く、事象位置が明確に識別できないことが認められる。
【0034】
同様に、各縦線は、測定時間のある期間にわたるケーブルの位置における振動を示している。
図4は、本開示の態様による、光ファイバに沿った、ある瞬間における、分散型センサデータの実例を示すプロットである。より詳細には、
図4は、
図2の420mの位置における振動の例を示している。x軸の右側(大きい値)はより早い事象であり、左側(小さい値)は、より遅い事象である。図から分かるように、調査によって選択された位置もピークと非常に近いが、ノイズが非常に多く、形状をスムーズに識別できないことが認められる。
【0035】
当業者であれば容易に理解できるが、一般的に、このタイプのセンサは非常に高感度である。例えば、レイリー後方散乱ベースの分散型振動センサにおいて、センシングケーブルに対する軽いタッチのような環境のわずかな変化が、屈折率の変化、ケーブルの伸び等に関連するファイバに十分な経路長の変化を生じさせ、そのようなタッチがファイバのセクション内の光の干渉を変化させて後方散乱光の強度または位相に変化をもたらす。したがって、この技術は、接触/タッチ事象の正確な位置を提供できるため、ケーブルの長距離にわたる境界侵入検出に用いることが可能であり、その広範な適用性が見出されている。そのような用途において、センサデータ(例えば、ウォーターフォールデータ)は、「侵入事象が位置xで起きている」等のアラーム情報を生成するためにさらに処理される。
【0036】
理想的なケースにおいて、ある位置で異常(侵入事象等)が無い場合、その時点におけるその位置のセンサ出力は0である。侵入事象によって引き起こされる振動がある場合、その結果は、例えば機械的な移動の大きさに比例する正の値となる。そのため、測定された振動に閾値を設定することが有利である。センサデータが閾値を超える場合、侵入事象は、対応する瞬間に、対応する位置に関連してカウントされる。センサデータが設定された閾値未満である場合は、バックグランドとみなされて侵入事象が報告されない。
【0037】
上述したように、また当業者であれば容易に理解できるように、実際の運用ではセンサ結果に「ノイズ」が存在する。このようなノイズの主な発生源の1つは、分散型センサが配置されている環境である。これらのセンサは、非常に感度が高いため、環境ノイズを容易に感知して有用な信号と混合される。
【0038】
例えば、光ファイバに影響を及ぼす、ある程度の速度の風は、光センシングケーブルを移動または揺動させることがあり、分散型振動センサによって容易に検知されて侵入警報を発生させる。無害な環境ソースに起因して発生するアラームの他の例には、動物の動き(例えば、フェンス上への鳥の着地)、植物の動き(例えば、フェンスに触れる木の枝)、地面の動き、地下水の流れ、環境温度の変化等が含まれる。もちろん、分散型センサである光ファイバでそのような環境及び/または動物との相互作用を検出したい場合は、これらの技術がそれらの検出を可能にする十分な感度を有している。
【0039】
さらに理解されるように、ソースの周波数の不安定性、増幅器で増幅された自然放出(ASE:Amplified Spontaneous Emission)、光検出器のショットノイズ及び熱雑音、並びにデジタイザの量子化ノイズのような、センサのハードウェアの運用で生じるノイズも存在する。当業者によって容易に理解されるように、これらのノイズは、処理されたセンサ結果にも反映される。
【0040】
ここで、侵入検知センサの性能を決定する重要なパラメータは、以下の2つであることに注目する。(1)検出確率(POD:Probability of Detection)。これはできるだけ高くすべきである(理想的にはPOD=1)。(2)迷惑アラーム率(NAR:Nuisance Alarm Rate)。「迷惑アラーム」は、一般的に、環境からのものであり、侵入の企てに起因しない、センサにおけるアラームであると定義される。いくつかの従来技術の公開文献では、NARは「誤警報率」またはFAR(False Alarm Rate)と呼ばれていることに留意されたい。しかしながら、FARは、通常は異なるパラメータで参照され、そこでは設計不良、不適切な保守またはコンポーネントの故障等の要因によって機器自体で誤ったアラームが生成される。
