特許第6980235号(P6980235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980235高エネルギー密度および長期サイクル寿命を有するリチウム硫黄電池を可能にする再生可能ポリスルフィド捕捉層およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980235
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】高エネルギー密度および長期サイクル寿命を有するリチウム硫黄電池を可能にする再生可能ポリスルフィド捕捉層およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/403 20210101AFI20211202BHJP
   H01M 50/406 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/454 20210101ALI20211202BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20211202BHJP
【FI】
   H01M50/403 D
   H01M50/403 A
   H01M50/406
   H01M50/434
   H01M50/44
   H01M50/451
   H01M50/454
   H01M50/457
【請求項の数】5
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2019-542702(P2019-542702)
(86)(22)【出願日】2018年2月7日
(65)【公表番号】特表2020-507896(P2020-507896A)
(43)【公表日】2020年3月12日
(86)【国際出願番号】US2018017155
(87)【国際公開番号】WO2018148233
(87)【国際公開日】20180816
【審査請求日】2021年2月5日
(31)【優先権主張番号】62/456,936
(32)【優先日】2017年2月9日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(73)【特許権者】
【識別番号】518262866
【氏名又は名称】フォード・チア・インターナショナル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユンフェン・ル
(72)【発明者】
【氏名】ジエングオ・シュ
(72)【発明者】
【氏名】リ・シェン
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−531968(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0056493(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0104690(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0092241(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0235240(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/403
H01M 50/406
H01M 50/434
H01M 50/44
H01M 50/451
H01M 50/454
H01M 50/457
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リスルフィド捕捉層(RSL)を製造する方法であって、
水熱反応を使用してカーボンナノチューブ(CNT)と絡み合った金属酸化物ナノワイヤの複合材料を合成するステップと、
超音波処理によりエタノール中にCNTおよびCNT/金属酸化物複合材料を分散させてCNT懸濁液及びCNT/金属酸化物複合材料懸濁液を別々に形成するステップと、
前記CNT懸濁液、前記CNT/金属酸化物複合材料懸濁液、および前記CNT懸濁液セパレータ上に順にろ過して二層のCNTの間に挟持されたCNT/金属酸化物複合材料を含む三層のRSLを形成するステップとを含み、
前記金属酸化物ナノワイヤが、Vから作製される、方法。
【請求項2】
前記CNT懸濁液及び前記CNT/金属酸化物複合材料懸濁液からCNTを絡み合わせて、電子伝導のためのCNTネットワークを形成するステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
第1の所定の時間、第1の温度で前記三のRSLを乾燥させるステップと、
前記三のRSLを直径を有する円形状に打ち抜くステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
合成は以下を含む、請求項1に記載の方法:
タバナジン酸アンモニウムおよびE20PO70EO20、2モラー(M)のHClを含む脱イオン(DI)水に分散させて混合物を形成するステップと、
活性化されたCNTを前記混合物に追加し、第1の時間超音波処理をするステップと、
前記混合物を室温で第2の時間撹拌するステップと、
前記混合物をオートクレーブに移すステップと、
前記混合物を第2の温度で第2の所定時間加熱するステップと
前記混合物を脱イオン水とエタノールとで3回すすぐステップと、
前記混合物を真空中で第3の温度で乾燥するステップ。
【請求項5】
前記セパレータ上の前記RSLの担持量、0.4−0.6mg cm−2である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
このPCT出願は、Yunfeng Lu等による、発明の名称が「REGENERATIVE POLYSULFIDE−SCAVENGING LAYERS ENABLING LITHIUM− SULFUR BATTERIES WITH HIGH ENERGY DENSITY AND PROLONGED CYCLING LIFE AND METHODS OF MAKING SAME」である、2017年2月9日に提出された米国仮特許出願第62/456,936号の優先権および利益を主張する。上記出願の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
このPCT出願は、2018年2月6日に出願された米国特許出願第15/889,603号にも関し、この出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
特許、特許出願、および様々な出版物を含み得るいくつかの参考文献が、本発明の説明において引用されかつ議論される。そのような参考文献の引用および/または議論は、単に本発明の説明を明確にするために提供されており、そのような参考文献の何れについても本明細書に記載の発明の「先行技術」であることを認めるものではない。この明細書において引用されかつ議論されるすべての参考文献はその全体が、各参考文献が参照により個々に組み込まれたのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。表記に関して、以降、[n]は参照リストで引用されたn番目の参考文献を表す。例えば、[1]は、参考文献リストにおいて引用される第1の参考文献、すなわち、Manthiram,A.;Fu,Y.;Chung,S.−H.;Zu,C;Su,Y.−S.Rechargeable Lithium−Sulfur Batteries. Chem.Rev.2014,114,11751−11787を表す。
【0004】
技術分野
本発明は、概して、再生可能ポリスルフィド捕捉層の製造に関し、より具体的には、高エネルギー密度および長サイクル寿命を有するリチウム硫黄(Li−S)電池を可能にする再生可能ポリスルフィド捕捉層を製造するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0005】
背景技術
本明細書で提供される背景の説明は、本発明の背景を一般的に提示することを目的とする。発明のセクションの背景において議論された主題は、単に発明のセクションの背景での言及の結果として先行技術であると想定されるべきではない。同様に、発明セクションの背景において言及された問題、または発明セクションの背景の主題に関連する問題は、従来技術において以前から認識されてきたと想定すべきではない。発明セクションの背景における主題は、それ自体が発明でもあり得る様々な方法を単に表している。発明セクションの背景に記載されている限りにおいて、現在命名されている発明者の仕事、並びに他のやり方では出願時に先行技術として認められない可能性のある説明の態様は、本発明に対する先行技術として明示的もまたは黙示的にも認められない。
【0006】
高い理論エネルギー容量、環境への優しさ、および低コストで注目されるリチウム硫黄(Li−S)電池は、次世代エネルギー貯蔵に関して大きな可能性を有している[1、2]。しかしながら、Li−S電池の幅広い適応は、重量エネルギー密度が低く、サイクル寿命が短いことにより妨げられている。制限は主に、低い電子/イオン伝導率、硫黄化学種の大きな体積変化、シャトル効果によりもたらされる。サイクル中、リチウムポリスルフィド(Li、n=4−8)が電池全体に拡散し、リチウム金属アノードとの寄生反応を引き起こし、その結果、電池のサイクル寿命を損なう可能性がある[3]。
【0007】
そのような制限に対処するために広範な努力がされてきた。1つの焦点は、硫黄を導電性足場に浸透させることである[4−10]。放電プロセス中に連続的に生成されるポリスルフィドは、電池全体に拡散する可能性がある。拡散を抑制するために、様々な材料がセパレータ上にコーティングされてきた。たとえば、スルホン化された部分(−SO)を持つナフィオン(登録商標)のポリマー層[11−13]は、静電反発を通じてポリスルフィドアニオンの拡散を阻止し得る。しかしながら、十分な阻止効果を達成するには、高コストのナフィオン(登録商標)の含量を高めることが必要である(例えば、0.53mg cm−2の硫黄を含むカソードの場合、0.7mg cm−2のナフィオン(登録商標)を含む)[12]。V層である金属酸化物層は、Liイオンの効果的な輸送を可能にする一方で、ポリスルフィドの拡散を阻止する[14]。しかしながら、そのような無機コーティングは、一般的にゾルゲル法によって実施され、脆くかつ欠陥を有することが多い。さらに、炭素コートされたセパレータに関する広範な検討が行われてきており、吸着剤としてカーボンナノチューブ(CNT)[15−20]、グラフェン[21、22]、カーボンブラック[23−25]、カーボンファイバ[26]、多孔質炭素[27−30]、並びに炭素複合材料および非反応性無機部分(例えば、Al[31]、TiO[32]、およびSiO[33])を使用する。ポリスルフィドの物理吸着を通して、そのような炭素コートされたセパレータはシャトル効果の軽減を助けるが、有効性および性能向上は、硫黄担持量が低い(2mg cm未満−2)カソードにほぼ制限される。そのため、高担持カソード(6mg cm−2を超える)に対して効果的なポリスルフィド阻止層を開発し、高比エネルギー(350Wh.kg−1を超える)および長サイクル寿命(100サイクルを超える)を実現することは依然として困難である[34]。
