特許第6980212号(P6980212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980212溶存ガスの送達および医療用流体ラインの脱ガスの方法ならびにシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980212
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】溶存ガスの送達および医療用流体ラインの脱ガスの方法ならびにシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/14 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   A61M5/14 500
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-551906(P2018-551906)
(86)(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公表番号】特表2019-500195(P2019-500195A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】US2016067947
(87)【国際公開番号】WO2017112736
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年12月17日
(31)【優先権主張番号】62/270,216
(32)【優先日】2015年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517233564
【氏名又は名称】ハイバーニア メディカル エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】518217947
【氏名又は名称】パイル−スペルマン,ジョン
(73)【特許権者】
【識別番号】518217958
【氏名又は名称】チョイ,ジェ,エイチ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パイル−スペルマン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ジェ,エイチ.
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−161617(JP,A)
【文献】 特表平10−510186(JP,A)
【文献】 特開2005−131078(JP,A)
【文献】 特開平05−317416(JP,A)
【文献】 特表2002−513648(JP,A)
【文献】 特開2011−157374(JP,A)
【文献】 米国特許第04493692(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを含む医療用液体を輸液するシステムであって、
ガス源と、
真空ポンプと、
前記ガス源および前記真空ポンプに連結された流体タンク、加熱および冷却システム、および、超音波処理器を含む、温度制御される容器と、
制御装置であって、
ヘムを含有しない液体が所定の温度に到達するまで前液体を加熱すること、および、前記加熱し液体を脱ガスしつつ、前記真空ポンプを作動させることにより、前記流体タンク中の前液体を脱ガスし、
液体が所定の温度に到達するまで前液体を冷却すること、前記冷却し液体の圧力を増加させつつ、第1の流体ラインを介して前記ガス源から前記流体タンクにガスを放出すること、および、前記ガスで前液体を飽和させるための時間で、増加した圧力で前記ガスに前液体をさらすことにより、前記流体タンク中の前記脱ガスされ液体を再ガス化し、
第2の流体ラインを介して前記流体タンクからカテーテルに前記再ガス化され液体を送達するように構成された制御装置と、を備える、システム。
【請求項2】
前記制御装置が、前記加熱および冷却システムが前記流体タンクを加熱することを可能にすること、ならびに、前記超音波処理器を作動させて、前記流体タンクを超音波処理することにより、前記流体タンク中の前液体を脱ガスするようさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記加熱および冷却システムが前記流体タンクを冷却することを可能にすること、ならびに、前記超音波処理器を作動させて、前記流体タンクを超音波処理することにより、前記流体タンク中の前記脱ガスされ液体を再ガス化するようさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ガスが、酸素、二酸化炭素および一酸化窒素からなる群から選択されるガスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
気泡、ガス濃度および前液体の温度を検出するためのセンサーをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の流体ラインおよび前記第2の流体ラインを、代謝可能であり、溶解可能でありかつ無毒性であるガスで洗い流す装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ガスが、二酸化炭素および酸素からなる群から選択されるガスを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御装置が、前液体の脱ガスの後に、前記第1の流体ラインおよび前記第2の流体ラインを前液体で洗い流すようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
プログラマブルプロセッサにより実行されるとき、ガスを含む医療用液体を輸液する方法の実行を引き起こすプログラムコードを含む、非一時的コンピューター可読媒体であって、
ヘムを含有しない液体が所定の温度に到達するまで前液体を加熱すること、および、前記加熱し液体を脱ガスしつつ、真空ポンプを作動することにより、流体タンク中の前液体を脱ガスするためのコンピュータープログラムコードであって、前記流体タンクは、ガス源および前記真空ポンプに連結されるとともに、加熱および冷却システムならびに超音波処理器を含む、温度制御される容器に備えられる、コンピュータープログラムコードと、
