【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書においては、陰イオン交換膜および陽イオン交換膜が互いに対面して接触しており、それぞれの陽イオン交換膜と陰イオン交換膜は、互いに逆相で噛み合う2以上の凹凸を有する分離膜複合体が提供される。
【0013】
また、本明細書においては、前記分離膜複合体を含むレドックスフロー電池が提供される。
【0014】
以下発明の具体的な実施形態による分離膜複合体およびレドックスフロー電池についてより詳細に説明する。
【0015】
発明の一実施形態によれば、陰イオン交換膜および陽イオン交換膜が互いに対面して接触しており、それぞれの陽イオン交換膜と陰イオン交換膜は、互いに逆相で噛み合う2以上の凹凸を有する分離膜複合体が提供され得る。
【0016】
本発明者らは電池の分離膜に関する研究を行い、陰イオン交換膜(または陽イオン交換膜)の基材面上に形成された2以上の凹凸を形成し、陽イオン交換膜(または陰イオン交換膜)の一面に前記陰イオン交換膜の凹凸と逆相である凹凸が形成してこれらを結合して提供される分離膜複合体を製造し、このような分離膜複合体が充電時生成される活物質のクロスオーバーを効果的に制御することができ、陽イオンおよび陰イオン移動の制御によりエネルギ効率、電圧効率および電荷量効率を大きく向上させ得ることを実験により確認して発明を完成した。
【0017】
前記分離膜複合体は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜のうち一つが機械的強度あるいは化学的安定性が低下する場合にも他の一つの交換膜がそれを補完する役割をすることができる。また、前記凹凸が噛み合っている形状による構造によって前記2種類の交換膜の結合力を大きく強化させることになり、前記分離膜複合体は堅固な内部構造を有することができる。
【0018】
前記凹凸の「逆相」は、陰イオン交換膜または陽イオン交換膜のうちいずれか一つに形成された凹凸に対応する形状を意味し、例えば所定の凹凸とその逆相はそれぞれの凹部と凸部が接して重なり得る。
【0019】
すなわち、前記分離膜複合体において陰イオン交換膜と陽イオン交換膜は凹凸を媒介として結合されており、前記陰イオン交換膜の凹部と陽イオン交換膜の凸部が接して結合され得、前記陰イオン交換膜の凸部と陽イオン交換膜の凹部が接して結合され得る。
【0020】
前記分離膜複合体はレドックスフロー電池に使用されることができる。前記レドックスフロー電池の具体的な種類は限定されるものではないが、例えば、亜鉛−臭素(zinc−bromine)レドックスフロー電池またはバナジウム(vanadium)レドックスフロー電池であり得る。
【0021】
前記分離膜複合体の厚さは、使用する電池の容量や大きさなどに応じて変わり、例えば10μm〜200μm、30μm〜100μm、40μm〜80μmの範囲であり得る。
【0022】
前記陰イオン交換膜の表面に形成される凹凸は、マイクロ単位の高さおよび幅を有することができる。
【0023】
例えば、前記陰イオン交換膜の基材面から定義される前記凹凸の高さが1μm〜200μm、または20μm〜80μmであり得る。
【0024】
また、前記陰イオン交換膜の基材面に平行方向に定義される微細凹凸の幅が1μm〜200μm、または20μm〜80μmであり得る。
【0025】
前記陰イオン交換膜の表面に形成される凹凸の具体的な形状は、大きく限定されるものではなく、線状、微細突起型、連続相パターンなどの形態であり得る。
【0026】
前記凹凸が微細突起型である場合、円柱、円錐台、多角柱、多角錐台、逆円錐台または逆多角錐台の形状を有する柱部を有し得る。
【0027】
また、前記凹凸が線状である場合、前記陰イオン交換膜の基材面で外部に導き出された微細凹凸が連結されてなる線状のパターンであり得る。
【0028】
また、前記凹凸が前記連続相パターンの形状である場合、前記陰イオン交換膜の基材面で外部に導き出された微細凹凸がフィルムの外部に突出して形成された立体形状全体が連結されて一つの立体をなすパターンであり得る。前記連続相パターンに前記微細パターンの側壁と前記陰イオン交換膜の基材面で定義される凹部が形成され得る。前記陰イオン交換膜の基材面方向に対する前記凹部の断面が円形、楕円形または多角形であり得る。
【0029】
前記陰イオン交換膜の表面に凹凸が形成されることによって、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の噛み合う界面構造により陰イオン交換膜と陽イオン交換膜の結合力を高めることができ、これにより、前記分離膜複合体は堅固な内部構造を有することができる。
【0030】
前記凹凸は、マイクロ単位の高さおよび幅が小さすぎると、前記陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との間の界面結着力が低くなり、前記分離膜複合体の構造の安定性が低下し得る。
【0031】
また、前記凹凸は、マイクロ単位の高さおよび幅が大きすぎると、前記分離膜複合体全体または陽イオン交換膜と陰イオン交換膜それぞれの厚さが増加し、これにより、前記分離膜複合体の抵抗が大きくなる。
【0032】
前記陰イオン交換膜の基材面の厚さが、1μm〜200μmである、または2μm〜80μm、または5μm〜50μmであり得る。前記陰イオン交換膜の基材面は、レドックス物質のクロスオーバーを遮断する役割と凹凸構造の支持層の役割をすることができ、前記厚さを有することによってクロスオーバーの抑制機能を示すか凹凸構造を堅固に維持することができる。
【0033】
