(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押圧部は、前記規制部が前記手の親指と前記手の人差し指の間に配置された状態において、前記押圧部よりも前記手の親指側から離れて配置される、請求項1の止血器具。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態およびその変形例を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
<第1実施形態>
図1〜
図10を参照して、第1実施形態に係る止血器具100を説明する。
図1〜
図5は、止血器具100の装置構成を説明するための図である。
図6は、患者の手Hを走行する各血管を説明するための図である。
図7〜
図10は、止血器具100の装着手順および止血器具100を使用した止血方法の手順を説明するための図である。
【0016】
本実施形態に係る止血器具100は、
図7〜
図10に示すように、患者の手Hの手掌動脈Pa(深掌動脈Pd)の橈骨動脈側Pdrに形成された穿刺部位t2に留置していたイントロデューサー200のシースチューブ210(「医療用長尺体」に相当する)を抜去した後、その穿刺部位t2を止血するために使用される。
【0017】
止血器具100の説明の前に、
図6を参照して、止血器具100の装着対象となる患者の手Hおよび手Hを走行する各血管について説明する。
図6は、患者の手(右手)Hを手の甲Hb側から見た平面図を模式的に示している。
【0018】
患者の腕Aには、肘付近において上腕動脈から分岐した橈骨動脈Raと尺骨動脈Uaが走行している。橈骨動脈Raと尺骨動脈Uaは手Hでアーチ状(弓状)に互いに繋がって手掌動脈(手掌動脈弓)Paを形成する。また、手掌動脈Paは、橈骨動脈Raと尺骨動脈Uaが手の甲Hb側で分岐した深掌枝で形成される深掌動脈(深掌動脈弓)Pdと、橈骨動脈Raと尺骨動脈Uaが掌Hp側で分岐した浅掌枝で形成される浅掌動脈(浅掌動脈弓)Pfと、を含む。
【0019】
本実施形態では、手掌動脈Paを手Hの幅方向(
図6の左右方向)の略中心位置で分割する仮想線Cを境界にして、手掌動脈Paに含まれる深掌動脈Pdのうち橈骨動脈Ra側に延びる部分(領域)を深掌動脈Pdの橈骨動脈側Pdr(以下、「手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdr」とも記載する)と定義し、手掌動脈Paに含まれる深掌動脈Pdのうち尺骨動脈Ua側に延びる部分(領域)を深掌動脈Pdの尺骨動脈側Pduと定義する。
【0020】
また、
図6に示す仮想線Cを境界にして、手掌動脈Paに含まれる浅掌動脈Pfのうち橈骨動脈Ra側に延びる部分(領域)を浅掌動脈Pfの橈骨動脈側Pfrと定義し、手掌動脈Paに含まれる浅掌動脈Pfのうち尺骨動脈Ua側に延びる部分(領域)を浅掌動脈Pfの尺骨動脈側Pfuと定義する。
【0021】
隣り合う各指F1〜F5(親指F1、人差し指F2、中指F3、薬指F4、小指F5)の間には、指間部(指間みずかき)Fbが存在する。各指F1〜F5の指先方向は、矢印A1で示し、手首Wおよび腕Aから肘側に向かう方向は矢印A2で示している。本明細書の説明では、矢印A1−A2が示す方向を「軸方向」とする。
【0022】
本実施形態では、手Hは、手首(掌と腕を繋ぐ関節)Wよりも指先側に位置する手の甲Hbおよび掌Hpを含む部分と定義する。なお、
図6では、手首Wと手Hの境界部を仮想線Bで例示している。
【0023】
図4に示すように、本実施形態では、「止血すべき部位t1」は、穿刺針等の医療器具により患者の皮膚表層に形成された穿孔およびその周辺部を意味し、「穿刺部位t2」は、穿刺針等の医療器具により穿孔が形成された生体の皮下の部分(血管を含む)を意味するものとする。
【0024】
また、本実施形態では、穿刺部位t2は、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに形成する(
図4および
図6を参照)。より具体的には、穿刺部位t2は、例えば、
図6に示すように、患者の手Hを広げた状態で、手の甲Hb側における親指F1の中心線c1と人差し指F2の中心線c2の間(中心線c1と中心線c2が交差する位置またはその周辺部)に形成する。
【0025】
次に、止血器具100について説明する。
【0026】
止血器具100は、
図1〜
図3に示すように、患者の手Hの止血すべき部位t1を覆うように配置される被覆部110と、被覆部110が止血すべき部位t1を覆った状態で、止血すべき部位t1を圧迫する押圧部160と、を有している。
【0027】
図1および
図2に示すように、被覆部110は、押圧部160を覆いつつ、手Hの少なくとも一部を囲う固定部120と、固定部120の軸方向への移動を規制する規制部150と、を有している。
【0028】
図1および
図3に示すように、固定部120は、手Hの止血すべき部位t1に巻きつける帯体部130と、帯体部130を手Hの周囲に巻き付け状態で固定する保持部140と、を備えている。
【0029】
図1に示すように、帯体部130は、可撓性を備える帯状の部材によって構成している。本明細書中では、帯体部130を手Hに巻き付けた状態のとき、手Hの体表面に向かい合う側の面(装着面)を「内面」と称し、その反対側の面を「外面」と称する。なお、
図1は、帯体部130の内面側から見た止血器具100の平面図を示している。
【0030】
帯体部130は、
図3および
図4に示すように、手Hの外周を略一周するように巻き付けられる。
【0031】
帯体部130は、
図1中の右端付近の部分の内面側に、一般にマジックテープ(登録商標)と称される面ファスナーの雄側(または雌側)140aが配置されている。また、帯体部130は、
図1中の左端付近の部分の外面側に、面ファスナーの雌側(または雄側)140bが配置されている。
【0032】
帯体部130の面ファスナーの雄側140aおよび帯体部130の面ファスナーの雌側140bは、保持部140を構成する。術者等は、
図2および
図4に示すように、帯体部130を手Hに巻き付け、面ファスナーの雄側140aおよび面ファスナーの雌側140bを接合することにより、帯体部130を患者の手Hに固定できる。
【0033】
なお、保持部140は、帯体部130を手Hに巻き付けた状態で固定することが可能な構成を有するものであれば特に限定されず、例えば、スナップ、ボタン、クリップ、または帯体部130の端部を通す枠部材等であってもよい。
【0034】
帯体部130の構成材料は、可撓性を備える材料であれば特に限定されない。そのような材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、ナイロン、ナイロンエラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。
【0035】
また、帯体部130において少なくとも押圧部160と重なっている部分は、実質的に透明であることが好ましい。ただし、帯体部130の上記部分は、透明に限定されず、半透明または有色透明であってもよい。術者等は、このように帯体部130が形成されることにより、止血器具100を患者の手Hに装着する際(
図8を参照)、止血すべき部位t1を帯体部130の外面側から視認することが可能になる。このため、術者等は、後述するマーカー部136を止血すべき部位t1に容易に位置合わせすることが可能になる。
【0036】
図1および
図5に示すように、被覆部110は、止血すべき部位t1に対するイントロデューサー200のシースチューブ210の留置を可能にする留置部137を有している。
【0037】
図1に示すように、留置部137は、帯体部130の内面に形成している。
図5に示すように、留置部137は、イントロデューサー200のシースチューブ210を配置可能な溝で形成している。留置部137を構成する溝は、帯体部130の内面側から帯体部1
30の厚み方向に向けて凹状に湾曲した形状を有している。留置部137は、
図1に示すように、一端側が帯体部130の外側面に臨むように形成されており、他端側が押圧部160付近まで延在している。
