(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記温度と前記樹脂の拡散係数との関係を定めた拡散係数データと、前記湿度と前記樹脂の飽和吸湿水分量との対応関係を定めた水分量データとを格納する記憶部をさらに備え、
前記制御装置は、
前記水分量データと前記第1タイミングで取得した前記湿度とに基づいて、前記第1タイミングにおける前記飽和吸湿水分量を算出し、
前記水分量データと前記第2タイミングで取得した前記湿度とに基づいて、前記第2タイミングにおける前記飽和吸湿水分量を算出し、
前記拡散係数データと前記第2タイミングで取得した前記温度とに基づいて、前記第2タイミングにおける前記拡散係数を算出し、
前記第1タイミングにおける前記飽和吸湿水分量と、前記第2タイミングにおける前記飽和吸湿水分量と、前記第2タイミングにおける前記拡散係数と、前記時間間隔とに基づいて、前記封止材の吸湿水分量を算出する、請求項1に記載の表示装置。
前記制御装置は、前記封止材の吸湿水分量が閾値より大きい場合、前記発光素子の輝度を目標値に向かって徐々に上昇させる、請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜、組み合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0013】
実施の形態1.
<表示装置101の構成>
図1は、実施の形態1に係る表示装置101の構成を示す図である。表示装置101は、表示ユニット1と、表示ユニット1に接続された制御装置31と、温度および湿度を測定する温湿度センサ2とを備える。
【0014】
表示ユニット1には、映像を表示するための発光素子4が表示ユニット1の縦方向および横方向に2次元的に配列される。
図1は、複数の発光素子4の一部を代表例として示している。発光素子4は、LEDにより構成される。したがって、表示ユニット1は、LEDディスプレイ装置を構成する。図示を省略しているが、表示ユニット1には、発光素子4を制御するドライバーIC、映像信号を伝達するケーブルなどの部品も搭載されている。
【0015】
制御装置31は、表示ユニット1に対して映像信号およびLED制御信号を送信する。制御装置31は、表示ユニット1を制御する装置である。温湿度センサ2は、表示ユニット1付近の温度および湿度を測定する。表示ユニット1は温湿度センサ2を内蔵してもよい。また、表示ユニット1の外側に温湿度センサ2を設けてもよい。温湿度センサ2の測定値は制御装置31に送られる。制御装置31は、温湿度センサ2から測定値を受信する。制御装置31は、温湿度センサ2から受信した測定値に基づいて、発光素子4の封止材に含まれる水分量を算出する機能を備える。
【0016】
ここでは、制御装置31が表示ユニット1を制御する機能と発光素子4の封止材に含まれる水分量を算出する機能とを備えるものとして説明した。しかし、制御装置31は、表示ユニット1を制御する機能を有していなくてもよい。この場合、表示ユニット1を制御する表示制御装置を表示ユニット1に搭載してもよい。
【0017】
温湿度センサ2と制御装置31とは通信可能に接続されていればよい。温湿度センサ2と制御装置31とは有線および無線のいずれで接続されていてもよい。
【0018】
<発光素子4の構成>
図2は、発光素子4の構成を示す図である。特に、上の図は発光素子4の側面図であり、下の図は発光素子4の平面図である。発光素子4は、LEDチップ5と、LEDチップ5を実装する基板6とを含む。基板6には、LEDチップ5に電流を流すための端子7が設けられる。LEDチップ5と端子7とは、ボンディングワイヤ8によって接続される。発光素子4には、封止材9が取り付けられている。封止材9は、発光素子4の内部を外部からの衝撃から保護する。封止材9は樹脂を含んでいる。封止材9が含む樹脂は、たとえば、エポキシ樹脂またはシリコン樹脂である。無機材料である酸化ケイ素を分散させたエポキシ樹脂またはシリコン樹脂により、封止材9を構成してもよい。
【0019】
図2には、LEDチップ5が1つ実装された発光素子4を示した。しかし、発光素子4には、赤色LEDチップと、青色LEDチップと、緑色LEDチップとを実装してもよい。
【0020】
<封止材の吸湿水分量の算定>
封止材9の材質であるエポキシやシリコンの樹脂は、空気中の水分を吸収する。封止材9が多量の水分を吸収している状態で発光素子4を駆動すると、発光素子4の発光により発生した熱の影響を受けて封止材9の樹脂に含まれる水分が膨張する。封止材9の樹脂に含まれる水分が膨張すると、封止材9が発光素子4から剥離するおそれがある。封止材9が発光素子4から剥離すると、封止材9によるLEDチップ5の保護機能が失われる。封止材9が発光素子4から剥離することにより、ボンディングワイヤ8とLEDチップ5との接合が解かれるおそれもある。したがって、封止材9が発光素子4から剥離することにより、発光素子4が劣化するおそれがある。
【0021】
発光素子4の劣化を防止するためには、封止材9に含まれる樹脂に吸湿されている水分量を特定すること、および特定した水分量に応じた対応をすることが有効である。以下、封止材9に含まれる樹脂に吸湿されている水分量を簡単のため封止材9の吸湿水分量と称する。
【0022】
封止材9の吸湿水分量は、温度および湿度の影響を受けて増減する。したがって、より正確に吸湿水分量を算出するためには、表示装置101が設置された空間の温度および湿度を考慮する必要がある。表示装置101が設置された空間の温度および湿度は、季節、天候、時間帯、空調機の稼働状況によって刻々と変化し得る。
【0023】
