【文献】
ESPINOSA, L. M. et al.,Green Chemistry,2014年,Vol. 16,pp. 1883-1896
【文献】
MORE, A. S. et al.,Polymer Chemistry,2012年,Vol. 3,pp. 1594-1605
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インビボでのトランスフェクションにおけるその使用のため、プロドラッグ、増感剤または造影剤の送達のため、遺伝子治療、局所治療または殺菌作用のための請求項1または2に記載の化合物。
トランスフェクションにおけるその使用のため、プロドラッグ、増感剤または造影剤の送達のため、遺伝子治療、局所治療または殺菌作用のための請求項3に記載のリポソーム。
トランスフェクションにおけるその使用のため、プロドラッグ、増感剤または造影剤の送達のため、遺伝子治療、局所治療または殺菌作用のための請求項4に記載のリポプレックス。
【背景技術】
【0002】
カチオン性両親媒性脂質は、インビトロまたはインビボにおいて核酸(pDNA、siRNA、mRNA)のベクター化のためによく使用されているベクターの非常に大きなクラスを構成する。
【0003】
Felgnerらの先駆的研究 (Felgner, P.L.G.; Gadek, T.R.; Holm, M.; Roman, R.; Chan, H.W.; Wenz, M.; Northrop, J.P.; Ringold, M.G.; Danielsen, M. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 1987, 84, 7413−7417)以後、トランスフェクションの有効性を高め、かつトランスフェクション機構の知識を拡大させることができるカチオン性両親媒性脂質の新規な構造を提案するための努力がなされている。
【0004】
トランスフェクションは、カチオン性両親媒性脂質とDNAとの会合によって形成される超分子凝集体(リポプレックス)のおかげで行われる。エンドサイトーシス経路によって生じるこれらのリポプレックスの細胞への取り込み後に、リソソーム内に充填された核酸物質の分解を防止するためにはエンドソームからサイトゾルへの核酸物質の放出が必要である。
【0005】
エンドソーム膜の不安定化を促進するかリポプレックスの細胞への取り込み後にその安定性に影響を与えるための分子手法を用いた異なる戦略が探究されている。
【0006】
従って、エンドソーム膜を不安定化させるために、エンドソームにおいてプロトン化することができる(プロトンスポンジ効果)か、サイトゾルにおいて酵素または酸化還元反応によって切断することができる新規なカチオン性両親媒性脂質が提案されている。
【0007】
トランスフェクション効率を高めるための別の戦略は、リポプレックスの安定性および融合特性を高めることにある(a) Ewert, K.; Slack, N.L.; Ahmad, A.; Evans, H.M.; Lin, A.J.; Samuel, C.E.; Safinya, C.R. Curr Med Chem., 2004, 11, 133-49; b) Dan, N.; Danino, D. Adv Colloid Interface Sci., 2014, 205, 230-9)。特に研究によって、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)などの共脂質(co−lipid)をカチオン性両親媒性脂質と会合させることによってトランスフェクションにおける改善が得られている。この改善は、ラメラ相よりも融合性が高いことが知られている逆ヘキサゴナル相をなすDOPEの性向によるものである。
【0008】
非ラメラ相を生成するための別の戦略は、カチオン性両親媒性脂質の分子形態に影響を与えることにある。Ewertらは、樹枝状頭部基を有するカチオン性両親媒性脂質の合成を報告した(Ewert, K.K.; Evans, H.M.; Zidovska, A.; Bouxsein N.F.; Ahmad, A.; Safinya, C.R. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 3998-4006)。このカチオン性極性頭部の形状により、それらを二成分製剤に含めた際にヘキサゴナル相H
Iの形成が誘導された。トランスフェクトするのが難しいことが知られている細胞株に対して高いトランスフェクション効率が観察された。Lindbergらは、2本のフィタニル鎖(メチル化C16アルキル鎖)をカチオン性リポ−ホスホロアミデート(lipo−phosphoramidate)構造の中に組み込むことにより水中での製剤化後に逆ヘキサゴナル相が生成されることを証明した(Lindberg, M.; Carmoy, N.; Le Gall, T.; Fraix, A.; Berchel, M.; Lorilleux, C.; Couthon-Gourves, H.; Bellaud, P.; Fautrel, A.; Jaffres, P.A.; Lehn, P.; Montier, T. Biomaterials 2012, 33, 6240-6253)。このベクターにより良好なインビボでのトランスフェクション効率が得られた。
【0009】
これらの全ての研究にも関わらず新規なベクターの開発がなお必要とされている。
【0010】
また、これらの新規な両親媒性脂質はインビボ実験のために必要とされる大規模生成のために最適化された合成経路によって得ることが望ましい。但し、新規な分岐鎖状両親媒性脂質を既存の両親媒性脂質構造の単純な修飾により得ることができ、高いモジュラリティーを可能にし、かつデノボ合成を必要としない、すなわち所望の分子を完全に合成する必要のない新規な合成法の開発がなお必要とされている。
【0011】
定義
本発明では、以下の用語は以下のように定義される。
【0012】
「造影剤」は解剖学的もしくは病理学的構造を可視化することができる化合物を指す。
【0013】
「アルケニル」とは、例えばエテニル、2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ペンテニルおよびそれらの異性体、2−ヘキセニルおよびその異性体、2,4−ペンタジエニルなどの少なくとも1つの二重結合を有する炭素原子数2〜12、好ましくは2〜6のあらゆる直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素鎖を指す。
【0014】
「アルキニル」とは、例えばエチニル、2−プロピニル、2−ブチニル、3−ブチニル、2−ペンチニルおよびそれらの異性体、2−ヘキシニルおよびその異性体などの少なくとも1つの三重結合を有する炭素原子数2〜12、好ましくは2〜6のあらゆる分岐鎖状もしくは非分岐鎖状炭化水素鎖を指す。
【0015】
「アシルアミノ」とは、−NRC(O)アルキル、−NRC(O)シクロアルキル、−NRC(O)シクロアルケニル、−NRC(O)アルケニル、−NRC(O)アルキニル、−NRC(O)アリール、−NRC(O)ヘテロアリールおよび−NRC(O)複素環基(式中、Rは水素または以下に定義されているアルキルである)を指す。
【0016】
「アルキル」とは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチルおよびそれらの異性体(例えばn−ペンチル、イソペンチル)、ヘキシルおよびその異性体(例えばn−ヘキシル、イソヘキシル)などの炭素原子数1〜12、好ましくは1〜6、さらにより好ましくは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルなどの炭素数1〜3のあらゆる飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素鎖を指す。
【0017】
「アルキルアミノ」とは、−NHR基(式中、Rは上に定義されているアルキルである)を指す。
【0018】
「アルキルアリール」とは、上に定義され、かつアリール基によって結合されるアルキル基に共有結合的に結合された上に定義されているアリール基を含む基を指す。
【0019】
「アルキルオキシ」とは、あらゆる−O−アルキル基を指す。
【0020】
「アルキルオキシカルボニル」とは、あらゆる−C(O)−O−アルキル基を指す。
【0021】
「アミン」とは−NH
2基を指す。
【0022】
「アミノカルボニル」とは、−C(O)NR’R’’基(式中、R’およびR’’は独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリールおよび複素環を含む群から選択され、かつR’およびR’’は任意に複素環または例えば置換ピペラジンなどの置換複素環基を形成するためにそれらが結合する窒素によって互いに結合されている)を指す。
【0023】
「アミノチオカルボニル」とは、−C(S)NR’R’’基(式中、R’およびR’’は独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリールおよび複素環を含む群から選択され、かつR’およびR’’は任意に複素環または例えば置換ピペラジンなどの置換複素環基を形成するためにそれらが結合する窒素によって互いに結合されている)を指す。
【0024】
「両親媒性」とは、少なくとも1つの親水性基および少なくとも1つの疎水性基の両方を有する化学種を指す。トリグリセリドは両親媒性種ではなく、本発明の一実施形態によれば、式(II)の化合物はトリグリセリドではない。
【0025】
「アリール」とは、1つまたはいくつかの芳香族環を有する炭素原子数5〜20、好ましくは6〜12の単環もしくは多環系を指し(2つのコアが存在する場合はビアリールと称す)、そのうち、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基およびビナフチル基を挙げることができる。
【0026】
「アリールアルキル」とは、上に定義され、かつアルキル基によって結合されるアリール基に共有結合的に結合された上に定義されているアルキル基を含む基を指す。
【0027】
「対イオン」とは反対符号の可動性イオンを指す。これらの対イオンの非限定的な例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニウム、ピリジニウム、塩化物、臭化物、ヨウ化物、トシラート、トリフラート、メチル硫酸のイオンが挙げられる。
【0028】
「シクロアルキル」とは、3〜8個の炭素原子を含む環式もしくは多環式のアルキル基、好ましくはシクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル基を指す。
【0029】