【0038】
なお、留置部137の具体的な形状や構造は図示するような溝に限定されることはない。留置部137は、例えば、帯体部130の押圧部160付近に形成される孔部(開口部)であってもよい。
【0039】
図2および
図3に示すように、規制部150は、帯体部130を手Hの周囲に巻き付けた状態で、親指F1と人差し指F2の間の指間部Fbを通って帯体部130に固定される。
【0040】
規制部150は、可撓性を備える帯状の部材によって構成している。規制部150の構成材料としては、例えば、帯体部130と同様のものを用いることができる。なお、規制部150は、帯体部130と同様に、透明(半透明および有色透明を含む)に形成してもよいし、所定の色が付された非透明に形成してもよい。
【0041】
図1および
図3に示すように、規制部150は、帯体部130に固定された第1端部153と、第1端部153に対向し、帯体部130と着脱自在に連結可能である第2端部154と、を有している。
【0042】
規制部150は、
図1に示すように、第2端部154が帯体部130から分離した状態で、帯体部130の延在方向(
図1の左右方向)に対して所定の角度だけ傾斜して延在する。規制部150は、例えば、帯体部130の幅よりも小さな幅を備えるように形成される。帯体部130の幅は、帯体部130の延在方向と直交する方向の寸法である。規制部150の幅は、規制部150の延在方向と直交する方向の寸法である。なお、規制部150の幅は、帯体部130の幅と同じ幅でもよい。
【0043】
規制部150は、例えば、延在方向の長さを10mm〜300mmに形成することができ、幅を3mm〜60mmに形成できる。また、帯体部130は、例えば、延在方向の長さを30mm〜500mmに形成することができ、幅を3mm〜100mmに形成できる。なお、帯体部130は、規制部150の幅よりも大きい幅を備える方が好ましい。これにより、止血器具100は、患者の手Hに装着された状態で、帯体部130により患者の手Hの止血すべき部位t1に押圧部160をより確実に固定しつつ、手の隣り合う指同士の間に配置される規制部150により軸方向(手指の延在方向)への移動を規制できる。
【0044】
規制部150の第2端部154には、面ファスナーの雄側(または雌側)154aを配置している。術者等は、
図2に示すように、規制部150の面ファスナーの雄側154aと帯体部130の面ファスナーの雌側140bを接合することにより、規制部150を帯体部130に連結できる。
【0045】
なお、規制部150は、例えば、親指F1と人差し指F2以外の指の間に配置されるように構成してもよい。また、規制部150は、例えば、一つの止血器具100に複数個設けることも可能である。この場合、規制部150は、規制部150から分岐して異なる指の間に配置される複数の部分を有するように構成してもよいし、帯体部130から分岐して異なる指の間に配置される複数の部分を有するように構成してもよい。また、規制部150は、例えば、帯体部130と着脱ができないように帯体部130と一体的に構成してもよい。規制部150が各指の間に配置される複数の部分を有する場合、例えば、帯体部130に対して着脱可能なものと、帯体部130に対して着脱できないものを設けてもよい。
【0046】
図1および
図8に示すように、規制部150は、手Hの表層側に配置される部分(規制部150の内面)に吸液性を有する吸液層156を有している。
【0047】
吸液層156は、例えば、吸液性(吸水性)を備えるゲル、吸液性を備える繊維状部材や多孔質部材等により形成できる。なお、吸液層156は、規制部150の内面の少なくとも一部に形成されていればよく、規制部150の延在方向の全体に亘って形成されていなくてもよい。
【0048】
図4に示すように、押圧部160は、拡張部材161と、流体(例えば、空気)が注入可能な拡張空間163と、を有している。
【0049】
図4に示すように、押圧部160は、流体を注入することにより拡張し、患者の手Hの止血すべき部位t1(穿刺部位t2)に圧迫力を付与する。また、
図2に示すように、押圧部160は、規制部150の第2端部154が帯体部130と連結した状態で、規制部150の第2端部154よりも親指F1の付け根側(手掌動脈Paを手Hの幅方向の略中心位置で分割する仮想線Cから人差し指F2の中心線c2に向かう方向であり、
図2中の矢印b1で示す側)に配置される。
【0050】
拡張部材161は、可撓性を備えるシート状の部材で形成している。拡張部材161の周縁は、帯体部130の内面に対して融着(または接着)している。拡張部材161は、拡張部材161と帯体部130の内面との間に流体が注入可能な拡張空間163を形成している。
【0051】
拡張部材161の構成材料は、特に限定されず、例えば、前述した帯体部130の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0052】
拡張部材161は、実質的に透明であることが好ましい。ただし、拡張部材161は、透明に限定されず、半透明または有色透明であってもよい。
【0053】
なお、押圧部160は、1枚のシートを折り曲げ、縁部を接着または融着した袋状の部材によって構成してもよいし、縁部を備えない風船状の部材によって構成してもよい。
【0054】
また、押圧部160の外形形状は、特に限定されない。例えば、押圧部160は、拡張していない状態において、平面視した際に、円形、楕円形、多角形等の外形形状を備えていてもよい。
【0055】
また、押圧部160は、止血すべき部位t1に対して圧迫力を付与可能であれば、例えば、流体の注入に伴って拡張する機能を備えない部材で構成することも可能である。このような押圧部160の一例として、例えば、回転等の外部からの操作により手Hに対する押し込み量を可変自在な機械式の部材、面圧を付与するように手Hに対して押し込まれるプラスチック等の樹脂材料やゲル等で構成された部材、止血すべき部位t1に接触させる親水性ゲルや創傷材(ドレッシング材)を備える部材、時間経過に応じて含水率が低下して圧迫力を徐々に減少させるゲルを含む部材、スポンジ状の物質等の弾性材料、綿(わた)のような繊維の集合体、金属、所定の立体形状を備える部材(球状、楕円体、三角錐等)、またはこれらを適宜組み合わせたもの等を挙げることができる。
【0056】
図1および
図2に示すように、止血器具100は、押圧部160の拡張部材161を拡張および収縮させるための注入部170を有している。
【0057】
図1および
図4に示すように、注入部170は、その一端部が押圧部160に接続され、その内腔が押圧部160の拡張空間163に連通する可撓性を有するチューブ171と、チューブ171の内腔と連通するようにチューブ171の先端部に配置された袋体172と、袋体172に接続された逆止弁(図示せず)を内蔵する管状のコネクタ173と、を有している。
【0058】
図4に示すように、チューブ171において押圧部160と接続される一端部側は、帯体部130を貫通している。帯体部130には、チューブ171を連結するための連結部材138を取り付けている。なお、チューブ171は、連結部材138のような部材を介さずに、融着等により帯体部130に直接連結してもよい。
【0059】
術者等は、押圧部160の拡張部材161を拡張(膨張)させる際、コネクタ173にシリンジ(図示せず)の先筒部を挿入して逆止弁を開き、このシリンジの押し子を押して、シリンジ内の空気を注入部170を介して拡張空間163内に注入する。この操作によって拡張部材161が拡張すると、チューブ171を介して拡張空間163と連通している袋体172が膨張する。術者等は、袋体172の膨張を確認することにより、空気が漏れずに、拡張部材161を加圧できていることを目視で容易に確認できる。
【0060】
術者等は、拡張部材161に空気を注入した後、コネクタ173からシリンジの先筒部を抜去する。また、術者等は、コネクタ173に内蔵された逆止弁により袋体172を閉じることができ、空気の漏出が発生するのを防止できる。
【0061】
図2および
