特許第6980136号(P6980136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980136
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】通信システム、通信方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/7105 20110101AFI20211202BHJP
【FI】
   H04B1/7105
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-566352(P2020-566352)
(86)(22)【出願日】2018年12月18日
(65)【公表番号】特表2021-514599(P2021-514599A)
(43)【公表日】2021年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2018047421
(87)【国際公開番号】WO2019215954
(87)【国際公開日】20191114
【審査請求日】2020年8月19日
(31)【優先権主張番号】15/977,024
(32)【優先日】2018年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】パジョヴィック、ミルティン
(72)【発明者】
【氏名】オーリック、フィリップ
【審査官】 齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第2418327(GB,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1128564(EP,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102710568(CN,A)
【文献】 Yao Xie et al.,Reduced-Dimension Multiuser Detection,IEEE Transactions on Information Theory,2013年02月25日,VOL.59, NO.6,pp.3858-3874
【文献】 Henning F. Schepker et al.,Sparse Multi-User Detection for CDMA transmission using greedy algorithms,2011 8th International Symposium on Wireless Communication Systems,2011年11月09日
【文献】 Linglong Dai,Non-orthogonal multiple access for 5G: solutions, challenges, opportunities, and future research trends,IEEE Communications Magazine,2015年09月16日,VO.53, NO.9,pp.74-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/7105
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムであって、
複数の送信機によって、前記送信機を前記通信システムに接続するワイヤレスのチャネルを介して送信されたシンボルの1つ又は組み合わせを含む信号を受信するアンテナを備える受信機であって、前記信号は、各シンボルが拡散符号のセットから選択された拡散符号を用いて符号化されるように符号化され、受信された受信信号の持続時間は、少なくとも前記拡散符号の持続時間である、受信機と、
フィルタリングされた信号を生成するフィルタであって、前記フィルタは、フィルタリングされたシンボルのセットを生成する相関器のセットと、前記フィルタリングされたシンボルを合成して前記フィルタリングされた信号を生成する合成器とを含み、各前記相関器は、前記受信信号を処理して前記フィルタリングされたシンボルを生成するための係数を含み、前記相関器のセット内の相関器の数は、前記拡散符号のセット内の前記拡散符号の数よりも少ない、フィルタと、
プロセッサであって、
前記拡散符号のセット及び前記チャネル内の雑音の分散に基づいて、最小平均二乗誤差(MMSE)行列を求め、
前記MMSE行列を低次元空間に射影して、低次元MMSE行列を生成し、
前記低次元MMSE行列の要素を用いて前記相関器のセットの係数のセットを更新し、
前記低次元MMSE行列の要素に基づいて辞書行列の要素を更新する、プロセッサと、
前記辞書行列を用いたスパース復元を用いて、前記フィルタリングされた信号から、前記送信機によって送信されたシンボルを検出する検出器と、
を備える、通信システム。
【請求項2】
前記信号は、アナログドメインにおいて受信され、各前記相関器は、
前記相関器の係数に従ってアナログ信号を生成する生成器と、
前記生成されたアナログ信号を前記受信信号と乗算してミックストシグナルを生成する乗算器と、
前記ミックストシグナルを積分する積分器と、
積分されたミックストシグナルをサンプリングして、前記フィルタリングされたシンボルを生成するサンプラと、
を含む、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記通信システムは、デジタルドメインにおいて前記受信信号を生成するように前記アンテナに接続されたフロントエンドを更に備え、各前記相関器は、
前記相関器の係数をデジタル信号と乗算してミックストシグナルを生成する乗算器と、
前記ミックストシグナルを積分して前記フィルタリングされたシンボルを生成する総和器と、
を含む、請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記MMSE行列を、低次元空間の次元に等しいランクを有する低次元行列と乗算することによって、前記MMSE行列を低次元空間に射影する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、ガウス行列、離散フーリエ変換(DFT)行列、及び双極性行列のうちの1つ又は組み合わせから無作為に前記低次元行列を選択する、請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記MMSE行列と低次元行列のセット内の低次元行列との積の中で最小コヒーレンスを有する低次元MMSE行列をもたらすように、前記低次元行列のセットから低次元行列を選択する、請求項4に記載の通信システム。
【請求項7】
前記低次元行列のセットは、ガウス行列、離散フーリエ変換(DFT)行列、及び双極性行列のうちの1つ又は組み合わせを含む、請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、事前白色化低次元MMSE行列、MMSE行列及び低次元行列のセット内の低次元行列の積の中で最小コヒーレンスを有する低次元MMSE行列をもたらすように、前記低次元行列のセットから前記低次元行列を選択する、請求項4に記載の通信システム。
【請求項9】
前記低次元行列のセットは、ガウス行列、離散フーリエ変換(DFT)行列、及び双極性行列のうちの1つ又は組み合わせを含む、請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記フィルタのセットの係数のセットの組み合わせは、前記低次元MMSE行列を形成する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項11】
前記相関器のセットの係数のセットの組み合わせによって形成される行列は、前記低次元MMSE行列の事前白色化である、請求項1に記載の通信システム。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記チャネルの利得及び前記チャネル内の雑音の分散を推定し、前記低次元MMSE行列の要素及び前記チャネルの利得に基づいて前記辞書行列の要素を更新する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項13】