「シクロアルケニル」とは、3〜8個の炭素原子を含む環式もしくは多環式のアルケニル基、好ましくはシクロプロペニル、シクロペンテニルまたはシクロヘキセニル基を指す。
【0030】
「ジアルキルアミノ」とは、−NRR’基(式中、RおよびR’は上に定義されているアルキルである)を指す。
【0031】
「複素環」とは、その炭素環の1つに少なくとも1個のヘテロ原子を有する完全飽和または部分不飽和の非芳香族基(例えば、3〜7個の原子を含む環式化合物、7〜11個の炭素原子を含む二環式化合物)を指す。ヘテロ原子を含む複素環基の各環は窒素、酸素および/または硫黄から選択される1、2、3または4個のヘテロ原子を有することができ、その硫黄および窒素原子は任意に酸化されていてもよく、窒素原子は潜在的に四価である。複素環基は、結合価が許す場合にはその環のあらゆるヘテロ原子または炭素原子に結合されていてもよい。多環式複素環の環は1個またはいくつかのスピロ原子によって縮合、架橋および/または結合されていてもよい。これらの環の非限定的な例としては、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、ピペリジニル、アゼチジニル、2−イミダゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、イソオキサゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピペリジニル、スクシンイミジル、3H−インドリル、インドリニル、イソインドリニル、2H−ピロリル、1−ピロリニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、ピロリジニル、4H−キノリジニル、2−オキソピペラジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、2−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、テトラヒドロ−2H−ピラニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラニル、オキセタニル、チエタニル、3−ジオキソラニル、1,4−ジオキサニル、2,5−ジオキソイミダゾリジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロロジニル、インドリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリン−1−イル、テトラヒドロイソキノリン−2−イル、テトラヒドロイソキノリン−3−イル、テトラヒドロイソキノリン−4−イル、チオモルホリン−4−イル、チオモルホリン−4−イルスルホキシド、チオモルホリン−4−イルスルホン、1,3−ジオキソラニル、1,4−オキサチアニル、1,4−ジチアニル、1,3,5−トリオキサニル、1H−ピロリジニル、テトラヒドロ−1,1−ジオキソチオフェニル(dioxothiophenyl)、N−ホルミルピペラジニルおよびモルホリン−4−イル基が挙げられる。
【0032】
「ヘテロアリール」とは、限定されるものではないが、典型的には5〜6個の原子を含む縮合されたか共有結合的に結合された炭素原子数5〜12の芳香族環であって、その環の少なくとも1つの芳香族炭素の少なくとも1つが酸素、窒素または硫黄で置換されており、その窒素および硫黄は潜在的に酸化されていてもよく、その窒素は潜在的に四価の形態である芳香族環を指す。そのような環は、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルに縮合されていてもよい。これらの環の非限定的な例としては、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、イミダゾ[2,1−b][1,3]チアゾリル、チエノ[3,2−b]フラニル、チエノ[3,2−b]チオフェニル、チエノ[2,3−d][1,3]チアゾリル、チエノ[2,3−d]イミダゾリル、テトラゾロ[1,5−a]ピリジニル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、1,3−ベンゾオキサゾリル、1,2−ベンゾイソオキサゾリル、2,1−ベンゾイソオキサゾリル、1,3−ベンゾチアゾリル、1,2−ベンゾイソチアゾリル、2,1−ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3−ベンゾオキサジアゾリル、2,1,3−ベンゾオキサジアゾリル、1,2,3−ベンゾチアジアゾリル、2,1,3−ベンゾチアジアゾリル、チエノピリジニル、プリニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、6−オキソ−ピリダジン−1(6H)−イル、2−オキソ−ピリジン−1(2H)−イル、6−オキソ−ピリダジン−1(6H)−イル、2−オキソ−ピリジン−1(2H)−イル、1,3−ベンゾジオキソリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル基が挙げられる。
【0033】
「プロトン化可能な中性複素環」とは、限定されるものではないが、典型的には5〜6個の原子を含む縮合されたか共有結合的に結合された炭素原子数5〜12の芳香族環であって、その環の少なくとも1つの芳香族炭素の少なくとも1つは窒素で置換されており、かつプロトン化することができる芳香族環を指す。これらの環の非限定的な例としては、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、キノキサリン、インドール基が挙げられる。
【0034】
「極性基」とは親水性基を指す。
【0035】
「反応基」とは、別の化学基と反応して共有結合を形成することができる基、すなわち好適な反応条件下で共有結合的に反応性である基を指し、一般に別の物質のための結合点である。反応基は、共有結合を形成するために異なる化合物上の官能基と化学的に反応することができる本発明の化合物上に存在する基である。反応基としては、一般に求核性基、求電子性基および光活性化基が挙げられる。
【0036】
「ハロ」とはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード基を指す。
【0037】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子を指し、好ましくは塩素、臭素およびヨウ素原子を指す。
【0038】
「リンカー」または「結合基」とは、共有結合または一連の安定な共有結合を含む基を指し、その基はC、N、O、SおよびPを含む群から選択される1〜40個の多価原子を含み、基、カップリング官能基またはベクター化基(vectoring group)を本発明のリガンドの残りに共有結合的に結合させる。リンカー内の多価原子の数は、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25または30であってもよい。リンカーは直鎖状であっても直鎖状でなくてもよく、特定のリンカーは側鎖またはペンダント官能基(あるいは両方)を有する。そのような側鎖の例は親水性改質基、例えばスルホ(−SO3Hまたは−SO3−)またはカルボン酸(−COO−)などの例えば可溶化基である。一実施形態では、リンカーは、炭素−炭素、炭素−窒素、窒素−窒素、炭素−酸素および炭素−硫黄の単結合、二重結合、三重結合または芳香族結合のあらゆる組み合わせからなる。リンカーは、例えば、アルキル、−C(O)NH−、−C(O)O−、−NH−、−S−、−O−、−C(O)−、−S(O)n−基(式中、nは0、1または2に等しい)から選択される基の組み合わせ、単環式の5もしくは6員環および官能性側鎖(例えば、スルホ、ヒドロキシまたはカルボキシ)からなっていてもよい。さらに、リンカーがカップリング官能基を本発明のリガンドの残りに結合させる場合、前記カップリング官能基はベクター化官能基を有する反応性物質と反応することができ、これによりベクター化基をリガンドの残りと結合させるリガンドが得られる。この場合、リンカーは典型的には、カップリング官能基の残基(例えば、エステルのカルボニル基、アジドとアルキンとのクリック反応により生じるトリアゾロ基またはたイソチオシアネート官能基上のアミンのカップリングにより生じる−NHC(=S)NH−基など)を含む。一実施形態によれば、リンカーは単共有結合を指す。
【0039】
「脂質」とは、飽和、不飽和または多価不飽和の直鎖状もしくは分岐鎖状炭素鎖を指す。このパターンを官能基によって両親媒性物質の構造に結合させることができる。
【0040】
「リポプレックス」とは核酸とリポソームとの複合体を指し、前記核酸はDNA、siRNAまたはmRNAであってもよい。
【0041】
「リポソーム」とは、その間に水性区画を封じ込める同心の脂質二重層によって形成された人工小胞を指す。リポソームは両親媒性物質から得られる。
【0042】
「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の成分が互いに適合可能であり、かつ患者に有害でないことを意味する。
【0043】
「プロドラッグ」とは、例えば、インビボにおけるその生体内変換生成物が生物学的に活性な化合物を生じるアミドまたはエステルなどの薬学的に許容される誘導体を指す。プロドラッグは一般に生物学的利用能の増加を特徴とし、容易に代謝されてインビボにおいて生物学的に活性な化合物になる。
【0044】
「有機塩」とは、中性生成物を形成し、かつ正味荷電を形成しないカチオンおよびアニオンからなり、前記イオンの少なくとも1つが本質的に有機である、すなわち炭素化合物であるイオン性化合物を指し、これらの有機塩の非限定的な例としては、アンモニウム、ホスホニウムおよびイミダゾリウム塩が挙げられる。
【0045】
「トランスフェクション」とは、外来性遺伝物質を真核細胞の中に導入することを指す。トランスフェクションはインビトロまたはインビボで行ってもよい。
【0046】
「UV」とは約300nm〜約400nmの電磁スペクトルの一部を指す。
【0047】
「媒体」とは組成物中の目的の生成物を運ぶ物質を指し、特にそれを溶解させることができる物質であってもよい。媒体は例えば水であってもよい。
【0048】
リンリンカーは、以下に定義されているリンカーである(式中、R、R’、R’’、R’’’、R’’’’およびR’’’’’は上に定義されているアルキルまたはアルキレンである)。
【化2】
【発明を実施するための形態】
【0049】
化合物
本発明は一般式(II):
【化3】
(式中、
L
1およびL
2はそれぞれ独立してリンカーであり、好ましくはこのリンカーは単結合およびアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルオキシまたはアルキルオキシカルボニル基から選択され、