液体が所定の温度に到達するまで前液体を冷却すること、前記冷却し液体の圧力を増加させつつ、第1の流体ラインを介して前記ガス源から前記流体タンクにガスを放出すること、および、前記ガスで前液体を飽和させるための時間で、増加した圧力で前記ガスに前液体をさらすことにより、前記流体タンク中の前記脱ガスされ液体を再ガス化するためのコンピュータープログラムコードと、
第2の流体ラインを介して前記流体タンクからカテーテルに前記再ガス化され液体を送達するためのコンピュータープログラムコードと、を含む、非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項10】
前記加熱および冷却システムが前記流体タンクを加熱することを可能にすること、ならびに、前記超音波処理器を作動させて前記流体タンクを超音波処理することにより、前記流体タンク中の前液体を脱ガスするためのコンピュータープログラムコードをさらに含む、請求項9に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項11】
前記加熱および冷却システムが前記流体タンクを冷却することを可能にすること、ならびに、前記超音波処理器を作動させて前記流体タンクを超音波処理することにより、前記流体タンク中の前記脱ガスされ液体を再ガス化するためのコンピュータープログラムコードをさらに含む、請求項9に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項12】
前記ガスが、酸素、二酸化炭素および一酸化窒素からなる群から選択されるガスを含む、請求項9に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項13】
気泡、ガス濃度および前液体の温度を検出するためのコンピュータープログラムコードをさらに含む、請求項9に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項14】
液体の脱ガスの後に、前記第1の流体ラインおよび前記第2の流体ラインを前液体で洗い流すためのコンピュータープログラムコードをさらに含む、請求項9に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項15】
前記制御装置は、前記脱ガスされ液体をモノ飽和流体へと再ガス化するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記脱ガスされ液体をモノ飽和流体へと再ガス化するためのコンピュータープログラムコードをさらに含む、請求項9に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項17】
液体は、食塩水を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
液体は、脱ガスおよび再ガス化され、その結果、前液体が前記ガス源からの単一の前記ガスで飽和される、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
液体は、40℃まで加熱され、少なくとも約0℃まで冷却され、前記送達され液体が、動脈血によって通常運搬される45%までの前記ガスを含有する、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[著作権表示]
本特許文書の開示の一部は、著作権保護の対象である資料を含む。著作権者は、それが、特許商標局特許ファイルまたは記録において記載される通り、特許文書または特許開示のいずれかによる複写に異議を唱えないが、それ以外の場合は、全ての著作権一切を有する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2015年12月21日に出願された、米国仮出願第62/270,216号 発明の名称「METHOD AND SYSTEMS FOR THE DELIVERY OF DISSOLVED GASES」の優先権を主張し、その開示内容全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
本出願は、規定量の、溶存医療用ガスを含有する液体を動脈系を介して直接的に送達するシステムおよび方法、ならびに、医療処置中、特に、身体への挿入に先立ち、ラインを流体で洗い流すとき、空気の不注意による注入の害を軽減するシステムおよび方法に関する。
【0004】
[関連分野の説明]
多くの臨床状態において、患者に治療目的でガスを投与することが望ましい。例えば、酸素は、患者の血液内の酸素の分圧を増大させる目的によるため、患者に送達されてもよい。ある種の状態において、酸素付加装置を利用して、酸素が患者の血流に直接投与されてもよい。酸素付加装置の例は、米国特許第3,934,982号および第4,440,723号において開示されるものを含む。酸素付加装置は、酸素を含有するガスを血液と合わせ、酸素化された血液を血管または血液源に戻す。酸素の投与は、患者の症状を緩和し、器官機能を保つのを助けるという点で利益をもたらし得るが、患者の器官または複数の器官の細胞の代謝状態は、正常または正常より上を保持し得る。
【0005】
空気の身体への、特に、動脈循環への不注意による注入は、非常に少量でさえ、深刻な合併症に通じ得る。挿入されようとしている医療用装置(例えば、ステント、コイル)から空気を取り除くこと、およびそれに続く動脈への流体注射のため使用される管類の所定の調製は、小さい気泡が管類の壁に付着し、そして、それを洗い流しながら管に定着させること、および気泡が管から洗い流されたことを確認しながら遠位末端を持ち上げることにより、取り除かれなければならないので、特に問題となる。複雑な、可視化できない装置および管類にとって、これは、さらにいっそう問題がある。
【0006】
低体温は、心臓および/または脳のような、器官の代謝要求を低減することが示されている。低体温はまた、細胞死または損傷の望ましくない拡大を予防することにより、患者の器官に対して保護効果をもたらし得る。心臓または全身の低体温を誘導する1つの方法は、血管に挿入され、その血管を介して流れる血液を冷却するために使用される熱交換カテーテルの使用を介したものである。
