(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脱脂バイオマスを酸性条件に曝露する段階が、前記脱脂バイオマスを3.5のpHで酸洗浄し、続いてpHを4.5に調整し、続いてエタノールに懸濁することを含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ヒト及び/または動物のための食物または食物原料または食物サプリメントまたは食物代用物として有用なタンパク質材料を含む組成物を提供する。タンパク質材料は、バイオマスに由来し得ると共に、有利な特性、例えば、タンパク質のアミノ酸含量、分岐鎖アミノ酸含量、必須アミノ酸含量、フェニルアラニン及びチロシンの含量、アルギニン及びグルタミン酸/グルタミンの含量、ならびにメチオニン及びシステインの含量に関する有利な栄養プロファイルのいずれか1つまたは複数を有する。本発明のタンパク質材料の栄養プロファイルは、有利なレベルの全タンパク質含量、ならびに/または低い灰分含量、ならびに/または望ましい脂肪含量、炭水化物含量、及び水分含量も有し得る。さまざまな実施形態において、タンパク質材料は、すべての必須アミノ酸について、0.68超、または0.70超、または0.72超、または0.74超、または0.76超、または0.78超、または0.80超、または0.82超、または0.84超、または0.86超、または0.87超、または0.88超、または0.89超、または0.90超、または0.91超、または0.92超、または0.93超、または0.94超、または0.95超、または0.96超、または0.97超、または0.98超、または0.99超、または1.00超、または1.01超、または1.03超、または1.05超、または1.07超の未補正制限アミノ酸(UCLAA)スコアを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の限定培地でバイオマス生物を増殖させると、富栄養培地に対して、いずれか1つまたは複数またはすべての必須アミノ酸についてのUCLAAスコアは、少なくとも5%高い、または少なくとも7%、もしくは少なくとも10%、もしくは少なくとも12%、もしくは少なくとも14%、もしくは少なくとも15%、もしくは少なくとも18%、もしくは少なくとも20%、もしくは少なくとも22%、もしくは少なくとも24%高い。このことは非常に有利なことであり、というのも、バイオマス供給源からのタンパク質供給源のほとんどが0.90未満または0.86未満のUCLAAスコアを有するためである。
【0015】
タンパク質がどの程度効率的に人(または動物)の栄養必要量を満たすことになるのかを測定するために、アミノ酸のスコア付けを使用することができる。アミノ酸のスコア付けは、特定のタンパク質のアミノ酸含量の未補正尺度としても使用することができる。今回の場合、未補正制限アミノ酸(UCLAA)スコアは、特定のタンパク質材料のアミノ酸含量の尺度である。必須アミノ酸に含まれるアミノ酸は、タンパク質組成物を消費する動物に応じて異なり得る。ヒトの9つの必須アミノ酸は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、及びバリンである。当該技術分野の慣習に合わせて、タンパク質材料におけるmetの量は、システインと組み合わせてmet+cysとして測定することができ、pheの量は、チロシンと組み合わせてphe+tyrとして測定することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質組成物は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン+システイン、フェニルアラニン+チロシン、スレオニン、トリプトファン、及びバリンについて、0.68超、または0.70超、または0.72超、または0.74超、または0.76超、または0.78超、または0.80超、または0.82超、または0.84超、または0.86超、または0.87超、または0.88超、または0.89超、または0.90超、または0.91超、または0.92超、または0.93超、または0.94超、または0.95超、または0.96超、または0.97超、または0.98超、または0.99超、または1.00超、または1.01超、または1.03超、または1.05超、または1.07超のUCLAAスコアを有し、このリストは、ヒトの必須アミノ酸を説明していると考えることもできる。
【0016】
組成物は、分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、及びバリン)も大量に含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、フェニルアラニン及びチロシン、ならびに/またはメチオニン及びシステインも大量に含み得る。
【0017】
タンパク質材料は、例えば、ウマ、ウシ(cattle)、ウシ(bovine)、反芻動物、雄ブタ、ブタ(pig)、ブタ(swine)、ヒツジ、ヤギ、シチメンチョウ、ニワトリ、または他の家禽、ネコ、イヌなどの家畜または伴侶動物を含む、ヒト及び/または動物のための食物または食物原料として使用することができる。さまざまな実施形態において、こうした食物または食物原料は、ヒト及び/または家畜及び/またはペットに必須のアミノ酸をすべて含む。
【0018】
本発明のタンパク質組成物は、アレルゲンを含まないという追加の利点を有する。さまざまな実施形態において、組成物は、大豆アレルゲン、ピーナッツもしくは木の実のアレルゲン、卵アレルゲン、小麦アレルゲン、エンドウ豆アレルゲン、乳製品アレルゲン、乳アレルゲン、乳清アレルゲン、魚アレルゲン、甲殻類アレルゲン、またはそれらの任意のサブセットなどのヒトアレルゲンを含まない。したがって、タンパク質組成物は、本明細書に記載のヒトアレルゲンのいずれも、当該アレルゲンについての最小毒性量以上は含まず、こうしたアレルゲンのいずれかまたはすべてのレベルがゼロであり得る。具体的なアレルゲンレベルは、関与する具体的なアレルゲンに依存し、当業者であれば、任意の特定のアレルゲンについて、最小毒性量がどのくらいであるかを科学文献及び医学的知見から容易に決定することができる。さまざまな実施形態において、アレルゲンは、ピーナッツタンパク質、大豆タンパク質、乳清タンパク質、乳タンパク質もしくは乳製品タンパク質、卵タンパク質、木の実タンパク質、エンドウ豆タンパク質、小麦タンパク質、魚タンパク質、または甲殻類タンパク質であり得る。さまざまな実施形態において、本発明のタンパク質組成物は、ピーナッツ、乳、大豆、木の実、卵、乳清、小麦、魚、甲殻類、もしくはエンドウ豆のいずれか1つもしくは複数に由来するタンパク質もしくは材料を含まないか、またはそれらのいずれかに由来しない。ある特定の人は、ピーナッツ、乳、乳製品、大豆、木の実、卵、乳清、小麦、魚、甲殻類、またはエンドウ豆のいずれか1つまたは複数に対する生物学的な不耐性を有し得る。この生物学的な不耐性は、上記の名前を挙げた食物組成物に含まれる材料によって引き起こされる。そのような不耐性は、腹部膨満または他の消化障害もしくは消化異常、あるいは医療専門家に知られる他の身体症状を引き起こし得る。本発明のタンパク質組成物は、不耐性が生じるレベルのこれらの材料が存在しないかまたは当該材料を含まない。
【0019】
本発明のタンパク質組成物は、信頼できる供給源に由来し、天候、部分的もしくは完全な穀物不作、需要の急増、または他の予測不能な力によって左右されないというさらなる別の利点を有する。本発明のタンパク質組成物は、どのような量が望まれるとしても、培養において生産することができる。
【0020】
現在入手可能な食物タンパク質生産物は、ヒトまたは動物の代謝によって合成することができない必須アミノ酸の1つまたは複数が限られている。例えば、乳製品は、フェニルアラニン及びチロシンが限られている。マメ科植物は、含硫アミノ酸であるメチオニンが限られている。小麦及びトウモロコシなどの穀物はリジンが限られており、スレオニン(小麦)またはトリプトファン(トウモロコシ)もまた限られ得る。木の実及び種子は、リジンが限られていることが多い。国連食糧農業機関(FAO)は、すべての年齢群についての健康及び疾患におけるタンパク質必要量に関する推奨、ならびにタンパク質の品質に関する推奨を出している。さまざまな実施形態において、本発明のタンパク質組成物は、2〜5歳の小児についてのFAOの推奨必要量を超えるすべての必須アミノ酸を有利に含む。この利点は、他の植物由来タンパク質組成物には見られないものである。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質組成物は、ある量のヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン+システイン、フェニルアラニン+チロシン、スレオニン、トリプトファン、及びバリンを、それぞれ、2〜5歳の小児についてのFAOの推奨必要量を満たす量またはそれを超える量で含む。さまざまな実施形態において、本発明のタンパク質組成物は、ある量のヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン+システイン、フェニルアラニン+チロシン、スレオニン、トリプトファン、及びバリンのいずれか1つもしくは複数またはそれらの任意の組み合わせを、2〜5歳の小児についてのFAOの推奨必要量を満たす量またはそれを超える量で提供する。1つの実施形態では、FAOの推奨必要量は、列挙されたアミノ酸またはアミノ酸ペアのいずれか1つまたは複数について
図1に列挙されるものである。
【0021】
本発明のタンパク質組成物のさらなる別の利点は、当該タンパク質組成物が、菜食主義者向け、完全菜食主義者向け、及び非GMO(遺伝子組換え生物)として適切に分類できることであり、というのも、当該タンパク質組成物が、そうしたカテゴリーのそれぞれの食品表示に基づく適格性を有しているためである。例えば、組成物は、米国、欧州連合、中国、日本、及び他の国々における現在の規制に基づいてそのようなものとして法的に分類することができる。本発明のタンパク質組成物は、任意の動物、魚、または家禽もしくは甲殻類の生産物または一部を含まないため、菜食主義者向けである。本発明のタンパク質組成物は、任意の動物、魚、家禽、乳製品、または卵の生産物または一部を含まないため、完全菜食主義者向けでもある。本発明のタンパク質組成物は、組換えDNAまたは組換えDNAを含む生物を使用せずに生産されるため、非GMOである。タンパク質組成物の由来である生物は、天然供給源に由来し、組換えDNAを含まない。
【0022】
現在のタンパク質供給源は、必須アミノ酸の1つまたは複数が欠けているか、あるいは栄養的にバランスのとれていない量でアミノ酸を供給する。この問題に対する解決策の1つは、異なる供給源、例えば2つ以上の植物または他の供給源に由来するタンパク質を組み合わせることであった。いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質組成物は、単一の供給源から作製され、このことは、タンパク質が1つの供給源に実質的に由来しており、異なる供給源に由来するタンパク質の組み合わせに由来しないこと意味している。1つの実施形態では、単一の供給源は、単一の生物または生物混合物の培養(例えば、発酵)から得られるバイオマスであり得る。供給源に由来するということは、タンパク質材料が当該供給源から精製されたこと、当該供給源によって生産されること、あるいは当該供給源から抽出されたことを意味する。供給源に実質的に由来するということは、タンパク質材料の少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%が、当該供給源から精製されたこと、当該供給源によって生産されること、あるいは当該供給源から抽出されたことを意味する。いくつかの実施形態では、任意の藻類バイオマス及び/または微生物バイオマスの培養は単一の供給源である。単一の供給源に由来するタンパク質組成物は、タンパク質組成物のアミノ酸プロファイルまたは栄養プロファイルを追加のタンパク質が実質的に変える程度まで異なる量または異なるバランスのアミノ酸をその生産タンパク質において供給する異なる供給源、例えば異なる植物、動物、またはそれらの副産物に由来するタンパク質の組み合わせを含まない。タンパク質は、遺伝子操作の結果として産生される融合タンパク質に由来しないタンパク質であるか、または当該融合タンパク質を含まないタンパク質でもあり得る。例えば、細胞バイオマスに由来するタンパク質に対して、大豆、ピーナッツ、乳、卵、乳清、木の実、小麦、魚、甲殻類、エンドウ豆、または他の異なるタンパク質供給源に由来するタンパク質材料、ペプチド材料、またはアミノ酸材料を添加することは、組成物のアミノ酸プロファイル及び栄養プロファイルを実質的に変化させると考えられ、単一の供給源に由来するタンパク質組成物を生産しない。また、大豆、ピーナッツ、乳、卵、乳清、木の実、小麦、魚、甲殻類、エンドウ豆、または他の異なるタンパク質供給源の2つ以上に由来するタンパク質組成物は、単一の供給源に由来するものではない。
【0023】
本発明の組成物の追加の利点は、本発明の組成物がその機能性を制限する望ましくない成分を含まないことである。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、クロロフィルを含まない。クロロフィルは、スピルリナ(Spirulina)及びクロレラ(Chlorella)の生産物に見られ得るものであり、色見が望ましくなく、消費者受けがよくないため、加工食品における使用を制限する。別の実施形態では、タンパク質組成物は、肉眼によって検出可能でありタンパク質組成物の色を実質的に変えるであろう量のクロロフィルを含まない。
【0024】
近似分析
近似分析は、食物原料の栄養価の尺度であり、化合物の化学特性に基づいて食物原料を6つのカテゴリーに分けることを含む。近似分析は、一般に、動物による消化を再現し、食物原料のエネルギー及び栄養素含量を報告する。6つのカテゴリーは、1.水分、2.灰分、3.粗タンパク質(またはケルダールタンパク質)、4.粗脂質、5.粗繊維、及び6.消化性炭水化物(または窒素非含有抽出物)である。
【0025】
タンパク質性の食物または食物原料のいずれかは、少なくとも50%、もしくは少なくとも60%、もしくは少なくとも65%、もしくは少なくとも68%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも72%、もしくは少なくとも75%、もしくは少なくとも78%、もしくは少なくとも80%、もしくは少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、または50%〜70%、もしくは65〜75%、もしくは70〜80%、もしくは70〜85%、もしくは75〜80%、もしくは75〜85%、もしくは70〜90%、もしくは65〜90%、もしくは75〜90%、もしくは75〜100%、もしくは90〜100%(すべてw/w)の総タンパク質含量を有し得る。
【0026】
組成物のいずれかでは、灰分含量は、約12%未満、または11%未満、または10%未満、または約9%未満、または約8%w/w未満、または約7%w/w未満、または約6%w/w未満、または約3%〜約7%(w/w)、または約4%〜約6%(w/w)、または約5%〜約7%(w/w)であり得る。
【0027】
本発明のタンパク質性の食物もしくは食物原料(またはタンパク質組成物)のいずれかは、例えば約5%の脂質、または約6%の脂質、または約7%の脂質、または約8%の脂質、または30%未満の脂質含量、または25%未満の脂質含量、または20%未満の脂質、または18%未満の脂質、または15%未満の脂質、または12%未満の脂質、または10%未満の脂質、または9%未満の脂質、または8%未満、もしくは7%未満、もしくは6%未満、もしくは5%未満の脂質、または4%未満の脂質、または3%未満の脂質、または2%未満の脂質、または1.5%未満の脂質、または1%未満の脂質、または0.75%未満の脂質、または0.6%未満の脂質、または0.5%未満の脂質、または約1%〜約5%の脂質、または約1%〜約3%の脂質、または2%〜約4%の脂質(すべてw/w)などの様々な脂質含量を有し得る。脂質含量は、脂肪酸メチルエステル(FAME)プロファイルとして便宜的に表現することができる。