【0008】
したがって、前述の欠陥および不備に対処するための、これまで対処されていない必要性が当技術分野に存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の概要
本発明の目的の1つは、高エネルギー密度および長いサイクル寿命を有するリチウム硫黄電池を可能にする再生可能ポリスルフィド捕捉層(RSL)を製造することである。
【0010】
特定の態様において、本発明は、再生可能ポリスルフィド捕捉層(RSL)に基づく効果的なポリスルフィド阻止方法を開示し、該層は、サイクルの間にポリスルフィドの拡散を動的に阻止し、かつ自己再生することができる。
【0011】
一態様では、本発明は、RSLを製造する方法に関する。この方法は、カーボンナノチューブ(CNT)の膜で金属酸化物のナノワイヤまたはナノ結晶を埋め込むステップ;および高エネルギー密度および長いサイクル寿命を有するリチウム硫黄電池を実現するために、埋め込まれた金属酸化物のナノワイヤまたはナノ結晶と膜とでRSLを形成するステップを含む。
【0012】
一実施形態において、金属酸化物のナノワイヤまたはナノ結晶および膜は、連続繊維構造体を形成する。
【0013】
一実施形態では、金属酸化物のナノワイヤまたはナノ結晶は、直径が約30ナノメートルの多孔質である。金属酸化物はVを含む。
【0014】
一実施形態では、金属酸化物のナノワイヤまたはナノ結晶は、層状結晶構造体である。
【0015】
一実施形態では、RSL中のCNTの重量パーセントは約9.8%である。
【0016】
一実施形態では、膜は柔軟かつ導電性である。
【0017】
一実施形態では、RSLは15μmの厚さを有し、中央にVリッチ層で挟まれた多孔質CNT層を含む。
【0018】
一実施形態では、この方法は、硫黄カソードの層とセパレータとの間にRSLを配置するステップをさらに含む。
【0019】
一実施形態では、膜で金属酸化物のナノワイヤまたはナノ結晶を埋め込む位置は、膜の中央にある。
【0020】
一実施形態では、放電中に、生成されたままのポリスルフィドがRSLに吸着されまたはRSLと反応し、RSL上に固定化され、ポリスルフィド−RSL複合体と表される。そして、その後の充電プロセスにより、固定化されたポリスルフィド−RSL複合体が除去され、RSLが再生され、生成されたままのポリスルフィドの動的阻止が可能となる。
【0021】
別の態様において、本発明は、再生可能ポリスルフィド捕捉層(RSL)を製造する方法に関し、該方法は、水熱反応を使用してカーボンナノチューブ(CNT)と絡み合った金属酸化物ナノワイヤの複合材料を合成するステップと、超音波処理によりエタノール中にCNTおよびCNT/金属酸化物複合材料を分散させるステップと、ポリプロピレン膜を介してCNT、CNT/金属酸化物複合材料の分散液、およびCNTをろ過するステップと、RSLを製造するために柔軟な三層膜を形成するステップとを含む。
【0022】
一実施形態では、金属酸化物ナノワイヤはVから作製される。
【0023】
一実施形態では、この方法は、分散からCNTを絡み合わせて、効果的な電子伝導のためのCNTネットワークを形成し、それにより、CNT/V RSLとの酸化還元反応の実施を可能にするステップをさらに含む。
【0024】
一実施形態では、この方法は、分散後に以下のステップをさらに含む:第1の濃度を有するCNT懸濁液および第2の濃度を有するCNT/V懸濁液をそれぞれ形成するステップ、CNT懸濁液の第1のボリュームおよびCNT/V懸濁液の第2のボリュームを選択するステップ、およびCNT懸濁液の第1のボリュームおよびCNT/金属酸化物懸濁液の第2のボリュームを、ポリプロピレン膜を通してろ過するステップ。
【0025】
一実施形態では、この方法は、第1の所定の時間、第1の温度で柔軟な三層膜を乾燥させるステップ、および柔軟な三層膜を直径を有する円形状に打ち抜くステップをさらに含む。
【0026】
一実施形態では、合成は以下を含む:混合物を形成するために、第1の質量のメタバナジン酸アンモニウムおよび第2の質量のP123(EO20PO70EO20)を、第2のボリュームの2モラー(M)のHClを含む第1のボリュームの脱イオン(DI)水に分散させるステップ;活性化されたCNTを混合物に追加し、第1の時間超音波処理をするステップ;混合物を室温で第2の時間撹拌するステップ;混合物をオートクレーブに移すステップ;混合物を第2の温度で第2の所定時間加熱するステップ;混合物を脱イオン水とエタノールとで3回すすぐステップ;および、混合物を真空中で第3の温度で乾燥するステップ。
【0027】
一実施形態では、各セパレータ上のRSLの重量は約0.4−0.6mg cm−2である。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、リチウム硫黄電池に関し、該電池は、リチウム金属を用いるアノード;アノードに隣接するポリプロピレンセパレータ;アノードに対向する硫黄アノード;および、ポリプロピレンセパレータと硫黄アノードとの間に配置された再生可能ポリスルフィド捕捉層(RSL)を含む。RSLは、カーボンナノチューブ(CNT)の膜で金属酸化物のナノワイヤまたはナノ結晶を埋め込むことにより製造される。
【0029】
一実施形態において、硫黄アノードは、スラリーキャスト法を用いて調製される。
【0030】
一実施形態では、密度が1−2mg cm−2の低硫黄担持の電極の場合、硫黄、カーボンブラック、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5:4:1の重量比で混合して、N−メチル−2−ピロリドンと均一なスラリーを形成し、その後ドクターブレードで炭素コーティングされたアルミホイルにキャストし、最大6mg cm−2の密度の硫黄含有量の高い電極の場合、カーボン/硫黄複合材料、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、およびPVDFを88:4:1:7の重量比で混合して、スラリーを形成する。
【0031】
一実施形態では、多孔質炭素粒子は、ケッチェンブラックを使用して製造され、炭素および硫黄複合材料は、液体浸透法を使用して、159℃で1:4の重量比で調製される。
【0032】
一実施形態では、電極は、真空中、70℃で4時間乾燥され、その後、直径16mmの小片に切断される。
【0033】
高い理論エネルギー密度、環境への優しさ、および低コストで注目されるリチウム硫黄電池は、次世代のエネルギー貯蔵に大きな可能性を有している。サイクル中に生成される中間体であるポリスルフィドは、電極間を往復し、エネルギー密度とサイクル寿命を損なう可能性がある。特定の実施形態では、特に高硫黄担持(例えば、6mg cm−2)の電極に対して、ポリスルフィドを効果的に固定化および再生する再生可能ポリスルフィド捕捉層(RSL)のグループが報告されている。得られた電池は、365Wh.kg−1という高い重量エネルギー密度、7.94mAh cm−2という初期面積容量、3日間の休止後の2.45%という低い自己放電率、およびサイクル寿命の劇的な増加を示す。このような阻止効果は徹底的に調査されてきており、酸化物の仕事関数並びにポリスルフィドとの結合エネルギーと相関している。この作業は、シャトル効果を緩和するRSLのグループだけでなく、高度なリチウム硫黄電池の定量化された設計フレームワークも提供する。
【0034】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の図面と併せて好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるが、本開示の新規な概念の精神および範囲から逸脱することなく、その変形および修正を行うことができる。
【0035】
添付の図面は、本発明の1つまたは複数の実施形態を示しており、書面による説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。可能な限り、図面全体を通して同じ参照番号が使用され、実施形態の同じまたは同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明の一実施形態による再生可能ポリスルフィド捕捉層(RSL)を備えたLi−S電池の概略図を示す。RSLは、中央に金属酸化物の相互貫入ナノワイヤまたはナノ結晶が埋め込まれたCNT膜から作られている。(i)放電の間、生成されたままのポリスルフィドがRSLにより吸着され、またはRSLと反応し、RSL上に固定され、[ポリスルフィド−RSL]複合体として示され、(ii)後続の充電プロセスにより、固定化された化学種が除去され、RSLが再生され、ポリスルフィドの動的な阻止が可能となる。
図2図2は、本発明の一実施形態によるCNT/V複合体およびCNT/V RSLの構造を示す。(a)相互貫入VナノワイヤおよびCNTから作られた繊維構造を有するCNT/V複合材料のSEM画像である。(b)平均ナノワイヤ直径が30nm以下である連続および多孔質構造を示すCNT/V複合体のTEM画像である。(c)CNT/V複合体の高解像度TEM画像およびその対応する選択領域FFT画像(挿入図)である。(d)CNT/V複合体のX線回折プロファイルである。(e)2つのCNT層および挟まれたCNT/V層から作られたCNT/V RSLの断面SEM画像である。スケールバーは各々(a)500nm、(b)50nm、10nm(挿入図)、(c)5nm、1nm(挿入図)、(e)5μmである。
図3図3(a)−3(h)は、本発明の一実施形態によるCelgard ポリプロピレン(PP)セパレータ、CNT RSL、またはCNT/V RSLを有するLi−S電池の電気化学的性能を示す。図3(a)は、走査速度0.2 mV s−1で得られたサイクリックボルタンメトリーを示す。図3(b)は、RSLを有する減少した電荷移動抵抗を示すナイキストプロットを示す。図3(c)は、0.3C、0.5C、1C、2C、4C、および0.3Cレート(硫黄担持2mg cm−2)におけるレート性能を示す.図3(d)−(f)は、1Cレート、0.1Cレート、および0.2Cレートにおけるガルバノスタットサイクル性能をそれぞれ示す。白丸(○)は、放電容量を示し、黒丸(●)は、クーロン効果を示す。図3(e)における電池は、0.05Cレートにおいて活性化され、図3(f)における電池は、0.1Cレートにおいて活性化される。図3(g)および3(h)は、自己放電試験を示す。電池は、0.2Cで9サイクル試験され、10回目の放電の間2.1Vで停止され、放電プロセスが再開される前に3日間休止された。電池の電圧−容量プロファイルが記録されたが、これは大きく減少した自己放電レートを示すCNT/V RSLを有する電池を示唆する。