【0007】
既存の装置は、ガスを供給するという利益、および血流を介して低体温を誘導するという利益を兼ね備えていない。したがって、当該技術分野において、器官機能障害に罹患している患者において器官保存を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、規定の様式での溶存した臨床上有用な医療用ガスを含有する液体の送達のためのシステムおよびコンピュータープログラムコードを含む非一時的コンピューター可読媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態は、ガスを含む医療用液体を輸液するためのシステムを含む。システムは、ガス源と、真空ポンプと、ガス源および真空ポンプに連結した流体タンク、加熱および冷却システム、および、超音波処理器を含む温度制御性容器と、真空ポンプを作動させることにより流体タンク中の液体を脱ガスし、第1の流体ラインを介してガス源から流体タンクにガスを放出することにより流体タンク中の液体を再ガス化し、第2の流体ラインを介して流体タンクからカテーテルに再ガス化された液体を送達するよう構成される制御装置とを備える。
【0010】
制御装置は、加熱および冷却システムが流体タンクを加熱することを可能にすること、ならびに、超音波処理器を作動させて流体タンクを超音波処理することにより、流体タンク中の液体を脱ガスするようさらに構成されていてもよい。制御装置はまた、加熱および冷却システムが流体タンクを冷却することを可能にすること、ならびに、超音波処理器を作動させて流体タンクを超音波処理することにより、流体タンク中の液体を再ガス化するようさらに構成されていてもよい。ガスは、酸素、二酸化炭素、および一酸化窒素からなる群から選択されるガスを含んでもよい。システムは、気泡、ガス濃度、および液体の温度を検出するためのセンサーをさらに含んでもよい。
【0011】
1つの実施形態において、システムは、第1の流体ラインおよび第2の流体ラインを安全なガスで洗い流す装置をさらに備える。安全なガスは、迅速に代謝される、高溶解性且つ無毒性であるガスであり得る。安全なガスは、二酸化炭素および酸素からなる群から選択されるガスを含んでもよい。システムのさらなる実施形態は、液体を脱ガスした後に、第1の流体ラインおよび第2の流体ラインを液体で洗い流すようさらに構成される制御装置を含んでもよい。
【0012】
非一時的コンピューター可読媒体は、真空ポンプを作動させることにより、ガス源および真空ポンプに連結した流体タンク中の液体を脱ガスするためのコンピュータープログラムコード、加熱および冷却システムならびに超音波処理器を含む温度制御性容器において含まれる。非一時的コンピューター可読媒体は、第1の流体ラインを介してガス源から流体タンクにガスを放出することにより、流体タンク中の液体を再ガス化するためのコンピュータープログラムコード、および、第2の流体ラインを介して流体タンクからカテーテルに再ガス化された液体を送達するためのコンピュータープログラムコードをさらに含む。
【0013】
非一時的コンピューター可読媒体は、加熱および冷却システムが流体タンクを加熱することを可能にすること、ならびに、超音波処理器を作動させて流体タンクを超音波処理することにより、流体タンク中の液体を脱ガスするためのコンピュータープログラムコードをさらに含んでもよい。別の実施形態において、非一時的コンピューター可読媒体は、加熱および冷却システムが流体タンクを冷却することを可能にすること、ならびに、超音波処理器を作動させて流体タンクを超音波処理することにより、流体タンク中の液体を再ガス化するためのコンピュータープログラムコードをさらに含んでもよい。ガスは、酸素、二酸化炭素、および一酸化窒素からなる群から選択されるガスを含んでもよい。なお、別の実施形態によると、非一時的コンピューター可読媒体は、気泡、ガス濃度および液体の温度を検出するためのコンピュータープログラムコードをさらに含んでもよい。非一時的コンピューター可読媒体はまた、液体を脱ガスした後に、第1の流体ラインおよび第2の流体ラインを液体で洗い流すためのコンピュータープログラムコードをさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、典型的であり、制限するものではないことを意味する添付の図面の図において説明され、そこで、同様の参照は、同様のまたは対応する部分を指すことを意図する。
【0015】
図1】本明細書において開示されるシステムの少なくとも1つの実施形態によるシステム略図を示す。
図2】真水中の酸素溶解度のチャートを示す。
図3】本明細書において開示される方法の少なくとも1つの実施形態による方法のフロー略図を示す。
図4】酸素含有量に対する酸素分圧のチャートを示す。
図5】本明細書において開示されるシステムの少なくとも1つの実施形態による別のシステム略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
主題は、ここで、本明細書の一部をなし、説明の目的で、本発明が実施され得る典型的な実施形態を示す、添付の図面を参照して本明細書において以下でより完全に記載されるだろう。しかしながら、主題は、様々な異なる形態で具体化され得、故に、カバーされるか、または請求される主題は、本明細書において説明される任意の例示実施形態に制限されないとみなされることを意図し、例示実施形態は、単に実例であるよう提供される。他の実施形態が利用され得ること、および構造上の変更が、本発明の範囲を逸脱することなくなされ得ることは理解されるべきである。同様に、請求されるか、またはカバーされる主題について合理的な広い範囲が意図される。数ある中でも、例えば、主題は、方法、装置、構成要素、またはシステムとして具体化されてもよい。したがって、実施形態は、例えば、ハードウェア、ソフトウエア、ファームウェア、またはその任意の組み合わせ(ソフトウエア自体以外)の形態をとってもよい。それ故、以下の詳細な説明は、制限する意味でとられることを意図しない。
【0017】