【0028】
同様に、本発明のタンパク質性の食物もしくは食物原料またはタンパク質組成物のいずれかは、2%未満、または1.0%未満、または0.75%未満、または0.60%未満、または0.50%未満の油含量を有し得る。したがって、本発明のタンパク質性の食物または食物原料は顕著な利点を提供するものであり、というのも、本発明のタンパク質性の食物または食物原料は、0.88超もしくは0.94超の、または本明細書でその他に記載されるUCLAAスコアを有し得ると共に、少なくとも73%、または少なくとも75%、または少なくとも78%の総タンパク質含量を有し得、さらに、5%未満、もしくは4%未満、もしくは3%未満、もしくは2%未満、もしくは1.5%未満、もしくは1%未満、もしくは0.05%未満の、または本明細書でその他に記載される脂質含量及び/または油含量を有し得るためである。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質組成物は、全細胞組成物ではなく、すなわち、全細胞を含まない。代わりに、本明細書に記載の処理手法を利用することで、記載の成分を有するが全細胞を含まないタンパク質生産物を得ることができるが、いくつかの実施形態では、処理がどの程度厳密に適用されるかに応じて、組成物は、10%未満の全細胞、または7%未満の全細胞、または5%未満の全細胞、または4%未満もしくは3%未満もしくは2%未満もしくは1%未満の全細胞(w/w)を含み得る。さらに、本明細書に記載されるように、組成物は、感覚刺激的に許容可能であり得、本明細書に記載のタンパク質含量及び/または脂質含量を有し得る。
【0030】
異なる実施形態では、非タンパク質窒素含量は、タンパク質性の食物または食物原料のいずれかにおいて、12%未満、または10%未満、または8%未満、または7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、または1%未満、または0.75%未満、または0.60%未満、または0.5%未満、または約1%〜約7%、または2%〜約6%(すべてw/w)であり得る。非タンパク質窒素は、無機窒素であり得る。また、本発明のタンパク質組成物は、5%未満、もしくは4%未満、もしくは3%未満、もしくは2%未満、もしくは1%未満、もしくは0.75%未満、もしくは0.60%未満、もしくは0.5%未満、もしくは0.25%未満、もしくは0.10%未満の有機窒素を有し得るか、または有機窒素を有してすらいないことがあり得る。
【0031】
実施形態のいずれかでは、本発明のタンパク質組成物は、20%未満、または15%未満、または12%未満、または10%未満、または9%未満、または8%未満、または7%未満、または6%未満、または5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、または1%未満(w/w)の水分含量を有し得る。
【0032】
本発明のタンパク質組成物のいずれかは、少なくとも75%、もしくは少なくとも78%、もしくは少なくとも80%、もしくは少なくとも81%のタンパク質成分を含み得るか、または本明細書に記載のように含み得ると共に、10%未満、もしくは7%未満、もしくは5%未満、もしくは3%未満、もしくは2%未満、もしくは1%未満の脂質含量を含み得るか、または本明細書に記載のように含み得る。特定の実施形態では、組成物は、少なくとも65%のタンパク質及び5%未満の脂質を有する。他の特定の実施形態では、組成物は、78%超または80%超のタンパク質及び2%未満または1%未満の脂質成分(w/w)を有する。
【0033】
さまざまな実施形態において、食物または食物原料は、いずれかの記載の量の脂質と併せて、いずれかの記載の量のタンパク質を含み得る。タンパク質性の食物または食物原料の脂質含量は、タンパク質材料の供給源、及び生産されることになるタンパク質材料の用途に応じて、ならびにその生産における段階を変えることによって、本明細書で説明されるように操作することができる。食物または食物原料における脂質含量は、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%(w/w)の多価不飽和脂肪酸によって、部分的にまたは完全に提供され得る。多価不飽和脂肪酸は、任意の組み合わせで、ガンマ−リノレン酸、アルファ−リノレン酸、リノール酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、及びアラキドン酸の任意の1つまたは複数であり得る。
【0034】
さまざまな実施形態において、タンパク質組成物のいずれかは、長さが50アミノ酸残基以上、または100アミノ酸残基以上、または200アミノ酸残基以上のポリペプチドを少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%含み得る。本発明のタンパク質組成物は、少なくとも15kDa以上、または少なくとも18kDa以上、または少なくとも20kDa以上、または少なくとも22kDa以上、または少なくとも25kDa以上、または15〜25kDa、または15〜50kDa、または15〜100kDa、または15〜200kDaの平均分子量のタンパク質を有し得る。他の実施形態では、本発明のタンパク質組成物におけるタンパク質の少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%が、少なくとも15kDa以上、または少なくとも18kDa以上、または少なくとも20kDa以上、または少なくとも22kDa以上、または少なくとも25kDa以上、または15〜25kDa、または15〜50kDa、または15〜100kDa、または15〜200kDaの分子量を有する。本発明のタンパク質組成物のいずれかは、11.0未満、または10.5未満、または10.0未満、または9.5未満、または9.0未満の保水力(WHC)値も有し得る。
【0035】
本発明のタンパク質組成物は、多種多様な食物において利用することができる。タンパク質組成物は、サプリメントまたは食物代用物のいずれかとしても利用することができる。例として、タンパク質組成物は、シリアル(例えば、穀物内容物を主に含むシリアルまたは朝食シリアル)、スナック棒(タンパク質及び炭水化物を主に含む棒状のスナック)、栄養棒またはエネルギー棒(典型的には、脂肪、炭水化物、タンパク質、ビタミン、及びミネラルの組み合わせを含み、栄養素の供給及び/または身体エネルギーの強化が意図される棒状の食物)、缶詰のまたは乾燥したスープまたはシチュー(スープ:肉もしくは野菜またはそれらの組み合わせであり、水で調理されることが多いもの、シチュー:スープと類似しているが、スープと比較して水が少なく、低い温度で調理されるもの)、バルクの肉及び/または人工肉のための結合剤として(人工肉は、タンパク質豊富な食物であり、通常、大豆または植物性タンパク質をベースとしているが、その中に動物由来の本物の肉が含まれていないものの、動物由来の肉と関連する特徴を有する)、チーズ代用物、野菜「バーガー」、動物またはペットの餌(例えば、家畜及び/またはペットによる消費向けの動物または家畜の餌であり、こうした餌は、主に穀物生産物であり得る)、ならびにその他多数において利用され得るかまたは組み込まれ得る。タンパク質組成物は、タンパク質粉末または野菜タンパク質粉末などの栄養サプリメントでもあり得る。タンパク質材料は、例えば、穀物ベースの小麦粉の代用物として有用なタンパク質豊富な粉末などの食物原料へと変換することもできる。タンパク質材料は、ヒト消費者及び消費動物の両方のための食物原料または食物として有用である。有利なタンパク質供給源の提供に加えて、本発明のタンパク質性材料は、添加され得る他の栄養素、例えば単にいくつかの例である、脂質(例えば、オメガ−3脂肪酸及び/またはオメガ−6脂肪酸)、繊維、さまざまな微量栄養素、ビタミンB、鉄、ならびに他のミネラルも含み得る。こうした栄養素は、FDAまたは他の政府機関の指針による1日当たりの推奨量またはそれらの倍数で提供され得る。
【0036】
バイオマス
本発明のタンパク質材料が得られるバイオマスの生産に有用な藻類または微生物は、さまざまなものであり得、所望のタンパク質含有生産物を生産する任意の藻類または微生物であり得る。いくつかの実施形態では、生物は、藻類(「ツボカビ」として分類されるものを含む)、微細藻類、シアノバクテリア、ケルプ、または海藻であり得る。生物は、光合成性もしくは光栄養性もしくは従属栄養性、またはそれらの組み合わせであり得る。生物は、天然起源のものであり得るか、またはタンパク質含量が増加するようにもしくは何らかの他の望ましい特徴を有するように操作することができる。さまざまな実施形態において、本発明において利用されるバイオマスは、微生物供給源もしくは藻類供給源(例えば、ツボカビバイオマス)、または任意の適切な供給源に由来し得る。異なる実施形態では、多くの属及び種の藻類、及び/またはシアノバクテリア、ケルプ、及び海藻を使用することができ、単なるいくつかの例としては、アルスロスピラ(Arthrospira)属、スピルリナ属、コエラストルム(Coelastrum)属(例えば、プロボスシデウム(proboscideum))のもの、大型海藻、例えば、パルマリア(Palmaria)属(例えば、パルマタ(palmata))(ダルス(Dulse)とも呼ばれる)、アマノリ(Porphyra)属(スリーブハック(Sleabhac))、褐藻綱(Phaeophyceae)、紅藻網(Rhodophyceae)、緑藻綱(Chlorophyceae)のもの、シアノバクテリア門(Cyanobacteria)、珪藻綱(Bacillariophyta)、及び渦鞭毛藻綱(Dinophyceae)がある。藻類は、微細藻類(植物プランクトン、微小植物、プランクトン藻類)または大型海藻であり得る。本発明において有用な微細藻類の例には、限定はされないが、アクナンテス(Achnanthes)、アンフィプロラ(Amphiprora)、アンフォラ(Amphora)、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)、アステロモナス(Asteromonas)、ボエケロヴィア(Boekelovia)、ボリドモナス(Bolidomonas)、ボロジネラ(Borodinella)、フウセンモ(Botrydium)、ボトリオコッカス(Botryococcus)、ブラクテオコッカス(Bracteococcus)、キートケロス(Chaetoceros)、カルテリア(Carteria)、クラミドモナス(Chlamydomonas)、クロロコックム(Chlorococcum)、クロロゴニウム(Chlorogonium)、クロレラ(例えば、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)、C.ケッセレリ(kessleri)、C.ブルガリス(vulgaris)、C.プロトセコイデス(protothecoides))、クロオモナス(Chroomonas)、クリソスファエラ(Chrysosphaera)、クリコスファエラ(Cricosphaera)、クリプセコジニウム(Crypthecodinium)の1種、クリプトモナス(Cryptomonas)、キクロテラ(Cyclotella)、ドナリエラ(Dunaliella)、エリプソイドン(Ellipsoidon)、エミリアニア(Emiliania)、エレモスファエラ(Eremosphaera)、エルノデスミウス(Ernodesmius)、ユーグレナ(Euglena)、ユースティグマトス(Eustigmatos)、フランセイア(Franceia)、フラギラリア(Fragilaria)、フラジラリオプシス(Fragilariopsis)、ガルディエリア(Galdieria)の1種、グロエオサムニオン(Gloeothamnion)、ヘマトコッカス(Haematococcus)(例えば、プルビアリス(pluvialis))、ハロカフェテリア(Halocafeteria)、ハンチア(Hantzschia)、ヘテロシグマ(Heterosigma)、ヒメノモナス(Hymenomonas)、イソクリシス(Isochrysis)、レポキンクリス(Lepocinclis)、ミクラクチニウム(Micractinium)、モノダス(Monodus)、モノラフィディウム(Monoraphidium)、ナンノクロリス(Nannochloris)、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)、ナビクラ(Navicula)、ネオクロリス(Neochloris)、ネフロクロリス(Nephrochloris)、ネフロセルミス(Nephroselmis)、ニッチア(Nitzschia)、オクロモナス(Ochromonas)、サヤミドロ(Oedogonium)、オオキスティス(Oocystis)、オストレオコッカス(Ostreococcus)、パラクロレラ(Parachlorella)、パリエトクロリス(Parietochloris)、パスケリア(Pascheria)、パブロバ(Pavlova)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、フェオダクチラム(Phaeodactylum)、ファガス(Phagus)、ピコクロラム(Picochlorum)、プラチモナス(Platymonas)、プレウロクリシス(Pleurochrysis)、プレウロコッカス(Pleurococcus)、チノリモ(Porphyridium)、プロトテカ(Prototheca)、シュードクロレラ(Pseudochlorella)、シュードネオクロリス(Pseudoneochloris)、シュードスタウラストラム(Pseudostaurastrum)、ピラミモナス(Pyramimonas)、ピロボツリス(Pyrobotrys)、イカダモ(Scenedesmus)(例えば、オブリクウス(obliquus))、シゾクラミデラ(Schizochlamydella)、スケレトネマ(Skeletonema)、アオミドロ(Spyrogyra)、スティココッカス(Stichococcus)、テトラクロレラ(Tetrachlorella)、テトラセルミス(Tetraselmis)、タラシオシラ(Thalassiosira)、トリボネマ(Tribonema)、フシナシミドロ(Vaucheria)、ビリジエラ(Viridiella)、ビスケリア(Vischeria)、及びボルボックス(Volvox)が含まれる。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明のバイオマスを含む細胞または生物は、ラビリンチュラ綱の任意の微生物であり得る。スラウストキトリッド(Thraustochytrid)及びラビリンチュリッド(Labyrinthulid)の分類は、長年にわたり発展しているが、本出願の目的では、「ラビリンチュラ」は、スラウストキトリッド目及びラビリンチュリッド目の微生物を含む包括的用語であり、(限定はされないが)、アルトルニア(Althornia)属、アプラノキトリウム(Aplanochytrium)属、オーランチオキトリウム属、ボトリオキトリウム(Botryochytrium)属、コラロキトリウム(Corallochytrium)属、ディプロフリデス(Diplophryids)属、ディプロフリス(Diplophrys)属、エリナ(Elina)属、ジャポノキトリウム(Japonochytrium)属、ラビリンチュラ(Labyrinthula)属、ラビリンチュロイデス(Labryinthuloides)属、オブロンゴキトリウム(Oblongochytrium)属、ピロソルス(Pyrrhosorus)属、シゾキトリウム属、ヤブレツボカビ属、及びウルケニア(Ulkenia)属を含む。いくつかの例では、微生物は、限定はされないが、ヤブレツボカビ属、ラビリンチュロイデス属(Labyrinthuloides)、ジャポノキトリウム属、及びシゾキトリウム属を含む、1つの属に由来する。