図4に示すように、帯体部130は、押圧部160を覆う箇所に、押圧部160を止血すべき部位t1と重なるように位置合わせするためのマーカー部136を有する。
【0062】
図2に示すように、マーカー部136は、押圧部160の面方向の略中心位置に配置している。また、
図4に示すように、マーカー部136は、帯体部130の内面に設けている。
【0063】
図2に示すように、マーカー部136は、平面視した際、長方形となる形状で形成している。ただし、マーカー部136の形状は、特に限定されず、例えば、円、三角形、四角形、星形状、ペンタゴン形状等であってもよい。
【0064】
また、マーカー部136の材質は、特に限定されず、例えば、インキ等の油性着色料、色素を混練した樹脂等が挙げられる。
【0065】
また、マーカー部136の色は、押圧部160を止血すべき部位t1に位置合わせできる色であれば特に限定されないが、緑色系が好ましい。緑色系にすることにより、術者等は、マーカー部136を血液や皮膚上で容易に視認できるため、押圧部160を止血すべき部位t1に位置合わせすることがより一層容易になる。
【0066】
また、マーカー部136は半透明または有色透明であることが好ましい。これにより、術者は、マーカー部136を止血すべき部位t1に重ね合わせた状態においても、マーカー部136の外面側から止血すべき部位t1を視認することが可能になる。
【0067】
帯体部130にマーカー部136を設ける方法は特に限定されないが、例えば、マーカー部136を帯体部130に印刷する方法、マーカー部136を帯体部130に融着する方法、マーカー部136の片面に接着剤を塗布して帯体部130に貼り付ける方法等が挙げられる。
【0068】
なお、マーカー部136は、帯体部130の外面に設けてもよい。また、マーカー部136は、押圧部160の拡張部材161に設けてもよい。この場合、マーカー部136は、止血すべき部位t1と直接接触しないように、拡張部材161の内面側に設けられることが好ましい(
図4を参照)。
【0069】
次に、
図7〜
図10を参照して、本実施形態に係る止血方法を説明する。
【0070】
図7に示すように、術者等は、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrにイントロデューサー200のシースチューブ210を挿入する。具体的には、術者等は、医療分野において公知の穿刺針(図示省略)を患者の手の甲Hbの皮膚から手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに向けて穿刺する。前述したように、穿刺部位t2は、患者の手Hを広げた状態で、手の甲Hb側における親指F1の中心線c1と人差し指F2の中心線c2の間に形成する(
図6を参照)。
【0071】
なお、イントロデューサー200としては、
図7に示すように、シースチューブ210と、シースチューブ210の基端部に配置されたハブ部220と、ハブ部220の内腔に連通する液体注入用のチューブ230と、シースチューブ210に挿入および抜去可能なダイレーターチューブ(図示省略)と、を備える公知のものを使用できる。
【0072】
次に、術者等は、ガイドワイヤ(図示省略)を穿刺針の内腔を介して手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに挿入する。
【0073】
次に、術者等は、ガイドワイヤを手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに留置したまま穿刺針を生体外へ抜去する。
【0074】
次に、術者等は、シースチューブ210に挿入したダイレータチューブをガイドワイヤに沿わせて、手の甲Hbから手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに挿入する。
【0075】
次に、術者等は、
図7に示すように、シースチューブ210を手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに留置したまま、ガイドワイヤおよびダイレータチューブを手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrから抜去する。その後、術者等は、治療用器具や診断用器具等の医療デバイス、これらの医療デバイスを処置対象となる病変部位が存在する血管まで送達するガイドワイヤ等を、シースチューブ210を介して手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに挿入する。
【0076】
術者等は、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdr、橈骨動脈Ra、および上腕動脈等を経由して医療デバイスやガイドワイヤ等を所定の病変部位(例えば、冠動脈の狭窄部等)まで挿入する。
【0077】
術者等は、病変部位に対する処置を終えた後、シースチューブ210を介して医療デバイスやガイドワイヤ等を抜去する。この際、術者等は、上腕動脈、橈骨動脈Ra、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdr、穿刺部位t2を順に経由させて医療デバイスやガイドワイヤ等を生体外へ抜去する。
【0078】
次に、術者等は、止血器具100を使用して止血を行う。
【0079】
術者等は、
図8に示すように、手の甲Hbの止血すべき部位t1の周囲に被覆部110の帯体部130を配置する。この際、術者等は、シースチューブ210の生体外に導出された部分を帯体部130に形成された留置部137に沿わせるように配置する(
図5を参照)。
【0080】
術者等は、穿刺部位t2にイントロデューサー200のシースチューブ210を留置しながら、穿刺部位t2と重なるように押圧部160を配置する(
図4を参照)。この際、術者等は、帯体部130に形成されたマーカー部136を目視により確認しながら止血すべき部位t1にマーカー部136を重ねるように配置することで、押圧部160を穿刺部位t2に対して容易に位置合わせできる。
【0081】
なお、止血器具100は、手Hへの装着を開始する作業段階においては、押圧部160が拡張しない状態で準備される。
【0082】
術者等は、帯体部130を手Hに巻き付けた状態で、保持部140(面ファスナーの雄側140aおよび雌側140b)を接合して、手Hに帯体部130を固定する。
【0083】
次に、
図9に示すように、術者等は、規制部150の少なくとも一部が親指F1と人差し指F2の間の指間部Fbに引っ掛かるように規制部150を配置する。この際、術者は、規制部150の第2端部154に設けられた面ファスナーの雄側154aを保持部140(面ファスナーの雌側140b)に対して固定する。
【0084】
図9に示すように、術者等は、注入部170が橈骨動脈Raの血流の下流側(掌側)に向くように、患者の手Hに対して止血器具100を装着する。これにより、術者等は、注入部170を操作する際、血流の上流側に位置する器具(例えば、血圧計等)や血流の上流側で作業を行う作業者と注入部170とが干渉するのを防止できる。なお、橈骨動脈Raの場合、血流の上流側とは、血管の心臓に近づく方向を意味し、血管の下流側とは、血管の心臓から遠ざかる方向を意味する。
【0085】
次に、術者等は、注入部170のコネクタ173にシリンジ(図示せず)を接続し、空気を押圧部160内に注入する。押圧部160は、空気が注入されることにより拡張し、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに形成した穿刺部位t2に対して圧迫力を付与する(
図4を参照)。
【0086】
図10に示すように、術者は、穿刺部位t2に対する押圧部160の圧迫力を維持しながら、イントロデューサー200のシースチューブ210を穿刺部位t2から抜去する。
【0087】
穿刺部位t2は、患者の手Hに止血器具100を装着した状態で、規制部150よりも帯体部130側に配置される。また、押圧部160は、規制部150が親指F1と人差し指F2の間の指間部Fbに配置された状態で、規制部150の第2端部154よりも親指の付け根側に配置される。