明細書および請求項を通じて、用語は、明確に述べられた意味を超え、文脈において示唆されるか、または暗示される微妙な意味を有してもよい。同様に、本明細書において使用される語句「1つの実施形態において」は、必ずしも同じ実施形態を指すわけではなく、本明細書において使用される語句「別の実施形態において」は、必ずしも異なる実施形態を指すわけではない。例えば、請求される主題は、典型的な実施形態の組み合わせを全体または一部で含むことが意図される。
【0018】
本出願は、組織の範囲を灌流する動脈中のカテーテルを介してヒト組織に、溶存状態かつ公知の濃度の医療用ガスを送達することができるという医療上の要求に取り組む。酸素(O)、二酸化炭素(CO)、および、一酸化窒素(NO)のような非常に短い半減期のバイオメッセンジャー分子ガスなどの鍵となる代謝上活性なガスが、かかる手段により送達され得る。1つの実施形態は、濃縮した量の低粘度の流体中のOを、低い血流状態(心筋梗塞、脳虚血など)を有する虚血組織において高い分圧にて送達することによる、動脈内(IA)療法中の虚血組織への顕著に増大するO送達を含む。
【0019】
したがって、流体送達装置は、患者の動脈に送達され得る流体中に溶解したOの量を顕著に増大させるために提供され得る。装置は、注射用流体/液体保存液をまず脱ガスして、それから、その、例えば、窒素(N)およびOガスを取り除き得る。これは、好ましくは、撹拌(例えば、超音波処理など)ありもしくは撹拌なしでの、加熱、真空(例えば、ヘンリーの法則)または2つの組み合わせで行われる。次に、流体/液体は、例えば、100%酸素で再ガス化され得る。この流体とガスの混合物は、その温度および圧力における流体の潜在的ガス溶解度の全てが単一のガスによって取り込まれるので、モノ飽和流体とみなすことができる。さらなるOを、増大した圧力および冷却で溶解させることができる。プロセスを繰り返して、液体に含有されるOの総量を増すことが可能である。血液中で、通常ヘム含有しない流体は、たった3%の酸素を保有し、それは、生活を支えるのに十分ではない。しかしながら、本出願において記載される方法を使用してヘムを含有しない流体/液体により保有されるOの量を顕著に増大させて、組織バイアビリティーを支えるのに有意義に貢献することができる。加えて、O要求を低下させる低体温処置、および、血液粘度を低下させるさらなる流体の効果と併せて使用されるこれらの方法はまた、送達されるOを増大する。これらの要因が一致協力して働いて、臨床上有用な量での3%のベースラインから、組織に必要なOの50%〜100%超までで注入され得る水(HO)または他の流体/液体のO含有量を増大させる。
【0020】
代わりの実施形態において、流体送達装置は、患者の動脈に送達され得る流体中に溶解するNOの量を顕著に増大させるために提供され得る。
【0021】
本発明の別の実施形態において、注入するのに安全であり、例えば、80%窒素である大気と置き換わる迅速に代謝されるOである酸素(O)で、流体送達装置を効率的に洗い流すための洗浄装置である。洗浄装置は、流体の輸液に先立ち、患者に繋げられようとしている遠位ラインをOまたはCOで洗い流すことができる。洗浄装置はまた、流体送達装置と分けて使用することができる。かかる構成において、洗浄装置は、コネクタ、ガスミクロポアフィルター、およびラインにおける全ての先の室内の空気と関連するNのOでの安全、完全かつ効率的な置換を確実にする弁を含んでもよい。次に、ラインは、患者に挿入する前に、流体ラインに連結され得る。
【0022】
本発明のいっそう別の実施形態において、注入するのに安全であり、且つ、例えば80%窒素である大気と置き換わる高溶解性COであるCOで、流体送達装置を効率的に洗い流すための洗浄装置である。洗浄装置は、コネクタ、ガスミクロポアフィルター、および全てのNガスのOまたはCOガスでの安全、完全かつ効率的な置換を確実にする弁を含む。開示される実施形態の1つまたは複数は、水ラインから空気を取り除くことのような非医療上の使用にも適用可能である。
【0023】
図1を参照すると、一実施形態において、システムは、溶液の種類、ガスの種類、温度および圧力、ならびに、可能な限りの組織血流特徴および要求を考慮しながら、医療用溶液(流体/液体)を脱ガスし、溶液を標的ガスで再ガス化することができる装置を備える。次に、このガス飽和溶液は、医療上の処置のため動脈に植え付けられ得る。流体の脱ガス化は、A)熱撹拌、B)吸引器を使用した真空脱ガス、C)ガスと液体の分離膜を使用した真空脱ガス、D)ヘリウム浄化による脱ガス、および、E)凍結とポンプと解凍の繰り返しを含む様々な方法で行うことができる。これらの方法のうち全てが、使用されるガスおよび溶液に依存して、具体的な臨床症状において使用され得るし、使用されてもよい。冷却および加圧なしまたはありでの脱ガスならびに再ガス化の使用は、図2において示される通り、溶存ガスの量を増大させるために使用され得る。
【0024】
図1において説明される実施形態において、調整器(レギュレータ)102を有する医療用ガスシリンダー、真空ポンプ104、ソレノイド106を備えた3方向弁、ソレノイド108A、108B、108Cへの制御装置連結部、熱絶縁容器110、ガス/生理学的な層を備えた折り畳み可能な流体タンク112、3方向弁114(流体タンク112からの連結部、ならびにガス/真空および流体経路をソレノイドと共に含む)、流体インラインセンサー116(気泡検出器、ガス測定、および温度)であって、例えば、一方が114に隣接する(流体タンク112に近接する)ラインと結びつき、且つ、第2の部分が流体タンク112にとって遠位である124に隣接するライン(カテーテルへの流体経路)と結びついた流体インラインセンサー116、制御装置122(電力供給源を含む)、制御装置122に接続している超音波処理器118、温度センサーおよびソレノイドから制御装置122への連結部を介したコンピューターへの連結部を含む加熱器/冷却器120、ソレノイドを備えた3方向弁126、ならびに、カテーテルシステムへのコネクタを含み得るカテーテル124への流体経路124の組み合わせを備える、自動(プログラム化された制御装置またはコンピューター)脱ガス装置および医療用ガス再ガス化装置が提供される。
【0025】
