特許第6980152号(P6980152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980152鉄道システム、運行管理装置、運行管理方法、および運行管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6980152
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】鉄道システム、運行管理装置、運行管理方法、および運行管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/00 20060101AFI20211202BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20211202BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20211202BHJP
【FI】
   B61L27/00 M
   B60L15/40 F
   G06Q50/30
【請求項の数】22
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2021-519689(P2021-519689)
(86)(22)【出願日】2020年11月4日
(86)【国際出願番号】JP2020041225
【審査請求日】2021年4月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】藤原 麻帆
(72)【発明者】
【氏名】立石 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀男
(72)【発明者】
【氏名】島吉 翔太
(72)【発明者】
【氏名】高見 敦
(72)【発明者】
【氏名】上田 健詞
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−202993(JP,A)
【文献】 特開平05−124514(JP,A)
【文献】 特開2018−135018(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/084197(WO,A1)
【文献】 特開平09−104347(JP,A)
【文献】 特開2017−158330(JP,A)
【文献】 特開2020−082920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 27/00 − 27/04
B60L 15/40
G06Q 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の列車にそれぞれ搭載される車上装置と、
前記複数の列車のうち少なくとも1つの列車を対象列車として前記対象列車の運行を管理する運行管理装置と、を備え、
前記運行管理装置は、
前記複数の列車のうち前記対象列車の前を走行する列車である先行列車の次駅への到着遅延が発生した場合に、前記対象列車の前記次駅への到着目標時刻を算出し、その後、前記先行列車が前記次駅に到着した場合に、前記対象列車の前記次駅への到着目標時刻を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記到着目標時刻の情報を前記対象列車へ送信する通信部と、を備え、
前記車上装置の各々は、
前記運行管理装置から前記到着目標時刻を受信する通信部と、
前記次駅の1つ前の駅である前駅から前記次駅までの走行速度の変化を規定する複数のランカーブの情報を記憶する記憶部と、
前記通信部で受信された前記到着目標時刻に基づいて、前記複数のランカーブのうち前記到着目標時刻に応じたランカーブを決定する処理部と、を備える
ことを特徴とする鉄道システム。
【請求項2】
前記算出部は、
前記先行列車が前記次駅を出発した場合に、前記対象列車の前記次駅への到着目標時刻を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道システム。
【請求項3】
前記算出部は、
前記先行列車が前記次駅に到着した場合に、前記先行列車の前記次駅への到着時刻、前記先行列車の前記次駅での停車予定時間、および前記次駅に予め定められた列車の発着時隔に基づいて、前記到着目標時刻を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道システム。
【請求項4】
前記算出部は、
前記先行列車の前記次駅への到着遅延が発生した場合に、前記到着遅延の度合いと無関係に前記到着遅延が予め定められた遅延であるものとみなして前記到着目標時刻を算出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項5】
前記算出部は、
前記到着目標時刻の算出を前記対象列車の走行中に行う
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項6】
前記算出部は、
前記先行列車の次駅への到着遅延が発生した場合における前記到着目標時刻の算出を前記対象列車が前記次駅の前の駅に停車中に行う
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項7】
前記複数のランカーブは、
前記前駅から特定の位置までの速度特性が共通である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項8】
前記複数のランカーブは、
前記前駅から互いに共通の加速区間に続いて同一速度が継続する区間である等速区間を有し、前記等速区間は互いに長さが異なる
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項9】
前記複数のランカーブは、
前記次駅への進入区間において、速度が、前記次駅への発着間隔を示す最小運転時隔が最も小さくなるランカーブの駅進入速度を中心付近とする予め定められた範囲内に設定される
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項10】
前記複数のランカーブは、
前記先行列車の前記次駅への到着遅延がない場合に用いられる第1ランカーブと、
前記先行列車の前記次駅への到着遅延がある場合に用いられ、前記第1ランカーブよりも走行時分が長い複数の第2ランカーブと、
前記先行列車の前記次駅への到着遅延がある場合に用いられる前記第1ランカーブよりも走行時分が短い第3ランカーブと、を含む
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項11】
複数の列車のうち少なくとも1つの列車を対象列車として前記対象列車の運行を管理する運行管理装置であって、
前記複数の列車のうち前記対象列車の前を走行する列車である先行列車の次駅への到着遅延が発生した場合に、前記対象列車の前記次駅への到着目標時刻を算出し、その後、前記先行列車が前記次駅に到着した場合に、前記対象列車の前記次駅への到着目標時刻を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記到着目標時刻の情報を前記対象列車へ送信する通信部と、を備え、
前記複数の列車にそれぞれ搭載される車上装置は、
前記運行管理装置から前記到着目標時刻を受信する通信部と、
前記次駅の1つ前の駅である前駅から前記次駅までの走行速度の変化を規定する複数のランカーブの情報を記憶する記憶部と、
前記通信部で受信された前記到着目標時刻に基づいて、前記複数のランカーブのうち前記到着目標時刻に応じたランカーブを決定する処理部と、を備える
ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項12】
前記算出部は、
前記先行列車が前記次駅を出発した場合に、前記対象列車の前記次駅への到着目標時刻を算出する
ことを特徴とする請求項11に記載の運行管理装置。
【請求項13】
前記算出部は、
前記先行列車が前記次駅に到着した場合に、前記先行列車の前記次駅への到着時刻、前記先行列車の前記次駅での停車予定時間、および前記次駅に予め定められた列車の発着時隔に基づいて、前記到着目標時刻を算出する
ことを特徴とする請求項11または12に記載の運行管理装置。
【請求項14】
前記算出部は、
前記先行列車の前記次駅への到着遅延が発生した場合に、前記到着遅延の度合いと無関係に前記到着遅延が予め定められた遅延であるものとみなして前記到着目標時刻を算出する
ことを特徴とする請求項11から13のいずれか1つに記載の運行管理装置。
【請求項15】
前記算出部は、
前記到着目標時刻の算出を前記対象列車の走行中に行う
ことを特徴とする請求項11から14のいずれか1つに記載の運行管理装置。
【請求項16】
前記算出部は、
前記先行列車の次駅への到着遅延が発生した場合における前記到着目標時刻の算出を前記対象列車が前記次駅の前の駅に停車中に行う
ことを特徴とする請求項11から14のいずれか1つに記載の運行管理装置。
【請求項17】
前記複数のランカーブは、
前記前駅から特定の位置までの速度特性が共通である
ことを特徴とする請求項11から16のいずれか1つに記載の運行管理装置。
【請求項18】
前記複数のランカーブは、
前記前駅から互いに共通の加速区間に続いて同一速度が継続する区間である等速区間を有し、
前記等速区間は互いに長さが異なる
ことを特徴とする請求項11から17のいずれか1つに記載の運行管理装置。
【請求項19】
前記複数のランカーブは、
前記次駅への進入区間において、速度が、前記次駅への発着間隔を示す最小運転時隔が最も小さくなるランカーブの駅進入速度を中心付近とする予め定められた範囲内に設定される
ことを特徴とする請求項11から18のいずれか1つに記載の運行管理装置。
【請求項20】
前記複数のランカーブは、
前記先行列車の前記次駅への到着遅延がない場合に用いられる第1ランカーブと、