【0088】
術者等は、押圧部160を拡張させて止血を開始した後、止血の進行状態に応じて押圧部160の内圧を適宜調整することが可能である。例えば、術者等は、押圧部160の拡張後、穿刺部位t2の止血が十分に行われていない場合、押圧部160に空気を再度注入して、押圧部160の内圧を上昇させることができる。また、例えば、術者等は、押圧部160の内圧を押圧部160に空気を注入した当初の内圧に戻したい場合、押圧部160から排出した分の空気を注入してもよい。
【0089】
患者は、止血器具100による止血が行われている間、腕A、手首W、指先等を動作させることができる。このため、患者は、腕や手首に形成された穿刺部位に対して圧迫力を付与した状態で止血がなされる場合に比べて、身体の動作の自由度が増すため、QOLが向上する。
【0090】
術者等は、所定の時間が経過して、穿刺部位t2の止血が完了した後、止血器具100を手Hから取り外す。この際、術者等は、例えば、帯体部130に対する規制部150の固定を解除した後、保持部140による帯体部130の連結を解除することにより、止血器具100の取り外しを円滑に行うことができる。
【0091】
本実施形態に係る止血器具100および止血方法の作用効果を説明する。
【0092】
本実施形態に係る止血器具100は、患者の手Hの止血すべき部位t1を覆うように配置される被覆部110と、被覆部110が止血すべき部位t1を覆った状態で、止血すべき部位t1を圧迫する押圧部160と、を有している。また、被覆部110は、押圧部160を覆いつつ、患者の手Hの少なくとも一部を囲う固定部120と、固定部120の軸方向への移動を規制する規制部150と、を備えている。そして、規制部150は、手の隣り合う指F1、F2同士の間に配置される。
【0093】
上記止血器具100は、患者の手Hの止血すべき部位t1を被覆部110により覆った状態で、押圧部160により止血すべき部位t1を押圧して止血できる。そして、止血器具100は、患者の手Hに装着された状態で、手Hを囲う固定部120により固定されつつ、手Hの隣り合う指F1、F2の間の指間部Fbに配置される規制部150により軸方向(手指の延在方向)への移動が規制される。これにより、止血器具100は、装着時に患者の手指の可動範囲を狭めたり、装着した状態で位置ずれが生じたりするのを防止できる。
【0094】
また、止血器具100の固定部120は、手Hの止血すべき部位t1に巻きつける帯体部130と、帯体部130を手Hの周囲に巻き付け状態で固定する保持部140と、を備えている。そして、規制部150は、帯体部130を手Hの周囲に巻き付けた状態で、親指F1と人差し指F2の間の指間部Fbを通って帯体部130に固定される。
【0095】
上記のように構成された止血器具100によれば、保持部140は、帯体部130が手Hの周囲に巻き付けられた状態を安定的に維持する。また、規制部150は、親指F1と人差し指F2の間の指間部Fbを通って帯体部130に固定されることにより、帯体部130が軸方向へ移動するのを規制する。さらに、親指F1と人差し指F2の間の指間部Fbは、その他の指の間の指間部よりも比較的広い面積を有するため、術者等は、規制部150をしっかりと指間部Fbに保持させることができ、止血器具100に位置ずれが生じるのをより好適に防止できる。
【0096】
また、止血器具100の規制部150は、帯体部130に固定された第1端部153と、第1端部153に対向し、帯体部130と着脱自在に連結可能である第2端部154と、を有している。そして、押圧部160は、第2端部154が帯体部130と連結した状態で、規制部150の第2端部154よりも親指F1の付け根側に配置される。
【0097】
上記のように構成された止血器具100によれば、規制部150の第2端部154を帯体部130に着脱させることが可能であるため、患者の隣接する手指の間へ規制部150を配置する作業が容易になる。また、押圧部160は、規制部150の第2端部154よりも親指F1の付け根側に配置されるため、押圧部160が止血すべき部位t1(穿刺部位t2)を押圧した状態において、手指の指先側に押圧部160が配置されるのを防止できる。これにより、止血器具100は、患者の手指の動作が制限されるのを防止できる。
【0098】
また、止血器具100の帯体部130は、押圧部160を覆う箇所に、押圧部160を止血すべき部位t1と重なるように位置合わせするためのマーカー部136を有する。このように構成された止血器具100によれば、術者等は、止血すべき部位t1に押圧部160を容易に位置合わせできるため、止血器具100を使用した処置時間の短縮化を図ることができる。
【0099】
また、止血器具100の規制部150は、患者の手Hの表層側に配置される部分に吸液性を備える吸液層156を有する。このように構成された止血器具100によれば、吸液層156は、止血器具100を使用して止血が行われている最中に、規制部150側へ流れた血液等の体液を吸収(吸着)する。このため、術者等は、血液を拭き取る作業の手間を省くことができ、止血器具100を使用した処置時間の短縮化を図ることができる。
【0100】
また、止血器具100の被覆部110は、押圧部160と規制部150との間に、止血すべき部位t1に対するイントロデューサー200のシースチューブ210の留置を可能にする留置部137を有している。このように構成された止血器具100によれば、術者等は、イントロデューサー200のシースチューブ210を留置した状態で止血器具100を手Hに装着することが可能になるため、止血器具100の装着作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0101】
本実施形態に係る止血方法は、患者の手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに形成された穿刺部位t2を止血する止血方法である。当該止血方法は、患者の手Hに存在する止血すべき部位t1を覆う被覆部110と、被覆部110が止血すべき部位t1を覆った状態で、止血すべき部位t1を圧迫する押圧部160と、を備える止血器具100を提供し、止血すべき部位t1の周囲に被覆部110を配置し、患者の手Hに形成した穿刺部位t2にイントロデューサー200のシースチューブ210を留置しながら、押圧部160が穿刺部位t2と重なるように止血すべき部位t1に押圧部160を配置し、押圧部160により穿刺部位t2が圧迫されるように、被覆部110を患者の手Hに固定し、穿刺部位t2に対する押圧部160の圧迫力を維持しながら、イントロデューサー200のシースチューブ210を穿刺部位t2から抜去する。
【0102】
上記止血方法は、患者の手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに形成された穿刺部位t2を止血することにより、止血を行っている最中に患者の腕A、手首W、指先等の動作が制限されるのを防止する。これにより、患者は、止血時の身体の動作の自由度が増すため、QOLが向上する。
【0103】
また、止血に用いられる止血器具100の被覆部110は、押圧部160を覆いつつ、患者の手Hの少なくとも一部を囲う固定部120と、固定部120の軸方向への移動を規制する規制部150と、を備えている。そして、規制部150は、押圧部160が穿刺部位t2を圧迫するように被覆部110を手Hに固定した状態で、手Hの隣り合う指同士の間に配置される。
【0104】
上記止血方法によれば、術者等は、患者の手Hの止血すべき部位t1を被覆部110により覆った状態で、押圧部160により止血すべき部位t1を押圧して止血できる。そして、止血器具100は、患者の手Hに装着された状態で、手Hを囲う固定部120により固定されつつ、手Hの隣り合う指同士の間に配置される規制部150により軸方向(手指の延在方向)への移動が規制される。これにより、術者等は、止血器具100を装着した患者の手指の可動範囲が狭められたり、止血器具100に位置ずれが生じたりするのを防止できる。