L
3はリンカーであり、好ましくはこのリンカーはアルキル、アルキルホスホロアミデート、アルキルチオホスホロアミデート、アルキルホスフェート、アルキルチオホスフェート、アルキルホスホニト、アルキルホスホネート、アルキルチオホスホネート、アルキルホスホラミド、アルキルチオホスホラミド、アルキルオキシまたはアミン基から選択され、
Zは極性官能基であり、前記基はカチオン性、アニオン性、双性イオン性または中性であり、
aは0または1であり、
n、n’、qおよびq’はそれぞれ独立して1〜15の整数であり、
m、m’、pおよびp’はそれぞれ独立して0〜4の整数であるが、但し、
− mおよびpの少なくとも1つは0とは異なり、
− m’およびp’の少なくとも1つは0とは異なり、
R
1およびR
2は一方は水素であり、かつ他方は式−S−L
4−R
5のチオエーテル基であり、R
3およびR
4は一方は水素であり、かつ他方は式−S−L
4−R
5のチオエーテル基であり、ここで
L
4はリンカーであり、好ましくはこのリンカーは単結合およびアミノカルボニル、アシルアミノ、アルキルアミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アルキル、アリール、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルオキシ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)基、ペプチドまたはそれらの組み合わせから選択され、任意に−O−、−S−、−SO
2−またはそれらの組み合わせによって中断または終端していてもよく、任意にL
4をR
5に結合させる反応基の残基をさらに含み、
R
5は水素原子であるか、あるいは
− アンモニウム、ホスホニウムおよびイミダゾリウム型の有機塩ならびにプロトン化可能な中性複素環の群から選択される極性基、
− N3、アミノ、アルキルアミノ、COOH、アミド、マレイミド、アルキン、SH、OH、エステル、活性化エステル、活性化カルボン酸、ハロ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アクリルアミド、アルデヒド、ケトン、アセタール、ケタール、無水物、チオシアネート、イソチオシアネート、イソシアネート、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラゾン、エーテル、オキシド、シアネート、ジアゾ、ジアゾニウム、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、硫酸、スルフェン酸、アミジン、イミド、イミン、イミデート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、亜硫酸、エナミン、イナミン、尿素、イソ尿素、セミカルバジド、カルボジイミドおよびカルバメート基を含む群から選択される反応基、または
− プロドラッグ、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、酵素、多糖類、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、蛍光体、発色団、放射性同位体、カルボランおよびそれらの組み合わせから選択される生理活性基
であるが、
但し、aが0に等しい場合、Zは−S−CH2−CH2−OHおよび−C(O)OMeとは異なる)
の両親媒性化合物に関する。
【0050】
本発明の化合物は官能化されるか官能化可能であるという利点を有する。一実施形態によれば、R
5が反応基である場合にはR
5を用いて官能化を行う。一実施形態によれば、プロトン化可能な中性複素環はイミダゾールおよびピリジン基である。
【0051】
一実施形態によれば、L
1およびL
2はそれぞれ独立して単結合またはアルキルオキシ基である。
【0052】
一実施形態によれば、L
3は、アルキル、アルキルホスフェート、アルキルホスホネート、アルキルホスホロアミデート、アルキルチオホスホラミド、アルキルオキシまたはアミン基から選択されるリンカーである。好ましい実施形態によれば、L
3はアルキルホスホロアミデート基である。別の好ましい実施形態によれば、L
3はアルキルオキシ基である。
【0053】
一実施形態によれば、L
4はリンカーであり、好ましくはこのリンカーは単結合およびアルキル、アリール、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)基から選択される。一実施形態によれば、L
4は単結合またはリンカーであり、好ましくはこのリンカーはアルキル、シクロアルキル、アリールアルキル基から選択される。これらの実施形態では、L
4は好ましくはC1〜C12アルキル、シクロアルキルおよびアリールアルキル基から選択される。好ましくは、L
4はベンジル、シクロヘキシル、プロピル、ヘキシル、ヘプチル、ウンデシルおよびドデシル基から選択される。
【0054】
一実施形態によれば、R
5は水素原子、アンモニウム、ホスホニウムおよびイミダゾリウム型の有機塩ならびにプロトン化可能な中性複素環の群から選択される極性基またはOH、カルボン酸、アミン、保護されたチオール官能基、アジド、アルデヒド基から選択される反応基、またはプロドラッグ、蛍光体、発色団、放射性同位体またはカルボランから選択される生理活性基である。R
5は好ましくは水素原子、OH基またはプロドラッグである。R
5はより好ましくは水素原子、OH基またはイブプロフェンのプロドラッグである。
【0055】
一実施形態によれば、Zは、そのアンモニウム基が脂肪族鎖、5員環、1、2もしくは3個の窒素原子を含む5員複素環、1、2、3もしくは4個の窒素原子を含む5員ヘテロアリール、6員環、1、2、3もしくは4個の窒素原子を含む6員複素環、1もしくは2個の窒素原子を含む6員複素環に含まれていてもよい第四級アンモニウム基、第三級アンモニウム、第二級アンモニウム、そのホスホニウム基が脂肪族鎖に含まれていてもよいホスホニウム、そのアルソニウム基が脂肪族鎖、5員環、6員環に含まれていてもよいアルソニウムおよびそれらの組み合わせから選択されるカチオン性極性官能基である。好ましい実施形態によれば、Zは、そのアンモニウム基が脂肪族鎖、1もしくは2個の窒素原子を含む6員複素環に含まれていてもよい第四級アンモニウム基、そのホスホニウム基が脂肪族鎖に含まれていてもよいホスホニウムおよびそのアルソニウム基が脂肪族鎖に含まれていてもよいアルソニウムおよびそれらの組み合わせから選択されるカチオン性極性官能基である。これらの実施形態では、Zはより好ましくは第四級アンモニウム、ホスホニウムおよびアルソニウム基であり、より好ましくは、Zは第四級アンモニウムであり、さらにより好ましくは、Zは−N
+Me
3官能基である。
【0056】
別の実施形態によれば、Zは、そのアンモニウム基が脂肪族鎖、5員環、1、2もしくは3個の窒素原子を含む5員複素環、6員環、1、2、3もしくは4個の窒素原子を含む6員複素環に含まれていてもよいアミノカルボン酸、アミノスルホン酸、カルボキシベタイン基、そのアンモニウム基が脂肪族鎖、5員環、1、2もしくは3個の窒素原子を含む5員複素環、6員環、1、2、3もしくは4個の窒素原子を含む6員複素環に含まれていてもよいスルホベタイン官能基、そのアンモニウム基が脂肪族鎖、5員環、1、2もしくは3個の窒素原子を含む5員複素環、6員環、1、2、3もしくは4個の窒素原子を含む6員複素環に含まれていてもよいベタイン官能基、そのアンモニウム基が脂肪族鎖、5員環、1、2もしくは3個の窒素原子を含む5員複素環、6員環、1、2、3もしくは4個の窒素原子を含む6員複素環に含まれていてもよいホスホベタイン官能基、ホスホリルコリン、ホスホコリン官能基およびそれらの組み合わせから選択される双性イオン性極性官能基である。好ましい実施形態によれば、Zは、そのアンモニウム基が脂肪族鎖、5員環、1、2もしくは3個の窒素原子を含む5員複素環、6員環、1、2、3もしくは4個の窒素原子を含む6員複素環に含まれていてもよいスルホベタイン官能基、およびそのアンモニウム基が脂肪族鎖、5員環、1、2もしくは3個の窒素原子を含む5員複素環、6員環、1、2、3もしくは4個の窒素原子を含む6員複素環に含まれていてもよいホスホベタイン官能基から選択される双性イオン性極性官能基である。これらの実施形態では、Zは、より好ましくはそのアンモニウム基が脂肪族鎖に含まれているスルホベタイン官能基であり、より好ましくは、Zは−N
+Me
2−(CH
2)
3−SO
3−官能基である。
【0057】
別の実施形態によれば、Zは、アミノ、アルキルアミノ、そのジアルキルアミノ基が脂肪族鎖、5員環、1、2もしくは3個の窒素原子を含む5員複素環、6員環、1、2、3もしくは4個の窒素原子を含む6員複素環に含まれていてもよいジアルキルアミノ基、ポリエチレングリコール(PEG)およびそれらの組み合わせから選択される中性の極性官能基である。好ましい実施形態によれば、Zは、そのジアルキルアミノ基が脂肪族鎖、5員環、1、2もしくは3個の窒素原子を含む5員複素環、6員環、1、2、3もしくは4個の窒素原子を含む6員複素環に含まれていてもよいジアルキルアミノ基およびポリエチレングリコール(PEG)から選択される中性の極性官能基である。これらの実施形態では、Zはより好ましくは脂肪族鎖に含まれているジアルキルアミノ基またはポリエチレングリコールであり、好ましくは、Zは−NMe
2基である。
【0058】
別の実施形態によれば、Zは、カルボン酸、スルホン酸、硫酸またはリン酸基およびそれらの組み合わせから選択されるアニオン性極性官能基である。好ましい実施形態によれば、Zは、カルボン酸、硫酸またはリン酸基から選択されるアニオン性極性官能基である。
【0059】
一実施形態によれば、本発明の化合物はカチオン性である。別の実施形態によれば、本化合物は中性である。別の実施形態によれば、本化合物は双性イオン性である。別の実施形態によれば、本化合物はアニオン性である。
【0060】
一実施形態によれば、aは1に等しい。一実施形態によれば、aは0に等しい。
【0061】
一実施形態によれば、nはn’に等しく、mはm’に等しく、pはp’に等しく、qはq’に等しい。
【0062】
一実施形態によれば、mおよびpの合計は2に等しい。別の実施形態によれば、mおよびpの合計は1に等しい。一実施形態によれば、m’およびp’の合計は2に等しい。別の実施形態によれば、m’およびp’の合計は1に等しい。
【0063】
一実施形態によれば、n、n’、qおよびq’はそれぞれ独立して4〜10、好ましくは6〜9の整数である。特定の実施形態によれば、nおよびn’は7に等しく、qおよびq’は8に等しい。
【0064】
