特許第6980196号(P6980196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980196
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】HLA−B57オープンコンフォーマー
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20211202BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20211202BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211202BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20211202BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20211202BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20211202BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20211202BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20211202BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20211202BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20211202BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20211202BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20211202BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C12N15/62 ZZNA
   C12N5/10
   A61P35/00
   A61P37/02
   A61K39/395 D
   A61K39/395 N
   A61K39/395 V
   A61K45/00
   A61K48/00
   A61K35/12
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C07K14/435
   C12N7/01
【請求項の数】15
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2018-547384(P2018-547384)
(86)(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公表番号】特表2019-512231(P2019-512231A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】EP2017055373
(87)【国際公開番号】WO2017153438
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2019年12月20日
(31)【優先権主張番号】16159099.7
(32)【優先日】2016年3月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515098691
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート チューリッヒ
(73)【特許権者】
【識別番号】515160921
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート バーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】マロクイン ベラウザラン,オシリス
(72)【発明者】
【氏名】レナー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ペトラウシュ,ウルフ
【審査官】 玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/011044(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/153969(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/018745(WO,A2)
【文献】 特表2005−503152(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/029071(WO,A2)
【文献】 中国特許出願公開第103184291(CN,A)
【文献】 国際公開第99/058557(WO,A2)
【文献】 国際公開第2016/124661(WO,A1)
【文献】 特表2018−512113(JP,A)
【文献】 TRENDS in Immunology, 2007, Vol.28, pp.115-123
【文献】 TRENDS in Immunology, 2005, Vol.26, pp.41-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLA−B57オープンコンフォーマー二量体であって、前記オープンコンフォーマーの単量体はHLA−B57重鎖、Fc(結晶化可能な断片)ポリペプチド及び前記HLA−B57重鎖と前記Fcポリペプチドとを連結するアミノ酸リンカーを含む、HLA−B57オープンコンフォーマー二量体。
【請求項2】
ペプチドエピトープ断片をさらに含む、請求項1に記載のHLA−B57オープンコンフォーマー二量体。
【請求項3】
前記HLA−B57重鎖がHLA−B57アルファ1、2及び3ドメインのみからなる、請求項1又は2に記載のHLA−B57オープンコンフォーマー二量体。
【請求項4】
前記HLA−B57重鎖が膜貫通ドメインを含み、かつ、細胞内ドメイン(細胞質尾部)を含まない、請求項1又は2に記載のHLA−B57オープンコンフォーマー二量体。
【請求項5】
前記HLA−B57重鎖が、表1で特定される配列のいずれか一つと比較して、≧90%の配列同一性を有する、請求項1又は2に記載のHLA−B57オープンコンフォーマー二量体。
【請求項6】
前記Fcポリペプチドが、免疫グロブリンG型(IgG)、A型(IgA)、D型(IgD)、E型(IgE)又はM型(IgM)のいずれか1つから選択される重鎖定常領域C2及びC3を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のHLA−B57オープンコンフォーマー二量体。
【請求項7】
前記アミノ酸リンカーが1〜50個のアミノ酸を含み、前記HLA−B57重鎖を1つの単一ポリペプチド鎖として前記Fcポリペプチドに連結する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のHLA−B57オープンコンフォーマー二量体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のHLA−B57オープンコンフォーマー二量体を含む医薬用組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のHLA−B57オープンコンフォーマー二量体を含む、癌の治療又は予防のための医薬用組成物。
【請求項10】
a.請求項1〜7のいずれか1項で特定されるHLA−B57オープンコンフォーマー二量体、及び
b.チェックポイント阻害剤及び/又はチェックポイントアゴニスト剤、
を含む併用薬剤。
【請求項11】
a.前記チェックポイント阻害剤は、PD−1とそのリガンドPD−L1又はPD−L2との相互作用の阻害剤から選択され;又は
b.前記チェックポイントアゴニスト剤は、4−1BBへの結合を介して免疫応答を増強する抗体である、
請求項10に記載の併用薬剤。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のHLA−B57オープンコンフォーマーの単量体をコードする、核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
【請求項14】
哺乳動物細胞において作動可能なプロモーター配列の制御下で、請求項12に記載の核酸分子を含むウイルス。
【請求項15】
請求項12に記載の核酸分子を含むインビトロで遺伝子改変された宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HLA−B57オープンコンフォーマーの使用に関し、特に、癌の予防又は治療における使用、及び免疫調節剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト白血球抗原(HLA)は、古典的な主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質ファミリーに属する。HLA複合体は、免疫系が、ウイルスや細菌などの外来の侵入物質によって作られたタンパク質から身体のタンパク質を区別する働きがある。ヒトには、HLA−A、HLA−B、及びHLA−Cとして知られる3つの主要な古典的MHCクラスI遺伝子がある。古典的HLA遺伝子は、多くの可能な変異を有し、各人の免疫系が広範囲の外来の侵入物質に反応することを可能にする。いくつかのHLA遺伝子には、数多くの同定された型(対立遺伝子)があり、それぞれに特定の番号が与えられている(HLA−B57など)。密接に関連する対立遺伝子は、共に分類され、例えば、少なくとも82個の非常に類似した対立遺伝子が、HLA−B57のサブタイプである。これらのサブタイプは、HLA−B5701からHLA−B5782と、密接に関連するHLA−B5801と命名される。
【0003】
古典的MHC−I分子(ヒトではHLA−Iと命名)は、β2−ミクログロブリン(β2m)及び小ペプチドと非共有結合的に会合する3つの細胞外ドメイン(α1、α2及びα3)を有する膜結合重鎖を含む三量体構造である。HLA−I重鎖は、β2−ミクログロブリン又はペプチドに結合しない形態で存在し得る。これらの形態は、オープンコンフォーマー(open conformer)と呼ばれる。
【0004】
