(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロック状態において、前記アンロックプラグが前記挿通孔内の前記プラグ設置位置に挿入されたときに、前記筒流路部の流体が前記プラグ流路部に向けて流出することで、前記係止突部が前記孔口ケーシングの内面より切り離すことを特徴とする請求項2に記載の連続掘削システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、孔口先端装置を使用し、孔口先端装置の本体と軸部とを回転により切り離す従来の連続掘削方法では、遠隔操作体を伴った3000mより浅い浅深度での設置作業に限定されていた。これは、3000m以上の大深度の場合には、水中カメラを併用しての作業となるため、ドリルストリングを回転させると水中カメラ用のケーブルがドリルパイプに巻き込むという問題があった。
【0006】
また、前述のような大深度の場合には、船上のドリルストリングの吊り点と海底面との距離が非常に大きくなってドリルストリングの総延長が長くなるため、ドリルストリングを船上で回転させた回数と海底面のリリースポイントとの回転数が合わないことが起こりやすく、コントロールが非常に困難となっていた。
つまり、実際には孔口先端装置上での回転数が5回程度であっても船上で20回近く回さないと回転しないことが多く、また回転トルクを継続してかけておく必要があってもどの程度トルクが孔口先端装置側に付与されているかが不明な場合が多いことから、回転により切り離す従来の機構は不向きであり、その点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ドリルストリングを回転させることなく孔口ケーシングと装着筒との着脱させることができ、深海であってもドリルストリングに近傍のケーブルが巻き込まれることを防止できる連続掘削システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る連続掘削システムは、海底地盤に掘削される掘削孔の孔口に設置される筒状の孔口ケーシングと、海上から吊り下ろされるドリルストリングに接続された筒状のツールステムと、前記ツールステムに外嵌され、かつ前記孔口ケーシングの内側に着脱可能に設けられた装着筒と、前記装着筒から径方向の外側に突出して前記孔口ケーシングの内面に係止する係止突部と、前記装着筒から径方向の内側に突出して前記ツールステムに係止する凸部と、前記ツールステムの挿通孔内における前記装着筒及び前記孔口ケーシングが装着されるプラグ設置位置に挿入されるロックプラグ及びアンロックプラグと、を備え、前記ロックプラグは、前記挿通孔内の前記プラグ設置位置に挿入され、前記挿通孔内に流体を流したときに、前記係止突部が突出して前記孔口ケーシングの内面に係止するとともに、前記凸部が突出して前記ツールステムに係止してロック状態とし、前記アンロックプラグは、前記ロックプラグと入れ替えて前記挿通孔内の前記プラグ設置位置に挿入され、前記挿通孔内に流体を流したときに、前記係止突部を前記孔口ケーシングから切り離すとともに、前記凸部を前記ツールステムから切り離し、前記ロック状態を解除することを特徴としている。
【0009】
本発明では、船上にて孔口ケーシングの所定位置にツールステムを備えた装着筒を配置した後、ロックプラグをツールステムの挿通孔内のプラグ設置位置に挿入し、例えば海水や掘削流体等の流体を流すことで、装着筒から径方向の外側に係止突部を突出させて孔口ケーシングの内側に係止させる。これにより装着筒に孔口ケーシングが装着されたロック状態なる。そして、ロックプラグを引き上げた後、ロック状態のまま装着筒とともに孔口ケーシングをドリルストリングによって海底地盤まで吊り下ろし、着底させることができる。着底後において孔口ケーシングを装着筒から切り離す際には、アンロックプラグを船上からドリルストリングを介してツールステムに投げ入れ、プラグ設置位置にセット可能となる。その後、船上から流体を送ることでロック状態を解除できる。
【0010】
このように、本発明では、従来のようにドリルストリングを回転させることなく、装着筒と孔口ケーシングとのロック状態を解除することが可能となるため、例えば3000mを超えるような深海での離脱作業であってもドリルストリングの回転数を管理するという困難な作業が不要となり、作業効率を向上させることができる。