実施の形態1に係る表示装置101は、封止材9の吸湿水分量を表示装置101が設置された空間の温度および湿度に基づいて算出する機能を備える。封止材9の吸湿水分量は、表示ユニット1が駆動しているか否かに関わらず変化し得る。表示装置101は、表示ユニット1が駆動しているか否かに関わらず、温度および湿度を一定時間毎に測定し、測定結果に基づいて封止材9の吸湿水分量を算出する。したがって、表示装置101は、その時々の封止材9の吸湿水分量を正確に算出することができる。
【0024】
ここでは、表示装置101が一定時間毎に温度および湿度を測定し、測定結果に基づいて封止材9の吸湿水分量を算出する例を紹介する。しかし、表示装置101は、封止材9の吸湿水分量を繰り返し算出できればよく、湿度および温度を測定する時間間隔は一定でなくてもよい。
【0025】
表示装置101は、封止材9の吸湿水分量を飽和吸湿水分量と拡散係数と測定時間間隔とに基づいて算出する。吸湿水分量の算出式は、公知のFickの第2法則(Fick's second law)に基づいて導出される。
【0026】
図3は、湿度と封止材9の飽和吸湿水分量との関係を示すグラフである。封止材9に含まれる樹脂を、ある温度および湿度の空間に設置した際、樹脂に含まれる水分量に飽和が生じた時点の樹脂の吸湿水分量を飽和吸湿水分量と称する。
図3に示されるとおり、湿度と封止材9の飽和吸湿水分量との間には相関関係が認められる。
図3には、封止材9が置かれた空間の湿度が湿度Aのときの飽和吸湿水分量が水分量Aであり、封止材9が置かれた空間の湿度が湿度Bのときの飽和吸湿水分量が水分量Bであることが示されている。
【0027】
封止材9が置かれた空間の湿度と封止材9の飽和吸湿水分量との関係を予め明らかにしておけば、封止材9が置かれた空間の湿度に基づいて封止材9の飽和吸湿水分量を導出できる。
【0028】
具体的には、封止材9が置かれた空間の湿度を変化させつつ、封止材9の飽和吸湿水分量を算出する実験を開発者が繰り返すことにより、湿度と飽和吸湿水分量との関係を示す水分量データを予め取得する。このようにして取得された水分量データを用いることにより、表示装置101は、湿度から飽和吸湿水分量を特定できる。
【0029】
表示装置101は、封止材9が置かれた空間の湿度と封止材9の飽和吸湿水分量との関係を示す水分量データを記憶している。表示装置101は、水分量データと、温湿度センサ2が測定した湿度とに基づいて、封止材9の飽和吸湿水分量を算出する。
【0030】
図4は、温度と封止材9の拡散係数との関係を示すグラフである。
図4に示されるとおり、温度と封止材9の拡散係数との間には相関関係が認められる。したがって、封止材9が置かれた空間の温度と封止材9の拡散係数との関係を予め明らかにしておけば、封止材9が置かれた空間の温度に基づいて封止材9の拡散係数を導出できる。
【0031】
具体的には、封止材9が置かれた空間の温度を変化させつつ、封止材9の拡散係数を算出する実験を開発者が繰り返すことにより、湿度と拡散係数との関係を示す拡散係数データを予め取得する。このようにして取得された拡散係数データを用いることにより、表示装置101は、温度から拡散係数を特定できる。
【0032】
表示装置101は、封止材9が置かれた空間の温度と封止材9の拡散係数との関係を示す拡散係数データを記憶している。表示装置101は、拡散係数データと、温湿度センサ2が測定した温度とに基づいて、封止材9の拡散係数を算出する。
【0033】
Fickの第2法則に基づいて封止材9の吸湿水分量を算出する手法を説明する。封止材9の湿度が湿度Aから湿度Bに変化した場合、
図3に示されるとおり、飽和吸湿水分量が飽和吸湿水分量Aから飽和吸湿水分量Bに変化する。飽和吸湿水分量が水分量Aから水分量Bへ変化するにはある程度の経過時間が必要である。この経過時間は拡散係数で表される。Fickの第2法則によれば、吸湿水分量の時間的な変化と拡散係数とは、拡散係数と経過時間との積の平方根に比例する。したがって、吸湿水分量が水分量Aから水分量Bにどれだけ近づいたかを一定の時間間隔で算出することにより、温度と湿度との変化を考慮した上で、正確に封止材9の吸湿水分量を算出することができる。
【0034】
たとえば、時刻T1で表示装置101付近の温度および湿度を測定した後、時刻T2で再度、表示装置101付近の温度および湿度を測定した場合を考える。時刻T1で測定された温度をHAとし、時刻T2で測定された温度をHBとする。時刻T2で測定された湿度をMAとし、時刻T2で測定された湿度をMBとする。
【0035】
時刻T1における封止材9の飽和吸湿水分量A、および時刻T2における封止材9の飽和吸湿水分量Bは、湿度MAおよび湿度MB、並びに
図3に示すグラフから特定できる。時刻T2における封止材9の拡散係数Dは、温度HBと
図4に示すグラフとから特定できる。測定時間間隔Taは、T2−T1である。
【0036】
このとき、時刻T2における封止材9の吸湿水分量は、拡散係数Dと測定時間間隔Taとの積の平方根、飽和吸湿水分量A、および飽和吸湿水分量Bに基づいて算出できる。具体的には、時刻T1における飽和吸湿水分量Aと時刻T2における飽和吸湿水分量Bとの差、すなわち、飽和吸湿水分量の変化量を算出する。算出した変化量に対して「拡散係数Dと測定時間間隔Taとの積の平方根」を乗じた値と、時刻T1における飽和吸湿水分量Aとから、水分量の変化を算出することにより、封止材9が吸収した水分量を算出する。
【0037】
このように、表示装置101は、測定時間間隔Taで測定された温度の変化の差および湿度の変化の差から、封止材9が吸湿および放出する水分量の変化を考慮して、封止材9の吸湿水分量を算出する。したがって、表示装置101は、表示装置101が使用される環境を考慮して正確に封止材9の吸湿水分量を算出することができる。
【0038】