他のすべてのHLA分子のように、HLA−B57の主な機能は、適応免疫応答の一部として、細胞由来ペプチドをCD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に提示することである。正常な生理学的条件下では、HLA−B57分子は、B57重鎖、β2−ミクログロブリン、及び自己タンパク質、ウイルス又は細菌に由来するペプチドからなるヘテロ三量体複合体を形成する。この点で、HLA−B57は他のすべてのクラスIHLA対立遺伝子と似ている。しかし、HLA分子は、β2m−ミクログロブリン及びペプチドを欠く遊離重鎖として細胞中に存在することもでき、HLA−B57オープンコンフォーマーと呼ぶことができる(Arosaら、オープンコンフォーマー:MHC−I分子の隠れた顔、Trends in Immunology 2007 3月;28(3):115−23)。
【0005】
癌は、制御されていない及び破壊的な成長を受けている身体の異常細胞によって特徴付けられる疾患群である。癌細胞は体の周りに広がり、転移して腫瘍を形成する;この成長パターンは悪性と呼ばれる。癌は、外科手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、標的療法及び免疫療法によって治療することができる。治療の選択は、癌の種類、癌の段階(その広がり具合)、年齢、健康状態、及び追加の個人的特徴に依存する。癌のための単独治療はなく、患者はしばしば療法と緩和ケアの併用を受ける。
【0006】
癌免疫療法は、患者自身の免疫系を誘導して腫瘍と戦うように設計された多様な治療戦略を指し、多様な突然変異の蓄積を含む癌の進行を免疫系によって監視するという見識に基づいている。免疫療法は、免疫系の特定の細胞成分の活性を刺激するか、又は癌細胞によって産生される免疫応答を抑制するシグナルを相殺する(Mahoneyら、Nat Rev Drug Discov 2015 8月;14(8):561−84)。
【0007】
異なる型の免疫細胞が癌に対する免疫応答に関与している。白血球(免疫組織)の画分内で最も有名な細胞は:T細胞(細胞傷害性CD8T−細胞、TヘルパーCD4細胞−Th1、Th2及びTh17表現型)、制御性T細胞(Treg)、マクロファージ(炎症促進性M1型及び腫瘍促進性M2型)、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)及び樹状細胞(DC)である。これらの免疫細胞は、腫瘍の中心、浸潤マージン(invasive margin)又は隣接する三次リンパ様構造に位置し得る(Fridmanら、Nat.Rev.Cancer.2012、4月:12、298−306)。
【0008】
免疫微小環境の密度及び組成は、患者と腫瘍の間で異質である。細胞傷害性CD8T細胞、Th1表現型細胞及びM1型マクロファージの浸潤は、多くの場合、免疫療法への良好な臨床的結果及び応答につながることが多いが、一般にM2表現型マクロファージ及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)による腫瘍浸潤は腫瘍進行を促進することが現在十分に確立されている。他のリンパ球及び骨髄系細胞集団の臨床的影響は一貫性が低く、腫瘍の種類及び段階に依存するようである。Th17及びNK細胞の存在、及び腫瘍浸潤物におけるTreg細胞の不存在/減少は、いくつかの癌適応症における良好な結果と相関する(Giraldoら、Current Opinion in Immunology 2014,27:8−15)。白血球浸潤と臨床的結果の間の均衡の一般的概要を、図1に概説する(Bechtら、Current Opinion in Immunology、2016,39:17−13)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Arosaら、オープンコンフォーマー:MHC−I分子の隠れた顔、Trends in Immunology 2007 3月;28(3):115−23
【非特許文献2】Mahoneyら、Nat Rev Drug Discov 2015 8月;14(8):561−84
【非特許文献3】Fridmanら、Nat.Rev.Cancer.2012、4月:12、298−306
【非特許文献4】Giraldoら、Current Opinion in Immunology 2014,27:8−15
【非特許文献5】Bechtら、Current Opinion in Immunology、2016,39:17−13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
全体として、M1型マクロファージ、細胞傷害性CD8T細胞、及びTh1細胞の浸潤に有利な腫瘍の免疫系を調節し、及び/又はMDSC及びM2型マクロファージの浸潤を減少させることは、ここで検討されるB57−Fcタンパク質の使用を伴う癌を治療するための壮大な治療手段となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
用語と定義
アミノ酸配列は、アミノ末端からカルボキシル末端へ与えられる。配列位置の大文字は、1文字コードのL−アミノ酸を指す(Stryer、Biochemistry、第3版 p.21)。
【0012】
本明細書中で使用される用語「オープンコンフォーマー(open conformer)」とは、単量体又は二量体(ホモ二量体又はヘテロ二量体)のいずれかとして、β2−ミクログロブリンに会合しない単離されたHLA重鎖分子をいう。本明細書中に開示されるオープンコンフォーマーの特定の実施形態は、HLA重鎖が安定化ポリペプチド領域、特に結晶性断片免疫グロブリンドメインに共有結合される融合タンパク質単量体又は二量体である。
【0013】
本明細書中で使用される用語「配列同一性」及び「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの整列した配列を比較することによって決定される値を指す。比較のために配列のアラインメントを求める方法は当技術分野で周知である。比較のための配列のアラインメントは、Smith及びWaterman、Adv.Appll.Math 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman及びWunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)のグローバルアライメントアルゴリズムによって、Pearson及びLipman、Proc.Nat.Acad.Sci.85:2444(1988)の類似検索法による検索によって、又はCLUSTAL、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA及びTFASTAを含むがこれらに限定されないこれらアルゴリズムのコンピュータ化された実装によって達成され得る。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、例えば、国立生物工学情報センター(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に入手可能である。アミノ酸配列の比較の一例は、BLASTPアルゴリズムであり:期待閾値:10;ワードサイズ:3;クエリ範囲での最大一致:0;マトリックス:BLOSUM62;ギャップコスト:存在11;拡張:1;構成調整:条件付き構成スコアマトリクス調整;のデフォルト設定を使用する。このような核酸配列の比較の一例は、BLASTNアルゴリズムであり:期待閾値:10;ワードサイズ:28;クエリ範囲での最大一致:0;一致/不一致スコア:1.−2;ギャップコスト:リニア;のデフォルト設定を使用する。特に明記しない限り、本明細書で提供される配列同一性値は、それぞれタンパク質及び核酸の比較の上記既定のパラメーターを用いてBLASTプログラム群(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990))を使用して得られた値を指す。
【0014】
本明細書中で使用される用語「主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex)(MHC)」は、細胞生物学及び生化学の分野で知られている意味で使用される;それはタンパク質のエピトープとも呼ばれる特定の断片(ペプチド)を提示する細胞表面分子を指す。MHC分子の2つの主要クラス:クラスI及びクラスIIが存在する。
【0015】
MHCクラスI重鎖分子は、通常、非MHC分子β2−ミクログロブリンのユニットに連結されたアルファ鎖として生じる(すなわち、オープン型ではない場合)。アルファ鎖は、N末端からC−末端への方向に、シグナルペプチド、3つの細胞外ドメイン(N末端にα1を有するα1〜3)、膜貫通ドメイン及びC末端細胞質尾部を含む。表示又は提示されるペプチドは、α1/α2ドメインの中央領域のペプチド結合溝によって保持される。
【0016】
本明細書中で使用される用語「β2−ミクログロブリンドメイン」は、細胞生物学及び生化学の分野で知られている意味で使用される;これは、MHCクラスIヘテロ二量体分子の一部である非MHC分子を指す。換言すれば、それはMHCクラスIヘテロ二量体のβ鎖を構成する。
【0017】
本明細書中で使用される用語「ヒト白血球抗原(HLA)」は、細胞生物学及び生化学の分野で知られている意味で使用される;それは、ヒトMHCクラスIタンパク質をコードする遺伝子座を指す。HLAにおける3つの主要なMHCクラスI遺伝子は、HLA−A、HLA−B及びHLA−Cであり、これらの遺伝子の全ては様々な対立遺伝子数を有する。例えば、HLA−Bは既知の対立遺伝子3590を有する。密接に関連する対立遺伝子は、特定の対立遺伝子のサブグループに群別される。例えば、HLAシステムの因子に関するWHO命名委員会によれば、対立遺伝子HLA−B57は、HLA−B57:01:01〜HLA−B57:82と標識された100以上の密接に関連する対立遺伝子を有する。すべての既知のHLA遺伝子及びそれらのそれぞれの対立遺伝子の完全配列又は部分配列は、IMGT/HLA(http://www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/)のような専門データベースで当業者に利用可能であり、本明細書の表1に示される。
【0018】
本明細書中で使用される用語「チェックポイント阻害剤」又は「チェックポイント阻害抗体」は、当該分野において免疫チェックポイント機構として知られているものの一部にあるとおり、T細胞活性化後のT細胞阻害をもたらすシグナルカスケードを破壊することができる薬剤、特に抗体(又は抗体様分子)を包含することを意味する。チェックポイント阻害剤又はチェックポイント阻害抗体の非限定的な例には、CTLA−4(Uniprot P16410)、PD−1(Uniprot Q15116)、PD−L1(Uniprot Q9NZQ7)、B7H3(CD276;Uniprot Q5ZPR3)、Tim−3、Gal9、VISTA、Lag3に対する抗体を含む。
【0019】