【0041】
上述したように、分散型センサの結果において、ノイズが発生する要因は様々であり、これによりPODが低くなり、NARが増大する。閾値が過度に低く設定されていると、実際には侵入事象が発生していないが、より多くの迷惑アラームが報告されてNARが高くなる。一方、閾値が過度に高く設定されていると、いくつかの実在する事象が見逃されてPODが低下する。したがって、シンプルな閾値では不十分であり、効果的ではない。
【0042】
これらの考察を考慮すると、分散型センサの実装における鍵となる課題は、PODを最大化し、NARを最小化することである。もちろん、1つのアプローチは、採用したハードウェアで生成される任意のノイズを低減することで、単にシステム全体を改善することである。しかしながら、その魅力的なシンプルさがあっても、そのようなアプローチはハードウェアが過度に高価になる可能性があり、ノイズ除去/低減効果に関する理論的な限界が存在する。さらに、ハードウェアを改善しても、環境条件によるノイズは除去されない。
【0043】
本開示によるこれらのシステム、方法及び構成が与えられると、分散型センサに対して用いる新規なデータ処理技術によって、ノイズ特性を有利に(より低く)改善する。
【0044】
上記から分かるように、分散型センサにおけるノイズを改善するための1つのデータ処理のアプローチは、侵入が発生したと判定する前に、いくつかの連続的なアラームを待つことを含む。例えば、アラーム条件を1回のみ満たす(すなわち、センサデータが閾値を上回る)場合、アラームを無視するようにシステムを設定してもよい。センサデータが同様の位置で連続して3回閾値を超えた場合にのみ、システムは、アラーム事象が発生したと判断する。このようなアプローチは、時間領域の確認を利用するため、ある程度迷惑アラームを低減する。しかしながら、その有効性は限られている。この場合も、閾値の設定及び連続するアラームのカウント数に依存する。カウント数を過度に高く設定すると、一部の短期間のアラームが見逃される可能性がある。カウント値を過度に低く設定すると、迷惑アラームが頻繁に発生する。
【0045】
別のアプローチは、各時間領域のトレースを平滑化するために移動平均演算を実行することを含む。これにより、ノイズによる変動の大部分が低減されるが、ピーク値も抑制される。また、性能は、平滑化期間の設定に依存する。平滑化期間が過度に短いと、平滑化による改善が制限される。しかし、平滑化期間が過度に長いと、一部の短期間の事象が著しく低減するか、または見逃される可能性がある。
【0046】
さらに別のアプローチは、複数の閾値レベル、または動的に調整可能な閾値等、閾値を可変にすることである。そのようなシステムでは、閾値を調整するための情報を生成するために、別の入力ソース(例えば、センサまたは検出器)が必要である。例えば、侵入アラームの閾値を設定するために使用される、風量及び風向を測定するための気象観測所が配置される。風が非常に強い場合、風に起因するノイズが多いデータを無視するように、閾値をより高く設定できる。風がほとんどない場合、少ないアラームケースを見逃さないように、閾値を低く設定できる。この方法では、風に起因する迷惑アラームをさらに低減できるが、動物や地下の運動等、他の要因に起因する迷惑アラームを防ぐことができない。また、追加のセンサ/検出器を必要とする。
【0047】
このアプローチのさらなる別の欠点は、地域の状況のみを観測する追加のセンサ/検出器(例えば、気象観測所)があることである。分散型センサは、長距離(例えば、キロメートル)にわたって検知するために使用されるため、地域の状況が他の場所に適用されない場合がある。より多くの単一の位置センサが必要となり、コスト及びシステムの複雑性がさらに増大する。また、これらのセンサのための電源及び通信チャネルも必要であるため、コストがさらに増大する。
【0048】