前記先行列車の前記次駅への到着遅延がある場合に用いられ、前記第1ランカーブよりも走行時分が長い複数の第2ランカーブと、
前記先行列車の前記次駅への到着遅延がある場合に用いられる前記第1ランカーブよりも走行時分が短い第3ランカーブと、を含む
ことを特徴とする請求項11から19のいずれか1つに記載の運行管理装置。
【請求項21】
複数の列車のうち少なくとも1つの列車を対象列車とし前記複数の列車のうち前記対象列車の前を走行する列車である先行列車の次駅への到着遅延が発生した場合に、前記対象列車の前記次駅への到着目標時刻を算出する第1のステップと、
前記先行列車が前記次駅に到着した場合に、前記対象列車の前記次駅への到着目標時刻を算出する第2のステップと、
算出された前記到着目標時刻の情報を前記対象列車へ送信する第3のステップと、
前記到着目標時刻に基づいて、前記複数の列車に記憶された前記次駅の1つ前の駅である前駅から前記次駅までの走行速度の変化を規定する複数のランカーブのうち前記到着目標時刻に応じたランカーブを決定する第4のステップと、を含む
ことを特徴とする運行管理方法。
【請求項22】
複数の列車のうち少なくとも1つの列車を対象列車とし前記複数の列車のうち前記対象列車の前を走行する列車である先行列車の次駅への到着遅延が発生した場合に、前記対象列車の前記次駅への到着目標時刻を算出する第1のステップと、
前記先行列車が前記次駅に到着した場合に、前記対象列車の前記次駅への到着目標時刻を算出する第2のステップと、
算出された前記到着目標時刻の情報を前記対象列車へ送信する第3のステップと、
前記到着目標時刻に基づいて、前記複数の列車に記憶された前記次駅の1つ前の駅である前駅から前記次駅までの走行速度の変化を規定する複数のランカーブのうち前記到着目標時刻に応じたランカーブを決定する第4のステップと、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする運行管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、列車の運行を管理する運行管理装置を備える鉄道システム、運行管理装置、運行管理方法、および運行管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先行列車の遅延が生じた場合に、先行列車の後ろを走行する後続列車の速度を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、後続列車が次に停車する駅である次駅に停車中の先行列車に次駅からの出発遅れが生じた場合に、先行列車の次駅からの出発時刻を予測し、後続列車が駅間で停車することを回避するとともに、場内進路が開通した時点から最短で次駅に到着できるように、後続列車の速度を制御する予測制御技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−158330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、次駅に先行列車が到着するまでに後続列車が次駅に向けて出発した場合には、予測制御は行われず、後続列車は次駅に向けて最速で走行する。そのため、上記特許文献1に記載の技術では、先行列車の次駅への到着遅延が大きい場合には、後続列車が先行列車に近づきすぎて駅間で後続列車が停車してしまい、結果として後続列車の次駅への到着が大きく遅れる可能性がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、先行列車の次駅への到着遅延が生じた場合においても後続列車の次駅への到着遅延を抑制することができる鉄道システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の鉄道システムは、複数の列車にそれぞれ搭載される車上装置と、運行管理装置とを備える。運行管理装置は、複数の列車のうち少なくとも1つの列車を対象列車として対象列車の運行を管理する。運行管理装置は、算出部と、通信部とを備える。算出部は、複数の列車のうち対象列車の前を走行する列車である先行列車の次駅への到着遅延が発生した場合に、対象列車の次駅への到着目標時刻を算出し、その後、先行列車が次駅に到着した場合に、対象列車の次駅への到着目標時刻を算出する。通信部は、算出部によって算出された到着目標時刻の情報を対象列車へ送信する。車上装置の各々は、通信部と、記憶部と、処理部とを備える。通信部は、運行管理装置から到着目標時刻を受信する。記憶部は、次駅の1つ前の駅である前駅から次駅までの走行速度の変化を規定する複数のランカーブの情報を記憶する。処理部は、通信部で受信された到着目標時刻に基づいて、複数のランカーブのうち到着目標時刻に応じたランカーブを決定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、先行列車の次駅への到着遅延が生じた場合においても後続列車の次駅への到着遅延を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1にかかる鉄道システムの構成の一例を示す図
図2】実施の形態1にかかる運行管理装置の構成の一例を示す図
図3】実施の形態1にかかる最小運転時隔情報の一例を示す図
図4】実施の形態1にかかる鉄道システムにおけるブレーキ照査パターンを説明するための図
図5】実施の形態1にかかる運行管理装置の第1算出部による第1到着目標時刻の算出を説明するための図
図6】実施の形態1にかかる列車が有する車上装置の構成の一例を示す図
図7】実施の形態1にかかるランカーブ情報の一例を示す図
図8】実施の形態1にかかる複数のランカーブの一例を示す図
図9】実施の形態1にかかる運行管理装置の第2算出部による第2到着目標時刻の算出を説明するための図
図10】実施の形態1にかかる運行管理装置の第3算出部による第3到着目標時刻の算出を説明するための図
図11】実施の形態1にかかる運行管理装置の処理部によって算出される第1到着目標時刻、第2到着目標時刻、および第3到着目標時刻の各々に基づいて車上装置の処理部により選択されるランカーブの一例を示す図
図12】実施の形態1にかかる運行管理装置の処理部によって算出される第1到着目標時刻、第2到着目標時刻、および第3到着目標時刻の各々に基づいて車上装置の処理部により選択されるランカーブの他の例を示す図
図13】実施の形態1にかかる運行管理装置の処理部による処理の一例を示すフローチャート
図14】実施の形態1にかかる運行管理装置の処理部による到着目標時刻の算出処理の一例を示すフローチャート
図15】実施の形態1にかかる運行管理装置のハードウェア構成の一例を示す図
図16】実施の形態2にかかる鉄道システムの構成の一例を示す図
図17】実施の形態2にかかる列車が有する車上装置の構成の一例を示す図
図18】実施の形態2にかかる複数のランカーブの一例を示す図
図19】実施の形態2にかかる複数のランカーブの他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態にかかる鉄道システム、運行管理装置、運行管理方法、および運行管理プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる鉄道システムの構成の一例を示す図である。実施の形態1にかかる鉄道システム100は、複数の列車2〜2と、複数の無線装置3と、地上制御装置4と、連動制御装置5と、運行管理装置10とを備える。mは、2以上の整数である。かかる鉄道システム100は、例えば、運行ダイヤにおける列車の間隔が数分程度であるような高密度線区に適用されるが、鉄道システム100の適用対象は、高密度線区に限定されない。
【0011】
鉄道システム100は、CBTC(Communications Based Train Control)とも呼ばれ、複数の列車2〜2と地上設備の間での通信を使って複数の列車2〜2の運行と制御を行う信号保安技術を含む。以下、複数の列車2〜2の各々を個別に区別せずに示す場合、列車2と記載する場合がある。
【0012】
複数の無線装置3と地上制御装置4は、ネットワーク6を介して互いに通信可能に接続される。地上制御装置4、連動制御装置5、および運行管理装置10は、ネットワーク7を介して互いに通信可能に接続される。ネットワーク6,7はイントラネットであるが、インターネット、またはイントラネットおよびインターネット以外のネットワークであってもよい。
【0013】
無線装置3は、列車2に搭載された車上装置50と地上制御装置4との間で送受信される情報を中継する。例えば、無線装置3は、列車2の車上装置50から送信される無線信号を受信し、無線信号に含まれる列車状態情報を地上制御装置4へ送信する。列車状態情報は、例えば、列車2の位置を示す位置情報と列車2の速度を示す速度情報とを含む。
【0014】
また、無線装置3は、無線装置3の無線通信範囲内に存在する列車2の車上装置50への列車制御情報を地上制御装置4から取得した場合、取得した列車制御情報を含む無線信号を車上装置50へ送信する。列車制御情報は、保安用途の情報であり、例えば、列車2の経路情報および停止位置情報を含む。
【0015】
経路情報は、列車2が進行する経路を判定する情報を含む。停止位置情報は、列車2が停止すべき停止限界位置を示す情報を含み、列車2は経路内を停止限界位置まで進行することができる。停止限界位置は、経路内に先行列車および他の支障物が存在しない場合には、経路終端に設定される。また、出発進路または場内進路が進行現示でない場合には、停止限界位置は、進路の手前の位置に設定される。
【0016】
地上制御装置4は、無線装置3から列車状態情報を取得し、取得した列車状態情報に基づいて、各列車2の現在位置を示す位置情報を取得する。また、地上制御装置4は、後述するように列車制御情報を列車2毎に生成する。地上制御装置4は、各列車2の列車状態情報および列車制御情報を含む列車情報を運行管理装置10へ出力する。
【0017】