本明細書中で使用される用語「チェックポイントアゴニスト剤」又は「チェックポイントアゴニスト抗体」は、当該分野において免疫チェックポイント機構として知られているものの一部にあるとおり、T細胞活性化に至るシグナルカスケードに関与することができる、特に抗体(又は抗体様分子)であるが、これに限定されない薬剤を包含することを意味する。T細胞活性化を刺激することが知られている受容体の非限定的な例には、CD122及びCD137(4−1BB;Uniprot Q07011)が含まれる。「チェックポイントアゴニスト剤」又は「チェックポイントアゴニスト抗体」という用語は、CD137(4−1BB)、CD134(O×40)、CD357(GITR)CD278(ICOS)、CD27、CD28に対するアゴニスト抗体を包含する。
【0020】
本明細書中で使用される用語「抗体」は、細胞生物学及び免疫学の分野で知られている意味で使用される;それは、免疫グロブリンG型(IgG)、A型(IgA)、D型(IgD)、E型(IgE)又はM型(IgM)のいずれかの抗原結合断片又はその一本鎖及び、関連又は誘導された構築物に限定されないが、これらを含むすべての抗体を指す。全抗体は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(V)及び重鎖定常領域(C)を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2及びC3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略す)及び軽鎖定常領域(C)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを構成する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第一成分を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0021】
本明細書中で使用される用語「抗体様分子」は、高い親和性/kd≦10E−8mol/lで別の分子又は標的に特異的に結合することができる分子を指す。抗体様分子は、抗体の特異的結合と同様にその標的に結合する。用語「抗体様分子」は、設計されたアンキリンリピートタンパク質(モレキュラーパートナーズ(Molecular Partners)、チューリッヒ)、アルマジロリピートタンパク質に由来するポリペプチド、ロイシンリッチリピートタンパク質に由来するポリペプチド、及びテトラリコペプチドリピートタンパク質に由来するポリペプチドのように、リピートタンパク質を包含する。
【0022】
用語「抗体様分子」は、プロテインAドメインに由来するポリペプチド、フィブロネクチンドメインFN3に由来するポリペプチド、コンセンサスフィブロネクチンドメインに由来するポリペプチド、リポカリンに由来するポリペプチド、ジンクフィンガーに由来するポリペプチド、Src相同ドメイン2(SH2)に由来するポリペプチド、Src相同ドメイン3(SH3)に由来するポリペプチド、PDZドメインに由来するポリペプチド、γ−クリスタリンに由来するポリペプチド、ユビキチンに由来するポリペプチド、システインノットポリペプチドに由来するポリペプチド、及びノッティンに由来するポリペプチドをさらに包含する。
【0023】
用語「プロテインAドメイン由来ポリペプチド」は、プロテインAの誘導体であり、免疫グロブリンのFcドメイン及びFab領域に特異的に結合することができる分子を指す。
【0024】
用語「アルマジロリピートタンパク質」は、少なくとも1つのアルマジロリピートを含むポリペプチドを指し、アルマジロリピートは、ヘアピン構造を形成するαヘリックスの対によって特徴付けられる。
【0025】
本明細書中で使用される用語「結晶化可能断片(Fc)領域」は、細胞生物学及び免疫学の分野で知られている意味で使用される;それは、ジスルフィド結合によって共有結合されたC2及びC3ドメインを含む2つの同一の重鎖断片を含む抗体の画分を指す。
【0026】
本明細書の文脈において、用語「二量体」は、2つのサブユニットからなるユニットを指す。
【0027】
本明細書中で使用される用語「ホモ二量体」は、同じクラスのサブユニットの同一又は非常に類似したメンバーである2つのサブユニットからなる二量体を意味する。ホモ二量体の一例は、HLA−B57対立遺伝子のリストから独立して選択された2つのサブユニットからなる二量体であろう。特定の実施形態では、ホモ二量体は、2つの同一のHLA−B57対立遺伝子からなる。
【0028】
本明細書中で使用される用語「アミノ酸リンカー」は、一本鎖ポリペプチドを生成するために、2つのポリペプチドを連結するため使用される可変長のポリペプチドをいう。本明細書で特定される本発明の実施に有用なリンカーの例示的な実施形態は、1、2、3、4、5、10、20、30、40又は50個のアミノ酸からなるオリゴペプチド鎖である。アミノ酸リンカーの非限定的な例は、HLA−B57ポリペプチドをFcドメインと連結するポリペプチドGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号109)である。
【0029】
本発明は、HLA−B57オープンコンフォーマーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、免疫細胞の浸潤に基づく腫瘍の3つの異なる分類を示す概略図である。「免疫原性」の腫瘍は、豊富な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)浸潤、M1型マクロファージ、三次リンパ系構造(TLS)の存在及び低/中度の血管新生を特徴とするが、同時に患者の最も長い生存に関連する。「免疫無視」の腫瘍は、免疫細胞による浸潤の欠如、低/中度の血管新生及び中間的予後によって特徴付けられる。最後に、「炎症性」の腫瘍は、TLSの非存在下での豊富なCTL、M2マクロファージによる顕著な浸潤、重篤な血管新生及び予後不良を特徴とする(Bechtら、Current Opinion in Immunology、2016,39:17−13)。
図2AB図2は、B57−FcがマウスCD4T細胞をiTregに変換するのをブロックすることを示す。ナイーブCD4T細胞と用量依存的にB57−Fcをインキュベートすることにより、iTregへの変換が阻止される。A)B57−Fcは、用量依存性(μg/200μL)(C)においてCD25(Tregの系統マーカー)の発現を遮断する。B)B57−Fcは、用量依存性(μg/200μL)(D)においてFoxP3(Tregの分化マーカー)の発現を遮断する。対照B57−β2m−Fc、アイソタイプ、TGFβ及びIL−2を補充した培地及び補充なしの培地は、iTreg変換におけるB57−Fcの特異的影響を実証する。
図2CD図2は、B57−FcがマウスCD4T細胞をiTregに変換するのをブロックすることを示す。ナイーブCD4T細胞と用量依存的にB57−Fcをインキュベートすることにより、iTregへの変換が阻止される。A)B57−Fcは、用量依存性(μg/200μL)(C)においてCD25(Tregの系統マーカー)の発現を遮断する。B)B57−Fcは、用量依存性(μg/200μL)(D)においてFoxP3(Tregの分化マーカー)の発現を遮断する。対照B57−β2m−Fc、アイソタイプ、TGFβ及びIL−2を補充した培地及び補充なしの培地は、iTreg変換におけるB57−Fcの特異的影響を実証する。
図3AB図3は、B57−Fcが用量依存性においてネズミTregの抑制を損なうことを示す。A)CD8T細胞及びTregからの増殖のヒストグラムであり、B57−FcがマウスTregの抑制を阻止し、かつCD8T細胞の増殖を可能にすることを示す。対照B57−β2m−Fc及びアイソタイプは、マウスTregの抑制機能を変化させない。B)異なる濃度のB57−Fc(μg/200μL)におけるネズミCD8T細胞のiTreg抑制%である。
図4ABC図4は、B57−Fcがリンパ腫T細胞を抑制することを示す。A−C)は、(A)対照アイソタイプ、(B)対照B57−β2m−Fc、及び(C)B57−Fcの存在下で細胞の増殖を測定する抑制アッセイである。B57−Fcは、対照細胞株と比較して、用量依存性(μg/200μL)において、ヒト(Jurkat)及びマウス(EG.7)リンパ腫細胞株を抑制する。
図5ABCDEF図5は、白血球集団の異なる免疫調節受容体に対するB57−Fcの相互作用を示す。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による、A)KIR3DL1(NK細胞及びT細胞のサブセットで発現される);B)KIR3DL2(NK細胞及びT細胞のサブセットで発現される);C)KIR3DL3(NK細胞及びT細胞のサブセットで発現される);D)LILRB1(NK細胞、T細胞、単球及びマクロファージの集団で発現);E)LILRB2(大部分はマクロファージ及びMDSCで発現される)、及びF)PirB(ネズミ相同体対LILRB2)である。
図6AB図6は、B57−Fc及びβ2mDNAカセットの概略図及びCHO細胞からのB57−β2m−Fc分子の発現を示す。A)ヒトIgG4−Fcベクターカセットに挿入されたHLA−B57重鎖のα1、2及び3ドメイン;及び別のベクターカセットに挿入されたヒトβ2マイクログロブリン。B)チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞でのトランスフェクションは、B57−β2m−Fcタンパク質の細胞外生産のために、1:1の比率でB57−Fcベクター+β2mベクターの両方を使用して行う。標準的な抗体精製の手順を用いて上清を回収し、B57−β2m−Fcを精製した。β2mをB57−β2m−Fc複合体から除去し、その後のB57−Fc単量体をリフォールディングしてB57−Fcホモ二量体を形成する。
図7ABC図7は、B57−FcとPD−1抗体との併用が、C38マウス同系結腸癌モデルにおける腫瘍のサイズを縮小することを示す。A)結腸癌細胞(C38)の注射時点及び化合物注射の実験設計。B)処置群(n=6)の平均腫瘍体積mm。C)アイソタイプと比較したB57−Fc及びPD−1処置群の腫瘍阻害のパーセンテージ(%)。物質注射の実験設計は以下の通りであった:ビヒクルPBS Q3D×7、アイソタイプ(10mg/Kg)Q3D×7;B57−Fc(10mg/kg)Q3D×7;PD−1biwk×2(200μg);及びB57−Fc+PD−1(それぞれQ3D×7及びbiwk×2)。腫瘍体積を、平均±SEMとして表し、二元配置分散分析(ANOVA)により解析し、続いてボンフェローニポストホック(Bonferroni post−hoc)分析、**p<0.01を行った。Q=注射間日数。D×=注射回数、biwk=週に2回。