前記受信機は、前記送信機から前記チャネルの利得を受信し、前記低次元MMSE行列の要素及び前記チャネルの利得に基づいて前記辞書行列の要素を更新する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項14】
前記信号内の前記シンボルは、定モジュラス変調を用いて変調され、前記辞書行列を前記チャネルの利得とは独立したものにする正規化ゼロフォーシングプリコーダを用いてプリコーディングされる、請求項1に記載の通信システム。
【請求項15】
通信方法であって、前記通信方法は、前記通信方法を実施する記憶された命令と結合されたプロセッサを使用し、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記通信方法のステップを実行し、前記通信方法は、
複数の送信機によって、前記送信機を通信システムに接続するワイヤレスのチャネルを介して送信されたシンボルの1つ又は組み合わせを含む信号を受信することであって、前記信号は、各シンボルが拡散符号のセットから選択された拡散符号を用いて符号化されるように符号化され、受信された受信信号の持続時間は、少なくとも前記拡散符号の持続時間である、受信することと、
前記信号をフィルタリングして、フィルタリングされた信号を生成することであって、前記フィルタリングすることは、相関器のセットを用いて、前記フィルタリングされた信号に合成されたフィルタリングされたシンボルのセットを生成し、各前記相関器は、前記受信信号を処理してフィルタリングされたシンボルを生成するための係数を含み、前記相関器のセット内の前記相関器の数は、前記拡散符号のセット内の前記拡散符号の数よりも少ない、フィルタリングすることと、
前記拡散符号のセット及び前記チャネル内の雑音の分散に基づいて、最小平均二乗誤差(MMSE)行列を求めることと、
前記MMSE行列を低次元空間に射影して、低次元MMSE行列を生成することと、
前記低次元MMSE行列の要素を用いて前記相関器のセットの係数のセットを更新することと、
前記低次元MMSE行列の要素に基づいて辞書行列の要素を更新することと、
前記辞書行列を用いたスパース復元を用いて、前記フィルタリングされた信号から、前記送信機によって送信された前記シンボルを検出することと、
を含む、通信方法。
【請求項16】
方法を実施するプロセッサによって実行可能なプログラムが具現化された非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記方法は、
複数の送信機によって、前記送信機を通信システムに接続するワイヤレスのチャネルを介して送信されたシンボルの1つ又は組み合わせを含む信号を受信することであって、前記信号は、各シンボルが拡散符号のセットから選択された拡散符号を用いて符号化されるように符号化され、受信された受信信号の持続時間は、少なくとも前記拡散符号の持続時間である、受信することと、
前記信号をフィルタリングして、フィルタリングされた信号を生成することであって、前記フィルタリングすることは、相関器のセットを用いて、前記フィルタリングされた信号に合成されたフィルタリングされたシンボルのセットを生成し、各前記相関器は、前記受信信号を処理してフィルタリングされたシンボルを生成するための係数を含み、前記相関器のセット内の前記相関器の数は、前記拡散符号のセット内の前記拡散符号の数よりも少ない、フィルタリングすることと、
前記拡散符号のセット及び前記チャネル内の雑音の分散に基づいて、最小平均二乗誤差(MMSE)行列を求めることと、
前記MMSE行列を低次元空間に射影して、低次元MMSE行列を生成することと、
前記低次元MMSE行列の要素を用いて前記相関器のセットの係数のセットを更新することと、
前記低次元MMSE行列の要素に基づいて辞書行列の要素を更新することと、
前記辞書行列を用いたスパース復元を用いて、前記フィルタリングされた信号から、前記送信機によって送信された前記シンボルを検出することと、
を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システムに関し、より詳細には、マルチユーザ通信システムにおける共有ワイヤレスチャネルを介して送信されたシンボルを復号するためのパケット衝突検出に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マルチユーザ検出は、ワイヤレス通信、高速データ送信、DSL、衛星通信、デジタルテレビジョン、及び磁気記録等の領域において生じる情報の相互に干渉するデジタルストリームの復調に対処する。マルチユーザ検出は、低電力インターチップ及びイントラチップ通信における復調用にも現在研究されている。
【0003】
マルチユーザ検出は、共有チャネルを介して受信される干渉信号の同時検出に向けられた技術を包含する。最新のスペクトル効率の良いワイヤレスシステムにおいて、相互干渉は不可避である。すなわち、TDMA、同期CDMA又はOFDMA等の直交多重化システムを用いる場合でさえ、チャネル歪み及びセル範囲外(out-of-cell)干渉に由来してマルチユーザ干渉が生じる。加えて、マルチアンテナ(MIMO)システムでは、異なるアンテナから発せられるデジタル変調されたストリームは、受信機において干渉し、MIMO受信機は、これらのストリームを分離するのにマルチユーザ検出技法を用いる。干渉信号の構造を活用することによって、マルチユーザ検出は、スペクトル効率、受信機感度、及び、システムが保持し得るユーザの数を高めることができる。
【0004】
例えば、ユーザ(送信機)が基地局及び/又はアクセスポイント等の単一の受信機と通信状態にある通信システムを検討する。複数のユーザが、同じ周波数帯域及び場合によっては同じタイムスロットにおいて送信を行ったとき、拡散符号を備えているため、受信機は、それらのユーザの送信を分離する(すなわち、それらのユーザが送信するシンボルを検出する)ことができる。この分離は、受信機のフロントエンドにおけるフィルタバンクを用いて行われる。フィルタバンクは、相関器を含み、各相関器は、受信信号を、このような相関器に固有の或る特定の符号と相関させる。従来のマルチユーザ検出システムにおいて、フィルタバンク内の相関器の数は、送信機によって用いられる拡散符号の数に等しいため、各相関器は1つの送信機に関連付けられる。加えて、従来のシステムにおける拡散符号は、直交、又は準直交であるように設計されている。
【0005】
しかしながら、直交拡散符号の数は限られており、数百個又は更には数千個ものユーザ/送信機を伴うIoTシステム等のマルチユーザ通信システムには不十分である可能性がある。このような欠点により、非直交符号の使用につながり、これにより、パケット衝突及びパケット復元問題が順に発生する。これについては、例えば、特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017−0244815号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
IoT応用の数の増大の中で、送信側デバイスの数は、直交チャネルリソースのみの割り当ての妨げになっている。したがって、アクティブなユーザから送信されるシンボルの衝突が起こるので、受信機側でのそれらのシンボルの分離が必要とされる。IoTユーザ(送信機)が低確率で送信を行うと仮定すると、ユーザアクティビティドメインにおけるスパース性を活用して、シンボル分離問題をスパース復元問題として定式化することができる。しかしながら、受信機によって用いられるフィルタの数がユーザの全体数に等しい場合、過大な計算複雑度が課題として残る。したがって、低複雑度シンボル分離を促す削減次元プロセッサが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの実施の形態の目的は、モノのインターネット(IoT)デバイス等の多数の送信側ユーザが受信機と通信している状態を処理するのに適したマルチユーザ通信システムを提供することである。ユーザの数は、例えば、数百又は更に数千であるように、多数である可能性がある。いくつかの実施の形態は、このような要件を処理するように構成されたマルチユーザ検出システムがいくつかの問題に直面する可能性があるという認識に基づいている。第1に、受信機内に極めて多数の(数千個とはいかないまでも、数百個もの)相関器を実装することにより、計算複雑度及び受信機内のエネルギー消費の増加がもたらされる。第2に、多数のユーザに割り当てられる拡散符号は直交ではない。さらに、受信機側の全てのユーザからチャネル状態情報を取得することは、応用によっては非実用的である可能性がある。