また、本発明では、深海での作業で必須となる水中カメラ等の作業監視装置をドリルストリングに沿わせて配置する場合であっても、その作業監視装置のケーブルがドリルストリングの回転とともに巻き込まれるといった不具合を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明に係る連続掘削システムは、前記ロックプラグは、前記ドリルストリング内の流体を流通するプラグ流路部を有し、前記装着筒は、前記プラグ設置位置において前記プラグ流路部に連通する筒流路部を有し、前記係止突部は、前記プラグ流路部を流通する流体の圧力によって前記装着筒から突出して前記孔口ケーシングの内面に係止されることが好ましい。
【0012】
このような構造によれば、船上からドリルストリング内に送り込まれる流体を使用し、その流体をツールステムの挿通孔内のプラグ設置位置に挿入されたロックプラグのプラグ流路部に流通させ、さらにその流体をプラグ流路部から装着筒の筒流路部に流通させることができる。そして、流体の圧力によって係止突部を突出させて孔口ケーシングの内側に係止させることができる。この場合には、係止突部が流体の圧力で突出する構成となるので、係止突部を出没させるための駆動部を装着筒やツールステムに搭載する必要がなく、簡単な構造となり、深海における操作が容易になる利点がある。
【0013】
また、本発明に係る連続掘削システムは、前記ロック状態において、前記アンロックプラグが前記挿通孔内の前記プラグ設置位置に挿入されたときに、前記筒流路部の流体が前記プラグ流路部に向けて流出することで、前記係止突部が前記孔口ケーシングの内面より切り離すことを特徴としていてもよい。
【0014】
この場合には、ロック状態において、流体を筒流路部からプラグ流路部に向けて流出させることで、係止突部に作用する圧力が低下して係止突部が径方向の内側に引き込み、係止突部が前記孔口ケーシングの内面より切り離すことができる。この場合には、係止突部が流体の圧力で容易に引き込む構成となるので、上述したように係止突部を出没させるための駆動部が不要な簡単な構造となり、深海における操作が容易になる。
【0015】
また、本発明に係る連続掘削システムは、前記孔口ケーシングの内面には、前記係止突部が係止可能な係止凹部が形成されていることを特徴としてもよい。
【0016】
この場合、係止突部が孔口ケーシングの内面の係止凹部に係止するので、強固にロックすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の連続掘削システムによれば、ドリルストリングを回転させることなく孔口ケーシングと装着筒との着脱させることができ、深海であってもドリルストリングに近傍のケーブルが巻き込まれることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態による連続掘削システムについて、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1(a)〜(d)に示すように、本実施の形態の連続掘削システム1は、海底地盤Gの掘削を海底探査船等の船体1Aから行うシステムである。
【0021】
連続掘削システム1は、ドリルストリング10の先端に掘削ドリル12を備え、その掘削ドリル12の直上のドリルストリング10に対して孔口先端装置2が着脱可能に外嵌され、さらに孔口先端装置2によって孔口ケーシング4を装着させた状態で海底地盤Gまで下降させ、着床させて設置する。そして、孔口ケーシング4を設置した後、孔口先端装置2に設けられる後述する孔口ケーシング4と装着筒6を切り離して、掘削ドリル12とともにドリルストリング10を下降させて連続的な掘削を行うための掘削システムである。
そして、本実施の形態の連続掘削システム1では、孔口先端装置2の上方近傍に水中カメラを搭載した作業監視装置8がドリルストリング10に沿わせるようにして船体1Aから吊り下げられている。
【0022】
船体1Aは、前後方向の略中間部において掘削作業を行うドリルフロアと、ドリルフロア上に立設される櫓と、ドリルフロアの下方の位置において船体1A下方のムーンプールに連通するプール開口部と、を備えている。プール開口部内には海面が露出しており、ドリルストリング10、孔口先端装置2、及び孔口ケーシング4がプール開口部を通じて海中に投入され、海底地盤Gを掘り下げることができる。
【0023】