図8AB図8は、B57−FcとPD−1抗体との併用が、膵臓(Pan02)癌マウスモデルにおける腫瘍のサイズを縮小することを示す。A)膵臓癌細胞(Pan02)の注射時点及び化合物注射の実験設計。B)B57−Fc及び/又はPD−1での処置群(n=8)の平均腫瘍体積mm。物質注射の実験設計は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/kg)biwk×3;B57−Fc(5mg/kg)biwk×3;PD−1(5mg/kg)biwk×3;及びB57−Fc+PD−1(biwk×3)。腫瘍体積を平均±SEMとして表し、二元配置分散分析により解析し、続いてボンフェローニポストホック分析、p<0.05;**p<0.01;****p<0.0001を行った。biwk=週に2回。
図9AB図9は、B57−FcとPD−L1抗体との併用が、膵臓(Pan02)癌マウスモデルにおける腫瘍のサイズを縮小することを示す。A)B57−Fc及び/又はPD−L1での処置群(n=8)の平均腫瘍体積mm。B)アイソタイプと比較したB57−Fc、PD−1及びPD−L1処置群の腫瘍阻害のパーセンテージ。物質注射の実験設計は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/kg)biwk×3;B57−Fc(5mg/kg)biwk×3;PD−L1(5mg/kg)biwk×3;及びB57−Fc+PD−L1(biwk×3)。腫瘍体積を平均±SEMとして表し、二元配置分散分析により解析し、続いてボンフェローニポストホック分析、p<0.05;**p<0.01;****p<0.0001を行った。biwk=週に2回。
図10ABC図10は、フローサイトメトリーによるB57−Fc及びPD−1を処置した膵臓(Pan02)癌マウスの腫瘍における浸潤した白血球の免疫組織解析を示す。腫瘍に浸潤した関連する白血球を分析した:A)NK細胞;B)CD8/Treg比;及びC)骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC);白血球数を平均±SEMとして表し、一元配置分散分析により解析し、続いてトルコポストホック分析、p<0.05を行った。
図11AB図11は、フローサイトメトリーによるB57−Fc及びPD−1を処置した膵臓(Pan02)癌マウスの腫瘍における浸潤した白血球の免疫組織解析(図10からの続き)を示す。腫瘍に浸潤した関連する白血球を分析した:A)マクロファージ、及びB)マクロファージM1/M2の比。白血球数を、平均±SEMとして表し、一元配置分散分析により解析し、続いてトルコポストホック分析、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001を行った。
図12ABC図12は、フローサイトメトリーによるB57−Fc及びPD−L1を処置した膵臓(Pan02)癌マウスの腫瘍における浸潤した白血球の免疫組織解析を示す。腫瘍に浸潤した関連する白血球を分析した:A)NK細胞;B)CD8/Treg比;及びC)骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)。白血球数を平均±SEMとして表し、一元配置分散分析により解析し、続いてトルコポストホック分析、p<0.05を行った。
図13AB図13は、フローサイトメトリーによるB57−Fc及びPD−L1を処置した膵臓(Pan02)癌マウスの腫瘍における浸潤した白血球の免疫組織解析(図12からの続き)を示す。腫瘍に浸潤した関連する白血球を分析した:A)マクロファージ、及びB)マクロファージM1/M2の比。白血球数を、平均±SEMとして表し、一元配置分散分析により解析し、続いてトルコポストホック分析、p<0.05;**p<0.01を行った。
図14AB図14は、B57−Fcと4−1BBチェックポイントアゴニスト抗体との併用がメラノーマ(悪性黒色腫)(B16F10)癌マウスモデルにおける腫瘍のサイズを縮小することを示す。A)メラノーマ癌細胞(B16F10)の注入時点と化合物の注入との実験設計。B)B57−Fc及び4−1BB抗体での処置群(n=8)の平均腫瘍体積mm。物質注射の実験設計は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/kg)のbiwk×3回注射;B57−Fc(5mg/kg)biwk×3回注射;4−1BB抗体(1mg/kg)biwk×3回注射;及びB57−Fc+4−1BB biwk×3回注射。腫瘍体積を平均±SEMとして表し、二元配置分散分析により解析し、続いてボンフェローニポストホック分析、**p<0.01;****p<0.0001を行った。biwk=週2回。
図15AB図15は、B57−Fcと4−1BBチェックポイントアゴニスト抗体との併用及びPD−1アンタゴニスト抗体との併用がメラノーマ(B16F10)癌マウスモデル(図14実験からの継続)における腫瘍のサイズを縮小することを示す。A)B57−Fc、PD−1及び4−1BB抗体を用いた処置群(n=8)の平均腫瘍体積mm。B)アイソタイプと比較したB57−Fc、4−1BB及びPD−1処置群の腫瘍阻害のパーセンテージ(%)。物質注射の実験設計は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/kg)biwk×3回注射;B57−Fc(5mg/kg)biwk×3回注射;4−1BB抗体(1mg/kg)biwk×3回注射;PD−1 biwk×3回注射(5mg/kg);及びB57−Fc+4−1BB biwk×3回注射、B57−Fc+PD−1 biwk×3回注射、PD−1+4−1BB biwk×3回注射、及びB57−Fc+4−1BB+PD−1 biwk×3回注射。腫瘍体積は平均±SEMとして表される。biwk=週に2回。
図16ABC図16は、フローサイトメトリーによるメラノーマ(B16F10)処理マウスの腫瘍における浸潤した白血球の免疫組織解析を示す。腫瘍に浸潤する関連する白血球を分析した:A)NK細胞;B)CD8/Treg比;及びC)骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)。白血球数を、平均±SEMとして表し、一元配置分散分析により解析し、続いてトルコポストホック分析、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001を行った。
図17AB図17は、フローサイトメトリーによるメラノーマ(B16F10)処理マウスの腫瘍における浸潤した白血球の免疫組織解析(図16からの続き)を示す。腫瘍に浸潤する関連する白血球を分析した:A)マクロファージ;及びB)マクロファージM1/M2比。白血球数を、平均±SEMとして表し、一元配置分散分析、続いてトルコポストホック分析、p<0.05;**p<0.01;***p<0.001を行った。
【発明を実施するための形態】
【0031】
一態様によれば、本発明は、薬剤としての使用のためのHLA−B57オープンコンフォーマーを提供する。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、癌の予防又は治療における使用のための、又は免疫調節物質としての使用のためのHLA−B57オープンコンフォーマーを提供する。
【0033】
本発明の別の態様によれば、単離されたHLA−B57オープンコンフォーマータンパク質は、特に薬剤として、さらに特に癌の予防又は治療における使用のための、又は免疫調節剤として提供される。
【0034】
本発明の別の態様によれば、単離されたHLA−B57オープンコンフォーマータンパク質は、癌及び感染症(von Boehmerら、同書)のような、制御性T細胞(Treg)が防御免疫の発達を損なうヒト疾患における使用のために、免疫調節剤として、又は制御性T細胞(Treg)のネガティブモジュレーターとしての使用のために提供される。
【0035】
特定の実施形態では、HLA−B57オープンコンフォーマーは、2つの同一のHLA−B57ポリペプチド鎖を含む。特定の実施形態では、HLA−B57オープンコンフォーマーは、2つの異なるHLA−B57ポリペプチド鎖を含む。
【0036】
本発明のこの第1の態様の代替によれば、HLA−B57オープンコンフォーマーは、癌の治療又は予防のために、又は感染症の治療のための免疫調節剤としての使用のために、特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型B型C型肝炎ウイルス(それぞれ、HAV、HBV、HCV)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、麻疹ウイルス、ヘルペスウイルス及び/又は黄熱病ウイルスの予防又は治療における使用のために提供される。この態様によるオープンコンフォーマーは、2つの単量体の二量体として存在する融合タンパク質であり、各単量体は他の単量体とは独立して、HLA−B57鎖及びインビボでポリペプチドを代謝的に安定化することが知られているポリペプチドドメインを含む。そのような安定化ドメインの一例は、免疫グロブリンのFc(結晶化可能断片)ドメイン、特にγ免疫グロブリンのFcポリペプチドドメインである。HLA−B57鎖及び安定化ドメインは、任意にアミノ酸リンカーによって連結されていてもよい。HLA−B57鎖及び免疫グロブリンFc断片を含むオープンコンフォーマー融合タンパク質は、以後、HLA−B57Fcオープンコンフォーマー又はB57−Fcと称する。
【0037】
融合タンパク質中のFcドメインの存在は、哺乳動物系(プロテインA又はG精製)における溶解性、安定性、結合活性、半減期及び技術的観点からの費用効果の高い産生及び精製の促進を容易にする。
【0038】
特定の実施形態では、HLA−B57オープンコンフォーマーホモ二量体は、さらに、ペプチドエピトープ断片を含む。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、HLA−B57オープンコンフォーマー単量体(すなわち、第2のHLA−B57重鎖ポリペプチドに結合しておらず、β2−ミクログロブリンに結合していないHLA−B57)は、癌の治療又は予防における使用のために、又は免疫調節剤としての使用のために提供される。この態様の特定の実施形態では、HLA−B57単量体は、ペプチドエピトープ断片をさらに含む。
【0040】
この態様は、以下の項目で要約することができる:
【0041】
項目1:薬剤として使用するための、特に癌の治療又は予防に使用するため又は免疫調節剤としての使用のための、結合するβ2−ミクログロブリンを本質的に含まない単離された単一HLA−B57重鎖ポリペプチド単量体。
【0042】
項目2:単量体がペプチドエピトープ断片をさらに含む、項目1に記載の癌の治療又は予防、又は免疫調節剤として使用するために単離された単一HLA−B57重鎖ポリペプチド単量体。
【0043】
項目3:HLA−B57鎖がHLA−B57アルファ1、2及び3ドメインのみからなる、項目1又は2に記載の癌の治療又は予防、又は免疫調節剤として使用するために単離された単一HLA−B57重鎖ポリペプチド単量体。