好ましい実施形態によれば、本発明の化合物は式(IIa):
【化4】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、Z、n、n’、m、m’、p、p’、qおよびq’は上に定義されているとおりであり、R
6は水素またはアルキルであり、rは1〜10の整数である)
の化合物ある。
【0065】
一実施形態によれば、rは1〜7の整数、好ましくは1〜4の整数である。
【0066】
別の好ましい実施形態によれば、本発明の化合物は式(IIb):
【化5】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、Z、n、n’、m、m’、p、p’、qおよびq’は上に定義されているとおりであり、sは1〜10の整数である)
の化合物である。
【0067】
一実施形態によれば、sは1〜7の整数、好ましくは1〜4の整数である。
【0068】
一実施形態によれば、本発明の化合物は、X
−がその対イオンである以下の表の化合物を含む群から選択される。
【表1】
【0069】
一実施形態では、対イオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、トシラート、トリフラート、メチル硫酸アニオンから選択されるアニオンであり、好ましくは、対イオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物アニオンから選択されるアニオンである。
【0070】
一実施形態によれば、化合物II−1は、化合物II−1a、II−1bおよびII−1cの混合物である。同じように、化合物II−Xは、化合物II−Xa、II−XbおよびII−Xcの混合物である。
【0071】
本発明は、本明細書の上に記載されているような少なくとも1種の本発明の化合物を含むリポソームにも関する。特に本発明は、ヘキサゴナル相を有し、かつ式(II)、(IIa)または(IIb)の化合物のうちの少なくとも1種を含むリポソームに関する。好ましい実施形態によれば、当該リポソームはヘキサゴナル相を有し、かつ少なくとも1種の式(IIa)の化合物を含む。別の好ましい実施形態によれば、当該リポソームはヘキサゴナル相を有し、かつ少なくとも1種の式(IIb)の化合物を含む。
【0072】
一実施形態によれば、当該リポソームは、カチオン性である化合物、すなわちZが式(II)、(IIa)または(IIb)のカチオン性極性官能基である化合物のみを含む。好ましい実施形態によれば、当該リポソームは式(IIa)のカチオン性化合物のみを含む。別の好ましい実施形態によれば、当該リポソームは式(IIb)のカチオン性化合物のみを含む。
【0073】
一実施形態によれば、当該リポソームは、少なくとも1種の非分岐鎖状カチオン性両親媒性脂質と会合した式(II)、(IIa)または(IIb)の少なくとも1種の中性化合物から形成されている。好ましい実施形態によれば、当該リポソームは少なくとも1種の非分岐鎖状カチオン性両親媒性脂質と会合した少なくとも1種の式(IIa)の中性化合物から形成されている。一実施形態によれば、非分岐鎖状カチオン性脂質は、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)または本発明の化合物I−1であってもよい。
【0074】
一実施形態によれば、当該リポソームはヘキサゴナル相を有する。一実施形態によれば、当該リポソームは直接ヘキサゴナル相を有する。一実施形態によれば、当該リポソームは逆ヘキサゴナル相を有する。
【0075】
本発明のリポソームは当業者によって知られている方法に従って得ることができる。
【0076】
一実施形態によれば、当該リポソームは、本発明の両親媒性脂質を溶解させる有機溶媒を蒸発させ、次いでそれらを浮遊状態で水性溶媒の中に入れることによって調製することができる。この操作は本発明の脂質の相転移温度よりも高い温度で行わなければならない。
【0077】
本発明は、本明細書の上に記載されているような少なくとも1種の本発明の化合物を含むリポプレックスにも関する。特に本発明は、ヘキサゴナル相を有し、かつ式(II)、(IIa)または(IIb)の化合物のうちの少なくとも1種を含むリポプレックスに関する。一実施形態によれば、当該リポプレックスは、カチオン性である化合物、すなわちZが式(II)、(IIa)または(IIb)のカチオン性極性官能基である化合物のみを含む。好ましい実施形態によれば、当該リポプレックスは式(IIa)のカチオン性化合物のみを含む。別の好ましい実施形態によれば、当該リポプレックスは式(IIb)のカチオン性化合物のみを含む。
【0078】
一実施形態によれば、当該リポプレックスは、少なくとも1種の式(I)の非分岐鎖状カチオン性両親媒性脂質と会合した式(II)、(IIa)または(IIb)の少なくとも1種の中性化合物から形成されている。好ましい実施形態によれば、当該リポプレックスは、少なくとも1種の式(IIa)の中性化合物ならびに少なくとも1種の式(I)の非分岐鎖状カチオン性両親媒性脂質を含む。一実施形態によれば、当該非分岐鎖状カチオン性脂質はDOTMAまたは本化合物I−1であってもよい。
【0079】
一実施形態によれば、当該リポプレックスはヘキサゴナル相を有する。一実施形態によれば、当該リポプレックスは直接ヘキサゴナル相を有する。一実施形態によれば、当該リポプレックスは逆ヘキサゴナル相を有する。
【0080】
本発明のリポプレックスは当業者によって知られている方法に従って得ることができる。当該リポプレックスは所与の量のDNAを本発明の両親媒性脂質と混合することによって調製する。一実施形態によれば、当該リポプレックスの電荷比は0.3〜15.0、好ましくは0.5〜8.0であってもよい。
【0081】
方法
本発明の化合物は当業者によって知られている反応に従って得ることができる。
【0082】
本発明は、本発明の化合物の製造方法にも関する。特に本発明は、チオール−エン型の反応によってそれらの脂質部分において既存の両親媒性脂質の構造を容易かつ迅速に調節することを可能にする化学合成法に関する。
【0083】
本発明は、式(II)の化合物:
【化6】
(式中、
L
1およびL
2はそれぞれ独立してリンカーであり、好ましくはこのリンカーは単結合およびアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルオキシまたはアルキルオキシカルボニル基から選択され、
L
3はリンカーであり、好ましくはこのリンカーはアルキル、アルキルホスホロアミデート、アルキルチオホスホロアミデート、アルキルホスフェート、アルキルチオホスフェート、アルキルホスホニト、アルキルホスホネート、アルキルチオホスホネート、アルキルホスホラミド、アルキルチオホスホラミド、アルキルオキシまたはアミン基から選択され、
Zは極性官能基であり、前記基はカチオン性、アニオン性、双性イオン性または中性であり、
aは0または1であり、
n、n’、qおよびq’はそれぞれ独立して1〜15の整数であり、
m、m’、pおよびp’はそれぞれ独立して0〜4の整数であるが、但し、
− mおよびpの少なくとも1つは0とは異なり、
− m’およびp’の少なくとも1つは0とは異なり、
R
1およびR
2は一方は水素であり、かつ他方は式−S−L
4−R
5のチオエーテル基であり、R
3およびR
4は一方は水素であり、かつ他方は式−S−L
4−R
5のチオエーテル基であり、ここで
L
4はリンカーであり、好ましくはこのリンカーは単結合およびアミノカルボニル、アシルアミノ、アルキルアミノカルボニル、アミノチオカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アルキル、アリール、シクロアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルオキシ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)基、ペプチドまたはそれらの組み合わせから選択され、任意に−O−、−S−、−SO
2−またはそれらの組み合わせによって中断または終端していてもよく、任意にL
4をR
5に結合させる反応基の残基をさらに含み、
R
5は水素原子であるか、あるいは
− アンモニウム、ホスホニウムおよびイミダゾリウム型の有機塩ならびにプロトン化可能な中性複素環の群から選択される極性基、
− N3、アミノ、アルキルアミノ、COOH、アミド、マレイミド、アルキン、SH、OH、エステル、活性化エステル、活性化カルボン酸、ハロ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アクリルアミド、アルデヒド、ケトン、アセタール、ケタール、無水物、チオシアネート、イソチオシアネート、イソシアネート、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラゾン、エーテル、オキシド、シアネート、ジアゾ、ジアゾニウム、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、硫酸、スルフェン酸、アミジン、イミド、イミン、イミデート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、亜硫酸、エナミン、イナミン、尿素、イソ尿素、セミカルバジド、カルボジイミドおよびカルバメート基を含む群から選択される反応基、または
− プロドラッグ、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、酵素、多糖類、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、蛍光体、発色団、放射性同位体、カルボランおよびそれらの組み合わせから選択される生理活性基である)
の生成方法であって、
i)式(I)の化合物:
【化7】
(式中、L
1、L
2、L
3、Z、a、n、n’、m、m’、p、p’、qおよびq’は上に定義されているとおりである)
をチオールR
5−L
4−SH(式中、L
4およびR
5は上に定義されているとおりである)と少なくとも1種のラジカル開始剤の存在下で反応させる工程と、
ii)任意に、反応(i)の生成物をプロドラッグ、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、酵素、多糖類、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、蛍光体、発色団、放射性同位体およびカルボランおよびそれらの組み合わせから選択される生物活性分子と反応させる工程と
を含む方法にも関する。
【0084】
化合物(II)について上に定義されているL
1、L
2、L
3、L
4、Z、a、n、n’、m、m’、p、p’、qおよびq’、R
