【文献】
幡本将史、山口隆司,嫌気性排水処理リアクターで起こる嫌気的硫黄酸化反応,日本微生物生態学会誌,2014年,29巻2号,p.76-77
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの利用拡大が期待されており、再生可能エネルギーの一種である、バイオマスから発生するバイオガスを有効活用しようとする取り組みが活発化している。バイオガスは、約60%のメタンと約40%の二酸化炭素、その他に硫化水素やシロキサン等の微量不純物を含む。
【0003】
上述のようにバイオガスにはメタン以外のガスも含まれることから、バイオガスを精製せずに利用するには、バイオガス専用の機器が必要になり、コストや汎用性の点で問題がある。
【0004】
そこで、近年ではバイオガス精製技術を用いてメタンを分離、精製するバイオガス精製システムについて各種検討がなされている。
【0005】
バイオガス精製技術には、高圧水吸収法、PSA法、膜分離法など様々な方法が知られている。高圧水吸収法を用いたバイオガス精製システムの構成例を
図1に示す。
【0006】
図1に示すように、従来のバイオガス精製システム10は、バイオガス供給手段11から供給したバイオガスを、圧縮機12により加圧し、吸収塔13へと供給する。
【0007】
吸収塔13には循環水が水供給配管131により供給されており、吸収塔13へ供給したバイオガスのうち、主にメタンガス以外の二酸化炭素や、硫化物を循環水に吸収させる。一方、バイオガスのうち、循環水に吸収されなかったメタンガスをメタンガス回収配管132から回収する。回収したメタンガスは、例えば除湿機14により除湿した後、タンク15へと回収し、貯蔵できる。
【0008】
そして、吸収塔13において、主にメタンガス以外のガスを吸収した吸収処理済み水133は、減圧・脱気塔16へと送られ、減圧、脱気処理を行うことで、吸収処理済み水133に吸収されていたメタンガスを、減圧・脱気塔用メタンガス回収配管161から回収する。また、吸収処理済み水133に吸収されていた二酸化炭素や、硫化物等を含有するガスは、活性炭等を用いた吸着塔17へと送られ、一部は吸着塔17で吸着され、残部のオフガスは大気へと放出される。
【0009】
また、減圧・脱気塔16で減圧、脱気処理した後の残留水162は回収され、必要に応じて熱交換器18で温度を調整した後、水供給配管131へ、所定の圧力へと加圧し、送られ、循環水として利用される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0016】
本実施形態のバイオガス精製システムは、バイオガス中に含まれる硫化物と、二酸化炭素とからメタンを生成するメタン変換手段を有することができる。
【0017】
既述のように、従来のバイオガス精製システムにおいては、バイオガスに含まれる硫化物や、二酸化炭素について有効に利用するものではなく、硫化物については、脱臭を目的として、吸着塔において吸着し、該吸着塔で用いた吸着剤は産業廃棄物として処理されていた。また、二酸化炭素については、大気に放散されていた。
【0018】
そこで、本発明の発明者らは、硫化物や、二酸化炭素を有効に、すなわちエネルギー源として利用することができる、バイオガス精製システムの構成について鋭意検討を行った。その結果、バイオガス中に含まれる硫化物と、二酸化炭素とからメタンを生成する、メタン変換手段を備えることにより、バイオガス中に含まれる硫化物や二酸化炭素を有効に利用できることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
以下に、本実施形態のバイオガス精製システムの構成例について、図面を用いながら説明を行う。
【0020】
[第1の実施形態]
本実施形態のバイオガス精製システムの構成例を
図2を用いて説明する。
【0021】
図2に示した本実施形態のバイオガス精製システム20は、バイオガス中に含まれる硫化物と、二酸化炭素とからメタンを生成するメタン変換手段29を有することができる。
【0022】
