(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980180
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】成膜装置および成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20211202BHJP
C23C 16/448 20060101ALI20211202BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
C23C16/455
C23C16/448
B05D3/12 F
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-220079(P2016-220079)
(22)【出願日】2016年11月10日
(65)【公開番号】特開2018-76568(P2018-76568A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴博
(72)【発明者】
【氏名】柳生 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】人羅 俊実
【審査官】
今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−140356(JP,A)
【文献】
特開2005−307238(JP,A)
【文献】
特開2018−076565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
C23C 16/448
B05D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料溶液を霧化または液滴化してミストまたは液滴を得る霧化・液滴化部、および前記ミストまたは前記液滴を、熱反応させることにより基体上に成膜する成膜部を備える成膜装置であって、前記成膜部が、前記ミストまたは前記液滴を第1の温度で加熱し、前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱された基体上で熱反応させるように構成されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記成膜部が、ホットプレートを有しており、前記ミストまたは前記液滴が該ホットプレートに衝突して跳ね返ることにより、流れの進行方向が変わるように構成された請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1の温度での加熱を、前記ホットプレートを用いて行う請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記成膜部が、第1および第2の加熱手段を有しており、第1の加熱手段において、前記ミストまたは前記液滴を前記第1の温度で加熱し、第2の加熱手段において、前記基体を前記第2の温度で加熱する請求項1〜3のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記ミストまたは前記液滴を、キャリアガスを用いて前記霧化・液滴化部から前記成膜部に搬送する請求項1〜4のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項6】
前記霧化・液滴化部が超音波振動子を備えており、霧化または液滴化を、超音波振動により行うように構成されている請求項1〜5のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項7】
原料溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴を熱反応させることにより基体上に成膜する成膜方法であって、前記ミストまたは前記液滴を第1の温度で加熱し、前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱された基体上で熱反応させることにより前記基体上に成膜することを特徴とする成膜方法。
【請求項8】
前記ミストまたは前記液滴をホットプレートに衝突させて跳ね返す請求項7記載の成膜方法。
【請求項9】
前記第1の温度での加熱を、前記ホットプレートを用いて行う請求項8記載の成膜方法。
【請求項10】
霧化または液滴化後、前記ミストまたは前記液滴をキャリアガスを用いて搬送する請求項7〜9のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項11】
霧化または液滴化を、超音波振動により行う請求項7〜10のいずれかに記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、発光デバイス、タッチパネルおよびセンサなどに有用な膜が得られる新規な成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の基板に各種の薄膜が成膜された積層体が従来から知られており、これら積層体は、光学ミラーや光学フィルターのように光学的な機能を備える等の、各種の機能を備える製品として用いられている。そして、成膜される基板としてアクリル等のプラスチック製の基板が用いられることがあり、かかるプラスチック製の基板に金属酸化物等を材質とする各種の機能性膜が形成されることがある。しかし、アクリル等の熱可塑性樹脂からなる基板は、耐熱性が低く、一般に200℃以上の高温に耐えられないため、比較的低温で金属酸化物等を材質とする膜を形成する必要がある。また、熱可塑性樹脂からなるプラスチック基板に、各種の金属酸化物等の膜を成膜しようとすると、基板に対する密着性の高い膜を形成することが困難であり、基板上に形成された膜が剥がれ易い等の問題があった。
【0003】
特許文献1には、スパッタリング法を用いて、PETからなる熱可塑性樹脂基板上に酸化ジルコニウムからなる下地層を形成し、ついで、下地層上にITO等の金属酸化物を形成することにより、透明導電フィルムを得ることが記載されている。また、特許文献2には、スパッタリング法を用いて、プラスチック基板に対して密着性の高いアンダーコート層を形成し、このアンダーコート層に親水性を備えさせて、金属酸化物等からなる機能性膜を形成することが記載されている。