【0009】
いくつかの実施の形態は、多数の送信機は非直交拡散符号をもたらすものの、一方で、その多数の送信機のうち、ごく少数の送信機のみが同時に、すなわち、同じタイムスロット内で送信を行うという認識に基づいている。例えば、IoTデバイスは、送信すべき情報を常に有するというわけではない。例えば、IoTデバイスは、時折温度測定値を送信するだけかもしれない。
【0010】
いくつかの実施の形態は、非直交符号のスパース送信でも依然として送信シンボルの復元を必要とするという認識に基づいている。いくつかの実施の形態は、このような復元、例えば、衝突したシンボルのスパース復元は、シンボルを検出するためだけではなく、拡散符号を用いて符号化される受信信号をフィルタリングするのに用いられるフロントエンドにおける相関器の数を削減するためにも用いることができるという理解に基づいている。このようにして、いくつかの実施の形態では、ユーザの数を減少させることなく、フィルタバンク内に必要とされる相関器の数を削減する。言い換えれば、相関器の数を所与として、いくつかの実施の形態では、受信機の相関器の数を超えて、受信機がサポートすることができるユーザの数を増加させる。
【0011】
全体として、いくつかの実施の形態は、ごく少数のユーザのみが同時に送信を行うので、受信信号は低次元であり、すなわち、拡散符号によって張られる(すなわち、生成される)空間の低次元部分空間内で「存在する(lives)」という理解に基づいている。したがって、受信信号をこのような部分空間の軸上に射影することによって、送信シンボルは、得られた射影から分離することができる。本明細書において、低次元部分空間は、利用可能な拡散符号のセットによって定義された信号空間の次元よりも少ない次元を有する信号空間であると定義する。
【0012】
例えば、100個の潜在的に送信を行うユーザのうち、3つのユーザのみが所与のタイムスロット内で送信を行ったとする。それらの3つのユーザのアイデンティティ(及びそれらの拡散符号)が既知であるものとする。この事例では、受信信号は、それらのユーザに関連付けられた3つの拡散符号が混合したものである。このような信号は、拡散符号によって張られる空間内で低次元であり、特に、受信シンボルは、低次元部分空間内で「存在し」、当該低次元部分空間の次元は、3である(拡散符号が独立であると仮定すると、これは常に満たされる)。フィルタバンクは、この事例では、3つの相関器を含むことになり、各相関器が1つの拡散符号に調節される。フィルタリングされた信号は、フィルタリングされたシンボルと称される3つの値を含む。それらの3つの値は、受信信号が「存在する」低次元部分空間における受信信号の有効な「座標」である。3つのアクティブなユーザによって送信されたシンボルの検出が、その後、それらの3つの「座標」から行われる。
【0013】
ここで、3つのユーザが所与のタイムスロット内で送信を行っているが、それらのアイデンティティが未知である別の例を想像されたい。その場合、受信信号は、3つの拡散符号が混合したものである。それらの拡散符号は、未知であるが、拡散符号のセットに属する。受信信号は、低次元部分空間内で依然として「存在し」、低次元部分空間の次元は3である。しかしながら、当該部分空間の基底(すなわち、「アイデンティティ」)は未知である。それゆえ、フィルタバンクは、本質的に、受信信号の擬似ランダム基底上への射影を実行する。実施態様ごとに、相関器の係数は、出力値(フィルタリングされたシンボル)が、受信信号内に存在する場合がある任意の拡散符号のフィンガープリントを含むように設計される。この例では、フィルタバンク内の相関器の数は、少なくとも3でなければならないが、許容可能な検出性能を達成するために通常より多く(例えば、5)、擬似ランダム基底又は送信された拡散符号のフィンガープリントが、スパース復元技法を用いて復元される。
【0014】
一般に、実施の形態では、1タイムスロット内で送信を行うことができるユーザの数を事前に知らない。しかしながら、特定のデバイスが送信を行うことができる頻度の統計値に基づいて、いくつかの実施の形態では、その数の上限を推定する。フィルタバンク内の相関器の数は、少なくとも、同時に送信を行うユーザの数に等しくなければならず、いくつかの実施態様では、より良好な検出性能を得るために相関器の数はより多くなる。相関器の数は低次元空間の次元を定義する一方、利用可能な拡散符号の数は高次元空間の次元を定義する。
【0015】
いくつかの実施の形態は、フロントエンドにおけるフィルタの相関器の係数と、スパース性検出器によって用いられる辞書行列との間に関係が存在するという理解に基づいている。具体的には、この依存性により、フィルタの次元を削減することが可能になると同時に、依然として送信シンボルを復元することが可能になる。いくつかの実施の形態では、このような依存性を、最小平均二乗誤差(MMSE)行列を通じて確立する。すなわち、フィルタの係数及び辞書行列の係数は、(異なる関数であるが)同じMMSE行列の関数である。
【0016】
例えば、相関器の係数は、行列を形成し、いくつかの実施の形態では、この行列を、MMSE行列及び何らかの次元削減行列に基づいて計算する。フィルタバンク内の相関器の数がユーザの数に等しい場合、次元削減は存在せず、相関器の係数の行列は、MMSE行列に等しい。MMSE行列は、全てのユーザの拡散符号及び雑音分散から計算される。MMSE行列内の係数は、MMSEフィルタを形成する。MMSEフィルタは、ユーザからの実際に送信された信号と、当該ユーザに関連付けられたフィルタバンクの相関器の出力における信号との間の差として定義される、誤差信号のパワーを最小化する最適線形プロセッサである。
【0017】
いくつかの実施の形態では、MMSE行列を低次元空間に射影して、フィルタの相関器の係数を形成する低次元MMSE行列を生成する。加えて、辞書行列の係数も、低次元MMSE行列の関数である。
【0018】
いくつかの実施の形態では、次元削減行列は、行列の何らかのセットから選択される。次元削減行列の目的は、MMSEフィルタから出力されることになる信号を何らかのより低い次元空間に射影することである。MMSEフィルタは、直接実装されず、それゆえ、いくつかの実施の形態では受信信号に対して直接作用しない(さもなければ、従来のマルチユーザ検出スキームからの相関器の数の削減はないことになる)ことに留意されたい。そうではなく、いくつかの実施の形態のフィルタバンク(すなわち、その係数の行列)は、MMSE行列及び次元削減行列から計算される。アクティブなユーザ及びそれらのシンボルの検出は、フィルタリングされた信号から実行される。
【0019】
異なる実施の形態では、異なる方法において次元削減行列を選択する。いくつかの実施の形態では、受信信号を、擬似ランダム軸によって張られる部分空間に射影する(各射影は、フィルタバンク内の1つの相関器を用いて実施され、各軸は、当該相関器の係数によって指定される)。アクティブなユーザは未知であるので、いくつかの実施の形態は、このような射影を行い、その結果、各拡散符号がフィルタリングされた信号内で自身のフィンガープリントを得ることを目標とする。しかしながら、これは、複数の方法において実行可能である。
【0020】
例えば、1つの実施の形態は、得られた射影が、フィルタリングされた信号内に含まれる情報が送信シンボル(及び受信信号内に存在する拡散符号)の検出を行わせるように可能な限り異なるべきであるという認識に基づいている。数学的には、これは、擬似ランダム基底ベクトルを可能な限り直交にするという要件と類似である。換言すれば、擬似ランダム基底ベクトルは、可能な限り異なる必要がある。この要件は、相関器の係数の行列のコヒーレンスによって捕捉される。行列のコヒーレンスは、行列の任意の2つの異なる列間の最大相互相関と定義される。それゆえ、いくつかの実施の形態では、候補のセットから次元削減行列を選択することにより、相関器の係数の結果として得られる行列のコヒーレンスが最小化される。
【0021】