ドリルストリング10は、例えば1本当たりの長さが9mで両端がねじ加工された中空鋼管からなり、複数本を繋ぎ足しながら下降させることにより海底に掘削孔を掘削するものである。掘削中、最下端に配置されるドリルストリング10の下端部には掘削ドリル12が取り付けられ、掘削ドリル12の回転によって海底地盤Gを掘削することができる。海底地盤Gの掘削を行うにあたり、ドリルストリング10の内側には船体1Aから流体R(海水および掘削泥水)が供給される。ドリルストリング10の内側に供給された海水は、ドリルストリング10内を下降してパイプ下端部に到達し、そのパイプ下端部において供給された海水の圧力によって掘削ドリル12を回転させて海底地盤Gを掘削し、発生する掘り屑と供給された海水とが混合される。そして、掘削ドリル12で海底地盤Gを掘削して発生した掘り屑が混合された泥水は、海中に放出される。
【0024】
ここで、
図2に示す符号3は、孔口先端装置2と孔口ケーシング4をロック状態に組み付ける際に、孔口ケーシング4を船体1Aのリグフロアもしくはムーンプールで支持するためのクランプを示している。クランプ3には、周方向に間隔をあけて複数の凸状係止部34が設けられている。これら凸状係止部34は、径方向の内側に向けて突出可能に設けられていて、突出した状態で孔口ケーシング4の外周面4aに形成される外周溝41(後述する)に周方向に摺動可能に係合される。
【0025】
孔口先端装置2は、船体1Aから吊り下ろされるドリルストリング10の下方に接続されるツールステム5と、孔口ケーシング4の内側に着脱自在に挿通される装着筒6と、ツールステム5の挿通孔5a内に挿通可能なロックプラグ7A及びアンロックプラグ7B(
図7参照)と、を備えている。
【0026】
これら孔口ケーシング4、ツールステム5、装着筒6、ロックプラグ7A及びアンロックプラグ7Bは、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置して配置されている。以下では、この共通軸をドリル軸Oといい、ドリル軸Oから見た平面視でドリル軸Oに直交する方向を径方向といい、ドリル軸O周りに周回する方向を周方向という。
また、孔口ケーシング4は、ケーシングの上端に取り付けられる。
【0027】
孔口ケーシング4は、略円筒状をなし、上述した孔口ケーシング4に上方から挿入された状態で一体的に連結されている。孔口ケーシング4の外周面4aの上下方向の略中央部分には、周方向に延在する外周溝41が形成されていて、上述したクランプ3の複数の凸状係止部34が周方向に摺動可能に係合されている。これにより孔口ケーシング4は上下方向の移動が規制されている。なお、ここで使用するクランプ3の凸状係止部34と外周溝41との係合は、装着筒6と孔口ケーシング4とを組み付ける際のみに使用される。
【0028】
孔口ケーシング4の内周面4bにおける上部には、後述する装着筒6のストッパー62が係止可能な係止凹部42が形成されている。係止凹部42は、周方向全周にわたって延在する一対の円周溝を形成している。
【0029】
装着筒6は、
図2及び
図3に示すように、ツールステム5の内側(後述するステム流路部51)に連通する筒流路部65を有する筒本体61と、筒本体61の外周面61aから径方向の外側に突出可能なストッパー62(係止突部)と、筒本体61の外周面61aに沿って上下移動可能に設けられストッパー62を径方向に進退移動させるスライドリング63と、筒本体61の上部に設けられツールステム5の外周面5bに着脱可能なステム用クランプ64と、径方向の内側(筒本体61の内面)に突出可能なインターナルストッパー66(凸部)と、を備えている。
【0030】
筒本体61は、
図4乃至
図6に示すように、下端部分において、径方向の外側に張り出すとともに、ストッパー62を下方から支持するフランジ部611を有している。フランジ部611の内側には回転阻止片614が設けられ、ツールステム5には回転阻止片614を周方向に回転不能に係合するキー溝54が形成されている。また、筒本体61には、フランジ部611の上方に位置する胴部612において、ストッパー62が配置される部分(外周面612a)の上方に周方向に沿って延在する案内溝613が形成されている。
【0031】
案内溝613は、外周側の開口がスライドリング63によって液密に覆われ、内部に流体Rが流入可能に設けられている。スライドリング63の摺動片632(後述する)は、案内溝613内で流体Rの圧力に応じて上下方向に摺動するように構成されている。案内溝613の溝内空間は、前記摺動片632によって上下の領域が仕切られて画成されている。
つまり、摺動片632が案内溝613の上端に位置(これをアンロック位置P2という)しているときには、摺動片632の下側に形成される下溝空間613bに流体Rが圧入された状態となる。一方、摺動片632が案内溝613の下端に位置(これをロック位置P1という)しているときには、摺動片632の上側に形成される上溝空間613aに流体Rが圧入された状態となる。