表示装置101は、算出した吸湿水分量および飽和吸湿水分量を外部に出力する機能を備える。表示装置101は、さらに、閾値を出力する機能を備える。閾値は、表示装置101の開発者が事前に決定した水分量である。たとえば、
図3に示す湿度Aまで発光素子4の動作を保証する場合、閾値は、
図3に示すグラフの湿度Aに対応する飽和吸湿水分量Aに該当する。ユーザーは、算出された吸湿水分量と閾値とを比較することにより、封止材9の吸湿水分量の大きさが表示ユニット1の駆動に悪影響を与える可能性の有無を判断できる。
【0039】
<表示装置101のブロック図>
図5は、制御装置31の機能構成を示すブロック図である。制御装置31は、表示ユニット1と温湿度センサ2とに接続されている。制御装置31と表示ユニットと温湿度センサ2とによって表示装置101が構成される。制御装置31は、プロセッサ311と、入出力ポート312と、メモリ313とを備える。これらのコンポーネントは、図示しないプロセッサバスを介して接続されている。
【0040】
プロセッサ311は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などの各種の処理装置で構成されている。プロセッサ311は、メモリ313に格納されたプログラム314に基づいて一連の処理を行う。
【0041】
入出力ポート312は、表示装置101の外部から映像信号を受信する。プロセッサ311は、入出力ポート312が受信した映像信号を表示ユニット1に対応する信号に変換した後、変換後の信号とLED制御信号とを表示ユニット1に伝送する。これにより、表示ユニット1に映像が表示される。
【0042】
入出力ポート312は、温度および湿度の測定値を温湿度センサ2から一定時間毎に受信する。入出力ポート312は、それらの測定値をプロセッサ311に伝送する。これにより、プロセッサ311は、温度および湿度の測定値を温湿度センサ2から取得する。入出力ポート312は、表示装置101が配置された空間の温度および湿度の入力を受け付ける受付部として機能する。プロセッサ311は、入出力ポート312を介して取得した温度および湿度に基づいて、表示ユニット1に実装されている発光素子4の吸湿水分量を算出する。より具体的には、プロセッサ311は、発光素子4を覆う封止材9の吸湿水分量を算出する。
【0043】
メモリ313は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)およびSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリ、または、ROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリで構成されている。メモリ313には、封止材9の吸湿水分量を算出するために必要な水分量データ315と拡散係数データ316とが格納されている。水分量データ315と拡散係数データ316については、
図3および
図4を用いて既に説明したとおりである。
【0044】
吸湿水分量の算出工程を単純にするため、湿度に対して演算を加えた値を水分量データ315としてもよい。たとえば、湿度の逆数または湿度に一定の係数を乗じた値と飽和吸湿水分量との関係を示すデータを水分量データ315とすることが考えられる。同様に、温度の逆数または温度に一定の係数を乗じた値と拡散係数との関係を示すデータを拡散係数データ316とすることが考えられる。
【0045】
図3および
図4に示したように、事前に算出された湿度と飽和吸湿水分量との関係を示すデータおよび温度と拡散係数との関係を示すデータは、離散値である。これらの離散値に基づいて、湿度から飽和吸湿水分量を算出する近似式と温度から拡散係数を算出する近似式とを導くことができる。制御装置31は、これらの近似式を用いて飽和吸湿水分量および拡散係数を算出するように構成するのが望ましい。制御装置31は、温湿度センサ2の測定結果を近似式に入力することにより、飽和吸湿水分量と拡散係数とを算出することができる。
【0046】
メモリ313には、さらに、封止材9の水分量に関する算出履歴317が格納される。算出履歴317には、一定時間毎にプロセッサ311が算出した封止材9の吸湿水分量、飽和吸湿水分量、および拡散係数が含まれる。メモリ313は、吸湿水分量、飽和吸湿水分量、および拡散係数を測定回数および測定時刻と対応付けて格納している。メモリ313には、閾値が格納されている。ユーザーは、算出された吸湿水分量と閾値とを比較することにより、封止材9の吸湿水分量の大きさが表示ユニット1の駆動に悪影響を与える可能性の有無を判断できる。
【0047】
プロセッサ311は、表示装置101付近の温度および湿度を一定時間間隔で温湿度センサ2から繰り返し取得する。プロセッサ311は、第1タイミングで表示装置101付近の温度および湿度を取得したとき、取得した温度および湿度に基づいて飽和吸湿水分量および拡散係数を算出する。プロセッサ311は、取得した温度および湿度、並びに算出結果を第1回目に得られたデータとしてメモリ313の算出履歴317に追加する。
【0048】
プロセッサ311は、第1タイミングから一定時間が経過した後の第2タイミングで表示装置101付近の温度および湿度を取得し、取得した温度および湿度に基づいて飽和吸湿水分量および拡散係数を算出する。さらに、プロセッサ311は、算出履歴317から前回算出した飽和吸湿水分量を読み出す。プロセッサ311は、前回算出した飽和吸湿水分量と、今回算出した飽和吸湿水分量と、今回算出した拡散係数とに基づいて、封止材9の吸湿水分量を算出する。
【0049】
プロセッサ311は、第2タイミングで取得した温度および湿度、並びに算出結果を第2回目に得られたデータとしてメモリ313の算出履歴317に追加する。ここで、第2回目に得られたデータには、飽和吸湿水分量および拡散係数に加えて、吸湿水分量が含まれる。