【0105】
また、止血器具100の固定部120は、手の止血すべき部位t1に巻きつける帯体部130と、帯体部130を手Hの周囲に巻き付け状態で固定する保持部140と、を備えている。そして、規制部150は、帯体部130を手Hの周囲に巻き付けた状態で、親指F1と人差し指F2の間の指間部Fbを通って帯体部130に固定される。
【0106】
上記止血方法によれば、術者等は、保持部140により、帯体部130が手Hの周囲に巻き付けられた状態を安定的に維持できる。また、術者等は、親指F1と人差し指F2の間の比較的広い面積を有する指間部Fbを通すように配置した規制部150により、止血器具100に位置ずれが生じるのを防止できる。
【0107】
また、穿刺部位t2は、患者の手Hを広げた状態で、手の甲Hb側における親指F1の中心線c1と人差し指F2の中心線c2の間に形成されている。そして、穿刺部位t2は、止血器具100を患者の手Hに装着した状態で、規制部150よりも帯体部130側に配置される。このような止血方法によれば、術者等は、帯体部130に配置された押圧部160により、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに形成された穿刺部位t2に対して好適に圧迫力を付与できる。
【0108】
また、押圧部160は、規制部150が患者の手Hの隣り合う指同士の間に配置された状態で、規制部150の第2端部154(規制部150の帯体部130に固定された端部)よりも親指F1の付け根側に配置される。このような止血方法によれば、術者等は、親指F1の付け根側で穿刺部位t2に対して押圧力を付与できるため、止血を行っている最中に患者の手Hの可動範囲をより一層広げることが可能になる。
【0109】
次に、上述した第1実施形態の変形例を説明する。なお、変形例において特に言及しない構成や部材、また特に言及しない手技の手順(止血方法の手順)等については、前述した実施形態と同様のものとすることができ、その説明を省略する。
【0110】
<変形例1>
図11は、変形例1に係る止血器具300を患者の手Hに装着した状態を示す平面図であり、
図12は、変形例1に係る止血器具300を患者の手Hに装着した状態を示す斜視図である。なお、
図11および
図12は、イントロデューサー200のシースチューブ210を患者の手Hに留置した状態で、患者の手Hに止血器具300を装着した状態を示している。
【0111】
変形例1に係る止血器具300は、被覆部310が備える固定部320および規制部350の構成が前述した第1実施形態に係る止血器具100と相違する。
【0112】
図11および
図12に示すように、固定部320は、手の甲Hbの表面に接触しつつ、手の甲Hbの全体を包む袋部330で構成している。また、規制部350は、袋部330が手の甲Hbを包んだ状態で、手Hの隣り合う指同士の間を通るように袋部330と一体的に形成されている。
【0113】
固定部320を構成する袋部330は、患者の手Hの全体を覆うグローブのような構造を有している。また、袋部330は、各指F1〜F5の間の指間部Fbおよび各指F1〜F5の付け根部分から指先側の一定の範囲を覆う形状で形成している。
【0114】
図11に示すように、袋部330は、止血すべき部位t1に対するイントロデューサー200のシースチューブ210の留置を可能にする留置部337を有している。
【0115】
留置部337は、袋部330に形成された開口部(孔部)により構成している。留置部337は、袋部330から手の甲Hbの一部を露出する。留置部337は、袋部330が手の甲Hbを包んだ状態で、手の親指F1と手の人差し指F2との間(留置部337の少なくとも一部が手の親指F1の延長線と手の人差し指の延長線との間に配置される位置)に配置される。
【0116】
また、留置部337は、袋部330が手の甲Hbを包んだ状態で、押圧部160よりも親指F1側(親指F1の指先側)に配置される。
【0117】
押圧部160は、袋部330の内面(手の甲Hbの表層に向かい合う面)に配置されている。押圧部160の構造は、前述した止血器具100と実質的に同一に構成できる。また、袋部330の内面の任意の箇所には、例えば、血液等の体液を吸液可能な吸液層を設けることが可能である。
【0118】
袋部330は、例えば、前述した実施形態に係る帯体部130と同様の構成材料で形成できる。袋部330は、少なくとも押圧部160と重なっている部分が、透明、半透明、有色透明で形成することが好ましい。
【0119】
次に、変形例1に係る止血器具300の使用手順を説明する。
【0120】
図12(A)および
図12(B)に示すように、術者等は、イントロデューサー200のシースチューブ210を手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに留置したまま、止血器具300の袋部330を患者の手Hに被せる。具体的には、術者等は、袋部330を手Hの指先側から手の甲Hbおよび掌Hp側に向けて被せる。この際、術者等は、袋部330の留置部337にイントロデューサー200を通すことにより、イントロデューサー200と袋部330とを干渉させることなく、袋部330を手Hに被せることができる。
【0121】
術者等は、患者の手Hに止血器具300を装着した後、注入部170のコネクタ173にシリンジ(図示せず)を接続し、空気を押圧部160内に注入する。押圧部160は
空気が注入されることにより拡張し、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに形成した穿刺部位t2に対して圧迫力を付与する。
【0122】
術者等は、イントロデューサー200のハブ部220等を留置部337から導出した状態で、シースチューブ210を穿刺部位t2に留置した状態を維持できる。
【0123】
次に、術者等は、穿刺部位t2に対する押圧部160の圧迫力を維持しながら、イントロデューサー200のシースチューブ210を穿刺部位t2から抜去する。この際、術者等は、袋部330の留置部337にイントロデューサー200を通すことにより、袋部330にイントロデューサー200を干渉させることなく、シースチューブ210を穿刺部位t2から抜去できる。
【0124】
本変形例に係る止血器具300の作用効果を説明する。
【0125】
本変形例に係る止血器具300が備える固定部320は、患者の手の甲Hbの表面に接触しつつ、手の甲Hbの全体を包む袋部330で構成している。そして、規制部350は、袋部330が手の甲Hbを包んだ状態で、手Hの隣り合う指同士の間を通るように袋部330と一体的に形成されている。
【0126】
上記のように構成された止血器具300は、患者の手の甲Hbの表面に接触するように配置される袋部330により、患者の手Hに対する止血器具300の固定力を向上させることができる。また、止血器具300は、規制部350が袋部330と一体的に形成されている。このため、術者等は、袋部330を患者の手の甲Hbに装着することにより、規制部350を隣り合う指の間に配置できる。これにより、術者等は、患者の手Hへの止血器具300の装着を容易に行うことができる。
【0127】
また、止血器具300の袋部330は、止血すべき部位t1に対するイントロデューサー200のシースチューブ210の留置を可能にする留置部337を有している。留置部337は、袋部330が患者の手の甲Hbを包んだ状態で、手の親指F1と手の人差し指F2との間に配置される。このため、術者等は、袋部330を手の甲Hbに装着した状態で、イントロデューサー200のシースチューブ210が穿刺部位t2に留置された状態を安定的に維持できる。
【0128】
また、止血器具300の留置部337は、袋部330が手の甲Hbを包んだ状態で、押圧部160よりも親指F1側に配置される。このため、術者等は、親指F1側にイントロデューサー200のハブ部220等を配置でき、イントロデューサー200を手指の指先側に向けて配置できる。これにより術者等は、止血器具300を患者の手Hに装着した状態においても、イントロデューサー200の操作を容易に行うことができる。