したがって、1つの実施の形態は、受信機と、フィルタと、検出器と、プロセッサとを備える、通信システムを開示する。受信機は、複数の送信機によって、送信機を通信システムに接続するワイヤレスチャネルを介して送信されたシンボルの1つ又は組み合わせを含む信号を受信するアンテナを備える。信号は、各シンボルが拡散符号のセットから選択された拡散符号を用いて符号化される。受信信号の持続時間は、少なくとも拡散符号の持続時間である。フィルタは、フィルタリングされた信号を生成する。フィルタは、フィルタリングされたシンボルのセットを生成する相関器のセットと、フィルタリングされたシンボルを合成してフィルタリングされた信号を生成する合成器とを含む。各相関器は、受信信号を処理してフィルタリングされたシンボルを生成するための係数を含む。相関器のセット内の相関器の数は、拡散符号のセット内の拡散符号の数よりも少ない。検出器は、辞書行列を用いたスパース復元を用いて、フィルタリングされた信号から、送信機によって送信されたシンボルを検出する。プロセッサは、拡散符号のセット及びチャネル内の雑音の分散に基づいて、最小平均二乗誤差(MMSE)行列を求め、MMSE行列を低次元空間に射影して、低次元MMSE行列を生成し、低次元MMSE行列の要素を用いて相関器のセットの係数のセットを更新し、低次元MMSE行列の要素に基づいて辞書行列の要素を更新する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】いくつかの実施形態による通信システムの概略図である。
図1B】いくつかの実施形態による、ユーザが時折データを送信する例示の同期アップリンク送信の概略図である。
図1C】いくつかの実施形態によって変換されるマルチユーザ検出(MUD)フィルタバンクのブロック図である。
図2】種々の実施形態によって利用される原理に従って設計された受信機のブロック図である。
図3】1つの実施形態による削減次元フィルタのブロック図である。
図4A】いくつかの実施形態に従って構成されたプロセッサの動作のブロック図である。
図4B】1つの実施形態による、フィルタ係数を計算するためにプロセッサによって用いられる方法のブロック図である。
図4C】いくつかの実施形態による、プロセッサによって実施される辞書行列を計算する方法のブロック図である。
図4D】1つの実施形態による、辞書行列を計算する実施態様のブロック図である。
図4E】いくつかの実施形態による、事前白色化(pre-whitened)フィルタ係数を計算する方法のブロック図である。
図5A】いくつかの実施形態による検出器のブロック図である。
図5B】いくつかの実施形態によって用いられる、シンボル検出のためのスパース復元モデル(sparse recovery model)の概略図である。
図5C】1つの実施形態によって用いられる、シンボルを検出するための削減次元脱相関(RDD:reduced dimension decorrelating)検出のブロック図である。
図5D】1つの実施形態によって用いられる、スパース復元検出のための削減次元判断フィードバック(RDDF:reduced dimension decision feedback)検出のブロック図である。
図5E】1つの実施形態によって用いられる、スパース復元検出のための直交マッチング追跡(OMP:orthogonal matching pursuit)検出のブロック図である。
図6A】1つの実施形態による、フィルタのアナログ実施態様のブロック図である。
図6B】1つの実施形態による、フィルタのデジタル実施態様のブロック図である。
図7A】1つの実施形態による、低次元行列を決定する方法のブロック図である。
図7B】別の実施形態による、低次元行列を決定する方法のブロック図である。
図8】いくつかの実施形態によって用いられる、時間ドメイン複信(TDD)に基づくチャネル推定及び情報プリコーディングのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1Aは、いくつかの実施形態による通信システムの概略図を示している。例えば、通信システムは、共通の受信機110とのアップリンク通信状態にある複数の送信機101、102、103、104、105、106及び107(本明細書において「ユーザ」とも称される)を含む。アクティブなユーザ101、104及び105は、偶然、信号同士が衝突するように、共有チャネルを介して信号111、112及び113を送信している。受信機110は、アクティブなユーザの信号同士を分離させるという目標で、受信信号に対して信号処理方法を利用する。例えば、ユーザは、モノのインターネット(IoT:internet of things)デバイスであり、一方、受信機は、屋内環境の事例ではアクセスポイント(AP)、屋外環境の事例では基地局(BS)である。
【0024】
種々の実施形態の通信システムは、共通の受信機に情報を送信する、数百個又は数千個等の多数の送信機を考慮することができる。通常、ユーザ同士は、時間的に同期される。これは、時間軸が複数のタイムスロットに分割されることを意味し、この場合、各ユーザが、各タイムスロットの開始時点及び終了時点を理解している。
【0025】
図1Bは、いくつかの実施形態による、ユーザが時折データを送信する例示の同期アップリンク送信の概略図を示している。この例では、N個のユーザ121、122、123及び124が、受信機110と通信状態にある。時間軸131は、データ送信135が、136において開始するとともに137において終了するタイムスロット内で行われるような複数のタイムスロット130に分割される。この実施形態では、送信機が時点138において送信すべきデータを得た場合、この送信機は、そのデータの送信を開始するために、次のタイムスロットの開始時点136まで待機する必要がある。
【0026】
一方、多数のユーザのうち、偶然同時に送信を行うのはそのごく少数のみである。例えば、この状態は、多数のIoTデバイスが同じアクセスポイントと通信することができるが、同時に信号を送信するのはそのごく少数であるようなIoTネットワークにおいて生じる。例えば、IoTデバイスは、自身の測定値を1時間に一度送信する温度センサである。図1Bに示すように、2つのユーザ121及び123のみが同じタイムスロット中にデータ141及び142をそれぞれ送信し、一方、他の全てのN−2個のユーザは、そのタイムスロット内ではサイレント/非アクティブである。
【0027】
いくつかの実施形態は、通信システムのユーザが直交チャネルリソースを割り当てられる場合、それらのユーザの送信同士は衝突しないという認識に基づいている。これは、2つのユーザが同時に送信を行う場合、それらのユーザは異なる周波数帯域においてこれを行い、その結果、それらのユーザの信号は、周波数ドメインにおいて分離されているということを意味する。しかしながら、複数のユーザが同じ周波数帯域を割り当てられ、かつ、同じ時刻における送信を許可された場合、それらのユーザには、直交拡散符号を割り当てるることによって、それらのユーザの送信同士を拡散符号ドメインにおいて分離することができる。さらに、2つ以上のユーザが同じチャネルを共有する場合、すなわちそれらのユーザが同じ周波数帯域において同じ時刻に送信するとともに、非直交拡散符号を有し得る場合であっても、所与の時間において1つのユーザのみがチャネルリソースを利用する多くのチャネルアクセス制御メカニズムが開発されている。全体として、2つ以上のユーザの送信間の衝突の尤度及び悪影響を低減させることが目標である、通信分野における多くの技術が数十年にわたって開発されている。
【0028】
しかしながら、多数のユーザが同じアクセスポイントと通信状態にあるセットアップへのこれらの通信技術の拡張は、重大な課題を課している。第1に、ユーザの数により、それらのユーザに直交チャネルリソースを割り当てることが妨げられる可能性がある。例えば、各ユーザが、いずれの2つの異なる周波数帯域のチャンクも重ならないように、1つのチャンクを得られるほど、与えられた周波数帯域が十分に広くない場合がある。第2に、ユーザは時折信号を送信するので、それらのユーザへの直交チャネルリソースの割り当ては、チャネルの活用が不十分となる。例えば、利用可能帯域幅が十分広く、その結果、各ユーザが帯域幅の1つの独立したチャンクを得る事例であっても、周波数帯域の大部分が用いられない。第3に、1つのユーザが所与の時間において確実にチャネルリソースを利用することように開発されたネットワーク管理及び制御技法を利用することは、非実用的である可能性がある。すなわち、特定のタイムスロットにおいて送信すべきデータを有するユーザの数が少ない中で多数のユーザに割り当てると、ネットワーク制御及び管理は、結果として非常に大きいオーバーヘッドをもたらす。したがって、これは、チャネルの活用を不十分とする可能性がある。なぜならば、チャネルリソースは、その大部分が制御及び管理のために用いられ、データ送信のために用いられるチャネルリソースははるかに少ないためである。