図4図4は、放電および充電段階におけるCNT/V RSLのSEM画像および元素マッピングを示す。本発明の一実施形態により、1.7から2.8Vの間0.3CにおいてLi−S電池がサイクル試験された。図4(a)は、放電の間2.05Vにおいて中断され、図4(b)は、充電の間2.60Vにおいて中断された。円からの矢印は、ラインスキャンの方向を示し、円は開始点および終了点を表す。紫色の線は、硫黄を表し、オレンジ色の線は、バナジウムを表す。スケールバーは、図4(a)では20μmであり、図4(b)では25μmである。
図5図5は、本発明の一実施形態による、X線光電子分光法(XPS)で調べたVとポリスルフィドとの間の反応を示す。(a)Vのバナジウム2p3/2スペクトル、(b)VをLiと反応させることにより形成されたV/スルフィド化合物であり、Liの存在下でのV4+の形成を示す、(c)予想比が1:2である末端(S−1)硫黄原子および架橋(S)硫黄原子を示すLiの硫黄2pコアスペクトル、(d)V/スルフィド化合物の硫黄2pコアスペクトル。ポリチオネート基の形成は、LiとVとの間の酸化還元反応を示す。
図6図6は、本発明の一実施形態による、電池性能、酸化物とポリスルフィドとの間の酸化物部分の仕事関数および結合エネルギーの間の相関を示す。(a)遠心分離の後の金属酸化物と混合されたLi溶液の写真、(b)様々な金属酸化物の伝導帯および価電子帯の絶対電位並びにポリスルフィドの酸化ポテンシャル(2.2から2.5V vs. Li/Li、紫色で示す)、(c)一連の金属酸化物の仕事関数、(d)1Cにおける100サイクルの後のLi−S電池に対応する比容量(緑色)と、金属酸化物とポリスルフィドとの間の結合エネルギー(薄緑色)との比較。これらの電池は、それぞれこれらの金属酸化物を含むRSLを使用して作られた。結合エネルギーは、金属酸化物およびポリスルフィドの解離エネルギー、電気陰性度、および化学硬度に基づきFlore式で計算された。
図7図7は、本発明の一実施形態による、ポリスルフィドおよび再生能のための捕捉容量を有するRSLを示す。
図8図8は、本発明の一実施形態による、V複合材料層(過剰のCNT層を持たない)の導電性がCNT/V RSLの導電性よりも4桁低いことを示す、0.2Vにおける(同じ領域の)CNT/V RSLおよびV複合材料層の直流分極プロファイルを示す。導電性におけるそのような実質的な相違は、その製造方法に起因する。CNT/V RSLを調製するために、CNT分散液、V複合材料、およびCNTは、多孔質セパレータ上に連続的にろ過され、その間CNTおよびV複合体からのCNTは、有効に絡み合うことができ導電性ネットワークを有効に形成する。対照的に、V複合材料分散液のみがろ過されV複合材料層を形成し、少量のCNTが存在し導電性ネットワークの有効性が低いために、非常に低い電子伝導性をもたらす。
図9図9は、本発明の一実施形態による、複合材料が約9.8%のCNTを含むことを示すCNT/V複合材料の熱重量分析(TGA)プロットを示す。
図10図10は、本発明の一実施形態による、(A)生成されたままの状態、(B)折りたたまれた状態、および(C)回復した状態のCNT/V RSLのデジタル写真を示す。
図11図11は、CNT(2)RSLまたはCNT/V RSLを有する、Celgard PPセパレータを備える電池のガルバノスタットサイクル特性を示す。本発明の一実施形態により、すべての電池が、3サイクルの間0.3Cレートで、その後250サイクルの間1Cレートでサイクル試験された。
図12図12は、本発明の一実施形態による、様々なCNT/V質量比を有するが複合材料質量が固定されて調製されたCNT/V RSLで作られた電池の容量維持を示す。
図13図13は、本発明の一実施形態による、0.3Cレートでの、Celgard PPセパレータ、CNT RSL、CNT/V RSL、およびV複合材料層を備えたLi−S電池のガルバノスタットサイクル特性を示す。CNTS/V RSLは、再生された捕捉剤に起因して、CNT RSLと比べて良好な容量を示し、CNT RSLは、ポリスルフィドを吸着および脱離するその性能に起因して、Celgard PPセパレータと比べて良好な性能を示す。それとは大きく異なり、V複合材料層は、ポリスルフィドを有効に捕捉することができるが、その伝導性が低いため、放電プロセスの間、捕捉されたポリスルフィドを改めて放出することができない。そのような非再生プロセスにより、複合材料内部でポリスルフィドが連続的に捉えられ、容量の連続的な低下をもたらす。
図14図14は、硫黄担持量、電解質と硫黄との間の比率(E/S)、及び活性物質の比容量が異なるLi−S電池のエネルギー密度を示す。本発明の一実施形態による、Li−S電池の比容量および平均仕事電位は、コインセルの電気化学的性能に基づき、質量は電池全体に基づいており、これはセパレータ、RSL、硫黄カソード、リチウムアノード、および液体電解質の重量を含む。
図15A図15Aは、本発明の一実施形態による、様々なLi濃度における、CNTおよびCNT/V RSLの捕捉容量を示す。
図15B図15Bは、本発明の一実施形態による、0.05mV s−1の走査レートでの、平衡CNT RSLおよび平衡CNT/V RSLカソードのサイクリックボルタンメトリーを示す。CNTおよびCNT/V RSLは、様々な濃度でLi溶液中でそれぞれ平衡状態にされた。表面の残余溶液を拭き取った後、電池は、カソードとして平衡RSLを、アノードとしてリチウム金属を使用して組み立てられた。双方の電池は、約2.36Vの開放回路電圧(OCV)を示し、これはポリスルフィドの酸化還元電位と等しい。その後電池は2.8Vで電流が1μAに達するまで保持され、その間吸着されたポリスルフィドからのLiがRSLから脱離した。全電荷が測定され、RSL上に吸着されたLiの量に変換された。
図15C図15Cは、本発明の一実施形態による、0.05mV s−1の走査レートでの、平衡CNT RSLおよび平衡CNT/V RSLカソードのサイクリックボルタンメトリーを示す。CNTおよびCNT/V RSLは、様々な濃度でLi溶液中でそれぞれ平衡状態にされた。表面の残余溶液を拭き取った後、電池は、カソードとして平衡RSLを、アノードとしてリチウム金属を使用して組み立てられた。双方の電池は、約2.36Vの開放回路電圧(OCV)を示し、これはポリスルフィドの酸化還元電位と等しい。その後電池は2.8Vで電流が1μAに達するまで保持され、その間吸着されたポリスルフィドからのLiがRSLから脱離した。全電荷が測定され、RSL上に吸着されたLiの量に変換された。
図16図16は、本発明の一実施形態による、50サイクルの間1Cでのサイクルの後のリチウム表面のSEM画像を示し、(A)および(B)はCNT(1)RSLを備えたLi−S電池であり、(C)および(D)はCNT/V RSLを備えたLi−S電池である。
図17図17は、硫黄カソードを用い、RSLを用いたかまたは用いないサイクル試験の後の、リチウムアノードの断面SEM画像および元素マッピングを示す。Li−S電池は、(A)および(B)に関してCNT(1)RSLを用いて、(C)および(D)に関してCNT/V RSLを用いて組み立てられた。黄色は、本発明の一実施形態による、硫黄化学種の分散を表す。
図18図18は、本発明の一実施形態による、酸化物の伝導帯および価電子帯および分子のレドックス電位の相対位置に関して電荷移動の方向を示す。
図19図19は、本発明の一実施形態による、物理吸着および化学吸着における相互作用を示す。
図20図20は、本発明の一実施形態による、RSLにおいて使用されるCNT/酸化物複合材料のX線回折(XRD)プロットを示す。
図21図21は、本発明の一実施形態による、様々なCNT/酸化物RSLを備えたLi−S電池の自己放電レートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
以下、本発明の例示的な実施形態が示されている添付図面を参照して、本発明がより詳細に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供されている。全体を通して同様の参照番号は同様の要素を指す。これらの態様に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は他の態様に適用されてよい。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示される態様に限定されることを意図するものではなく、文言上の請求項と一致する全範囲に従うものであり、単数形の要素への言及は、具体的にそのように述べない限り、「唯一無二」を意味するのではなく、むしろ「1つ以上」を意味することを意図する。「例示的」という用語は、本明細書では「例、事例、または例示として役立つ」ことを意味するために使用される。本明細書で「例示的」として説明されている態様は、必ずしも他の態様よりも好ましいまたは有利であると解釈される必要はない。特に明記しない限り、「幾らかの」という用語は1つ以上を指す。「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、またはCの1つ以上」、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つ以上」、および「A、B、C、またはそれらの任意の組み合わせ」は、A、B、および/またはCの任意の組み合わせを含み、かつ複数のA、複数のB、または複数のCを含み得る。具体的には、「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、またはCの1つ以上」、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つ以上」、および「A、B、C、またはそれらの任意の組み合わせ」などの組み合わせは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB、AとC、BとC、またはAとBとCであってよく、そのような任意の組み合わせはA、B、またはCの1つ以上または複数の部材を含んでよい。当業者に知られている、または後に知られるようになる本開示を通して記載される様々な態様の要素に対するすべての構造的および機能的同等物は明示的に参照により本明細書に組み込まれ、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。さらに、本明細書に開示されているものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公衆に提供することを意図していない。「モジュール」、「メカニズム」、「要素」、「デバイス」などの用語は、「手段」という用語の置換物ではない場合がある。そのため、クレーム要素は、「手段」という語句を用いて明示的に記載されていない限り、ミーンズ・プラス・ファンクションとして解釈されるべきではない。また、本発明の原理を変更することなく、方法のうちの1つまたは複数のステップを異なる順序で(または同時に)実行できることも理解すべきである。
