(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接着シートを幅50mm長さ150mmの試験片とし、得られた試験片の接着剤層を、温度23℃、相対湿度50%の条件下で無アルカリガラスに重ね、さらに60℃に加温した圧着ロールを用いて0.5MPaの圧力を加えた場合、前記接着剤層の無アルカリガラスからの浮きが無いものである、請求項1〜5のいずれかに記載のデバイス用接着シート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のデバイス用接着シートは、下記(A)成分及び(B)成分を含有する硬化性接着剤層を有し、(A)成分の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して3.0質量%以上のものである。
(A)成分:25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物
(B)成分:変性ポリフェニレンエーテル樹脂
【0016】
〔(A)成分:25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物〕
本発明のデバイス用接着シートを構成する硬化性接着剤層は、(A)成分として、25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物(以下、「硬化性化合物(A)」と記載することがある。)を含有する。
【0017】
「25℃で液体」とは、25℃において流動性を有することを意味する。硬化性化合物(A)は、E型粘度計を用いて、25℃、1.0rpmにて測定した粘度が、2〜10000mPa・sであることが好ましい。
【0018】
後述するように、硬化性接着剤層は変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する。変性ポリフェニレンエーテル樹脂は比較的剛直な分子構造を有するため、変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する硬化性接着剤層は貼付適性に劣る傾向がある。
この点、25℃で液体の化合物である硬化性化合物(A)を硬化性接着剤層に含ませることで、硬化性接着剤層のタック性や接着性を効率よく改善することができ、過度に加熱しなくても被接着物との接着を行うことができる硬化性接着剤層を得ることができる。
【0019】
硬化性化合物(A)は、非芳香族の化合物である。「非芳香族の化合物」とは、分子内に芳香族構造を有しない化合物をいう。硬化性化合物(A)が非芳香族の化合物であることで、低誘電特性を有する硬化物が形成され易くなる。
【0020】
硬化性化合物(A)は、硬化性の化合物である。「硬化性の化合物」とは、反応性基を有し、高分子量化や架橋構造の形成により、硬化性接着剤層を硬化物に変化させる化合物をいう。硬化性接着剤層が、硬化性の化合物を含有することで、接着強度に優れる硬化物を形成することができる。
【0021】
硬化性化合物(A)の分子量は、通常100〜5,000、好ましくは200〜3,000である。
分子量が100以上であることで、硬化性接着剤層を形成する際の乾燥工程等において、硬化性化合物(A)が揮発するのを抑制することができる。
分子量が
5,000以下であることで、25℃で液体という要件を満たし易くなる。
【0022】
硬化性化合物(A)の含有量は、硬化性接着剤層全体に対して3.0質量%以上であり、好ましくは5.0〜30質量%、より好ましくは6.0〜20質量%である。硬化性化合物(A)の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して3.0質量%以上であることで、高周波領域での低誘電特性を有する硬化物を与え、かつ、貼付適性に優れる硬化性接着剤層が形成される。また、硬化性化合物(A)の含有量が、6.0〜20質量%であれば、難接着性基材等に対しても、十分な接着力を有する硬化物を形成し易くなる。
【0023】
硬化性化合物(A)としては、脂環式多官能エポキシ化合物〔硬化性化合物(Aα)〕や、末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ以上有する化合物〔硬化性化合物(Aβ)〕が挙げられる。これらの中でも、エポキシ基の重合に由来する官能基よりも、二重結合を有する炭化水素基に由来する官能基のほうが誘電特性を上昇させにくく、低誘電特性に優れる硬化物が得られ易いという観点から、末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ以上有する化合物〔硬化性化合物(Aβ)〕が好ましい。
【0024】
硬化性化合物(Aα)は、分子内に脂環式骨格を有し、さらに、分子内にエポキシ基を2つ以上有する化合物である。
本明細書において、エポキシ基には、グリシジル基、グリシジルエーテル基、エポキシシクロヘキシル基等のオキシラン構造を有する基が含まれる。
【0025】
硬化性化合物(Aα)は、分子内に脂環式骨格を有することから、硬化性化合物(Aα)を用いることで、高周波領域での低誘電特性を有する硬化物を与える硬化性接着剤層が得られ易くなる。
硬化性化合物(Aα)は、分子内にエポキシ基を2つ以上有することから、接着強度により優れる硬化物を与える硬化性接着剤層が得られ易くなる。硬化性化合物(Aα)が分子内に有するエポキシ基の数は、2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。硬化性化合物(Aα)が、エポキシ基を2つ有する脂環式エポキシ化合物であることで、硬化性を発揮しつつ、硬化性化合物(Aα)の配合量が多い場合であっても、硬化性接着剤層の硬化収縮を抑えることができる。そのため、例えば、デバイス用接着シートを回路基板等の板状部材の接着に用いた場合に、板状部材の反りを低減することができる。
【0026】
硬化性化合物(Aα)のエポキシ当量は、好ましくは50〜1000g/eq、より好ましくは100〜800g/eqである。
エポキシ当量が上記範囲にある硬化性化合物(Aα)を含有する硬化性接着剤層を硬化させることで、接着強度により優れる硬化物をより効率よく形成することができる。