【0029】
そのため、いくつかの実施形態では、(1)多数のユーザが同期して同じアクセスポイントにデータを送信し、(2)ごく少数のユーザのみが所与のタイムスロットにおいて送信すべきデータを有し、その結果、(3)異なる送信間の衝突を回避するように設計された従来の通信技法の利用が不可能又は非実用的である、通信応用を検討する。
【0030】
このようにして、いくつかの実施形態によって検討される通信応用における各ユーザは、一意の拡散符号を割り当てられる。しかしながら、拡散符号は、必ずしも直交ではない。これは、上述したように、ユーザの数が通常あまりにも大きいので、これに見合うだけの多くの直交符号が存在しないためである。本質的には、各ユーザは、そのデータを、自身の拡散符号を用いて符号化する。例えば、拡散符号は、一般に、持続時間がシンボル時間とも呼ばれるシグナリング間隔に等しい波形wであり、BPSK変調の事例では、ユーザは、wを用いてシンボル+1を表すとともに−wを用いてシンボル−1を表すようになっている。あるユーザが符号化を行わない場合、そのデータはw=1を有することと同等であることに留意されたい。
【0031】
図1Cは、いくつかの実施形態によって変換されるマルチユーザ検出(MUD)フィルタバンクのブロック図を示している。MUDは、前処理ステップの後に、整合フィルタバンク(MFB:matched filter bank)150を通じて、受信信号215を処理する。受信信号は、スプリッタ301を通過し、その各出力がMFB内のそれぞれのフィルタの入力にフィードされる。各整合フィルタ151、152及び153のテンプレートは、対応するユーザの拡散符号である。MFBは、ユーザごとに1つずつ、全体としてN個のフィルタを含む。MFBからの出力は、検討されるシグナリング間隔内の送信シンボルの検出160のために十分な統計値を含む。検出器は、検出されたシンボル161を出力する。
【0032】
一方で、図1CのMUDの課題は、フィルタバンク内で実装されるフィルタに必要とされる数は、ユーザの数に等しく、これは、数百又は数千となり得ることである。これにより、長いMFB出力信号が記憶されることが必要になり、その結果、比較的大きいメモリストレージが必要となる。最後に、送信シンボルはMFB出力信号から復元されるので、この結果、計算複雑度が比較的大きくなる。
【0033】
そのため、いくつかの実施形態の目的は、次のもの、すなわち、(1)フィルタバンク内に必要とされるフィルタの数、(2)メモリストレージ問題及び(3)検出ステージにおける計算複雑度のうちの全て又はその一部を低減するようにフィルタバンクを設計し、図1CのMUDを変換することである。
【0034】
いくつかの実施形態は、起こり得る性能劣化を犠牲にしてMFB内のフィルタの数を削減することによって、ユーザアクティビティドメインにおけるスパース性を活用することができるという認識に基づいている。したがって、目的は、テンプレートf、m=1,...,Mを有するM個のフィルタからなる削減次元プロセッサを設計することである。ここで、M<Nであり、好ましくは、M=Nである。
【0035】
図2は、種々の実施形態によって利用される原理に従って設計された受信機のブロック図を示している。受信機は、1つ又は複数のアクティブなユーザの送信機から信号を受信するアンテナ210を備える。利用されるアンテナのタイプに制限は設けられない。受信信号の持続時間は、少なくとも、拡散符号の持続時間に等しい。換言すれば、受信信号は、1つのシグナリング間隔全体に対応する波形が受信されるまで処理されない。受信信号215は、フィルタ220を通過し、その係数223は、プロセッサ222において計算される。フィルタリングされた信号225は、その後、検出器230に入力され、検出器230は、プロセッサ222から得られた辞書行列224を用いたスパース復元方法を用いて送信シンボル231を検出する。
【0036】
図3は、1つの実施形態による削減次元フィルタ220のブロック図を示している。受信信号215は、スプリッタ301を通過した後、M個の相関器311、312及び313を含むフィルタ220において処理される。相関器の係数のセットは、フィルタ係数223を形成する。各相関器の出力は、フィルタリングされたシンボル315、316及び317である。フィルタリングされたシンボルは、合成のために合成器320に入力される。例えば、合成器320は、本質的に、シンボルをベクトルへとフィルタリングし、フィルタリングされた信号225を出力する。
【0037】
図4Aは、いくつかの実施形態に従って構成されたプロセッサ222の動作のブロック図を示している。プロセッサの1つの構築ブロックは、ユーザに割り当てられた拡散符号のセット402及び雑音分散405を用いて最小平均二乗誤差(MMSE)行列400を求める。雑音分散は、事前に与えられる/既知であるか、又は、雑音分散推定を用いてデータから推定されるかのいずれかである。計算されたMMSE行列は、適切に選択された削減/低次元空間に射影され(410)、これにより、低次元MMSE行列が得られる。低次元MMSE行列のエントリは、フィルタ係数223のセットを構成する。また、MMSE行列は、シンボル検出のために用いられる辞書行列224を計算する(420)ために用いられる。
【0038】
図5Aは、いくつかの実施形態による検出器230のブロック図を示している。種々の実施形態において、シンボル231は、フィルタリングされた信号225から、スパース復元検出520を用いて検出される。スパース復元検出は、辞書行列420を含むスパース復元モデル530に基づいている。
【0039】
図5Bは、いくつかの実施形態によって用いられる、シンボル検出のためのスパース復元モデルの概略図を示している。フィルタリングされた信号225は、雑音510に埋め込まれた、辞書行列420と長スパースベクトル500との間の積として与えられる。スパースベクトルは、ユーザ1、2、...、Nによって送信されたシンボル501、502、503から構成される。いくつかの実施態様では、或るユーザが非アクティブである場合、当該ユーザは、シンボル0を送信するとみなされる。辞書行列420内の各列は、それぞれ1つのユーザに対応する。したがって、511、512及び513は、それぞれ、ユーザ1の送信データ501、ユーザ2の送信データ502及びユーザNの送信データ503に対応する。
【0040】
(信号モデル)
種々の実施形態において、N個のユーザの各々は、送信シンボルに作用する拡散符号s(t)を備える。特に、0≦t≦Tであり、ここで、Tは、シンボル持続時間である。1つのシグナリング間隔中に基地局において受信される信号は、以下によって与えられる。
【数1】
ここで、w(t):CN(0,σ)は、加法性白色ガウス雑音(AWGN)であり、h∈Cは、ユーザnと基地局との間のチャネル実現である。一方、bは、検討されるシグナリング間隔におけるユーザnの送信シンボルである。一般性を失うことなく、ユーザは、バイナリ位相シフトキーイング(BPSK)変調を利用することを仮定する。加えて、ユーザnが0<t<Tの間に送信を行わない場合、b=0である。
【0041】
説明を明瞭にするために、本開示では、離散時間ドメイン信号表現を用いる。しかしながら、アナログ時間ドメインと離散時間ドメインとの間のマッピングが容易に利用可能である。信号モデル(1)の離散時間ドメイン表現は、サンプリング周波数がs(t)のチップレート(chip rate)に等しい離散化を仮定して得られる。したがって、
【数2】
であり、ここで、Sは、sと表記される、第n列が離散化拡散符号s(t)である拡散符号の行列である。H=diag(h,...,h)は、チャネル行列である。bは、第nエントリがユーザnからの送信シンボルである送信シンボルのベクトルである。最後に、wは、w:CN(0,σ)であるAWGNベクトルである。ここで、Iは、次数Nの恒等行列である。