【0038】
本明細書で使用される用語は、一般に、本発明の文脈内で、および各用語が使用される特定の文脈で、当技術分野での通常の意味を有する。本発明を説明するために使用される特定の用語は、本発明の説明に関して実施者に追加の説明を提供するために、以下または本明細書の他の場所で説明されている。便宜上、イタリック体および/または引用符などを使用して特定の用語を強調表示する場合がある。強調表示の使用は、用語の範囲と意味に影響を与えない。用語の範囲と意味は、強調表示されているか否かにかかわらず、同じ文脈では同じである。同じことが複数の手段で言えることは理解されるだろう。したがって、本明細書で説明する用語のいずれか1つまたは複数に対して代替の言語および同義語を使用することも、用語を本明細書で詳述または説明するかどうかに特別な意義を置くこともできない。特定の用語の同義語が提供される。1つ以上の同義語の記載は、他の同義語の使用を除外しない。本明細書で議論されている任意の用語の例を含む本明細書のいずれかの例の使用は、単なる例示であり、本発明または例示された用語の範囲および意味をどのようにも限定しない。同様に、本発明は、本明細書で与えられる様々な実施形態に限定されない。
【0039】
ある要素が他の要素の「上」にあると呼ばれる場合、それは他の要素の上に直接存在することができ、またはそれらの間に介在要素が存在してもよいことが理解される。対照的に、ある要素が別の要素の「直接上に」にあると呼ばれる場合、介在要素は存在しない。本明細書で使用される「および/または」という用語は、関連する列挙された物品の1つまたは複数の任意のおよびすべての組み合わせを含む。
【0040】
本明細書では、第1、第2、第3などの用語を使用して様々な要素、成分、領域、層、および/または部分を説明することがあるが、これらの要素、成分、領域、層、および/または部分はこれらの用語によって制限されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、ある要素、成分、領域、層、または部分を、他の要素、成分、領域、層、または部分と区別するためにのみ使用される。したがって、以下で説明する第1の要素、成分、領域、層または部分は、本発明の教示から逸脱することなく、第2の要素、成分、領域、層または部分と呼ぶことができる。
【0041】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的としており、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書で使用されるとき、用語「comprises」および/または「comprising」または「includes」および/または「including」または「has」および/または「having」は、述べられた特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、および/または成分の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、成分、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【0042】
さらに、「下」または「底部」および「上部」または「上」などの相対的な用語は、図に示すように、ある要素の他の要素との関係を説明するために本明細書で使用できる。相対的な用語は、図に示された向きに加えて、デバイスの異なる向きを包含することを意図していることが理解されるだろう。例えば、図の1つの中のデバイスを裏返すと、他の要素の「下」側にあると説明された要素は、他の要素の「上」側に向けられる。したがって、例示的な用語「下」は、図の特定の向きに応じて、「下」と「上」の両方の向きを含むことができる。同様に、図の1つの中にあるデバイスを裏返すと、他の要素の「下」または「下方」であるとして記載される要素は、他の要素の「上」を向くだろう。したがって、「下」または「下方」の例示的な用語は、上と下の両方の向きを含むことができる。
【0043】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されている用語などの用語は、関連技術および本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、またはここで明示的に定義されていない限り、理想的な形で、または過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解される。
【0044】
本明細書において、「およそ」、「約」、「実質的に」または「凡そ」は、一般に、与えられた値または範囲の20パーセント以内、好ましくは10パーセント以内、より好ましくは5パーセント以内を意味する。本明細書で与えられる数値は近似値であり、明示的に述べられていない場合、「およそ」、「約」、「実質的に」または「凡そ」という用語を推測できることを意味する。
【0045】
本明細書で使用する用語「comprise」又は「comprising」、「include」または「including」、「carry」または「carrying」、「has/have」または「having」、「contain」または「containing」、「involve」 または「involving」などは、オープンエンドである、すなわち含むがそれに制限されないと理解される。
【0046】
ここで、添付の図面と併せて本発明の実施形態に関して説明する。これらの態様に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、他の態様に適用されてよい。本発明の目的によれば、本明細書に具体的にかつ広く記載されるように、本発明は、高エネルギー密度および長いサイクル寿命を有するリチウム−硫黄(Li−S)電池を可能にする再生可能なポリスルフィド捕捉層を製造するための方法およびシステムに関する。
【0047】
ある態様において、本発明は、ポリスルフィドの拡散を動的に阻止することができ、サイクルの間それらを再生可能である、再生可能なポリスルフィド捕捉層(RSL)に基づく有効なポリスルフィド阻止方法を記載する。
【0048】
リチウム−硫黄電池は、理論エネルギー密度が高く、環境に優しく、コストが低いことで知られ、次世代のエネルギー貯蔵に関して大きな可能性を有している。ポリスルフィドは、サイクルの間に生成される中間物であり、電極間を移動することができ、エネルギー密度およびサイクル寿命を損なう場合がある。ある実施形態では、再生可能なポリスルフィド捕捉層(RSL)のグループが記録され、これは、特に高い硫黄担持(例えば、6mg cm−2)を有する電極に関して、ポリスルフィドを有効に固定しかつ再生する。得られた電池は、365Wh kg−1という高い重量エネルギー密度、7.94mAh cm−2という初期面積容量、3日間休止した後の2.45%という低い自己放電レート、および劇的に長いサイクル寿命を示す。そのような阻止効果は、徹底的に調べられ、酸化物の仕事関数並びにそれらのポリスルフィドとの結合エネルギーと互いに関連付けられてきた。この仕事は、シャトル効果を低減するRSLのグループだけではなく、先進のリチウム−硫黄電池に関して定量化された設計フレームワークを提供する。
【0049】
図1に示されるように、RSLがカーボンナノチューブ(CNT)の柔軟かつ導電性の部材から作られ、その中央の層には金属酸化物のナノワイヤまたはナノ結晶が埋め込まれている。外側の拡散したポリスルフィドは、RSLによって吸着され、またはRSLと反応して、[ポリスルフィド−RSL]複合体を形成し、RSL内部に固定されている。後続の充電プロセスにより、これらのポリスルフィドが除去され、RSLが再生される。大量の捕捉されたポリスルフィドと再生機能とのこの組み合わせにより、ポリスルフィドの非常に効果的かつ動的な捕捉が可能になり、特に高硫黄担持の電極では、リチウム腐食が劇的に減少し、サイクル寿命が長くなる。さらに、RSLは、電子伝導性であり、機械的に頑強であり、その結果さらに電池の性能を向上させる。物理的吸着およびポリスルフィドとの化学反応から生じる捕捉効果は徹底的に調査されており、電池の電気化学的性能と互いに関連している。
【0050】
RSLの合成と特性評価:この概念を実証するために、Vナノワイヤがモデル酸化物として選択され、これは高容量(294mAh g−1、単位あたり2Li挿入/抽出)の電気化学エネルギーの貯蔵、迅速なLiインターカレーションの動力学、および長いサイクル寿命(500サイクルを超える)に関して広範囲にわたって調査されてきた[35]。さらに、それは1.8−4.0V(vs.Li/Li)のレドックス窓を示し、硫黄のレドックス窓(1.7−2.8V vs.Li/Li)とよく一致する。例示的実施形態において、CNTが絡み合わされたVナノワイヤの複合材料が、水熱反応を用いて合成された[36、37]。そのような複合材料に基づき、CNT/V RSLが、CNT分散液の連続的ろ過、およびCNT/V複合材料、およびCNTを市販のポリプロピレンセパレータ上に配置することによって製造された。この製造プロセスの間、分散液からのCNTは、絡み合って有効な電子伝導のためのCNTネットワークを形成することができ、CNT/V RSL内部の有効なレドックス反応を可能にする。図7に示すように、この意味において、十分な伝導性は、RSLに、ポリスルフィドに関する捕捉機能および再生性能を与えるのに必須である。
【0051】
図1は、再生可能ポリスルフィド捕捉層(RSL)を備えたLi−S電池を概略的に示す。RSLは、CNT膜から作られ、その中央には金属酸化物の相互貫入ナノワイヤまたはナノ結晶が埋め込まれている。(i)放電の間、生成されたままのポリスルフィドは、RSLによって吸収され、またはRSLと反応し、RSL上に固定され、これは[ポリスルフィド−RSL]複合体と呼ばれ、(ii)その後の充電プロセスにより、固定化された化学種が取り除かれ、RSLが再生され、ポリスルフィドの動的な阻止が可能になる。
【0052】
具体的には、図1に説明されるように、RSLは柔軟かつ導電性のカーボンナノチューブ(CNT)膜から作られ、その中央層には金属酸化物のナノワイヤまたはナノ結晶が埋め込まれる。外側の拡散したポリスルフィドは、RSLによって吸着され、またはRSLと反応して、[ポリスルフィド−RSL]複合体を形成し、RSL内部に固定されている。後続の充電プロセスにより、これらのポリスルフィドが除去され、RSLが再生される。大量の捕捉されたポリスルフィドと再生機能とのこの組み合わせにより、ポリスルフィドの非常に効果的かつ動的な捕捉が可能になり、特に高硫黄担持を有する電極では、リチウム腐食が劇的に減少し、サイクル寿命が長くなる。さらに、RSLは、電子伝導性であり、機械的に頑強であり、その結果さらに電池の性能を向上させる。物理的吸着およびポリスルフィドとの化学反応から生じる捕捉効果は徹底的に調査されており、電池の電気化学的性能と互いに関連している。