【0129】
なお、変形例1に係る止血器具300に設けられる規制部350の個数や、袋部330が同時に覆うことが可能な指の個数等は、特に限定されない。
【0130】
<変形例2>
図13は、変形例2に係る止血器具400を患者の手Hに装着した状態を示す平面図であり、
図14は、変形例2に係る止血器具400を患者の手Hに装着した状態を示す斜視図である。なお、
図13および
図14は、イントロデューサー200のシースチューブ210を患者の手Hに留置した状態で、患者の手Hに止血器具400を装着した状態を示している。
【0131】
変形例2に係る止血器具400は、患者の手の甲Hbを包むように構成された固定部420(袋部430)の構成が変形例1に係る止血器具300と相違する。
【0132】
図13および
図14に示すように、袋部430は、患者の手Hに巻き付けられるように構成されている。袋部430には、手Hに巻き付けた状態を維持するための保持部440を設けている。
【0133】
保持部440は、袋部430に形成された面ファスナーの雄側440a(または雌側440b)と、面ファスナーの雌側440b(または雄側)と、を有している。
【0134】
術者等は、面ファスナーの雄側440aと面ファスナーの雌側440bを接合することにより、袋部430が患者の手Hに巻き付いた状態を維持できる。また、術者等は、面ファスナーの雄側440aと面ファスナーの雌側440bの接合を解除することにより、袋部430が患者の手Hに巻き付いた状態を解除できる。
【0135】
なお、保持部440は、例えば、スナップ、ボタン、クリップ、または袋部330の端部を通す枠部材等であってもよい。
【0136】
袋部430は、患者の手Hのうち、親指F1の付け根側を部分的に覆うように形成されている。規制部450は、袋部430と一体的に形成されており、袋部430が患者の手の甲Hbに巻き付いた状態で、親指F1と人差し指F2の間の指間部Fbに配置される。
【0137】
前述した変形例1に係る止血器具300の袋部330は、各指F1〜F5の付け根側を部分的に覆うように形成していたが、変形例2に係る止血器具400は、親指F1以外の指を露出させるように形成している。
【0138】
変形例2に係る止血器具400は、前述した変形例2に係る止血器具300と同様に、患者の手Hに対する固定力が向上したものとなる。また、止血器具400は、規制部450が袋部430と一体的に形成されている。このため、術者等は、袋部430を患者の手の甲Hbに装着することにより、隣り合う指の間に規制部450を配置できる。これにより、術者等は、患者の手Hへの止血器具400の装着を容易に行うことができる。
【0139】
さらに、術者等は、袋部430に形成した保持部440により、患者の手Hに対する袋部430の巻き付けと、巻き付けの解除を容易に行うことができる。
【0140】
なお、前述した変形例1に係る止血器具300の袋部330に、変形例2に係る止血器具400で説明した保持部440を設けることも可能である。
【0141】
<変形例3>
図15は、変形例3に係る止血器具500を内面側から見た平面図である。
図16は、変形例3に係る止血器具500を患者の手Hに装着した状態を示す平面図であり、
図17は、変形例3に係る止血器具500を患者の手Hに装着した状態を示す斜視図である。
【0142】
変形例3に係る止血器具500は、被覆部510が備える固定部520および規制部530の構成が前述した第1実施形態に係る止血器具100と相違する。
【0143】
図15および
図16に示すように、止血器具500の被覆部510は、押圧部160を覆う固定部520と、固定部520の移動を規制しつつ、患者の腕A(または手首W)を囲う規制部530と、を備えている。
【0144】
図16および
図17に示すように、規制部530は、患者の腕Aに巻き付ける帯体部540と、帯体部540を患者の腕Aに巻き付けた状態で固定する保持部550と、を備えている。
【0145】
帯体部540は、前述した止血器具100の帯体部130と実質的に同一に形成できる。ただし、帯体部540は、腕Aに巻き付けることができるように、例えば、延在方向の長さを60mm〜600mmに形成することができ、幅を3mm〜500mmに形成できる。
【0146】
保持部550は、
図15に示すように、帯体部540の内面側に配置された面ファスナーの雄側(または雌側)550aと、帯体部540の外面側に配置された面ファスナーの雌側(または雄側)550bと、を有している。
【0147】
図16および
図17に示すように、固定部520は、帯体部540を腕Aの周囲に巻き付けた状態で、親指F1と人差し指F2の間の指間部Fbを通って帯体部540に固定される。
【0148】
図16および
図17に示すように、固定部520は、帯体部540に固定された第1端部523と、第1端部523に対向し、帯体部540と着脱自在に連結可能である第2端部524と、を有している。
【0149】
固定部520は、
図15に示すように、第2端部524が帯体部540から分離した状態で、帯体部540の延在方向(
図15の左右方向)に対して所定の角度だけ傾斜して延在する。
【0150】
固定部520は、例えば、延在方向の長さを50mm〜5000mmに形成することができ、幅を3mm〜60mmに形成できる。固定部520の幅は、固定部520の延在方向と直交する方向の寸法である。
【0151】
固定部520の第2端部524には、面ファスナーの雄側(または雌側)524aを配置している。術者等は、
図16に示すように、固定部520の面ファスナーの雄側524aと帯体部540の面ファスナーの雌側550bとを接合することにより、固定部520を帯体部540に連結できる。
【0152】
図15に示すように、固定部520は、手Hの表層側に配置される部分(固定部520の内面)に吸液性を有する吸液層527を有している。吸液層527は、前述した止血器具100の吸液層156と実質的に同一に形成できる。
【0153】
図15に示すように、固定部520の内面には押圧部160を配置している。押圧部160は、前述した止血器具100と実質的に同一のものとすることができる。
【0154】
なお、固定部520の内面には、例えば、凹状の溝で構成される留置部137(
図4を参照)を設けることが可能である。また、固定部520の内面には、例えば、固定部520が患者の手Hから位置ずれするのをより確実に防止するために、押圧部160の周囲に接着層(シール部材)を設けてもよい。
【0155】
また、固定部520および帯体部540は、例えば、前述した実施形態に係る帯体部130と同様の構成材料で形成できる。固定部520は、少なくとも押圧部160と重なっている部分が、透明、半透明、有色透明で形成することが好ましい。
【0156】
固定部520は、例えば、親指F1と人差し指F2以外の指の間に配置されるように構成してもよい。また、固定部520は、例えば、一つの止血器具500に複数個設けることも可能である。この場合、固定部520は、固定部520から分岐して異なる指の間に配置される複数の部分を有するように形成してもよいし、帯体部540から分岐して異なる指の間に配置される複数の部分を有するように形成してもよい。また、固定部520は、例えば、帯体部540と着脱ができないように帯体部540と一体的に形成してもよい。なお、固定部520が各指の間に配置される複数の部分を有する場合、例えば、帯体部540に対して着脱可能なものと、帯体部540に対して着脱できないものを設けてもよい。
【0157】
次に、変形例3に係る止血器具500の使用手順を説明する。
【0158】
術者等は、イントロデューサー200のシースチューブ210を手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに留置したまま(
図8を参照)、患者の腕Aに帯体部540を巻き付けて固定する。
【0159】
次に、術者等は、帯体部540を患者の腕Aに巻き付けた状態で、患者の手Hの親指F1と人差し指F2との間の指間部Fbに固定部520を通して、帯体部540に固定する。この際、術者等は、固定部520に設けられた押圧部160を手の止血すべき部位t1に重なるように配置する。