メタン変換手段29は、バイオガス中に含まれる硫化物と、二酸化炭素とからメタンを生成するように構成されていれば足り、その構成については特に限定されるものではない。本発明の発明者らの検討によれば、硫化物と、二酸化炭素とからメタンを生成するメタン変換手段として、嫌気的硫黄酸化反応を用いたメタン変換手段を好ましく用いることができる。このような嫌気的硫黄酸化反応を用いたメタン変換手段として、具体的には例えば硫黄化合物を、酸素が無い条件下でも酸化することができる細菌、バクテリア等を用いたリアクター(反応槽)が挙げられる。係るリアクターは、予めリアクター内に硫黄化合物を酸素がない条件下でも酸化することができる細菌および/またはバクテリアを配置しておき、該リアクター内にバイオガス中の硫化物と、二酸化炭素とを溶解させた水を供給することで、硫化物を酸化し、この際併せてメタンを生成することができる。
【0023】
硫黄化合物を酸素がない条件下でも酸化することができる細菌、バクテリアとしては特に限定されるものではないが、例えばバクテリアではgenus Smithella、およびphylum Caldisericaに属する微生物等が、古細菌ではMethanosaeta spp.等が挙げられる。硫黄化合物を酸素がない条件下でも酸化することができる細菌、バクテリアとしては、例えば上述の古細菌、及びバクテリアから選択された1種以上を用いることができる。
【0024】
硫黄化合物を、酸素が無い条件下でも酸化することができる細菌、バクテリア等を用いたリアクター内での反応については明らかではないが、本発明の発明者らは、例えば以下の化学式(1)により反応が進行するものと推定している。
【0025】
HS
−+HCO
3−+H
2O→CH
4+SO
42−・・・(1)
化学式(1)に示すように、硫化物のHS
−が酸化されSO
42−が生成され、この際、あわせて炭酸(HCO
3−)からメタン(CH
4)が生成される。
【0026】
メタン変換手段における反応条件は特に限定されるものではなく、メタン変換手段の構成や、要求されるメタンへの変換効率等に応じて任意に選択することができる。例えば、メタンへの変換効率を特に高める観点から、メタン変換手段のリアクター内における反応物の温度は、10℃以上20℃以下とすることが好ましい。また、メタン変換手段のリアクター内の反応物のpHは7.0以上8.5以下とすることが好ましい。
【0027】
メタン変換手段は、リアクター内の反応物の温度を所望の範囲とするため、加熱手段や、冷却手段を有することができる。また、メタン変換手段のリアクター内の反応物のpHを所定の範囲とするため、メタン変換手段のリアクター内や、メタン変換手段に接続された配管上にpH調整剤を供給する手段や、pH値を検出するpH検出手段等を設けることもできる。
【0028】
なお、メタン変換手段として、上述のように嫌気的硫黄酸化反応を用いる場合、メタン変換手段のリアクター内は酸素を含まない雰囲気に維持されていることが好ましい。このため、メタン変換手段のリアクターは外部からの空気の浸入を防ぐことができるように、他の反応器等と接続する配管以外の部分では密閉性を有するように構成されていることが好ましい。メタン変換手段のリアクター内は、バイオガス精製システムを起動させる前等に予め雰囲気制御を行っておくこともできるが、上述の化学式(1)の反応が開始すると、生成したメタンによりリアクター内が置換されることになるため、バイオガス精製システムを起動させる前等にリアクター内について、予め雰囲気制御等を行っておかなくても良い。
【0029】
メタン変換手段29で生成したメタンは、
図2に示すように、メタン変換手段用メタンガス回収配管291により回収し、貯蔵することができる。
【0030】
上述のように、メタン変換手段29として、嫌気的硫黄酸化反応を用いたメタン変換手段を用いる場合、バイオガスの一部、主にメタンガス以外のガスを水に溶解させ、メタン変換手段29へは、該バイオガスの一部を吸収、溶解させた水を供給することが好ましい。このため、本実施形態のバイオガス精製システムは、バイオガスの一部を水に吸収させる吸収塔をさらに有し、吸収塔でバイオガスの一部を吸収した水を、メタン変換手段に供給するように構成することが好ましい。
【0031】
具体的には、
図2に示したように、バイオガス供給手段21から供給したバイオガスを精製し、メタンガスを回収する配管経路上であって、バイオガス供給手段21とメタン変換手段29との間に吸収塔23を設けることができる。
【0032】
吸収塔23は、バイオガスの一部を水に吸収させるように構成されていれば良いが、水への吸収効率を高めるため、該吸収塔23は、高圧吸収塔であることが好ましい。
【0033】