本発明におけるエポキシ当量とは、分子量をエポキシ基数で除した値を意味する。
【0027】
硬化性化合物(Aα)としては、脂環式構造を少なくとも1以上有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化物や、シクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物等のシクロアルケンオキサイド化合物が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、熱カチオン重合開始剤と組み合わせて用いる場合は、硬化性化合物(Aα)としては、脂環式多官能ジグリシジルエーテル化合物が好ましい。
シクロヘキセンオキサイドのような反応性が高いエポキシ化合物を用いた場合、硬化性接着剤層の形成工程中に硬化反応が進行し、貼付適性に劣る硬化性接着剤層が形成されるおそれがある。
一方、脂環式多官能ジグリシジルエーテル化合物は反応性が高くないため、熱カチオン重合開始剤と組み合わせて用いても、硬化性接着剤層の形成工程中に硬化反応が進行するのが抑制される。
【0029】
硬化性化合物(Aα)の代表的な化合物としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、プロパン−2,2−ジイル−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−2−エポキシエチルシクロヘキサン、α−ピネンオキシド、リモネンジオキシド等が挙げられる。
【0030】
また、硬化性化合物(Aα)として、市販品を用いることもできる。市販品としては、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2000、セロキサイド8010(以上、ダイセル社製);エポライト4000(共栄社化学社製);YX8000、YX8034(以上、三菱ケミカル社製);アデカレジンEP−4088S、アデカレジンEP−4088L、アデカレジンEP−4080E(以上、ADEKA社製);等が挙げられる。
【0031】
硬化性化合物(Aα)は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
硬化性化合物(Aβ)は、末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ以上有する化合物である。
硬化性化合物(Aβ)は、末端に二重結合を有する炭化水素基を2つ以上有することから、接着強度により優れる硬化物を与える硬化性接着剤層が得られ易くなる。
【0033】
末端に二重結合を有する炭化水素基の炭素数は、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜5である。
末端に二重結合を有する炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基、イソプロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基等が挙げられる。これらの中でも、アリル基が好ましい。
【0034】
硬化性化合物(Aβ)に含まれる、末端に二重結合を有する炭化水素基の数は2つ以上である。末端に二重結合を有する炭化水素基の数が2つ以上であることで、硬化物中に架橋構造が形成され、接着強度や耐熱性により優れる硬化物を形成することができる。
また、硬化物中に形成される架橋構造が適度に疎らであることで、硬化性接着剤層の硬化物のクラックの発生が抑制される観点から、末端に二重結合を有する炭化水素基の数は、好ましくは2〜4であり、硬化性を発揮しつつ、硬化性化合物(Aβ)の配合量が多い場合であっても、硬化性接着剤層の硬化収縮を抑えることができ、デバイス用接着シートを回路基板等の板状部材の接着に用いた場合に、板状部材の反りを低減することができる観点から、より好ましくは2である。二重結合を有する炭化水素基を重合した場合、重合前のモノマー間の距離(すなわちVan der Waals距離で示される二重結合間の距離)が、重合により、繰り返し単位間の距離(ポリマー中の共有結合の距離)に短くなるため、末端に二重結合を有する炭化水素基の数が多いほど、硬化性接着剤層の硬化収縮が大きくなる傾向がある。硬化性化合物(Aβ)に含まれる、末端に二重結合を有する炭化水素基の数を2とすることで、硬化収縮を効率的に抑制することが可能である。
【0035】
硬化性化合物(Aβ)は複素環骨格を有することが好ましい。硬化性化合物(Aβ)が複素環骨格を有することで、接着強度及び低誘電特性により優れる硬化物を与える硬化性接着剤層が得られ易くなる。
複素環骨格としては、イソシアヌレート骨格やグリコールウリル骨格が挙げられる。
【0036】
イソシアヌレート骨格を有する硬化性化合物(Aβ)としては、下記式(1)又は(2)で表される化合物が挙げられる。
【0039】
式(1)中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表し、R
3は、炭素数1〜15の飽和炭化水素基、炭素数
2〜15の、アルコキシ基置換アルキル基を表す。
式(2)中、R
4〜R
6は、それぞれ独立に、末端に二重結合を有する炭化水素基を表す。
【0040】
R
1、R
2、R
4、R
5、R
6で表される末端に二重結合を有する炭化水素基は先に説明したとおりである。
【0041】
R
3で表される飽和炭化水素基の炭素数は、1〜15であり、5〜15が好ましく、8〜15がより好ましい。R
3で表される飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基等が挙げられる。
【0042】
R
3で表されるアルコキシ基置換アルキル基の炭素数は、2〜15であり、2〜12が好ましく、3〜10がより好ましい。
R3で表されるアルコキシ基置換アルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基等が挙げられる。
【0043】