【0044】
項目4:HLA−B57鎖が膜貫通ドメインを含み、かつ細胞内ドメイン(細胞質尾部)を含まない、前記項目のいずれか1項に記載の癌の治療又は予防、又は免疫調節剤として使用するために単離された単一HLA−B57重鎖ポリペプチド単量体。
【0045】
項目5:HLA−B57鎖は、表1に示す配列のいずれか一つと比較し70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上又は98%以上、又は100%の配列同一性を有する、前記項目のいずれか1項に記載の癌の治療又は予防、又は免疫調節剤として使用するために単離された単一HLA−B57重鎖ポリペプチド単量体。
【0046】
項目6: a.項目1〜5のいずれか1項に特定されるとおり、単離された単一HLA−B57重鎖ポリペプチド単量体と、
b.チェックポイント阻害剤、特にチェックポイント阻害抗体及び/又はチェックポイントアゴニスト剤、特にチェックポイントアゴニスト抗体、
とを含む併用薬剤。
【0047】
項目7:前記チェックポイント阻害剤が、CD80又はCD86とのCTLA4相互作用の阻害剤、及びPD−1とそのリガンドPD−L1との相互作用の阻害剤、特にCTLA4、CD80、CD86、PD−1、PD−L1のいずれか一つに対する抗体、さらに特にヒトCTLA4、PD−1又はPD−L1に対するモノクローナル抗体から選択される、項目6に記載の併用薬剤であって、及び/又は前記チェックポイントアゴニスト剤はアゴニスト抗体又は4−1BB及び/又は4−1BBL(CD137L、Uniprot P41273)に対するリガンドから選択される。
【0048】
上記記載の本発明の態様のいずれか一つの特定の実施形態において、ペプチドエピトープ断片は、HLA−B57ペプチド鎖の抗原提示ドメイン内のポリペプチドに非共有結合性に結合される。
【0049】
上記記載の本発明の態様のいずれか一つの特定の実施形態において、HLA−B57鎖は、細胞外HLA−B57α1、2及び3ドメインのみを含む。これらの実施形態において、HLA−B57鎖の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインは、組換え細胞におけるその細胞外発現を可能にするために、本発明の治療用ポリペプチドに含まれない。当業者であれば、注釈付きのHLA−B57配列とのペアワイズ配列アライメントにより、以前に未知のHLA−B57配列であっても、それぞれのドメインを容易に同定することができる。
【0050】
上記記載の本発明の態様のいずれか一つの特定の実施形態において、ホモ二量体のHLA−B57鎖は、HLA−B57:01〜HLA−B57:82から選択される。
【0051】
上記記載の本発明の態様のいずれか一つの特定の実施形態において、HLA−B57鎖は、HLA−B57α1、2及び3ドメインのみを含むが、表1から選択される配列の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含まない。
【0052】
上記記載の本発明の態様のいずれか一つの特定の実施形態において、HLA−B57鎖は、表1に示す配列のいずれか一つと比較し70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上又は98%以上、又は100%の配列同一性を有する。
【0053】
特定の実施形態において、HLA−B57オープンコンフォーマーは、上記のHLA−B57対立遺伝子から独立して選択される2つのサブユニットからなる。特定の実施形態では、ホモ二量体は、2つの同一のHLA−B57対立遺伝子からなる。
【0054】
特定の実施形態では、HLA−B57オープンコンフォーマーはFcドメインを含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、免疫グロブリンG型(IgG)、A型(IgA)、D型(IgD)、E型(IgE)又はM型(IgM)の重鎖定常領域C2及びC3を含む。
【0055】
特定の実施形態では、HLA−B57オープンコンフォーマーは、安定化ドメイン、特にFcドメインをHLAポリペプチドに連結するアミノ酸リンカーを含む。特に特定の実施形態では、アミノ酸リンカーは、単一ポリペプチド鎖としてHLA−B57鎖をFcドメインに連結する1〜50個のアミノ酸、特に5〜40個のアミノ酸、さらに特に10〜30個のアミノ酸、なおさらに特に15〜25個のアミノ酸を含む。
【0056】
本発明の第3の態様によれば、本発明の上記態様に記載の、HLA−B57オープンコンフォーマー単量体、特にFcオープンコンフォーマー単量体をコードする核酸分子が、癌の治療又は療法における使用のために提供される。核酸分子からのインビボでのオープンコンフォーマーの発現は、二量体化の後に、本発明の融合タンパク質ポリペプチドをもたらす。患者の体内でそれらをコードする核酸から薬学的に活性なポリペプチドを発現させるという概念は周知であり、患者に大きな利益を与えることができる。
【0057】
特定の実施形態では、核酸分子は、HLA−B57オープンコンフォーマー単量体、特にペプチドエピトープ断片を含むFcオープンコンフォーマー単量体をコードする。特定の実施形態では、核酸分子は、HLA−B57オープンコンフォーマー単量体、特に、細胞外HLA−B57アルファ1、2及び3ドメインのみを含むFcオープンコンフォーマー単量体をコードする。特定の実施形態では、核酸分子は、HLA−B57オープンコンフォーマー単量体、特に細胞外HLA−B57アルファ1、2及び3ドメインのみを含むFcオープンコンフォーマー単量体及びペプチドエピトープ断片をコードする。
【0058】
特定の実施形態では、核酸分子は、HLA−B57オープンコンフォーマー単量体、特にアミノ酸リンカー及び/又はFc(結晶化可能な断片)ドメインを含むFcオープンコンフォーマー単量体をコードし、癌の治療又は療法において使用される。
【0059】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第3の態様に記載の核酸分子を含む組換え発現ベクターは、癌の治療又は療法における使用のために提供される。
【0060】
特定の実施形態では、組換え発現ベクターは、哺乳動物細胞、特にヒト細胞において作動可能なプロモーターを含むプラスミドである。プロモーターは、本発明の核酸分子に作動可能に連結されている。
【0061】
本発明の別の態様によれば、本発明の第3の態様に記載の核酸分子を含むウイルスは、癌の治療又は療法における使用のために提供される。核酸分子は、哺乳動物細胞、特にヒト細胞において作動可能なプロモーター配列の制御下にある。特定の実施形態では、ウイルスは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス又はレンチウイルスである。
【0062】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明の第3の態様に記載の核酸分子を含むインビトロで遺伝子改変された宿主細胞が提供される。
【0063】
本発明の別の態様は、癌の治療又は予防のための薬剤の製造において、本発明の第1及び第2の態様に記載のHLA−B57Fcオープンコンフォーマーホモ二量体又は融合タンパク質ホモ二量体の使用を提供する。
【0064】
さらに別の態様によれば、本発明は、本発明の第1及び第2の態様に記載のHLA−B57Fcオープンコンフォーマーを、それを必要とする患者に投与することを含む、癌の治療方法を提供する。
【0065】
本発明の別の態様によれば、併用薬剤が提供され、併用薬剤は:
−本発明の上記態様又は実施形態のいずれか一つに記載のHLA−B57オープンコンフォーマー、特にHLA−B57Fcオープンコンフォーマー、
及び、
−CD80又はCD86と相互作用する細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4;CD152としても知られている)の阻害剤、プログラム細胞死タンパク質1(PD−1;CD279としても知られている)とそのリガンドPD−L1の相互作用の阻害剤、及びT細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM−3)のリガンドから選択されるチェックポイント阻害剤、
−チェックポイントアゴニスト剤、特に、腫瘍壊死因子受容体4−1BB(CD137又はTNFRSF9としても知られている)に結合してこれを活性化するように選択されたチェックポイントアゴニスト抗体、
を含む。
【0066】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA4とCD80又はCD86との相互作用の阻害剤である。
【0067】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はイピリムマブ(ヤーボイ(Yervoy);CAS番号477202−00−9)である。
【0068】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD−1)とその受容体PD−L1との相互作用の阻害剤である。ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、臨床的に利用可能な抗体薬であるニボルマブ(ブリストル・マイヤーズ スクイブ(Bristol−Myers Squibb);CAS番号946414−94−4)、ペンブロリズマブ(メルク社(Merck Inc.);CAS番号1374853−91−4)、ピジリズマブ(CAS番号1036730−42−3)、アテゾリズマブ(ロシュ社(Roche AG);CAS番号1380723−44−3)、及びアベルマブ(メルク社(Merck KGaA);CAS番号1537032−82−8)から選択される。
【0069】
特定の実施形態では、免疫チェックポイントアゴニスト剤は、現在臨床試験中の4−1BBに対する完全ヒトIgG2モノクローナル抗体であるウトミルマブ(PF−05082566)である。
【0070】
特定の実施形態において、HLA−B57オープンコンフォーマー、特にHLA−B57 Fcオープンコンフォーマーは、非経口剤形として、特に注射用に調製され提供される。特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤及び/又はチェックポイントアゴニスト剤は、非経口剤形として、特に注射用に調製され提供される。特定の実施形態では、HLA−B57オープンコンフォーマー及びチェックポイント阻害剤及び/又はチェックポイントアゴニスト剤の両方が同じ投与形態で存在する。
【0071】
さらに別の態様において、本発明は、組換えHLA重鎖ポリペプチドを産生するための方法に関する。この方法を以下の項目に概要する:
【0072】
項目A:組換えバイオテクノロジーの方法により、ヒトHLA重鎖ポリペプチドを産生するための方法であって、前記方法は以下の工程を含む:
a.発現段階:
i.細胞、特に真核細胞、さらに特に哺乳類細胞において作動可能なプロモーター配列の制御下でHLA重鎖の少なくともα1鎖、α2鎖及びα3鎖をコードするHLAコード核酸配列、及び
ii.前記細胞(項目1のaと同じ細胞)において作動可能なプロモーター配列の制御下で、ヒトHLAβ2ミクログロブリン(UniProt P61769)をコードするβ2−ミクログロブリンコード核酸配列を、哺乳動物細胞(「産生細胞株」)において同時発現させる;
b.精製工程:得られたHLA−重鎖/β2−ミクログロブリン複合体を哺乳動物細胞(産生細胞株)から精製し;
c.解離工程:精製されたHLA−重鎖/β2−ミクログロブリン複合体を適切な条件下で解離させ、HLA重鎖ポリペプチドをβ2−ミクログロブリンポリペプチドから分離し;
d.リフォールディング段階:分離されたHLA重鎖ポリペプチドを、リフォールディング(生理的に活性なHLAオープンコンフォーマー分子に見られるそれらの天然の三次タンパク質構造へ)することを誘導する条件下でインキュベートする。
【0073】
項目B:項目Aに記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLAコード核酸配列が、コードされたポリペプチドのN末端からC末端へ、α1鎖、α2鎖、α3鎖と安定化配列とを含む。
【0074】
項目C:項目Bに記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、安定化配列が、ウシ血清アルブミン及び免疫グロブリン定常断片(Fc)、特に免疫グロブリンG定常断片、さらに特にIgG4Fcから選択される。
【0075】
項目D:上記項目のいずれかに記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLAコード核酸配列及びβ2ミクログロブリンコード核酸配列が、同一の核酸ベクター分子(特に、DNA発現プラスミド)上に存在する。
【0076】
項目E:上記項目A〜Cのいずれかに記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLAコード核酸配列及びβ2ミクログロブリンコード核酸配列が異なる核酸ベクター分子(特に、異なるDNA発現プラスミド)上に存在する。
【0077】
項目F:項目Eの方法であって、HLAコード核酸配列を含む核酸ベクターが、β2−ミクログロブリンコード核酸配列、特に約3重過剰に含む核酸ベクターに対して、約1〜5重過剰、特に1.5〜5重過剰に存在する。
【0078】
項目G:前記項目のいずれかに記載の方法であって、HLAコード核酸配列が安定化配列としての免疫グロブリンFc断片を含み、精製工程は、プロテインAへ連結された表面に組換えHLA重鎖ポリペプチドを吸着させることによって行われる。
【0079】
項目H:上記項目のいずれかに記載の方法であって、解離工程は、酸性条件下、特に約pH2での処理により、かつ還元条件下での透析により行われる。
【0080】
項目I:前記項目のいずれかに記載の方法であって、リフォールディング工程が、中性条件下での処理により行われる。
【0081】
本明細書で特定されるB57オープンコンフォーマーをより具体的に指摘すると、その方法は以下の項目に要約することができる:
【0082】
項目A’:組換えバイオテクノロジーの方法により、ヒトHLA−B57重鎖ポリペプチドを製造する方法であって、前記方法は以下の工程を含む:
a.発現段階:
i.細胞、特に真核細胞、さらに特に哺乳動物細胞において作動可能なプロモーター配列の制御下でHLA−B57重鎖の少なくともα1鎖、α2鎖及びα3鎖をコードするHLA−B57コード核酸配列、及び
ii.前記細胞(項目1のaと同じ細胞)において作動可能なプロモーター配列の制御下で、ヒトHLAβ2ミクログロブリン(UniProt P61769)をコードするβ2−ミクログロブリンコード核酸配列を、哺乳動物細胞(「産生細胞株」)において同時発現させる;
b.精製工程:得られたHLA−B57重鎖/β2−ミクログロブリン複合体を哺乳動物細胞(産生細胞株)から精製し;
c.解離工程:精製されたHLA−B57−重鎖/β2−ミクログロブリン複合体を適切な条件下で解離させ、HLA重鎖ポリペプチドをβ2−ミクログロブリンポリペプチドから分離し;
d.リフォールディング段階:分離されたHLA−B57重鎖ポリペプチドは、リフォールディング(生理学的に活性なHLAオープンコンフォーマー分子に見られるそれらの天然の三次タンパク質構造へ)することを誘導する条件下でインキュベートする。
【0083】
項目B’:項目A’に記載のヒトHLA−B57重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLA−B57コード核酸配列が、コードされたポリペプチドのN末端からC末端へ、α1鎖、α2鎖、α3鎖と安定化配列とを含む。
【0084】
項目C’:項目B’に記載のヒトHLA−B57重鎖ポリペプチドの製造方法であって、安定化配列が、ウシ血清アルブミン及び免疫グロブリン定常断片(Fc)、特に免疫グロブリンG定常断片、さらに特にIgG4Fcから選択される。
【0085】
項目D’:上記項目のいずれかに記載のヒトHLA−B57重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLA−B57コード核酸配列及びβ2ミクログロブリンコード核酸配列が同一の核酸ベクター分子(特に、DNA発現プラスミド)上に存在する。
【0086】
項目E’:上記項目A’〜C’のいずれかに記載のヒトHLA−B57重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLA−B57コード核酸配列及びβ2−ミクログロブリンコード核酸配列が異なる核酸ベクター分子(特に、異なるDNA発現プラスミド)上に存在する。
【0087】
項目F’:項目E’の方法であって、HLA−B57コード核酸配列を含む核酸ベクターが、β2−ミクログロブリンコード核酸配列、特に約3重過剰に含む核酸ベクターに対して、約1〜5重過剰、特に1.5〜5倍過剰に存在する。
【0088】
項目G’:前記項目のいずれかに記載の方法であって、HLA−B57コード核酸配列が安定化配列として免疫グロブリンFc断片を含み、精製工程は、プロテインAへ連結された表面に組換えHLA重鎖ポリペプチドを吸着させることによって行われる。
【0089】
項目H’:前記項目のいずれかに記載の方法であって、解離工程は、酸性条件下、特に約pH2での処理により、かつ還元条件下での透析により行われる。
【0090】
項目I’:前記項目のいずれかに記載の方法であって、リフォールディング工程が、中性条件下での処理により行われる。
【0091】
単一の分離可能な特徴の代替物、例えば、対立遺伝子又はコード配列などは、本明細書において「実施形態」として示される箇所すべてにおいて、そのような代替物は、本明細書に開示される発明の別個の実施形態を形成するために自由に組み合わせられ得る。
【0092】
本発明は、以下の実施例及び図によりさらに説明され、これにより、さらなる実施形態及び利点を引き出すことができる。これらの実施例は、本発明を説明することを意図しているが、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0093】
驚くべきことに、本発明者らは、HLA−B57オープンコンフォーマーが、NK細胞、T細胞、骨髄由来細胞(マクロファージ及びMDSC)に存在する種々の免疫調節表面受容体と相互作用し、インビトロでTregの分化及び抑制機能を調節することを見出した。
【0094】
本発明者らは、驚くべきことに、特にFc免疫グロブリン断片を含む融合タンパク質として存在する場合、HLA−B57オープンコンフォーマーが癌治療において有用であり得ることを見出した。HLA−B57−Fc分子は、単独で、又は他の癌治療剤と併用して使用することができる。
【0095】
さらに、彼らは、チェックポイント阻害剤又はアゴニスト抗体を用いた単独療法的又は併用的アプローチとしてB57−Fcの注射による新規のインビボ作用様式を発見した。B57−Fc単独又は併用治療は、M1/M2細胞の増加の割合、NK細胞の浸潤の増加、CD8T細胞/Treg比の増加、及びMDSC浸潤の減少により特定されたとおり、腫瘍への多様な白血球の集合の浸潤を調節することができる。全体的に、B57−Fcの単独又はアンタゴニスト/アゴニスト抗体を用いた併用的アプローチの作用様式は、癌の治療に関連することは疑いがなく、癌免疫療法における現在の臨床的必要性と相関する。
【0096】
HLA−B57Fcオープンコンフォーマーは、癌及び感染性疾患の場合のように、免疫調節が治療的アプローチである疾患を標的とするための治療剤として使用することができる。
【0097】
インビトロ試験
B57−Fc分子は、iTreg分化をブロックし、Treg抑制に負の影響を及ぼすことによって免疫応答を調節することができる(図2〜3)
【0098】
B57−FcはネズミCD4T細胞のiTregへの変換をブロックする
iTreg変換のためのナイーブCD4T細胞に対するHLA分子の影響に関し、iTreg変換のための最適培養条件において、ナイーブCD4T細胞と共にインキュベートしたB57−Fc、B57−β2m−Fc、アイソタイプ及PBSの用量依存性(μg/mL)を分析した。B57−Fcは、CD25(図2A、C)及びFoxP3(図2B、D)の誘導をダウンモジュレーションすることを実証した。
【0099】
B57−Fcは、TregによるマウスCD8T細胞の抑制を損なう
応答細胞としてバイオレット標識されたナイーブCD8T細胞を用いてネズミTregの抑制機能を測定した(図3)。TregをB57−Fc及び対照B57−β2m−Fc、及びアイソタイプ抗体と共培養し、そして96時間後にCD8T細胞の増殖を測定した。CD8T細胞単独が強力な増殖を示し、予想通り、Treg細胞は、対照(B57−β2m−Fc及びアイソタイプ)と共にインキュベートした場合、CD8T細胞の増殖を抑制した。驚くべきことに、Tregの抑制機能は、CD8T細胞の強い増殖により示されるB57−Fcの存在下で大きく損なわれた(図3A)。B57−Fcの効果は用量依存的であった(図3B)。
【0100】
B57−Fcは、白血病T細胞の増殖を阻害する
異なる癌細胞株におけるB57−Fc増殖効果の効果を測定した(図4)。結果は、B57−Fcが対照対応物B57−β2m−Fc又はアイソタイプIgG4と比較してリンパ腫T細胞株の増殖を調節し、標的治療としてのリンパ腫の治療への潜在的適用を示していることが実証された。
【0101】
B57−Fcは、白血球の様々な型で発現される免疫調節受容体に結合する