そこで、バイオガス供給手段21と、吸収塔23との間には、バイオガスを加圧するための圧縮機22を配置することができる。圧縮機22で加圧したバイオガスの圧力は特に限定されるものではなく、例えば常圧(大気圧)よりも高く、すなわち0.1MPaよりも高くすることが好ましく、特に0.9MPa以上にすることがより好ましい。このため、高圧吸収塔は、例えば0.5MPa以上の気体を水に吸収させる吸収塔とすることが好ましく、0.9MPa以上の気体を水に吸収させる吸収塔とすることがより好ましい。
【0034】
なお、吸収塔23は高圧吸収塔に限定されるものではなく、第4の実施形態で後述するように常圧の吸収塔等を用いることもできる。高圧吸収塔に代えて常圧吸収塔を用いる場合には後述するように圧縮機22を設けることなく、例えばバイオガス供給手段21から供給された常圧以上のバイオガスを吸収塔に供給できる。
【0035】
吸収塔23でバイオガスの一部を水に吸収させることで、メタンガスを主成分とするガスと、水に吸収した硫化物、及び二酸化炭素等と、を分離することができる。メタンガスについては、
図2に示したように吸収塔23に接続したメタンガス回収配管232により回収することができる。回収したメタンガスについては、必要に応じて、例えば除湿機24により除湿した後、タンク25へと回収し、貯蔵できる。
【0036】
そして、吸収塔23において、バイオガスの一部、例えば主にメタンガス以外のガスを吸収した吸収処理済み水233は、メタン変換手段29へと送ることができる。
【0037】
メタン変換手段29での反応等については既述のため、説明を省略する。メタン変換手段29において生成したメタンガスについては、既述のようにメタン変換手段用メタンガス回収配管291により回収することができる。回収したメタンガスについては、必要に応じて、例えば除湿機24により除湿した後、タンク25へと回収し、貯蔵できる。
【0038】
メタン変換手段29において処理済みの水は、処理済み水用配管292を介して、例えば減圧・脱気塔26へと送り、減圧、脱気を行い、オフガスと、残留水とに分離することができる。なお、減圧・脱気塔26において、例えば減圧処理を行った際にメタンガスが生じる場合には、減圧・脱気塔に、図示しない減圧・脱気塔用メタンガス回収配管を接続しておき、該減圧・脱気塔用メタンガス回収配管161からメタンガスを回収することもできる。
【0039】
オフガスについては、硫化物や、二酸化炭素の含有量が十分に低減できていることから、オフガス用配管261から直接大気中へ放出することができる。
【0040】
減圧・脱気塔26で減圧、脱気処理した後の残留水262は回収し、必要に応じて熱交換器28で冷却等を行い、温度を調整した後、吸収塔23の水供給配管231へ、所定の圧力へと加圧して送られ、循環水として利用することができる。なお、必要に応じて残留水262に新たな水を加えて混合してから、水供給配管231に供給し、吸収塔23に水を供給することもできる。また、このように吸収塔23へは循環水を供給することができることから、吸収塔23で用いる水は純水に限定されるものではなく、例えばバイオガスの一部が溶存した循環水を用いることができる。
【0041】
なお、本実施形態のバイオガス精製システムにバイオガスを供給するバイオガス供給手段21としては特に限定されないが、例えば汚泥や、汚水、ゴミ、生物の排泄物、有機質肥料、生分解性物質等を発酵、嫌気性消化させることによりバイオガスを生成するバイオガス生成手段を用いることができる。バイオガス供給手段としてバイオガス生成手段を用いる場合、バイオガス生成手段は、原料となる汚泥等を発酵、嫌気性消化させ、バイオガスを発生させることができるように構成されていれば足り、その構成は特に限定されない。バイオガス生成手段は、例えば原料を発酵、消化するためのタンクや、
図2中に矢印で示したように該タンクに対して原料を搬送、供給するための原料供給手段、タンク内の原料を撹拌する撹拌手段、生成したバイオガスを取出すためのバイオガス排気手段等を備えた構成を有することができる。
【0042】
また、バイオガス供給手段21としては、例えば他所で生成したバイオガスを貯蔵したバイオガスタンクを用いることもできる。
【0043】
以下の他の実施形態においてもバイオガス供給手段としては特に限定されるものではなく、例えば上述のようなバイオガス生成手段や、バイオガスタンク等を用いることができる。
【0044】