【0042】
図4Bは、1つの実施形態による、フィルタ係数を計算するためにプロセッサ222によって用いられる方法のブロック図を示している。この実施形態では、プロセッサ222は、2つのステップにおいてフィルタ係数を計算する。第1に、プロセッサは、ユーザに割り当てられた拡散符号のセット402及び雑音分散405に対応する最小平均二乗誤差(MMSE)行列を計算する(400)。第2に、得られたMMSE行列は、より低い/削減された次元部分空間に射影される(410)。
【0043】
MMSEを用いて表記されるMMSE行列は、以下の式によって与えられる。
【数3】
ここで、G=SSは、拡散符号の行列Sのグラム行列(Gram matrix)である。MMSE行列は、平均二乗誤差の意味で最適な線形プロセッサである。これは、その係数が、所望の信号、すなわち、観測することが期待される信号と、MMSE出力との間の誤差のパワーを最小化するように計算されることを意味する。MMSE行列が線形であり、平均二乗誤差の意味で最適であることは、これを削減次元処理(RDP:reduced dimension processing)の基礎構築ブロックとして選択した理由である。
【0044】
削減次元最小平均二乗誤差(RD−MMSE)行列は、MMSE行列を次元削減変換Aとカスケード接続する(cascading)ことによって得られ、以下の式によって得られる。
【数4】
【0045】
換言すれば、MMSE行列は、410において削減次元部分空間に射影される。これは、MMSE行列を、「低次元」行列と乗算することによって行われる。Aのランクは、Mであり、低次元空間の次元に等しい。
【0046】
(3)に示すように、MMSE行列は、雑音分散405、拡散符号のセット402及び拡散符号のグラム行列G=SS407から計算される。MMSE行列は、その後、次元削減行列415を用いて削減された次元部分空間に射影される(410)。
【0047】
(辞書行列)
いくつかの実施形態は、FRD−MMSEに従って設定されたフィルタ220の係数を有するフィルタリングされた信号225のためのモデルを用いる。RD−MMSEフィルタリング信号225は、(2)及び(4)を用いて以下の式によって与えられる。
【数5】
ここで、wRD−MMSE:CN(0,ΣRD−MMSE)である。ただし、
【数6】
である。
【0048】
フィルタリングされた信号は、以下のように簡潔に表すことができる。
【数7】
ここで、
【数8】
である。
【0049】
所与のシグナリング時間間隔において少数のユーザのみがアクティブであるので、送信シンボルのベクトルbは、スパースであり、その結果、(4)は、未知のシンボルのためのスパース復元モデルである。スパース復元定式(4)の、センシング行列(sensing matrix)とも呼ばれる辞書行列は、CRD−MMSEである。この行列は、検出器230におけるスパース復元検出のために必要であり、420において計算される。
【0050】
図4Cは、いくつかの実施形態による、プロセッサ222によって実施される辞書行列を計算する方法のブロック図を示している。例えば、(8)によって命令されるように、辞書行列224は、雑音分散405、次元削減行列415、ユーザのチャネルH417、及び、拡散符号のセット402から得られたグラム行列407から計算される(420)。いくつかの実施形態は、種々のチャネル推定方法を用いてユーザのチャネルを推定する。いくつかの実施形態では、以下で説明するようにチャネル推定を回避する。
【0051】
図4Dは、1つの実施形態による、辞書行列を計算する実施態様のブロック図を示している。例えば、(4)と(8)との間の比較によって、辞書行列を、
【数9】
のように表すことができる。
【0052】
そのため、この実施の形態は、フィルタ係数223、拡散符号のセット402及びユーザのチャネル417から辞書行列を計算する。
【0053】
(検出器)
いくつかの実施形態の目的は、K個のアクティブなユーザ及びそれらのシンボルを検出することである。N個のフィルタ(ユーザごとに1つずつ)からなる従来の完全な(fully-fledged)プロセッサを用いることから生じる計算複雑度を低減するために、受信信号は、M個のフィルタからなるプロセッサを通じて処理される。数学的には、従来のプロセッサのうちの1つにAを適用することによって、より低いM次元部分空間に射影される。
【0054】
削減次元空間におけるフィルタリングされた信号rRD−MMSEからアクティブなユーザ及びそれらのシンボルの検出が可能である。なぜならば、所与のシグナリング間隔において少数のユーザのみが送信を行い、それにより、ユーザアクティビティドメインにおいてスパース性が生じるためである。
【0055】
フィルタリングされた信号は、アクティブなユーザ及びそれらの送信シンボルを検出するのに用いられる。多くのアルゴリズムをこのタスクのために用いることができる。表記を簡略化するために、本開示では、フィルタリングされた信号rは、以下の式によって与えられる。
【数10】
ここで、Cは、辞書行列であり、bは、送信シンボルのスパースベクトルであり、vは、雑音である。図5Aに戻ると、辞書行列420は、式(10)のスパースモデル530におけるCである。フィルタリングされた信号rは、スパース復元検出アルゴリズム520に入力される。
【0056】
図5Cは、シンボルを検出するために1つの実施形態によって用いられる削減次元脱相関(RDD)検出のブロック図を示している。RDDは、以下のように、辞書行列C420内の各列を、フィルタリングされた信号r225と相互相関させる(540)。
【数11】
ここで、Cは、Cの第n列である。Kで示されるアクティブなユーザの数542が既知であると仮定すると、アクティブなユーザは、Kの最大統計値である
【数12】
のインデックスから検出される(544)。検出されたアクティブなユーザのBPSKシンボルは、以下のように復元される(546)。
【数13】
ここで、符号演算子sgn{}は、実数値シンボルアルファベットに従う。全体として、RDDは、アクティブなユーザ及びそれらのシンボルのワンショット検出器(one-shot detector)である。
【0057】
図5Dは、1つの実施形態によって用いられる、スパース復元検出520のための削減次元判断フィードバック(RDDF)検出のブロック図を示している。RDDFは、逐次干渉除去(SIC:successive interference cancellation)の原理に従う反復手順であり、ここで、1つのアクティブなユーザ及びそのシンボルが各反復において復元される。具体的には、第kの反復において、アクティブなユーザは、相互相関550を用いて検出される(552)。その結果、
【数14】
であり、ここで、vk−1は、その前の回の反復において求められた残差である。v(0)=rであることに留意されたい。換言すれば、550における相互相関は、第1の反復において、フィルタリングされた信号225と、辞書行列420の各列との間で行われる。第kのアクティブなユーザの送信シンボルは、以下のように検出される(554)。
【数15】
【0058】
最後に、残差は、以下のように更新される(556)。
【数16】
ここで、b(k)は、エントリが反復kを含めて反復kまでの復元されたユーザの推定シンボルであるベクトルである。他の全てのユーザに対応するエントリは、0である。得られた残差信号は、第2の反復及び後続の反復において相互相関デバイス550に入力される。反復は、或る特定の停止基準が満たされる(558)まで実行される。アクティブなユーザの数Kが事前に既知である事例では、反復数は、アクティブなユーザの数に等しい。Kが未知である事例では、Kを推定するのにアドホック方法を利用することができる。例えば、RDDFアルゴリズムは、雑音分散に依存して、残差信号のパワーが何らかの閾値よりも大きい限り反復を実行することができる。例えば、閾値は、雑音分散の10分の1に等しいものとすることができる。
【0059】