さらなる別の従来技術の方法は、追加のセンサ/検出器を用いずに閾値を調整することを含む。ここでは、ある位置におけるデータの時間変化をいくつかのブロック期間に分割し、閾値を超えるデータの合計(この従来技術では「レベルクロス」と呼ばれる)をカウントし、ある数(「事象閾値」と呼ばれる)を超えると、アラームを発生させる。また、最後のノイズ検出期間にわたるレベルクロスカウントの変動が計算される。そして、それがノイズ振幅変動よりも小さい場合、事象閾値が更新される。この方法は、別のセンサ/検出器を必要とすることなくノイズを低減するために、閾値を動的に調整できる。しかしながら、この方法の限界は、時間領域の信号のみを考慮することである。
【0049】
これらのシンプルな従来技術の方法とは対照的に、本開示によるシステム、方法及び構成は、
図2〜
図4で示すように、時間領域及び空間領域の両方の情報を含む分散型センサからのウォーターフォールデータを用いるノイズ除去技術を採用することが有利である。
【0050】
センシング動作中、データは常に更新される(ウォーターフォールプロットをロールダウンする)。ノイズは、時間領域だけでなく空間領域でも発生することに留意されたい。両次元での組み合わせ処理は、ノイズ除去を実質的に改善する。
【0051】
ウォーターフォールデータは、2次元アレイW(x
i,t
j)で表すことができることが知られている。ここで、x
i=x
1,x
2,...x
Iであり、t
j=t
1,t
2,...,t
Jである。x
I及びt
Jは、ウォーターフォールの列及び行の要素数である。
【0052】
それぞれの時点における位置(すなわち、「注目ポイント」またはPOIと呼ばれるウォーターフォールプロット上のあるポイント、例えば、
図5のドットのような、ウォーターフォールプロット上の1つのドット)
【数1】
毎に、空間領域(x軸)にΔxポイントを有し、時間領域(t軸)にΔtポイントを有し、
【数2】
を中心とする仮想時空間ウィンドウが選択される。該ウィンドウは、
図5の青の破線のボックスで挿入図として示されている。したがって、このウィンドウ内にはΔx×Δtの画素が存在する。
【0053】
このウィンドウは、W(x
k,t
l)で表される。ここで、
【数3】
であり、
【数4】
である。
【0054】
このボックス内において、センサデータの値(z軸の値)が閾値(W
thと呼ばれる)を超える画素の数
【数5】
がカウントされる。pの最小値は0であり、ウィンドウ内の何れの画素も閾値を超えないことを意味し、pの最大値はΔx×Δtであり、全ての画素が閾値を超えていることを意味する。続いて、このPOIに対するパーセントの比rを得るために、pとウィンドウサイズとの比が計算される。それは以下で表すことができる。
【数6】
ここで、
【数7】
である。
【0055】
この比rは、この特定の時点における、この特定の位置に関するノイズ除去値と呼ばれる。
【0056】
図6(A)及び
図6(B)は、閾値を超えるウィンドウ内の画素の合計をカウントする処理の一例を示している。これらは、動作をより分かりやすく説明するために3次元グラフにプロットされている。
【0057】
本手順は、オリジナルのウォーターフォールプロット上の全ての画素に対して実行される(エッジにおけるいくつかのポイントを除いて、これについては後で詳述する)。これらの全ての手順を終了した後、新しいウォーターフォールプロットをプロットできる。ここで、データ(z軸)はr値である。
【0058】
図7は、
図2で示したオリジナルのサンプルデータに対してノイズ除去手順を実行した後の新しいウォーターフォールプロットである。新しいウォーターフォールプロットでは、この時空間ノイズ除去手順によって、ノイズがはるかに少なくなっていることが明確に分かる。中心のピークも明確に観察できる。
図8及び
図9は、それぞれ
図3及び
図4と同じ時間及び位置におけるノイズ除去結果である。この結果は、非常にスムーズであり、ベルカーブの形状を示すことが明確に観察できる。その結果、最大値(事象中心)、特に位置を明確に識別できる(
図8参照)。したがって、NARを低減させ、PODを増大させることに加えて、本開示による方法は分散型センサにおける位置精度も改善する。
【0059】
上述したように、このノイズ除去手順において設定すべきパラメータには、ウィンドウサイズ(Δx及びΔt)、並びに閾値W