制御装置122は、流体タンク112中の医療用溶液の脱ガス、再ガス化、加熱/冷却、および超音波処置を制御するようプログラム化することができるマイクロコントローラまたはプロセッサであり得る。制御装置122は、真空ポンプ104(脱ガスする)および調整器102を備えた医療用ガスシリンダー(再ガス化する)から流体タンク112への経路を確立するように、ソレノイド108Aおよび108Bへの制御装置連結部を介して弁106および114と関連するソレノイドを制御するよう構成可能である。医療用ガスシリンダーの調整器102は、流体タンク112において可能なガスの圧力の量を制限し得る。流体タンク112は、加熱/冷却チャンバーを含み、流体経路(調整器102を備えた医療用ガスシリンダーからカテーテルまで)および超音波処理器118に連結した熱絶縁容器110内に含まれる。流体インラインセンサー116からの読み取りに基づき、超音波処理器118および加熱器/冷却器120を、調整器102を備えた医療用ガスシリンダーと併せて作動させて、流体タンク112中の医療用溶液に所望のガス濃度までガスを供給し得る。医療用溶液が所望のガス濃度に達すると、制御装置122は、弁126を連結部108Cと共に制御して、ガス飽和溶液をカテーテル124への流体経路に送達し得る。
【0026】
図3は、カテーテルラインへの送達のための医療用液体の医療用ガスでの濃縮を制御するためのマイクロコントローラにより行われる方法のフローチャートを提示する。マイクロコントローラは、流体タンクとの連結部の代表的な信号を受信し得る(工程202)。流体タンクは、無菌の食塩水のような医療用溶液または液体を含有し得る。
【0027】
次に、マイクロコントローラは、自己診断を開始し得る(工程204)。自己診断は、流体タンクへのもしくは流体タンクからの流体経路弁のソレノイドとの、および流体タンクの流体経路に連結したセンサーとの通信または電子シグナル伝達を確立することを含み得る。脱ガス手段が開始される(工程206)。脱ガス手段は、ガスを取り除くこと、医療用液体を温めること、および、超音波処理することを含み得る。マイクロコントローラは、流体タンクと真空ポンプの間の経路を開くことができる。次に、マイクロコントローラは、真空ポンプが、流体タンクから空気を取り除くことを可能にし得る。制御装置は、それが、一連の流体または医療用液体が気泡センサーを介して気泡がないことを検出するとき、真空を止め得る。加熱器および超音波処理装置は、医療用液体が、予め決められた時間(例えば、90分またはそれ以上)で、50℃のような所定の温度に達するまで、制御装置により作動され得る。制御装置は、気泡センサーが一連の流体を同定するまで、流体タンクと真空ポンプの間の経路を再度開けて、さらなる空気を流体タンクから取り除き得る。
【0028】
医療用液体は、医療用ガスで再ガス化される(工程208)。マイクロコントローラは、流体タンクと医療用ガス源の間の経路を開けて、医療用ガスを流体タンクに、調整器により決定した圧力(例えば、1.25atm)まで膨張させるか、ポンプで注入するか、または放出し得る。冷却器および超音波処理装置は、医療用液体の温度が、予め決められた時間(例えば、3時間またはそれ以上)で、−2℃のような所定の温度であるまで、マイクロコントローラにより作動され得る。マイクロコントローラは、気泡検出器が一連の流体を同定するまで、流体タンクと真空ポンプの間の経路を再度開けて、いずれかの溶解していないさらなるガスを流体タンクから取り除き得る。
【0029】
インラインセンサーを、流体タンクに連結して、医療用液体中の医療用ガス濃度を測定し得る。マイクロコントローラは、医療用液体中の医療用ガスの標的濃度が達成されたかどうかを決定する(工程210)。標的濃度が達成されないなら、インラインセンサーが標的濃度のガス濃度を示すまで、工程206および208が繰り返され得る。
【0030】
マイクロコントローラが、標的濃度が達成されたことを決定するとき、マイクロコントローラは、経路を繋げて、ガス飽和医療用液体が流体タンクからカテーテルまで流れることを可能にする(工程212)。マイクロコントローラは、医療用液体を予め決定された冷却温度にて継続して冷却するか、または維持し得る。液体がカテーテルに移動することを可能にすることに先立ち、マイクロコントローラは、流体タンクに連結した流体経路に連結したセンサーからのデータ読み取りを回収して、医療用液体中に空気の気泡が存在しないこと、および液体の温度が予め決められた冷却温度にあることを確実にしてもよい(工程214)。流体が用意されると、調製された医療用液体を使用した輸液を開始し得る。
【0031】
本明細書において開示されるシステムは、参照により本明細書に取り込まれる、米国特許第8,343,097号において開示される、Hyberniaのカテーテル冷却システムと組み合わせて使用されるか、または組み合わされてもよい。それはまた、所定のカテーテルと共に、または幾つかの異なる方法で血流を測定するカテーテルと共に使用することができる。加えて、それは、動脈循環において使用されることが当初想定されるが、それが、静脈循環において使用され得る(例えば、肺、右心への、もしくは逆行性静脈灌流(冠静脈洞逆行性灌流)中のOまたは薬物送達)ことは理解される。
【0032】
IA注射のため食塩水に酸素を溶解する好ましい方法は、本明細書で開示される。注射された生理的溶液により運搬されるOの関与は、大抵の流体の極めて低いO含有量のため、臨床上重要ではないとみなされ、もしあっても、それは、ヘモグロビンの非常に効率的なO運搬能(体積対体積で、ヘモグロビンは、残りの血液含有物より33倍多くOを運搬する)を弱めるので、有害であるとみなされてきた。開始時の、空気中の21%Oは、海面でのO159mmHgと等しい。しかしながら、それが肺に達し、血液と平衡状態になるときまでに、HO気化ガスおよびCOの分圧は、酸素の血液分圧(PaO)が95〜100mmHgしかないように、O含有量の一部と置き換わる。このうち、Oの圧倒的多数、例えば、97%が、3%(この3%は、考察をしやすくするため以下の考察において言及され得、O0.6cc/血液100ccを表す)のみを運搬する血中の「水」と共に、血中のヘモグロビンにより運搬される。開示される考察のため、ヘモグロビン以外の全ての物質が「水」として言及され得、赤血球の70%でさえ水である。