図5Eは、1つの実施形態によって用いられる、スパース復元検出520のための直交マッチング追跡(OMP)検出のブロック図を示している。RDDFとは対照的に、フィルタリングされた信号は、各反復において、その反復を含めてその反復までの検出されたアクティブなユーザに対応する、辞書行列内の列の加重和として表される。これは、最小二乗(LS:least squares)適合を見つける(560)ことによって行われる。その反復を含めてその反復までの検出されたアクティブなユーザのシンボルは、得られたLS重みへの最近傍コンスタレーション点(constellation points:信号点)を見つけることによって検出される(562)。残差信号は、フィルタリングされた信号とLS適合との間の差として計算される(564)。
【0060】
(事前白色化)
いくつかの実施態様では、RDP出力における雑音過程(noise processes)は、0平均のガウス分布であるが、非恒等共分散行列である。いくつかのスパース復元検出は、雑音統計値を考慮に入れず、したがって、内在的に白色雑音を仮定する。そのために、いくつかの実施形態は、受信信号yの事前白色化を実行し、その結果、RDPからの出力雑音は白色である。このようにして、スパース復元を用いた受信機の検出性能が改善する。
【0061】
図4Eは、いくつかの実施形態による、事前白色化フィルタ係数を計算する方法のブロック図を示している。出力雑音相関行列Σをもたらす一般的なRDPプロセッサFについて、事前白色化RDP
【数17】
は、以下のように得られ、
【数18】
ここで、Σ及びFは、それぞれ、(6)及び(4)によって与えられる。事前白色化430は、(16)を実施する。
【0062】
したがって、結果として得られる辞書行列
【数19】
は、(2)を用いて、以下の式によって与えられる。
【数20】
これは、事前白色化RDPからの出力が
【数21】
であるようになっている。ここで、w:CN(0,I)である。図4Dに示されるものと同じ原理のブロック図がここでも同様に適用されるが、フィルタ係数223は、図4Eに示されるブロック図の出力において得られるフィルタ係数であることが留意される。
【0063】
図6Aは、1つの実施形態による、フィルタ200のアナログ実施態様のブロック図を示している。フィルタ220は、相関器600を含む。相関器の数Mは、ユーザの数Nよりも小さく、はるかに小さいことが好ましい。アナログドメインにおける受信信号215は、スプリッタ301を通過する。スプリッタの出力の数は、フィルタ内の相関器の数に等しく、その結果、スプリッタの各出力はそれぞれ1つの相関器に入力される。それゆえ、スプリッタの出力602上の受信信号の繰り返しバージョンが、対応する相関器600に入力される。相関器は、当該相関器に対応するフィルタ係数FRD−MMSE223の行列からの1つの特定の行を抽出する(604)。FRD−MMSE内の行の数は、各行が1つの相関器によって用いられるようにMであることを想起されたい。フィルタ係数の抽出された行は、生成器606に入力され、生成器606は、この行からアナログ信号波形を生成する。スプリッタの出力上の受信信号602は、その後、生成されたアナログ波形と乗算される(610)。結果として得られる信号は、615において積分される。積分器出力は、サンプリングされて(617)、サンプリングされたシンボル620が生成される。617におけるサンプリング周期は、シグナリング間隔に等しい。サンプリングされたシンボルは、合成器320への入力のうちの1つである。
【0064】
このようにして、相関器600は、1つのシグナリング間隔に対応する受信信号の部分を取り込み、この部分を、当該相関器に対応するフィルタ係数に従って生成されたアナログ波形と乗算し、その結果の値を積分する。この結果、他の相関器からの統計値と組み合わされるとともに送信シンボルを検出するように用いられる単一の統計値がもたらされる。
【0065】
この実施形態の利点は、全てのサンプラ、すなわち、アナログ対デジタル変換器(ADC)がシンボルレートにおいて動作することである。他方、アナログ波形を生成すること及び各相関器においてアナログ乗算器を用いることから、主な困難が生じる。
【0066】
図6Bは、1つの実施形態による、フィルタ200のデジタル実施態様のブロック図を示している。フロントエンド632が、アンテナ210に接続され、受信信号215を処理する。いくつかの実施態様では、フロントエンドは、チップレートにおいて動作するADC635を実装する。結果として得られるデジタル信号は、スプリッタ637を通過し、スプリッタ637の各出力は、それぞれ1つの相関器630に接続される。相関器は、フィルタ係数223の行列からの対応する行を抽出する(604)。抽出された行及びデジタル化された受信信号639は、デジタル乗算器640内で乗算され、結果として得られるサンプルは総和される(642)。換言すれば、1つのシグナリング間隔内の受信信号のサンプルは、対応するフィルタ係数と整合、乗算、及び総和される。この動作の結果、サンプリングされたシンボル620がもたらされ、サンプリングされたシンボル620は、その後、合成器320に入る。
【0067】
図6Aからのアナログ実施態様と比較して、デジタル実施態様は、アナログ波形の生成を必要とせず、かつ、はるかに効率的に、デジタルドメインにおいて乗算及び積分を実施する。しかしながら、これは、高レートADCを必要とするということを犠牲にして成立している。
【0068】
削減次元プロセッサは、検出問題をより低い次元空間に有効に射影するために、低次元行列とも呼ばれる次元削減変換Aに依拠する。アクティブなユーザ及びそれらのシンボルの検出は、本質的には、スパース復元問題である。削減次元空間におけるアクティブなユーザの可分性(separability)は、センシング行列Cのコヒーレンス特性に直接依存する。いくつかの実施態様では、行列のコヒーレンスは、その異なる列間の最大相互相関である。したがって、センシング行列Cのコヒーレンスを最小化するようにAが選択される。そのようにして、Cのコヒーレンスは、対角チャネル行列Hに依存せず、その結果、Hを知ることなくAをオフラインで事前計算することができる。そのようにして、次元削減の正確性が高められる。
【0069】
行列Aは、複数の方法において選択することができる。1つの単純な手法は、ランダム行列の何らかのセットから行列を無作為にサンプリングすることである。例えば、当該セットは、0平均及び単位分散の独立同一分散ガウス分布のエントリを有するガウス行列のセットとすることができる。当該セットの別の例は、行列Aが次数NのDFT行列から無作為で一様にM個の行をサンプリングすることによって得られるような、部分離散フーリエ変換(DFT)行列のセットである。更に別のセットは、セット{+1,−1}から無作為で一様にサンプリングされた独立同一分布エントリを有する行列のセットとすることができる。行列Aをサンプリングするための他のドメインも可能である。
【0070】
図7Aは、1つの実施形態による、低次元行列を決定する方法のブロック図を示している。この実施形態は、低次元行列のセットを指定すること(700)から開始される。低次元行列の指定されたセットは、列が単位ノルムに正規化されたi.i.d.のCN(0,1)エントリを有するランダム行列のセットとすることができる。別の選択肢は、次数Nの離散フーリエ変換(DFT)行列からM個の行を無作為で一様に選択することによって生成される部分離散フーリエ変換(DFT)行列のセットとすることができる。更に別の選択肢は、エントリがセット{+1,−1}からのi.i.d.サンプルである双極性行列(bipolar matrices)のセットとすることができる。低次元行列のセットが指定された後、或る特定の、所定数の行列702が当該指定されたセットからサンプリングされる(704)。前進して、異なる列の任意のペアからの最大相互相関として、各候補行列のコヒーレンスが計算される(706)。最小のコヒーレンスをもたらす候補行列が出力され(708)、次元削減行列415として記憶されるとともに、フィルタ係数及び辞書行列を計算するのに用いられる。
【0071】
図7Bは、別の実施形態による、低次元行列を決定する方法のブロック図を示している。例えば、複数の無作為に生成された候補の中から最小コヒーレンスを有するAを選択することとは別に、センシング行列Cが最小コヒーレンスを有するようにAを選択することもできる。
【0072】