グリコールウリル骨格を有する硬化性化合物(Aβ)としては、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
式(3)中、R
7〜R
10は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の炭化水素基を表し、これらの少なくとも2つは、末端に二重結合を有する炭化水素基である。R
11、R
12は、水素原子又は炭素数1〜15の飽和炭化水素基を表す。
【0046】
これらの中でも、適度な架橋密度の硬化物が得られ易いことから、硬化性化合物(Aβ)としては、イソシアヌレート骨格を有する化合物が好ましく、式(1)で表される化合物がより好ましい。特に、低誘電特性により優れる硬化物を与える硬化性接着剤層が得られ易いことから、下記式で表される化合物が好ましい。
【0048】
式中、Rは、炭素数5〜15の飽和炭化水素基を表し、炭素数8〜15の飽和炭化水素基が好ましい。
【0049】
硬化性化合物(Aβ)としては、市販品を用いることができる。
例えば、式(1)で表される化合物としては、L−DAIC(四国化成工業社製)が挙げられる。式(2)で表される化合物としては、TAIC(三菱ケミカル社製)が挙げられる。式(3)で表される化合物としてはTA−G(四国化成工業社製)が挙げられる。
硬化性化合物(Aβ)の沸点は、好ましくは175〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。また、硬化性化合物(Aβ)の5%重量減少温度は、好ましくは175〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
【0050】
硬化性化合物(Aβ)は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
硬化性接着剤層には、硬化性化合物(A)以外の25℃で液体である硬化性化合物、すなわち、25℃で液体である芳香族の硬化性化合物が含まれていてもよいが、硬化性接着剤層の硬化物の誘電率および誘電正接をより低下させるためには、その使用量を低減することが好ましい。このような観点から、硬化性接着剤層に含まれる25℃で液体である硬化性化合物の質量に占める、硬化性化合物(A)の質量の割合が、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0052】
〔(B)成分:変性ポリフェニレンエーテル樹脂〕
本発明のデバイス用接着シートを構成する硬化性接着剤層は、(B)成分として、変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する。
変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、前駆体としてのポリフェニレンエーテル樹脂に、変性剤を用いて変性処理を施して得られる、反応性基が導入されたポリフェニレンエーテル樹脂である。
【0053】
ポリフェニレンエーテル樹脂とは、主鎖にポリフェニレンエーテル骨格を有する樹脂をいう。
ポリフェニレンエーテル骨格とは、下記式
【0055】
で表される繰り返し単位、又は、上記式中の水素原子が置換されてなる繰り返し単位を有する骨格をいう。
【0056】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂はポリフェニレンエーテル骨格を有することから、変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する硬化性接着剤層の硬化物は低誘電特性を有する。
また、変性ポリフェニレンエーテル樹脂は反応性基を有することから、変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する硬化性接着剤層の硬化物は接着強度及び耐熱性に優れる。
【0057】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂中のポリフェニレンエーテル骨格としては、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
【0059】
式(4)中、Xは、下記式(5)又は式(6)で表される2価の基であり、Yは、それぞれ独立して、下記式(7)で表される2価の基であり、a及びbは、0〜100の整数であり、aとbの少なくともいずれか一方が1以上である。*は結合手を表す(以下、同じ)。
【0061】
式
(5)中、R
13〜R
20は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0063】
式(6)中、R
21〜R
28は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基である。Aは、炭素数20以下の、直鎖状、分岐状、又は環状の2価の炭化水素基を表す。
【0065】
式(7)中、R
29〜R
32は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0066】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂中のポリフェニレンエーテル骨格としては、下記式(8)で表されるものが挙げられる。
【0068】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂中の反応性基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シクロペンテニル基、ビニルベンジル基、ビニルナフチル基等のエチレン性不飽和結合を有する基;エポキシ基;水酸基;等が挙げられる。
これらの中でも、低誘電特性を有する硬化物が得られ易いことから、反応性基は、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましく、ビニルベンジル基がより好ましい。
【0069】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、低誘電特性を有する硬化物が得られ易いことから、ポリフェニレンエーテル骨格の両末端に反応性基を有するものが好ましい。
