(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一形態を図面を参照して以下に説明する。なお、以下では装置等の具体的な一例が開示されているが、本発明は必ずしもこれらの具体的構成に限定されるものではない。以下では、ハンドスイッチを収納するための袋を例として説明を行うが、本発明はハンドスイッチ以外のデバイスを収納する袋としても適用可能である。
【0014】
図1、
図2に示すように、本実施形態の医療デバイス収納体10は、ハンドスイッチ70が収められるシース部材40と、そのシース部材40の一部を保持するガイドケース20とを備えている。
図1は、使用前の状態であり、この状態では、シース部材40は略扁平に畳まれたガイドケース20内に収められている。
【0015】
使用時には、
図2に示すように、ガイドケース20が開口するように開かれ、そこにハンドスイッチ70が入れられてシース部材40が垂下する状態となる(詳細下記)。
【0016】
(ハンドスイッチ)
ハンドスイッチ70としては、どのような形状のものであっても構わないが、一例を
図3に示す。この例のハンドスイッチ70は、使用者が片手で握ることができる程度の大きさの本体部71と、その一部から突出した押下部75とを有している。
【0017】
本体部71は、一例で、縦長の略柱状の形状をしている。限定されるものではないが、本体部71は、樹脂製の筐体であってもよい。ハンドスイッチ70は全体的な形状が略円柱状であってもよいし略角柱状であってもよいが、この例では、略角柱状とされている。ハンドスイッチ70全体のサイズとしては、例えば、高さが50mm以上、特には100mm以上であることが好ましく、このようなサイズとすることで、使用者が握り易く、操作し易いものとなる。一方、高さの上限としては、例えば200mm以下、特には170mm以下であることが、ハンドスイッチが過度に大型化しない点で好ましい。
【0018】
ハンドスイッチ70は、ケーブル(不図示)を介して接続されるものであってもよいし、無線方式で通信を行うものであってもよい。無線方式の場合、例えば、図示は省略するが、ハンドスイッチ70は、スイッチ素子等と、回路基板と、無線通信モジュールと、内蔵バッテリー等を備えるものであってもよい。回路基板には、必要に応じて、プロセッサ等が実装される。無線通信モジュールの制御はこのプロセッサによってよって行われるものであってもよい。
【0019】
ハンドスイッチ70が接続される対象は、造影剤を注入する薬液注入装置(不図示)のコンソール、注入ヘッド、またはその他の付属機器のいずれであってもよい。具体的な例としては、ハンドスイッチ70が、コンソールまたは注入ヘッドに有線方式または無線方式で接続され、スイッチを押すと注入が開始される、または、注入が停止されるようなものであってもよい。スイッチを押した際の動作制御に関しては適宜変更可能である。
【0020】
(医療デバイス収納体の構成)
−シース部材−
医療デバイス収納体10のシース部材40は、
図4に示すように、上端部が開口した袋状であり、開口部の周縁部は伸縮可能なリング部41が設けられている。リング部41は、例えば円形断面であるが、これに限定されない。シース部材40は、本体部分とリング部41とが一体的に形成されたものであってもよいし、別体であってもよいが、以下では、一体的に形成されているものとして説明する。
【0021】
シース部材40は柔軟なシート状の素材で形成され、一例でゴム製である。ゴムとしては、例えば天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックス等を利用可能である。シース部材40は、菌やウイルス等の透過を防止するために、液体が透過しない液体不透過性のものであることが好ましいところ、ゴム製の素材はこのような観点からも好適である。シース部材40の厚み特に限定されるものではないが、一例として、0.01mm〜0.5mm程度である。シース部材40の材質は、透明であってもよいし、完全な透明ではないものの光透過性を有し内部に収納されたデバイスを視認できる、透過性を有する材質であってもよい。
【0022】
リング部41の全周(換言すれば、シース部材40の開口部の全周)は100mm〜300mm程度であってもよく、一例で150mm〜250mm程度であってもよい。なお、ここで言う長さは、リング部41が伸びていない自然長の状態を意図しているが、必ずしもこれらの具体的な寸法に限定されるものではない。
【0023】
シース部材40の長さ(リング部41から底までの長さ)は、収納されるハンドスイッチのサイズにもよるが、500mm以下程度であってもよく、より具体的には400mm以下であってもよい。シース部材40の長さは、また、100mm以上であることが好ましく、より具体的には200mm以上であることが好ましい。このようなサイズであることが、手で握って操作を行う本実施形態のハンドスイッチ70のようなものを収納するのに好適なためである。