ここで、本実施の形態で採用される流体Rは、
図1に示す船体1Aからドリルストリング10内に送り込まれる流体Rである。
【0032】
図7に示すように、案内溝613における溝底面の上部と下部には、それぞれ筒流路部65(後述する第1流路65A、及び第2流路65B)に接続する流路穴613A、613Bが設けられている。つまり、第1流路穴613Aと第2流路穴613Bは、それぞれスライドリング63の摺動片632によって画成される上溝空間613a(
図6参照)と下溝空間613bに連通している。
【0033】
筒本体61の内側に設けられる上述した筒流路部65は、一端が案内溝613に連通するとともに、他端がツールステム5の内側(
図2に示す第1プラグ流路部71)に連通する第1流路65Aと第2流路65Bとを有している。摺動片632がアンロック位置P2にあるときに、ツールステム5内から第1流路65Aを通じて上溝空間613a内に流体Rが流入すると、その流体Rの圧力によって、第2流路65Bを通じて下溝空間613bの流体Rがツールステム5へ流出するとともに、摺動片632が下方に向けて移動する。
【0034】
ストッパー62は、
図5及び
図6に示すように、周方向に間隔をあけて複数設けられ、それぞれ径方向の外側に突出可能に装着筒6の胴部612の外周面612aに配置されている。ストッパー62は、胴部612の外周面612aとの間にスライドリング63のリング本体631の下部の押込み部631bが押し込まれるように設けられている。そして、押込み部631bが胴部612との間に押し込まれると、
図6に示すように、ストッパー62が胴部612の外周面612aから離反する方向(径方向の外側)に向けて突出し、孔口ケーシング4の内周面4bに形成されている係止凹部42に係止されてロック位置P1となる。そのため、ストッパー62の突出長は、リング本体631の厚さ寸法に相当している。また、押込み部631bがストッパー62と胴部612との間から外れると、ストッパー62が拘束されないフリーな状態となり、孔口ケーシング4の係止凹部42との係止が外れてロック状態が解除されたアンロック位置P2(
図5参照)となる。
【0035】
また、
図5及び
図6に示すように、装着筒6の胴部612には、周方向に間隔をあけて上述したストッパー62と周方向に重ならない位置において、径方向の内側(筒本体61の内面)に突出可能なインターナルストッパー66が複数設けられている。インターナルストッパー66は、
図6に示すように、スライドリング63がロック位置P1にあるときには、スライドリング63の押込み部631bによって内側に突出し、ツールステム5の外周面5bに形成されている第2係止凹部53に係止して、装着筒6とツールステム5とがロック状態となる。また、インターナルストッパー66は、
図5に示すように、スライドリング63がアンロック位置P2にあるときには拘束されないフリーな状態となり、装着筒6とツールステム5とがアンロック状態となる。
【0036】
スライドリング63は、筒本体61の案内溝613の開口を覆うとともに、胴部612に外周面612aに沿って上下に移動可能に外嵌されたリング本体631と、リング本体631の内面631aに設けられ、案内溝613内の流体Rの圧力によって上下方向に摺動する摺動片632と、リング本体631の上部において筒本体61の上部に係止可能な係止ピン633と、を有している。
【0037】
リング本体631は、筒本体61の胴部612における案内溝613の上下の位置でパッキンによって液密に接触しており、スライドリング63が上下移動しても案内溝613内の流体Rが漏出しないように液密状態が維持されている。リング本体631の下端は、下方に向かうに従い漸次、内側となるテーパ631cが形成され、そのテーパ631cの形状によってストッパー62と胴部612の外周面612aとの間に押し込み易くなっている。
【0038】
摺動片632は、リング本体631の内面631aにおける上下方向の中央部分に周方向の全周にわたって径方向の内側に突出している。摺動片632の突出長は、案内溝613の深さ寸法と同等となっており、摺動片632の突出端632aが案内溝613の底面613cに対して液密に当接している。
【0039】
摺動片632は、
図6に示すように、リング本体631の押込み部631bがストッパー62と胴部612との間の所定位置に押し込まれたロック位置P1のときに、案内溝613の下端613dに当接する位置となる。また、