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載のスパッタリング法では、プラズマによるダメージ受けて熱可塑性樹脂基板が熱変形したり黄変したりして、基板に悪影響を及ぼしてしまう問題があった。さらに、下地層またはアンダーコート層を設ける必要があったり、真空装置が必要であるなど、製造プロセスも複雑になってしまう問題があった。
【0004】
特許文献3には、亜鉛化合物および錫化合物を含有する霧状の溶液または分散液を、加熱した基板に吹き付けることにより、透明導電性非晶質膜を製造することが記載されている。また、基板の例として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の有機フィルムが挙げられているが、特許文献3に記載のような、溶液を基板に吹き付けて成膜する成膜装置を用いた場合には、衝突エネルギーによって、膜の均一性や密着性に悪影響を及ぼす問題があった。
【0005】
特許文献4には、酸化マグネシウムの原料溶液を霧化させ、発生したミスト状の酸化マグネシウム原料を加熱された基板上に供給し熱分解させることで、基板上に酸化マグネシウム膜を形成することが記載されている。また、基板の例として、プラスチックが挙げられている。しかしながら、特許文献4に記載の成膜装置を用いた場合には、霧化させたミストの粒径を制御することが難しく、加熱後のミストの消滅時間にもばらつきがあるため、膜均一性や基板との密着性に支障をきたしていた。
【0006】
そのため、簡略な装置構成によって、熱可塑性樹脂等からなる基板上であっても、アンダーコート層等を設けることなく、直接成膜することができ、基体との密着性に優れた膜を成膜することのできる、工業的に有用な成膜装置が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−247075号公報
【特許文献2】特開2003−80625号公報
【特許文献3】特開2011−210422号公報
【特許文献4】特開2013−180942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、簡略な装置構成によって、熱可塑性樹脂等からなる基体上であっても、前記基体との密着性に優れた膜を成膜することができる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、原料溶液を霧化または液滴化してミストまたは液滴を得る霧化・液滴化部、および前記ミストまたは前記液滴を、熱反応させることにより基体上に成膜する成膜部を備える成膜装置であって、前記成膜部が、前記ミストまたは前記液滴を第1の温度で加熱
し、前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱された基体上で熱反応させるように構成されている成膜装置を用いて成膜を行うと、簡略な装置構成によって、熱可塑性樹脂等からなる基板上であっても、前記基体との密着性に優れた膜を成膜できることを見出し、このような成膜装置が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを知見した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 原料溶液を霧化または液滴化してミストまたは液滴を得る霧化・液滴化部、および前記ミストまたは前記液滴を、熱反応させることにより基体上に成膜する成膜部を備える成膜装置であって、前記成膜部が、前記ミストまたは前記液滴を第1の温度で加熱
し、前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱された基体上で熱反応させるように構成されていることを特徴とする成膜装置。
[2] 前記成膜部が、ホットプレートを有しており、前記ミストまたは前記液滴
が該ホットプレートに衝突
して跳ね返ることにより
、流れの進行方向
が変わるように構成された請求項1記載の成膜装置。
[3] 前記第1の温度での加熱を、前記ホットプレートを用いて行う前記[2]記載の成膜装置。
[4] 前記成膜部が、第1および第2の加熱手段を有しており、第1の加熱手段において、前記ミストまたは前記液滴を前記第1の温度で加熱し、第2の加熱手段において、前記基体を前記第2の温度で加熱する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の成膜装置。
[5] 前記ミストまたは前記液滴を、キャリアガスを用いて前記霧化・液滴化部から前記成膜部に搬送する前記[1]〜[4]のいずれかに記載の成膜装置。
[6] 前記霧化・液滴化部が超音波振動子を備えており、霧化または液滴化を、超音波振動により行うように構成されている前記[1]〜[5]のいずれかに記載の成膜装置。
[7] 原料溶液を霧化または液滴化し、得られたミストまたは液滴を熱反応させることにより基体上に成膜する成膜方法であって、前記ミストまたは前記液滴を第1の温度で加熱し
、前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱された基体上で熱反応させることにより前記基体上に成膜することを特徴とする成膜方法。
[8] 前記ミストまたは前記液滴
をホットプレートに衝突させて
跳ね返す前記[7]記載の成膜方法。
[9] 前記第1の温度での加熱を、前記ホットプレートを用いて行う前記[8]記載の成膜方法。
[10] 霧化または液滴化後、前記ミストまたは前記液滴をキャリアガスを用いて搬送する前記[7]〜[9]のいずれかに記載の成膜方法。
[11] 霧化または液滴化を、超音波振動により行う前記[7]〜[10]のいずれかに記載の成膜方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の成膜装置によれば、簡略な装置構成によって、熱可塑性樹脂等からなる基体上であっても、前記基体との密着性に優れた膜を成膜することができる。また、本発明の成膜方法によれば、簡単且つ容易に、工業的有利に、熱可塑性樹脂等の耐熱性の低い材質からなる基体上であっても、前記基体に悪影響を及ぼすことなく、前記基体との密着性に優れた膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明において用いられる成膜装置(ミストCVD)の概略構成図である。
【
図2】本発明の成膜工程の一態様を模式的に示す図である。
【
図3】本発明に用いられる霧化・液滴化部の一態様を説明する図である。
【
図4】
図2における超音波振動子の一態様を示す図である。
【
図5】実施例1における光透過率の測定結果を示す図である。
【