本実施形態のバイオガス精製システム20においては、バイオガスに含まれる硫化物と、二酸化炭素とからメタンを生成するメタン変換手段29を用いることで、従来は廃棄されていた硫化物、及び二酸化炭素をメタンに変換し、エネルギー源として有効に利用することができる。
【0045】
バイオガス精製システムの他の構成例について、以下に図面を用いて説明する。なお、各反応器等について、特に断らない限り第1の実施形態で説明したものと同様に構成することができる。このため、既に説明した内容と重複する部分については説明を一部省略する。
【0046】
[第2の実施形態]
第2の実施形態のバイオガス精製システムの構成例を
図3に示す。
【0047】
図3に示したバイオガス精製システム30では、吸収塔33までは、
図2に示したバイオガス精製システム20の場合と同様に構成することができる。すなわち、バイオガス供給手段31から供給したバイオガスを、例えば圧縮機32で圧縮し、吸収塔33へ供給し、吸収塔33において、バイオガスの一部を水に吸収させることができる。なお、吸収塔33については、既述のように高圧吸収塔を好ましく用いることができる。
【0048】
また、吸収塔33で分離したメタンガスについては、
図3に示したように吸収塔33に接続したメタンガス回収配管332により回収することができる。回収したメタンガスについては、必要に応じて、例えば除湿機34により除湿した後、タンク35へと回収し、貯蔵できる。
【0049】
そして、バイオガス精製システム30では、吸収塔33でバイオガスの一部を吸収させた吸収処理済み水333を一旦減圧・脱気塔36へと送り、減圧処理を終えた吸収処理済み水を、メタン変換手段39へと供給することができる。
【0050】
メタン変換手段39において生成したメタンガスについては、メタン変換手段用メタンガス回収配管391により回収することができる。回収したメタンガスについては、必要に応じて、例えば除湿機34により除湿した後、タンク35へと回収し、貯蔵できる。
【0051】
メタン変換手段39において処理済みの水は、処理済み水用配管392を介して、例えば再度減圧・脱気塔36へと送り、脱気処理を実施することができる。
【0052】
減圧・脱気塔36で分離されたメタンガスは、減圧・脱気塔用メタンガス回収配管361により回収することができる。回収したメタンガスについては、必要に応じて、例えば除湿機34により除湿した後、タンク35へと回収し、貯蔵できる。
【0053】
また、減圧・脱気塔36では、さらにオフガスと、残留水362とに分離することができる。
【0054】
オフガスについては、硫化物や、二酸化炭素の含有量が十分に低減できていることから、オフガス用配管363から大気中へ放出することができる。
【0055】
メタン変換手段39で処理を行い、再度減圧・脱気塔36に戻され、減圧・脱気塔36で脱気処理した後の残留水362は回収され、必要に応じて熱交換器38で冷却等を行い、温度を調整した後、吸収塔33の水供給配管331へ、所定の圧力に加圧して送られ、循環水として利用することができる。なお、必要に応じて残留水362に新たな水を加えて混合してから、水供給配管331により吸収塔33に水を供給することもできる。また、このように吸収塔33へは循環水を供給することができることから、吸収塔33で用いる水は純水に限定されるものではなく、例えばバイオガスの一部が溶存した循環水を用いることができる。
【0056】
メタン変換手段29として、既述のように硫黄化合物を、酸素が無い条件下でも酸化することができる細菌、バクテリア等を用いたリアクターを用いる場合、細菌等の種類によっては、高圧吸収塔で加圧された水を供給した場合に、メタンへの変換効率が十分に高くならない場合がある。係る場合、本実施形態のバイオガス精製システム30で示したように一旦減圧した水をメタン変換手段39に供給することで、効率よくメタンへの変換を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態のバイオガス精製システム30においては、減圧した水をメタン変換手段39に供給するため、メタン変換手段39においては耐圧性能が低いリアクターを用いることも可能になる。
【0058】
[第3の実施形態]
第3の実施形態のバイオガス精製システムの構成例を
図4に示す。
【0059】
図4に示したバイオガス精製システム40では、吸収塔43までは、