1、R
2、R
3およびR
4の好ましい実施形態は、本方法および試薬、すなわち化合物(I)および化合物R
5−L
4−SHにも当てはまる。
【0085】
一実施形態によれば、工程(i)は一般に過剰なチオールの存在下で行う。一実施形態によれば、工程(i)を1.1当量〜50当量、好ましくは1.1〜5当量、より好ましくは1.1〜4当量の量のチオールの存在下で行う。一実施形態によれば、式(I)の化合物が不飽和を含む場合、工程(i)を1.1当量以上の量のチオールの存在下で行う。一実施形態によれば、式(I)の化合物が2個の不飽和を含む場合、工程(i)を2.1当量以上の量のチオールの存在下で行う。一実施形態によれば、式(I)の化合物がx個の不飽和を含む場合、工程(i)を(x+0.1)当量以上の量のチオールの存在下で行う。
【0086】
一実施形態によれば、工程(i)を一般に少なくとも1種のラジカル開始剤の存在下で行う。一実施形態によれば、ラジカル開始剤を熱活性化または光活性化させることができ、より好ましくは、熱活性化されたラジカル開始剤はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(ABAH)またはアゾビス−シアノペンタン酸などのジアゾ化合物を含む群から選択され、光活性化ラジカル開始剤は、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、例えばα−ヒドロキシシクロアルキルフェニルケトンまたは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパノン、ジアルコキシアセトフェノン、例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α−ヒドロキシ−もしくはα−アミノ−アセトフェノン、例えば(4−メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、好ましくはアセトフェノンおよびアセトフェノン誘導体、より好ましくは2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを含む群から選択される。
【0087】
一実施形態によれば、工程(i)は一般に少なくとも1種の熱活性化されたラジカル開始剤の存在下で行う。別の実施形態によれば、工程(i)は一般に少なくとも1種の光活性化ラジカル開始剤の存在下で行う。好ましい実施形態によれば、工程(i)を2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンの存在下で行う。好ましい実施形態によれば、工程(i)を光活性化ラジカル開始剤の存在下で行う。好ましい実施形態によれば、工程(i)を2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンの存在下でのみ行う。
【0088】
一実施形態によれば、工程(i)を式(I)の非分岐鎖状両親媒性脂質に対して0.1モル%〜50モル%の含有量、好ましくは式(I)の非分岐鎖状両親媒性脂質に対して0.1モル%〜25モル%の含有量、さらにより好ましくは式(I)の非分岐鎖状両親媒性脂質に対して0.5モル%〜15モル%の含有量のラジカル開始剤の存在下で行う。
【0089】
一実施形態によれば、工程(i)を溶媒の非存在下で行う。一実施形態によれば、工程(i)を周囲温度で行う。一実施形態によれば、工程(i)を紫外線下で行う。一実施形態によれば、工程(i)を不活性雰囲気下で行う。一実施形態によれば、得られた化合物を当業者によって知られているクロマトグラフ法を用いて精製する。
【0090】
使用
本発明は、本発明に係る式IIの化合物、リポソームおよび/またはリポプレックスと生理学的に許容される媒体とを含む組成物に関する。一実施形態によれば、本発明の組成物は薬学的に許容される媒体と組み合わせた式IIの化合物を含む医薬組成物である。一実施形態によれば、式IIの化合物は式IIaの化合物である。別の実施形態によれば、式IIの化合物は式IIbの化合物である。
【0091】
本発明は、本発明に係る式IIの化合物、リポソームおよび/またはリポプレックスを含む薬に関する。本発明は式IIの化合物を含む薬に関する。一実施形態によれば、式IIの化合物は式IIaの化合物である。別の実施形態によれば、式IIの化合物は式IIbの化合物である。
【0092】
以下に記載されている使用は、本発明に係る式IIの化合物、医薬組成物または薬の使用に関する。
【0093】
本発明は、融合特性の改善が望まれる用途のための本発明の式IIの化合物または本発明のリポソームまたは本発明のリポプレックスの使用にも関する。
【0094】
本発明は、インビトロまたはインビボでのベクター化、すなわち目的の分子の膜貫通移動のためのその使用のための本発明に係るリポソームまたはリポプレックスにも関する。従って本発明は、インビトロまたはインビボでのベクター化、すなわち目的の分子の膜貫通移動のための本発明に係るリポソームまたはリポプレックスの使用にも関する。
【0095】
一実施形態によれば、本発明は、インビボでのトランスフェクションにおけるその使用のため、プロドラッグ、増感剤または造影剤の送達のため、遺伝子治療、局所治療または殺菌作用のための本発明の式IIの化合物または本発明の化合物の製剤化によって得られるリポプレックスに関する。
【0096】
一実施形態によれば、本発明は、インビボでの細胞のトランスフェクションのためのその使用のための本発明の式IIの化合物に関する。一実施形態によれば、本発明は、インビボでの細胞のトランスフェクションのためのその使用のための本発明の式IIの化合物の製剤化によって得られるリポプレックスに関する。一実施形態によれば、本発明はインビトロでの細胞のトランスフェクションのための本発明の式IIの化合物または本発明の化合物の製剤化によって得られるリポプレックスの使用に関する。
【0097】
一実施形態によれば、本発明はプロドラッグ、増感剤または造影剤の送達のためのその使用のための本発明の式IIの化合物に関する。一実施形態によれば、本発明は、プロドラッグ、増感剤または造影剤の送達のためのその使用のための本発明に係るリポソームまたはリポプレックスに関する。一実施形態によれば、本発明はプロドラッグ、増感剤または造影剤の送達のための本発明の化合物または本発明の化合物の製剤化によって得られるリポプレックスの使用に関する。
【0098】
一実施形態によれば、本発明は、トランスフェクションにおけるその治療的使用のため、プロドラッグ、増感剤または造影剤の送達のため、遺伝子治療、局所治療または殺菌作用のための本発明の式IIの化合物に関する。一実施形態によれば、本発明は、トランスフェクションにおけるその治療的使用のため、プロドラッグ、増感剤または造影剤の送達のため、遺伝子治療、局所治療または殺菌作用のための本発明のリポソームに関する。一実施形態によれば、本発明は、トランスフェクションにおけるその治療的使用のため、プロドラッグ、増感剤または造影剤の送達のため、遺伝子治療、局所治療または殺菌作用のための本発明のリポプレックスに関する。一実施形態によれば、本発明は、遺伝子治療、局所治療(皮膚科、眼科)、美容または殺菌作用のための本発明の化合物、リポソームまたは本発明の化合物の製剤化によって得られるリポプレックスの使用に関する。一実施形態によれば、本発明は、遺伝子治療、局所治療または殺菌作用のための本発明の化合物、リポソームまたは本発明の化合物の製剤化によって得られるリポプレックスの治療的使用に関する。
【0099】
一実施形態によれば、本発明は、美容治療のための本発明の化合物、リポソームまたは本発明の化合物の製剤化によって得られるリポプレックスの使用に関する。
【0100】
一実施形態によれば、式IIの化合物は式IIaの化合物である。別の実施形態によれば、式IIの化合物は式IIbの化合物である。
【0101】
式IIにおいてR
5がプロドラッグである場合、本発明は、対応する薬物によって標的化される疾患の治療および/または予防のための式IIの化合物の使用に関する。式IIにおいてR
5がプロドラッグである場合、本発明は、前記疾患を改善および/または予防するのに有効な量での本発明に係る式IIの化合物またはリポソームまたはリポプレックスの対象への投与を含む、対応する薬物によって標的化される疾患の治療および/または予防方法にも関する。式IIにおいてR
5がプロドラッグである場合、本発明は対応する薬物によって標的化される疾患の治療および/または予防のための薬の調製のための式IIの化合物の使用にも関する。
【0102】
一実施形態によれば、当該対象は動物、より好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。
【0103】
一実施形態によれば、式IIの化合物、本発明のリポソームおよびリポプレックスを注射に適した形態で製剤化する。この注射は、皮内、筋肉内、腹膜内または皮下であってもよい。一実施形態では、式IIの化合物、リポソームおよびリポプレックスを例えば無菌水溶液、分散液、乳濁液、懸濁液などの溶液の形態で製剤化する。微生物によるあらゆる汚染を防止するために、抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チオメルサールおよび他の同様の薬剤などの1種または幾種かの防腐剤を本医薬組成物に添加することができる。また、注射によって引き起こされる痛みを減らすために糖類または塩化ナトリウムなどの1種以上の等張剤を本医薬組成物に添加することが好ましい。
【実施例】
【0105】
本発明を非限定的に示す以下の実施例を読めば本発明についてさらに深く理解するであろう。
【0106】
合成
【0107】
略語
DNA:デオキシリボ核酸
RNA:リボ核酸
siRNA:低分子干渉RNA
mRNA:メッセンジャーRNA
℃:摂氏
DOTMA:N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド
DCC:N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
DMEM:ダルベッコ変法イーグル培地
eq.:当量
EGFP−Luc:高感度緑色蛍光タンパク質およびルシフェラーゼ
μs:マイクロ秒
Ppm:100万分の1
CR:電荷比
NMR:核磁気共鳴
TMS:テトラメチルシラン
UV:紫外線
【0108】
材料
通常の方法に従って、使用する溶媒を精製した。
【0109】
開始基質はAldrich社、TCI社またはAlfa Aesar社によって供給されたものであり、どんなさらなる精製も行わずに使用した。2−((ビス(E)−オクタデカ−9−エン−1−イルオキシ)ホスホリル)アミノ)−N,N,N−トリメチルエタナミニウムヨージド(試薬I−1)を、文献(Le Corre, S.S.; Berchel, M.; Belmadi, N.; Denis, C.; Haelters, J.P.; Le Gall, T.; Lehn, P.; Montier, T.; Jaffres, P.A. Org. Biomol. Chem., 2014, 12, 1463-1474)に従って合成した。