本発明者らは、B57−Fcが酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により特定の免疫調節受容体と相互作用するかどうかを測定した。結果は、B57−Fcが、そのB57−β2m−Fc対照対応物とは異なり、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR3DL3、LILRB1、LILRB2及びPirb受容体と相互作用することを実証した(図5A〜D)。さらに、類似のHLAオープンコンフォーマー分子が同じ受容体と相互作用するが、異なる親和性を有するかを実証するために、B27−Fc及びB27−β2m−Fcもまた比較した。
【0102】
CHO細胞におけるヒトFc融合タンパク質としてのB57オープンコンフォーマーの産生
治療上の観点からの有効な戦略とは、溶解性、安定性、結合活性、半減期の増加、及び哺乳動物系での技術的観点、費用対効果の高い生産及び精製のために安定な型(Fc融合)においてHLA−B57オープンコンフォーマー分子を産生することである。B57−β2m−Fc複合体は、HLA−B57のα1,2及び3ドメインを、ヒトIgG4−Fcベクターカセット(図6A)に、B57−β2m−Fcタンパク質の細胞外産生に必要なヒト−β2mベクターと共に挿入することにより産生される(図6A、B)。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞におけるトランスフェクションは、B57−Fcベクター+β2mベクターの両方を1:1の比率で用いて行った。上清を回収し、標準的な抗体精製手順(組換えタンパク質精製ハンドブック(Recombinant Protein Purification Handbook)、原則及び方法、2009.GEヘルスケア(GE Healthcare)、18−1142−75)を用いてB57−β2m−Fcを精製した(図6B)。B57−Fc遊離重鎖からのβ2mの分離は、SEC又は透析法を用いて変性状態を利用し行った。リフォールディング緩衝液において希釈法を用いてB57−Fcのリフォールディングを評価し、ウエスタンブロットにより分析した(データは示さず)。
【0103】
多様な同系結腸癌マウスモデルにおけるPD−1、PD−L1及び4−1BB抗体を用いたB57−Fcの前臨床併用療法試験
免疫調節治療分子としてのB57−Fcのインビボでの概念実証試験(proof of concept study)は、単剤として及びPD−1、PD−L1又は4−1BB抗体との併用療法としてネズミ結腸癌(C38)、膵臓癌(Pan02)及びメラノーマ(B16−F10)同系マウスモデルにおいて実証された。
【0104】
結腸癌モデルについては、確立された手順に従って、同系マウスの脇腹にC38断片腫瘍を皮下注射した。腫瘍が約80mm(腫瘍の移植後1〜2週間)に達すると、マウスを腫瘍体積に従って統計的に区分した。B57−Fcを3日ごとに7回(Q3D×7)腹腔内注射し、PD−1は週2回(biwk×2回)、4回注射した(図7A)。
【0105】
結腸癌(C38)においてB57−FcとPD−1抗体の併用が腫瘍を有意に減少させることをデータにより実証した(図7B)。併用療法B57−Fc+PD−1は、アイソタイプ対照抗体に対し、腫瘍体積を著しく減少させた(333mm対2120mm、それぞれp<0.01)。さらに、併用療法B57−Fc+PD−1は、PD−1単独療法に対し、有意な腫瘍サイズの減少を示した(333mm対1423mm、それぞれp<0.01)(図7B)。B57−Fc単独療法又はPD−1単独療法は、実験終了時のアイソタイプ対照との差異を示さなかったが、24日目に、PD−1対アイソタイプ(151mm対652mm、p<0.01)と同様に、B57−Fc処置マウスはアイソタイプと有意に異なり(384mm対652mm、p<0.05)(図7B)、これはB57−Fc単独療法も結腸癌マウスの腫瘍進行において免疫調節効果も有することを示す。
【0106】
膵臓(Pan02)及びメラノーマ(B16F10)マウスモデルについては、確立された手順に従って、同系マウスの右脇腹にそれぞれ1×10の細胞を注射した。腫瘍が約80mm(細胞注入後1〜2週間)に達すると、マウスを腫瘍体積に従って統計的に区分した(図8A、14A)
【0107】
膵臓(Pan02)においてB57−Fc単独療法及びPD−1抗体との併用が腫瘍を有意に低減し得ることをデータにより実証した(図8B、9B)。併用療法B57−Fc+PD−1はアイソタイプ対照抗体に対し、腫瘍容積の著しい有意な減少を示した(216mm対799mm、それぞれp<0.0001)(図8B)。さらに、併用療法B57−Fc+PD−1はPD−1単独療法に対しても有意な腫瘍サイズの減少を示した(216mm対445mm、それぞれp<0.01)(図8B)。B57−Fc単独療法は、アイソタイプと比較して有意に異なっていた(545mm対799mm、それぞれp<0.05)。PD−1単独療法は、アイソタイプと比較して有意に異なっていた(445mm対799mm、それぞれp<0.0001)(図8B)。
【0108】
膵臓(Pan02)において、PD−L1抗体と併用のB57−Fc研究は、腫瘍を有意に減少させた(図9A〜B)。併用B57−Fc+PD−L1はアイソタイプに対し、有意な腫瘍サイズの減少を示した(それぞれ397mm対799mm、p<0.0001)(図9A)。PD−L1単独療法は、アイソタイプと比較して有意に異なっていた(531mm対799mm、それぞれp<0.01)(図9A)。
【0109】
膵臓(Pan02)マウスの腫瘍免疫組織は、B57−Fc療法が腫瘍浸潤白血球の多様な集団に及ぼす影響を示した(図10〜13)。B57−Fc単独療法は、対照アイソタイプと比較し、NK細胞の浸潤を増加させ(p<0.05)(図10A)、腫瘍中のM1型マクロファージの存在が助けとなりマクロファージM1/M2細胞比を有意に改良した(p<0.05)(図11B)。PD−1単独療法と比較して、PD−1とのB57−Fc併用療法は、腫瘍におけるMDSC細胞の浸潤を有意に減少させ(p<0.05)(図10C)、マクロファージの浸潤を減少させ(p<0.05)(図11A)、アイソタイプ及びPD−1単独療法と比較した場合にマクロファージM1/M2比を有意に改良した(p<0.001)(図11B)。PD−L1とB57−Fc併用療法(図12〜13)は、アイソタイプ(p<0.01)及びPD−L1(p<0.05)と比較してマクロファージM1/M2細胞比を有意に改良した(図13E)。
【0110】
メラノーマ(B16F10)において、4−1BBアゴニスト抗体とのB57−Fc併用が腫瘍を有意に減少させることをデータにより実証した(図14〜15)。併用療法B57−Fc+4−1BBはアイソタイプ対照抗体に対し腫瘍体積の減少において顕著な差を示した(756mm対1424mm、それぞれp<0.0001)(図14B)。さらに、併用療法B57−Fc+4−1BBは4−1BB単独療法に対しても、有意な腫瘍サイズの減少を示した(756mm対1199mm、それぞれp<0.01)(図14B)。4−1BB単独療法は、アイソタイプと比較して有意に異ならなかった(1199mm対1424mm)。PD−1単独及び併用療法は、群間で有意性を示さなかった(図15A)。しかしながら、三剤併用治療(B57−Fc+4−1BB+PD−1)はアイソタイプと比較して有意差が高かったが(p<0.0001)、併用療法B57−Fc+4−1BBよりも優れてはいなかった(図15A〜B)。
【0111】
メラノーマ(B16F10)処置動物の腫瘍免疫組織は、B57−Fc治療の腫瘍浸潤白血球の多様な集団による影響を実証した(図16〜17)。B57−Fc単独療法は、アイソタイプと比較した場合、腫瘍内部のMDSC細胞の存在を有意に減少させた(p<0.05)(図16C)。4−1BB抗体を用いたB57−Fc併用療法は、アイソタイプ及び4−1BB単独療法と比較して、CD8T細胞/Tregの比(p<0.05)で測定したとおりCD8T細胞対Treg細胞の存在を有意に改良し(図16B)、MDSCの存在を有意に減少させ(p<0.05)(図16C)、マクロファージM1/M2細胞比を有意に改良した(p<0.05)(図17B)。4−1BB及びPD−1抗体を用いたB57−Fc三剤併用療法は、NK細胞の腫瘍への浸潤を有意に誘導し(p<0.05)(図16A)、アイソタイプと比較してCD8T細胞/Treg比を著しく改良し(158%対23%、それぞれp<0.0001)、そして他のすべての群とも比較し改良した(図16B)。さらに、腫瘍内のMDSC細胞の存在を有意に減少させ(図16C)、他のすべての群と比較してマクロファージM1/M2細胞比を有意に改良した(図17B)。
【0112】
結論
結腸、膵臓及びメラノーマの前臨床同系マウスモデルを用いて、癌と戦うためのB57−Fc分子を使用する原理証明が実証された。本データは、PD−1、PD−L1又は4−1BB抗体のようなチェックポイント阻害剤及び/又はチェックポイントアゴニスト剤のセットとの併用療法及び/又は単独療法のいずれかとしてのB57−Fcの治療的可能性を実証する。
【0113】
B57−Fcの作用様式もまた、インビボにおいて白血球の腫瘍浸潤を立証することにより、膵臓及びメラノーママウスモデルを評価した。B57−Fc治療は、マクロファージM1/M2細胞比の増加、MDSCの浸潤の減少、CD8T細胞/Treg比の浸潤率の増加、及びNK細胞の浸潤の増加により測定されるとおり、マウスの腫瘍への多様な白血球の集団の浸潤を調節することができる。全体的に、B57−Fcの単独又はアンタゴニスト/アゴニスト抗体を用いた併用アプローチの作用様式は、癌の治療に関連することは疑いがなく、かつ癌免疫療法における現在の臨床的必要性と相関する。
【0114】
B57−Fcは免疫調節薬の新規クラスとして出現する。インビトロ及びインビボのデータは、B57−Fc分子が抗腫瘍免疫の活性化のためのスイッチオン機構として作用するメカニズムを示す。本発明者らは、理論に縛られることなく、骨髄細胞(マクロファージ、MDSC)、T細胞及びNK細胞に存在する多様な免疫調節受容体に結合するHLA−B57オープンコンフォーマーの相互作用が相乗的に関与し、免疫応答を悪化させると仮定する。
【0115】
材料及び方法
動物及び細胞株
インビボ実験は、マウス由来結腸癌C38細胞株、膵管腺癌Pan02マウス細胞株、及びメラノーマB16F10マウス細胞株を用いてC57Bl/6マウスで実施した。
【0116】
インビトロ実験細胞株:EG.7、マウスT細胞リンパ腫;Jurkat、ヒトT細胞リンパ腫;L428、ヒトホジキンリンパ腫;L540、ヒトホジキンリンパ腫;L1236、ヒトホジキンリンパ腫;Daudi、B細胞リンパ腫;IMR−5、神経芽細胞腫;SK−N−AS、神経芽細胞腫;M130428、メラノーマ。
【0117】
インビボ治療
C38腫瘍断片を6週目に同系雌性C57BL/6マウスの右側腹部に皮下注射した。Pan02及びB16F10細胞株を6週目に同系マウスの右側腹部に1×10で注射した。結腸(C38)、膵臓(Pan02)及びメラノーマ(B16F10)において腫瘍が結腸で±80mmに達したら、個々の腫瘍体積の大きさに従って動物を区分し、それらの間に統計的差異を示さない群に分けた。腫瘍直径はカリパスを用いて測定し、D/2×d式に従って体積を計算した。ここで、D及びdはそれぞれ腫瘍の最長及び最短直径(mm)である。