【0070】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、ポリフェニレンエーテル骨格を形成した後、末端に反応性基を導入することにより得ることができる。
例えば、反応性基として両末端にビニルベンジル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、2官能フェノール化合物と1官能フェノール化合物を反応させて、両末端にフェノール性水酸基を有する重合体を得た後、4−(クロロメチル)スチレンを用いて末端フェノール性水酸基をビニルベンジルエーテル化することで得ることができる。
【0071】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、下記式(9)で表されるものが挙げられる。
【0073】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、OPE−2St(両末端にビニルベンジル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、OPE−2Gly(両末端にエポキシ基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、OPE−2EA(両末端にアクリロイル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂、以上、三菱ガス化学社製)、Noryl SA9000(両末端にメタクリロイル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂、SABIC社製)等が挙げられる。
【0074】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂の重量平均分子量(Mw)は好ましくは、500〜5,000、より好ましくは500〜3,000である。
変性ポリフェニレンエーテル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行い、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0075】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量は、硬化性接着剤層全体に対して、好ましくは5〜50質量%
、より好ましくは10〜40質量%である。
変性ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量が、硬化性接着剤層全体に対して5〜50質量%であることで、低誘電特性を有する硬化物が得られ易くなる。
【0077】
〔(C)成分:反応性基を有するバインダー樹脂〕
本発明のデバイス用接着シートを構成する硬化性接着剤層は、(C)成分として、反応性基を有するバインダー樹脂(以下、「バインダー樹脂(C)」と記載することがある)を含有してもよい。
本発明のデバイス用接着シートを構成する硬化性接着剤層は、25℃において液体の化合物である(A)成分を含有する。硬化性接着剤層がバインダー樹脂(C)を含有することで、接着剤層としての形状が保持され易くなる。
さらに、バインダー樹脂(C)は反応性基を有するため、バインダー樹脂(C)が関与する架橋構造を硬化性接着剤層の硬化物中に構築することができ、耐熱性に優れる硬化物を形成することができる。また、反応性基を有する樹脂をバインダー樹脂として用いることで、難接着性基材等に対しても、十分な接着力を有する硬化物を形成することができる。
【0078】
反応性基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アンモニウム基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、アルコキシシリル基、シラノール基、ハロゲン原子等が挙げられる。反応性基を有する化合物は、分子内に2種以上の反応性基を有していてもよい。
【0079】
バインダー樹脂(C)の数平均分子量(Mn)は好ましくは10,000〜150,000、より好ましくは、30,000〜100,000である。
バインダー樹脂(C)の数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行い、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0080】
硬化性接着剤層がバインダー樹脂(C)を含有する場合、バインダー樹脂(C)の含有量は、硬化性接着剤層全体に対して、好ましくは40〜90質量%、より好ましくは45〜80質量%である。
バインダー樹脂(C)の含有量が、硬化性接着剤層中40〜90質量%であることで、形状保持性とタック性が両立した硬化性接着剤層が得られ易くなる。
【0081】
バインダー樹脂(C)の種類は、硬化性接着剤層に造膜性と可とう性を与える重合体成分であれば特に限定されない。
【0082】
バインダー樹脂(C)の種類としては、オレフィン系樹脂、スチレン系エラストマー(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体等のスチレンをハードセグメント、共役ジエンをソフトセグメントとするブロック共重合体)、フェノキシ樹脂(主鎖が芳香族ジオールと芳香族ジグリシジルエーテルとの重付加構造からなる高分子)、インデンクマロン樹脂(インデン及びクマロンの共重合体、インデン、クマロン及びスチレンの共重合体等)、アクリル重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリアミド樹脂、セルロース系材料、ポリビニルエーテル、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0083】
これらの中でも、低誘電特性に優れる硬化物が得られ易いことから、バインダー樹脂(C)の種類としては、オレフィン系樹脂、スチレン系エラストマー、フェノキシ樹脂、インデンクマロン樹脂が好ましい。
【0084】