【0053】
図2は、CNT/V複合材料およびCNT/V RSLの構造を示す。具体的には、図2(a)は、相互貫入VナノワイヤおよびCNTから作られた繊維構造体を有するCNT/V複合材料のSEM画像である。図2(b)は、CNT/V複合材料の透過型電子顕微鏡(TEM)画像であり、ナノワイヤの平均直径が約30nmである連続かつ多孔質の構造を示す。図2(c)は、CNT/V複合材料の高解像度TEM画像およびその対応する選択領域の高速フーリエ変換(FFT)画像(挿入図)である。図2(d)は、CNT/V複合材料のX線回折プロファイルを示す。図2(e)は、CNT/V RSLの断面SEM画像であり、2つのCNT層と挟まれたCNT/V層から作られている。スケールバーは、図2(a)に関して500nmであり、図2(b)に関して50nm、10nm(挿入図)であり、図2(c)に関して5nm、1nm(挿入図)であり、図2(e)に関して5μmである。
【0054】
具体的には、図2(a)および2(b)は、CNT/V複合材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像および透過型電子顕微鏡(TEM)画像をそれぞれ表し、相互貫入VナノワイヤおよびCNTから作られた連続的繊維構造を示している。ナノワイヤは、多孔質であり(挿入図参照)、約30nmの直径を有する。図2(c)は、Vナノワイヤの高解像度TEM(HRTEM)像および選択領域高速フーリエ変換(FFT)を示し、その層状の結晶構造が確認される。HRTEM画像は、0.211nmのd−スペーシングを示すが、これはVの(020)格子面と整合する。図2(d)におけるX線回折プロファイルは、それぞれVの(001)、(002)、(111)、(200)、および(020)面に対応する9.2、13.2、26.4、29.1、および41.8°の特徴的ピークを示す[38、39]。熱重量分析(TGA)による測定結果では、図9に示すように、複合材料中のCNTの重量百分率が約9.8%である。図2(e)は、約15μmの厚さを有するRSLの断面像を示すが、これは中央にVリッチ層で挟まれた多孔質CNT層を含む。図10のデジタル写真に示されるように、そのようなRSLは、良好な機械的強度を有し、柔軟である。
【0055】
電気化学的検討:図3は、Celgard PPセパレータ、CNT RSLまたはCNT/V RSLを備えたLi−S電池の電気化学性能を示す。具体的には、図3(a)において、サイクリックボルタンメトリーは走査レート0.2mV s−1で得られる。図3(b)において、ナイキストプロットはRSLの電荷移動抵抗が減少することを示す。図3(c)は、0.3C、0.5C、1C、2C、4C、および0.3Cレート(硫黄担持2mg cm−2)におけるレート性能を示す。図3(d)、3(e)、および3(f)は、1Cレート、0.1Cレート、および0.2Cレートにおけるガルバノスタットサイクル性能をそれぞれ示す。白丸(○)は、放電容量を示し、黒丸(●)は、クーロン効率を示す。図3(e)における電池は、0.05Cレートで活性化され、図3(f)における電池は、0.1Cレートで活性化された。図3(g)および3(h)は、自己放電試験を示す。電池は、0.2Cで9サイクル試験され、10回目の放電の間2.1Vで停止され、放電プロセスが再開される前に3日間休止された。電池の電圧−容量プロファイルが記録され、CNT/V RSLを有する電池が大きく減少した自己放電レートを示すことを示唆する。
【0056】
Celgard ポリプロピレン(PP)セパレータまたはCNT/V RSLを備えた硫黄カソードの酸化還元挙動が、図3(a)で示されるように、0.2mV s−1の走査レートでサイクリックボルタンメトリー(CV)により試験された。CNTとV部分の属性を解き明かすために、以下の表1に示すように、同様の方法を用いてCNT RSLがCNTを用いて製造され、硫黄カソードと一体化された。3つすべてのカソードが、元素硫黄および高秩序リチウムポリスルフィドの還元に対応する2つのカソードピークと、硫黄化学種の酸化に対応するアノードピークを示す[32]。RSLを持たない電極は、硫黄化学種の低い電子伝導性およびイオン伝導性に起因する緩やかな電気化学的動力学を示す[4、15、40]。CNT/V RSLまたはCNT RSLを組み込むことによって、カソードは、分極の少ない明確な酸化還元ピークを示す。
【0057】
【表1】
【0058】
図3(b)はさらに、電極の電気化学インピーダンス分光法(EIS)を比較し、Celgard PPセパレータ、CNT/V RSLまたはCNT RSLにそれぞれ160、70、または55オームの電荷移動抵抗を示す。導電率の改善により、電極のレート性能および容量が向上する。図3(c)に示すように、Celgard PPセパレータを備えた硫黄電極は、0.3Cレート(1C=1675mA.g−1)で663mAh g−1の初期容量、および0.5、1、2、および4Cレートにおいてそれぞれ521、396、352、および272mA g−1の可逆容量を示す。さらに、CNT RSLを備えた硫黄電極は、0.3Cレートで1396mAh g−1の初期容量、0.5、1、2、および4Cレートにおいてそれぞれ901、768、694、および614mAh g−1の可逆容量を示す。対照的に、CNT/V RSLを備えた硫黄電極は、0.3Cレートで1513mAh g−1という非常に高い初期容量をもたらし、0.5、1、2、および4Cレートにおいてそれぞれ1170、1063、954、および858mAh g−1の可逆容量を示す。ここで示された電気化学的性能は、CNT/V RSLを組み込むことにより、レート性能および硫黄の利用が大幅に改善されることを明確に示唆する。
【0059】
さらに、図3(d)は、1Cレートにおける、Celgard PPセパレータまたはRSLを備えたLi−S電池のサイクル安定性を比較する。従来のセパレータでは、315mAh g−1という低い初期容量が観察され、これは250サイクル後に124mAh g−1に減少する。一方で、CNT/V RSLを備えた電池は、1068mAh g−1という非常に高い初期容量、および250サイクル後の939mAh g−1という可逆容量をもたらす。図3(d)に示されるように、CNT RSLを備えたセルは、250サイクル後に498mAh g−1という可逆容量を示し、これはCNT/V RSLを備えたものよりも著しく低い。さらに、CNT/V RSLを備えたものは200サイクル後に100%に近い効率を維持し、一方でCNT RSLを備えたものはクーロン効率が大幅に低下する深刻なシャトル効果を生じる。この比較は、サイクル安定性の向上が主にV部分によって生じることを示す。さらなる比較のために、約2.5倍のCNTを含む、より厚いCNT RSL(CNT(2)RSLと表記する)もまた製造された。図11に示すように、CNT(2)RSLを備えた電池は、250サイクル後に730mAh g−1の可逆容量を維持するのみであることが分かった。一貫して、総質量は一定であるが、VとCNTとの間の質量比が異なる一連のCNT/V RSLも製造された。電荷移動およびポリスルフィドの再生を容易にするCNT層で、図12に示すように、Vの比率が高いCNT/V RSLは、リチウム硫黄電池のより良好なサイクル安定性を可能にする。CNT層が無い場合、V部分は、放電および充電の間、連続的にポリスルフィドを吸着し、図13に示すように、そのような非再生プロセスはリチウム硫黄電池の容量の迅速な劣化をもたらす。
【0060】
さらに、図3(e)および3(f)は、それぞれ0.1Cレートおよび0.2Cレートにおける6mg cm−2の硫黄を担持するリチウム硫黄電池の電気化学特性を比較する。0.1Cレートにおいて、CNT RSLおよびCelgard PP セパレータを有する電池は、同様の容量およびサイクル安定性をもたらし、一方でCNT/V RSLを有する電池は、0.05Cレートにおいて非常に高い初期容量(1309mAh g−1、約1105mAh g−1に対して)および0.1Cレートにおける50サイクル後の容量維持(1037mAh g−1、約613mAh g−1に対して)を示す。CNT RSLの使用により硫黄担持量が低い(例えば、2mg cm−2未満)の電池性能は改善されるが、PPセパレータに関する改善は、硫黄担持量が高い(例えば、6mg cm−2)電池では観察することができず、これはポリスルフィドに対する吸着能が低いことに起因する可能性がある。リチウム硫黄電池の初期比容量および硫黄含量が、カソードの総重量に基づいてさらに計算された。カソードの総重量は、炭素/硫黄複合材料、導電剤、バインダー、及びRSLの重量を含む。表2に示すように、CNT/V RSLからの重量寄与を考慮すると、硫黄含量が70.4%から66.6%へと若干減少するのみである。CNT/V RSLを組み込むと硫黄の利用率が大幅に向上するため、CNT/V RSLを備えたカソードの比容量は、CNT RSLまたはCelgard PPセパレータを備えたものと比較して依然としてはるかに高い(814mAh g−1、約700mAh g−1に対して)。さらに、電気化学性能の向上は、0.2Cレートでより顕著になる。CNT/V RSLを備えた電池は、第1の活性化サイクル後に1323mAh g−1の容量と7.94mAh cm−2の面積容量をもたらし、100サイクルにわたって約100%のクーロン効率を維持する。対照的に、CNT RSLを備えた電池は、第2のサイクル中に890mAh g−1という低い容量を示し、シャトル効果に起因して12サイクル後に働かなくなった。高い電荷移動抵抗のため、Celgard PPセパレータを備えた電池は、6サイクル後にその容量の殆どを失った。この観察により、CNTが電極の電荷移動抵抗を低下させることがさらに確認される。一方で、VはRSLにポリスルフィドに対するより良好な阻止能力を与え、リチウム腐食を軽減し、電池のサイクル寿命(100サイクル超、12サイクルに対して)を大幅に延長する。
【0061】
【表2】
【0062】