【0050】
プロセッサ311は、このような処理を一定時間間隔で繰り返す。これにより、一定時間間隔で算出履歴317の履歴データが増える。
【0051】
入出力ポート312は、プロセッサ311の算出結果と閾値とを外部に出力する外部出力端子(図示せず)を備える。外部出力端子は、映像信号出力端子あるいは音声信号出力端子である。入出力ポート312から出力される算出結果には、飽和吸湿水分量および吸湿水分量が含まれる。
【0052】
ユーザーは、表示ユニット1を起動する前に、入出力ポート312から出力される情報を確認することにより、吸湿水分量と、閾値との関係を確認することができる。特に、ユーザーは、発光素子4に不具合が生じるおそれがあるか否かを閾値と吸湿水分量とに基づいて判断することができる。
【0053】
制御装置31は、表示ユニット1に対して映像信号およびLED制御信号を出力する機能を備えるとともに、封止材9の吸湿水分量を算出する機能を備える。しかしながら表示ユニット1に対して映像信号およびLED制御信号を出力する機能を備える制御ユニットを制御装置31と別に表示装置101に設けてもよい。制御装置31は、少なくとも封止材9の吸湿水分量を算出する機能を備えていればよい。ただし、制御装置31は、吸湿水分量の算出結果を閾値とともに出力できる機能を備えることが望ましい。
【0054】
<表示装置101の処理手順>
図6は、表示装置101の処理手順を示すフローチャートである。本フローチャートに基づく処理は、表示装置101が備える制御装置31により実行される。本フローチャートに基づく処理を実行するために必要なプログラム314は、制御装置31が備えるメモリ313に格納されている。
【0055】
はじめに、制御装置31は、本フローチャートに基づく処理の開始から時間Taが経過したか否かを判定する(ステップS10)。制御装置31は、一定時間Ta毎に表示装置101付近の湿度および温度を温湿度センサ2から取得し、取得した値に基づいて封止材9の吸湿水分量を算出する。時間Taが経過していないと判定した場合(ステップS10にてNO)、制御装置31は時間Taが経過するまで待機する。
【0056】
時間Taが経過していると判定した場合(ステップS10にてYES)、制御装置31は温度および湿度を取得する(ステップS11)。具体的には、制御装置31は、温湿度センサ2から温度および湿度の測定結果を受信する。
【0057】
次に、制御装置31は、取得した湿度に基づいて、封止材9の飽和吸湿水分量を算出する(ステップS12)。より具体的には、制御装置31は、取得した湿度とメモリ313に格納されている水分量データ315とを用いて封止材9の飽和吸湿水分量を算出する。
【0058】
次に、制御装置31は、取得した温度に基づいて、封止材9の拡散係数を算出する(ステップS13)。より具体的には、制御装置31は、取得した温度とメモリ313に格納されている拡散係数データ316とを用いて封止材9の拡散係数を算出する。
【0059】
次に、制御装置31は、飽和吸湿水分量(M)と拡散係数(D)と時間Taとから封止材9の吸湿水分量を算出する(ステップS14)。具体的には、Fickの第2法則に基づいて導出される算出式に飽和吸湿水分量、拡散係数、および時間Taを代入することによって封止材9の吸湿水分量を算出する。算出式の概念は、
図6のステップS14に示されている。より具体的には、制御装置31は、前回算出した飽和吸湿水分量と今回算出した飽和吸湿水分量と今回算出した拡散係数と、時間Taとに基づいて、封止材9の吸湿水分量を算出する。したがって、ステップS14に示す「飽和吸湿水分量(M)」は、前回算出した飽和吸湿水分量と今回算出した飽和吸湿水分量とを包括的に含んでいる。
【0060】
次に、制御装置31は、ステップS11で取得した値とステップS12〜S14で算出した結果とに基づいて、算出履歴317を更新する(ステップS15)。これにより、メモリ313の算出履歴317には、今回取得した温度および湿度、並びに今回算出した飽和吸湿水分量、拡散係数、および吸湿水分量が追加される。
【0061】
次に、制御装置31は、閾値および算出結果を入出力ポート312から外部に出力する(ステップS16)。出力される算出結果は、今回、算出した飽和吸湿水分量および吸湿水分量を含む。その後、制御装置31は、終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS17)。たとえば、表示装置101をリセットする操作が成立した場合に終了条件が成立する。
【0062】
制御装置31は、終了条件が成立していないと判定した場合(ステップS17にてNO)、ステップS10に戻り、時間Taが経過するまで待機する。時間Taが経過すれば、制御装置31は、次回の処理をステップS11〜S16に基づいて実行する。したがって、制御装置31は、表示ユニット1が駆動しているか否かに関わらず、一定時間毎に封止材9の吸湿水分量を算出する。制御装置31は、終了条件が成立したと判定した場合(ステップS17にてYES)、本フローチャートに基づく処理を終了する。
【0063】
以上説明したとおり、実施の形態1に係る表示装置101によれば、表示ユニット1が駆動しているか否かに関わらず、一定時間毎に封止材9の吸湿水分量が算出される。しかも、吸湿水分量に大きな影響を与える温度および湿度に基づいて封止材9の吸湿水分量が算出される。温度および湿度は、季節や天候、時間帯、空調機の稼働状況によって大きく変動する。このため、時刻を異ならせて繰り返し封止材9の吸湿水分量を算出することは、封止材9の吸湿水分量を正確に特定するために極めて有効である。
【0064】
実施の形態2.