あるいは、宿主ラビリンチュラ微生物は、限定はされないが、オーランチオキトリウム属、オブロンギキトリウム属(Oblongichytrium)、及びウルケニア属を含む、1つの属に由来し得る。こうした属内の適切な微生物種の例には、限定はされないが、シゾキトリウム属の任意の種(シゾキトリウム・アグレガツム(Schizochytrium aggregatum)、シゾキトリウム・リマシナム(Schizochytrium limacinum)、シゾキトリウム・ミヌツム(Schizochytrium minutum)を含む)、ヤブレツボカビ属の任意の種(ウルケニア属の旧種、例えば、U.ビスルゲンシス(visurgensis)、U.アモエボイダ(amoeboida)、U.サルカリアナ(sarkariana)、U.プロフンダ(profunda)、U.ラジアタ(radiata)、U.ミヌタ(minuta)、及びウルケニア属の1種であるBP−5601を含むと共に、スラウストキトリウム・ストリアツム(Thraustochytrium striatum)、スラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)、スラウストキトリウム・ロゼウム(Thraustochytrium roseum)を含む)、ならびにジャポノキトリウム属の任意の種が含まれる。今回開示される発明に特に適したヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)の株には、限定はされないが、シゾキトリウムの1種(S31)(ATCC20888)、シゾキトリウムの1種(S8)(ATCC20889)、シゾキトリウムの1種(LC−RM)(ATCC18915)、シゾキトリウムの1種(SR21)、シゾキトリウム・アグレガツム(ATCC28209)、シゾキトリウム・リマシナム(IFO32693)、ヤブレツボカビの1種である23B ATCC20891、スラウストキトリウム・ストリアツム ATCC24473、スラウストキトリウム・アウレウム ATCC34304)、スラウストキトリウム・ロゼウム(ATCC28210、及びジャポノキトリウムの1種であるL1 ATCC28207が含まれる。本発明の目的では、本明細書で言及される生物はすべて、ツボカビを含めて、「藻類」であると考えられ、発酵または培養すると「藻類バイオマス」を生産する。しかしながら、所望のタンパク質を含む微生物バイオマスを生産する任意の細胞または生物を本発明において利用することができる。
【0038】
さらに追加の実施形態では、微生物は、限定はされないが、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、リポマイセス(Lipomyces)、モルチエレラ(Mortierella)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、ロドトルラ(Rhodotortula)、トリコスポロン(Trichosporon)、またはヤロウイア(Yarrowia)を含む、油性酵母であり得る。しかしながら、タンパク質豊富なバイオマスを生産するために、多くの他の種類の藻類、シアノバクテリア、ケルプ、海藻、または酵母も利用することができる。これらのもののみがバイオマスの供給源であるということではなく、というのも、顕著な栄養価の所望のタンパク質性材料を含む任意の供給源に由来するバイオマスを使用することができるためである。
【0039】
光栄養性の藻類がバイオマスとして使用されると、追加の段階を適用してタンパク質濃縮物を生産することが有利である。分離の増進、ならびに脂質及び炭水化物を含まない最終生産物のために、セルロース分解酵素を使用して細胞壁分解を助け、脂質、炭水化物、及びタンパク質を互いから遊離させることができる。クロロフィル及び他の色素を除去するために、異なる溶媒、塩分、及びpH条件を使用することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質組成物は、バイオマス、例えば、藻類バイオマスまたは微生物バイオマスから供給され、こうしたバイオマスのいずれも、光栄養性または従属栄養性であり得る。バイオマス材料は、生きている生物または最近まで生きていた生物に由来する(またはそれを供給源として有する)生物学的な材料である。藻類バイオマスは、藻類に由来し、微生物バイオマスは、微生物(例えば、細菌、単細胞酵母、多細胞真菌、または原生動物)に由来する。「細胞バイオマス」という用語は、藻類及び/または微生物バイオマスを指す。バイオマス中にタンパク質組成物を生産する藻類または微生物を、任意の適切な様式で発酵または増殖させることができる。本発明において利用されるバイオマスは、任意の生物または任意の分類の生物に由来し得、その例は、本明細書に記載されており、例えば、従属栄養性の藻類(例えば、ツボカビ)、または光栄養性もしくは光合成性の藻類などである。細胞バイオマスは、天然の水から収集するか、または培養することができる。バイオマスは、ケルプまたは海藻にも由来し得る。生物は、単細胞生物または多細胞生物のいずれかであり得る。培養時は、オープンポンドまたは任意の適切なサイズのフォトバイオリアクターもしくは発酵容器で培養を行うことができる。微生物または藻類は、光合成性または従属栄養性のいずれかであり得る。従属栄養性生物は、炭素固定を行うことができず、増殖に有機炭素を必要とするものである。いくつかの実施形態では、バイオマスは、エネルギーのために光を使用せずに化学エネルギーを使用する化学合成生物の藻類に由来する(化学合成従属栄養生物)。いくつかの実施形態では、光及び二酸化炭素のみが提供されるが、栄養素、例えば、窒素、リン、カリウム、及び他の栄養素を任意の培地に含めることができる。他の実施形態では、培養の特定の必要性に応じて、糖(例えば、デキストロース)、及び塩(例えば、Na
2SO
4、CaCl
2、(NH
4)
2SO
4)などの他の栄養素、及び他の栄養素(例えば、微量金属)が培地に含められる。
【0041】
十分なバイオマスが生成されたら、培養物からバイオマスを収集することができる。収集物は、ブロス、懸濁液、もしくはスラリーの形態で取り出されるか、またはこうした形態にされ得る。バイオマスは、一般に、遠心分離によって好都合な体積の原料バイオマスへと容易に縮小することができる。
【0042】
感覚刺激特性
本発明のタンパク質性の食物もしくは食物原料またはタンパク質組成物はいずれも、ヒトまたは動物にとって許容可能である感覚刺激的な味及び匂い特性を有し得る。許容可能な特性は、乳清もしくはエンドウ豆もしくは大豆などの標準タンパク質、または別の適切な標準タンパク質との比較において評価することができる。官能評価において評価されたときに標準品に近い(もしくはほぼ同じくらい良好な)、標準品に匹敵する、標準品と同等の、または標準品より良好な味及び匂い特性を有するタンパク質組成物は、許容可能な特性を有すると考えられる。タンパク質組成物は、標準品の感覚刺激特性に近いかまたはそれと同様であるならば、標準品に匹敵するものである。組成物が許容可能な感覚刺激特性を有するということは、その組成物が、特別な目的のために組成物を消費し、その目的の達成のためには幾分かの不快な感覚刺激特性に耐えることを厭わないニッチな消費者にとってだけなく、より広く一般的な栄養目的でも、食物または食物原料としての使用に適していることも示す。例えば、いくつかの藻類組成物は、特別な目的ではニッチな消費者によって消費されるが、こうした組成物は、感覚刺激的な味及び匂い特性が劣っており、消費者にとって一般的な食物または食物原料として広く魅力的なものではない。したがって、そのような組成物は、感覚刺激的に許容可能ではない。
【0043】
感覚刺激的な味及び匂い特性は、それぞれ味覚及び/または嗅覚に関する食物または食物原料の特性を指し、具体的には、ヒト消費者または消費動物にとって心地よいまたは不快な味及び/または匂い特性に関する、食物または食物原料の特性を指す。食物の感覚刺激的な味及び/または匂い特性を評価及び定量化する方法は、当業者に知られている。この評価によって、別の食物または食物原料と比較してより望ましいまたはより望ましくない味及び/または匂い特性を示す感覚刺激スケールに、特定の食物または食物原料を当てはめることが可能になる。
【0044】
一般に、こうした方法は、数人のパネル、例えば、3人、または4人、または5人、または3〜5人、または6人、または7人、または8人、または9人、または少なくとも3人、または少なくとも4人、または少なくとも5人、または少なくとも6人、または少なくとも7人、または少なくとも8人、または9人超の評価パネルの使用を含む。追加の例として、パネルは、11人または15人または19人を含むこともできる。パネルには、一般に、「盲検」試験において評価されることになるいくつかの試料(例えば、3つ、または4つ、または5つ、または6つ、または7つ、または8つ以上の試料)が提示され、この試験では、パネルメンバーは各試料の正体を知らない。試料は、細胞バイオマスに由来するタンパク質性材料であり得る。その後、パネルは、提供されるスケールに従って試料を評価付けし、このスケールは、各試料の味及び/または匂い特性を説明する3つ、または4つ、または5つ、または6つ以上のカテゴリーを有し得る。その後、パネルメンバー(例えば、大多数)の所見を利用することで、食物試料が、提供される他の食物試料(例えば、タンパク質標準品)と比較してより望ましい感覚刺激特性を有するかまたはより望ましくない感覚刺激特性を有するかを決定することができる。カテゴリーは、より望ましいまたはより望ましくない感覚刺激特性に関連し得るものであり、感覚刺激スケールで構成され得るものである。あるカテゴリーに得点付けされる試料は、別のカテゴリーに得点付けされる試料と比較してより望ましいまたはより望ましくない感覚刺激特性を有すると考えられる。いくつかの実施形態では、未処理バイオマスにおけるタンパク質性材料は、許容不可能なまたは望ましくない感覚刺激的な味及び匂い特性を有するが、こうした特性は、本明細書に記載の方法を適用することによって改善できる。タンパク質性成分は、タンパク質部分と、任意の脂質成分、または本明細書に記載のタンパク質成分と共有結合的にもしくはその他の様式で密接に会合した他の成分とを含み得る。
【0045】
いくつかの試験では、許容可能な感覚刺激プロファイル、すなわち、味及び匂い特性を示すために、当該技術分野において知られる「標準」の食物またはタンパク質性材料を含めることができる。標準品と同様に、標準品と同等に、または標準品より高く評価付けされる試料は、感覚刺激的に許容可能であるまたは望ましいものである一方で、より低く評価付けされるものは、許容不可能であるまたは望ましくないものである。さまざまな実施形態において、標準品は、大豆もしくは乳清もしくはエンドウ豆のタンパク質であるか、または特定の状況下で適した任意の標準品であり得る。官能試験において評価するためのこうした標準品の調製方法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0046】
そのような食物特性を評価するそのような方法の1つの例は、「嗜好の程度(degree of liking)」スケールとしても知られている、9点の快不快スケールである。(Peryam and Girardot,N.F.,Food Engineering,24,58−61,194(1952)、Jones et al.Food Research,20,512−520(1955))。この方法は、連続体に基づいて好みを評価し、参加している対象の好き嫌いに基づいてカテゴリー分けが行われる。9点法は、当業者に知られ、広く使用されてきたものであり、食品の評価において有用であることが示されている。9点の快不快スケールは、1.極度に好き、2.非常に好き、3.中程度に好き、4.わずかに好き、5.好きでも嫌いでもない、6.わずかに嫌い、7.中程度に嫌い、8.非常に嫌い、及び9.極度に嫌い、というカテゴリーを含む。したがって、ある特定の食物が、より望ましい味及び/または匂い特性を有するかまたはより望ましくない味及び/または匂い特性を有するかを評価することができる。許容可能な味及び匂い特性は、快不快スケールに従って評価することもできる。1つの実施形態では、本発明の方法によって生産されるタンパク質食物またはタンパク質食物原料は、本発明の1つまたは複数の段階に供されていない同一の供給源に由来するタンパク質生産物に対して、9点の快不快スケールにおいてより高く得点付けされる。他の実施形態では、本発明のタンパク質性の食物もしくは食物原料またはタンパク質組成物は、本明細書に記載のパネルによって評価されると、9点の快不快スケールにおいて、少なくとも4、または少なくとも3、または少なくとも2と得点付けされる。感覚刺激的な味及び/または匂い特性の他の評価方法を利用することもできる。
【0047】
評価パネルによって利用される具体的な基準は異なり得るが、1つの実施形態では、基準は、試料の感覚刺激特性が一般に心地よいかまたは不快であるかということを含む。したがって、1つの実施形態では、試料は、標準品と少なくとも同等の一般に心地よい感覚刺激特性を有すると評価付けされ得る。評価することができる他の一般的な基準には、限定はされないが、試料が、海水の(塩様もしくは塩水の特徴を有する)、魚のような(魚と関係する特徴を有する)、またはアンモニア様の(アンモニアと関係するもしくは似た特徴を有する)匂いまたは味を有するかということが含まれる。こうした特性のいずれか1つまたは複数を評価することができる。こうしたことは、主観的な判定ではあり得るが、人はこうした感覚に馴染みがあり、複数人のパネルに提供されて評価されると、有意義な結論が得られる。使用することができる他の基準は、試料が、提供される標準試料に対してより心地よいか、より心地よくないか、またはほぼ同一であるかということによって示される試料の一般的な感覚刺激的な味及び匂い特性である。既知のタンパク質評価方法を利用することで、統計学的に有意義な結論に容易に到達することができ、このことは、当該技術分野において一般になされることである。
【0048】
タンパク質材料の感覚刺激特性は、その材料の物理的組成と直接的に関係する。望ましくない感覚刺激特性を生じさせるある特定の化学物質は、本明細書に記載の方法によって除去され、その結果、バイオマスに元々存在したものと比較して顕著に異なるタンパク質組成物が得られる。こうした化学物質は、悪臭のする及び/または不快な味の多くの化合物の1つまたは複数であり得、こうした化合物は、場合によっては揮発性化合物である。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、望ましくない感覚刺激特性に寄与すると考えられる化合物の例には、脂質化合物(飽和または不飽和または多価不飽和の脂肪酸(例えば、DHA)を含む)及びその分解生成物、リゾリン脂質、アルデヒド(例えば、脂質の酸化によって生成されるもの)、ならびに他の分解生成物が含まれる。こうした脂肪酸またはその分解生成物は、(おそらく、タンパク質性材料の単離及び/または精製の間に)酸化され得るものでもあり、そのような化合物は、食物または食物原料に不快な感覚刺激特性を与える。
【0049】