現在の研究と文献とを比較するために、表3は、カーボンコーティングセパレータについて公開されている研究をまとめたものである。これらは、CNT、グラフェン、カーボンブラック、カーボンファイバ、および多孔質カーボン、並びにAlおよびTiOなどの非反応性無機部分とそれらとの複合材料に対するポリスルフィドの物理吸着に基づく。対照的に、私たちの研究は物理吸着および化学反応の両方を利用してポリスルフィドを阻止し、はるかに高いポリスルフィド捕捉性能を提供する。報告された最高性能のLi−S電池は、同様の硫黄担持量6.3mg cm−2を含み、単層CNTでコーティングされたセパレータを使用しており、サイクルあたり0.423%の容量消滅率で214Wh.kg−1の初期エネルギー密度を提供することができた[19]。100重量%のリチウム過剰およびE/S比が5で、CNT/V RSLを備えた電池は、サイクルあたりより低い容量消滅率0.303%で365Wh.kg−1というはるかに高い初期エネルギー密度をもたらし、一方で、CNT RSLを有するものはサイクルあたり0.77%の容量消滅率で311Wh.kg−1というエネルギー密度を示す。この比較により、我々の仕事と現在の最新技術とが明確に区別される。図14に示すように、Li−S電池のエネルギー密度は、硫黄担持量が多いこと、電解質体積と硫黄の担持質量との間の比(E/S、μL/mg)が低いこと、並びに活物質の比容量が高いことに応じて、増加する。E/S比のさらなる最適化(例えば、E/S=3)および電解質への電気活性溶媒の追加で、硫黄の比容量は、1500mAh g−1を実現することができ、電池のエネルギー密度は場合によっては560Wh.kg−1にまで達することができ、これによりLi−S電池は実用化され得る。
【0063】
【表3】
【0064】
部分からの容量の寄与を定量化するために、アノードとしてリチウムを使用し、カソードとしてCNT/V RSLを使用した電池を同様の条件下で組み立てて試験した。CNT/V RSLからの容量の寄与は、表4のLi−S電池の全容量の1%未満であることがわかった。したがって、CNT/V RSLを使用した電池の性能向上は、主にポリスルフィド捕捉効果および導電率の向上に起因すると結論付けるのが合理的である。捕捉効果をさらに調べるために、RSLを様々な濃度のLi溶液で平衡とし、カソードとして使用した。次に、捕捉されたポリスルフィドの量を電気化学的に決定した。図15(A)に示すように、CNT RSLおよびCNT/V RSLによって捕捉されるLiの最大量は、それぞれ0.110mgおよび0.486mgであることがわかった。さらに、RSLによって捕捉されたポリスルフィドは、図8(B)および8(C)に示されるように、2.8Vから1.7Vの間のサイクル時に可逆的に放出および再捕捉され得る。10回のサイクルにおいて、CNT RSLは大幅な容量低下を示したが、CNT/V RSLは初期容量(捕捉したポリスルフィドの量)を保持しており、これはCNT/V RSLの顕著な捕捉および再生能力を明確に示している。
【0065】
【表4】
【0066】
CNT/V RSLを使用すると、容量、サイクル安定性、およびレート性能が向上するのに加えて、Li−S電池の自己放電レートが大幅に低下した。0.2Cレートで9サイクルの後、10回目の放電を2.1Vで停止したが、これは電池内のポリスルフィドの最大濃度に対応する電圧である[40、41]。その後、放電プロセスが3日後に再開されたが、その間、ポリスルフィドの拡散が電池の自己放電を引き起こす可能性があった。図3(g)および3(h)は、休止前および休止後のCNT/V RSLの有無による電池の充放電電圧対容量を表す。ここからわかるように、RSLを持たない電池は、9サイクル目(C9thと表示)で674mAh g−1という放電容量を示し、これは休止の後(C10thと表示)539mAh g−1に減少する。対照的に、RSLを備えたセルは、9サイクル目(C9th)で1174mAh g−1という非常に高い容量をもたらし、休止後も依然として高い容量を維持する(1145mAh g−1、C10th)。定量的分析のために、電池の自己放電率は(C9th−C10th)/C9th・100%により推定することができる。RSLを組み込むと、電池の自己放電率は26.7%から2.5%に減少し、これは、ポリスルフィドの拡散を阻止し、自己放電率を最小化することにおいて、CNT/V RSLが重要な役割を有することを示唆しており、このことはリチウム硫黄電池の実用において必須である。
【0067】
捕捉および再生プロセスのSEM検討:捕捉および再生プロセスをさらに理解するために、様々な電気化学段階におけるCNT/V RSL内部の硫黄部分の分布をSEMおよびエネルギー分散型X線(EDX)分光法で分析した。CNT/V RSLを備えたLi−S電池は、それぞれ、0.3Cでサイクルを行い、放電中は2.05V、充電中は2.60Vで中断した。次に、CNT/V RSLを電池から取り外し、SEMおよびEDXによる検討用にアルゴンを充填したグローブボックスで乾燥させた。
【0068】
図4は、放電段階および充電段階でのCNT/V RSLのSEM画像および元素マッピングを示す。Li−S電池は、1.7から2.8Vの間で0.3Cにおいてサイクル試験された。図4(a)は、放電中に2.05Vで中断されており、図4(b)は、充電中に2.60Vで中断された。円405から403および円409から415への矢印401および413は、それぞれラインスキャンの方向を示し、一方で円403、405、409および415は開始点および終了点を表す。図4(a)における紫色の線407および図4(b)における紫色の線411は硫黄を表し、図4(a)におけるオレンジ色の線400および図4(B)におけるオレンジ色の線414はバナジウムを表す。スケールバーは、図4(a)において20μmであり、図4(b)において25μmである。
【0069】
具体的には、図4(a)は、2.05Vで中断されたRSLの断面SEM画像および対応するEDX分析を示す。この電気化学段階では、硫黄は主に電極内部および電解質内部に位置するポリスルフィドに変換される。EDX分析では、硫黄およびバナジウムに関連する2つのピークが中央に共存していることが示され、これは、硫黄部分がV層内部に優位に分布していることを示す(CNT領域の硫黄の量が少ない)。この観察結果は、ポリスルフィドの捕捉におけるVの重要な役割と整合する。図4(b)は、2.60Vで中断されたRSLの断面SEM画像および対応するEDX分析を示す。この電気化学段階では、捕捉されたポリスルフィドが部分的に除去され、一方でRSLが再生される。一貫して、EDX分析では、硫黄とバナジウムの2つの共存するピークも示されているが、硫黄化学種の量はかなり少ない。
【0070】
その結果、CNT/V RSLの捕捉性能は、サイクル中のリチウムアノードの腐食も軽減する。図16および図17に示されるように、CNT RSLを備えた電池からのリチウムアノードは、厚い硫黄含有パッシベーション膜(約300μm)を備えた粗い表面を示す。比較すると、CNT/V RSLを備えたセルからのリチウムアノードは、ポリスルフィドの浸透が著しく薄い(深さ約80μm)、滑らかな表面を維持し、リチウムの腐食が73.3%少ないことを示す。
【0071】
XPSによってプローブされたVとポリスルフィドとの間の反応:捕捉効果は、ポリスルフィドとCNT/V RSLとの間の化学物理吸着および/または反応に起因すると考えられる。メカニズムを調べるために、Liを代表的なポリスルフィド化学種として使用し、これはVナノワイヤと混合された。得られた酸化物/硫化物の固体は単離され、XPS分析を用いて調べられた。
【0072】
図5は、XPSによってプローブされたVとポリスルフィドとの反応を示す。図5(a)は、Vのバナジウム2p3/2スペクトルを示す。図5(b)は、VをLiと反応させることにより形成されたV/硫化物化合物を示し、これはLiの存在下でのV4+の形成を示す。図5(c)は、Liの硫黄2pコアスペクトルを示し、末端(S−1)および架橋(S)硫黄原子が1:2の予測比率で示される。図5(d)は、V/スルフィド化合物の硫黄2pコアスペクトルを示す。ポリチオネート基の形成は、LiとV間の酸化還元反応を示す。
【0073】
具体的には、Liと混合する前後のVのXPSスペクトルが、それぞれ図5(a)および5(b)に示される。Vは、517.5eVでV5+状態の典型的な2p3/2スペクトルを示す。混合後、2p3/2ピークは、それぞれV5+およびV4+状態に由来する517.5eVおよび516.0eVを中心とする2つのピークに分かれる[42]。図5(c)および5(d)は、Liと酸化物/硫黄固体の硫黄2pコアスペクトルをさらに比較する。Liは163.0eVおよび161.7eVで2つの硫黄状態を示し、これらはそれぞれポリスルフィドアニオンの架橋(S)および末端(S−1)硫黄原子に割り当てることができる[6、43、44]。SとS−1との間の比は約2:1であり、これはLiの組成による。対照的に、酸化物/硫化物固体のS2pスペクトルは、2つの硫黄状態を示し、これは163.2eVにおけるSおよび167.9eVにおけるポリチオネート錯体にそれぞれ帰属させることができる[43]。V4+とポリチオネート複合体の形成は、LiとVとの間の酸化還元反応の発生を示唆し、これはLi−V−O−S複合体を形成する。一方、末端硫黄原子(S−1)は酸化物/硫化物固体において検出されず、このことはポリスルフィドと対になったLiイオンがVにインターカレートされたかまたは挿入されたことを示唆する。
【0074】
上記の検討に基づいて、起こり得る機構を組み立てることができる。放電中、可溶性ポリスルフィドがカソードにおいて連続的に生成され、アノードに向かって拡散する傾向がある。CNT/V RSLの組み込みにより、ポリスルフィドは埋め込まれた酸化物によって吸着および酸化され、固体[ポリスルフィド−RSL]複合体を形成し、固定化される。その後の充電/脱リチウムプロセスにおいて、リチウムイオンとポリスルフィドがそれぞれRSLから除去され、電極に再堆積される。このような動的で再生的なプロセスを通じて、ポリスルフィドのシャトル効果を効果的に軽減することができ、これは電気化学性能が大幅に向上したLi−S電池をもたらす。
【0075】
図6は、電池性能、酸化物部分の仕事関数、および酸化物とポリスルフィドとの間の結合エネルギーの相関関係を示す。図6(a)は、遠心分離後に金属酸化物と混合したLi溶液の写真を示す。図6(b)は、様々な金属酸化物の伝導帯601および価電子帯603の絶対電位、並びにポリスルフィドの酸化電位(2.2から2.5V vs. Li/Li、紫色でラベル付けされている)を示す。図6(c)は、一連の金属酸化物の仕事関数を示す。図6(d)は、金属酸化物とポリスルフィドとの間の結合エネルギー(左のライトグリーン605)と、1Cにおいて100サイクル後の対応するLi−S電池の比容量(右の緑色607)との比較を示す。これらの電池は、それぞれこれらの金属酸化物を含むRSLを用いて作られた。結合エネルギーは、金属酸化物およびポリスルフィドの解離エネルギー、電気陰性度、および化学硬度に基づいたFlore式を用いて計算された。
【0076】
熱力学的には、吸着は固気界面と固液界面との間で自発的に起こり、界面間の化学ポテンシャルを均衡させる。これに関して、図6(a)のデジタル写真に示されるように、異なる電子構造を有する一連の金属酸化物がLi溶液と混合され、次いで遠心分離された。Li溶液(対照)は濃い茶色を示すが、CNT、CeO、ZnO、MgO、Al、MoO、TiO、WO、またはVを含む混合物はますます明るい色を示し、硫化物に対する酸化物の吸着または硫化物と酸化物との反応の度合いが増加していることを示す。この観察結果は、RSL製造の阻止部分としてさまざまな酸化物を使用できることを示唆する。