<表示装置102の構成>
図7は、実施の形態2に係る表示装置102の構成を示す図である。実施の形態2に係る表示装置102は、実施の形態1に係る表示装置101の構成に対して、水分量表示装置10が追加されている。水分量表示装置10は表示ユニット1に接続されている。表示ユニット1ではなく制御装置32に水分量表示装置10を接続してもよい。
【0065】
実施の形態2に係る制御装置32は、実施形態1に係る制御装置31のプロセッサ311、入出力ポート312、およびメモリ313に対応するそれぞれの構成を備える。実施の形態2に係る制御装置32は、実施の形態1に係る制御装置31が有するすべての機能に加えて、封止材9の吸湿水分量が閾値を超えるか否かを判定する機能、および、表示ユニット1を経由して水分量表示装置10に映像信号を伝送する機能を有する。これらの機能については、
図8に示すフローチャートを用いて、後で詳細に説明する。
【0066】
水分量表示装置10は、閾値、および制御装置32により算出された封止材9の飽和吸湿水分量および吸湿水分量を表示するとともに、制御装置32の判定結果に応じたメッセージを表示する。
【0067】
たとえば、水分量表示装置10は、制御装置32により吸湿水分量が閾値を超えると判定されたとき、温度および湿度の調整をユーザーに促すメッセージを表示する。特に、表示ユニット1が駆動している最中に制御装置32により吸湿水分量が閾値を超えると判定されたとき、水分量表示装置10は、表示ユニット1の駆動停止をユーザーに促すメッセージを表示する。
【0068】
表示ユニット1が駆動していないときに制御装置32により吸湿水分量が閾値を超えると判定されたとき、水分量表示装置10は、表示ユニット1の停止状態を維持すべきことをユーザーに促すメッセージを表示する。温度および湿度が調整された結果、吸湿水分量が閾値以下となれば、水分量表示装置10は表示ユニット1の駆動が可能であることを示すメッセージを表示する。
【0069】
<表示装置102の処理手順>
図8は、表示装置102の処理手順を示すフローチャートである。本フローチャートに基づく処理は、表示装置102が備える制御装置32により実行される。本フローチャートに基づく処理を実行するために必要なプログラムは、制御装置32に格納されている。
【0070】
図8に示すフローチャートのステップS20〜ステップS25の処理は、実施の形態1として説明した
図6に示すステップS10〜ステップS15の処理と同様であるので、ここではその説明を繰り返さない。なお、ステップS24において吸湿水分量を算出するための算出式の概念は、S14に示したとおりである。
【0071】
制御装置32は、閾値および算出結果を水分量表示装置10に表示する(ステップS26)。水分量表示装置10が表示する算出結果は、飽和吸湿水分量および吸湿水分量を含む。より具体的には、ステップS26において、制御装置32は、閾値および算出結果を表示するための映像信号を、表示ユニット1を介して水分量表示装置10に伝送する。
【0072】
水分量表示装置10には、様々なスタイルで閾値、飽和吸湿水分量および吸湿水分量を表示することができる。たとえば、閾値と飽和吸湿水分量と吸湿水分量とをそれぞれ異なる色や文字で表示してもよい。閾値と吸湿水分量との大小関係をわかりやすくするために、横並びにした2つのバーの長さで両者の大きさを表示してもよい。
【0073】
次に、制御装置32は、吸湿水分量が閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS27A)。封止材9の吸湿水分量が大きくなるにつれて、封止材9が発光素子4から剥離し、発光素子4が破損する可能性が高まる。閾値は、封止材9の吸湿水分量と発光素子4の破損率との関係を考慮して予め定めた値である。閾値は、制御装置32に格納されている。
【0074】
制御装置32は、吸湿水分量が閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS27AにてYES)、表示ユニット1が駆動中であるか否かを判定する(ステップS27C)。吸湿水分量が閾値よりも大きい状態で表示ユニット1を駆動しているときには、表示ユニット1を構成する発光素子4が破損する可能性が高い。そこで、制御装置32は、ステップS27CにてYESと判定したとき、温度および湿度の調整をユーザーに促すメッセージと、表示ユニット1の駆動停止をユーザーに促すメッセージとを水分量表示装置10に表示する(ステップS28A)。
【0075】
メッセージを見たユーザーは、表示ユニット1の駆動を停止した上で、エアコンディショナーの設定を変更し、部屋の温度および湿度を適切な値に調整するであろう。部屋の温度および湿度が適切な値に調整されることにより、表示装置102が置かれた空間の環境が改善される。その結果、発光素子4が破損することを未然に防止できる。
【0076】
制御装置32は、ステップS27CにてNOと判定したとき、温度および湿度の調整をユーザーに促すメッセージと、表示ユニット1の停止状態を維持すべきことをユーザーに促すメッセージとを水分量表示装置10に表示する(ステップS28B)。
【0077】
メッセージを見たユーザーは、表示ユニット1を駆動することなく、エアコンディショナーの設定を変更し、部屋の温度および湿度を適切な値に調整するであろう。部屋の温度および湿度が適切な値に調整されることにより、表示装置102が置かれた空間の環境が改善される。その結果、ユーザーは、適切な環境で表示ユニット1を駆動できる。
【0078】
ステップS28AまたはステップS28Bの処理の後、制御装置32は、終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS29)。終了条件を判定する処理は、
図6のステップS17と同様であるので、ここではその説明を繰り返さない。
【0079】
制御装置32は、終了条件が成立していないと判定した場合(ステップS29にてNO)、ステップS20に戻り、時間Taが経過するまで待機する。ここでは、時間Taが経過するまでの間に、表示装置102が置かれた部屋の温度および湿度が適切な値に改善されたものとする。さらには、その結果、封止材9の吸湿水分量が閾値以下に変化したものとする。すると、制御装置32は、ステップS27Aにおいて、NOと判定する。この場合、制御装置32は、温度および湿度の調整を促す表示をしているか否かを判定する(ステップS27B)。
【0080】
制御装置32は、温度および湿度の調整を促す表示をしている場合、温度および湿度の調整を促す表示を水分量表示装置10から消去し、表示ユニット1の駆動が可能であることを示すメッセージを水分量表示装置10に表示する(ステップS28C)。ステップS28Cの後、または、ステップS27BにおいてNOと判定した後、制御装置32は、S29において終了条件が成立しているか否かを判定する。終了条件が成立していない場合、制御装置32は、再び、ステップS20に戻る。
【0081】
以下、制御装置32は、終了条件が成立するまで、S20以降の処理を繰り返す。制御装置32は、終了条件が成立したと判定した場合(ステップS29にてYES)、本フローチャートに基づく処理を終了する。
【0082】
以上説明したとおり、実施の形態2に係る表示装置102によれば、表示ユニット1を駆動しても問題のない環境であるか否かをユーザーが知ることのできる情報が水分量表示装置10に表示される。このため、表示装置101よりもユーザーにとってより利便性の高い機能を提供できる。
【0083】
また、実施の形態2に係る表示装置102によれば、封止材9の吸湿水分量が閾値以下となった状態で表示ユニット1を使用することが促進される。このため、封止材9の温度が上昇することで封止材9に多量に含まれる水分が膨張し、封止材9とLEDチップ5との剥離、LEDチップ5と基板6との剥離、およびボンディングワイヤ8とLEDチップ5との剥離が発生することを抑制できる。その結果、LEDチップ5が破損することを防止できる。さらに、剥離した部分に水分が侵入し、LEDチップ5を構成する材料が腐食したり、電極間のマイグレーションによる劣化が発生したりすることを抑制できる。
【0084】
なお、水分量表示装置10と制御装置32とは通信可能に接続されていれば、その接続形態は有線および無線のいずれであってもよい。また、水分量表示装置10は、表示装置102に実装されたものであっても、表示装置102とは独立したものであってもよい。水分量表示装置10を設けることなく、表示ユニット1の一部の表示エリアを用いて必要な情報を表示してもよい。
【0085】
実施の形態3.