thを含む。空間領域のウィンドウエッジ(Δx)については、位置のタイプ(例えば、フェンス、壁、内側の高さ、土壌に直接埋設されている、埋設された導管の内側等)、センシングケーブル特性(例えば、外径、外被材料、バッファ層に強くまたは弱く固定されている、任意の機械的な振動強化要素等)、設置方法(位置でどのように結合または固定されているか、留め具間の間隔等)、並びに検出すべき信号(例えば、軽い接触、振動、近くの車両等)に基づいて設定できる。これは、注目する位置に関連する領域をカバーするように設定されるべきである。
【0060】
時間領域のウィンドウエッジΔtについては、データリフレッシュレート(データサンプリングレート、処理時間等に関連する)、典型的な事象期間等に基づいて設定されるべきである。これらの2つのディメンジョン(位置と時間)は、物理的な意味が異なり、センシング事象との特性が異なるため、ΔxとΔtの値は通常異なっている(これは、両方の軸が同じ物理パラメータであり、通常は交換可能な、書込みパターンの解析等の2−D面上の他の解析とは異なる)。閾値W
thは、先のノイズの影響を気にすることなく、事象と非事象との間の実際の平均レベルがより適切に反映するように設定すればよい。
【0061】
周囲から計算された各ノイズ除去値は、ウォーターフォールプロット上にあり、エッジ付近(x軸の両端のΔx/2以内及びt軸の両端のΔt/2以内)のポイントは適切に処理できないため、これらのエッジポイントは無視してもよい。これは、以下の理由によって問題とはならない。位置軸については、通常、開始セクションはインテロゲータの位置であり、未だセンシングフィールドに到達していないために無視され、終了セクションは終端のために無視される。時間軸については、わずかな遅延(おそらく1秒未満)があることを意味するだけであるデータの数行は、データ及びアラーム生成のプロセスに影響を及ぼさないため、無視する。
【0062】
本方法では、各時間における各位置に関してノイズ除去プロセスを1回だけ処理する必要がある。リアルタイム動作では、オリジナルデータがウォーターフォール方式でローリングダウンしており、ウォーターフォールデータの下部は既に先に処理されて保存されているため、最新のデータ(ウォーターフォールの最上行)のみを処理する必要がある。したがって、毎回のノイズ除去の処理量は、(ウォーターフォールプロット全体を処理する代わりに)1行のデータに対してのみである。また、動作がシンプルである(単に閾値カウント)ため、ある程度の計算能力を有するどのようなコンピュータでも非常に短時間で実行できる。そのため、当業者であれば、この手順の複雑さが低く、リアルタイムのノイズ除去が最終的に達成可能であり、リアルタイムの分散型センシングが現実的であることを理解するであろう。
【0063】
もちろん、リアルタイムな用途に加えて、本手順は、先に保存されていた分散型センサからのデータのオフライン処理にも利用できる。データの全ての行の処理を必要とするが、その複雑さは依然として非常に低く、必要な時間は、どの通常のコンピュータでも短くなる(オフライン処理において、処理時間は通常問題ではない)。
【0064】
本手順によるノイズ除去における実証された効果により、結果としてのノイズ除去のウォーターフォールデータは、実際の事象の物理的な振幅に対してより線形である(比例する)。その結果、多くのレベルのアラームを設定できる。例えば、致命的なアラーム、比較的重要なアラーム及び比較的重要でないアラームに関して、それぞれに異なるr値(80%、60%及び45%等)を設定できる。
【0065】
本ノイズ除去方法は、センシング性能を更に改善し、より多くの情報を提供するために、他のデータ処理方法(周波数応答解析、機械学習解析等)と同時に利用できることにメリットがある。
【0066】
図10は、オフライン動作で実行される、本開示によるノイズ除去手順を示すフローチャートである。
図11は、リアルタイムで動作する、本開示によるノイズ除去手順を示すフローチャートである。
【0067】
ここでは、いくつかの具体的な例を用いて本開示を示したが、当業者であれば本教示がそれらに限定されないことを認めるであろう。したがって、本開示は添付する特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。