連動制御装置5は、運行管理装置10から出力される進路制御情報を受信する。連動制御装置5は、受信した進路制御情報に基づいて、不図示の転てつ機を制御して各列車2の進路を形成したり、各列車2の信号情報を生成し、生成した各列車2の信号情報を地上制御装置4へ出力したりする。かかる信号情報は、進路への進行許可を与える信号を現示する進行現示を示す情報を含む。
【0018】
また、連動制御装置5は、運行管理装置10から進路制御情報が受信されない進路については、進路への進行許可を与えない信号を現示する停止現示を示す情報を含む信号情報を生成し、地上制御装置4へ出力する。
【0019】
地上制御装置4は、連動制御装置5から送信される信号情報に基づいて、上述した列車制御情報を列車2毎に生成する。地上制御装置4は、列車2の列車状態情報と信号情報とに基づいて、列車2が走行可能な経路を示す経路情報を生成する。また、地上制御装置4は、経路内に存在する先行列車および他の支障物に基づいて停止位置情報を生成し、生成した停止位置情報を経路情報および信号情報に加えることで、列車制御情報を生成することができる。
【0020】
運行管理装置10は、地上制御装置4から各列車2の列車情報を取得する。運行管理装置10は、取得した各列車2の列車情報と、記憶しているダイヤ情報とに基づいて、列車2がダイヤ情報に従った時間でダイヤ情報に従った進路を走行するように、各列車2の進路制御情報を生成する。進路制御情報には、例えば、列車2の情報および進路の情報が含まれる。運行管理装置10は、生成した各列車2の進路制御情報を連動制御装置5へ出力する。
【0021】
運行管理装置10は、取得した各列車2の位置情報と、記憶しているダイヤ情報とに基づいて、各列車2に次駅への到着遅延が発生したか否かを判定する。そして、運行管理装置10は、次駅への到着遅延が発生したと判定した列車2を先行列車とし、かかる先行列車の後に続く列車を到着時刻調整の対象列車とする。以下において、次駅への到着遅延が発生した先行列車の後に続く列車を、対象列車または後続列車と記載する。
【0022】
運行管理装置10は、先行列車の次駅への到着遅延が発生したと判定した場合、先行列車に一定の遅延が発生したものとみなして、先行列車の遅延度合いとは無関係に、対象列車の次駅への到着目標時刻を第1到達目標時刻として算出する。一定の遅延は、予め定められた遅延であり、事前に設定される。
【0023】
運行管理装置10は、算出した第1到着目標時刻の情報である第1到着目標時刻情報を対象列車へ送信する。運行管理装置10から送信された第1到着目標時刻情報は、地上制御装置4および無線装置3を介して対象列車の車上装置50で受信される。
【0024】
対象列車の車上装置50は、運行管理装置10から第1到着目標時刻情報を取得すると、取得した第1到着目標時刻情報に基づいて、対象列車の自動運転を行う。これにより、対象列車は、第1到着目標時刻に応じた走行を行うことで、先行列車に近づきすぎないように走行でき、駅間で停車することを抑制することができる。
【0025】
次に、運行管理装置10は、先行列車が次駅へ到着したか否かを判定する。運行管理装置10は、先行列車が次駅に到着したと判定した場合、対象列車の次駅への到着目標時刻を第2到達目標時刻として算出し直す。かかる第2到達目標時刻は、先行列車の遅延の度合いに基づいて後続列車の遅延が低減されるように算出される。
【0026】
運行管理装置10は、算出した第2到着目標時刻の情報である第2到着目標時刻情報を対象列車へ送信する。運行管理装置10から送信された第2到着目標時刻情報は、地上制御装置4および無線装置3を介して対象列車の車上装置50で受信される。
【0027】
対象列車の車上装置50は、運行管理装置10から第2到着目標時刻情報を取得すると、取得した第2到着目標時刻情報に基づいて、対象列車の自動運転を行う。これにより、対象列車は、第2到着目標時刻に応じた走行を行う。
【0028】
このように、鉄道システム100における運行管理装置10は、先行列車の次駅への遅延が生じた場合に到達目標時刻を算出して後続列車である対象列車へ送信し、先行列車が次駅へ到着した場合に到達目標時刻を算出し直して後続列車である対象列車へ送信する。
【0029】
運行管理装置10は、次駅への到着遅延が生じた先行列車の遅延度合いが把握できない状態で到達目標時刻を算出することで後続列車が駅間で停車することを抑制することができる。そして、運行管理装置10は、その後、先行列車が次駅に到着して先行列車の遅延度合いが把握できた場合に、到達目標時刻を算出し直す。これにより、鉄道システム100は、駅間で対象列車が停車しないようにしつつも後続列車の次駅への到着遅延を抑制することができる。
【0030】
以下、鉄道システム100における運行管理装置10および車上装置50についてさらに具体的に説明する。図2は、実施の形態1にかかる運行管理装置の構成の一例を示す図である。
【0031】
図2に示すように、実施の形態1にかかる運行管理装置10は、通信部11と、記憶部12と、処理部13とを備える。通信部11は、ネットワーク7に通信可能に接続され、地上制御装置4、連動制御装置5、または列車2との間で情報の送受信を行う。なお、通信部11は、さらにネットワーク6に接続され、地上制御装置4の介在なしに無線装置3を介して列車2と情報の送受信を行う構成であってもよい。また、通信部11は、不図示の移動体通信網を介して列車2と情報の送受信を行う構成であってもよい。
【0032】
記憶部12は、ダイヤ情報30、経路情報31、列車情報32、および最小運転時隔情報33などを記憶する。ダイヤ情報30には、例えば、列車ID(Identifier)毎に走行経路情報および停車駅時間情報などが含まれる。列車IDは、各列車2に固有に割り当てられる識別情報である。走行経路情報は、列車2の走行経路を示す情報である。停車駅時間情報は、列車2の各駅への到着時刻を示す情報および列車2の各駅からの出発時刻を示す情報を含む。
【0033】
経路情報31には、例えば、経路ID毎に、進行方向、および単位経路の位置などの情報が含まれる。経路IDは、単位経路毎に固有に割り当てられた識別情報である。単位経路は、1以上のブロックを含む経路の最小単位であり、複数の単位経路が組み合わされて列車2の走行経路が形成される。ここで、ブロックは、軌道を区分けしたものであり、区間とも呼ばれる。進行方向は、単位経路における列車2の進行方向であり、上りおよび下りのいずれかが設定される。
【0034】
列車情報32には、各列車2の列車状態情報および列車制御情報が含まれる。列車状態情報には列車2の走行位置を示す情報および列車2の走行速度を示す情報が含まれる。最小運転時隔情報33には、各駅における最小運転時隔を示す情報が含まれる。最小運転時隔は、後続列車がブレーキ照査パターンによる減速を受けずに走行できる先行列車と後続列車との最小の発着時隔である。
【0035】
図3は、実施の形態1にかかる最小運転時隔情報の一例を示す図である。図3に示す最小運転時隔情報は、「出発駅」、「到着駅」、「方向」、および「最小運転時隔」を含み、これらの情報が互いに関連付けられている。
【0036】
「出発駅」は、列車2が出発する駅である出発駅を示す情報である。「到着駅」は、列車2が出発駅を出発してから次に到着する駅である到着駅を示す情報である。「方向」は、列車2の進行方向であり、上りまたは下りの情報である。「最小運転時隔」は、後続列車がブレーキ照査パターンによる減速を受けずに走行できる先行列車と後続列車との最小の発着時隔である。ブレーキ照査パターンは、後続列車の先行列車への接近または後続列車の進路未構成に起因して用いられ、例えば、列車2が指示速度または制限速度を超過した場合または列車2が指示速度または制限速度を超過しようとした場合にブレーキを作動させて列車2を減速または停止させるために用いられる。かかるブレーキ照査パターンは、速度照査パターンとも呼ばれる。
【0037】
図4は、実施の形態1にかかる鉄道システムにおけるブレーキ照査パターンを説明するための図である。図4に示す例では、出発駅から到着駅までの列車2の速度の変化を示すランカーブと列車2に設定されたブレーキ照査パターンとが示される。
【0038】
図4に示すランカーブで走行している列車2の車上装置50は、先行列車の次駅への出発遅れが発生して地上制御装置4から停止位置情報を受信した場合、列車2に設定されたブレーキ照査パターンと列車2の位置に基づいて許容速度を算出し、かかる許容速度に基づいて、列車2の速度と比較しながら列車2の速度を制御する。図4に示す例では、到着駅の手前で列車2の速度がブレーキ照査パターンに従って減速されている。
【0039】
図2に示す処理部13は、情報取得部20と、進路制御部21と、遅延判定部22と、発着判定部23と、算出部24と、加速指示部25とを備える。情報取得部20は、地上制御装置4を介して各列車2の列車情報を取得し、取得した各列車2の列車情報を記憶部12に記憶する。
【0040】
進路制御部21は、記憶部12に記憶された各列車2の列車情報およびダイヤ情報に基づいて、各列車2がダイヤ情報に従った時間でダイヤ情報に従った進路を走行するように、各列車2の進路制御情報を生成する。運行管理装置10は、生成した各列車2の進路制御情報を連動制御装置5へ出力する。
【0041】
遅延判定部22は、記憶部12に記憶された各列車2の列車情報に基づいて、各列車2に次駅への到着遅延が発生したか否かを判定する。そして、遅延判定部22は、次駅への到着遅延が発生したと判定した列車2を先行列車とする。例えば、遅延判定部22は、先行列車の次駅への到着遅延時間が予め定められた時間以上である場合に、先行列車の次駅への到着遅延が発生したと判定する。
【0042】
発着判定部23は、記憶部12に記憶された列車情報に基づいて、遅延判定部22によって次駅への到着遅延が発生したと判定された先行列車が次駅へ到着したか否かを判定する。また、発着判定部23は、遅延判定部22によって次駅への到着遅延が発生したと判定された先行列車が次駅から出発したか否かを判定する。
【0043】