【0160】
次に、術者等は、注入部170のコネクタ173にシリンジ(図示せず)を接続し、空気を押圧部160内に注入する。押圧部160は、空気が注入されることにより拡張し、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに形成した穿刺部位t2に対して圧迫力を付与する(
図4を参照)。
【0161】
術者等は、穿刺部位t2に対する押圧部160の圧迫力を維持しながら、イントロデューサー200のシースチューブ210を穿刺部位t2から抜去する。
【0162】
患者は、止血器具500による止血が行われている間、肘や指先等を動作させることができる。このため、患者は、腕や手首に形成された穿刺部位に対して圧迫力を付与した状態で止血がなされる場合に比べて、身体の動作の自由度が増えるため、QOLが向上する。
【0163】
術者等は、所定の時間が経過して、穿刺部位t2の止血が完了した後、止血器具500を患者の腕Aから取り外す。この際、術者等は、例えば、帯体部540に対する固定部520の固定を解除した後、保持部550による帯体部540の連結を解除することにより、止血器具500の取り外しを容易に行うことができる。
【0164】
上記のように本変形例に係る止血器具500は、患者の手Hの止血すべき部位t1を覆うように配置される被覆部510と、被覆部510が止血すべき部位t1を覆った状態で、止血すべき部位t1を圧迫する押圧部160と、を有している。また、被覆部510は、押圧部160を覆う固定部520と、固定部520の移動を規制しつつ、患者の腕Aを囲う規制部530と、を備えている。そして、固定部520は、患者の手Hの隣り合う指同士の間に配置される。
【0165】
上記止血器具500は、患者の手Hの隣り合う指F1、F2同士の間に配置される固定部520により押圧部160を患者の手Hに固定して止血を行いつつ、患者の腕Aを囲う規制部530により固定部520の軸方向の移動を規制できる。これにより、止血器具100は、装着時に患者の手指の可動範囲を狭めたり、装着した状態で位置ずれが生じたりするのを防止できる。
【0166】
また、止血器具500は、手Hに比べて患者の動作による可動量(可動範囲)が比較的小さい腕Aに対して規制部530を配置するため、固定部520が軸方向へ移動するのを好適に防止できる。
【0167】
また、止血器具500の規制部530は、患者の腕Aに巻き付ける帯体部540と、帯体部540を患者の腕Aに巻き付けた状態で固定する保持部550と、を備えている。そして、固定部520は、帯体部540を患者の腕Aに巻き付けた状態で、手の止血すべき部位t1を押圧しつつ、患者の手Hの親指F1と患者の手の人差し指F2との間を通って帯体部540に固定される。
【0168】
上記のように構成された止血器具500によれば、保持部550は、帯体部540が腕Aの周囲に巻き付けられた状態を安定的に維持する。また、固定部520は、手の親指F1と手の人差し指F2の間の指間部Fbを通って帯体部540に固定されることにより、帯体部540が軸方向へ移動するのを規制する。さらに、親指F1と人差し指F2の間の指間部Fbにはその他の指の間の指間部よりも比較的広い面積が存在するため、術者等は、規制部150を指間部Fbにしっかりと保持させることができ、止血器具500に位置ずれが生じるのをより一層好適に防止できる。
【0169】
なお、変形例3に係る止血器具500は、例えば、規制部530を患者の手首Wを囲うように構成したり、患者の手首Wの一部および患者の腕Aの一部を部分的に覆うように構成したりしてもよい。
【0170】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る止血器具600を説明する。なお、第2実施形態において特に言及しない構成や部材、また特に言及しない手技の手順(止血方法の手順)等については、前述した第1実施形態と同様のものとすることができ、その説明を省略する。
【0171】
図18は、第2実施形態に係る止血器具600を患者の手Hに装着した状態を示す平面図であり、
図19は、
図18に示す矢印19A−19A線に沿う部分の拡大断面図である。
【0172】
第2実施形態に係る止血器具600は、被覆部610の構成が第1実施形態に係る止血器具100と相違する。
【0173】
図18および
図19に示すように、止血器具600は、患者の手Hの止血すべき部位t1を覆うように配置される被覆部610と、被覆部610が止血すべき部位t1を覆った状態で、止血すべき部位t1を圧迫する押圧部160と、を有している。
【0174】
図19に示すように、被覆部610は、止血すべき部位t1を覆うシート状の部材で形成している。被覆部610の内面には、押圧部160を設けている。押圧部160は、被覆部610の内面に対して融着(または接着)している。押圧部160は、第1実施形態に係る止血器具100と実質的に同一に形成できる。
【0175】
被覆部610の内面には、押圧部160の周囲を囲うように粘着層620を設けている。粘着層620は、例えば、被覆部610を患者の手Hに貼り付けた状態を安定的に維持し得るように、比較的強固な固定力(粘着力)を備えるものであることが好ましい。
【0176】
図18および
図19に示すように、被覆部610の内面にはマーカー部136を設けている。マーカー部136は、第1実施形態に係る止血器具100と実質的に同一に形成できる。
【0177】
被覆部610の内面における押圧部160の周囲には、例えば、血液等の体液を吸液可能な吸液層を設けることが可能である。
【0178】
また、止血器具600は、止血器具600の未使用の状態において粘着層620を覆うように配置される保護部材(保護シート)を配置してもよい。このように止血器具600が構成される場合、術者等は、止血器具600の使用に際して、保護部材を粘着層620から取り外すことにより、患者の手Hに対する被覆部610の固定を行うことができる。
【0179】
次に、第2実施形態に係る止血器具600の使用手順を説明する。
【0180】
術者等は、イントロデューサー200のシースチューブ210を手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに留置したまま(
図8を参照)、患者の手の甲Hbに形成された止血すべき部位t1を覆うように被覆部610を配置する。この際、術者等は、被覆部610の粘着層620を患者の手の甲Hbに貼り付けることにより、止血器具600を患者の手Hに固定できる。
【0181】
次に、術者等は、注入部170のコネクタ173にシリンジ(図示せず)を接続し、空気を押圧部160内に注入する。押圧部160は、空気が注入されることにより拡張し、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに形成した穿刺部位t2に対して圧迫力を付与する(
図19を参照)。
【0182】
術者等は、穿刺部位t2に対する押圧部160の圧迫力を維持しながら、イントロデューサー200のシースチューブ210を穿刺部位t2から抜去する。
【0183】
患者は、止血器具600による止血が行われている間、腕A、手首W、指先等を動作させることができる。このため、患者は、腕や手首に形成された穿刺部位に対して圧迫力を付与した状態で止血がなされる場合に比べて、身体の動作の自由度が増すため、QOLが向上する。
【0184】
また、止血器具600は、被覆部610が止血すべき部位t1を覆った状態で粘着層620による固定がなされる簡便な構造を有している。止血器具600は、隣り合う指の間に配置される規制部や固定部が設けられていないため、患者の手Hへの装着作業が容易である。
【0185】
術者等は、所定の時間が経過して、穿刺部位t2の止血が完了した後、止血器具600を患者の手の甲Hbから取り外す。この際、術者等は、被覆部610を患者の手の甲Hbから引き離す簡単な作業で止血器具600を取り外すことができる。
【0186】