いくつかの実施形態では、望ましくない感覚刺激特性を与える化合物は脂質材料であり、こうした脂質材料は、所望のタンパク質に共有結合し得るかまたはその他の様式で材料のタンパク質内容物と密接に会合し得る。脂質化合物は、非共有結合的に結合もし得るが、それにもかかわらず当該化合物が通常の精製方法によってタンパク質から精製除去され得ない様式でタンパク質と密接に会合し得る。化学物質は、飽和または不飽和の脂肪酸部分でもあり得る。脂肪酸(または脂肪酸部分)は、限定はされないが、ガンマ−リノレン酸、アルファ−リノレン酸、リノール酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、及びアラキドン酸、任意のω−3脂肪酸もしくはω−6脂肪酸、それらのいずれかの分解生成物、またはこうしたもののいずれかの酸化形態を含み得る。本発明の方法は、タンパク質材料におけるこうした化合物の1つまたは複数の量を、本発明の方法に供されていないバイオマスに由来するタンパク質材料における量に対して、少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%低減することができる。悪臭のする及び/または不快な味の化合物(感覚刺激的に許容不可能な化合物)は、酸化された脂質(例えば、酸化された不飽和脂肪酸または酸化されたオメガ−3脂肪酸(例えば、上記のもののいずれか))、ならびに悪臭のする及び/または不快な味の特性を与え得るタンパク質も含み得る。悪臭のする及び/または不快な味の化合物は、タンパク質性材料におけるタンパク質と共有結合したまたはその他の様式で密接に会合した脂質材料も含み得る。望ましくない感覚刺激特性を生じさせる化学物質は、例えば、本明細書に記載の脂質分子のいずれかなどの脂質分子の酵素的または化学的な分解生成物でもあり得る。いくつかの実施形態では、微生物バイオマスは、許容不可能なまたは望ましくない感覚刺激特性を有する1つまたは複数のタンパク質を含む。本発明に従って処理されると、許容不可能なまたは望ましくない感覚刺激特性を有する1つのタンパク質(または複数のタンパク質)を除去すること、変換すること、または、許容可能なもしくは望ましい感覚刺激特性を有する1つのタンパク質(もしくは複数のタンパク質)に変更することができる。
【0050】
限定培地
いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質材料は、限定培地においてバイオマスをインキュベートまたは発酵して細胞バイオマスを生産することによって生産される。富栄養増殖培地は、典型的には、酵母エキス及びペプトンなどの大量の有機窒素を有する。限定培地は、有機窒素を含む成分を低減または除去することによって得られる。さまざまな実施形態において、限定培地は、デキストロース、及び塩(硫酸アンモニウム、塩化ナトリウムなど)、及び微量金属を含む。限定培地の具体的な組成は用途に応じて異なり得ることを当業者であれば容易に認識するであろう。限定培地における増殖の実施及び本明細書に記載の方法の実施によって、より栄養的にバランスのとれたタンパク質生産物を微生物バイオマスまたは藻類バイオマスから得ることができる。限定培地は、例えば、窒素塩などの無機窒素を含み得る。以下に記載して提供される下記の成分の1つまたは複数を使用してさまざまな限定培地を作製することができる。
【0052】
さまざまな実施形態において、限定培地は、20%w/w未満の有機窒素、または15%w/w未満の有機窒素、または10%未満、もしくは7%未満、もしくは5%未満、もしくは2%未満、もしくは1%未満、もしくは0.5%未満、もしくは0.25%未満、もしくは0.01%未満(w/w)の有機窒素を含み得る。1つの実施形態では、限定培地は、有機窒素を含まない。本明細書に記載の限定培地において本明細書に記載の生物を培養することによって、この方法によって生産されるタンパク質組成物が、本明細書に記載のように、必須アミノ酸について0.85以上、または0.88以上、または0.90以上、または0.92以上、または0.95以上、または0.96以上、または0.97以上、または0.98以上、または0.99以上、または1.0超、または1.01超、または1.02超、または1.03超、または1.04超、または1.05超、または1.06超、または1.07超のUCLAAスコアを有することが予想外にも発見された。したがって、限定培地を使用すると、より高品質の栄養をヒト及び動物に提供するアミノ酸プロファイルを有するタンパク質組成物を生産する細胞バイオマスが得られる。有機窒素は、限定はされないが、下記の供給源の1つまたは複数に由来し得る:酵母エキス、ブレインハートインフュージョンブロス、カゼイン加水分解物、ラクトアルブミン加水分解物、大豆加水分解物、ゼラチン加水分解物、ウシ心臓加水分解物、グルタミン酸ナトリウム、ペプトン、トリプトン、またはファイトン(phytone)。
【0053】
さまざまな実施形態において、限定培地は、8g/L未満、または6g/L未満、または5g/L未満、または4g/L未満、または3g/L未満、または2g/L未満、または1g/L未満、または0.75g/L未満、または0.50g/L未満の量で無機窒素も含み得る。他の実施形態では、限定培地は、0.25〜10.0g/Lの無機窒素、または0.25〜8.0g/Lもしくは0.25〜5.0g/Lもしくは1.0〜10.0g/Lもしくは1〜8g/Lもしくは1〜5g/Lの無機窒素を含み得る。さまざまな実施形態において、無機窒素は、アンモニウム塩、尿素、または硝酸塩もしくは亜硝酸塩の形態で提供することができる。
【0054】
本発明において多くのさまざまな限定培地が機能し得、本明細書に列挙されるものはそのいくつかの例にすぎない。ある特定の実施形態では、限定培地は、下記の成分を使用して作製することができる:3.0〜9.0g/LのNaCl、0.25〜0.9g/LのCaCl、2.0〜8.0g/LのNa
2SO
4、2.0〜8.0g/LのNH
4塩及び/または0.1〜4.0g/LのNO
3塩、0.25〜2.0g/LのKCl、1.5〜8.0g/LのMgSO
47H
2O、0.5〜8ml/Lの消泡剤(KFO)、5〜75g/Lのグルコース、1.0〜8.0g/Lのリン酸二水素カリウム、10〜80mg/LのEDTA、20〜350mg/Lのホウ酸、3.0〜18.0ml/Lの微量ミネラル溶液、1〜75ug/Lのビオチン、5〜2500ug/Lのチアミン、ならびに0.5〜500ug/LのビタミンB12。そのような限定培地では、NH
4塩は、例えば、(NH
4)
2SO
4、NH
4Cl、(NH
4)
2CO
3、NH
4NO
3、または任意の他のアンモニウム塩から選択することができる。そのような限定培地では、NO
3塩は、例えば、NaNO
3、KNO
3、NH
4NO
3、または任意の他のNO
2塩もしくはNO
3塩であり得る。
【0055】
ある特定の実施形態では、限定培地は、下記の成分を使用して作製することができる:4.0〜8.0g/LのNaCl、0.3〜0.9g/LのCaCl、3.0〜7.0g/LのNa
2SO
4、3.0〜7.0g/LのNH
4塩及び/または0.25〜2g/LのNO
3塩、0.25〜1.0g/LのKCl、2.0〜6g/LのMgSO
47H
2O、0.5〜5.0ml/Lの消泡剤(KFO)、5.0〜50g/Lのグルコース、1.0〜7.0g/Lのリン酸二水素カリウム、25〜75mg/LのEDTA、25〜200mg/Lのホウ酸、4.0〜15ml/Lの微量ミネラル溶液、0.5〜50ug/Lのビオチン、50〜1000ug/Lのチアミン、ならびに0.5〜50ug/LのビタミンB12。そのような限定培地では、NH
4塩は、例えば、(NH
4)
2SO
4、NH
4Cl、(NH
4)
2CO
3、NH
4NO
3、または任意の他のアンモニウム塩から選択することができる。そのような限定培地では、NO
3塩は、例えば、NaNO
3、KNO
3、NH
4NO
3、または任意の他のアンモニア塩、硝酸塩、もしくは亜硝酸塩であり得る。
【0056】
他の実施形態では、限定培地は、下記の成分を使用して作製することができる:5.0〜8.0g/LのNaCl、0.3〜0.9g/LのCaCl、3.0〜6.0g/LのNa
2SO
4、0.25〜1.5g/LのNH
4塩及び/または0.25〜2g/LのNO
3塩、0.25〜0.55g/LのKCl、2.5〜4.5g/LのMgSO
47H
2O、0.5〜1.5ml/Lの消泡剤(KFO)、10〜50g/Lのグルコース、1.0〜4.5g/Lのリン酸二水素カリウム、30〜70mg/LのEDTA、30〜70mg/Lのホウ酸、5.0〜10.0ml/Lの微量ミネラル溶液、0.5〜10ug/Lのビオチン、50〜250ug/Lのチアミン、ならびに0.5〜5ug/LのビタミンB12。そのような限定培地では、NH
4塩は、例えば、(NH
4)
2SO
4、NH
4Cl、(NH4)
2CO
3、NH
4NO
3、または任意の他のアンモニウム塩から選択することができる。そのような限定培地では、NO
3塩は、例えば、NaNO
3、KNO
3、NH
4NO
3、または任意の他のNO
2塩もしくはNO
3塩であり得る。
【0057】
数ある栄養的利点の中でも特に、限定培地におけるバイオマスの増殖によって得られるタンパク質組成物は、富栄養培地で増殖した同一のバイオマスに対してより高い割合の必須アミノ酸を含む。富栄養培地から得られるタンパク質組成物は、総タンパク質量に対するパーセントとして典型的には35%未満の必須アミノ酸を有する。しかしながら、さまざまな実施形態において、限定培地で増殖したバイオマスから得られるタンパク質組成物は、35%超の必須アミノ酸、または37%超の必須アミノ酸、または40%超の必須アミノ酸、または42%超の必須アミノ酸、または44%超の必須アミノ酸、または45%超の必須アミノ酸、または46%超の必須アミノ酸、または47%超の必須アミノ酸、または48%超もしくは49%超もしくは50%超の必須アミノ酸を含む(すべて総タンパク質量に対する百分率(w/w)として)。他の実施形態では、限定培地で増殖したバイオマスからタンパク質が得られると、富栄養培地に対して、タンパク質組成物における必須アミノ酸の量は、総タンパク質量に対するパーセントとして、少なくとも3%、または少なくとも4%、または少なくとも5%、または少なくとも6%、または少なくとも7%、または少なくとも8%、または少なくとも10%、または少なくとも12%、または少なくとも13%、または少なくとも15%、または少なくとも17%、または少なくとも19%、または少なくとも20%増加する。
【0058】
いくつかの実施形態では、限定培地における増殖によって得られるタンパク質生産物は、20%未満のグルタミン酸、または19%未満のグルタミン酸、または18%未満のグルタミン酸、または17%未満のグルタミン酸、または16%未満のグルタミン酸、または15%未満のグルタミン酸、または14%未満のグルタミン酸(すべて総タンパク質量に対する百分率として)を含み、すなわち、増殖が富栄養培地で行われたときと比較してより少量のグルタミン酸を含む。より多量のロイシン(例えば、4%超、または4.5%超、または5.0%超)及びより少量のアルギニン(例えば、17%未満または15%未満(w/w))もまた、単独で、またはより少量のグルタミン酸と併せて得ることができる。限定培地における増殖は、4%超のイソロイシン、及び/または7%超のロイシン、及び/または9%未満のアルギニンもしくは8%未満のアルギニンを含むタンパク質生産物も生産することができる。
【0059】
バイオマス供給源からタンパク質材料を単離または取得する方法も提供される。本明細書に記載のタンパク質材料のいずれかは、少なくとも65mg/g、もしくは少なくとも68mg/g、もしくは少なくとも70mg/gmのいずれかの量のphe+tyrを有し得、及び/または少なくとも28mg/g、もしくは少なくとも30mg/g、もしくは少なくとも32mg/g、もしくは少なくとも33mg/gのいずれかの量のmet+cysも有し得る。いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質材料は、本明細書に記載の限定培地で培養されると、富栄養培地に対して、少なくとも5%、または少なくとも7%、または少なくとも8%、または少なくとも10%、または少なくとも12%、または少なくとも14%、または少なくとも15%、または少なくとも18%、または少なくとも20%、または少なくとも22%、または少なくとも24%、または少なくとも25%、または少なくとも27%、または少なくとも29%多い量のphe+tyr及び/またはmet+cysを含み得る。他の実施形態では、本発明のタンパク質組成物は、少なくとも3.5%、もしくは少なくとも3.7%、もしくは少なくとも3.9%、もしくは少なくとも4.1%のフェニルアラニン、及び/または少なくとも2.9%、もしくは少なくとも3.0%、もしくは少なくとも3.1%、もしくは少なくとも3.2%、もしくは少なくとも3.3%のチロシンを有し得る。本発明のタンパク質組成物は、少なくとも2.2%、もしくは少なくとも2.3%、もしくは少なくとも2.4%、もしくは少なくとも2.5%のメチオニン、及び/または少なくとも0.9%、もしくは少なくとも1.0%、もしくは少なくとも1.1%のシステインもしくはシスチンも有し得る。1つの実施形態では、本発明のタンパク質組成物は、2〜5歳の小児についての必須アミノ酸のUCLAAのFAOの必要量をすべて満たす。
【0060】
本明細書に記載の方法に従い、富栄養培地の代わりに限定培地を使用してバイオマスが処理されると、得られるタンパク質組成物は、いくつかの驚くべき有利な特性を有する。タンパク質組成物は、低減した量のグルタミン酸及びアルギニンを有し得、他のすべてのアミノ酸の百分率(w/w)が富栄養培地に対して増加している。さまざまな実施形態において、グルタミン酸のパーセントは、22%未満、または20%未満、または18%未満、または15%未満、または14%未満である。いくつかの実施形態では、アルギニンの百分率は、9%未満、または8%未満、または7%未満である。
【0061】
富栄養培地に対して限定培地でのバイオマスの培養から得られる別の驚くべき利点は、分岐鎖アミノ酸の割合が増加することである。分岐鎖アミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、及びバリンが含まれる。限定培地で培養されると、分岐鎖アミノ酸の割合は、総タンパク質量に対するパーセントとして、少なくとも13%、または少なくとも14%、または少なくとも14.5%、または少なくとも15%、または少なくとも15.5%、または少なくとも16%、または少なくとも17%、または少なくとも18%、または少なくとも19%、または少なくとも20%、または少なくとも21%、または少なくとも22%、または少なくとも23%、または少なくとも24%、または少なくとも25%、または少なくとも26%、または少なくとも27%、または少なくとも28%、または少なくとも30%(総タンパク質量に対する百分率として)であり得る。ロイシンの割合は、総タンパク質量に対する百分率として、少なくとも5.5%、または少なくとも6.0%、または少なくとも6.5%、または少なくとも6.7%であり得る。イソロイシンの割合は、総タンパク質量に対する百分率として、少なくとも3.0%、または少なくとも3.2%、または少なくとも3.4%、または少なくとも3.6%、または少なくとも3.8%であり得る。バリンの割合は、総タンパク質量に対する百分率として、少なくとも4.4%、または少なくとも4.5%、または少なくとも4.6%、または少なくとも4.7%であり得る。
【0062】
特定の実施形態では、限定培地における増殖によって得られるタンパク質生産物は、下記のいずれか1つまたは複数を含むアミノ酸を、下記の総タンパク質量に対するパーセントとして含む:Asp(9%±1.0%もしくは±2%、または5%超、または7%超、または8%超)、Thr(4%±0.5%もしくは±1%、または3%超、または3.5%超、または3.7%超、または3.9%超、または4.0%超)、Ser(4.5%±0.5%もしくは±1%、または3%超、または3.5%超、または4%超)、Glu(24%±1.0%もしくは±2%、または35%未満、または30%未満、または28%未満、または27%未満、または20〜28%、または20%未満、または17%未満、または15%未満、または13%未満、または10%超、または10〜15%、または8〜15%)、Pro(3.5%±0.5%もしくは±1%、または3%超、または3.5%超、または3.7%超、または3.9%超)、Gly(4.0%±0.3%、または少なくとも3.8%、または少なくとも4%、または少なくとも4.5%、または少なくとも4.7%)、Ala(5%±1.0%、または少なくとも5%、または少なくとも5.5%)、Val(5.0%±0.5%もしくは±1.0%、または4.5%超、または5%超)、Ile(3.5%±0.5%、または少なくとも3.0%、または少なくとも3.5%、または少なくとも3.7%、または少なくとも4%、または少なくとも4.5%)、Leu(6.8%±1%もしくは±2%、または5.7%超、または5.9%超、または6.0%超、または6.2%超、または6.4%超、または6.5%超、または6.7%超、または7%超、または7.5%超、または8%超)、Tyr(3%±0.5%、または2.7%超、または2.8%超、または2.9%超、または3.0%超、または2.7〜3.0%)、Phe(4%±0.5%もしくは±1%、または3%超、または3.4%超、または3.5%超、または3.7%超、または3.8%超、または3.0〜3.5%)、Lys(6.25%±1.0%もしくは±2%、または4%超、または5%超、または5.5%超、または6.0%超、または6.2%超、または6.3%超)、His(2%±0.1%、または1.6%超、または1.7%超)、Arg(9%±1%もしくは±2%、または5.5%超、または6.0%超、または20%未満、または15%未満)、Cys(1.4%±0.2%、または1.6%±0.2%もしくは±0.5%、または0.8%超、または1.0%超)、Met(2.0%±0.5%もしくは±1%、または1%超、または1.5%超、または1.7%超、または1.9%超、または2.0%超、または2.2%超)、Trp(0.8%±0.25%、または1.2%±0.25%もしくは±0.5%、または0.8%超、または0.9%超、または1.0%超、または1.1%超)。本発明のタンパク質組成物は、こうした量の列挙されたアミノ酸のいずれか1つもしくは複数、またはその任意のサブセットを有し得る。アミノ酸及びその量のあらゆる可能なサブセットまたは部分的組み合わせは、本明細書に完全に示されたものとして開示される。こうした値は、本明細書に記載の脂質を少量含む単離されたタンパク質組成物におけるものであり、全細胞バイオマスにおけるものではない。したがって、列挙された値は、全細胞バイオマスの組成物と比較してより高い生物学的利用率を有する。