【化8】
【0110】
全ての化合物を核磁気共鳴分光法(NMR)
1H(500.13または400.133または300.135MHz)、
13C(125.773または75.480MHz)および
31P(161.970または121.498MHz)(Bruker AC 300、Avance DRX 400 およびAvance DRX 500分光計)によって特性評価した。Jカップリング定数はヘルツで示されている。以下の略語が使用されている(s:一重線、d:二重線、t:三重線、q:四重線、qt:五重線、m:多重線、dd:二重線の二重線、dt:三重線の二重線)。
【0111】
当該化合物を質量分析(Bruker Autoflex MALDI TOF-TOF III LRF200 CID)によっても特性評価した。
【0112】
結果
【0113】
1)双性イオン性試薬の合成
【化9】
【0114】
ジオレイルホスホラミド(1当量)のクロロホルム溶液にプロパンスルホン(1.2当量)を添加する。反応媒体を周囲温度で72時間撹拌する。次いで、得られた粗生成物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製する。
【0115】
本明細書の上に記載されている方法に従って以下の化合物を合成した。
【0116】
化合物I−2:収率:44%,
31P NMR: δ (ppm, 基準 85% H
3PO
4: CDCl
3中0 ppm): 9.4;
1H NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm): 0.85-0.89 (t,
3J
H-H= 6.8 Hz, 6 H, CH
3-CH
3), 1.21-1.29 (m, 46 H, CH
2 脂肪鎖), 1.62-1.65 (m, 4 H, CH
2-CH
2-O-P), 1.96-2.01 (m, 8 H, CH
2-CH=CH-CH
2), 2.19-2.26 (m, 2 H,
+N-CH
2-CH
2-CH
2-S), 2.89-2.91 (m, 2 H,
+N-CH
2-CH
2-CH
2-S), 3.24 (s, 6 H, (CH
3)
2N
+), 3.41-3.47 (m, 2 H,
+N-CH
2-CH
2), 3.51-3.61 (m, 2 H, N-CH
2-CH
2-
+N-CH
2), 3.67-3.72 (m, 2 H, N-CH
2-CH
2-
+N-CH
2), 3.90-3.96 (m, 4 H, CH
2-O-P), 4.82-5.00 (m, 1 H, P-NH), 5.29-5.37 (m, 4 H, CH=CH);
13C NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm): 14.2 (CH
3-CH
2), 25.5 (CH
2 脂肪鎖), 27.2 (CH
2 脂肪鎖), 28.9-30.5 (CH
2 脂肪鎖), 31.9 (CH
2 脂肪鎖), 51.3 ((CH
3)
2N
+), 67.0 (CH
2-O-P), 129.9-130.2 (CH=CH)
【0117】
2)本発明の化合物の合成
【0118】
2.1)両親媒性脂質を用いたクリックケミストリー
【化10】
【0119】
式(I)の化合物(1当量)およびチオール(3.5当量)をガラス管の中で混合し、これを式(I)の化合物が完全に溶解するまで超音波浴に入れる(10〜20分)。この混合物をアルゴンで脱気した後、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(10重量%)を添加する。この溶液を周囲温度でUV下に4時間置く。次いで、得られた粗生成物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製する。
【0120】
本明細書の上に記載されている方法に従って以下の化合物を合成した。
【0121】
化合物II−1:収率:42%(120mg);
31P NMR: δ (ppm, 基準 85% H
3PO
4: CHCl
3中0 ppm) = 8.6;
1H NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CHCl
3中0 ppm) = 0.84-0.91 (m, 12H, CH
3-CH
2), 1.30-1.66 (m, 76H, CH
2 脂肪鎖), 2.43-2.47 (t,
3J
H-H = 8.0Hz, 4H, CH
2-S), 2.50-2.56 (qt,
3J
H-H = 6Hz, 2H, (CH
2)
2CH-S), 3.45 (s, 9H,
+N(CH
3)
3), 3.55-3.63 (m, 2H, CH
2-NH), 3.85-3.88 (m, 2H, CH
2-
+N(CH
3)
3), 3.95-3.99 (m, 4H, CH
2-O-P), 4.40-4.53 (m, 1H, NH);
13C NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CHCl
3中0 ppm) = 13.8 (CH
3-CH
2), 22.3-31.6 (CH
2 脂肪鎖), 34.6 (CH
2-CH-CH
2), 35.9 (CH
2-NH), 45.6 (CH-S), 54.5 (
+N(CH
3)
3), 66.4 (CH
2-
+N(CH
3)
3), 66.8 (d,
2J
C-P = 5.2Hz, CH
2-O-P); MALDI-TOF: C
53H
112N
2O
3PS
2についての[M]
+計算値 = 919.785, [M]
+実測値
= 919.775
【0122】
化合物II−2:収率:65%(150mg);
31P NMR: δ (ppm, 基準 85% H
3PO
4: CHCl
3中0 ppm) = 8.6; NMR
1H: δ (ppm, 基準 TMS: CHCl
3中0 ppm) = 0.85-0.88 (t,
3J
H-H = 6.4 Hz, 12H, CH
3-CH
2), 1.24-1.66 (m, 76H, 脂肪鎖), 2.43-2.47 (t,
3J
H-H = 8.0Hz, 4H, CH
2-S), 2.51-2.55 (qt,
3J
H-H = 8.0Hz, 2H, (CH
2)
2CH-S), 3.45 (s, 9H,
+N(CH
3)
3), 3.50-3.61 (m, 2H, CH
2-NH), 3.83-3.86 (m, 2H, CH
2-
+N(CH
3)
3), 3.95-4.00 (m, 4H, CH
2-O-P), 4.30-4.43 (m, 1H, NH); NMR
13C: δ (ppm, 基準 TMS: CHCl
3中0 ppm) = 13.9 (CH
3-CH
2), 22.5 ppm-31.8 (CH
2 脂肪鎖), 34.8 (CH
2-CH-CH
2), 36.0 (CH
2-NH), 45.8 (CH-S), 54.7 (
+N(CH
3)
3), 66.6 (CH
2-
+N(CH
3)
3), 66.9 (d,
2J
C-P = 5.3Hz, CH
2-O-P); MALDI-TOF: C
65H
136N
2O
3PS
2についての[M]
+計算値 = 1087.975; [M]
+実測値 = 1087.972
【0123】
化合物II−3:収率:58%(150mg);
31P NMR: δ(ppm, 基準 85% H
3PO
4: CHCl
3中0 ppm) = 8.7;
1H NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CHCl
3中0 ppm) = 0.83-0.91 (m, 6H, CH
3-CH
2), 1.25-1.68 (m, 60H, 脂肪鎖), 2.45-2.51 (qt, J
H-H = 6.4Hz, 2H, (CH
2)
2CH-S), 3.43 (s, 9H,
+N(CH
3)
3), 3.48-3.52 (m, 2H, CH
2-NH), 3.68 (s, 4H, CH
2-Ph), 3.83-3.86 (m, 2H, CH
2-
+N(CH
3)
3), 3.96-4.01 (m, 4H, CH
2-O-P), 4.30-4.45 (m, 1H, NH), 7.19-7.33 (m, 10H, CH 芳香族);
13C NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CHCl
3中0 ppm) = 14.1 (CH
3-CH
2), 22.6-31.8 (CH
2 脂肪鎖), 34.5 ((CH
2)
2-CH-S), 35.0 (CH
2-Ph), 45.3 ((CH
2)
2-CH-S), 54.8 ((CH
3)
3N+), 66.6 (CH
2-
+N(CH
3)
3), 67.1 (d,
2J
P-C= 5.3ppm, CH
2-O-P), 126.7 (CH 芳香族), 128.3-129.0 (CH 芳香族), 138.9 (第四級 C); MALDI-TOF: C
55H
100N
2O
3PS
2についての[M]
+計算値 = 931.691; [M]
+実測値 = 931.686
【0124】
化合物II−4:収率:51%(133mg);
31P NMR: δ (ppm, 基準 85% H
3PO
4: CHCl
3中0 ppm) = 8.6;
1H NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CHCl
3中0 ppm) = 0.81-0.87 (t,
3J
H-H = 8 Hz, 6H, CH
3-CH
2), 1.24-1.90 (m, 80H, 脂肪鎖), 2.58-2.62 (m, 4H, CH-S-CH), 3.53 (s, 9H,
+N(CH
3)
3), 3.50-3.60 (m, 2H, CH
2-NH), 3.83-3.85 (m, 2H, CH
2-
+N(CH
3)
3), 3.93-3.98 (m, 4H, CH
2-O-P), 4.30-4.40 (m, 1H, NH);
13C NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CHCl
3中0 ppm) = 14.1 (CH
3-CH
2), 22.6-31.9 (CH
2 脂肪鎖), 34.3 (CH
2 シクロヘキシル), 35.5 ((CH
2)