以上のように、第2実施形態に係る止血方法によれば、術者等は、被覆部610により患者の手Hの止血すべき部位t1を覆った状態で、押圧部160により止血すべき部位t1に対して圧迫力を付与できる。このため、患者は、止血を行っている最中に、腕A、手首W、手指F1〜F5等の動作の自由度が増すため、QOLが向上する。
【0187】
次に、上述した第2実施形態の変形例を説明する。なお、変形例において特に言及しない構成や部材、また特に言及しない手技の手順(止血方法の手順)等については、前述した第2実施形態と同様のものとすることができ、その説明を省略する。
【0188】
<変形例>
変形例に係る止血器具700は、押圧部の構成が前述した第2実施形態に係る止血器具600と相違する。
【0189】
図20に示すように、止血器具700は、患者の手Hの止血すべき部位t1を覆うように配置される被覆部710と、被覆部710が止血すべき部位t1を覆った状態で、止血すべき部位t1を圧迫する第1の押圧部160Aと、を有している。さらに、止血器具700は、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrの走行に沿うように第1の押圧部160Aと隣接する第2の押圧部160Bと、同様に第1の押圧部160Aと隣接する第3の押圧部160Cと、を有している。
【0190】
第2の押圧部160Bは、第1の押圧部160Aよりも指先側に配置している。第3の押圧部160Cは、第1の押圧部160Aよりも腕A側に配置している。
【0191】
各押圧部160A、160B、160Cは、それぞれに接続された注入部170からの空気の注入により、独立して拡張および収縮可能に構成している。
【0192】
各押圧部160A、160B、160Cは、前述した第2実施形態に係る止血器具500と同様に、被覆部710の内面に設けている。なお、各押圧部160A、160B、160Cの具体的な構成は、第2実施形態に係る止血器具600の押圧部160と実質的に同一である。
【0193】
被覆部710の内面には、患者の手Hに対する固定を行うための粘着層(図示省略)を設けている。
【0194】
次に、本変形例に係る止血器具700の使用手順を説明する。
【0195】
術者等は、イントロデューサー200のシースチューブ210を手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに留置したまま(
図8を参照)、患者の手の甲Hbに形成された止血すべき部位t1を覆うように被覆部610を配置する。この際、術者等は、第1の押圧部160Aを止血すべき部位t1に重ねるように配置し、第2の押圧部160Bおよび第3の押圧部160Cを手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに重ねるように配置する。
【0196】
術者等は、被覆部610の粘着層620を患者の手の甲Hbの表面に貼り付けることにより、止血器具700を患者の手Hに固定する。
【0197】
次に、術者等は、第1の押圧部160Aに接続された注入部170のコネクタ173にシリンジ(図示せず)を接続し、空気を第1の押圧部160A内に注入する。押圧部160は、空気が注入されることにより拡張し、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに形成した穿刺部位t2に対して圧迫力を付与する。
【0198】
次に、術者等は、第2の押圧部160Bに接続された注入部170および第3の押圧部160Cに接続された注入部170を介して、空気を各押圧部160B、160Cに注入する。この際、各押圧部160B、160Cの圧迫力(拡張量)は、ある程度の大きさに抑える。止血器具700は、第2の押圧部160Bおよび第3の押圧部160Cが手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに付与する圧迫力により、第1の押圧部160Aが配置された付近を流れる血液の圧力(流圧)を減少させる。なお、第2の押圧部160Bと第3の押圧部160Cを拡張する順番は順不同であり、例えば、同時に拡張させてもよい。
【0199】
次に、術者等は、第1の押圧部160Aに接続された注入部170を介して、第1の押圧部160Aから空気を排出させる。術者等は、この操作により、止血すべき部位t1から血液が流出しない程度に第1の押圧部160Aの圧迫力を低下させる。
【0200】
次に、術者等は、イントロデューサー200のシースチューブ210を穿刺部位t2から抜去する。
【0201】
止血器具700は、第2の押圧部160Bおよび第3の押圧部160Cが手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrに付与する圧迫力により、第1の押圧部160Aが配置された付近を流れる血液の圧力(流圧)を減少させるため、第1の押圧部160Aが穿刺部位t2に対して付与する圧迫力が抑えられた状態でも、止血すべき部位t1から血液が流出するのを防止できる。また、止血器具700は、穿刺部位t2を開存した状態に維持しつつ止血を行うことができるため、止血を行っている最中に、手掌動脈Paの橈骨動脈側Pdrが閉塞するのを防止できる。
【0202】
なお、止血器具700に設ける押圧部の個数は、3つ(第1の押圧部160Aと、第1の押圧部160Aを間に挟むように配置された二つの押圧部160B、160C)以上であれば特に制限されない。また、止血器具700に設けられる各押圧部は、本変形例において説明した止血方法を実現可能にするために、それぞれが独立して拡張可能に構成されることが好ましい。
【0203】
以上、複数の実施形態および変形例を通じて本発明に係る止血器具および止血方法を説明したが、本発明は明細書において説明した各構成のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0204】
例えば、本発明に係る止血器具は、その適用対象となる血管が手を走行する手掌動脈である限り、適用対象となる血管が限定されない。具体的には、各実施形態では(i)手掌動脈Paの深掌動脈Pdの橈骨動脈側Pdrに形成した穿刺部位を止血する例を説明したが、止血器具は、例えば、(ii)手掌動脈Paの深掌動脈Pdの尺骨動脈側Pduに形成した穿刺部位の止血、(iii)手掌動脈Paの浅掌動脈Pfの橈骨動脈側Pfrに形成した穿刺部位の止血、(iv)手掌動脈Paの浅掌動脈Pfの尺骨動脈側Pfuに形成した穿刺部位の止血に用いることも可能である(
図6を参照)。
【0205】
なお、止血器具は、上記(iii)および上記(iv)の止血に用いられる場合、掌Hp側に押部圧が配置されるように構成することが好ましい。手掌動脈Paの浅掌動脈Pfは、手の甲Hb側よりも掌Hp側に近い位置を走行するため、術者等は、掌Hp側から圧迫力を付与することにより、止血を好適に行うことが可能になる。この場合、穿刺部位は、患者の掌側からの穿刺により形成できる。
【0206】
また、本発明に係る止血方法は、その適用対象となる血管が手を走行する手掌動脈の橈骨動脈側に形成された穿刺部位の止血を目的とするものである限り、具体的な止血位置(圧迫力を付与する位置)等は特に限定されない。例えば、止血方法は、手掌動脈Paの深掌動脈Pdの橈骨動脈側Pdrに形成された穿刺部位の止血に限定されず、手掌動脈Paの浅掌動脈Pfの橈骨動脈側Pfrに形成された穿刺部位の止血に適用することも可能である(
図6を参照)。
【0207】
また、穿刺部位が形成される手は、患者の左右の手のうち、どちらの手でもよい。
【0208】
また、各実施形態では、穿刺部位を介して手掌動脈内に挿入する医療用長尺体としてイントロデューサーのシースチューブを例示したが、医療用長尺体の具体的な種類は特に限定されず、例えば、ガイドワイヤ、ガイディングシース等であってもよい。
【0209】
また、各実施形態および変形例において説明した止血器具は一例に過ぎず、止血器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置き換えることができる。また、止血器具は、明細書内において特に説明のなかった任意の構成物(部材)等が適宜付加されてもよい。