図5に示すように、摺動片632は、押込み部631bがストッパー62と胴部612との間から外れたアンロック位置P2のときに、案内溝613の上端613eに当接する位置となる。すなわち、摺動片632は、案内溝613の上溝空間613aに流体Rが送り込まれたときに案内溝613の下端613dに当接し、下溝空間613bに流体Rが送り込まれたときに案内溝613の上端613eに当接する。
【0040】
ステム用クランプ64は、
図2に示すように、周方向に延在し、ツールステム5の外周面5bを外側から着脱可能に把持する構成となっている。
【0041】
ツールステム5は、
図2及び
図7に示すように、筒状をなし、上端及び下端がドリルストリング10に接続され、内側に装着筒6を孔口ケーシング4に対してロックするためのロックプラグ7A(
図2参照)、及び孔口ケーシング4に対する装着筒6のロック状態を解除するためのアンロックプラグ7B(
図7参照)の2種類のプラグが挿入される挿通孔5aが形成されている。
【0042】
ツールステム5の上下方向の中央部分には、一端が外周面5bに開口して装着筒6の筒本体61に設けられている筒流路部65(第1流路65A、第2流路65B)に連通可能で、他端が挿通孔5aに開口してロックプラグ7Aの第1プラグ流路部71、及びアンロックプラグ7Bの外周部に形成される第2プラグ流路部72にそれぞれ連通可能なステム流路部51が設けられている。
【0043】
また、ステム流路部51には、逆止弁52が設けられている。この逆止弁52は、ステム流路部51から筒流路部65に流れた流体Rがステム流路部51に逆流して戻らないように規制する弁である。
挿通孔5aには、ロックプラグ7A及びアンロックプラグ7Bが所定の挿入位置で位置決めされるように支持するプラグ支持部55が形成されている。
【0044】
ロックプラグ7Aは、
図2に示すように、一端の第1流路口71aがツールステム5の挿通孔5a内に接続され、かつ他端の第2流路口71bがステム流路部51及び装着筒6の第1流路65Aに連通する第1プラグ流路部71を有している。ロックプラグ7Aは、ツールステム5の挿通孔5a内に挿入され図示しないプラグ支持部に係止する位置で、第1プラグ流路部71の第2流路口71bがツールステム5の内側に開口するステム流路部51の流路口に接続する。
【0045】
アンロックプラグ7Bは、
図5に示すように、上述したロックプラグ7Aと入れ替えてツールステム5の挿通孔5a内に挿入される。
アンロックプラグ7Bは、外周側で挿通孔5aとの間に形成され、かつステム流路部51及び装着筒6の第2流路65Bに連通する第2プラグ流路部72を形成している。アンロックプラグ7Bは、ツールステム5の挿通孔5a内に挿入されプラグ支持部に係止する位置で、第2プラグ流路部72がツールステム5の内側に開口するステム流路部51の流路口に接続する。
【0046】
図1(b)に示すように、作業監視装置8は、水中カメラ80を搭載した装置本体81と、ドリルストリング10を挿通させて装置本体81を固定しドリルストリング10に沿って上下移動可能なガイド筒82と、装置本体81を船体1Aから吊り下げるケーブル83と、を有している。装置本体81は、孔口先端装置2の上方に位置するように船体1Aよりケーブル83を上下に移動させることで配置されている。
【0047】
次に、上述した連続掘削システム1を用いて海底地盤Gを掘削する手順と、連続掘削システム1の作用について図面に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、海底地盤Gの掘削にあたり、孔口先端装置2を使用して海底地盤Gに孔口ケーシング4を設置する。
先ず、船体1Aにおいて、孔口ケーシング4に対する所定位置にツールステム5を備えた装着筒6を配置した後、
図2に示すように、ロックプラグ7Aをツールステム5の挿通孔5a内に挿入し、ロック位置P1(
図4参照)に配置する。上記所定位置とは、装着筒6のストッパー62と孔口ケーシング4の内面に形成される係止凹部42とが水平方向に対向する位置である。なお、この船体1Aでの作業時において、ツールステム5の上端には適宜な本数のドリルストリング10が接続されていてもよい。また、ツールステム5の下端にも適宜な本数のドリルストリング10および掘削ドリル12が設けられている。ここで、掘削ドリル12の直上には、ドリル駆動用のモータ(図示省略)が設けられている。
【0048】