2-CH-S), 36.2 (CH
2-NH), 42.6 (CH シクロヘキシル), 44.2 ((CH
2)
2-CH-S), 54.9 (
+N(CH
3)
3), 66.7 (CH
2-
+N(CH
3)
3), 67.1 (P-O-CH
2); MALDI-TOF: C
53H
108N
2O
3PS
2についての[M]
+計算値 = 915.753; [M]
+実測値
= 915.741
【0125】
化合物II−5:収率:61%(199mg);
1H NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm) = 0.83-0.87 (t,
3J
H-H = 6.6 Hz, 12H), 1.23-1.24 (m, 73H, CH
2 脂肪鎖), 1.35-1.37 (m, 12H, CH
2 脂肪鎖), 1.46-1.54 (m, 16H, CH
2-CH
2-S, CH
2-CH-S および CH
2 脂肪鎖), 2.41-2.45 (t,
3J
H-H = 7.4 Hz, 4H, CH
2-S), 2.48-2.55 (qt,
3J
H-H = 7.3 Hz, 2H, (CH
2)-CH-S), 3.37-3.56 (m, 15H, OCH
2および
+N(CH
3)
3), 3.65-3.69 (m, 1H, OCH), 3.95-3.99 (m, 2H, OCH
2);
13C NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm) = 14.1 (CH
3-CH
2), 22.7 (CH
2 脂肪鎖), 26.0 (CH
2 脂肪鎖), 26.2 (CH
2 脂肪鎖), 26.8 (CH
2 脂肪鎖), 29.0-29.9 (CH
2 脂肪鎖), 30.35 (CH
2-S-CH), 31.90 (CH
2 脂肪鎖), 34.91 (CH
2 脂肪鎖), 46.88 ((CH
2)
2-CH-S), 54.79 (
+N(CH
3)
3), 67.93 (OCH
2), 68.38 (OCH
2), 69.31 (OCH
2), 72.01 (OCH
2), 73.63 (OCH)
【0126】
化合物II−6:収率:48%(140mg);
31P NMR: δ (ppm, 基準 85% H
3PO
4: CDCl
3中0 ppm): 8.3;
1H NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm): 0.85-0.89 (t,
3J
H-H = 8 Hz, 6 H, CH
3-CH
2), 1.24-1.56 (m, 75 H, CH
2 脂肪鎖), 1.49-1.56 (m, 12 H, CH
2 脂肪鎖), 1.63-1.66 (m, 4 H, CH
2-CH
2-O), 1.95-2.06 (m, 4 H, CH
2-CH
2-OH), 2.43-2.47 (t,
3J
H-H= 7.2 Hz, 4 H, CH
2-S), 2.51-2.54 (m, 2 H, CH-S), 3.44 (s, 9 H, (CH
3)
3N
+), 3.48-3.58 (m, 2 H,
+N-CH
2-CH
2), 3.59-3.63 (t,
3J
H-H= 6.8 Hz, 4 H, CH
2-OH), 3.85-3.88 (m, 2 H, CH
2-O-P), 3.96-4.01 (m, 4 H, CH
2-O-P), 4.51-4.62 (m, 1 H, NH-P);
13C NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm): 14.1 (CH
3-CH
2), 22.6-36.0 (CH
2 脂肪鎖), CH
2-S), 39.2 (CH
2-NH-P), 45.9 ((CH
2)
2-CH-S), 54.8 (
+N(CH
3)
3), 62.8 (CH
2-CH
2-OH), 66.5 (CH
2-
+N(CH
3)
3), 67.2-67.3 (d,
2J
H-H= 22 Hz, CH
2-O-P)
【0127】
化合物II−7:収率:23%(65mg);
31P NMR: δ (ppm, 基準 85% H
3PO
4: CDCl
3中0 ppm): 8.2;
1H NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm): 0.86-0.89 (t,
3J
H-H= 6.4 Hz, 6 H, CH
3-CH
2),
1.24-1.37 (m, 68 H, CH
2 脂肪鎖), 1.46-1.66 (m, 16 H, CH
2 脂肪鎖), 2.29-2.40 (m, 4 H, CH
2-CH
2-OH), 2.44-2.47 (t,
3J
H-H = 7.2 Hz, 4 H, CH
2-S), 2.51-2.53 (m, 2 H, CH-S), 3.45 (s, 9 H, (CH
3)
3N
+), 3.47-3.54 (m, 2 H,
+N-CH
2-CH
2), 3.59-3.63 (t,
3J
H-H = 6.8 Hz, 4 H, CH
2-OH), 3.86-3.88 (m, 2 H, CH
2-NH-P), 3.97-4.02 (m, 4 H, CH
2-O-P), 4.51-4.62 (m, 1 H, NH-P);
13C NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm): 14.1 (CH
3-CH
2), 22.7-36.1 (CH
2 脂肪鎖 および CH
2-S および CH
2-CH
2-OH), 45.9 (CH-S), 54.9 ((CH
3)
3N
+), 62.8 (CH
2-OH), 66.5 (CH
2-NH-P), 67.4-67.5 (d,
2J
P-C = 21 Hz, CH
2-O-P)
【0128】
化合物II−8:収率:51%;
31P NMR: δ (ppm, 基準 85% H
3PO
4: CDCl
3中0 ppm): 9.5,
1H NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm): 0.86-0.88 (t,
3J
H-H= 6.8 Hz, 12 H, CH
3-CH
2), 1.24-1.57 (m, 89 H, CH
2 脂肪鎖), 1.63-1.64 (m, 4 H, CH
2-CH
2-O-P), 2.18-2.26 (m, 2 H,
+N-CH
2-CH
2-CH
2-S), 2.42-2.46 (t,
3J
H-H = 7.4 Hz, 4 H,CH
2-S-CH(CH
2)
2), 2.49-2.54 (st,
3J
H-H = 6.2 Hz, 2 H, CH
2-S-CH(CH
2)
2), 2.88-2.90 (m, 2 H, CH
2-S-O), 3.22 (s, 6 H, (CH
3)
2N
+), 3.42-3.47 (m, 2 H, CH
2-NH), 3.50-3.60 (m, 2 H, P-NH-CH
2), 3.66-3.69 (m, 2 H,
+N-CH
2-CH
2-CH
2-S), 3.91-3.95 (m, 4H, CH
2-CH
2-O-P), 4.81-4.91 (m, 1 H, P-NH);
13C NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm): 14.1 (CH
3-CH
2), 22.7 (CH
2 脂肪鎖), 25.7 (CH
2 脂肪鎖), 26.8 (CH
2 脂肪鎖), 27.0 (CH
2 脂肪鎖), 29.1-30.0 (CH
2 脂肪鎖), 30.4 (CH
2-S-CH(CH
2)
2), 31.9 (CH
2 脂肪鎖), 34.9-35.1 (CH
2 脂肪鎖), 46.0 (CH
2-S-CH(CH
2)
2), 51.5 ((CH
3)
2N
+), 66.9 (CH
2-O-P)
【0129】
化合物II−9:
31P NMR: δ (ppm, 基準 85% H
3PO
4: CDCl
3中0 ppm): 10.1,
1H NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm): 0.85-0.88 (t,
3J
H-H = 6 Hz, 6 H, CH
3-CH
2), 1.27-1.55 (m, 56 H, CH
2 脂肪鎖), 1.62-1.37 (m, 4 H, CH
2-CH
2-O-P), 1.79-1.85 (m, 4 H, CH
2-S-CH-(CH
2)
2), 1.99-2.14 (m, 2 H, HO-CH
2-CH
2-CH
2-S), 2.21 (s, 6 H, (CH
2)
2-N), 2.36-2.39 (t,
3J
H-H= 5.8 Hz, 2 H, CH
2-S-CH-(CH
2)
2), 2.55-2.61 (m, 6 H, HO-CH
2-CH
2-CH
2-S および CH
2-CH
2-N), 2.92-2.98 (m, 2 H, P-NH-CH
2), 3.20-3.31 (m, 1H, P-NH-CH
2), 3.71-3.76 (m, 4 H, HO-CH
2-CH
2-CH
2-S), 3.93-3.99 (m, 4 H, CH
2-O-P)
【0130】
2.2)生理活性基による官能化
【化11】
【0131】
エステルRC(O)OH(2当量)および分岐鎖状化合物II(1当量)を無水ジクロロメタン中で混合する。DCC(2.2当量)を添加した後、反応媒体を一晩撹拌する。得られた化合物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製する。
【0132】
方法Cに従って以下の化合物を合成した。
【0133】
化合物II−10:収率:15%;
31P NMR: δ (ppm, 基準 85% H
3PO
4: CDCl
3中0 ppm): 10.1;
1H NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm): 0.85-0.89 (m, 18 H, CH
3-CH
2 および (CH
3)
2-CH), 1.26-1.48 (m, 68 H, CH
2 脂肪鎖 および CH
3-CH-Ph), 1.63-1.66 (m, 4 H, CH
2-CH
2-O), 1.79-1.84 (m, 4 H, S-CH
2-CH
2-CH
2-O), 2.24 (s, 6 H, (CH
3)
2-N), 2.38-2.45 (m, 12 H, CH
2-C(O)-O-CH
2, CH
2-S および CH-S および CH
2-N(CH
3)
2), 3.89-3.02 (m, 4 H, CH