【0063】
限定培地を使用することで、本明細書に開示の特定の用途において望ましくあり得るより高い百分率の特定の必須アミノ酸を得ることが可能なことも発見された。特定の実施形態では、限定培地を使用する方法によって生産されるタンパク質組成物は、上記の量のいずれかで必須アミノ酸のいずれか1つまたは複数を含み得る。本発明のタンパク質組成物は、これらの量の本明細書に開示の列挙された必須アミノ酸のいずれか1つもしくは複数、またはその任意のサブセットを有し得る。アミノ酸のあらゆる可能なサブセットまたは部分的組み合わせは、本明細書に完全に示されたものとして開示される。
【0064】
他の実施形態では、限定培地において発酵させたバイオマスに由来する本発明のタンパク質組成物は、下記のいずれか1つもしくは複数を含む特定のアミノ酸含量、またはその任意の可能な部分的組み合わせを有し得る:少なくとも65mg/gまたは少なくとも66mg/gまたは少なくとも67mg/gまたは少なくとも68mg/gのロイシン含量、少なくとも36mg/gまたは少なくとも37mg/gまたは少なくとも38mg/gのイソロイシン含量、少なくとも60mg/gまたは少なくとも61mg/gまたは少なくとも62mg/gまたは少なくとも63mg/gのリジン含量、少なくとも43mg/gまたは少なくとも44mg/gまたは少なくとも45mg/gまたは少なくとも46mg/gのバリン含量、少なくとも68mg/gまたは少なくとも69mg/gまたは少なくとも70mg/gまたは少なくとも71mg/gのpheとtyrとの合計含量、及び少なくとも32mg/gまたは少なくとも33mg/gまたは少なくとも34mg/gまたは少なくとも35mg/gのmetとcysとの合計含量。上記の含量の可能なサブセットはそれぞれ、本明細書に完全に示されたものとして開示される。
【0065】
色
食物または食物原料の別の重要な感覚刺激的側面は色である。食物または食物原料の色は、消費者の視点から、食物または食物原料としてのその望ましさと関係する重要な品質である。本発明のタンパク質組成物は、食品色見本で主に白またはベージュの色を有する。1つの実施形態では、タンパク質組成物は、食品(例えば、粉乳)向けの標準的な色見本によって決定すると、白またはベージュであるが、他の実施形態では、標準的な色見本で、白またはベージュから濃淡が1段階または2段階または3段階または4段階離れた範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、乳清の色の標準見本100番を使用することができる。色は、均一な色でもあり得る。しかしながら、当業者であれば、食物の色を評価するために本発明においても使用することができる、American Dairy Products Instituteによって刊行されるものなどの他の適切な色標準を認識するであろう。いくつかの実施形態では、明らかに黄色がかった色または緑色がかった色は、許容可能な色ではない。
【0066】
発酵及び低温殺菌
選択されるバイオマスは、選択されるバイオマスの種類に望ましい発酵のブロス及び条件において発酵させることができる。発酵の後、1つまたは複数のペレット洗浄段階を実施することができる。機械的均質化段階を実施することもできる。この段階は、例えば、ビーズミル処理またはボールミル処理によって行うことができるが、他の形態の機械的均質化を使用することもできる。機械的均質化のいくつかの例には、限定はされないが、破砕、剪断(例えば、ブレンダーにおいて)、ローター−ステーターの使用、ダウンス型ホモジナイザー、フレンチプレスの使用、ボルテクサービーズビーティング(vortexer bead beating)、または超音波処理などの衝撃法でさえ含まれる。バイオマスの均質化には、複数の方法を使用することができる。
【0067】
低温殺菌は、熱の適用を介して微生物を破壊するプロセスである。低温殺菌は、多種多様な食品調製プロセスにおいて使用される。低温殺菌は、バイオマス混合物を特定の温度へと加熱することと、バイオマス混合物をその温度で最小時間保持することとを含み得る。低温殺菌段階は、少なくとも50℃、または少なくとも55℃、または約60℃、または少なくとも60℃、または少なくとも65℃、または約65℃、または少なくとも70℃、または約70℃、または50〜70℃、または55〜65℃へとバイオマスの温度を上昇させることによって達成することができる。その温度で、少なくとも10分間、または少なくとも15分間、または少なくとも20分間、または少なくとも25分間、または20〜40分間、または25〜35分間、または少なくとも30分間、または約30分間、または少なくとも35分間、または少なくとも40分間、または30〜60分間、または60分間超、混合物を保持することができる。本開示と関連する技術分野の当業者であれば、より短い時間でより高い温度においても低温殺菌を達成できることを認識するであろう。任意の適切な低温殺菌方法を使用することができ、例には、バット低温殺菌(vat pasteurization)、高温短時間殺菌(HTST)、高熱短時間(HHST)低温殺菌、及びインライン低温殺菌が含まれる。温度及び時間は、状況に応じて選択することができる。
【0068】
低温殺菌段階が含まれるとき、低温殺菌段階は、発酵の後及び酸洗浄段階の前に、バイオマスに対して実施することができる。酸洗浄段階は、低温殺菌段階の後に実施することができる。1つの実施形態では、段階は、低温殺菌段階、均質化段階(例えば、ビーズミル処理)、及び酸洗浄段階を含み得、こうした段階は、記載の順序で実施することができる。1つの実施形態では、低温殺菌段階は、均質化段階の前及び/または酸洗浄段階の前に実施される。別の実施形態では、均質化段階は、低温殺菌段階の後に実施される。1つの実施形態では、酸洗浄段階は、低温殺菌段階の後に実施される。酸洗浄段階は、均質化段階及び/または低温殺菌段階の前または後のいずれにおいても実施することができる。段階はすべて、記載の順序で実施することができ、記載の段階の前もしくは後または間に追加の段階を実施することができる。1つの実施形態では、酸洗浄段階の後に、溶媒抽出(または溶媒洗浄)段階を実施することができる。
【0069】
バイオマスが、望ましくない感覚刺激特性を有するタンパク質性材料または他の材料を生産する生物から構成されていたとしても、こうした方法によって、許容可能なまたは望ましい感覚刺激特性を有するタンパク質組成物を得ることができる。方法によって、望ましくない感覚刺激特性を有するものに由来するバイオマスから得られるタンパク質性材料を、より望ましいまたは許容可能な感覚刺激特性を有するタンパク質組成物、ならびに官能評価において許容可能に実施することによって測定されると食物または食物原料として適切または許容可能であるものへと、変換することができる。
【0070】
方法
本発明の方法は、本発明のタンパク質組成物の生産に有用である。微生物バイオマス供給源及び藻類バイオマス供給源は、望ましくない感覚刺激的な味及び匂い特性を有しており、これによって食物または食物原料としてのそれらの使用が大幅に制限されている。本明細書に記載の方法では、望ましくない感覚刺激特性を有するバイオマス供給源に由来するタンパク質材料を、ヒト及び動物にとって許容可能な感覚刺激特性を有するタンパク質組成物へと変換することが可能になる。
【0071】
本発明の方法は、下記の段階のいずれか1つまたは複数またはすべてを含み得る。方法は、微生物バイオマスまたは藻類バイオマスを形成するための藻類または微細藻類または微生物などの細胞バイオマスを発酵させる段階と、バイオマスを水洗浄または溶媒洗浄する1つまたは複数の段階と、バイオマスを低温殺菌する1つまたは複数の段階と、バイオマスの細胞を溶解及び/または均質化する1つまたは複数の段階(任意の適切な方法(例えば、機械的均質化)によって行うことができ、本明細書に列挙された溶媒のいずれにおいても実施することができる)と、バイオマスを脱脂する1つまたは複数の段階(本明細書に記載の任意の適切な溶媒において実施することができ、任意選択で、均質化段階と同時またはその間に行うことができる)と、バイオマスに対して1つまたは複数の酸洗浄段階を実施することと、酸洗浄バイオマスを脱脂または溶媒洗浄(もしくは溶媒抽出)する1つまたは複数の段階と、バイオマスを乾燥することと、任意選択でバイオマスを粒子サイズ分級機に通過させることと、タンパク質性生産物材料を収集することと、を含み得る。方法は、列挙された順序または任意の順序での段階の実施を含み得、段階の1つまたは複数を除外することができる。段階の1つまたは複数は、バイオマスからのタンパク質材料の収量または品質を最適化させるように繰り返すことができ、例えば、1つまたは複数の脱脂段階の繰り返しなどである。
【0072】
バイオマスを水洗浄もしくは溶媒洗浄する1つもしくは複数の段階、及び/またはバイオマスを低温殺菌する1つもしくは複数の段階、及び/またはバイオマスを溶解する1つもしくは複数の段階は、通常の方法によって行うことができる。
【0073】
脱脂、及び溶媒洗浄または溶媒抽出
いくつかの実施形態では、方法は、1つまたは複数の機械的均質化段階または混合段階を含み、こうした均質化段階または混合段階は、(限定はされないが)ビーズミル処理または他の高剪断混合(例えば、ROTOSTAT(登録商標)混合機)または乳化を含み得る。これは、(任意選択の)水洗浄または溶媒洗浄の前または後、及び低温殺菌段階の前または後に、バイオマスに対して行うことができる。均質化段階は、少なくとも5分間、または少なくとも10分間、または少なくとも15分間、または少なくとも20分間実施することができる。均質化段階は、乳濁液、懸濁液、またはリオゾル(lyosol)の生成を含み得ると共に、液体担体内でより均等に分散した小型粒子を提供するための粒子のサイズ減少及び分散を含み得る。均質化によって、より均一なまたは「均質化された」組成物、例えば混合物のより一貫した粒子サイズ及び/または粘性が得られる。こうした1つまたは複数の段階は、均質化または混合の(任意選択の)追加段階のための遠心分離の段階及び(任意選択の)緩衝液または溶媒における再懸濁の段階が後に続くことができるか、または当該遠心分離の段階及び(任意選択の)緩衝液または溶媒における再懸濁の段階を間に挟むことができる。他の機械的ストレッサーには、限定はされないが、超音波ホモジナイザーもしくはローター/ステーターホモジナイザー、または高速のローターまたはインペラを使用するホモジナイザーが含まれる。
【0074】
バイオマスは、酸洗浄に供する前または後に1つまたは複数の脱脂段階に供することができる。機械的ストレスは、バイオマスを適切な溶媒と接触させながら適用することができる。したがって、脱脂は、脂質抽出段階または溶媒洗浄段階を含み得る。溶媒洗浄段階は、少なくとも5分、または少なくとも10分、または少なくとも15分、または約15分であり得る適切な時間、バイオマスを溶媒に曝露(または「洗浄」)することを含む。溶媒は、任意の適切な溶媒であり得、いくつかの実施形態では、極性溶媒または極性プロトン性溶媒である。有用な極性プロトン性溶媒の例には、限定はされないが、エタノール、ギ酸、n−ブタノール、イソプロパノール(IPA)、メタノール、酢酸、ニトロメタン、ヘキサン、アセトン、水、及びそれらの任意の組み合わせの混合物が含まれる。例えば、1つの実施形態では、溶媒は、ヘキサンとアセトンとの組み合わせ(例えば、ヘキサン75%及びアセトン25%)であり得る。別の実施形態では、溶媒は、90%または100%エタノールである。溶媒対バイオマスの任意の適切な比、例えば、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、及び他の比などを使用することができる。しかしながら、当業者であれば、本発明において有用となる他の適切な溶媒または組み合わせを認識するであろう。さまざまな実施形態において、脱脂段階は、出発材料における総脂質量の少なくとも10%、または少なくとも25%、または少なくとも35%、または少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも98%(すべてw/w)を除去することができる。
【0075】
前記手順は、バイオマスを含む細胞の適切な溶解を確実にして、タンパク質の抽出を最大にし、脂質材料をバイオマスからの抽出に利用可能にするはずである。機械的均質化の後、バイオマスは遠心分離によって分離することができ、上清中の脂質材料は除去される。脱脂を最大にするように、溶媒によって脱脂または溶媒洗浄する1つまたは複数の追加の段階を実施することができる。いくつかの実施形態では、脱脂の第2またはその後のサイクル(複数可)は、第1のサイクルまたは前のサイクルにおいて使用したものとは異なる溶媒を利用して、より望ましくない化合物を除去する可能性を増大させることができる。いくつかの実施形態では、例えばヘキサン及び/またはアセトンを含む、第2の溶媒を、分離を提供するように含めることもでき、あるいは別の疎水性溶媒が分離を提供することで、より望ましくない疎水性化合物を抽出することができる。均質化及び少なくとも1つの溶媒洗浄段階(溶媒洗浄は、溶媒の存在下で均質化することによって均質化と同時に行うことができる)の後、混合物またはバイオマスは、脱脂バイオマスと称することができる。溶媒洗浄段階の前に、別個の段階として機械的均質化にバイオマスを供しておくこともできる。
【0076】
いずれの特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、望ましくない感覚刺激的な味及び匂い特性を有する化合物は、1つもしくは複数の脱脂段階もしくは溶媒洗浄段階、及び/または1つもしくは複数の酸洗浄段階、及び/または1つもしくは複数の酸洗浄段階の後の1つもしくは複数の溶媒洗浄段階において除去され得ると考えられる。こうした段階のいずれかを1回または2回または3回または3回より多い回数繰り返すことによって、望ましくない感覚刺激特性を有するさらなる物質を除去することができる。いくつかの実施形態では、実施される段階の順序は、最終的なタンパク質組成物からの望ましくない感覚刺激特性の除去にも有用である。段階及び/または段階が実施される順序によって、タンパク質組成物を、望ましくない感覚刺激特性を有するものから、食物または食物原料として感覚刺激的に心地よくかつ許容可能なタンパク質組成物へと、変換することができる。本明細書に記載の追加のプロセスを、タンパク質材料を作製または合成する方法における1つまたは複数の段階として実施することもできる。プロセスの結果として、タンパク質含量が高くかつバイオマスに由来する材料が得られる。
【0077】