上記の樹脂の中で、反応性基を有するものはそのままバインダー樹脂(C)として用いることができる。一方、反応性基を有しないものは、例えば変性処理を施すことにより得られた樹脂変性物をバインダー樹脂(C)として用いることができる。
【0085】
バインダー樹脂(C)は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
低誘電特性に優れる硬化物が得られ易いという理由、及び、耐熱性に優れる硬化物が得られ易いという理由により、バインダー樹脂(C)としては、変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂は、前駆体としてのオレフィン系樹脂に、変性剤(分子内に、反応性基を有する化合物)を用いて変性処理を施して得られる、反応性基が導入されたオレフィン系樹脂である。
【0087】
オレフィン系樹脂とは、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体をいう。オレフィン系樹脂は、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位と、オレフィン系単量体と共重合可能な単量体由来の繰り返し単位とからなる重合体であってもよいが、低誘電特性に優れる硬化物が得られ易いという観点から、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位のみからなる重合体であることが好ましい。
【0088】
オレフィン系単量体としては、炭素数2〜8のα−オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、又は1−ヘキセンがより好ましく、エチレン又はプロピレンがさらに好ましい。これらのオレフィン系単量体は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
オレフィン系単量体と共重合可能な単量体としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸の意味である(以下にて同じ。)。
これらのオレフィン系単量体と共重合可能な単量体は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
オレフィン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0090】
変性ポリオレフィン樹脂としては、接着強度により優れる硬化物が形成されることから、酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂とは、オレフィン系樹脂を酸又は酸無水物でグラフト変性したものをいう。例えば、オレフィン系樹脂に、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物(以下、「不飽和カルボン酸等」ということがある。)を反応させて、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を導入(グラフト変性)したものが挙げられる。
【0091】
オレフィン系樹脂に反応させる不飽和カルボン酸等としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸等の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物;が挙げられる。
これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、接着強度により優れる硬化物が得られ易いことから、無水マレイン酸が好ましい。
【0092】
オレフィン系樹脂に反応させる不飽和カルボン酸等の量は、オレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜3質量部、さらに好ましくは0.2〜1質量部である。このようにして得られた酸変性ポリオレフィン樹脂を含有する硬化性接着剤層を硬化させることで、接着強度により優れる硬化物を形成することができる。
【0093】
不飽和カルボン酸単位又は不飽和カルボン酸無水物単位をオレフィン系樹脂へ導入する方法は、特に限定されない。例えば、有機過酸化物類又はアゾニトリル類等のラジカル発生剤の存在下で、オレフィン系樹脂と不飽和カルボン酸等とを、オレフィン系樹脂の融点以上に加熱溶融して反応させる方法、あるいは、オレフィン系樹脂と不飽和カルボン酸等とを有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、オレフィン系樹脂に不飽和カルボン酸等をグラフト共重合する方法が挙げられる。
【0094】
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、アドマー(登録商標)(三井化学社製)、ユニストール(登録商標)(三井化学社製)、BondyRam(Polyram社製)、orevac(登録商標)(ARKEMA社製)、モディック(登録商標)(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0095】
〔(D)成分:カチオン重合開始剤〕
本発明のデバイス用接着シートを構成する硬化性接着剤層は、(D)成分として、カチオン重合開始剤を含有してもよい。
カチオン重合開始剤を含有する硬化性接着剤層は、より効率よく硬化反応が進行するため好ましい。
【0096】
硬化性接着剤層がカチオン重合開始剤を含有するとき、カチオン重合開始剤の含有量は、25℃で液体である非芳香族の硬化性化合物〔(A)成分〕、及び変性ポリフェニレンエーテル樹脂〔(B)成分〕の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜6質量部、より好ましくは0.3〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜4質量部である。
【0097】
カチオン重合開始剤としては、経時安定性に優れ、また、紫外線照射装置等を必要としないことから、熱カチオン重合開始剤が好ましい。