【0024】
シース部材40の底部は、この例では、略半球状(袋を平面状に畳んだ状態で底部が略半円状となるような形状)に形成されている。それにより、シース部材40は全体として円柱形で、底部が略半球状の形態となっている。シース部材40は、別の表現をすれば、部材どうしを接合した接合部などを有さない、継ぎ目の無い立体的な袋状に形成されている。
【0025】
別の例として、筒状のウェブシート(一例で樹脂フィルム製)を間欠的に熱シールして形成した平面的な袋状のシース部材を利用してもよい。上記例では、シース部材40は内径が一定のストレート形状であるが、他にも、例えば、シース部材40の開口部付近と中腹部付近との内径が異なる(中腹部付近の方が大径となる)ような形状のシース部材を利用してもよい。
【0026】
−ガイドケース−
ガイドケース20は、
図1、
図2に示すように、使用前の状態(「第1の形態」という)では略扁平に畳まれており、使用時に、手で把持して両側を押すと、開口するようになっている。
【0027】
ガイドケース20は、
図2(開いた状態、「第2の形態」という)に示すように、前面22、後面23、その両側の側面24、25を有し、上端および下端に開口部26、27を有する外枠21を備えている。外枠21の下端の開口部27付近に、直接、シース部材40のリング部41を取り付けてもよいが、本実施形態では、
図5に模式的に示すように、内枠28を設け、そこにリング部材41を保持させる構造を採用している。
【0028】
内枠28は、外枠21よりも一回り小さい枠であり、外枠21の内側に設けられている。内枠28と外枠21とは、接続体31によって接続されている。具体的には、接続体31は、外枠21の下端の縁と、内枠28の上端の縁とを繋ぐように形成されている。
【0029】
このような構成のガイドケース20は1枚のシート状の部材から作製することができる。以下、
図6の展開図を参照しながら説明する。なお、
図6は、寸法や角度等の数値は入れていないが、これに基いて実際の医療デバイス収納体を作製できる程度に表された図である。したがって、当該図面に表される形状(直線、曲線、テーパ形状、比率等)については、当業者が理解しうる範囲で、本出願によって開示される事項である。
【0030】
ガイドケース20の材質は、特に限定されるものではなく、紙や樹脂製のシート材などを利用できる。
【0031】
図6に示すように、この展開図は、外枠21を構成する、前面22、後面23、側面24、25を含んでいる。後面23は、2つの部位23−1、23−2で構成される。また、
図6の展開図は、内枠28を構成する前面28−1および後面28−2、28−3を含み、外枠21の前面22と内枠28の前面28−1とは帯状の接続部31で繋がっている。
【0032】
(外枠)
前面22の両側は、上側から下側に向かってすぼまるように傾斜した稜線22L、22Rとなっている。稜線22L、22Rは山折りされる線である。このような構成により、組み立てた際に、外枠が、上端開口側が拡がるテーパ状となるようになっている。それぞれの稜線22L、22Rの両側には、使用時に山折りになるように立体的に折り曲げられる補助稜線22b、23bが設けられている。補助稜線22b、23bについては、一例として、折り曲がりやすいように予め型押しされていてもよい。
【0033】
前面22と後面23とは、同形状であってもよいが、本実施形態では、使用時に開口部26(
図2も参照)からハンドスイッチ70を入れやすいように、前面22と後面23の高さが異なるように形成されている。具体的には、後面23には隆起部23aが形成され、前面22には凹部22aが形成されている。
【0034】
後面23−1のうち符号23hで示される部分は、他方の後面23−2の一部に重なって接着される部分である。接着は、特に限定されるものではないが、両面テープによるものであってもよいし、糊などの接着剤によるものであってもよい。符号23hで示される部分が、いわゆる「のりしろ」として、後面23−2の一部に接着されるようになっていてもよい。
【0035】
(内枠)
前面28−1の両側は、外枠21と同様、上側から下側に向かってすぼまるように傾斜した稜線28L、28Rとなっている。稜線28L、28Rは山折りされる線である。稜線28L、28R上には、開口部が設けられ、これにより折返したときにノッチ29が形成されるようになっている。
【0036】
このノッチ29は、後述するように、シース部材40のリング部41を引っ掛けるための箇所である。ノッチ29は、一例で、V字形、半円形、U字形など形状をした凹部である。
【0037】