この実施形態では、同様に、低次元行列のセットが指定され(700)、当該セットから、或る特定の数(702)の行列がサンプリングされる(704)。その後、各サンプリングされた/候補行列に対応するセンシング行列が計算される(712)。これは、候補行列とMMSE行列710とを乗算することによって行われる。
【0073】
加えて又は代替的に、候補行列は、チャネル行列までのMMSE行列と乗算することができる。なぜならば、チャネル行列は、未知である場合があるためである。このステップの後、候補行列ごとの結果として得られる行列のコヒーレンスが計算され(715)、結果として得られるセンシング行列の最小コヒーレンスをもたらす候補行列が出力され(708)、次元削減行列415として記憶される。全体として、RD−MMSE行列の事例では、Aは、A(G+σI)−1Gのコヒーレンスを最小化するように選択することができる。
【0074】
とりわけ、図7A及び図7Bの双方の実施形態では、事前白色化プロセッサが用いられる場合、Aは、結果として得られる事前白色化プロセッサ
【数22】
のコヒーレンスが最小化されるように選択することができる。例えば、図7Bを参照すると、712において計算されるセンシング行列及び/又は辞書行列は、事前白色化行列とすることができる。
【0075】
いくつかの実施形態は、雑音分散を用いて、フィルタ係数及び辞書行列を計算する。雑音分散は、事前に既知であり、かつ事前設定とすることができる。代替的に、雑音分散は、受信信号から推定することができる。
【0076】
種々の実施形態において、全てのユーザからのアップリンクチャネルが受信機側で既知である。これは、多数のチャネル推定技法及びプロトコルのうちの任意のものを利用することによって達成することができる。例えば、1つの実施形態では、基地局又はアクセスポイントは、各ユーザと別個にパイロット信号を交換し、各ユーザップリンクチャネルを推定する。この実施形態は、レガシー推定技法から利益を得ることができる。
【0077】
しかしながら、多数のユーザが同じ基地局に割り当てられ、その結果、ネットワーク制御がユーザの各々から基地局へのパイロットの直交送信を協調する技法を用いて全てのチャネルを推定することにおける1つの難題は、非実用的である。この問題は、チャネルが継時的に変動する場合更に悪化する。
【0078】
図8は、いくつかの実施形態によって用いられる、時間ドメイン複信(TDD)に基づくチャネル推定及び情報プリコーディングのブロック図を示している。基地局(又はアクセスポイント)は、各ユーザにおけるダウンリンクチャネル推定を促すパイロットシンボルを並列にブロードキャストする(810)。すなわち、送信パイロットがxであると仮定すると、ユーザnは、信号y=hx+wを受信し、チャネル推定する(812)。ここで、wは、雑音である。例えば、最小二乗(LS)チャネル推定は、以下の式によって与えられる。
【数23】
【0079】
各ユーザは、その後、ゼロフォーシング(ZF:zero-forcing)プリコーダを利用することによって推定チャネルに基づいてそのシンボルをプリコーディングする。TDD及びZFプリコーディングに起因して、基地局における受信信号は、チャネル係数に明示的に依存しない。しかしながら、この手法に伴う1つの問題は、或る特定のチャネルの振幅が低い場合、ZFプリコーディングされた信号は、相対的に大きいパワーを有するということである。この問題はスマートメータ(smart meters)のネットワークにおいては著しい難題を課さない一方で、この手法が提案される状況では、これは、概して、望ましくない。
【0080】
送信シンボルのZFプリコーディングから生じる問題を克服するために、いくつかの実施形態では、ユーザは、単位振幅の(unit magnitude)、すなわち、正規化されたZFプリコーダ814を用いて自身のシンボルをプリコーディングする。すなわち、プリコーダnは、以下の式によって与えられ、
【数24】
ここで、hは、ユーザnのチャネル係数である。アクティブなユーザは、その後、プリコーディングされたデータシンボルを送信する(816)。したがって、全てのユーザからの送信シンボルのベクトルは、
【数25】
であり、ここで、P=diag{p,...,p}である。(21)左辺のbを(2)におけるbの位置に代入することにより、以下の式が得られる。
【数26】
【0081】
最後に、(20)を(22)に代入することにより、以下の式が得られ、
【数27】
ここで、
【数28】
であり、それゆえ、受信信号は、チャネルの振幅にのみ依存する。
【0082】
受信信号(23)は、その後、削減次元プロセッサのうちのいずれかを通じて処理することができ、全ての上記の論述がここで適用される。実際、精査を行うことにより、アクティブなユーザ及びそれらの送信シンボルのRDD、RDDF又はOMPベース検出は、チャネルの振幅の知識を要求しないことが明らかになる。その上、ユーザが自身のシンボル上に単位振幅のZFプリコーディングを適用し、その結果、受信機におけるチャネル推定情報を伴わずに検出が可能であるこのスキームは、任意の定モジュラス変調フォーマットに適応可能である。
【0083】
本発明の上記で説明した実施形態は、多数の方法のうちの任意のもので実施することができる。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組み合わせを用いて実施することができる。ソフトウェアで実施される場合、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータに設けられるのか又は複数のコンピュータ間に分散されるのかにかかわらず、任意の適したプロセッサ又はプロセッサの集合体において実行することができる。そのようなプロセッサは、1つ以上のプロセッサを集積回路部品に有する集積回路として実装することができる。ただし、プロセッサは、任意の適したフォーマットの回路類を用いて実装することができる。
【0084】
用語「プログラム」又は「ソフトウェア」は、本明細書において、コンピュータ又は他のプロセッサをプログラミングし、上記で論じられたような本発明の種々の態様を実施するために用いることができる任意のタイプのコンピュータコード又は一組のコンピュータ実行可能命令を指すために、一般的な意味において用いられる。
【0085】
コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のコンピュータ又は他のデバイスによって実行された、プログラムモジュール等の多くの形式をとることができる。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行するか又は特定の抽象データタイプを実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、及びデータ構造を含む。通常、プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態において所望に応じて組み合わせることも分散させることもできる。関数を実行するか又は関数を実行するように構成されたプロセッサを、追加の変更なしにその関数を実行するようにプログラムされるか又は他の方法で構成される任意の好適なフォーマットの回路類を使用して実装することができる。
【0086】
また、本発明の実施形態は、例が提供された方法として実施することができる。この方法の一部として実行される動作は、任意の適切な方法で順序付けすることができる。したがって、動作が示したものと異なる順序で実行される実施形態を構築することができ、これには、例示の実施形態では一連の動作として示されたにもかかわらず、いくつかの動作を同時に実行することを含めることもできる。
【0087】
請求項の要素を修飾する、特許請求の範囲における「第1」、「第2」等の序数の使用は、それ自体で、1つの請求項の要素の別の請求項の要素に対する優先順位も、優位性も、順序も暗示するものでもなければ、方法の動作が実行される時間的な順序も暗示するものでもなく、請求項の要素を区別するために、単に、或る特定の名称を有する1つの請求項の要素を、同じ(序数の用語の使用を除く)名称を有する別の要素と区別するラベルとして用いられているにすぎない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図7A
図7B
図8