<表示装置103の構成>
図9は、実施の形態3に係る表示装置103の構成を示す図である。実施の形態3に係る表示装置103は、表示ユニット1aを備える。表示ユニット1aは、加熱機構11を備える点で実施の形態1に係る表示ユニット1と異なる。加熱機構11は、表示ユニット1aに配置された発光素子4を温める。加熱機構11が機能することによって、発光素子4を覆う封止材9の吸湿水分量を低下させることができる。加熱機構11は、たとえば、表示ユニット1aの背面において縦方向および横方向に複数配列される。
【0086】
封止材9の樹脂の水分を放出させるため、加熱機構11は表示装置103が置かれた空間の温度よりも高い温度で封止材9を加熱する能力を備える。加熱機構11は電流を流すことにより熱を発生させるヒーターなどで構成することが望ましく、そのような構成においては、ヒーターは、表示装置103の電源を利用することができる。
【0087】
加熱機構11は、実施の形態3に係る制御装置33に接続されている。制御装置33は、実施形態1に係る制御装置31のプロセッサ311、入出力ポート312、およびメモリ313に対応するそれぞれの構成を備える。実施の形態3に係る制御装置33は、実施の形態1に係る制御装置31が有するすべての機能に加えて、加熱機構11を制御する機能を備える。
【0088】
<表示装置103の処理手順>
図10は、表示装置103の処理手順を示すフローチャートである。本フローチャートに基づく処理は、表示装置103が備える制御装置33により実行される。本フローチャートに基づく処理を実行するために必要なプログラムは、制御装置33に格納されている。
【0089】
図10に示すフローチャートのステップS30〜ステップS35の処理は、実施の形態1として説明した
図6に示すステップS10〜ステップS15の処理と同様であるので、ここではその説明を繰り返さない。なお、ステップS34において吸湿水分量を算出するための算出式の概念は、S14に示したとおりである。
【0090】
制御装置33は、ステップS35において算出履歴を更新した後、封止材9の吸湿水分量が閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS36A)。ステップS36Aの判定内容は、実施の形態2として説明したステップS27Aと同じであるので、ここでは、これ以上の説明を繰り返さない。
【0091】
制御装置33は、吸湿水分量が閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS36AにてYES)、表示ユニット1aを駆動する要求があるか否かを判定する(ステップS36C)。たとえば、ユーザーが表示ユニット1aの電源をオンにする操作を検出したときに、制御装置33は、表示ユニット1aを駆動する要求があると判定する。
【0092】
制御装置33は、表示ユニット1aを駆動する要求がないと判定した場合(ステップS36CにてNOと判定)、加熱機構11を動作させることなく、終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS39)。終了条件を判定する処理は、
図6のステップS17と同様であるので、ここではその説明を繰り返さない。終了条件が成立していない場合、制御装置33は、ステップS30に戻る。
【0093】
制御装置33は、表示ユニット1aを駆動する要求があると判定した場合(ステップS36CにてYESと判定)、加熱機構11で表示ユニット1aを加熱する(ステップS37)。したがって、表示ユニット1aは、加熱された状態で駆動する。表示ユニット1aが加熱されることにより、発光素子4を覆う封止材9の吸湿水分量は徐々に低下する。これにより、発光素子4が破損することを防止できる。制御装置33は、ステップS37の後、終了条件が成立していない場合にステップS30に戻る。
【0094】
制御装置33は、ステップS30に戻り、時間Taが経過するまで待機する。ここでは、時間Taが経過するまでの間に、加熱機構11の働きによって封止材9の吸湿水分量が閾値以下に変化したものとする。すると、制御装置33は、ステップS36Aにおいて、NOと判定する。この場合、制御装置33は、加熱機構11が作動中か否かを判定する(ステップS36B)。
【0095】
制御装置33は、加熱機構11が作動中であると判定した場合(ステップS36BにてYES)、加熱機構11による加熱動作を停止させる(ステップS38)。これにより、表示ユニット1aが必要以上に加熱されてしまうことを防止できる。制御装置33は、ステップS38の後、または、ステップS36BにてNOと判定した後、ステップS39において、終了条件が成立したか否かを判定する。制御装置33は、終了条件が成立していない場合、再び、ステップS30に戻る。
【0096】
以下、制御装置33は、終了条件が成立するまで、S30以降の処理を繰り返す。制御装置33は、終了条件が成立したと判定した場合(ステップS39にてYES)、本フローチャートに基づく処理を終了する。
【0097】
以上説明したとおり、実施の形態3に係る表示装置103によれば、封止材9の吸湿水分量が閾値より大きい状態で表示ユニット1aが駆動するときに、加熱機構11によって表示ユニット1aが加熱される。その結果、封止材9の吸湿水分量が低下する。したがって、実施の形態3によれば、発光素子4が破損する可能性のある状態で表示ユニット1aが駆動し続けることを防止できる。
【0098】
そのため、実施の形態2と同様に、封止材9の温度が上昇することで封止材9に含まれる多量の水分が膨張し、封止材9とLEDチップ5との剥離、LEDチップ5と基板6との剥離、およびボンディングワイヤ8とLEDチップ5との剥離が発生することを抑制できる。その結果、LEDチップ5が破損することを防止できる。さらに、剥離した部分に水分が侵入し、LEDチップ5を構成する材料が腐食したり、電極間のマイグレーションによる劣化が発生したりすることを抑制できる。
【0099】
制御装置33に対して、表示ユニット1aを駆動する要求を検出した場合にその要求を許可するか否かを判定する機能と、許可しないと判定したときに表示ユニット1aの駆動を制限する機能とを設けてもよい。たとえば、制御装置33は、封止材9の吸湿水分量が閾値を超える状態で表示ユニット1aを駆動する要求を検出した場合、表示ユニット1aを駆動することなく、加熱機構11を動作させてもよい。制御装置33は、加熱機構11を動作させた後、封止材9の吸湿水分量が閾値以下となった段階で、表示ユニット1aを自動的に駆動させてもよい。
【0100】
制御装置33は、ステップS36Aにおいて、封止材9の吸湿水分量が閾値を超えると判定した場合、加熱機構11を動作させることに加えて、温度および湿度の調整をユーザーに促すメッセージを出力してもよい。制御装置33が出力したメッセージを表示するため、表示装置103に実施の形態2の水分量表示装置10を設けてもよい。
【0101】
実施の形態4.