算出部24は、記憶部12に記憶された列車情報に基づいて、遅延判定部22によって遅延が発生したと判定された先行列車の後に続く後続列車である対象列車の次駅への到着目標時刻を算出する。算出部24は、次駅よりも前の駅である前駅に対象列車が停車中である場合および対象列車が前駅から次駅に向けて走行中である場合のいずれの場合においても、対象列車の次駅への到着目標時刻を算出することができる。
【0044】
算出部24は、第1算出部26と、第2算出部27と、第3算出部28とを備える。第1算出部26は、遅延判定部22によって先行列車の次駅への到着遅延が発生したと判定した場合に、先行列車に続く後続列車である対象列車の次駅への到着目標時刻を第1到着目標時刻として算出する。以下において、先行列車を先行列車2Aと記載し、後続列車を後続列車2Bと記載する場合がある。
【0045】
図5は、実施の形態1にかかる運行管理装置の第1算出部による第1到着目標時刻の算出を説明するための図である。図5に示す例では、先行列車2Aに次駅であるB駅への到着遅延が発生しているが、後続列車2Bは、前駅であるA駅に停車中である。なお、図5に示す状態において、運行管理装置10では先行列車2AのB駅への到着遅延の度合いは不明である。
【0046】
第1算出部26は、先行列車2Aと後続列車2Bとが図5に示す状態である場合、先行列車2AのB駅への到着に一定の遅延時間が生じるものとみなして、先行列車2AのB駅への到着遅延の度合いとは無関係に、後続列車2Bの第1到達目標時刻を算出する。
【0047】
「一定の遅延時間」は、先行列車2Aの到着遅延の度合いにかかわらず、後続列車2Bが先行列車2Aに近づきすぎないような遅延時間に設定される。例えば、「一定の遅延時間」は、直近で発生した列車2の遅延時間、同じ時間帯または同じ駅間で頻発する列車2の遅延時間の最大値または平均値、または同じ時間帯且つ同じ駅間で頻発する列車2の遅延時間の最大値または平均値である。なお、「一定の遅延時間」は、例えば、同じ時間帯且つ同じ駅間において過去の列車2の遅延時間の統計結果から予測される遅延時間であってもよい。
【0048】
また、第1算出部26は、列車2の車上装置50が複数のランカーブの情報を記憶している場合、これら複数のランカーブのうち最も低速なランカーブで後続列車2Bに走行を実行させる到着目標時刻を第1到着目標時刻として算出することもできる。
【0049】
第1算出部26によって第1到着目標時刻が算出された場合、運行管理装置10の通信部11から第1算出部26によって算出された第1到着目標時刻の情報が後続列車2Bへ送信される。後続列車2Bの車上装置50は、第1到着目標時刻の情報を運行管理装置10から受信した場合、受信した第1到着目標時刻の情報に基づいて、第1到着目標時刻に応じたランカーブを決定する。
【0050】
ランカーブは、前駅から次駅までの走行速度の変化を規定する速度曲線である。車上装置50が列車2の自動運転を行う機能を有する場合、後続列車2Bの車上装置50は、決定したランカーブで対象列車を走行させる。
【0051】
ここで、列車2が有する車上装置50の構成について説明する。図6は、実施の形態1にかかる列車が有する車上装置の構成の一例を示す図である。図6に示すように、車上装置50は、通信部51と、検出部52と、記憶部53と、処理部54と、制御部55と、表示部56とを備える。
【0052】
通信部51は、無線で無線装置3と通信可能に接続されており、地上制御装置4または運行管理装置10との間で情報の送受信を行う。通信部51は、例えば、地上制御装置4から無線装置3を介して列車制御情報を受信したり、運行管理装置10から地上制御装置4および無線装置3を介して列車2の到達目標時刻の情報を受信したりする。
【0053】
検出部52は、列車2の位置および速度を検出する。検出部52は、列車2に設けられた不図示の回転検出器で検出された車輪回転数に基づき、列車2の位置および速度を検出するが、列車2に設けられた不図示のGPS(Global Positioning System)受信機から出力される位置情報に基づき、列車2の位置および速度を検出することもできる。
【0054】
検出部52は、列車2の位置および速度を検出した結果に基づいて、列車状態情報を通信部51へ出力する。列車状態情報は、例えば、列車IDと、列車2の位置を示す位置情報と、列車2の速度を示す速度情報と、列車2の進行方向を示す運転方向情報とを含む。通信部51は、検出部52から出力される列車状態情報を地上制御装置4へ無線装置3を介して送信する。
【0055】
記憶部53は、互いに特性が異なる複数のランカーブの情報を駅間毎に含むランカーブ情報を記憶する。図7は、実施の形態1にかかるランカーブ情報の一例を示す図である。図7に示すランカーブ情報は、「出発駅」、「到着駅」、「方向」、「走行時分」、「ランカーブID」、「モード」、および「ランカーブ」を含み、これらの情報が互いに関連付けられている。図7に示す「出発駅」、「到着駅」、および「方向」は、図3に示す「出発駅」、「到着駅」、および「方向」と同じである。
【0056】
「走行時分」は、ランカーブに従って列車2が出発駅から到着駅まで走行した場合における出発駅から到着駅までの列車2の走行時間であり、単位は、秒である。「ランカーブID」は、各ランカーブに固有の識別情報である。「モード」は、ランカーブで規定される走行モードであり、図7に示す例では、通常モード、回復モード、第1低速モード、第2低速モード、・・・、第n低速モードがある。nは、3以上の整数である。なお、低速モードの数は、3以上に限定されず、2以下であってもよい。
【0057】
通常モードは、先発列車の遅延がない場合に用いられるランカーブである。回復モードは、先発列車の遅延がある場合に用いられるランカーブであって、先発列車の遅延がない場合に用いられる通常モードのランカーブで走行した場合の走行時分よりも短い走行時分での走行が規定されるランカーブである。第1低速モード、第2低速モード、・・・、第n低速モードは、先発列車の遅延がある場合に用いられるランカーブであって、通常モードのランカーブで走行した場合の走行時分よりも長い走行時分での走行が規定されるランカーブである。第2低速モードの走行時分は、第1低速モードの走行時分よりも長い。第n低速モードの走行時分は、第2低速モードの走行時分よりも長い。
【0058】
「ランカーブ」は、ランカーブの情報を含む。ランカーブの情報は、例えば、出発駅から到着駅までの各位置と速度とを関連付けた情報である。図8は、実施の形態1にかかる複数のランカーブの一例を示す図である。図8において、縦軸は、列車2の速度を示し、横軸は、出発駅と到着駅との間の位置を示す図である。出発駅は、列車2が出発する駅を示し、到着駅は、出発駅を出発した列車2が次に到着する駅を示す。
【0059】
図8に示すように、ランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3は、出発駅から到着駅までの列車2の走行速度の変化を規定する速度曲線である。ランカーブC1は、通常モードのランカーブであり、ランカーブC2は、回復モードのランカーブであり、ランカーブC3,C3,・・・,C3は、低速モードのランカーブである。以下、ランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3の各々を個別に区別せずに示す場合、ランカーブCと記載する場合がある。ランカーブC1は、第1ランカーブの一例であり、複数のランカーブC3,C3,・・・,C3は、複数の第2ランカーブの一例であり、ランカーブC2は、第3ランカーブの一例である。
【0060】
図6に戻って、車上装置50の説明を続ける。車上装置50の処理部54は、動作モードが選択モードに設定されている場合、通信部51で受信された到着目標時刻の情報に基づいて、記憶部53に記憶された複数のランカーブCのうち通信部51で受信された到着目標時刻に応じたランカーブを選択する。
【0061】
例えば、処理部54は、通信部51で受信された到着目標時刻の情報に基づいて、図8に示す複数のランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3のうち通信部51で受信された第1到着目標時刻に応じたランカーブを選択する。
【0062】
処理部54は、例えば、列車2がA駅を出発する場合、第1到着目標時刻と、ランカーブCの走行時分とに基づいて、第1到着目標時刻に応じたランカーブを選択する。また、処理部54は、列車2がA駅とB駅との間を走行中である場合、第1到着目標時刻と、列車2のB駅までの距離と、各ランカーブCの走行時分とに基づいて、第1到着目標時刻に応じたランカーブを選択する。
【0063】
処理部54は、運行管理装置10によって算出された第1到着目標時刻が最も低速なランカーブで後続列車2Bに走行を実行させる到着目標時刻である場合、第1到着目標時刻に応じたランカーブとして、最も低速なランカーブであるランカーブC3を選択する。
【0064】
また、処理部54は、動作モードが生成モードに設定されている場合、通信部51で受信された到着目標時刻の情報に基づいて、運行管理装置10で算出された到着目標時刻に到着駅に到着するように列車2の速度が規定されるランカーブを生成する。なお、車上装置50は、選択モードおよび生成モードのうち一方の動作モードのみ実行可能な構成であってもよい。
【0065】
制御部55は、制御モードが自動運転モードに設定されている場合、処理部54によって選択または生成されたランカーブに基づいて、列車2の走行速度を制御する。これにより、制御部55は、ランカーブに従った速度で列車2を走行させることができる。
【0066】
また、制御部55は、制御モードが手動運転モードに設定されている場合、処理部54によって選択または生成されたランカーブを表示部56に表示させることができる。列車2の運転手は、表示部56に表示されたランカーブに従って列車2を操作することで、ランカーブに従った速度で列車2を走行させることができる。なお、車上装置50は、自動運転モードおよび手動運転モードのうち一方の制御モードのみ実行可能な構成であってもよい。
【0067】