開示される計算の目的で、他ヘムを含有しない血液成分のO溶解度は、HOのものと等しいとみなされてもよい。HO中のOの低い溶解度は、Oの低い分圧と相まって、高圧処置中のような高分圧下を除き、通常の食塩水を酸素の不十分な運搬体にする。加えて、非常に効率的なヘモグロビンO運搬体の任意の希釈は、同等に効率的な何かにより、および通常の条件下で埋め合わされなければならないだろうし、これは難問ではない。それ故、HO、または他の生理学的溶液において運搬されるOの関与は、稀な条件下を除き、臨床上重要ではないとみなされる。組織虚血を有する患者は、しばしば、挿管を介して100%Oで処置されるが、それを肺に送達する有益な効果は、高い分圧のHO、およびCO、肺胞での不十分な移動、循環系による不十分な送達、高いO濃度に対する肺胞の局所毒性を含む、多数の実際の要因により、大いに鈍らされる。しかしながら、これらの問題点は、本明細書において開示されるシステムにより軽減される。
【0033】
図4は、O含有量(ml/100cc)に対するO分圧(mmHG)を説明し、ここで、
・A−O20ml/血液100cc=O圧100mmHgでの正常な動脈O含有量
・B−O15ml/血液100cc=O圧60mmHgでの正常な静脈O含有量
・C−O5ml/血液100cc=O圧30mmHgでの静脈O含有量の最低点
・D−O0.33ml/血漿(血液)100cc=O100mmHgでのO含有量
・E−O5ml/通常の食塩水100cc=O圧750mmHgかつ0℃でのO含有量。
【0034】
有用量の溶存Oガス:A)約100%O下での通常の食塩水(NS)の脱ガスおよび再ガス化は、およそ750mmHgまでのO圧上昇、または約3%から約22.5%までの約7.5×の効率的O上昇をもたらすだろう、B)再ガス化中、約38℃から約0℃まで温度を下げることは、およそ2つの要因によりHO中のOの溶解度を増大し、これにより、血液により通常運搬されるO含有量の約22.5%から約45%まで溶存Oを増大する、C)溶存ガスの量は、それが置かれたところの圧力に直接比例する(理想気体の法則)。上で参照されたHyberniaのカテーテルシステムにおいて使用される高圧流体回路は、大気圧の約3〜15倍で実行する。
【0035】
表Aは、全ての他の溶存ガスをOで置き換え、冷却し、これにより、O0.34cc/流体100ccからO5.1cc/流体100までO運搬を増大させるときの、液体に対する効果を提示する。低下した温度または増大する圧力のいずれかにより溶解させたガスは、圧力が低減されるとき、溶液から直ぐに現れ得る(気泡)。
【0036】
【表A】
【0037】
十分なOの送達:
通常の休止状態下で、ヒト組織は、送達されるOの約21〜32%の範囲内で血液により送達されるOの約1/3未満を使用することは注意されるべきである。これは、利用可能な動脈血中の血液/分O約19〜20cc/血液100cc/分から、組織により使用されるO約4〜6cc/血液100cc/分と解釈する。短期組織バイアビリティーは、有意に少ない、このおよそ1/2、通常送達されるOの約10〜15%、またはO約2〜3ml/組織100cc/分を要求する。血液は、動脈においてO19〜20cc/血液100ccを通常運搬する。組織は、O4〜6ccを抽出し、静脈血中にO16〜13ccを残す。O送達は、運搬される血液の量に基づき、血流速度と、組織により抽出される酸素を掛けたものである。
【0038】
上の計算および図4におけるグラフから見ることができる通り、この量は、開示される装置および方法の十分範囲内である。そしてより重要なことに、限界状況において、O送達のわずかな増加でさえも組織温存であり得る。ヘモグロビンは、Oの高い運搬能を有するが、それは、これをコストをかけて行う。Oは、ヘモグロビンに強固に保持され、多くが、非常に低いO圧においてでさえ利用可能でない。加えて、多いヘモグロビンO含有量は、高い分圧と関連せず、Oの組織、特に、毛細血管床の末端にある虚血組織への拡散をもたらすことができない。
【0039】
血液の代わりに飽和した通常の食塩水で効率的なO送達を増大する他の有益な結果:
血管系における閉塞により引き起こされる、本出願のシステムで処置されることが想定される疾患において、この閉塞の遠位の血流は、組織灌流圧の通常の降下を有する側副に依存性であり、血管拡張の局所代償性機序および増大した酸素抽出にもかかわらず、効率的な酸素送達は不十分である。有用なOは、血液のO含有量によってばかりでなく、血液の組織への送達の速度によっても決定される。注入される流体はまた、全血を希釈し、所定の圧力での流れを増大するであろう粘度を下げ得る。これは、灌流圧が低く、流れが流体の有効粘度と直接関連する虚血組織において特に当てはまる。全血は、通常の食塩水のものの約8倍である粘度を有する。血液の見かけ上より低い粘度は、大部分、直径300ミクロンより小さい血管においてより小さいヘマトクリット値を有することによる。連続性の法則のこの明らかな隙は、循環を通じてほぼ33%速く循環する血漿を有することにより、行われる(ファーレウス効果)。したがって、この飽和したOの通常食塩水に溶解させた任意のOは、それが希釈する全血よりもずっと高い速度で送達され得る。虚血組織において、局所灌流圧は低く、血管は最大限拡張され、流体の粘度は、主要な速度制限要因である。この装置および方法は、粘度を修正し、これにより、循環流量を好ましい方向に修正する。
【0040】
Hyberniaのシステムと併せたこの方法および装置の使用:
開示される装置は、好ましい実施形態において、Hyberniaのカテーテル冷却システムの一部として使用されることが想定される。これらの例において、組織の温度は、約5〜7℃、低下してもよい。低減した組織代謝率で、Oの要求は、ベースラインから約8〜14%/℃または少なくとも約40%低下する。Hyberniaのカテーテルシステムは、最適かつ安全なガス含有量および流速を決定する際に有用な、標的組織温度、代謝、ならびに血流と関連する情報を与える。
【0041】
前兆となる気泡の回避:
流体が、ただ計750mmHg(すなわち、患者が置かれる局所気圧)まで、37.8℃(すなわち、患者中核体温)にて飽和されるなら、気泡の発生が遅延され、装置および方法が、通常のカテーテルにおいてこのやり方で安全に使用され得る。Nの浪費は、最小である可能性が高い。図4において見られる通り、送達され得るOの量は制限されるが、臨床上重要な、この適応において提案される、カテーテル中のO飽和流体をより高い温度(0℃から33℃対37℃)である血流中の流体に戻すことは、脱飽和を生じ、過剰Oを気泡に生じさせ得る。加えて、流体が大気圧より高い圧力下で再ガス化されるなら、過剰のOが存在し得る。これを軽減する要因に対処することができる。
【0042】
これらの要因は、以下を含む。1)O代謝は極めて活性であり、血流からまず奪われるOは、血漿中の溶存Oであり、ヘモグロビン上で運搬されるものではない。血流中の窒素の気泡が血管においてしぼむと、減圧症をほぼ無限に引き起こす。しかしながら、ここで論じられるものより5〜10倍高いO分圧での高圧処理後の前兆となるO塞栓は、減圧中に混合されたガス転移のような稀な実験条件下(非常に高圧からの不活性な混合されたガス転移減圧のような、例外的な実験条件下で報告されたケース)を除き知られていない。それは恐らく、Oの気泡が生じ、優先的に代謝されること、および、それらの低い粘度が、何らかの形で循環を遅延させないか、または妨害しないことである。2)開示されるシステムは、送達されるOを、代謝され得るものに制限するように構成されてもよい。この制限は、事前に設定され、組織O送達要求より下で維持することができる。加えて、これは、注入速度アルゴリズムの一部として、制御装置により計算され得る。3)O過飽和食塩水点滴は、全血と混合されてもよい。全血は、さらなるO運搬能を、a)溶存ガスのわずかなCOおよびHO気化ガス圧、b)未結合のヘモグロビン、ならびに、c)i.血漿および組織中のOの溶解度を増大する状態、およびii.より低い温度でのヘモグロビン解離曲線の左シフトの状態に対するより低い温度[30〜33℃]のさらなる効果の形態で有する(ホールデンの効果)。4)脱ガスはまた、ある場合では、OとN気泡両方の形成に通じ得るNを脱ガスすることなく、さらなるOを溶解させるとして重要である。N気泡は、毒性であり、危険である。5)O気泡が生じるべきであり、これらの気泡の分圧は、大気または750mmHgであり得、それらと組織の間で大規模な勾配を作り出し、ガスの組織への通り道を大いに増大し、気泡を迅速に消散させる。Oは、静脈血のOを奪われたヘモグロビンにより取り込まれるだろうから、減圧障害に共通する静脈還流気泡は、恐らく、開示される装置を使用していない。
【0043】
酸素毒性および腐食のような有害な意図されない結果の回避:
毒性は、O代謝中に、免疫細胞により作り出されるフリーラジカルまたは活性酸素種(ROS)に関連する複雑な現象である。装置は、ROSスカベンジャーと酵素の同時注入、およびROSにより除去されたNOのような鍵となる生体信号を可能にするよう操作可能である。加えて、過飽和O溶液は、特に、高圧および高い流速にて、金属ならびに幾つかのプラスチックに対して高度に腐食性であることができ、ポリイミドのような生体適合耐食材料を使用することを必要とし得ることは注意されるべきである。
【0044】
COは、酸素およびグルコース代謝の産物である。ヒトにおいて、血液のCO含有量は、40mmHgにておよそ2.7mmol/100mlである(血中の溶解度は、CO0.06ml/血液100ml/mmHgである)。総血液COの5%(0.135mmol/100ml)のみが物理的に溶解し、一方、大多数は、タンパク質-カルバミノ化合物と結合するか、または重炭酸塩の形態で輸送されるかのいずれかである。過剰のCOは、通常、肺において取り除かれ、ここで、COは、毛細血管から肺胞腔に拡散し、吐き出される。COは、血液の酸-塩基ホメオスタシスの調節に関与し、強力な血管拡張剤である(細胞外のプロトンにおいて増大し、局所pHにおいて低下させる)。脳自動調節が無傷であるとき、血液のCOレベルにおける増大は、脳血管の拡張を導き、これにより、脳組織の連続して十分な酸素化を維持するための脳血流の増大に通じる。脳血管または血管運動の反応性とも呼ばれる、この生理学的カップリングを臨床上利用して、CO負荷の下で、通常、経頭蓋ドップラーと併せて、脳血管の拡張させる天然の能力(またはその病理学的不足)が測定され得る。これにより、室内の空気は、より高い肺胞のCO分圧(PACO)に通じる5〜10%COで濃縮され、これが、COの毛細血管への反対向きの拡散をもたらし、これにより、動脈のCO分圧を、例えば、>40mmHgに増大する。PaCOにおけるこの増大は全身性であり、これが全身に関与することを意味する。
【0045】
本発明により、脳のような標的器官の動脈のCO含有量を選択的に操作することが可能になる。水中のガス、例えば、COの溶解度は、温度および圧力に依存する。以下の表は、1atm(760mmHg)にて温度0℃〜37℃における水中のCO溶解度を挙げる:(COのモル質量は44.01gである)。
【0046】
【表B】
【0047】
提示される値は、1atmにて注入液に溶解させたCOの理論的最大値を表す。動脈器官床に選択的に与えられるとき、これらの量を、ベースラインの動脈のCO含有量に加えて、標的器官においてPaCOを増大することができる。COについてより低い圧力にて、さらなるガス、例えば、酸素での調製は、注入液中の制御された、より少ない量のCOをもたらし得る(pO>>pCO)。実際、挙げられたCO量の分画は、器官血流を増大する所望の効果、例えば、動脈の血管拡張を達成するか、または血管運動反応性について試験することを必要とする。
【0048】
ここで開示されるシステムはまた、空気中のNを、あまり有害でない他のガスで置き換えることにより、医原性空気塞栓の問題を軽減し得る。医療手当のための動脈内注射中の空気の不注意による注入は、高度な訓練を受けた専門家が回避するために手技上警戒する重大な問題である。加えて、右心から左心へのシャントを有する患者において、不注意による静脈の空気は、動脈循環に入り、空気塞栓の損傷に通じ得る。ラインが流体で洗い流され、後の医療手当中に取り除かれ、動脈に注入されるとき、注射管類の壁上に初めに保持された小さな気泡が、特に問題である。これらの付着した空気の気泡は、少量のCOおよび水蒸気と共に、窒素およそ80%、酸素20%からなる。大抵の空気の塞栓は、サイズが小さく、直径0.05〜5mmの範囲にあるが、多数であり得る。血流に注入されたとき、O成分は迅速に代謝され、COおよび水蒸気成分は、それらの非常に高い溶解度のため、迅速に溶解する。主要な体積の気泡であるN成分は、吸着されるのが非常に遅く、医原性動脈内「湾曲(bends)」のケースとして本質的に作動する。