前記陰イオン交換膜で互いに隣り合う凹凸間の距離が1μm〜200μm、または20μm〜80μmであり得る。前記互いに隣り合う凹凸間の距離が小さすぎると、凹凸の機械的強度が大きく低下し得る。また、前記互いに隣り合う凹凸間の距離が大きすぎると、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の接触面が減少して界面結着力が低くなり、前記分離膜複合体の構造の安定性が低下し得る。
【0034】
前記陰イオン交換膜で凹凸が形成されていない他の一面は、平膜であるか前記凹凸と同一であるか相異する形状を有する凹凸が形成され得る。
【0035】
一方、前記陽イオン交換膜には前記陰イオン交換膜の凹凸と逆相である凹凸が形成されることによって、前記陽イオン交換膜は基材面および前記陰イオン交換膜の凹凸と逆相である凹凸を2以上含み得る。
【0036】
前記陽イオン交換膜に形成される凹凸の大きさなどは前記陰イオン交換膜の凹凸の大きさなどによって定義することができる。
【0037】
前記分離膜複合体は、前記陰イオン交換膜上に前記陽イオン交換膜を圧搾して製造されることができる。また、前記分離膜複合体は前記陰イオン交換膜上に前記陽イオン交換膜の原料をコートして製造することができる。
【0038】
このように、製造する方法や適用される電池に応じて前記陽イオン交換膜の特徴は変わる。例えば、前記陰イオン交換膜と接していない前記陽イオン交換膜の基材面の他の一面は平膜であるか凹凸が形成され得る。
【0039】
前記陽イオン交換膜の基材面の他の一面に形成される平膜であるか、凹凸の高さ、幅、間隔は、前記陰イオン交換膜に形成された微細凹凸の高さ、幅、間隔の10%〜200%であり得る。
【0040】
前記陰イオン交換膜は通常知られている陰イオン高分子を含み得る。具体的には、前記陰イオン交換膜はアンモニウム、ホスホニウム(phosphonium)およびスルホニウム(sulfonium)からなる群より選ばれた1種陰イオン交換官能基が1以上置換された陰イオン高分子を含み得る。例えば、前記アンモニウム、ホスホニウム(phosphonium)およびスルホニウム(sulfonium)それぞれは炭素数1〜10のアルキル基が1〜4個置換され得、より具体的にはトリ(C1〜C10のアルキル)アンモニウム、テトラ(C1〜C10のアルキル)ホスホニウム、トリ(C1〜C10のアルキル)スルホニウムに由来し得る。
【0041】
このような陰イオン高分子は、10,000〜500,000の重量平均分子量を有し得る。前記重量平均分子量はGPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0042】
前記陰イオン高分子のより具体的な例としては、アンモニウム、ホスホニウム(phosphonium)およびスルホニウム(sulfonium)からなる群より選ばれた1種の陰イオン交換官能基が1以上置換され、パーフルオロ系高分子、ベンズイミダゾール系高分子、ポリイミド系高分子、ポリエーテルイミド系高分子、ポリフェニレンスルフィド系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルケトン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリエーテル−エーテルケトン系高分子、およびポリテリルキノキサリン系高分子からなる群より選ばれた1種以上の高分子が挙げられる。
【0043】
前記陽イオン交換膜は、通常知られている陽イオン高分子を含み得る。具体的には前記陽イオン交換膜はスルホン酸基、カルボキシル基およびリン酸基からなる群より選ばれた1種の陽イオン交換官能基が1以上置換された陽イオン高分子を含み得る。
【0044】
このような陽イオン高分子も10,000〜500,000の重量平均分子量を有し得る。前記重量平均分子量はGPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0045】
より具体的には、前記陽イオン交換膜は、スルホン化テトラフルオロエチレン系高分子(sulfonated tetrafluoroethylene−based polymer)、スルホン化ポリイミド(sulfonated polyimide,sPI)、スルホン化ポリアリーレンエーテルスルホン(sulfonated poly(arylene ether sulfone)、sPAES)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone,sPEEK)、スルホン化ポリエーテルケトン(sulfonated polyetherketone,sPEK)、ポリビニリデンフルオライド−グラフト−ポリスチレンスルホン酸(poly(vinylidene fluoride)−graft−poly(styrene sulfonic acid)、PVDF−g−PSSA)およびスルホン化ポリフルオレニルエーテルケトン(sulfonated poly(fluorenyl ether ketone))からなる群より選ばれた一つ以上の高分子を含み得る。
【0046】
前記陽イオン交換膜はスルホン化テトラフルオロエチレン系高分子を含み得、その中でもデュポン(Dupont)社で市販するナフィオン(Nafion
TM)を使用することができる。
【0047】
一方、本発明のまた他の実施形態によれば、前記分離膜複合体を含むレドックスフロー電池が提供されることができる。
【0048】
前記レドックスフロー電池は、亜鉛−臭素(zinc−bromine)レドックスフロー電池またはバナジウム(vanadium)レドックスフロー電池であり得る。
【0049】
前記レドックスフロー電池は、前記分離膜複合体(分離膜)と電極を含む単位セル、酸化状態がそれぞれ他の活物質が貯蔵されたタンク、および充電および放電時に前記単位セルとタンクとの間で活物質を循環させるポンプを含み得る。
【0050】
前記分離膜に関する内容は、前記一実施例について上述した内容を含む。