図2に示したバイオガス精製システム20と同様に構成することができる。すなわち、バイオガス供給手段41から供給したバイオガスを圧縮機42で圧縮し、吸収塔43へ供給し、吸収塔43において、バイオガスの一部を水に吸収させることができる。吸収塔43については、既述のように高圧吸収塔を好ましく用いることができる。
【0060】
また、吸収塔43で分離したメタンガスについては、
図4に示したように吸収塔43に接続したメタンガス回収配管432により回収することができる。回収したメタンガスについては、必要に応じて、例えば除湿機44により除湿した後、タンク45へと回収し、貯蔵できる。
【0061】
バイオガス精製システム40では、吸収塔43でバイオガスの一部を吸収させた吸収処理済み水433を減圧・脱気塔46へと送り、減圧・脱気塔46で減圧、脱気処理を実施することができる。
【0062】
減圧・脱気塔46で分離されたメタンガスは、減圧・脱気塔用メタンガス回収配管461により回収することができる。回収したメタンガスについては、必要に応じて、例えば除湿機44により除湿した後、タンク45へと回収し、貯蔵できる。
【0063】
本実施形態のバイオガス精製システム40では、減圧・脱気塔46で減圧、脱気処理した後の残留水462については硫化物、及び二酸化炭素を依然として含有していることから、係る残留水462をメタン変換手段49へと供給することができる。メタン変換手段49において生成したメタンガスについては、メタン変換手段用メタンガス回収配管491により回収することができる。回収したメタンガスについては、必要に応じて、例えば除湿機44により除湿した後、タンク45へと回収し、貯蔵できる。
【0064】
メタン変換手段49において処理済みの水は、吸収塔43に接続された水供給配管431に接続し、所定の圧力に加圧してから循環水として吸収塔43に水を供給することもできる。なお、他の実施形態に示したバイオガス精製システムの場合と同様に、図示しない熱交換器を設け、冷却等を行い、温度を調整した後、吸収塔43の水供給配管431へ、水を供給することもできる。また、必要に応じてメタン変換手段49での処理済み水に新たな水を加えて混合してから、水供給配管431により吸収塔43に水を供給することもできる。このように吸収塔43へは循環水を供給することができることから、吸収塔43で用いる水は純水に限定されるものではなく、例えばバイオガスの一部が溶存した循環水を用いることができる。
【0065】
本実施形態のバイオガス精製システム40では、減圧・脱気塔46に供給した吸収処理済み水433について硫化物や、二酸化炭素の回収を行っていないことから、他の実施形態で示したバイオガス精製システムの場合と比較して、減圧・脱気塔46で吸収処理済み水433から分離されたオフガス中に含まれる硫化物や、二酸化炭素の濃度が高くなっている。このため、吸着塔47を設け、オフガスについては、吸着塔47において硫化物等を吸着させてから大気中に放出することが好ましい。
【0066】
本実施形態のバイオガス精製システム40においては、減圧・脱気塔46で減圧、脱気処理を行った後の残留水462について、メタン変換手段49へ供給することで残留水462内に吸収された硫化物、及び二酸化炭素からメタンを生成し、エネルギー源として有効に利用することができる。
【0067】
[第4の実施形態]
第4の実施形態のバイオガス精製システムの構成例を
図5に示す。
【0068】
図5に示したバイオガス精製システム50では、吸収塔53として、常圧吸収塔を用いている。
【0069】
このため、バイオガス供給手段51から供給したバイオガスは、圧縮機を経ることなく、直接吸収塔53へと供給することができる。吸収塔53においては、バイオガスの一部を水に吸収させることができる。また、吸収塔53で分離したメタンガスについては、
図5に示したように吸収塔53に接続したメタンガス回収配管532により回収することができる。回収したメタンガスについては、必要に応じて、例えば除湿機54により除湿した後、タンク55へと回収し、貯蔵できる。
【0070】
そして、吸収塔53において、バイオガスの一部を吸収させた吸収処理済み水533をメタン変換手段59へと供給することができる。
【0071】
メタン変換手段59において生成したメタンガスについては、メタン変換手段用メタンガス回収配管591により回収することができる。回収したメタンガスについては、必要に応じて、例えば除湿機54により除湿した後、タンク55へと回収し、貯蔵できる。
【0072】