このときツールステム5は、装着筒6に対して所定の固定位置で装着され、ステム流路部51が装着筒6の筒流路部65と連通した状態で配置されている。なお、この状態では、装着筒6のストッパー62は径方向の外側に突出していない状態(アンロック位置P2)であり、スライドリング63がストッパー62に接触しない上方の位置に配置されている。
【0049】
次に、ツールステム5の挿通孔5a内に船体1Aから流体Rを送り込むと、その流体Rがロックプラグ7Aの第1プラグ流路部71を流通する。つまり、ロックプラグ7A内では、第1プラグ流路部71の第1流路口71aから第2流路口71bに向けて流体Rが流れる。その流体Rは、第2流路口71bに接続されるツールステム5のステム流路部51を通過して装着筒6の第1流路65Aに流入する。このとき装着筒6の第2流路65Bには、ロックプラグ7A内の第1プラグ流路部71を流通する流体Rが流れないようになっている。
【0050】
図2に示すように、第1流路65Aを流通した流体Rは、装着筒6の案内溝613の上溝空間613a内に流入し、その流体Rの圧力によりスライドリング63の摺動片632が押し下げられる。これにより、スライドリング63が下方にスライドしてストッパー62と装着筒6の胴部612との間に上方から押し込まれ、ストッパー62が径方向の外側に突出して孔口ケーシング4の内面に形成される係止凹部42に係止する。同時にインターナルストッパー66も働き、ツールステム5と装着筒6をロックする。これにより、ツールステム5を備えた装着筒6によって一体的に設けられた孔口ケーシング4がロックされた状態で装着される。このとき、ロック側・アンロック側はバランスするため、ロック状態が維持される。さらに、装着筒6に設けられた係止ピン(図示省略)をツールステム5の外周に挿入させて係止する。
【0051】
続いて、
図1(b)に示すように、孔口先端装置2に装着した孔口ケーシング4を、ツールステム5の上端にドリルストリング10を順次継ぎ足しながら海底に向けて下降させ海底地盤Gまで吊り降ろし、着底させる。このとき、孔口先端装置2の直上の位置には、ドリルストリング10に沿わせながら水中カメラ80を搭載した作業監視装置8を同時に吊り下ろし、孔口先端装置2の状態を船体1Aで監視できるようにする。
そして、孔口ケーシング4の下端が着底するタイミングで、孔口ケーシング4から少し出ている掘削ドリル12によって海底地盤Gを掘削しながら、孔口ケーシング4を海底地盤G中に埋設を開始する。
【0052】
次に、孔口ケーシング4の着底後に装着筒6を孔口ケーシング4から切り離す工程について説明する。
先ず、
図2に示すように船上で固定した後、ツールステム5の挿通孔5a内に挿入されているロックプラグ7Aを引き上げる。
なお、ロックプラグ7Aを引き上げても、上述したようにロック状態は維持されている。
【0053】
続いて、
図5に示すように、ツールステム5のプラグ設置位置にアンロックプラグ7Bが配置され、装着筒6の第2流路65Bがアンロックプラグ7Bの第2プラグ流路部72に連通した状態になる。そして、ツールステム5の挿通孔5a内に船体1Aから流体Rが送り込まれると、その流体Rがアンロックプラグ7Bの外周側に形成される第2プラグ流路部72を流通する。その流体Rは、ツールステム5のステム流路部51内に流入してさらに装着筒6の第2流路65Bに流入する。このとき装着筒6の第1流路65Aには、アンロックプラグ7B内の第2プラグ流路部72を流通する流体Rが流れないようになっている。
【0054】
第2流路65Bを流通した流体Rは、装着筒6の案内溝613の下溝空間613b内に流入し、その流体Rの圧力によりスライドリング63の摺動片632が押し上げられる。これにより、スライドリング63が上方にスライドしてストッパー62と装着筒6の胴部612との間から外れ、ストッパー62が外れ、孔口ケーシング4の係止凹部42に対する係止状態が解除され、ロック状態が解除され、アンロック位置P2となる。これにより、ツールステム5を備えた装着筒6を、孔口ケーシング4に一体的に設けられた孔口ケーシング4から切り離すことができる。
また、スライドリング63が上方にスライドすることにより、ストッパー62のロック解除と同時に、
図5に示すように、ツールステム5をロック状態とするインターナルストッパー66によるロックも解除される。
なお、スライドリング63は、上昇位置に押し上げられた位置でばねによって付勢された係止ピン633が筒本体61の胴部612に係止することで、上昇位置が保持され、アンロック状態が維持される。
【0055】
次に、