後面28−2のうち符号28hで示される部分は、他方の後面28−3の一部に重なって接着される部分である。接着は、特に限定されるものではないが、両面テープによるものであってもよいし、糊などの接着剤によるものであってもよい。符号28hで示される部分に関しても、上記同様、いわゆる「のりしろ」として、後面28−2の一部に接着されるようになっていてもよい。
【0038】
接続部31は、外枠21の内側へと折り込まれ、内枠28を保持するアームのような役割りを果たす。
【0039】
(組立ておよび使用方法)
続いて、
図7、
図8等を参照して、組立ておよび使用方法を説明する。まず、内枠28の後面28−2、28−3を接着して枠状(この状態では扁平な状態となっている)とし、次いで、接続部31を外枠21の内側へと織り込む。なお、限定されるものではないが、接続部31の片面が、外枠21の内面に固定されるようになっていてもよく、この固定は、例えば、両面テープや糊などの固定手段を用いて行ってもよい。
【0040】
この状態は、
図7に示すように内枠28の両側にノッチ29が形成されているので、次いで、このノッチ29のところにシース部材40のリング部41をやや伸ばした状態で引っ掛ける。これにより、リング部41は、張力がかかった状態で、内枠28に取外し可能に保持される。
【0041】
そして、シース部材40を折り畳んで内枠28内に収め、次いで、外枠21の後面23−1、23―2を接着して組立てを完了する(この状態では全体として略扁平な状態となっている)。なお、外枠21を形作ってからシース部材40を内枠28内に収めるようにしてもよい。
【0042】
こうして作成された医療デバイス収納体10は、不図示の外装袋の中に収められて封入される。なお、シース部材40単体、または、シース部材40とガイドケース20のアセンブリに対して滅菌処理が施されていることも好ましい。
【0043】
使用の際には、次のような手順で行われる。
図8(a)は、外枠21および内枠28を上面側から見た模式図である。
【0044】
まず、使用者は、外装袋(不図示)を開封し、医療デバイス収納体10を袋内から取り出す。この状態では、
図1のように、シース部材40がガイドケース20内に収まり、略扁平に畳まれた第1の形態となっている。シース部材40がこのようにガイドケース20に収まっている構成によれば、使用前の状態(流通状態)の製品サイズのコンパクト化を図ることができ、また、シース部材40がガイドケース20で保護されることとなるので損傷の防止の観点などからも好ましい。
【0045】
次いで、使用者は、ガイドケース20を片手で把持し(一例)、両側を内向きに押し付ける(
図8(a)および
図8(b)も参照)。
【0046】
すると、外枠21の両側の稜線22L、22Rが互いに近づくように変形し、枠が徐々に開いていく。この際、各稜線22L、22Rの両側の補助稜線22b、23bが山折りとなるように徐々に折れ曲がっていき、その結果、ガイドケース20の側面が形成される。
【0047】
外枠21を徐々に開いていくにつれて、両側の稜線22L、22Rが互いに近づき、次いで、内枠28も両側から内向きに押されて徐々に開いていく(
図8(b)参照)。内枠28の下端側には、シース部材40のリング部材41が保持されているので、内枠28が開くことにより、同時に、シース部材40も開口した状態となる。
【0048】
このような構成によれば、使用者は、ガイドケース20を把持するという簡単な動作でシース部材40を開口させることができ、しかも、シース部材40に一切触れることなく作業を行うことができるので衛生的である。
【0049】
こうしてシース部材40が開口したら、次いで、使用者は、ハンドスイッチ70をシース部材40の中に入れる。限定されるものではないが、ガイドケース20を開いた段階で、内部のシース部材40が自重で下がってガイドケース20から垂下するような構成であることも好ましい。このような構成の場合、シース部材40を摘んで引っ張り出したり、ハンドスイッチ70を挿入しながらシース部材40を伸ばしていくといった作業が不要となり、作業性および/または衛生面でも好ましい。
【0050】
そして、ハンドスイッチ70全体がシース部材40内に入ったら、使用者は、シース部材40を引っ張ってガイドケース20から取り外す。
【0051】
そして、
図9のように、一例で、クリップ60を用いてシース部材40の口を閉じる。クリップ60としては、どのような形状であっても構わないが、この例では、全体的に略U字の可撓性部材61で形成され、両端部どうしを互いに係合させることシース部材40の口を閉じることができるようなものとしてもよい。両端には、例えば略球形の端部63が設けられていてもよい。
【0052】
以上一連の工程により、ハンドスイッチ70をシース部材40内に封入することができ、使用者は、検査中、シース部材40によって保護されたハンドスイッチ70を清潔状態で使用することができる。
【0053】