【0049】
図5は、OまたはCOのようなガス源が提供されるコネクタ310に連結したガス源管類(示されていない)を備える別の実施形態によるシステムを提示する。コネクタ310は、ミクロポアフィルター312および前方向のみの弁314を通過し得る。前方向のみの弁314は、T字弁316に繋げられ得る。T字弁は、シリンジ318に繋げられた近位アーム324を含む。シリンジ318は、洗い流されるべきラインに対応する体積を含むチャンバーを含み得る。T字弁316は、流体ライン(示されていない)への連結のためのコネクタ322に通じる第2の前方向のみの弁320に連結され得る。加えて、1方向の前方向弁は、流体ラインに組み込まれ得る。
【0050】
ガス源は、コネクタ310にある装置に繋げることができる。ガス源は、医療グレードのガスを供給し、Oについて、タンクまたは壁源のいずれか、およびCOについて、タンクからもたらすことができる。1つの実施形態によると、ガスは、低い圧力(例えば、1.2atm)で、2〜4L/分のような低い流速にて提供され得る。洗い流されるべき流体ラインは、コネクタ322のシステムに安全かつ都合よく結び付けることができる。開示されるシステムは、ガスにより置き換えられるべき流体ライン中の室内の空気を洗い流し得る。ガスが流れていることの確認は、シリンジ318の動きにより示され得る。洗い流されるべき流体ラインが、ガス源から幾分かの距離にある(すなわち、延長された流体ライン)なら、シリンジは、アスピレーションおよび注入を介して、繰り返し循環され得る。
【0051】
ガス20ccが、最長かつ最大の管が使用されるときでさえ因子6.8で、空気を選択されたガスで置き換え、一般に使用される洗浄ラインを洗い流すことができることは、以下の表Cから見ることができる。
【0052】
【表C】
【0053】
別の実施形態により、流体ラインは、図1の記載に関して記載されるシステムにより産生される脱ガスされた流体で洗い流され得る。脱ガス化された流体は、幾つかの故意でなく保持されたガスを吸収し、これにより、軽減することができる。
【0054】
図1ないし図5は、本発明の説明を可能にする概念図である。特に、他の実施形態が、記載されるかもしくは説明される要素の幾つかまたは全ての交換の目的で可能であるので、図および上の実施例は、本発明の範囲を単一の実施形態に制限することを意味しない。さらに、本発明のある種の要素を、公知の構成要素を使用して部分的または完全に実施することができる場合、本発明の理解に必要であるかかる公知の構成要素のその部分のみが記載され、かかる公知の構成要素の他の部分の詳細な説明は、本発明を曖昧にしないように除外される。本明細書において、唯一の構成要素を示す実施形態は、多数の同じ構成要素を含む他の実施形態に必ずしも制限されるべきではなく、本明細書において別段明白に述べられない限り、逆もまた同じである。さらに、出願人は、起因されるべき明細書または請求項における任意の用語について、そのようなものとして明白に説明されない限り、まれな意味または特別な意味を意図しない。さらに、本発明は、説明の目的で本明細書において言及される公知の構成要素の、現在および将来的な公知の均等物を包含する。
【0055】
本発明の実施形態の様々な態様は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウエア、またはその組み合わせに実装され得ることは理解されるべきである。かかる実施形態において、様々な構成要素および/または工程は、ハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウエアに実装されて、本発明の機能が実施されるだろう。すなわち、ハードウェアの同じ部品、ファームウェア、またはソフトウエアのモジュールは、説明されるブロック(構成要素もしくは工程)の1つまたは複数を実施することができた。ソフトウエア実装において、コンピューターソフトウエア(例えば、プログラムもしくは他の指示)、および/またはデータは、機械可読媒体上にコンピュータープログラム製品の一部として保存され、コンピューターシステムまたは他の装置もしくは機械に取り外し可能なストレージドライブ、ハードドライブ、または通信用インターフェースを介して読み込まれる。コンピュータープログラム(コンピューター制御論理またはコンピューター可読プログラムコードとも呼ばれる)は、主なおよび/または第2のメモリーに保存され、1つもしくは複数のプロセッサ(コントローラーなど)により実行されて、1つまたは複数のプロセッサが、本明細書において記載される本発明の機能を実施させる。この書類において、用語「機械可読媒体」、「コンピューター可読媒体」、「コンピュータープログラム媒体」、および「コンピューター使用可能媒体」は、ランダムアクセスメモリ(RAM);読み取り専用メモリー(ROM);取り外し可能な記憶装置(例えば、磁気または光ディスク、フラッシュメモリー素子など);ハードディスクなどのような媒体を一般的に指すように使用される。
【0056】
具体的な実施形態の前述の記載は、他者が、当業者の知識(本明細書において参照により引用および取り込まれる書類の内容を含む)を適用することにより、様々な出願について、かかる具外的な実施形態を、過度の実験なしに、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、容易に修飾し、ならびに/または適応させることができる。それ故、かかる適応および修飾は、本明細書において提示される教示およびガイダンスに基づき、開示される実施形態の均等物の意味ならびに範囲内であることが意図される。本明細書の専門用語または用語は、説明を目的としたものであって、制限を意図したものではなく、本明細書における用語または専門用語は、本明細書において提示される教示およびガイダンスに照らして、当業者の知識と組み合わせて、当業者により解釈されるべきであることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5