メタン変換手段59において処理済みの水は、吸収塔53に接続された水供給配管531に供給し、所定の圧力へに加圧してから循環水として吸収塔53に水を供給することもできる。なお、他の実施形態に示したバイオガス精製システムの場合と同様に、図示しない熱交換器を設け、冷却等を行い、温度を調整した後、吸収塔53の水供給配管531へ、水を供給することもできる。また、メタン変換手段59での処理済み水に新たな水を加えて混合してから、水供給配管531により吸収塔53に水を供給することもできる。このように吸収塔53へは循環水を供給することができることから、吸収塔53で用いる水は純水に限定されるものではなく、例えばバイオガスの一部が溶存した循環水を用いることができる。
【0073】
本実施形態のバイオガス精製システム50においては、吸収塔53として常圧吸収塔を用いているため、圧縮機等を省略することができ、システムの構成をより簡略化することができる。このため、コストや、設置面積を特に抑制しつつ、バイオガスに含まれる硫化物、及び二酸化炭素からメタンを生成し、エネルギー源として有効に利用することができる。
【0074】
以上に、バイオガス精製システムについて各種構成例について説明したが、上述の4種の実施形態に限定されるものではない。例えば上述の4種の実施形態で説明した要素を組み合わせたシステムとすることもできる。具体的には例えば、第1の実施形態に示したバイオガス精製システム20において、第3の実施形態のバイオガス精製システム40の場合と同様に、減圧・脱気塔26で生じた残留水262について、別途設けたメタン変換手段に供給し、該残留水中にごく微量に含まれる硫化物、二酸化炭素からメタンをさらに生成するように構成することもできる。
【0075】
各実施形態のバイオガス精製システムにおいて、必要に応じて任意の部材、手段を設けることもできる。例えば第1の実施形態に示したバイオガス精製システム20において、オフガス用配管261上に吸着塔を設け、減圧・脱気塔26からのオフガスを該吸着塔に供給し、オフガス中の硫化物濃度をさらに低減するように構成することもできる。
【0076】
また、ここまで説明した各実施形態のバイオガス精製システムにおいて説明を行った、各手段について、同様の機能を有する部材、手段に置き換えることもできる。例えば、減圧・脱気塔について、減圧を行う手段と、脱気を行う手段とを分けて設けても良い。
【0077】
さらに、ここまで各実施形態で説明したバイオガス精製システムに供給するガスは、バイオガスのみに限定されるものではなく、例えば硫化物と、二酸化炭素とを含有する混合ガスを用いることもできる。硫化物としては例えば硫化水素(H
2S)等が挙げられる。
【0078】
以上に説明したバイオガス精製システムによれば、バイオガスに含まれる硫化物と、二酸化炭素とからメタンを生成することができる。このため、上記各実施形態で説明したバイオガス精製システムによれば、従来廃棄されていたバイオガス中の硫化物や、二酸化炭素をエネルギー源として有効に利用することができる。
【0079】
さらに、上記各実施形態で説明したバイオガス精製システムによれば、従来は大気に排気されていた二酸化炭素を固定化することができるため、バイオガス精製システムをカーボンマイナスなシステムとすることができる。
【0080】
従来はバイオガス中の硫化物を吸着剤に吸着させていたため、該吸着剤の廃棄費用が必要であったところ、上記各実施形態で説明したバイオガス精製システムでは、硫化物の吸着剤による吸着が不要になるか、吸着剤に吸着させる硫化物の量を低減できるため、吸着剤の廃棄費用が不要、もしくは低減することが可能になり、バイオガス精製システムのランニングコストを抑制することが可能なる。
【0081】
また、
図1を用いて説明したように、従来のバイオガス精製システム10は、バイオガス供給手段11から供給したバイオガスを、圧縮機12により加圧後、吸収塔13へと供給していた。そして、吸収塔13へ供給したバイオガスのうち、主にメタンガス以外の二酸化炭素や、硫化物を循環水に吸収させていた。このため、係る循環水に吸収された硫化物を処理するために曝気処理が行われる場合があったが、上記各実施形態で説明したバイオガス精製によれば、係る曝気処理が不要になるため、曝気処理に要していた動力の負荷を低減できる。
【0082】
そして、上記各実施形態で説明したバイオガス精製システムは、比較的シンプルな構成を有しているため、省スペースなバイオガス精製システムを実現することができる。