検査終了後、シース部材40は、ハンドスイッチ70から取り外され、廃棄される。別の患者に対して再びハンドスイッチ70が使用される際には、別の医療デバイス収納体10が使用される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の医療デバイス収納体10は、ガイドケース20とシース部材40とを備え、そのシース部材40はガイドケース20の内枠28に取外し可能に保持されており、ガイドケース20を開くと同時にシース部材も開口するようになっている。したがって、ガイドケース20を開くだけでシース部材40を開口させることができ、シース部材40に触れることもないので、簡単な作業でハンドスイッチ70の封入をでき、かつ、衛生的である。
【0055】
シース部材40は、引っ張った際にガイドケース20が外れるように構成されている限り、シース部材40の取付け方式は、必ずしも本実施形態のようにリング部材41を引っ掛ける構成に限られるものではない。例えば、接着剤やテープ等によって、ガイドケース20の一部に固着させるようにしてもよい。しかしながら、本実施形態のように、リング部材41の伸縮性(張力)を利用してガイドケース20に引っ掛ける構成によれば、接着剤を塗布したり、テープを貼るといった作業が不要となり、医療デバイス収容体10の組立てが容易になる。
【0056】
以上、本発明の一形態について図面を参照して具体的に説明したが、次のような変更が行なわれてもよい:
1.ガイドケース
(a)上記実施形態では、外枠および内枠を有する二重枠構成であったが、枠を略扁平な状態から開いた際に同時にシース部材も開口するような構成である限り、1つの枠のみとしてもよい。
(b)上記実施形態では、補助稜線22b、23bが折れ曲がることによって側面24および側面25が形成されるものであったが、より簡素な構成として、そのような側面24、25が形成されることなく、ガイドケースが開くような構成であってもよい。一例として、円筒を押し潰しして扁平にしたような状態から、両側を内向きにすると、円筒が立体的となるような構成としてもよい。
(c)内枠、外枠、および接続部を1枚のシート状部材から形成することは、作製の容易性や構成の簡素化の観点から一形態において好ましいが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。内枠、外枠を別々の部材として構成してもよく、この場合、接続部を省略してもよい。
【0057】
2.シース部材
(a)上記実施形態では、開口部のところにリング部材41を設けた構成としたが、このような部材を設けずに本体部の伸縮性を利用して枠に取り付けられる構成としてもよい。
(b)シース部材の滅菌は従来公知の種々の方式で実施可能であるが、例えばガンマ線照射による滅菌方式を利用してもよい。シース部材のみならずガイドケースについても滅菌処理が施されてもよく、この処理は、シース部材およびガイドケースを同時に滅菌するものであってもよいし、個別に滅菌するものであってもよい。さらに、他の付属品や包装袋などがある場合には、これらについても滅菌処理が施されてもよい。
【0058】
(付記)
本出願は、少なくとも以下の発明を開示する:
1.枠状に形成されたガイドケース(20)であって、折り畳まれた第1の形態から枠の開口部が開く第2の形態へと変形可能に構成されたガイドケース(20)と、
柔軟な材質で袋状に形成され、使用時に医療デバイスが入れられるシース部材(40)と、を備え、
上記シース部材(40)は、
その開口部付近が上記ガイドケースの一部に取外し可能に保持されており、
上記第1の形態では上記ガイドケースの内部に収納されており、かつ、前記第2の形態では、前記ガイドケースにより袋の開口部が開いた状態に維持されるように構成されている、
医療デバイス収納体(10)。
【0059】
2.前記シース部材の開口部には、伸縮可能なリング部(41)が設けられている、上記記載の医療デバイス収納体。
【0060】
3.上記ガイドケースは、外枠(
21)と、その内側に配置された内枠(28)と、を有する、上記記載の医療デバイス収納体。
【0061】
4.上記内枠には、上記シース部材のリング部(41)を引っ掛けるノッチ(29)が形成されており、
上記シース部材は、引っ張ることで、上記リング部材(41)が上記ノッチ(29)から外れて上記ガイドケースから取り外すことができるように構成されている、
上記記載の医療デバイス収納体。
【0062】
5.上記シース部材は、ゴム製である、上記記載の医療デバイス収納体。
【0063】
6.上記シース部材は、全体として、略円柱状である、上記記載の医療デバイス収納体。
【0064】
7.上記シース部材は、少なくとも液体不透過の材質である、上記記載の医療デバイス収納体。
【0065】
8.上記外枠と上記内枠とは、帯状の接続部で繋がっており、
上記外枠、上記内枠、および上記接続部は、1枚のシート状の部材を折って作製されている、上記記載の医療デバイス収納体。