【0098】
熱カチオン重合開始剤は、加熱によって重合を開始させるカチオン種を発生しうる化合物である。
熱カチオン重合開始剤としては、スルニホウム塩、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。
【0099】
スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルシネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアルシネート、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアルシネート等が挙げられる。
【0100】
スルホニウム塩として、市販品を用いることもできる。市販品としては、アデカオプトンSP−150、アデカオプトンSP−170、アデカオプトンCP−66、アデカオプトンCP−77(以上、アデカ社製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−B2A、サンエイドSI−B3(以上、三新化学社製)、CYRACURE UVI−6974、CYRACURE UVI−6990(以上、ユニオン・カーバイド社製)、UVI−508、UVI−509(以上、ゼネラル・エレクトリック社製)、FC−508、FC−509(以上、ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング社製)、CD−1010、CD−1011(以上、サーストマー社製)、CIシリーズの製品(日本曹達社製)等が挙げられる。
【0101】
第四級アンモニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムp−トルエンスルホネート、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジメチル−N−ベンジルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジエチル−N−ベンジルトリフルオロメタンスルホネート、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0102】
ホスホニウム塩としては、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0103】
ジアゾニウム塩としては、AMERICURE(アメリカン・キャン社製)、ULTRASET(アデカ社製)等が挙げられる。
【0104】
ヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、ビス(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、ビス(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート、フェニル(4−メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルシネート等が挙げられる。また、市販品として、UV−9310C(東芝シリコーン社製)、Photoinitiator2074(ローヌ・プーラン社製)、UVEシリーズの製品(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズの製品(ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング社製)なども用いることができる。
【0105】
熱カチオン重合開始剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0106】
〔(E)成分:シランカップリング剤〕
本発明のデバイス用接着シートを構成する硬化性接着剤層は、(E)成分として、シランカップリング剤を含有してもよい。
シランカップリング剤を含有する硬化性接着剤層は、接着強度により優れる硬化物を与える傾向があるため好ましい。
【0107】
硬化性接着剤層がシランカップリング剤を含有するとき、シランカップリング剤の含有量は、硬化性接着剤層全体に対して、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜1質量%である。
【0108】
シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができる。なかでも、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。
シランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、8−グリシドキシオクチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤;
p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン等のスチリル基を有するシランカップリング剤;
【0109】
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル・ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノ基を有するシランカップリング剤;
3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するシランカップリング剤;
3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン等のハロゲン原子を有するシランカップリング剤;
3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;
ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;
3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するシランカップリング剤;
アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等のアリル基を有するシランカップリング剤;
3−ヒドキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドキシプロピルトリエトキシシラン等の水酸基を有するシランカップリング剤;等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
〔その他の成分〕
本発明のデバイス用接着シートを構成する硬化性接着剤層は、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、酸化防止剤、樹脂安定剤、充填剤、顔料、増量剤、軟化剤等の添加剤が挙げられる。
これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
硬化性接着剤層がこれらの添加剤を含有するとき、その含有量は、目的に合わせて適宜決定することができる。
【0111】
〔デバイス用接着シート〕
本発明のデバイス用接着シートは、前記(A)成分及び(B)成分を含有する硬化性接着剤層を有するものである。
【0112】
硬化性接着剤層の厚さは特に限定されないが、通常1〜50μmであり、好ましくは1〜25μm、より好ましくは5〜25μmである。厚さが上記範囲内にある硬化性接着剤層は、フレキシブルプリント配線板関連製品の形成材料として好適に用いられる。
硬化性接着剤層の厚さは、公知の厚さ計を用いて、JIS K 7130(1999)に準じて測定することができる。
【0113】
本発明のデバイス用接着シートは、硬化性接着剤層の他に、基材を有していてもよい。
基材としては、通常、樹脂フィルムを利用することができる。
樹脂フィルムの樹脂成分としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体、ポリウレタン系ポリマー、液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。
基材の厚さは、特に制限はないが、好ましくは10〜500μm、より好ましくは10〜300μm、さらに好ましくは15〜200μmである。
【0114】
本発明のデバイス用接着シートは、硬化性接着剤層の他に、剥離シートを有していてもよい。
剥離シートは、デバイス用接着シートを使用するまでの間は、硬化性接着剤層の保護シートとして機能する。また、デバイス用接着シートが基材を有しないものである場合、剥離シートは、デバイス用接着シートの製造工程においては支持体として機能する。
なお、本発明のデバイス用接着シートを使用する際は、通常、剥離シートは剥離除去される。
【0115】
剥離シートとしては、従来公知のものを利用することができる。例えば、剥離シート用の基材上に、剥離剤により剥離処理された剥離層を有するものが挙げられる。
剥離シート用の基材としては、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のプラスチックフィルム;等が挙げられる。
【0116】
剥離剤としては、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離シートの厚さは、特に制限はないが、通常20〜250μm程度である。
【0117】
本発明のデバイス用接着シートが剥離シートを有するものである場合、硬化性接着剤層の両側にそれぞれ1枚、合計2枚の剥離シートを有していてもよいし、硬化性接着剤層の片側にのみ剥離シートを有していてもよい。
【0118】
デバイス用接着シートの製造方法は特に限定されない。例えば、キャスト法を用いて、デバイス用接着シートを製造することができる。
デバイス用接着シートをキャスト法により製造する場合、硬化性接着剤層の成分を含有する接着剤組成物を調製し、公知の方法を用いて、得られた接着剤組成物を基材又は剥離シートの剥離処理された剥離層面に塗布し、得られた塗膜を乾燥することで、デバイス用接着シートを製造することができる。
【0119】
接着剤組成物は、溶媒を含有してもよい。
溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶媒の含有量は、塗布性等を考慮して適宜決定することができる。
【0120】
接着剤組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0121】
塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が挙げられる。
塗膜を乾燥するときの条件としては、例えば、80〜150℃で30秒から5分間である。
【0122】
硬化性接着剤層は、貼付適性に優れる。したがって、本発明のデバイス用接着シートを使用する際、硬化性接着剤層と被接着物とを貼合し、これらを一時的に固定する際に過度に加熱する必要はない。
硬化性接着剤層と被接着物とを貼合する際の温度は、通常15〜75℃、好ましくは20〜45℃である。
【0123】
硬化性接着剤層が熱硬化性を有するものである場合、硬化性接着剤層を加熱することにより、硬化性接着剤層が硬化する。
【0124】
硬化性接着剤層を熱硬化させる際の条件は特に限定されない。
加熱温度は、通常、80〜200℃、好ましくは90〜175℃である。
加熱時間は、通常、30分から12時間、好ましくは1〜6時間である。
【0125】
硬化性接着剤層の硬化物は、高周波領域での低誘電特性を有する。
硬化性接着剤層の硬化物の、23℃、周波数1GHzにおける比誘電率(以下、この比誘電率を「比誘電率(α)」と記載することがある。)は、好ましくは2.7以下、より好ましくは2.6以下、特に好ましくは2.5以下である。
比誘電率(α)の下限は特にないが、通常2.2以上である。
比誘電率(α)が2.7以下の硬化物を形成し得る硬化性接着剤層は、フレキシブルプリント配線板関連用の接着剤として好適に用いられる。
【0126】
比誘電率(α)の測定試料は、硬化性接着剤層を十分に硬化させたものであれば特に限定されない。