次に、図2に示す算出部24の第2算出部27について説明する。第2算出部27は、後続列車2B毎に、先行列車2Aが次駅へ到着した場合に、後続列車2Bの次駅への到着目標時刻を第2到着目標時刻として算出する。第2算出部27による第2到着目標時刻の算出は、後続列車2Bが前駅に停車中または前駅と次駅との間を走行中である場合に行われる。
【0068】
図9は、実施の形態1にかかる運行管理装置の第2算出部による第2到着目標時刻の算出を説明するための図である。図9に示す例では、先行列車2AがB駅に到着しているため、先行列車2Aの遅延度合いがわかるため、第2算出部27は、先行列車2Aの遅延度合いに基づいて後続列車2Bの遅延が低減されるように第2到達目標時刻を算出する。
【0069】
例えば、第2算出部27は、記憶部12に記憶されたダイヤ情報30、列車情報32、および最小運転時隔情報33に基づき、下記式(1)を用いて、第2到達目標時刻を算出する。下記式(1)において、「T2」は、第2到達目標時刻であり、「t1」は、先行列車2Aの次駅への到着時刻であり、「t2」は、先行列車2Aの次駅での停車予定時間であり、「t3」は、最小運転時隔である。第2算出部27は、例えば、ダイヤ情報30に含まれる停車駅時間情報に基づいて、先行列車2Aの次駅での停車予定時間を算出する。
T2=t1+t2+t3 ・・・(1)
【0070】
第2算出部27によって第2到着目標時刻が算出された場合、運行管理装置10の通信部11から第2算出部27によって算出された第2到着目標時刻の情報が後続列車2Bへ送信される。後続列車2Bにおける車上装置50の処理部54は、運行管理装置10からの第2到着目標時刻の情報が通信部51で受信された場合、受信した第2到着目標時刻の情報に基づいて、第2到着目標時刻に応じたランカーブを決定する。
【0071】
処理部54は、列車2がA駅から出発する場合、第2到着目標時刻と、ランカーブCの走行時分とに基づいて、第2到着目標時刻に応じたランカーブを選択する。また、処理部54は、列車2がA駅とB駅との間を走行中である場合、第2到着目標時刻と、列車2のB駅までの距離と、各ランカーブCの走行時分とに基づいて、第2到着目標時刻に応じたランカーブを選択する。
【0072】
処理部54は、動作モードが選択モードに設定されている場合、通信部51で受信された第2到着目標時刻の情報に基づいて、記憶部53に記憶された複数のランカーブCのうち運行管理装置10で算出された第2到着目標時刻に応じたランカーブを選択する。また、処理部54は、動作モードが生成モードに設定されている場合、通信部51で受信された第2到着目標時刻の情報に基づいて、第2到着目標時刻に到着駅に到着するように列車2の速度が規定されるランカーブを生成する。
【0073】
制御部55は、制御モードが自動運転モードに設定されている場合、処理部54によって選択または生成されたランカーブに基づいて、列車2の走行速度を制御する。これにより、制御部55は、第1到着目標時刻に応じたランカーブに代えて、第2到着目標時刻に応じたランカーブに従った速度で列車2を走行させることができる。
【0074】
また、制御部55は、制御モードが手動運転モードに設定されている場合、処理部54によって選択または生成されたランカーブを表示部56に表示させることができる。列車2の運転手は、表示部56に表示されたランカーブに従って列車2を操作することで、第1到着目標時刻に応じたランカーブに代えて、第2到着目標時刻に応じたランカーブに従った速度で列車2を走行させることができる。
【0075】
次に、図2に示す算出部24の第3算出部28について説明する。第3算出部28は、先行列車2Aが次駅から出発した場合に、後続列車2Bの次駅への到着目標時刻を第3到着目標時刻として算出する。第3算出部28による第3到着目標時刻の算出は、後続列車2Bが前駅に停車中または前駅と次駅との間を走行中である場合に行われる。
【0076】
図10は、実施の形態1にかかる運行管理装置の第3算出部による第3到着目標時刻の算出を説明するための図である。図10に示す例では、後続列車2BがA駅とB駅との間を走行している状態で、先行列車2AがB駅から出発している。第3算出部28は、後続列車2Bの到着遅延が低減または解消されるように第3到着目標時刻を算出する。
【0077】
例えば、第3算出部28は、列車情報32および最小運転時隔情報33などに基づき、後続列車2BがB駅に進入できると予測される時刻である進入可能時刻を第3到着目標時刻として算出する。
【0078】
第3算出部28によって第3到着目標時刻が算出された場合、運行管理装置10の通信部11から第3算出部28によって算出された第3到着目標時刻の情報が後続列車2Bへ送信される。後続列車2Bにおける車上装置50の処理部54は、運行管理装置10からの第3到着目標時刻の情報が通信部51で受信された場合、受信した第3到着目標時刻の情報に基づいて、第3到着目標時刻に応じたランカーブを決定する。
【0079】
処理部54は、動作モードが選択モードに設定されている場合、通信部51で受信された第3到着目標時刻の情報に基づいて、記憶部53に記憶された複数のランカーブCのうち運行管理装置10で算出された第3到着目標時刻に応じたランカーブを選択する。例えば、処理部54は、列車2がA駅から出発する場合、第3到着目標時刻と、ランカーブCの走行時分とに基づいて、第3到着目標時刻に応じたランカーブを選択する。また、処理部54は、列車2がA駅とB駅との間を走行中である場合、第3到着目標時刻と、列車2のB駅までの距離と、各ランカーブCの走行時分とに基づいて、第3到着目標時刻に応じたランカーブを選択する。
【0080】
また、処理部54は、動作モードが生成モードに設定されている場合、通信部51で受信された第3到着目標時刻の情報に基づいて、第3到着目標時刻に到着駅に到着するように列車2の速度が規定されるランカーブを生成する。
【0081】
制御部55は、制御モードが自動運転モードに設定されている場合、処理部54によって選択または生成されたランカーブに基づいて、列車2の走行速度を制御する。これにより、制御部55は、第2到着目標時刻に応じたランカーブに代えて、第3到着目標時刻に応じたランカーブに従った速度で列車2を走行させることができる。
【0082】
また、制御部55は、制御モードが手動運転モードに設定されている場合、処理部54によって選択または生成されたランカーブを表示部56に表示させることができる。列車2の運転手は、表示部56に表示されたランカーブに従って列車2を操作することで、第2到着目標時刻に応じたランカーブに代えて、第3到着目標時刻に応じたランカーブに従った速度で列車2を走行させることができる。
【0083】
次に、図2に示す加速指示部25について説明する。加速指示部25は、図10に示すように、後続列車2BがA駅から出発する直前または後続列車2BがA駅とB駅との間を走行している状態において、先行列車2AがB駅から出発した場合、フル加速指示を後続列車2Bの車上装置50へ通信部11に送信させることができる。
【0084】
例えば、加速指示部25は、先行列車2AがB駅を出発してから、後続列車2BがB駅のホームに進入可能となったタイミングで、後続列車2Bへフル加速指示を通信部11に送信させる。後続列車2Bにおける車上装置50の処理部54は、運行管理装置10からのフル加速指示が通信部51で受信された場合、記憶部53に記憶された複数のランカーブのうち最も高速なランカーブを選択する。
【0085】
例えば、ランカーブ情報が図7に示す状態である場合、処理部54は、ランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3のうち最も高速なランカーブであるランカーブC2を選択する。制御部55は、制御モードが自動運転モードに設定されている場合、処理部54によって選択されたランカーブC2に基づいて、列車2の走行速度を制御する。これにより、後続列車2Bは、ブレーキ照査パターンによる減速を行うことなく、速度を上げて駅に進入することができる。このように、運行管理装置10は、後続列車2Bの遅延回復に寄与することができる。なお、運行管理装置10は、第3到着目標時刻情報およびフル加速指示のいずれか一方を選択的に車上装置50へ送信する。例えば、運行管理装置10は、列車2の種類に応じて第3到着目標時刻情報およびフル加速指示のいずれか一方を車上装置50へ送信する。
【0086】
ここで、運行管理装置10の処理部13によって算出される各到着目標時刻に基づく車上装置50の処理部54によるランカーブの選択について説明する。図11は、実施の形態1にかかる運行管理装置の処理部によって算出される第1到着目標時刻、第2到着目標時刻、および第3到着目標時刻の各々に基づいて車上装置の処理部により選択されるランカーブの一例を示す図である。
【0087】
図11に示す例では、後続列車2BがA駅を出発する際に、先行列車2AのB駅への到着遅延が発生している。そのため、A駅に停車している後続列車2Bの車上装置50へ運行管理装置10から第1到着目標時刻の情報が送信される。後続列車2Bにおける車上装置50の処理部54は、図11に示す例では、第1到着目標時刻に応じたランカーブとして最も低速である第n低速モードのランカーブC3を選択する。後続列車2Bの制御部55は、ランカーブC3に従った速度で後続列車2Bを走行させる。
【0088】
その後、A駅を出発した後続列車2BがランカーブC3に従った速度で走行中に先行列車2AがB駅へ到着したことが運行管理装置10で判定された場合、後続列車2Bの車上装置50へ運行管理装置10から第2到着目標時刻の情報が送信される。図11に示す例では、後続列車2Bが位置P1に在線中に第2到着目標時刻の情報が後続列車2Bの車上装置50へ送信される。
【0089】
後続列車2Bにおける車上装置50の処理部54は、第2到着目標時刻に応じたランカーブとして第n低速モードのランカーブC3よりも走行時分が短い第1低速モードのランカーブC3を選択する。後続列車2Bの制御部55は、ランカーブC3に従った速度で後続列車2Bを走行させる。
【0090】