【0077】
ポリスルフィドとRSLの吸着および化学反応を理解するために、図6(b)は、ポリスルフィドの酸化還元電位(Eredox)を一般的に使用される金属酸化物の伝導帯(Ec)と比較する[45−48]。Li−S電池の場合、ポリスルフィドの酸化還元電位は、その組成に応じて2.2−2.5V(vs.Li/Li)の範囲で存在し[40]、これは図6(b)に示されている。ポリスルフィドの酸化還元電位が酸化物の伝導帯を超えると、ポリスルフィドからの電子が酸化物に移動することができ、その結果、図18に示すように化学結合形成による化学吸着が生じる。伝導帯の相対的な位置に基づいて、このような酸化物は2つのグループに分類できる。一方は、MgO、Al、SiO、LiO、CeO、PbO、NiO、およびZnOなど、電子移動(物理吸着)することなくポリスルフィドを物理的に吸着できるグループであり、他方は、SnO、CoO、TiO、Fe、CuO、MnO、MoO、V、WO、およびCrOなど、ポリスルフィドと反応(化学吸着)できるグループである。
【0078】
物理吸着の場合、吸着は主に酸化物の仕事関数(または表面電位に比例する表面エネルギー)によって支配される。より高い表面電位を有する酸化物は、そのデバイ長の範囲内でより強い電界を構築し、図19に示すように、吸着質のより強い吸着をもたらす[49]。図6(c)は、一連の酸化物の仕事関数を表示するが[47]、これは、吸着能力またはポリスルフィド捕捉性能の指標として使用することができる。MgO、CeO、およびZnOと比較して、Alは、最大の仕事関数および視覚実験で観察された最高のポリスルフィド捕捉性能を備えており、MgO、CeO、またはZnOを含むLi溶液は茶色がかったままであるが、Alを含む溶液は淡黄色を示す。
【0079】
redoxよりも低いEを有する酸化物に関しては、化学吸着が起こり、Li溶液の色は酸化物(MoO、TiO、WO、およびV)と接触するとすぐに薄くなる。一般に、吸着剤と吸着質との間の結合エネルギーは、それらの解離エネルギー[50]、電気陰性度、および化学硬度[47]に関連しており、Flore式[51]で計算することができる。酸化物とポリスルフィドとの間のより強い結合エネルギーは、より良い捕捉または阻止効果につながるはずであると仮定するのは合理的である。そのような仮説を調べるために、一連のCNT/酸化物RSLは、図20に示すように、CNTおよび様々な酸化物を使用して製造され、それらのポリスルフィド捕捉性能が評価された。図6(d)は、ポリスルフィドとの結合エネルギー、並びに1Cにおいて100サイクル後のそのようなRSLを備えたLi−S電池の容量を示す。ここに示すように、結合エネルギーとサイクル安定性の間には大きな相関がある。酸化物とポリスルフィドとの間の結合エネルギーが強いことにより、図20に示されるように、より高い容量維持とより低い自己放電率がもたらされる。例えば、WOおよびポリスルフィドは、13.62eVという高い結合エネルギーを示し、1075mAh g−1という高い容量とほぼゼロである自己放電率を持つ電池をもたらす。予想通り、CuOおよびポリスルフィドは9.83eVという低い結合エネルギーを示し、結果として572.9mAh g−1という低い容量維持率と約9.0%という自己放電率をもたらす。この観察は、捕捉材料とポリスルフィドとの間の結合エネルギーを用いて、ポリスルフィド捕捉能力を評価または予測し、Li−S電池の定量化された指針を提供できることを示唆する。
【0080】
redoxより低いEを有する酸化物に関しては、化学吸着が起こり、Li溶液の色は酸化物(MoO、TiO、WO、およびV)と接触するとすぐに薄くなる。一般に、吸着剤および吸着質の結合エネルギーは、それらの解離エネルギー[50]、電気陰性度、および化学硬度[47]に関連しており、Flore式[51]で計算することができる。酸化物とポリスルフィドとの間のより強い結合エネルギーは、より良い捕捉または阻止効果につながるはずであると仮定するのは合理的である。そのような仮説を検討するために、一連のCNT/酸化物RSLが、図19のXRDに示されるように、CNTおよび様々な酸化物を使用して製造され、それらのポリスルフィド捕捉能力が評価された。図6(d)は、ポリスルフィドとの結合エネルギー、並びに1Cにおいて100サイクル後のそのようなRSLを備えたLi−Sセルの容量を示す。ここに示すように、結合エネルギーとサイクル安定性との間には大きな相関がある。酸化物とポリスルフィドとの間の結合エネルギーが強いことにより、図20に示すように、容量維持率が高くなり、自己放電率が低くなる傾向をもたらす。例えば、WOおよびポリスルフィドは、13.62eVという高い結合エネルギーを示し、1075mAh g−1という高い容量とほぼゼロである自己放電率を持つ電池をもたらす。予想通り、CuOおよびポリスルフィドは9.83eVという低い結合エネルギーを示し、572.9mAh g−1という低い容量維持率と約9.0%の自己放電率をもたらす。この観察は、捕捉材料とポリスルフィドとの間の結合エネルギーを使用して、ポリスルフィド捕捉能力を評価または予測し、Li−S電池の定量化された指針を提供できることを示唆している。
【0081】
図7は、ポリスルフィドの捕捉能力と再生能力を備えたRSLを示す。図7において、RSLは、2つのCNT層と挟まれたCNT/金属酸化物層から作られる。
【0082】
要約すると、RSLのグループは、低次元の形態でCNTと酸化物に基づいて開発され、これはポリスルフィドの拡散を動的に阻止し、サイクル中に自身を再生することができる。CNT/V RSLを備えたLi−S電池は、60サイクルで6mAh cm−2を超える高い面容量、著しく長いサイクル寿命(12サイクルに対して100サイクルを超える)、3日間休止後2.45%という低い自己放電率を示し、リチウム腐食が約73.3%減少する。さらに最適化すると、RSLを備えた電池のエネルギー密度は、場合によっては最大560Wh kg−1に達する可能性があり、これにより、Li−S電池を実用化することができる。酸化物の電子構造とポリスルフィドの酸化還元電位に基づいて、酸化物の捕捉能力が徹底的に調査され、Li−S電池の電気化学性能と関係付けられる。この検討は、シャトル効果に効果的に対処するためのポリスルフィド捕捉層のグループを提供するだけでなく、高エネルギー密度と長いサイクル寿命を有するLi−S電池に対する定量化された設計フレームワークを提供し、これにより該電池は実用的な用途に一歩近づく。
【0083】
CNT/酸化物複合材料の合成:CNT/V複合材料は、以前に報告された手順[37]に従って、活性化されたCNTで合成された。簡単にいえば、メタバナジン酸アンモニウム(Sigma−Aldrich)0.6gおよびP123(EO20PO70EO20)(Sigma−Aldrich)1gを、2M HCl 3mLを含む脱イオン水60mLに分散させた。20mgの活性化CNTを混合物に加え、30分間超音波処理した。混合物を室温で12時間撹拌し、次いでオートクレーブに移し、120℃で24時間加熱した。得られた複合材料を脱イオン水(DI)およびエタノールで3回すすぎ、80℃で一晩真空乾燥した。異なる金属酸化物を含む他のCNT複合材料は、同様の水熱法を使用して合成された。
【0084】
RSLの作製:RSLは、真空ろ過法を使用して調製された。CNTおよびCNT/金属酸化物複合材料を超音波処理によりエタノールに分散させ、0.1mg mL−1および1mg mL−1の懸濁液を別々に形成した。その後、20mLのCNT懸濁液、6mLのCNT/金属酸化物複合材料懸濁液、および20mLのCNT懸濁液をポリプロピレン膜(Celgard 2500、直径47mm)を通じて真空ろ過し、柔軟な三重層膜を形成した。膜を70℃で一晩乾燥させた後、直径18mmの円形に打ち抜いた。各セパレータのRSLの重量は、表において約0.4−0.6mg cm−2である。CNT RSLの場合、100mLのCNT懸濁液をろ過した。
【0085】
硫黄カソードおよびLi溶液の調製:スラリーキャスト法を用いて硫黄カソードを調製した。低硫黄担持(1−2mg cm−2)の電極について、硫黄、カーボンブラック、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比5:4:1で混合して、N−メチル−2−ピロリドンとの均一なスラリーを形成し、その後、ドクターブレードで炭素コーティングされたアルミホイルにキャストした。より高い硫黄担持(最大6mg cm−2)の電極について、炭素/硫黄複合材料、カーボンナノファイバー、カーボンブラック、PVDFを重量比88:4:1:7で混合してスラリーを形成した。ケッチェンブラック[52]を使用して多孔質炭素粒子を製造し、159℃で液体浸透法を使用して重量比1:4で炭素/硫黄複合材料を調製した。電極を真空中70℃で4時間乾燥させた後、直径16mmの小片に切断した。化学量論量の元素硫黄(Sigma Aldrich)およびLiS(Alfa Aesar)をDOL:DME(体積比1:1)で混合することにより、0.5M Li溶液を調製した。130°Cで24時間攪拌した後、Liの均一な暗赤色の溶液が得られた。
【0086】
電気化学的測定:電気化学性能を評価するために、アノードとしてリチウム金属を使用して2032型コインセル(MTI Corporation)を組み立てた。RSLはポリプロピレンセパレータと硫黄カソードの間に配置された。0.5M LiTFSIおよび2wt%LiNOを含むDOL/DMEを電解質として使用した。CV測定は、Bio−Logic VMP3電気化学ワークステーションで実施された。ガルバノスタット充放電測定は、すべてのレートについて1.7−2.8Vの電圧範囲でLand CT2000バッテリーテスターを使用して実行された。硫黄の質量に関して比容量が計算された。EISテストは、Solartron 1860/1287電気化学インターフェースで実施された。
【0087】
材料キャラクタリゼーション:XRD測定は、銅Kα放射(λ=1.54Å)を使用してRigaku MiniFlex機器で実施された。TGAはTAで実施された。機器SDT Q600において、空気流下で40℃から600℃まで5℃ min−1の加熱速度を採用した。SEM検討はJEOL JSM−6700 FE−SEMで実施され、TEM検討は120kVで動作するFEI T12で実施された。XPS検討について、サンプルは、分析のためにXPSの高真空チャンバー(AXIS Ultra DLD)に迅速に移す前に、グローブボックス内のトランスポーターに密封された。すべてのスペクトルは、CasaXPSソフトウェアを使用して、ガウス−ローレンツ関数とShirleyタイプのバックグラウンドに適合させた。結合エネルギー値はすべて、285.0eVのC1sピークを使用して較正された。
【0088】