例えば、測定される硬化性接着剤層に推奨硬化条件が存在する場合は、その推奨条件で硬化された硬化性接着剤層の硬化物が比誘電率(α)の測定試料として用いられる。硬化性接着剤層に推奨硬化条件がない、または不明の場合は、たとえば160℃1時間の硬化条件で得られた硬化物を比誘電率(α)の測定試料としてもよい。
比誘電率(α)は、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0127】
硬化性接着剤層の硬化物の、23℃、周波数1GHzにおける誘電正接(以下、この誘電正接を「誘電正接(β)」と記載することがある。)は、好ましくは0.0050以下であり、より好ましくは0.0020以下、さらに好ましくは0.0015以下である。
誘電正接(β)の下限は特にないが、通常0.0001以上である。
誘電正接(β)が0.0050以下の硬化物を形成し得る硬化性接着剤層は、フレキシブルプリント配線板関連用の接着剤として好適に用いられる。
誘電正接(β)は、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0128】
上記のように、本発明のデバイス用接着シートを構成する硬化性接着剤層は貼付適性に優れ、その硬化物は、高周波領域での低誘電特性を有する。
したがって、本発明のデバイス用接着シートを構成する硬化性接着剤層は、低誘電特性が求められるデバイス中の部材を形成する際に好適に用いられる。
例えば、本発明のデバイス用接着シートを用いることで、回路基板を構成する接着剤硬化物層を効率よく形成することができる。回路基板としては、例えば、フレキシブルプリント配線板等が挙げられる。
【実施例】
【0129】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0130】
〔実施例又は比較例で使用した化合物〕
・硬化性化合物(A1):水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔三菱ケミカル社製、商品名:YX8000、エポキシ当量:205g/eq、25℃で液体〕
・硬化性化合物(A2):イソシアヌレート骨格を有するジアリル化合物(四国化成工業社製、商品名:L−DAIC)
・硬化性化合物(AX1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔三菱ケミカル社製、商品名:jER828、エポキシ当量:184〜194g/eq、25℃で液体〕
・ポリフェニレンエーテル樹脂(B1):ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル〔三菱ガス化学社製、商品名:OPE−2St 1200、数平均分子量:1200〕
・バインダー樹脂(C1):酸変性α−オレフィン重合体〔三井化学社製、商品名:ユニストールH−200、数平均分子量:47,000〕
・カチオン重合開始剤(D1):熱カチオン重合開始剤〔三新化学社製、商品名:サンエイドSI−B3〕
・シランカップリング剤(E1):8−グリシドキシオクチルトリメトキシシラン〔信越化学工業社製、商品名:KBM4803〕
【0131】
〔実施例1〕
液状硬化性化合物(A1)3質量部、ポリフェニレンエーテル樹脂(B1)50質量部、バインダー樹脂(C1)100質量部、カチオン重合開始剤(D1)0.15質量部、シランカップリング剤(E1)0.2質量部をトルエンに溶解し、接着剤組成物を調製した。
この接着剤組成物を剥離シート(第1剥離シート、リンテック社製、商品名:SP−PET752150)の剥離処理面上に塗布し、得られた塗膜を100℃で2分間乾燥し、厚さが15μmの接着剤層を形成した。この接着剤層上に、もう1枚の剥離シート(第2剥離シート、リンテック社製、商品名:SP−PET381130)の剥離処理面を貼り合わせて接着シートを得た。
【0132】
〔実施例
2〜4、比較例1〜3〕
接着剤組成物を構成する各有効成分の種類及び量を第1表に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物及び接着シートを得た。
【0133】
実施例1〜4、比較例1〜3で得た接着シートについて、以下の試験を行った。結果を第1表に示す。
【0134】
〔比誘電率、誘電正接〕
実施例又は比較例で得た接着シートの接着剤層を1mmの厚さになるように100℃に加熱した熱ラミネーターを用いて複数枚積層し、剥離シート/1mmの厚さの接着剤層/剥離シート、の構造の積層体を得た。この積層体を160℃で1時間加熱して、1mmの厚さの接着剤層を硬化させた後、両側の剥離シートを剥離して、測定用試料を得た。
得られた測定用試料について、RFインピーダンス・マテリアルアナライザ(キーサイト社製、E4991A)を用いて、23℃、1GHzにおける比誘電率及び誘電正接を測定した。実施例又は比較例では、高周波領域の一例として1GHzを採用した。
【0135】
〔貼付適性〕
実施例、比較例で得た接着シートを裁断し、幅50mm長さ150mmの試験片を得た。得られた試験片の第2剥離フィルムを剥がして露出させた接着剤層を、温度23℃、相対湿度50%の条件下で無アルカリガラスに重ね、さらに圧着ロールを用いて、0.5MPaの圧力を加えた。この貼付試験を、圧着ロールを加温しない場合と、60℃に設定した場合との両方の条件で行った。接着剤層の無アルカリガラスからの浮きの状態を観察し、浮きが無いものを
〇、浮きが発生したものを
×と評価した。
【0136】
【表1】
【0137】
第1表から以下のことが分かる。
実施例1〜4で得られた硬化性接着剤層の硬化物は、高周波領域での低誘電特性を有している。さらに、これらの硬化性接着剤層は、良好な貼付適性を有している。
一方、比較例1で得られた硬化性接着剤層は、本願発明の(A)成分の代わりに、芳香族の硬化性化合物を含有するものであり、貼付適性に劣り、さらに、その硬化物の比誘率、誘電正接は大きな値になっている。
比較例2に示すように、比較例1よりも芳香族の硬化性化合物を多く含ませることで、硬化性接着剤層の貼付適性は改善されるものの、低誘電特性は悪化する。
また、比較例3に示すように、(A)成分及び(B)成分を含有する場合であっても、(A)成分の含有量が3.0質量%未満の硬化性接着剤層は、十分な貼付適性を有しない。