複数のランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3は、図8に示すように、出発駅から位置P2までの区間は共通区間であり、かかるカーブ共通区間では共通の速度特性を有している。したがって、後続列車2Bが位置P2よりも前の位置P1に在線しているときに先行列車2AがB駅に到着した場合、処理部54で選択されるランカーブは、ランカーブC3からランカーブC3に切り替わるが、位置P1での速度はランカーブC3とランカーブC3とで変わらない。
【0091】
そのため、後続列車2BがA駅を出発した後に先行列車2AがB駅に到着した場合において、速度の切り替えがなく、さらに、処理部54においてランカーブの選択を容易に行うことができる。例えば、処理部54は、後続列車2BがA駅から位置P1へ移動するまでにかかった時間を各ランカーブの走行時分から減算することで、各ランカーブで列車2を走行させた場合の到着時刻を容易に算出することができ、ランカーブの選択を容易に行うことができる。なお、位置P2は、特定の位置の一例である。
【0092】
また、運行管理装置10は、先行列車2AがB駅へ到着すると先行列車2Aの遅延度合いを判定できることから、先行列車2Aの遅延度合いに応じた第2到着目標時刻を後続列車2Bの車上装置50へ送信する。これにより、運行管理装置10は、第1到着目標時刻で最も低速である第n低速モードのランカーブC3で走行している場合に後続列車2Bの遅延が拡大した場合でも、後続列車2Bの遅延を回復するように、後続列車2Bを走行させることができる。
【0093】
先行列車2AがB駅へ到着した後、後続列車2Bが位置P4に在線しているときに、先行列車2AがB駅から出発したことが運行管理装置10で判定された場合、運行管理装置10から第3到着目標時刻の情報またはフル加速指示が後続列車2Bの車上装置50へ送信される。後続列車2Bにおける車上装置50の処理部54は、第3到着目標時刻またはフル加速指示に応じたランカーブとして通常モードのランカーブC1よりも走行時分が短い回復モードのランカーブC2を選択する。これにより、車上装置50は、後続列車2Bの遅延がさらに回復するように、後続列車2Bを走行させることができる。
【0094】
このように、車上装置50は、通常モードのランカーブC1よりも走行時分が短い回復モードのランカーブC2で走行することができることから、回復モードのランカーブC2がない場合に比べて、遅延がさらに回復するように走行することができる。
【0095】
図11では、後続列車2BがA駅を出発する前に先行列車2AのB駅への到着遅延が発生した場合の例が示されるが、以下においては、後続列車2BがA駅を出発した後に、先行列車2Aの遅延が発生した場合の例を説明する。図12は、実施の形態1にかかる運行管理装置の処理部によって算出される第1到着目標時刻、第2到着目標時刻、および第3到着目標時刻の各々に基づいて車上装置の処理部により選択されるランカーブの他の例を示す図である。
【0096】
図12に示す例では、後続列車2BがA駅を出発するまでは、先行列車2AのB駅への到着遅延が発生していない。そのため、後続列車2Bにおける車上装置50の処理部54は、後続列車2BがA駅を発車する際に、記憶部53に記憶された複数のランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3のうち通常モードのランカーブC2を選択する。
【0097】
なお、運行管理装置10の算出部24は、先行列車2AのB駅への到着遅延が発生していない場合においても、後続列車2BのB駅への到着目標時刻を算出することができる。この場合、算出部24は、例えば、記憶部12に記憶されたダイヤ情報30および列車情報32に基づいて、後続列車2BのB駅への到着目標時刻を算出する。かかる到着目標時刻は通信部11から後続列車2Bの車上装置50へ送信される。後続列車2Bにおける車上装置50の処理部54は、運行管理装置10から送信される到着目標時刻に基づいて、通常モードのランカーブC2を選択する。
【0098】
図12に示す例では、後続列車2BがA駅を出発した後、位置P1に在線しているときに、先行列車2AのB駅への到着遅延が発生したことが運行管理装置10で判定された場合、運行管理装置10から第1到着目標時刻の情報が後続列車2Bの車上装置50へ送信される。そして、後続列車2Bにおける車上装置50の処理部54は、第1到着目標時刻に応じたランカーブとして最も低速である第n低速モードのランカーブC3を選択する。
【0099】
上述したように、複数のランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3は、図8に示すように、出発駅から位置P2までの区間は共通の速度特性を有している。したがって、後続列車2Bが位置P2よりも前の位置P1に在線しているときに先行列車2AのB駅への到着遅延が発生した場合、処理部54で選択されるランカーブは、ランカーブC1からランカーブC3に切り替わるが、位置P1での速度はランカーブC1とランカーブC3とで変わらない。
【0100】
そのため、後続列車2BがA駅を出発した後に先行列車2AのB駅への到着遅延が発生した場合において、速度の切り替えがなく、さらに、処理部54においてランカーブの選択を容易に行うことができる。例えば、処理部54は、後続列車2BがA駅から位置P1へ移動するまでにかかった時間を各ランカーブの走行時分から減算することで、各ランカーブで列車2を走行させた場合の到着時刻を容易に算出することができ、ランカーブの選択を容易に行うことができる。
【0101】
先行列車2AのB駅への到着遅延が発生した後、後続列車2Bが位置P3に在線しているときに、先行列車2AがB駅へ到着したことが運行管理装置10で判定された場合、運行管理装置10から第2到着目標時刻の情報が後続列車2Bの車上装置50へ送信される。後続列車2Bにおける車上装置50の処理部54は、第2到着目標時刻に応じたランカーブとして第n低速モードのランカーブC3よりも走行時分が短い第1低速モードのランカーブC3を選択する。
【0102】
このように、運行管理装置10は、先行列車2AがB駅へ到着すると先行列車2Aの遅延度合いを判定できることから、先行列車2Aの遅延度合いに応じた第2到着目標時刻を後続列車2Bの車上装置50へ送信する。これにより、運行管理装置10は、第1到着目標時刻で最も低速である第n低速モードのランカーブC3で走行している場合に後続列車2Bの遅延が拡大した場合でも、後続列車2Bの遅延を回復するように、後続列車2Bを走行させることができる。
【0103】
先行列車2AがB駅へ到着した後、後続列車2Bが位置P4に在線しているときに、先行列車2AがB駅から出発したことが運行管理装置10で判定された場合、運行管理装置10から第3到着目標時刻の情報またはフル加速指示が後続列車2Bの車上装置50へ送信される。後続列車2Bにおける車上装置50の処理部54は、第3到着目標時刻またはフル加速指示に応じたランカーブとして通常モードのランカーブC1よりも走行時分が短い回復モードのランカーブC2を選択する。これにより、後続列車2Bの遅延がさらに回復するように、後続列車2Bを走行させることができる。
【0104】
このように、車上装置50は、通常モードのランカーブC1よりも走行時分が短い回復モードのランカーブC2で走行することができることから、回復モードのランカーブC2がない場合に比べて、遅延をさらに回復するように走行することができる。
【0105】
つづいて、フローチャートを用いて運行管理装置10の処理部13による処理を説明する。図13は、実施の形態1にかかる運行管理装置の処理部による処理の一例を示すフローチャートである。処理部13は、図13に示す処理を予め定められた周期で実行する。
【0106】
図13に示すように、運行管理装置10の処理部13は、複数の列車2のうち未選択の1つの列車2を選択し(ステップS10)、選択した列車2の位置情報を取得する(ステップS11)。
【0107】
次に、処理部13は、ステップS10で選択した列車に遅延が発生しているか否かを判定する(ステップS12)。処理部13は、ステップS10で選択した列車に遅延が発生していると判定した場合(ステップS12:Yes)、選択した列車2の後続列車2Bを到着時刻調整の対象列車に決定する(ステップS13)。そして、処理部13は、ステップS13で決定した対象列車の到着目標時刻が算出処理中であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0108】
処理部13は、対象列車の到着目標時刻が算出処理中ではないと判定した場合(ステップS14:No)、対象列車の到着目標時刻の算出処理を開始する(ステップS15)。かかる算出処理は、図14に示すステップS20〜S30の処理であり、後で詳述する。
【0109】
処理部13は、ステップS15の処理が終了した場合、ステップS10で選択した列車に遅延が発生していないと判定した場合(ステップS12:No)、または対象列車について到着目標時刻が算出処理中であると判定した場合(ステップS14:Yes)、ステップS10で未選択の列車2があるか否かを判定する(ステップS16)。処理部13は、未選択の列車2があると判定した場合(ステップS16:Yes)、処理をステップS10に移行する。処理部13は、未選択の列車2がないと判定した場合(ステップS16:No)、図13に示す処理を終了する。
【0110】
図14は、実施の形態1にかかる運行管理装置の処理部による到着目標時刻の算出処理の一例を示すフローチャートである。図14に示すように、処理部13は、対象列車に先行する列車2である先行列車2Aの位置情報を取得する(ステップS20)。
【0111】
次に、処理部13は、先行列車2Aが次駅を出発済であるか否かを判定する(ステップS21)。処理部13は、先行列車2Aが次駅を出発済ではないと判定した場合(ステップS21:No)、対象列車が前駅を出発する直前または前駅から出発済であるか否かを判定する(ステップS22)。処理部13は、対象列車が出発の直前でもなく対象列車が出発済でもないと判定した場合(ステップS22:No)、処理をステップS20へ移行する。