図1(c)に示すように、装着筒6を孔口ケーシング4に載せた状態で、装着筒6からツールステム5を切り離し、その切り離したツールステム5をドリルストリング10とともに下降させつつ、掘削ドリル12で海底地盤Gを掘削する。
【0056】
さらに掘削ドリル12を使用して所定深度の掘削が完了した後には、
図1(d)に示すように、掘削ドリル12をドリルストリング10及び拘束されずにフリーな状態になっている装着筒6とともに引き上げて、一連の掘削作業が完了となる。
【0057】
このように上述した連続掘削システム1では、
図1(a)〜(d)に示すように、従来のようにドリルストリング10を回転させることなく、装着筒6と孔口ケーシング4とのロック状態を解除することが可能となる。本連続掘削システム1は、深度にとらわれることなく使用できるが、特に例えば3000mを超えた7000mのような深海での離脱作業であってもドリルストリング10の回転数を管理するという困難な作業が不要となり、作業効率を向上させることができる。
また、本実施の形態では、深海での作業で必須となる水中カメラ等の作業監視装置8をドリルストリング10に沿わせて配置する場合であっても、その作業監視装置8のケーブル83がドリルストリング10の回転とともに巻き込まれるといった不具合を防ぐことができる。
【0058】
また、本実施の形態の連続掘削システム1では、
図2及び
図7に示すように、海上からドリルストリング10内に送り込まれる流体Rを使用し、その流体Rをツールステム5の挿通孔5a内のプラグ設置位置に挿入されたロックプラグ7A及びアンロックプラグ7Bのプラグ流路部71、72に流通させ、さらにその流体Rをプラグ流路部71、72から装着筒6の筒流路部65に流通させることができる。そして、流体Rの圧力によってストッパー62を突出させて孔口ケーシング4の内側に係止させることができる。
この場合には、ストッパー62およびインターナルストッパー66が流体Rの圧力で突出する構成となるので、ストッパー62を出没させるための駆動部を装着筒6やツールステム5に搭載する必要がなく、簡単な構造となり、深海における操作が容易になる利点がある。
【0059】
さらに、本実施の形態では、ロック状態において、ストッパー62およびインターナルストッパー66にかかる流体Rを筒流路部65から流すことで、ストッパー62に作用する圧力が低下してストッパー62が径方向の内側に引き込み、ストッパー62が前記孔口ケーシング4の内面より切り離すことができる。この場合には、ストッパー62が流体の圧力で容易に引き込む構成となるので、上述したようにストッパー62を出没させるための駆動部が不要な簡単な構造となり、深海における操作が容易になる。
【0060】
また、本実施の形態では、ストッパー62が孔口ケーシング4の内面の係止凹部42に係止するとともに、インターナルストッパー66もツールステム5の内面に対して係合することで、強固にロックすることができる。さらに、装着筒6に設けられた係止ピン(図示省略)をツールステム5の外周に挿入させて係止する構成であるため、所定の圧力がかからなければアンロックとすることはできない。
【0061】
上述のように本実施の形態による連続掘削システム1では、ドリルストリング10を回転させることなく孔口ケーシング4と装着筒6との着脱させることができ、深海であってもドリルストリング10に近傍のケーブルが巻き込まれることを防止できる。
【0062】
以上、本発明による連続掘削システムの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0063】
例えば、本実施の形態では、装着筒6のストッパー62を突出方向に進退移動させる手段として、ロックプラグ7Aとアンロックプラグ7Bのプラグ流路部71、72と筒流路部65に流体Rを流通させ、流体Rの圧力でストッパー62を駆動しているが、このような流体Rを用いる方法に限定されることはない。例えば、ロックプラグ7Aとアンロックプラグ7Bをツールステム5の挿通孔5aの所定の位置に挿入されたときに、機械的にスライドリング63を押し下げてストッパー62を突出させるような構成とすることも可能である。
【0064】
また、本実施の形態では、作業監視装置8をドリルストリング10に沿わせて常に孔口先端装置2の上方近傍に配置して、上述したような装着筒6と孔口ケーシング4とのロックやアンロックの作業を監視しているが、このような作業監視装置8を設けることに限定されることはない。
【0065】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。