<表示装置104の構成>
図11は、実施の形態4に係る表示装置104の構成を示す図である。実施の形態4に係る表示装置104は、実施の形態1に係る表示装置101の構成に対して、輝度調整装置12が追加されている。輝度調整装置12は制御装置34と表示ユニット1とに接続されている。輝度調整装置12は表示ユニット1の輝度を調整する機能を備える。
【0102】
実施の形態4に係る制御装置34は、実施形態1に係る制御装置31のプロセッサ311、入出力ポート312、およびメモリ313に対応するそれぞれの構成を備える。実施の形態4に係る制御装置34は、実施の形態1に係る制御装置31が有するすべての機能に加えて、輝度調整装置12を制御する機能を備える。
【0103】
制御装置34は、発光素子4を覆う封止材9の吸湿水分量が大きい状態で表示ユニット1を駆動するときに、輝度調整装置12を制御して表示ユニット1の輝度を徐々に目標値まで上げる。このため、表示ユニット1を駆動するときに輝度を目標値まで瞬時に上げてしまう場合と比較して、封止材9の温度上昇が緩やかになる。これにより、封止材9の温度が急上昇することで封止材9が急激に膨張してしまうことを防止できる。
【0104】
<表示装置104の処理手順>
図12は、表示装置104の処理手順を示すフローチャートである。本フローチャートに基づく処理は、表示装置104が備える制御装置34により実行される。本フローチャートに基づく処理を実行するために必要なプログラムは、制御装置34に格納されている。
【0105】
図12に示すフローチャートのステップS40〜ステップS45の処理は、実施の形態1として説明した
図6に示すステップS10〜ステップS15の処理と同様であるので、ここではその説明を繰り返さない。なお、ステップS44において吸湿水分量を算出するための算出式の概念は、S14に示したとおりである。
【0106】
制御装置34は、ステップS45において算出履歴を更新した後、封止材9の吸湿水分量が閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS46)。ステップS46の判定内容は、実施の形態2として説明したステップS27Aと同じであるので、ここでは、これ以上の説明を繰り返さない。
【0107】
制御装置34は、吸湿水分量が閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS46にてYES)、表示ユニット1を駆動する要求があるか否かを判定する(ステップS47)。たとえば、ユーザーが表示ユニット1の電源をオンにする操作を検出したときに、制御装置34は、表示ユニット1を駆動する要求があると判定する。
【0108】
制御装置34は、表示ユニット1を駆動する要求がないと判定した場合(ステップS47にてNOと判定)、輝度調整装置12を動作させることなく、終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS49)。終了条件を判定する処理は、
図6のステップS17と同様であるので、ここではその説明を繰り返さない。終了条件が成立していない場合、制御装置33は、ステップS40に戻る。
【0109】
制御装置34は、表示ユニット1を駆動する要求があると判定した場合(ステップS47にてYESと判定)、輝度調整装置12を制御することにより、表示ユニット1の輝度を目標値まで徐々に上昇させる(ステップS48)。これにより、発光素子4の封止材9の温度が急上昇することで封止材9が急激に膨張してしまうことを防止できる。制御装置34は、ステップS48の後、終了条件が成立していない場合にステップS40に戻る。
【0110】
以下、制御装置34は、終了条件が成立するまで、S40以降の処理を繰り返す。制御装置34は、終了条件が成立したと判定した場合(ステップS49にてYES)、本フローチャートに基づく処理を終了する。
【0111】
以上説明したとおり、実施の形態4に係る表示装置104によれば、封止材9の吸湿水分量が閾値より大きい状態で表示ユニット1aが駆動するときに、輝度調整装置12によって表示ユニット1の輝度が目標値にまで徐々に上昇する。このため、表示ユニット1を駆動するときに輝度を目標値まで瞬時に上げてしまう場合と比較して、封止材9の温度上昇が緩やかになる。これにより、封止材9の温度が急上昇することで封止材9が急激に膨張してしまうことを防止できる。したがって、実施の形態4によれば、発光素子4が破損する可能性のある状態で表示ユニット1aが駆動することを防止できる。
【0112】
そのため、実施の形態2および実施の形態3と同様に、封止材9の温度が急上昇することで封止材9に含まれる水分が急激に膨張し、封止材9とLEDチップ5との剥離、LEDチップ5と基板6との剥離、およびボンディングワイヤ8とLEDチップ5との剥離が発生することを抑制できる。その結果、LEDチップ5が破損することを防止できる。さらに、剥離した部分に水分が侵入し、LEDチップ5を構成する材料が腐食したり、電極間のマイグレーションによる劣化が発生したりすることを抑制できる。
【0113】
<変形例>
温湿度センサ2は温度と湿度とを測定するセンサである。しかし、温湿度センサ2に代えて、温度を測定する温度センサと湿度を測定する湿度センサとを表示装置101に設けてもよい。