2-NH-P), 3.34-3.42 (m, 1 H, NH-P), 3.66-3.68 (m, 2 H, CH
3-CH-Ph), 3.94-3.96 (m, 4 H, CH
2-O-P), 4.12-4.15 (t,
3J
H-H = 6.3 Hz, 4 H, CH
2-O-C(O)-CH
2), 7.06-7.08 (d,
3J
H-H = 8 Hz, 4 H, H
2 H
6 / H
2' H
6'), 7.17-7.19 (d,
3J
H-H = 8 Hz, 4 H, H
3 H
5 / H
3' H
5');
13C NMR: δ (ppm, 基準 TMS: CDCl
3中0 ppm): 13.4 (CH
3-CH
2), 17.5 (CH
3-CH-Ph), 22.4 ((CH
3)
2-CH), 22.65 (CH
2 脂肪鎖), 25.6 (CH
2 脂肪鎖), 26.5-26.7 (CH
2 脂肪鎖 および CH
2-S), 29.0-31.9 (CH
2 脂肪鎖), 34.8 (CH
2 脂肪鎖), 38.4 (CH
2-NH-P), 44.8-46.0 (CH
2-N(CH
3)
2 および CH
2-N(CH
3)
2 および CH-CH
3), 59.5 (CH-S), 63.3 (CH
2-O-C(O)-CH
2), 66.3 (CH
2-O-P), 127.1 (C
3 C
5 / C
3' C
5'), 129.3 (C
2 C
6 / C
2' C
6'), 137.7 (C
4 / C
4'), 140.4 (C
1 / C
1'), 174.6 (CH
2-C(O)-O-CH
2)
【0134】
リポソームおよびリポプレックスの物理化学的特性の研究
【0135】
1)構造的構成−
31P NMRによる研究
【0136】
− 試料の調製
カチオン性脂質の原液をクロロホルム中で調製する。50mg〜100mgの脂質重量に対応する体積の原液を溶血管の中にピペットで移し、脂質膜を得るようにクロロホルムをN
2流下で蒸発させる。次いで、500μLの水を添加し、この混合物を脂質膜が完全に分散するまで超音波にかける。この混合物を一晩溶解する。次いで、100mg.mL
−1の濃度を有する溶液を得るためにある体積の蒸留水を添加する。試料を確実に平衡させるために、3回のサイクル(−198℃/50℃)を行い、この試料を−198℃(液体窒素)で5分間置き、次いでこの試料を50℃の水浴中に30分間置き、ボルテックスで撹拌する。
【0137】
− 取得のための条件
ハーンエコー法(90°−τ−180°−τ−取得)を用いて
31P NMRスペクトルを取得した。取得パラメータは、「200KHzのスペクトルウィンドウ、4.88μsの持続期間でのパルスπ/2、5sの再循環期間および40μsのエコー期間」であった。取得回数は試料の体積および取得温度によって決まり、128〜1700回のスキャンである。試料の温度を30分間平衡させた後、取得を開始する。スペクトルウィンドウ全体にわたってローレンツ型ノイズを濾過した後、エコーの頂点に対してフーリエ変換を行う。ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)小胞は
31P NMRにおいて外部基準として機能する。TOPSPINソフトウェアおよびdmfit−2009を用いてスペクトルのデコンボリューションを行った(Massiot D, Fayon F, Capron M, King I, Le Calve S, Alonso B,ら, Magn. Reson. Chem., 2002, 40, 70-76)。
【0138】
− 結果
図1は、周囲温度での
31P NMR(ハーンエコー法)により、非分岐鎖状化合物(I−1)が水和された媒体の中に自己組織化されてラメラ形態をなすが、本発明の非分岐鎖状化合物(チオール−エン型の反応によって得られる分岐、化合物II−1、II−2、II−3、II−4)がヘキサゴナル構造をなす超分子凝集体を生じることを非常に明確に示している。同じ条件で記録した非分岐鎖状カチオン性化合物I−1と双性イオン性かつ分岐鎖状共脂質II−8との1/1(モル比)共製剤化の
31P NMRスペクトルから、共脂質によりヘキサゴナル構造の超分子凝集体の形成が生じることが分かる。従ってこの構造化は、チオール−エン反応によって分岐された中性脂質(双性イオン性)の共製剤化中のその存在によって誘導することができる。
【0139】
2)サイズおよびゼータ電位の測定
【0140】
− 試料の調製
カチオン性脂質を、脂質膜の水和方法によってリポソーム溶液中で製剤化した。最初に、カチオン性脂質の濃縮溶液の画分をガラス管の中に入れ、蒸発させて薄い脂質膜を得る。次いで、1mLの水をこの膜に添加し、この膜を4℃で3日間水和させる。次いで、この溶液をボルテックス撹拌し(1分間)、45kHzの超音波下に置く(30〜60分)。次いで、150μLのリポソーム溶液を1.5mLの滅菌水で希釈する。このリポソーム溶液の濾過(200μm)後に、リポソームおよびリポプレックスのサイズおよびゼータ電位を測定する。
【0141】
− 取得のための条件
リポソームおよびリポプレックスのサイズおよびゼータ電位(ξ)を製剤の好適な希釈後にZetasizer Nano ZS (Malvern Instruments社)を用いて25℃で測定した。リポプレックスの測定のために、各試験では、0.5〜8.0の範囲の電荷比を有するリポプレックスを形成するために必要な量の研究対象のカチオン性脂質を含む40mgのプラスミドDNA水溶液を使用した。リポソームの測定のために、水中で1.0の電荷比を有する混合物と当量の脂質量を使用した。
【0142】
− 結果
【表2】
【0143】
このサイズデータは、脂質膜の水和方法およびその後の超音波処理工程に従って形成される超分子凝集体が90〜230nmの非常に普通のサイズを有することを示している。多分散性指数(Pdl)は試料中のこれらのサイズの比較的均質な性質を反映している。常に陽性であるこれらの試料のゼータ電位は、カチオン性両親媒性物質または少なくとも1種のカチオン性両親媒性物質を含む共製剤の通常の値に一致している。
【0144】
生物学的研究
【0145】
材料
細胞および培養条件。不死化マウス筋芽細胞であるC2C12細胞株を一例として使用する。これらの細胞を補体除去した血清(10%)、L−グルタミン(2mM)およびペニシリン(100U/mL)+ストレプトマイシン(100μg/mL)を添加したDMEM培地(Lonza社)で培養する。これらの細胞を37℃のインキュベーター中、湿雰囲気および5%CO
2下に維持する。
【0146】
プラスミドDNA。これらの試験ではルシフェラーゼプラスミドレポーターpEGFP−Luc(Clontech社)を使用する。
【0147】
方法
リポプレックスの形成。0.5〜8.0の電荷比(+/−)を特徴とするリポプレックス[脂質/DNA]を形成するために、異なる量の所与の本発明の化合物を5μgのDNAと混合することによりリポプレックスをOptiMEM(Gibco社)中で調製する。
【0148】
DNA凝縮。臭化エチジウムをDNAの中に挿入した後、試験対象の化合物と混合する。次いで、DNA凝縮をアガロースゲル電気泳動で評価する。DNAのみ(複合体化されていない)を基準として使用する。
【0149】
インビトロでのトランスフェクション。本化合物をインビトロでの培養細胞の一過性のトランスフェクションについて試験する。使用する手順は、いくつかの科学文献に以前に記載されたものである(Felgner P.L.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1987, 84, 7413−7417; Le Gall T.ら, J. Med. Chem. 2010, 53, 1496−1508)。簡単に言うと、実際のトランスフェクションの24時間前に、これらの細胞を1ウェル当たり12,500細胞の密度で96ウェルプレートに播種する。この複合体[脂質/DNA]を1ウェル当たり0.25μgのDNAの割合で細胞培地に直接塗布する。約36時間のインキュベーション後に、培地を除去し、細胞を1ウェル当たり75μLの受動溶解緩衝液(Promega社)(0.5×)で溶解する。−20℃での24時間の貯蔵後に、各溶解物を使用して総タンパク質をアッセイし、ルシフェラーゼ活性を測定し、細胞生存率試験を行う。
【0150】
トランスフェクション効率。ルシフェラーゼ活性をルシフェラーゼアッセイシステムキット(Promega社)を用いて決定する。総タンパク質をBCAアッセイ(Interchim社)比色定量試験を用いて定量化する。ルシフェラーゼ活性を総タンパク質量で割ってトランスフェクション効率を計算し、これを1mgのタンパク質当たりの相対的光単位(RLU/mg)として表す。
【0151】
細胞生存率。細胞生存率を、Vialightキット(Lonza社)を用いて評価する。対照細胞(未処理)を基準(100%生存率)として使用する。
【0152】
結果
DNAを凝縮する化合物の能力を、臭化エチジウムの存在下でインキュベートした場合の臭化エチジウムの蛍光特性を用いて評価する。DNA凝縮は挿入した臭化エチジウムの排除を伴う。従って生じる蛍光の減少により、所与の化合物のおかげで得られるDNAのコンパクションの程度に関する情報が得られる。
【0153】
図2は、本発明の分岐鎖状化合物はDNAを圧縮するが非分岐鎖状化合物(I−1)よりも完全性が低いことを示している。
【0154】
次いで、リポプレックスをインビトロでの細胞トランスフェクションにおいて使用した。
図3は、本発明に係る異なる分岐鎖状カチオン性両親媒性脂質(II−2、II−4およびII−5)またはI−1またはDOTMAなどの非分岐鎖状カチオン性両親媒性脂質から形成されるリポプレックスを用いて、C2C12細胞のインビトロでのトランスフェクションによって得られる結果を示す。
【0155】
試験対象の化合物は全て、プラスミドDNAをトランスフェクションが比較的難しいことが知られている細胞であるC2C12細胞内部に送達させるのに有効である。しかし、本化合物を直鎖状脂肪鎖I−1と比較した場合、基準よりも最大40倍の増加で分岐鎖状脂肪鎖II−2およびII−4を含む化合物により有意により高いトランスフェクション効率を得ることが可能となる(
図3)。さらに、
図4に示す良好な細胞生存率を維持しながらも、これらのより高い効率が得られる。
【0156】
DOTMAと比較した場合、分岐鎖状脂肪鎖II−5を含む誘導体はより低いトランスフェクション効率しか達成しないが、高い電荷比であっても良好な細胞生存率を維持することが可能となる(
図5)。
【0157】
これらの結果は、カチオン性脂質の脂肪鎖の分岐により開始カチオン性脂質および導入される分岐に従ってトランスフェクション力を高め、かつ/または生体適合性を高める、すなわちその毒性を下げることが可能になり得ることを示している。