さまざまな実施形態において、本発明に従って調製されるタンパク質材料は、低減された脂質含量を有する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、バイオマスの脂質含量を10%超、または8%超、または7%超、または6%超、または5%超から低減させて、5%未満の脂質含量、または4%未満の脂質含量、または3%未満もしくは2%未満の脂質含量、または1%未満の脂質含量(すべてw/w)を含む、食物または食物原料として適したタンパク質組成物にする。
【0078】
酸洗浄
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の酸洗浄段階にバイオマスが供される。酸洗浄段階は、低温殺菌バイオマス及び/または脱脂バイオマスに対して実施することができる。酸洗浄は、脱脂バイオマスを酸または低下したpHに一定時間曝露することを含み得る。バイオマス、ひいてはバイオマスが含むプロトタンパク質は、溶液、懸濁液、スラリー、または任意の適切な状態で酸洗浄に曝露されることができる。酸洗浄は、水に溶解すると水素イオンを形成する1つまたは複数の無機化合物に由来する任意の適切な無機酸(または適切な有機酸)を利用することができる。例には、限定はされないが、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、及び過塩素酸が含まれる。当業者であれば、本発明においても機能する他の無機酸を認識するであろう。脱脂バイオマスは、水と混合することで水性混合物を生じ得る。その後、pHが低下したpHに下がるまで酸溶液(例えば、1Mの硫酸)を混合物にピペットで添加することができる。さまざまな実施形態において、約4.0、または約3.8、または約3.5、または約3.3、または約3.2、または約3.0、または約2.8、または約2.5、または約2.0〜約2.5、または約2.0〜約3.0、または約2.0〜約4.0、または約2.0〜約3.5、または約2.2〜約2.8、または約2.3〜約2.7、または約2.2〜約3.8、または約2.3〜約3.7、または約2.5〜約3.0、または約2.8〜約3.2、または約3.0〜約3.5、または約3.2〜約3.8の低下したpHへとpHを調整することができる。他の実施形態では、約pH4.5未満、または約pH4.0未満、または約pH3.7未満、または約pH3.6未満、または約pH3.5未満、または約pH3.3未満、または約pH3.0未満、または約pH2.7未満、または約pH2.5未満にpHを調整することができる。その後、一定時間、記載のpHで混合物を保持することができる。一定時間またはその一部の時間、混合物を混合または撹拌またはインキュベートすることもできる。一定時間は、少なくとも1分、または少なくとも5分、または少なくとも10分、または少なくとも20分、または少なくとも30分、または約20分、または約30分、または約40分、または1〜15分、または1〜60分、または10〜30分、または10〜40分、または10〜60分、または20〜40分、または20分〜1時間、または10分〜90分、または15分〜45分、または少なくとも1時間、または約1時間、または少なくとも90分、または少なくとも2時間のいずれかであり得る。
【0079】
バイオマスを低下したpHに適切な時間曝露(及び任意選択で混合)した後、塩基性またはアルカリ性の化合物、例えばKOHを添加することによってpHを上昇したpHへと上昇させることができる。当業者であれば、他の塩基性またはアルカリ性の化合物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、または他の塩基性化合物も使用できることを認識するであろう。例えば、約1M、または0.5〜1.5M、または0.75〜1.25Mなどの、任意の好都合な濃度で塩基性化合物を添加することができる。約4.5の上昇したpHにpHが調整されるまで塩基性化合物を添加することができる。しかしながら、他の実施形態では、上昇したpHは、約4.0、または約4.2、または約4.7、または約5.0であり得る。追加の実施形態では、pHは、4.0超、または4.2超、または4.5超、または4.7超、または5.0超に上昇させることができる。上昇したpHへとpHを調整した後、混合物を適切な時間撹拌またはインキュベートすることができ、こうした適切な時間は、いくつかの実施形態では、約10分、または約15分、または約20分、または約30分、または約1時間、または約90分、または30分超、または1時間超、または10〜60分、または20〜60分である。
【0080】
pHが低下したpHへと調整されると、混合性が不良な粘稠なスラリーから、顕著に粘性が低下した希薄な水様の粘度となる、混合物の粘性の著しい減少がある(すなわち、観察可能な粘性減少がある)。粘性の減少は、酸添加の開始時に、例えば、一般的な実験用オーバーヘッド混合機が使用不可能な状態から、溶液の完全混合が可能な状態になること(インペラでのキャビテーション)によって観測することができる。pHが低下するにつれて、粘性の変化は、溶液のはねを回避するためにインペラの先端速度を下げる必要がある水様溶液と同様の粘性に変化することとして、観測することができる。したがって、粘度計などの標準的な粘性測定方法によって測定すると、粘性の変化は、少なくとも10%、または少なくとも20%、または少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%の減少であり得る。粘性の測定方法の例には、限定はされないが、ガラス毛細管粘度計または振動針式粘度計、レオメーター、回転式レオメーター、及び傾斜板試験が含まれるが、任意の適切な方法を利用することができる。pHが上昇したpHへと上方に調整されると、混合物の粘性は増加するが、酸性条件に曝露する前の混合物の粘性に到達することはなく、このことは、顕著であり不可逆的かつ持続性である化学変化が、バイオマスに由来する最初のタンパク質含有混合物から生じたことを明らかにしている。
【0081】
いずれの特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、脱脂及び/または酸洗浄及び/または本明細書に記載の他のプロセスにプロトタンパク質を供することは、プロトタンパク質に立体構造変化を(おそらく不可逆的に)生じさせることによって、結合脂質を遊離または解離させ得ると考えられる。これは、共有結合した脂質とタンパク質との複合体の切断も生じ得る。酸洗浄段階は、バイオマスにおけるタンパク質を実際に加水分解しないが、むしろバイオマスにおけるタンパク質性(プロトタンパク質)分子から脂質部分を遊離させ得る。この段階によってタンパク質に立体構造変化が生じ得、それ故に、脂質部分が遊離され、その除去が可能になる。これは、共有結合した脂質とタンパク質との複合体の切断も生じ得る。こうしたプロセスによって、溶媒洗浄及び/または抽出段階の間に脂質種(または他の溶媒可溶性分子)の除去が可能になり得る。こうした段階、及びおそらく本明細書に記載の追加の段階との組み合わせは、望ましくない感覚刺激特性を与えるプロトタンパク質の複数部分を除去し、これによって、本発明の栄養的対象となる食物または食物原料である感覚刺激的に許容可能なタンパク質含有材料が提供され、こうしてこの材料は収集されると考えられる。したがって、本明細書に記載のプロセスによって生産されるタンパク質含有食物またはタンパク質含有食品は、プロセス開始時のプロトタンパク質と比較して顕著に異なる分子である。
【0082】
酸洗浄後の再洗浄段階
酸洗浄段階の後には、1つまたは複数の溶媒洗浄段階が存在し得、こうした溶媒洗浄のそれぞれの後に、ペレットを得るための遠心分離段階及び溶媒における再懸濁が任意選択で続くことができる。溶媒は、溶媒洗浄及び/または脱脂段階について本明細書に記載された任意の適切な溶媒であり得る。酸洗浄後の1つまたは複数の再処理段階または溶媒洗浄段階(実施されるのであれば)の後、タンパク質混合物は、ロータリーエバポレーターにおいて任意選択で乾燥させることでタンパク質濃縮物を作製することができ、こうしたタンパク質濃縮物は、食物または食物原料として利用することができる。
【0083】
低温殺菌
いくつかの実施形態では、タンパク質生産物の生産方法は、1つまたは複数の低温殺菌段階を含み、こうした低温殺菌段階は、生産プロセスの初期に実施することができる。1つの実施形態では、低温殺菌段階(複数可)は、酸洗浄段階(複数可)(実施される場合)の前に実施される。したがって、1つの実施形態では、方法は、バイオマスに対して1つまたは複数の低温殺菌段階を実施することを含み、こうした低温殺菌段階は、バイオマスに対して1つまたは複数の酸洗浄段階を実施する前に実施することができる。記載の順序でこうした段階を実施することによって、リゾリン脂質、遊離脂肪酸、及び二次的脂質酸化生成物の形成を最少にできることが予想外にも発見された。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、低温殺菌段階は、細胞のリパーゼを破壊し得、したがって当該リパーゼは、次いで酸化されて不快な味または匂いを与える化合物及び許容不可能な感覚刺激特性を有するタンパク質を形成したであろう、混合物中の脂肪酸または他の脂質の分解には、もはや利用不可能であると考えられる。したがって、こうした段階では、味及び匂いに関して実質的により心地よいタンパク質食物原料が生産される。段階の順序は、低温殺菌段階の後に酸洗浄段階が続くものを含み得る。1つの実施形態では、段階の順序は、低温殺菌段階の後に機械的均質化段階(例えば、ビーズミル処理)が続き、その後に酸洗浄段階が続くものであり得る。本明細書に開示のように追加の段階を追加または除外することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、低温殺菌段階は、バイオマスの温度を少なくとも45℃、または少なくとも50℃、または少なくとも55℃、または約60℃、または60〜65℃、または63〜68℃、または約70℃へと上昇させることと、バイオマスの温度を当該温度で少なくとも10分、または少なくとも15分、または少なくとも20分、または少なくとも25分、または約30分、または25〜35分、または35分超、または35〜60分、または60分超の時間保持することとを含み得る。
【0085】
プロトタンパク質
いくつかの実施形態では、バイオマスはプロトタンパク質を含み、プロトタンパク質は、顕著な非タンパク質部分も含むまたは顕著な非タンパク質部分と密接に会合した、タンパク質含有分子であり、こうした非タンパク質部分は、1つまたは複数の脂質部分を含み得る。プロトタンパク質は、微生物によってその天然形態において生産された、本明細書に記載の方法に従って処理される前のタンパク質であり得る。プロトタンパク質は、その天然形態に近く、望ましくないまたは好ましくない感覚刺激的な味及び匂い特性を有し、「嗜好の程度」スケールまたは他の感覚刺激特性評価方法で相対的に低く得点付けされると考えられる。こうした特徴を有するタンパク質をさまざまな藻類及び微生物が生産しており、いくつかの実施形態では、プロトタンパク質は、望ましくない感覚刺激特性を有する藻類タンパク質である。本発明の方法では、プロトタンパク質は、より望ましいまたは許容可能な感覚刺激特性を有しかつかかる特性を評価する方法でプロトタンパク質と比較してより高く得点付けされる、タンパク質含有食物またはタンパク質含有食物原料へと変換される。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、プロトタンパク質は、望ましくない感覚刺激的な味及び/または匂い特性を与える脂質成分を含み得ると考えられる。このタンパク質(またはその脂質成分)を除去または破壊することにより、許容可能なまたは望ましい感覚刺激特性への改善をもたらすことができる。プロトタンパク質は、脂質部分に加えて(またはその代わりに)、その望ましくない感覚刺激特性を付与する(または悪化させる)他の分子構成要素または分子部分を有し得る。したがって、本明細書に記載の方法を適用することによって、バイオマスのタンパク質成分は、感覚刺激的に許容可能な本発明のタンパク質組成物へと変換される。
【0086】
プロトタンパク質の分子量分布は、1つまたは複数の特定サイズ範囲内にある分子量を有するプロトタンパク質分子の百分率を指す。例えば、プロトタンパク質は、プロトタンパク質分子の少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%(重量に基づく)が、約10,000〜約100,000ダルトン、または約10,000〜約50,000ダルトン、または約20,000〜約100,000ダルトン、または約20,000〜約80,000ダルトン、または約20,000〜約60,000ダルトン、または約30,000〜約50,000ダルトン、または約30,000〜約70,000ダルトン(すべて非凝集状態)の分子量を有する分子量分布を有し得る。他の実施形態では、プロトタンパク質分子の少なくとも70%または少なくとも80%が、約10,000〜約100,000ダルトン、または約20,000〜約80,000ダルトン、または約30,000〜約50,000ダルトン、または約30,000〜約70,000ダルトン(すべて非凝集状態)の分子量を有する。他の実施形態では、プロトタンパク質の分子量分布は、プロトタンパク質分子の25%未満、または10%未満、または5%未満が、約20,000ダルトン未満、または約15,000ダルトン未満、または約10,000ダルトン未満の分子量を有するようなものであり得る。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって生産されるタンパク質組成物は、上記の分子量サイズ及び分子量範囲、または他の本明細書に記載のもののいずれかを有し得る。
【0087】
本発明の方法によって、プロトタンパク質を含むバイオマスが、タンパク質性のまたはタンパク質豊富な濃縮物へと変換される。さまざまな段階のバイオマスの脂肪酸メチルエステル(FAME)プロファイルを評価することで、プロセスの間に除去される脂質材料の量を決定することができる。表2及び
図3は、本発明の処理段階によるFAMEの除去パーセントを示す。
【0088】
(表2)処理段階によるFAMEの除去パーセント
【0089】
表2の値は、記載のプロセス段階によってその段階で投入材料から除去された脂質のパーセントを示す。「最終」は、出発バイオマスの脂質含量に対して除去された総脂質量のパーセントを示す。さまざまな実施形態において、方法を開始する発酵されたバイオマスにおける脂質含量の少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも75%が、本発明の方法によって除去される。
【0090】
いくつかの実施形態では、バイオマス(またはプロトタンパク質)は、9%超、または10%超、または11%超、または12%超、または13%超のFAME%を有する。本明細書に記載の方法の結果として、FAME%を、5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満、または1%未満、または0.75%未満、または0.50%未満(すべてw/w)に低減することができる。
【0091】
脂質の二次的酸化生成物の標準試験であるパラ−アニシジン試験(pAV)は、本発明のプロセス後に存在する脂質の二次的酸化生成物の量を監視し、それ故に、本発明の方法によって生産されるタンパク質生産物をさらに特徴付けるためにも使用することができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって生産されるタンパク質生産物は、2.0未満、または1.0未満、または0.9未満、または0.8未満、または0.7未満、または0.6未満、または0.5未満のpAV値を有する。
【0092】
さらなる方法