【0112】
処理部13は、対象列車が前駅を出発する直前または前駅から出発済であると判定した場合(ステップS22:Yes)、先行列車2Aが次駅に到着済であるか否かを判定する(ステップS23)。処理部13は、先行列車2Aが次駅に到着済でないと判定した場合(ステップS23:No)、先行列車2Aに次駅への一定の到着遅延があるとみなして対象列車の次駅への到着目標時刻を第1到着目標時刻として算出し、算出した第1到着目標時刻の情報を対象列車へ通信部11に送信させる(ステップS24)。
【0113】
次に、処理部13は、先行列車2Aの位置情報を取得し(ステップS25)、先行列車2Aが次駅に到着したか否かを判定する(ステップS26)。処理部13は、先行列車2Aが次駅に到着していないと判定した場合(ステップS26:No)、処理をステップS25に移行する。
【0114】
処理部13は、先行列車2Aが次駅に到着していると判定した場合(ステップS26:Yes)、または先行列車2Aが次駅に到着済であると判定した場合(ステップS23:Yes)、対象列車の次駅への到着目標時刻を第2到着目標時刻として算出し、算出した第2到着目標時刻の情報を通信部11に送信させる(ステップS27)。
【0115】
次に、処理部13は、先行列車2Aの位置情報を取得し(ステップS28)、先行列車2Aが次駅を出発し且つ対象列車が次駅に進入可能であるか否かを判定する(ステップS29)。処理部13は、先行列車2Aが次駅を出発していないまたは対象列車が次駅に進入可能ではないと判定した場合(ステップS29:No)、処理をステップS28に移行する。
【0116】
処理部13は、先行列車2Aが次駅を出発し且つ対象列車が次駅に進入可能であると判定した場合(ステップS29:Yes)、対象列車の次駅への到着目標時刻を第3到着目標時刻として算出し、第3到着目標時刻の情報を通信部11に送信させる(ステップS30)。処理部13は、ステップS30の処理を終了した場合、または、先行列車2Aが次駅を出発済であると判定した場合(ステップS21:Yes)、図14に示す処理を終了する。
【0117】
図15は、実施の形態1にかかる運行管理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図15に示すように、運行管理装置10は、プロセッサ101と、メモリ102と、通信装置103と、バス104とを備えるコンピュータを含む。
【0118】
プロセッサ101、メモリ102、および通信装置103は、例えば、バス104によって互いに情報の送受信が可能である。記憶部12は、メモリ102によって実現される。通信部11は、通信装置103で実現される。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、処理部13の機能を実行する。プロセッサ101は、例えば、処理回路の一例であり、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、およびシステムLSI(Large Scale Integration)のうち一つ以上を含む。
【0119】
メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、およびEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)のうち一つ以上を含む。また、メモリ102は、コンピュータが読み取り可能なプログラムが記録された記録媒体を含む。かかる記録媒体は、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルメモリ、光ディスク、コンパクトディスク、およびDVD(Digital Versatile Disc)のうち一つ以上を含む。なお、運行管理装置10は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を含んでいてもよい。
【0120】
運行管理装置10は、2以上の装置で構成されてもよい。運行管理装置10が2以上の装置で構成される場合、2以上の装置の各々は、例えば、図15に示すハードウェア構成を有する。なお、2以上の装置間の通信は、通信装置103を介して行われる。また、運行管理装置10は、2以上のサーバ装置で構成されてもよい。例えば、運行管理装置10は、処理サーバと、データサーバとで構成されてもよい。
【0121】
以上のように、実施の形態1にかかる鉄道システム100は、複数の列車2と、運行管理装置10とを備える。運行管理装置10は、複数の列車2のうち少なくとも1つの列車2を対象列車として対象列車の運行を管理する。運行管理装置10は、算出部24と、通信部11とを備える。算出部24は、複数の列車2のうち対象列車の前を走行する列車である先行列車2Aの次駅への到着遅延が発生した場合に、対象列車の次駅への到着目標時刻を再度算出し、先行列車2Aが次駅に到着した場合に、対象列車の次駅への到着目標時刻を算出する。通信部11は、算出部24によって算出された到着目標時刻の情報を対象列車へ送信する。このように、運行管理装置10は、次駅への到着遅延が生じた先行列車2Aの遅延度合いが把握できない状態で到達目標時刻を算出することで後続列車2Bが駅間で停車することを抑制することができる。そして、運行管理装置10は、その後、先行列車2Aが次駅に到着して先行列車2Aの遅延度合いが把握できた場合に、到達目標時刻を算出し直す。これにより、鉄道システム100は、駅間で対象列車が停車しないようにしつつも後続列車2Bの次駅への到着遅延を抑制することができ、先行列車2Aの次駅への到着遅延が生じた場合においても後続列車2Bの次駅への到着遅延を抑制することができる。
【0122】
また、算出部24は、先行列車2Aが次駅を出発した場合に、対象列車の次駅への到着目標時刻を算出する。これにより、鉄道システム100は、後続列車2Bの遅延回復に寄与することができる。
【0123】
また、算出部24は、先行列車2Aが次駅に到着した場合に、先行列車2Aの次駅への到着時刻、先行列車2Aの次駅での停車予定時間、および次駅に予め定められた列車2の発着時隔に基づいて、到着目標時刻を算出する。鉄道システム100は、後続列車2Bの次駅への到着遅延を抑制することができる。
【0124】
また、算出部24は、先行列車2Aの次駅への到着遅延が発生した場合に、先行列車2Aの次駅への到着遅延の度合いと無関係に先行列車2Aの次駅への到着遅延が予め定められた遅延であるものとみなして到着目標時刻を算出する。これにより、鉄道システム100は、次駅への到着遅延が生じた先行列車2Aの遅延度合いが把握できない状態であっても、後続列車2Bが駅間で停車することを抑制することができる。
【0125】
また、算出部24は、到着目標時刻の算出を対象列車の走行中に行う。これにより、鉄道システム100は、対象列車の走行中に先行列車2Aの次駅への到着遅延が生じた場合においても後続列車の次駅への到着遅延を抑制することができる。
【0126】
また、算出部24は、先行列車2Aの次駅への到着遅延が発生した場合における到着目標時刻の算出を対象列車が次駅の前の駅に停車中に行う。これにより、鉄道システム100は、対象列車が前駅で停車中に先行列車2Aの次駅への到着遅延が生じた場合においても後続列車2Bの次駅への到着遅延を抑制することができる。
【0127】
また、複数の列車2の各々は、通信部51と、処理部54とを備える。通信部51は、運行管理装置10から到着目標時刻を受信する。処理部54は、次駅の1つ前の駅である前駅から次駅までの走行速度の変化を規定するランカーブであって通信部51で受信された到着目標時刻に応じたランカーブを決定する。これにより、鉄道システム100の各列車2は、到着目標時刻に応じたランカーブを用いた走行が可能となり、鉄道システム100は、先行列車2Aの次駅への到着遅延が生じた場合においても後続列車2Bの次駅への到着遅延を抑制することができる。
【0128】
また、複数の列車2の各々は、前駅から次駅までの走行速度を各々規定する複数のランカーブの情報を記憶する記憶部53を備える。処理部54は、通信部51で受信された到着目標時刻に基づいて、複数のランカーブのうち1つのランカーブを到着目標時刻に応じたランカーブとして決定する。これにより、鉄道システム100では、ランカーブの決定を容易に行うことができる。
【0129】
また、複数のランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3は、前駅である出発駅から特定の位置である位置P2までのカーブが共通である。これにより、鉄道システム100では、列車2における速度の切り替えを抑制でき、さらに、処理部54においてランカーブの選択を容易に行うことができる。
【0130】
また、複数のランカーブは、先行列車2Aの次駅への到着遅延がない場合に用いられるランカーブC1と、先行列車2Aの次駅への到着遅延がある場合に用いられ、ランカーブC1よりも走行時分が長い複数のランカーブC3,C3,・・・,C3と、先行列車2Aの次駅への到着遅延がある場合に用いられるランカーブC1よりも走行時分が短いランカーブC2とを含む。ランカーブC1は、第1ランカーブの一例であり、ランカーブC3,C3,・・・,C3は、第2ランカーブの一例であり、ランカーブC2は、第3ランカーブの一例である。これにより、鉄道システム100は、駅間で対象列車が停車しないようにしつつも後続列車2Bの次駅への到着遅延を精度よく抑制することができ、先行列車2Aの次駅への到着遅延が生じた場合においても後続列車2Bの次駅への到着遅延を精度よく抑制することができる。
【0131】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる鉄道システムは、車上装置の記憶部に記憶されるランカーブ情報が実施の形態1にかかる鉄道システムと異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の鉄道システム100と異なる点を中心に説明する。