【0114】
ローカルエリアネットワークやインターネットを通じて表示ユニット1および温湿度センサ2に制御装置31を接続してもよい。実施の形態2〜4に係る制御装置32〜34も同様である。
【0115】
水分量表示装置10は、制御装置32が出力した映像信号に基づいて、ユーザーに向けて様々なメッセージを表示する。しかし、水分量表示装置10に変えて、あるいは水分量表示装置10に加えて、スピーカを表示装置102に設けてもよい。この場合、制御装置32は、ユーザーに向けて様々なメッセージを音声でスピーカから出力する。
【0116】
実施の形態4に係る表示装置104に対して、実施の形態3に関わる加熱機構11を追加してもよい。この場合、ステップS48において、制御装置34は、輝度調整装置12で輝度を徐々させつつ、加熱機構11で表示ユニット1を加熱してもよい。
【0117】
<開示の特徴>
以下、本開示の特徴のいくつかを列挙する。
【0118】
(1)本開示に係る表示装置(101,102,103,104)は、樹脂を含む封止材(9)で覆われた発光素子(4)を含む表示ユニット(1,1a)と、制御装置(31,32,33,34)とを備え、制御装置は、表示装置が配置された空間の温度および湿度を繰り返し取得(S11,S21,S31,S41)し、取得した温度および湿度に基づいて、封止材の吸湿水分量の算出に必要なデータ(飽和吸湿水分量、拡散係数)を算出(S12,S13,S22,S23,S32,S33,S42,S43)し、第1タイミングで温度および湿度を取得したときに算出したデータ(飽和吸湿水分量)と、第2タイミングで温度および湿度を取得したときに算出したデータ(飽和吸湿水分量、拡散係数)と、第1タイミングと第2タイミングとの時間間隔(Ta)とに基づいて、封止材の吸湿水分量を算出する(S14,S24,S34,S44)。
【0119】
(2)表示装置は、温度と樹脂の拡散係数との関係を定めた拡散係数データ(316)と、湿度と樹脂の飽和吸湿水分量との対応関係を定めた水分量データ(315)とを格納する記憶部(313)をさらに備え、制御装置は、水分量データと第1タイミングで取得した湿度とに基づいて、第1タイミングにおける飽和吸湿水分量を算出(S12,S22,S32,S42)し、水分量データと第2タイミングで取得した湿度とに基づいて、第2タイミングにおける飽和吸湿水分量を算出(S12,S22,S32,S42)し、拡散係数データと第2タイミングで取得した温度とに基づいて、第2タイミングにおける拡散係数を算出(S13,S23,S33,S43)し、第1タイミングにおける飽和吸湿水分量と、第2タイミングにおける飽和吸湿水分量と、第2タイミングにおける拡散係数と、時間間隔とに基づいて、封止材の吸湿水分量を算出する(S14,S24,S34,S44)。
【0120】
(3)制御装置は、封止材の吸湿水分量が閾値より大きい場合、空間の環境の改善をユーザーに促す情報を出力する(S28A,S28B)。
【0121】
(4)制御装置は、封止材の吸湿水分量が閾値より大きい状態で発光素子が駆動している場合、発光素子の駆動停止をユーザーに促す情報を出力する(S28A)。
【0122】
(5)表示装置は、封止材を加熱する加熱機構(11)をさらに備え、制御装置は、封止材の吸湿水分量が閾値より大きい場合、加熱機構により封止材を加熱する(S37)。
【0123】
(6)制御装置は、封止材の吸湿水分量が閾値より大きい場合、発光素子の輝度を目標値に向かって徐々に上昇させる(S48)。
【0124】
(7)樹脂を含む封止材で覆われた発光素子(4)を備える表示装置(101,102,103,104)に接続される制御装置(31,32,33,34)であって、表示装置が配置された空間の温度および湿度の入力を受け付ける受付部(入出力ポート312)と、封止材の吸湿水分量を算出する処理装置(プロセッサ311)とを備え、処理装置は、表示装置が配置された空間の温度および湿度を繰り返し取得(S11,S21,S31,S41)し、取得した温度および湿度に基づいて、封止材の吸湿水分量の算出に必要なデータ(飽和吸湿水分量、拡散係数)を算出(S12,S13,S22,S23,S32,S33,S42,S43)し、第1タイミングで温度および湿度を取得したときに算出したデータ(飽和吸湿水分量)と、第2タイミングで温度および湿度を取得したときに算出したデータ(飽和吸湿水分量、拡散係数)と、第1タイミングと第2タイミングとの時間間隔(Ta)とに基づいて、封止材の吸湿水分量を算出する(S14,S24,S34,S44)。
【0125】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
表示装置(101)は、樹脂を含む封止材(9)で覆われた発光素子(4)を含む表示ユニット(1)と、制御装置(31)とを備える。制御装置は、表示装置が配置された空間の温度および湿度を繰り返し取得し、取得した温度および湿度に基づいて、封止材の吸湿水分量の算出に必要なデータを算出する。制御装置は、第1タイミングで温度および湿度を取得したときに算出したデータと、第2タイミングで温度および湿度を取得したときに算出したデータと、第1タイミングと第2タイミングとの時間間隔とに基づいて、封止材の吸湿水分量を算出する。