図6】本発明において用いられる成膜装置(ミストCVD)の好適な一態様を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の成膜装置は、原料溶液を霧化または液滴化してミストまたは液滴を得る霧化・液滴化部、および前記ミストまたは前記液滴を、熱反応させることにより基体上に成膜する成膜部を備える成膜装置であって、前記成膜部が、前記ミストまたは前記液滴を第1の温度で加熱
し、前記第1の温度よりも低い第2の温度に加熱された基体上で熱反応させるように構成されていることを特長とする。
【0014】
(霧化・液滴化部)
霧化・液滴化部では、前記原料溶液を霧化または液滴化してミストまたは液滴を得る。霧化手段または液滴化手段は、前記原料溶液を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段または液滴化手段が好ましい。超音波を用いて得られたミストまたは液滴は、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストが、衝突エネルギーによる損傷がないためにより好ましい。液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1〜10μmである。
【0015】
図3は、霧化・液滴化部の一態様を示している。原料溶液4aが収容されている容器からなるミスト発生源4が、水5aが収容されている容器5に、支持体(図示せず)を用いて収納されている。容器5の底部には、超音波振動子6が備え付けられており、超音波振動子6と発振器16とが接続されている。そして、発振器16を作動させると、超音波振動子6が振動し、水5aを介して、ミスト発生源4内に超音波が伝播し、原料溶液4aが霧化または液滴
化するように構成されている。
【0016】
図4は、
図3に示されている超音波振動子6の一態様を示している。
図3の超音波振動子は、支持体6e上の円筒状の弾性体6d内に、円板状の圧電体素子6bが備え付けられており、圧電体素子6bの両面に電極6a、6cが設けられている。そして、電極に発振器を接続して発振周波数を変更すると、圧電振動子の厚さ方向の共振周波数及び径方向の共振周波数を持つ超音波が発生されるように構成されている
【0017】
(原料溶液)
前記原料溶液は、霧化または液滴化が可能なものであれば特に限定されず、公知の原料溶液であってよく、ゾルのような液体分散媒も含まれる。有機化合物を含む原料溶液であってもよいし、無機化合物を含む原料溶液であってもよい。本発明においては、前記原料溶液が、成膜用の原料溶液であるのが好ましく、金属を含むものであるのがより好ましい。前記金属としては、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)および金(Au)から選ばれる1種または2種以上の金属などが挙げられる。また、前記原料溶液は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。前記原料溶液中の前記金属の含有量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、好ましくは、0.001モル%〜50モル%であり、より好ましくは0.01モル%〜50モル%である。
【0018】
前記ミストまたは液滴は、例えば成膜室内に設置されている基体近傍まで搬送される。前記搬送手段は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知の搬送手段であってよい。本発明においては、キャリアガスおよび所望により供給管等を用いて前記ミストまたは前記液滴を前記基体近傍へ搬送するのが好ましい。キャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、反応容器内での線速(より具体的には、反応室は高温になっており、環境に依存して変化してしまうため、室温を仮定して換算される線速)で、0.1m/s〜100m/sが好ましく、1m/s〜10m/sがより好ましい。
【0019】
(成膜部)
成膜部では、例えば成膜室内に設置されている基体近傍で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、前記基体上に成膜する。前記成膜部は、前記ミストまたは前記液滴を加熱し、ついで、加熱された前記ミストまたは前記液滴の流れの進行方向を変える手段を有しており、進行方向が変わった前記ミストまたは前記液滴を熱反応させるように構成されている。本発明においては、前記成膜部が、ホットプレートを有しており、前記ミストまたは前記液滴を、該ホットプレートに衝突させて、前記ミストまたは前記液滴が跳ね返ることにより、前記ミストまたは前記液滴の流れの進行方向を変えるように構成されているのが好ましい。前記加熱手段は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、本発明においては、前記加熱を、前記ホットプレートを用いて行うのが好ましい。熱反応を行う際の条件等については特に制限されず、通常、前記加熱は、高すぎない温度(例えば1000℃)以下で行うが、500℃以下がより好ましく、300℃以下が最も好ましい。
【0020】
本発明においては、前記成膜部が、第1および第2の加熱手段を有しており、第1の加熱手段において、前記ミストまたは前記液滴を加熱し、第2の加熱手段において、前記基体を加熱するのも好ましい。この場合、第1の加熱手段の加熱温度が、第2の加熱手段の加熱温度よりも高温であるのが好ましい。第2の加熱手段8bを用いる場合には、
図6に示す成膜装置1を好適に用いることができる。なお、
図6に示す成膜装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、前駆体溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ供給管9と、成膜室7内に設置された加熱手段8a、8bとを備えている。なお、成膜室7内のホットプレート(第1の加熱手段)8a表面から離れた位置に、基板ホルダー11によって、基板10が保持されており、基板10は、ホットプレート8b(第2の加熱手段)に連設されている。このような成膜装置1を用いることにより、より均質な膜を得ることができる。
【0021】
また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、膜厚は、成膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0022】
図2は、本発明の好ましい成膜部の一態様を示している。