いくつかの実施形態では、本発明は、バイオマスのタンパク質含量を増加させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の生産物は、元のバイオマスと比較してタンパク質濃度が高く、中間色を有し、感覚刺激特性または快不快特性が改善されたタンパク質含有生産物である。さまざまな実施形態において、本発明のプロセスが適用されるタンパク質含有バイオマスは、65%未満、または50〜65%、または40〜70%、または45〜65%、または45〜70%(すべてw/w)のタンパク質含量を有し得、方法の生産物であるタンパク質組成物のタンパク質含量は、65%超、または68%超、または70%超、または72%超、または75%超、または77%超、または80%超、または70〜90%、または65〜90%、または70〜90%、または72〜87%、または75〜85%、または75〜80%である。
【0093】
本発明は、タンパク質材料のアルギニン及びグルタミン酸(またはグルタミン酸及びグルタミン)の含量を低下させる方法も提供する。アルギニンならびにグルタミン酸(及びグルタミン)は、さまざまな種類の食品に豊富に存在する2つのアミノ酸である。多くの実施形態では、これらの一般的なアミノ酸の含量が低下され、その結果、20の標準アミノ酸のよりバランスのとれた供給が食物または食物原料において得ることができるタンパク質豊富な食物またはタンパク質豊富な食品を有することが望ましい。限定培地を使用すると、他のタンパク質組成物におけるものと比較して低下した量のグルタミン酸(もしくはグルタミン酸及びグルタミン)及び/またはアルギニンを有し、それ故により栄養的にバランスがとれた、より良好なタンパク質組成物であるタンパク質生産物が生産されることが予想外にも発見された。さまざまな実施形態において、グルタミン酸(またはグルタミン酸及びグルタミン)のパーセントは、21%超または22%超から、20%未満または18%未満または16%未満または15%未満または14%未満または13%未満または12%未満(総アミノ酸量に対する%)へと低下される。アルギニンのパーセントもまた、9%超から、9%未満または8.5%未満または8.0%未満または7.5%未満または7.0%未満(総アミノ酸量に対する%)へと低下させることができる。アルギニン及び/またはグルタミン酸(もしくはグルタミン酸及びグルタミン)の含量が低下されたタンパク質組成物の生産方法は、本明細書に記載の任意の方法を含む。
【0094】
UCLAA
1985年のFAO/WHO//UNU提唱の未就学小児(2〜5歳)についてのアミノ酸必要量のパターンを使用することによって、9つの必須アミノ酸にチロシン及びシステインを加えたものについてのアミノ酸比(試験タンパク質1.0g中の必須アミノ酸のmg/参照タンパク質1.0g中の同一アミノ酸のmg)が計算されるべきである(Joint FAO/WHO/UNU Expert Consultation.Energy & Protein Requirements.WHO Tech.Rept.Ser.No.724.World Health Organization,Geneva Switzerland(1985))。
図1に示されるこの参照パターンには以下が含まれる(mg/gタンパク質):His(19)、Ileu(28)、Leu(66)、Lys(58)、Met+Cys(25)、Phe+Tyr(63)、Thr(34)、Trp(11)、及びVal(35)。最も小さいアミノ酸比は、アミノ酸スコアと呼ばれる。例えば、インゲンマメ試料は、それぞれ、30.0、42.5、80.4、69.0、21.1、90.5、43.7、8.8、及び50.1mg/gタンパク質のHis、Ile、Leu、Lys、Met+Cys、Phe+Tyr、Thr、Trp、及びValを含んだ。このマメ試料についてのそれぞれのアミノ酸(His、Ile、Leu、Lys、Met+Cys、Phe+Tyr、Thr、Trp、及びVal)比は、1.58、1.52、1.22、1.19、0.84、1.44、1.28、0.80、及び1.43ということになる。したがってこれは、第1制限アミノ酸としてのトリプトファンが有する0.80が未補正アミノ酸スコアという結果になる。
【0095】
タンパク質の品質
タンパク質の品質及びその吸収傾向は、タンパク質がそれを消費する生物にとって実際にどの程度利用可能であるかということに影響を及ぼすため、すべてのタンパク質が同等のものであるというわけではない。UCLAAは、タンパク質価の有用な尺度である一方で、他の尺度もタンパク質の品質評価に有用である。タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア(PDCAAS)は、ヒトのアミノ酸必要量とヒトのタンパク質消化能力との両方に基づいてタンパク質の品質を評価する1つの方法である。さまざまな実施形態において、本発明のタンパク質組成物のいずれかは、少なくとも0.60、または少なくとも0.62、または少なくとも0.65、または少なくとも0.67、または少なくとも0.70、または少なくとも0.72、または少なくとも0.75、または少なくとも0.77、または少なくとも0.80のPDCAASスコアを有する。タンパク質組成物のいずれかは、少なくとも0.86、または少なくとも0.88、または少なくとも0.90、または少なくとも0.92、または少なくとも0.94、または少なくとも0.95、または少なくとも0.96のインビトロ消化吸収率値も有し得る。
【0096】
タンパク質効率(PER)及び生物価(BV)は、タンパク質の品質の他の尺度である。こうしたものは、タンパク質供給源がヒト消費者または消費動物にとってどの程度生体利用可能であるかを評価するPDCAASと密接に相関するインビボの尺度である。タンパク質利用能のスコアが高いということは、タンパク質が、タンパク質合成に対してより大きな効果を有する分岐鎖アミノ酸を含むより多くの必須アミノ酸を提供することを示す。タンパク質の品質の評価方法で別に知られるものは、動物安全精密タンパク質(Animal Safe Accurate Protein)(ASAP)品質法と呼ばれるインビトロの方法である。この方法は、インビトロの方法であり、動物試験を省けるという利点を有する。ASAPは、pH2におけるペプシンでの消化、pH7.5におけるトリプシン/キモトリプシンでの消化、TCA沈殿、ニンヒドリンとの反応、吸光度による定量化、及びアミノ酸組成による結果の調整を含む。ASAPもまた、ラットにおけるPDCAAS試験から得られた結果と密接に相関している。本発明のタンパク質組成物は、名前を挙げたタンパク質品質評価方法のいずれか1つまたは複数で、より高く得点付けされる。さまざまな実施形態では、本発明のタンパク質組成物は、少なくとも0.60、または少なくとも0.63、または少なくとも0.65、または少なくとも0.67、または少なくとも0.70、または少なくとも0.72、または少なくとも0.75、または少なくとも0.77、または少なくとも0.80のASAPスコアを有する。
【0097】
必ずしも必要ではないが、本発明のタンパク質組成物は、有効量の添加保存料を提供されることができる。保存料は、ヒト及び/または動物のための食品における使用が承認された任意のものであり得る。
【0098】
UCLAAの計算
UCLAAは、タンパク質のグラム当たりのこれらアミノ酸のそれぞれのmgを考慮し、それを国連食糧農業機関(FAO)が2〜5歳の小児に推奨するアミノ酸(mg/g)(例えば、表3に示される)で割ることによって計算され、その結果、アミノ酸のそれぞれについてのUCLAA値が得られる。9つのアミノ酸の中で最も低い計算値が、特定のタンパク質のUCLAAスコアである(但し、述べた通り、必須アミノ酸の一部として、pheとtyrとが共に測定され得、metとcysとが共に測定され得る)。本発明のタンパク質材料のUCLAAスコアは、少なくとも0.85、または少なくとも0.88、または少なくとも0.90、または少なくとも0.92、または少なくとも0.95、または少なくとも1.0、または少なくとも1.02、または少なくとも1.05、または少なくとも1.07、または少なくとも1.10であり得る。本発明のタンパク質材料は、必須アミノ酸のすべてについて1.0超のUCLAAスコアも有し得る。表3は、本発明に従って調製されたタンパク質材料のUCLAAスコア、及び達成されたUCLAA値を示す。
【0099】
本発明及びその態様のすべてが、下記の実施例においてさらに示される。しかしながら、実施例によって本発明の範囲は限定されず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【実施例】
【0100】
実施例1−発酵
この実施例では、藻類バイオマスからタンパク質性材料を含む乾燥したタンパク質材料または濃縮物(例えば、粉末)を生産するための特定の方法が示される。しかしながら、本開示を用いる当業者は、本明細書に含まれる段階の1つまたは複数の除外及び/または繰り返しが可能であることだけでなく、当該方法の他の実施形態も認識するであろう。さらに、本明細書に記載の段階のいずれかを、当該方法のいずれかに含めることができる。
【0101】
この実施例では、オーランチオキトリウム属の1種の藻類(またはツボカビ)を使用し、有機炭素源を供給するグルコースを含めた上記の及び表1の限定培地を含む発酵槽においてこれを培養した。主要栄養素、微量ミネラルの溶液も培地に含めた。300〜80rpmの撹拌、0.1vvm〜1.0vvmのエアレーション、50%の溶存酸素、及び6.3±0.1に制御されたpHで、培養物を30℃で24時間維持した。
【0102】
実施例2−発酵後の処理
実施例1による発酵及び増殖の後に、ツボカビ(オーランチオキトリウム)の発酵ブロス100kg(50%タンパク質の固形分40kg)を収集した。遠心分離の後、水溶液でバイオマスを洗浄し、続いてさらに遠心分離し、洗浄したバイオマスをシングルパスHTST低温殺菌装置において65℃、15秒間低温殺菌した。低温殺菌したバイオマスをその後、200プルーフのエタノールを1:1(v/v)のエタノール:溶媒の比で使用して再循環ビーズミルにおいて溶解及び均質化することで、脂質及び炭水化物を除去した。細胞を、1.0mmのビーズを使用して35℃で15分間ビーズミルにおいて溶解し、遠心分離することでミセラを除去し、同一条件下でさらに15分間再び通過させた。その後、脱脂バイオマスを遠心分離し、ペレットを抗酸化物質含有水に再懸濁し、H
2SO
4で30分間pHを3.5に低下させてその後NaOHで1時間pHを4.5に上昇させることによって酸洗浄段階に供した。ペレットを形成させた後、酸洗浄バイオマスをエタノールで1回洗浄し、遠心分離した後、高剪断混合機に2回、15分間通し、これはそれぞれ、各混合後に遠心分離段階を伴った。ペレットに抗酸化物質を添加し、このペレットを、高真空脱溶媒処理を介して溶媒抽出に供した後、凍結乾燥によってこのペレットを乾燥タンパク質濃縮物へと変換した。
【0103】
実施例3−分析
実施例1〜2に記載のように処理したロットから得た乾燥タンパク質濃縮物(DPC)を分析し、以下の表3に示されるアミノ酸組成を有することが明らかになった。
【0104】
以下の表3は、本発明の乾燥タンパク質濃縮物(DPC)についてのUCLAAスコアを示す。本明細書に説明されるようにUCLAAを計算したところ、ヒトにおける9つの必須アミノ酸のそれぞれが1.0以上であり、それ故に、このタンパク質組成物のUCLAAスコアが1.0超であることが示されている。表3は、本発明の乾燥タンパク質濃縮物と、乳清、大豆、及びエンドウ豆のタンパク質などの他の商業的なタンパク質組成物との比較もしており、乳清タンパク質はUCLAAスコアが0.88、大豆タンパク質は0.93、及びエンドウ豆タンパク質は0.73であることが示されている。
【0105】
(表3)さまざまなタンパク質のUCLAAスコアの比較
【0106】
表3に示されるように、ヒスチジンが最も低いUCLAAスコア1.01を有することから、タンパク質組成物は、1.01のUCLAAスコアを有する。さらに示されるように、大豆タンパク質またはエンドウ豆タンパク質は、多くのアミノ酸についてより高いUCLAAスコアを有するが、met+cysのスコアは、それぞれ0.93及び0.64にすぎない。乳清タンパク質もいくつかのアミノ酸についてより高いUCLAAスコアを有するが、phe+tyrのスコアは0.88にすぎない。したがって、本発明に従って調製されるタンパク質材料は、他の商業的なタンパク質と比較して、より高いUCLAAスコア及びよりバランスのとれた栄養プロファイルを提供することが示されている。最後の列は、3列目の限定培地における発酵によって生産したタンパク質組成物と、富栄養培地において生産した、同一バイオマスにより生産したタンパク質組成物とを比較している。富栄養培地は、限定培地と類似しているが、少なくとも微量の有機窒素も含む。示されるように、富栄養培地からのタンパク質組成物が有するUCLAAスコアは0.73にすぎない。
【0107】
実施例4
以下の表4は、実施例1〜2または表1による限定発酵培地を使用して本発明に従って調製した乾燥タンパク質濃縮物(DPC)と、卵、スピルリナ、またはクロレラのタンパク質などのさまざまな参照タンパク質との比較を示す。DPCの値は、アミノ酸の総量として、及びデュマ法(全Nx6.25)に基づく総タンパク質量に対する%として示される。
【0108】
(表4)
【0109】
表4は、比較タンパク質のそれぞれが何らかの顕著な様式で不足を有することを示す。卵及びスピルリナはリジンが不足しており、スピルリナはトリプトファンも不足しており、クロレラはメチオニンが不足している。本発明の藻類タンパク質濃縮物は、より栄養的にバランスのとれたタンパク質組成物を提供するものであり、それ故に、UCLAAスコア及び他の栄養パラメーターによって証明されるより良好な品質の食物を提供する。
【0110】
以下の表5は、富栄養培地(有機窒素を含む)の使用の結果として最終的なタンパク質組成物におけるアミノ酸組成全体がどのように変化するかを、発酵プロセスにおいて有機窒素を含まない限定培地に対して示す。限定培地において生産したタンパク質組成物は、50%超少ないグルタミン酸、30%超少ないアルギニン、及び10%超少ないシスチンを含むことに留意されたい。
【0111】
以下の表5は、実施例1の限定培地で増殖したバイオマスから調製した本発明のタンパク質組成物が、富栄養培地で増殖したものに対して、少なくとも5%、または少なくとも6%、または少なくとも7%、または少なくとも8%多い各必須アミノ酸を生産すると共に、富栄養培地で増殖した同一のバイオマスに対して、少なくとも15%、または少なくとも18%、または少なくとも20%、または少なくとも22%、または少なくとも24%多い必須アミノ酸もまた生産することも示す。タンパク質組成物はまた、富栄養培地で増殖した同一のバイオマスに対して、少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも45%、または少なくとも50%多い分岐鎖アミノ酸も含む。このことは
図2に図示される。注目すべきことに、トリプトファンが少なくとも90%、または少なくとも95%、または約100%多く生産されたが、トリプトファンは、通常の食事供給源においては見出すことが困難なことが多いアミノ酸である。富栄養培地に対して限定培地では、メチオニンが少なくとも50%、または少なくとも55%、または少なくとも57%、または少なくとも59%多く生産された。富栄養培地に対して、イソロイシンが少なくとも45%、または少なくとも47%、または少なくとも49%多く生産された。富栄養培地に対して、フェニルアラニンが少なくとも18%、または少なくとも20%、または少なくとも22%、または少なくとも24%多く生産された。
【0112】
(表5)オーランチオキトリウムに由来する規定のタンパク質濃縮物についての、限定培地に対して富栄養培地におけるアミノ酸組成の比較(値は、デュマ法(全Nx6.25)に基づく総タンパク質量に対する%として示され、
*は、ヒトの必須アミノ酸を示す)
【0113】
したがって、バイオマスを限定培地で発酵させたとき、富栄養培地に対して、それぞれの必須アミノ酸が少なくとも8%または9%以上増加したことが見て取れる。さらに、本発明のタンパク質組成物は、顕著に多い量の分岐鎖アミノ酸も含んでいた。このことは、
図2にも図示される。必須アミノ酸のうち、バリンは7%超、または8%超、または9%超多く、ヒスチジンは10%超または12%超多く、イソロイシンは45%超または48%超多く、ロイシンは25%超多く、メチオニンは55%超または58%超多く、フェニルアラニンは23%超多く、スレオニンは20%超多く、トリプトファンは90%超または95%超多かった。