【0132】
図16は、実施の形態2にかかる鉄道システムの構成の一例を示す図である。実施の形態2にかかる鉄道システム100Aは、複数の列車2〜2に代えて、複数の列車2C〜2Cを備える点で、鉄道システム100と異なる。複数の列車2C〜2Cは、車上装置50に代えて車上装置50Aを備える点で、複数の列車2〜2と異なる。以下、列車2C〜2Cの各々を個別に区別せずに示す場合、列車2Cと記載する。
【0133】
図17は、実施の形態2にかかる列車が有する車上装置の構成の一例を示す図である。図17に示すように、車上装置50Aは、記憶部53に記憶される複数のランカーブの情報と異なる複数のランカーブの情報を記憶する記憶部53Aを備える点で、車上装置50と異なる。
【0134】
図18は、実施の形態2にかかる複数のランカーブの一例を示す図である。図19は、実施の形態2にかかる複数のランカーブの他の例を示す図である。なお、図18および図19に示す例では、通常モードのランカーブC1と、回復モードのランカーブC2と、低速モードのランカーブC3,C3,・・・,C3とが示されており、これらのランカーブは、記憶部53Aに記憶されている。
【0135】
図18に示す低速モードのランカーブC3,C3,・・・,C3は、図8に示す低速モードのランカーブC3,C3,・・・,C3に比べて、最高速度が低く抑えられている。列車2〜2,2C〜2Cは、同じ距離を走行する場合であっても、速度が早いほど消費する電力量である消費電力量が大きくなる。そのため、列車2C〜2Cは、列車2〜2に比べ、低速モードで走行する場合において、消費電力量を低減することができる。
【0136】
図18に示す低速モードのランカーブC3,C3,・・・,C3では、出発駅から互いに共通の加速区間に続いて同一速度が継続する区間である等速区間を有し、かかる等速区間の長さが互いに異なる。そして、低速モードのランカーブC3,C3,・・・,C3は、等速区間の長さに応じて走行時分が異なる。このように、実施の形態2にかかる鉄道システム100Aでは、低速モードのランカーブにおいて等速区間の長さを調整することで、さまざまな走行時分のランカーブを用意している。
【0137】
図18に示す通常モードのランカーブC1と低速モードのランカーブC3,C3,・・・,C3とは、等速区間の速度が互いに異なるが、出発駅から位置P10までフル加速を行う区間である加速区間を第1ランカーブ切替推奨区間として共に有している。したがって、列車2C〜2Cにおいて、低速のランカーブC3,C3,・・・,C3のいずれかから通常モードのランカーブC1に切り替える場合、第1ランカーブ切替推奨区間に到着目標時刻を更新できれば、ランカーブの切り替えに伴う加減速は発生しない。
【0138】
また、図18に示す低速モードのランカーブC3,C3,・・・,C3とは、等速区間の長さが互いに異なるが、出発駅から位置P11までの区間を第2ランカーブ切替推奨区間として共に有している。したがって、列車2C〜2Cにおいて、低速のランカーブC3,C3,・・・,C3のいずれか1つのランカーブから他の1つのランカーブに切り替える場合、第2ランカーブ切替推奨区間に到着目標時刻を更新できれば、ランカーブの切り替えに伴う加減速は発生しないため、ランカーブの切り替えに伴う加減速による消費電力量の増加が発生しない。
【0139】
このように、鉄道システム100Aでは、列車2C〜2Cが低速モードのランカーブに従って走行する場合に、第2ランカーブ切替推奨区間において、目標とする走行時分を満たしつつもランカーブの切り替えに伴う加減速を必要としない。そのため、鉄道システム100Aでは、目標とする走行時分を満たしつつも、遅延の回復と省エネルギー化とを図ることができる。
【0140】
ところで、出発駅から一定区間だけでなく、到着駅までの一定区間においても、速度調整が重要である。車上装置50Aの処理部54では、車上装置50の処理部54と同様に、最小運転時隔情報33に含まれる最小運転時隔を用いて、第2到達目標時刻を算出するが、最小運転時隔は、駅進入速度によって変化する。
【0141】
例えば、先行列車2Aが次駅から出発した後に後続列車2Bが次駅へ進入可能となるが、後続列車2Bの次駅への進入速度が極端に低い場合、次駅へ到着するまでに時間がかかりすぎて、最小運転時隔が大幅に延びる。複数のランカーブには、最小運転時隔が大きいものと小さいものとが含まれる。
【0142】
一方で、運行管理装置10の算出部24が到着目標時刻を算出する際には、図3に示すように、駅間ごとに1つしか設定されていない最小運転時隔を用いる。そのため、到着目標時刻を算出した際に用いられた最小運転時隔と、選択したランカーブの最小運転時隔に大きなずれが生じ、精度の高い運行が実現できない場合がある。そこで、車上装置50Aでは、ランカーブごとの最小運転時隔に大きな差が現われないように、図19に示す複数のランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3を記憶部53Aに記憶することもできる。
【0143】
図19に示すランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3は、出発駅から位置P20までの区間が互いに同じ速度特性を有しており、かかる区間がランカーブ切替推奨区間に設定される。運行管理装置10においてランカーブ切替推奨区間に到着目標時刻を更新できれば、列車2A〜2Aにおいてランカーブの切り替えに伴う加減速は発生しない。
【0144】
また、図19に示すランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3では、到着駅への進入速度が大きく変わらないように、駅到着への進入区間である駅進入区間の速度特性が調整されている。図19に示すランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3では、駅進入区間における列車2の速度が、発着間隔を示す最小運転時隔が最も小さくなるランカーブの駅進入速度を中心付近とする予め定められた範囲内に収められており、これにより、図19に示すランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3は、図7および図18に示すランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3に比べて、互いの最小運転時隔の差を縮めることができる。
【0145】
このように、図19に示すランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3では、図7および図18に示すランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3に比べて、互いの最小運転時隔の差を縮めることができる。そのため、鉄道システム100Aでは、到着目標時刻の算出に使用する最小運転時隔と、選択するランカーブの最小運転時隔に大きな差が発生せず、精度の高い運行を支援することができる。
【0146】
図19に示す例では、走行時分が長いランカーブにおける駅進入区間での速度は、一定速度である。これにより、鉄道システム100Aでは、互いの最小運転時隔の差を容易に縮めることができる。なお、ランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3は、駅進入区間における速度が同一であってもよい。この場合、鉄道システム100Aでは、互いの最小運転時隔の差を排除することができる。
【0147】
以上のように、実施の形態2にかかる鉄道システム100Aでは、低速モードのランカーブC3,C3,・・・,C3では、出発駅から互いに共通の加速区間に続いて同一速度が継続する区間である等速区間を有し、かかる等速区間の長さが互いに異なる。これにより、鉄道システム100Aでは、ランカーブC3,C3,・・・,C3の切り替えに伴う加減速による消費電力量の増加を抑制することができる。
【0148】
また、鉄道システム100Aでは、数のランカーブC1,C2,C3,C3,・・・,C3は、次駅への進入区間において、速度が、到着駅への発着間隔を示す最小運転時隔が最も小さくなるランカーブの駅進入速度を中心付近とする予め定められた範囲内に設定される。これにより、鉄道システム100Aでは、列車2Cで選択されるランカーブの最小運転時隔に大きな差が発生せず、精度の高い運行を支援することができる。
【0149】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0150】
2,2〜2,2C,2C〜2C 列車、2A 先行列車、2B 後続列車、3 無線装置、4 地上制御装置、5 連動制御装置、6,7 ネットワーク、10 運行管理装置、11,51 通信部、12,53,53A 記憶部、13,54 処理部、20 情報取得部、21 進路制御部、22 遅延判定部、23 発着判定部、24 算出部、25 加速指示部、26 第1算出部、27 第2算出部、28 第3算出部、30 ダイヤ情報、31 経路情報、32 列車情報、33 最小運転時隔情報、50,50A 車上装置、52 検出部、55 制御部、56 表示部、100,100A 鉄道システム、101 プロセッサ、102 メモリ、103 通信装置、104 バス。
【要約】
鉄道システムは、複数の列車と、運行管理装置(10)とを備える。運行管理装置(10)は、複数の列車のうち少なくとも1つの列車を対象列車として対象列車の運行を管理する。運行管理装置(10)は、算出部(24)と、通信部(11)とを備える。算出部(24)は、複数の列車のうち対象列車の前を走行する列車である先行列車の次駅への到着遅延が発生した場合に、対象列車の次駅への到着目標時刻を算出し、先行列車が次駅に到着した場合に、対象列車の次駅への到着目標時刻を算出する。通信部(11)は、算出部(24)によって算出された到着目標時刻の情報を対象列車へ送信する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19