【0118】
結腸(C38)については、細胞の注入時点及び物質の注射の実験設計は次の通り確立した:ビヒクル(PBS200μL);アイソタイプ(10mg/kg)Q3D×7;B57−Fc(10mg/kg);PD−1 biwk×2(200μg);B57−Fc+PD−1(それぞれQ3D×7及びbiwk×2);B27−Fc+PD−1(それぞれQ3D×7及びbiwk×2)。膵臓(Pan02)については、物質の注射の実験設計は次の通りであった:アイソタイプ(5mg/Kg)biwk×3;B57−Fc(5mg/kg)biwk×3;PD−1 biwk×3(5mg/Kg);PD−L1 biwk×3(5mg/Kg);B57−Fc+PD−1(biwk×3)及びB57−Fc+PD−L1(biwk×3)。メラノーマ(B16F10)について、物質の注射の実験設計は次の通りであった:アイソタイプ(5mg/Kg)biwk3回注射;B57−Fc(5mg/Kg)biwk3回注射;4−1BB抗体(1mg/kg)biwk3回注射;PD−1 biwk3回注射(5mg/kg);B57−Fc+4−1BB biwk3回注射、B57−Fc+PD−1 biwk3回注射、PD−1+4−1BB biwk3回注射、及びB57−Fc+4−1BB+PD−1 biwk3回注射。
【0119】
フローサイトメトリーのための腫瘍試料の調製は、イーバイオサイエンス(eBioscience)により記載された手順を用いて行った(https://www.ebioscience.com/media/pdf/best−protocols/cell−preparation−for−flow−cytometry.pdf、2017年2月21日にアクセスした)。
【0120】
抗体
インビトロ試験のための白血球マウス集団を以下のもので染色した:CD3(PE−Cy7−イーバイオサイエンス(eBioscience))、CD4(FITC−BD バイオサイエンス(Bioscience))、FoxP3+(efluor450−イーバイオサイエンス)、CD45(PerCP−イーバイオサイエンス)、CD3(PE−イーバイオサイエンス)、NK1.1(BV421−イーバイオサイエンス)、CD11b(FITC−イーバイオサイエンス)、CD11c(FITC−イーバイオサイエンス)、CD25(PE−Cy7−バイオレジェンド(Biolegend))。
【0121】
HLA−B及び−C対立遺伝子のβ2m遊離重鎖及びB57に結合するHC10mAb(IgG2a)は、Hidde Ploegh博士(マサチューセッツ工科大学(MIT)、マサチューセッツ州)からの贈与であった。
【0122】
腫瘍サンプル由来のフローサイトメトリー抗体を以下のもので染色した:CD45(FITC;クローン30−F11;バイオレジェンド(Biolegend))、CD3(PerCP/Cy5.5;クローン17A2;バイオレジェンド)、CD4(BV510;クローンGK1.5;バイオレジェンド)、CD8(APC−H7;クローン53−6.7;BD)、FoxP3(PE;クローンFJK−16S;イーバイオサイエンス)、CD11b(BV650;クローンM1/70;バイオレジェンド)、F4/80(PE/Cy7;クローンBM8;バイオレジェンド)、Gr−1(APC−R700;クローンRB6−8C5;BD)、NK1.1(BV605;クローンPK136;バイオレジェンド)、CD206(APC;クローンC068C2;バイオレジェンド)、CD86(BV421;クローンGL−1;バイオレジェンド)、L/D染色(BUV395;インビトロジェン(Invitrogen))。
【0123】
チェックポイント阻害剤抗体抗マウスPD−1クローンRMP1−14はBio×Cellから得た。チェックポイント阻害剤抗体抗マウスPD−L1クローン:10F.9G2をBio×Cellから得た。アゴニスト抗体抗マウス4−1BBクローン3H3はBio×Cellから得た。
【0124】
白血球のフローサイトメトリー
フローサイトメトリー分析はFACScantoII(BDバイオサイエンス(BD Bioscience))を用いて行い、データはFlowJoバージョン7.6.4を用いて分析した。
【0125】
Tregの生成
ネズミCD4T細胞におけるFoxP3の発現を誘導するために、C57BL/6脾細胞からの脾臓細胞を採取し、精製(マウスナイーブCD4T細胞単離キット−EasySep)したCD4Tナイーブ細胞を得た。次いで、細胞を、5μg/mL抗CD3mAb(イーバイオサイエンス)、可溶性2μg/mL抗CD28mAb(バイオレジェンド)、10μg/mLのTGF−β1(R&Dシステムズ)及び100IU/mLのIL−2(R&Dシステム)で被覆した96ウェルプレートにおいて、10細胞/200μL/ウェルで96時間培養した。
【0126】
B57−Fcの存在下でのiTreg変換
iTreg変換のための最適培養条件におけるマウスナイーブCD4T細胞を、B57−Fc、B57−β2m−Fc、B27−β2m−Fc、アイソタイプIgG4及びPBSの異なる用量濃度(μg/200μL)の存在下で72時間インキュベートした。iTreg変換をフローサイトメトリーにより測定した。
【0127】
抑制アッセイ
CD4又はCD8T−エフェクター細胞は、マウス又はヒト(マウスナイーブCD4T細胞単離キット−EasySep;ダイナビーズ(Dynabeads)(登録商標)FlowCompTMマウスCD8−ライフテクノロジーズ(Life Technologies);ダイナビーズ(登録商標)CD8ヒト−ライフテクノロジーズ)のいずれかから精製し、10μM細胞トレースバイオレット増殖染色(Molecular Probes)でラベル付けした。CD3(イーバイオサイエンス)(3μg/mL)及び可溶性CD28(イーバイオサイエンス)(1μg/mL)を被覆した96ウェルU底プレートにおいて、Tregs(2.5×10)細胞及びT−エフェクター細胞(2.5×10)を96時間インキュベートした。FACScantoIIを用いてT−エフェクター細胞の増殖を測定し、FlowJoバージョン7.6.4の増殖分析ソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0128】
増殖アッセイ
細胞を5×10細胞/ウェルの密度で円形96ウェルプレートに播種し、続いて異なる濃度(10、5、及び2μg/ウェル)の薬物を1日間添加した。XTT増殖アッセイをマニュアルの指示(細胞増殖キットII、ロシュ(Roche))に従って実施した。マイクロタイタプレートリーダーを用いて450nmでのウェルの吸光度の結果を得た。
【0129】
ELISAアッセイ
競合ELISAアッセイは、10μg/mLの選択された組換え白血球受容体(ヒトKIR3DL1、ヒトKIR3DL2、ヒトKIR3DL3、ヒトLILRB1、ヒトLILRB2、及びマウスPirb)で被覆したMaxisorp(ヌンク(Nunc)、スイス)96ウェルプレートを用いて行った。受容体を終夜4℃でインキュベートし、5%粉乳−PBSで2時間ブロックした。B57−Fc、B57−β2m−Fc、B27−Fc、B27−β2m−Fc、及びアイソタイプIgG4を2μg/mLで2時間室温にて添加した。ヒトFcに対するHRP結合抗体を検出器として使用した。
【0130】
B57−Fcの産生、精製及びリフォールディング
B57−β2m−Fcの組換え産生は、HLA−B57のα1、2及び3ドメインをヒトIgG4−Fcベクターに挿入し、ヒトβ2−ミクログロブリン(β2m)を別個のベクターに挿入することによって達成された。組換えB57−β2m−Fcの産生は、B57−Fcベクターとβ2mベクターとをチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞への同時トランスフェクションすることにより行った。B57−β2m−Fcの産生は、Evitria AGに外注した。
【0131】
B57−β2m−Fcの精製は、抗体精製のための従来の手順を用いて行った。B57−Fcの産生は、B57−β2m−Fc複合体からβ2mを除去するために変性工程を加えて行った。
【0132】
簡潔には、B57−β2m−Fcの捕捉ステップは、プロテインGカラム(アマシャム ファルマシア(Amersham Pharmacia))を介して上清(5mL/分)を流した後に行った。中間精製工程は、溶出緩衝液(100mMグリシン、pH2.0)を用いてプロテインG−カラムからB57−β2m−Fcを溶出し、8M尿素、100mMトリス−HCl pH8.0において画分を回収することにより実施した。第一の洗練工程は、AKTAシステム(GE ライフサイエンス)を有するスーパーデックス200プレップグレード又はセファクリルS−100HR(GE ライフサイエンス(GE Lifescience))を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、又は30KDa又は50KDaの細孔サイズ(ミリポア(Millipore))の膜を使用した透析によりB57−Fc単量体画分をβ2mから分離することであった。両方の手順から回収したB57−Fc単量体を、100倍体積のリフォールディング緩衝液(50mMトリス−HCl pH8.5、500mMのL−アルギニン、1mMのEDTA、0.15mMのNaCl、1%スクロース、0.01%のTween−20)中、8時間間隔で3回、B57−Fc単量体を振動させた後、希釈法によりリフォールディングした。SECによる第二の洗練工程では、さらなる不純物を除去し、B57−Fc分子の新たに回収された画分を希釈緩衝液(PBS、1%シスクロース及び0.01%Tween−20)に交換することを行った。B57−Fcの精製溶液を、0.2μm膜(ミリポア)を用いて濾過滅菌した。
【0133】
画分B57−β2m−Fc複合体及びB57−Fcを、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)及びHC10(HLA遊離重鎖に特異的)抗体を用いたウエスタンブロットによって分析した。β2mウエスタンブロットを、変性条件(10mM DTT)の有無にかかわらず実施した(データは示さず)。
【0134】
HLA−B57対立遺伝子の完全及び部分配列
N末端からC末端までの全長HLA−B57α鎖の機能的ドメインは、シグナルペプチド、α1、α2、α3、膜貫通ドメイン及び細胞質尾部である。
【0135】
図1
図2AB
図2CD
図3AB
図4ABC
図5ABCDEF
図6AB
図7ABC
図8AB
図9AB
図10ABC
図11AB
図12ABC
図13AB
図14AB
図15AB
図16ABC
図17AB
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]