【0114】
実施例5
この実施例では、藻類バイオマスから乾燥したタンパク質材料または濃縮物(例えば、粉末)を生産するための一般的なスキームが提供される。この実施例では、特定の方法が示されるが、本開示を用いる当業者は、本明細書に含まれる段階の1つまたは複数の除外及び/または繰り返しが可能であることだけでなく、当該方法の他の実施形態も認識するであろう。さらに、本明細書に記載の段階のいずれかを、当該方法のいずれかに含めることができる。
【0115】
この実施例では、オーランチオキトリウム属の1種の藻類(ツボカビ)を使用し、有機炭素源を供給する0.1Mのグルコース及び10g/Lの酵母エキスを含めた富栄養培地を含む発酵槽においてこれを培養した。主要栄養素及び微量ミネラル溶液も培地に含めた。300〜80rpmの撹拌、0.1vvm〜1.0vvmのエアレーション、50%の溶存酸素、及び6.3±0.1に制御されたpHで、培養物を30℃で24時間維持した。
【0116】
収集の後、遠心分離を介して細胞から発酵ブロスを除去し、得られたバイオマスペレットを水中に希釈し、再度遠心分離した(細胞の洗浄)。得られたペーストを、油及び他の成分の酸化を防止するための抗酸化物質と混合した後、ドラム乾燥して水を除去し、これによって乾燥細胞材料を得た。
【0117】
ブロスの温度を約65℃に上昇させ、約30分間その温度で保持することによって、低温殺菌段階を実施した。その後、乾燥細胞をビーズミルにおいて100%のエタノールに完全に溶解した。これは、均質化及び溶媒抽出の段階であり、脂質などの可溶性物質を除去するものであり、脱脂バイオマスは、遠心分離を使用してミセラから分離される。
【0118】
その後、pHが約3.5へと酸性化するまで1NのH
2SO
4を滴下することにより、バイオマスを酸洗浄に供した。その後、バイオマスを約30分間混合した。その後、1NのNaOHでpHを約4.5に上昇させ、バイオマスを1時間混合した。
【0119】
その後、上記の酸洗浄した材料を遠心分離し、上清を除去した。その後、ペレットを2回の再洗浄/抽出段階に供したが、これは、100%エタノール中への懸濁と、それに続く高剪断混合及び遠心分離とを2回含んだ。望ましくない化合物の抽出及び除去を最大にするように上清をデカントした。高剪断混合は、氷浴によって温度を20℃未満に制御しながらローターステーター型混合機(例えば、IKA ULTRA−TURRAX(登録商標))で実施した。その後、得られたエタノール洗浄ペレット(バイオマス)を、中程度の減圧下で室温での回転乾燥を促進するための改変型ロータリーエバポレーションフラスコに入れることによって乾燥させた。約4時間後、材料は、ペーストから粉末へと変化した。この時点でロータリーエバポレーターから材料を取り出し、乳棒及び乳鉢で粉砕して微粉にした。その後、この材料をアルミニウムトレイに乗せ、90℃の真空オーブンに約11時間入れることで、任意の残留する溶媒または水分を除去した。乾燥後、材料を粒子サイズ分級機に通すことで、サイズが300umを超える粒子を除去した。望まれるのであれば、こうした粒子は最終生産物から完全に除去するか、またはさらに粉砕して最終生産物に戻すことができる。プロセスの最終結果としては、中間の快不快特徴を有する均一で中間色の粉末が得られた。これは、窒素下で梱包し、−80℃のフリーザーにおいて保管することができる。
【0120】
実施例6
実施例5のものと同様の培地においてオーランチオキトリウム属の1種の藻類で3つの独立した発酵を実施し、酸洗浄の上清ストリームの質量を定量し、タンパク質をデュマ法(元素分析による窒素の定量的決定)によって決定した。以下の表6に示されるように、最初の供給材料の質量の8.8%〜15.8%が酸洗浄によって除去された。計算(N
*6.25)によって窒素含量をタンパク質含量に換算すると、酸洗浄固形分のタンパク質含量は12.15%〜15.50%タンパク質であると推定される。酸洗浄段階によって除去されたタンパク質は、原材料中の最初のタンパク質の2.01%〜3.4%の範囲であった。
【0121】
(表6)酸洗浄の上清の質量及びタンパク質
【0122】
実施例7
アミノ酸組成に対する酸洗浄の影響の追加の実施例が以下に示される。酸洗浄の上清を透析及び乾燥し、アミノ酸組成を分析するという2つの別個のプロセスを実施した。オーランチオキトリウム(ツボカビ)の株を上記のように処理し、酸洗浄の上清及び藻類タンパク質濃縮物を分析し、最初の乾燥バイオマス原材料と比較した。酸洗浄の間に、グルタミン酸(またはグルタミン酸及びグルタミン)ならびにアルギニンがバイオマスから選択的に除去されることが明らかとなった。
【0123】
いずれの特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、酸洗浄段階は、タンパク質が優先的に除去されるようにタンパク質性材料を調製し、その結果、一般的に不要なアミノ酸であるアルギニン、グルタミン酸(またはグルタミン酸及びグルタミン)、ならびにヒドロキシプロリンの含量が、未処理の藻類タンパク質に対して最終タンパク質生産物において低減されると考えられる。酸洗浄の後、試料を追加の2回の溶媒洗浄に供した。酸洗浄段階は、除去されやすいタンパク質性材料中のある特定のタンパク質を曝露するまたは他の方法でタンパク質性材料中のある特定のタンパク質を除去されやすくし、これらの除去されるタンパク質は、これらの不要アミノ酸の含量が高いとも考えられる。これによってより栄養的にバランスのとれたタンパク質材料の生産が可能になるため、このことは有利なことである。アルギニン及びグルタミン酸(またはグルタミン酸及びグルタミン)ならびにヒドロキシプロリンの含量は、上清における含量に対する最終タンパク質生産物であるペレットにおけるそれぞれのアミノ酸の比を計算することによって測定される。したがって、比が低いということは、アミノ酸が上清中により多く存在することを示す。以下の表6は、そのデータを示し、これら3つのアミノ酸の比が、アルギニンについては、2未満または1未満または0.75未満であり、グルタミン酸(またはグルタミン酸及びグルタミン)については、2未満または1未満または0.75未満または0.60未満であり、ヒドロキシプロリンについては、2未満または1未満または0.75未満または0.55未満であることを示す。
【0124】
(表7)
【0125】
実施例8−酸洗浄の間の脂質除去
タンパク質濃縮物におけるFAME含量に対する酸洗浄の効果を示すために、同一のバイオマス供給源(ツボカビ#705)を使用して2つのプロセスを実施した。発酵槽からの最初のバイオマスをドラム乾燥した後、試料を、ビーズミル処理による2回の機械的均質化に供し、続いて、100%イソプロピルアルコールにおける溶媒洗浄段階に供した。試料225−002/Aは、実施例1に記載の酸洗浄段階に供したが、試料225−002/A.2は供さなかった。その後、それぞれの試料を100%イソプロピルアルコールにおける2回の再処理溶媒洗浄段階に供してから、ロータリーエバポレーターにおいて乾燥させた。結果は、タンパク質生産物における最終的なFAME含量が最終乾燥重量の2.19%から最終乾燥重量の0.89%へと低下したことを明確に示しており、これは、酸洗浄段階によるものであり得る。
【0126】
(表8)
【0127】
脂質の除去についての酸洗浄段階の具体的寄与を調べるために、プロセスを通して、利用可能な脂質の段階的な除去効率を調べた。
図3は、実施例7の株を使用して実施した3つの独立した処理の結果を示す。酸洗浄の前後に溶媒としてエタノールを使用した。酸洗浄段階は、実施例5に従う1NのH
2SO
4によるpH3.5への第1の調整、それに続く1NのKOHによるpH4.5への調整を含んだ。それぞれの重要なプロセス段階について、得られた固形分をFAME含量について分析した。酸洗浄段階により、ビーズミル処理後にバイオマスに存在する脂質の26%、21%、及び24%(それぞれ試料505−002、試料506−002、及び試料514−002)が除去された。調製方法に酸洗浄段階が含まれると、生産されるタンパク質におけるFAMEのパーセントが0.89%まで、または1%未満まで低減されることをデータは示している。酸洗浄段階がプロセスから省略されると、生産されるタンパク質におけるFAMEのパーセントは、2.19%、または2%超であった。
【0128】
実施例9
脂質の二次的酸化生成物の標準試験であるパラ−アニシジン試験(pAV)を、方法のある特定の段階の後に存在する脂質の二次的酸化生成物の量を監視するために使用した。pAV値を、独立に発酵させた4つのツボカビバイオマスのバッチについて決定し、下流の処理の3つの段階:発酵が終結してすぐに収集した水洗浄バイオマス(洗浄されたペレット)、低温殺菌されたバイオマス、最終タンパク質濃縮物(酸洗浄及び2回の再処理段階の後)で試験した。下流のプロセス段階は、以下の表9に記載される。
【0129】
(表9)大豆タンパク質に対するpAV
【0130】
表9に示される値は、大豆から生産された市販のタンパク質単離物について決定したpAV値(ベンチマーク標準として使用)に対する藻類タンパク質濃縮物のpAVの比である。ビーズミル処理/エタノール抽出及び酸洗浄の処理段階の前は、藻類タンパク質濃縮物は大豆タンパク質単離物が有するよりも高い二次的脂質酸化生成物含量を有することをデータは示している。しかしながら、2回のビーズミル処理/エタノール溶媒洗浄段階と、2回の再処理溶媒洗浄段階を伴う1回の酸洗浄段階の後は、4つのタンパク質生産物試料のそれぞれは大豆タンパク質単離物よりも低い二次的脂質酸化生成物含量を有する。したがって、酸洗浄を含めて、本発明の段階は、脂質含量(ひいては脂質酸化)及び感覚刺激特性に関するタンパク質濃縮物の品質を改善するものである。
【0131】
実施例10
この実施例では、他の微生物種に適用したときの方法の堅牢性が示される。表10は、酵母と藻類との両方について、富栄養培地に対して限定培地を使用したDPCの生産を比較している。限定培地では、酵母と藻類との両方においてUCLAAスコアが実質的に増加することが見て取れる。
【0132】
(表10)
【0133】
実施例11−官能パネル
タンパク質組成物の感覚刺激特性を評価するために選択した人から構成される官能パネルからの報告によって、本発明のプロセスの結果、未処理生産物と比較して改善された許容可能な感覚刺激(快不快)特性を有するタンパク質組成物が得られることが示された。
【0134】
本明細書に記載の方法に従って調製した粉末タンパク質組成物(DPC)を水と混合し、「口に含んで吐き出す(sip and spit)」方法を使用して3〜5人の複数パネルに対する味及び匂い盲検試験に供し、大豆標準品と比較した。すべてのパネルのすべての人が、本発明のタンパク質組成物を「感覚刺激的に許容可能」と評価付けた。パネルからのコメントには、未処理の藻類タンパク質の魚のようなまたは海水の味及び匂いに気付くことはほとんど不可能であったというものが含まれていた。したがって、魚のような不快な臭いもしくは味、またはアンモニア様の臭いもしくは味、または海水の臭いもしくは味の存在は、プロセスの結果として顕著に減少した一方で、タンパク質材料は、高いタンパク質含量を維持した。
【0135】
実施例11A−官能パネル
当業者であれば、官能評価パネルを構築し、信頼できる様式で食物試料を評価する方法を理解しており、例えば「嗜好の程度」スケールとしても知られる9点の快不快スケールを利用することができる(Peryam and Girardot,N.F.,Food Engineering,24,58−61,194(1952)、Jones et al.Food Research,20,512−520(1955))。したがって、この実施例では、そのような評価の科学的に妥当な実施様式の1つが提供されるにすぎない。
【0136】
6人の成人対象(3人の男性及び3人の女性)のパネルが、実施例1〜2に記載のように処理した藻類(ツボカビ)バイオマスに由来する8つのタンパク質生産物の感覚刺激的な味及び匂い特性を評価する(但し、実施例5に従って生産したタンパク質は同様の結果を生じるであろう)。対象に識別文字A〜Fを無作為に割り当てる。8つの試料のうちの4つは、実施例1〜2の手順に従って調製したものであり、この手順は、1つの酸洗浄手順を含むものである(「試験」試料)。残りの4つの試料は対照試料であり、これらの対照試料は、酸洗浄段階に供されていないことを除いて同様に調製されたものである(「対照」試料)。試料を乾燥し、粉末形態で得た後、タンパク質粉末1gを脱イオン水に溶解することで、プラスチックチューブ中に10%の溶液を作製する。いずれの対象もいずれの試料の正体も知らない状態でそれぞれの対象に8つの試料を無作為の順序で提供する。
【0137】
試料が感覚刺激的に心地よいかまたは不快であるかについて試料を評価する。0−なし、1−わずか、2−中程度、3−強い、及び4−極めて強いという5点のスケールに従って「魚のような味及び/または匂い」、ならびに「アンモニア様の味及び/または匂い」、ならびに「海水の味及び/または匂い」というカテゴリーを考察するように対象に依頼する。対象は、標準品として同様に調製された大豆タンパク質を使用して、全般的な感覚刺激特性を許容可能または許容不可能と評価し、試料が大豆タンパク質試料と比較して同等の感覚刺激特性を有するか、より良好な感覚刺激特性を有するか、またはより劣った感覚刺激特性を有するかを評価する。対象は、いずれかのカテゴリーにおいて最低の評価付けを得た試料を指定するように指示される。試験の様式は、試料の匂いを最初に評価する。対象がいずれかのカテゴリーにおいて匂いを3または4と評価付ける場合、その試料は感覚刺激的に不快または許容不可能であると考えられ、味の評価は必要ない。匂いが0〜2と評価付けされる場合、対象は、試料を1〜2秒間口に含み、公知の「口に含んで吐き出す」方法によって試料をさらに試験する。
【0138】
試験の匂い評価部分では、6人のパネルメンバーのうちの5人が、4つすべての対照試料に3、すなわち、強い魚のような匂い、及び/または強いアンモニア様の匂い、及び/または強い海水の匂いと評価付けし、それ故に、感覚刺激的に許容不可能であると評価付けしている。これらの対象は、対照試料が大豆タンパク質試料と比較してより心地よくないとも評価付けしている。したがって、これら5人の対象は、これらの試料については、試験の味評価部分に進まず、試料は、不快または許容不可能な感覚刺激特性を有すると評価付けされる。残りの対象は、4つの対照試料のうちの3つを「3」と評価付けし、残りの対照試料は「2」と評価付けしている。4つ目の対照試料について、この対象は味部分に進み、この残りの対照試料を3と評価付けし、すべての試料が大豆試料と比較してより心地よくないと評価付けしている。
【0139】
試験の匂い部分では、4つの試験試料について、6人の対象のうちの5人が、4つすべての試料を0と評価付けし、大豆と同等であると評価付けしている。残りの対象は、3つの試料を0と評価付けし、大豆と同等であると評価付けし、1つの試料を1と評価付けし、大豆と比較してより心地よくないと評価付けしている。
【0140】
続いて、対象は、試験の味部分に進む。味部分については、対象のうちの5人が、4つすべての試料を味が「0」であると評価付けし、大豆と同等であると評価付けしている。残りの対象は、3つの試料を「0」と評価付けし、大豆と同等であると評価付けしており、1つの試料を「1」と評価付けし、大豆と比較してより心地よくないと評価付けしている。
【0141】
データは、表11にまとめられており、従来の方法に従って調製した試料に対して、本発明に従って調製したタンパク質組成物は感覚刺激特性が改善していることを示している。本発明に従って調製した試料は、感覚刺激的な味及び匂い特性において大豆タンパク質標準品と同等あり、許容可能なまたは望ましい感覚刺激特性を有する可能性が明らかに高いことも見て取れる。
【0142】
(表11)感覚刺激的に心地よいまたは不快のいずれかと評価される試料
【0143】
本開示は、上記の実施例を参照して記載されているが、改変形態及び変形形態が本開示の趣旨及び範囲に包含されると理解されることになる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。