図2に示す成膜部には、ホットプレート8の近傍に、基板ホルダー11によって基板10が保持されている。また、霧化・液滴化部で発生したミスト4bをホットプレート8まで搬送するための供給管9を通じて、供給管9の先端部よりホットプレート8に対して前記ミストまたは前記液滴が搬送されるように構成されている。前記搬送工程によって搬送された前記ミスト4bは、供給管9を通してホットプレート8に衝突し、ついで、跳ね返りミスト4cが、図中の矢印で示されるように、進行方向を変えて、基板10近傍へ搬送される。跳ね返りミスト4cは、通常、消滅時間が長く、均一な粒径を有している。基板10近傍に搬送されたミスト4cは、基板10上で熱反応することにより、基板10上に成膜されるように構成されている。なお、基板ホルダー11には熱電対(図示せず)がマウントされており、基板温度が計測できるように構成されている。また、基板温度は、基板10とホットプレート8との距離を調整することにより、設定することができる。
【0023】
(基体)
前記基体は、前記膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。本発明においては、熱可塑性樹脂等からなる基体を用いた場合であっても、前記基体に悪影響を及ぼすことなく、前記基体との密着性に優れた膜を成膜することができる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、セルロースエステル、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、ポリメチルメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)またはその共重合体樹脂もしくは変性樹脂等のアクリル樹脂、ポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられる。本発明においては、前記熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂であるのが好ましく、ポリメチルメタクリル酸メチル樹脂であるのがより好ましい。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されない。
【0024】
上記のような成膜装置を用いて成膜することで、簡略な装置構成によって、工業的有利に、熱可塑性樹脂等からなる基体上であっても、前記基体との密着性に優れた膜を成膜することができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
1.成膜装置
図1を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置1を説明する。ミストCVD装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、前駆体溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ供給管9と、成膜室7内に設置されたホットプレート8とを備えている。なお、成膜室7内のホットプレート8表面から離れた位置に、基板ホルダー11によって、基板10が保持されており、基板10とホットプレート8との距離を、ホットプレートの温度が400℃の時に基板温度が70℃になるように、基板位置が設定されている。また、基板ホルダー11には、熱電対(図示せず)がマウントされており、基板温度が計測できるように構成されている。
【0027】
2.原料溶液の作製
メタノール溶媒に、チタンアセチルアセトナートを0.05モル/Lの濃度となるように混合して原料溶液を調整した。
【0028】
3.成膜準備
上記2.で得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。次に、基板10として、アクリル樹脂基板を用いた。ホットプレート8を作動させてホットプレート8表面の温度を400℃にまで昇温させた。基板温度が70℃であることを確認し、次に、流量調節弁3aを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段2aからキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を3.0L/分に調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
【0029】
4.酸化チタン膜の形成
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化させてミスト4bを生成させた。このミスト4bが、キャリアガスによって、供給管9内を通って、成膜室7内に設置されたホットプレート8に向けて導入され、ついで、ホットプレート8表面でミスト4bが加熱されるとともに、流れの進行方向が変わった跳ね返りミスト4cが、基板10近傍に搬送され、大気圧下にて、熱反応することにより、基板10上に酸化チタン膜が形成された。なお、膜厚は30nmであり、成膜時間は30分間であった。
【0030】
5.評価
上記4.にて得られた酸化チタン膜は、透明な膜であった。また、機械的に基板から剥離しようとしても全く剥離せず、良好な密着性を有していた。また、得られた酸化チタン膜の光透過率を測定したところ、
図5の通り、波長350nm以上における光透過率が80%以上であり、380nm以上における光透過率が85%以上であった。
【0031】
(実施例2)
成膜時間を300分としたこと以外は、実施例1と同様にして、透明な酸化チタン膜を得た。得られた酸化チタン膜の膜厚は、600nmであった。また、機械的に基板から剥離しようとしても全く剥離せず、良好な密着性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の成膜装置および成膜方法は、あらゆる成膜分野に用いることができ、工業的に有用である。特に、ミストCVD法によって、熱可塑性樹脂からなる基体上に成膜する場合には、本発明の成膜装置および成膜方法を好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ミストCVD装置
2a キャリアガス源
3a 流量調節弁
4 ミスト発生源
4a 原料溶液
4b ミスト
4c 跳ね返りミスト
5 容器
5a 水
6 超音波振動子
6a 電極
6b 圧電体素子
6c 電極
6d 弾性体
6e 支持体
7 成膜室
8 ホットプレート
8a 第1の加熱手段
8b 第2の加熱手段
9 供給管
10 基板
11 基板ホルダー
16 発振器