本発明の範囲を限定する意図はないが、本発明の実施形態による実施例およびそれらに関連する結果を以下に示す。しかしながら、これらの例は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0089】
実施例1
この例示的な実施例では、高エネルギー密度を有しサイクル寿命が長いリチウム硫黄電池を可能にする再生可能ポリスルフィド捕捉層が示されている。様々な金属酸化物を含むCNT複合材料は、次のように合成される。
【0090】
CNT/Fe複合材料の調製:1.25gのFeSO・7HO、5mLのポリエチレングリコール20,000溶液(50g L−1)および20mgの活性化CNTを超音波処理により42.5mLのDI水に分散させた。5mLの希釈アンモニア(2.5wt%)と0.135mL H(28−30wt%)を撹拌しながら上記混合物に加えた。次いで、混合物を室温で1時間撹拌し、160℃で8時間水熱反応させた。室温に冷却した後、形成されたままの複合材料をろ過し、蒸留水で洗浄し、60℃で一晩真空乾燥した。
【0091】
CNT/CuO複合材料の調製:0.94gの硝酸銅(Sigma−Aldrich)、1gのP123、および20mgの活性CNTを超音波処理により40mLのDI水に分散させた。次に、10mLの水酸化アンモニウム溶液(27−30重量%)を加えた。次いで、混合物を室温で1時間撹拌し、次いで110℃で4時間水熱反応させた。形成されたままの生成物を脱イオン水およびエタノールで3回すすぎ、真空中80℃で一晩乾燥させた。生成物を窒素中300℃で2時間さらに焼成した。
【0092】
CNT/MnO複合材料の調製:0.72gのKMnOと20mgの活性CNTを超音波処理により60mLの脱イオン水に分散させた。混合物は、100℃で24時間水熱反応を受けた。生成物を脱イオン水で3回すすぎ、その後80℃で一晩真空乾燥した。
【0093】
CNT/MoO複合材料の調製:1グラム(g)のヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物、1グラムのP123、および40mgの活性CNTを超音波処理により33mLの脱イオン水に分散させた。次に、6mLのHNOを加え、180℃で24時間反応させた。生成物を脱イオン水で3回すすぎ、その後80℃で一晩真空乾燥した。
【0094】
CNT/WO複合材料の調製:0.5gのタングステン酸ナトリウム、0.25gの硫酸アンモニウム(Sigma−Aldrich)および20mgの活性化CNTを超音波処理により10mLの脱イオン水に分散させた。次に、3M HSO水溶液を加えることにより、溶液のpHを1に調整した。混合物は、100℃で12時間水熱反応を受けた。生成物を脱イオン水で3回すすぎ、その後80℃で一晩真空乾燥した。
【0095】
図8は、0.2VでのCNT/V RSLおよびV複合材料層(同じ領域)の直流分極プロファイルを示す。直流分極プロファイルは、V複合材料層(余分なCNT層なし)の導電率がCNT/V RSLと比べて4桁低いことを示す。このような導電率の大きな違いは、その製造方法に起因する。CNT/V RSLを調製するために、CNT、V複合材料、およびCNTの分散液を多孔性セパレータ上で連続的にろ過し、この間、CNTとV複合材料のCNTが効果的に絡まり、効果的に導電性のネットワークを形成することができる。対照的に、V複合材料分散液のみがろ過されてV複合材料層を形成したが、存在するCNTの量が少なく、有効な導電性ネットワークが少ないため、電子伝導性が著しく低下した。
【0096】
図9は、CNT/V複合材料のTGAプロットを示し、これは複合材料が約9.8%のCNTを含むことを示している。
【0097】
図10は、CNT/V RSLのデジタル写真を示す:(A)調製されたままの状態、(B)折り畳まれた状態、および(C)回収された状態。
【0098】
実施例2
図11は、CNT(2)RSLまたはCNT/V RSLを備えたCelgard PPセパレータを備えた電池のガルバノスタットサイクル性能を示す。すべての電池について、0.3Cレートで3サイクル、次いで1Cレートで250サイクル繰り返した。図11に示すように、CNT(2)RSLおよびCNT/V RSLを備えたCelgard PPセパレータを有する各セルでは、サイクル数が増えると比容量が減少する。サイクル数が同じ場合、CNT(2)RSLを備えた電池の比容量は、CNT/V RSLを備えた電池の比容量よりも低くなるが、Celgard PPセパレータを備えた電池の比容量よりも高くなる。
【0099】
図12は、異なるCNT/V質量比で、かつ一定の複合材料質量で調製されたCNT/V RSLを備えて作られた電池の容量維持を示す。図12に示すように、CNT/V RSLの比率が1:1.33、1:1.17、および1:0.92である各電池について、サイクル数が増加するにつれて比容量が減少する。サイクル数が0より大きく、同じサイクル数である場合、CNT/V RSLの比率が1:17の電池の比容量は、CNT/Vの比率が1:33の電池の比容量よりも低くなるが、CNT/Vの比率が1:0.92の電池の比容量と比べて高い。
【0100】
図13は、0.3Cレートで、Celgard PPセパレータ、CNT RSL、CNT/V RSL、およびV複合材料層を備えたLi−S電池のガルバノスタットサイクル性能を示す。CNT/V RSLは、再生捕捉剤に起因してCNT RSLと比べて優れた容量性能を示し、CNT RSLは、ポリスルフィドを吸着および脱離する性能に起因して、Celgard PPセパレータと比べて優れた性能を示す。対照的に、V複合材料層はポリスルフィドを効果的に除去することができるが、導電率が低いため、捕捉されたポリスルフィドは充電プロセスの間改めて放出されることができなかった。このような非再生プロセスにより、複合材料内にポリスルフィドが連続的に捉えられ、容量の連続的な低下をもたらした。
【0101】
図14は、硫黄担持量、電解質と硫黄との間の比(E/S)、および活物質の比容量が異なるLi−S電池のエネルギー密度を示す。Li−S電池の比容量と平均作動電位はコインセルの電気化学的性能に基づいており、質量はセパレータ、RSL、硫黄カソード、リチウムアノード、および液体電解質の重量を含む電池全体に基づいている。
【0102】
図15(A)は、様々なLi濃度におけるCNTおよびCNT/V RSLの捕捉容量を示す。図15(B)および15(C)は、それぞれ0.05mV s−1の走査速度における平衡状態にされたCNT RSLおよびCNT/V RSLカソードのサイクリックボルタンメトリーを示す。図15(B)および15(C)を参照すると、CNTおよびCNT/V RSLは、それぞれ様々な濃度を有するLi溶液で平衡状態とされた。表面の残留溶液を拭き取った後、カソードとして平衡状態とされたRSLを使用し、アノードとしてリチウム金属を使用して、電池が組み立てられた。どちらのセルも、約2.36Vの開回路電圧(OCV)を示すが、これはポリスルフィドの酸化還元電位と同じである。次に、電流が1μMに達するまで電池を2.8Vに保持し、その間、吸着したポリスルフィドからのLiがRSLから除去された。総電荷が測定され、RSLに吸着されたLiの量に変換された。
【0103】
図16は、1Cにおける50サイクル後のリチウム表面のSEM画像を示し、(A)および(B)がCNT(1)RSLを備えたLi−S電池であり、(C)および(D)がCNT/V RSLを備えたLi−S電池である。
【0104】
図17は、RSL有りおよびRSL無しの硫黄カソードでのサイクル後のリチウムアノードの断面SEM画像および元素マッピングを示す。Li−S電池は、(A−B)CNT(1)RSLおよび(C−D)CNT/V RSLを用いて組み立てられた。黄色1701は硫黄化学種の分布を表す。
【0105】
図18は、酸化物の伝導帯および価電子帯および分子の酸化還元電位の相対位置に関する電子移動方向を示す。
【0106】
図19は、物理吸着と化学吸着における相互作用を示す。物理吸着の場合、酸化物によって生成される電界はその表面電位に比例する[49]。化学吸着の場合、酸化物と吸着された化学種との間の結合エネルギーは、両方の解離エネルギー、電気陰性度、および化学硬度に関連しており、Flore式[51]で計算できる。
【0107】
図20は、RSLにおいて使用されるCNT/酸化物複合材料のXRDプロットを示す。複合材料には、Fe、CuO、MnO、M、V、およびWOが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
図21は、様々なCNT/酸化物RSLを備えたLi−S電池の自己放電率を示す。図21において、Li溶液(対照)の自己放電率は約20%である。NiO、CuO、CO3、CNT、ZnO、V、およびWOの自己放電率はますます小さくなる。上記各成分の各々およびすべての正確な自己放電率(%)は、図21に従ってスケーリングできる。
【0109】
本発明の例示的な実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的のためにのみ提示されており、網羅的であること、または開示された正確な形態に本発明を限定することを意図していない。上記教示に照らして様々な修正および変形が可能である。
【0110】
本発明のいくつかの代替実施形態を示したが、当業者に知られているように、特許請求の範囲および図面を含んでこれ以前およびこれ以降で議論され説明されたように、本発明の根底にある範囲から逸脱することなく特定の変更を行うことができることを理解されたい。さらに、上記の実施形態および以下に記載の特許請求の範囲は、本発明の原理を例示することのみを意図しており、開示された要素に本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0111】
実施形態は、本発明の原理およびそれらの実際の用途を説明するために選択および説明され、当業者が本発明および様々な実施形態を利用し、考えられる特定の用途に適した様々な修正を加えるよう促す。本発明が関連する技術分野の当業者には、その精神および範囲から逸脱することなく代替実施形態が明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲は、前述の説明およびそこに記載された例示的な実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0112】
【表5a】
【表5b】
【表5c】
【表5d】
【表5e】
【表5f】
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図3g
図3h
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16(A)】
図16(B)】
図16(C)】
図16(D)】
図17(A)】
図17(B)】
図17(C)】
図17(D)】
図18
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図20
図21